時々縁日に出かける。古銭専門店の店先で無造作にラックに積まれながら、真ん中に円形の穴を開けた内側にビニールを張った厚紙に挟まれた古いコインをざっくりと眺めている。厚紙には値段と年代の他にそのコインが使われていた国と、単位が書かれている。お金の単位は気がつくと記憶から遠ざかり、特にEUがユーロで均してしまった国々の中に意外な単位が紛れ込んでいる。文学や文芸でそれらしく使おうと思っても重箱の隅の汚れのように徐々に違和感をもたらす単位たちが箱の中に埋まっている。たとえばフランスなどのフラン、イタリアのセンテシミ、ギリシアのドラクマといった、中には古典の時代から生きていた単位たちが売られている。今日はどの単位を集めようか、と考えながら、一枚ずつ貯金のようにコインが溜まっていく。あまり貴重なものは集めず千円に満たない程度のものを集めていても、それなりの数になってしまった今、誰に話すともなくコインに印字された単位の孤独をただ味わっている。
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