(1)政治は理想、未来にかかわるものなのでいつもフィクション性はあり、現実につなげることが大事だ。石原慎太郎さんで印象深いのは、都知事時代に尖閣諸島の一部を地権者から都が買い取るとした発言だ。
(2)70年代までは尖閣諸島は日本の領土だと認めていた中国がその後同地域、海域から油田、天然ガス資源が出ることがわかると、一変して尖閣諸島は旧王制時代から歴史的に中国の領土だったと主張して領有権を主張しだした。
それでも日中両国は尖閣諸島領有権問題は棚上げにして、同地域の天然資源共同開発のプロジェクトを立ち上げて協力関係にあった。
(3)一変したのは冒頭のように当時の石原都知事の東京都による尖閣諸島買い取り発言に対して、当時の民主党政権の野田佳彦首相が決断を迫られて実効支配していた尖閣諸島を国有化する決定をしたことだ。
この日本政府の決定に対して中国が猛反発して、以後中国艦船、漁船による連日のように日本の領海侵入をくり返して日中対立が深まっている。
(4)石原都知事は本来国と国のかかわる外交、領有権問題に対して、東京都として都民の税金を使って尖閣諸島の一部を買い取る意向を示したもので、石原都知事としては都民の信任を受けての都知事就任なので都知事の判断、決断で豊富な都税を使って尖閣諸島を買い取ることは都知事の意思として問題はないと考えたのだろうが、都民としてはそれは国の政策事業でありそんな予算があるのなら都政、都民に使うべきだとの考えはあるだろう。
(5)東京都の尖閣諸島買い取りは都民の理解、支持があったとはいえずに唐突に石原都知事から発信されたものであり、都政の私物化が問題だった。政治判断としては国と自治体の行政範囲、権限の領域も何もない無茶苦茶な政治行動だった。
報道によるといつからか石原都知事は週3日程度しか登庁せずに、副知事に都政の実務をまかせていたともいわれて、自由奔放性あるいは政治、都政への取り組み姿勢には問題があったといえる。
(6)石原慎太郎さんは保守思想性、国粋、憂国主義的政治思想が強かったといわれて、共産主義一党独裁国家中国の一転尖閣領有権主張には許しがたい、我慢のならない反発、憤りがあって、これに日本政府の弱腰外交と受け取られる政治姿勢に首都の都知事として個人的、個別的に中国に対抗して日本の独立、主権性をはっきりしたかったことはあるとわかるし、政府をあるべき姿に動かそうとした。
(7)東京都の潤沢で豊富な都税、予算があったからできた個人的理念の尖閣買い取り発想でもあったが、民主主義国家の自治体として国と都の行政範囲を混同、混在して都民の意思も図らず、考えずに石原都知事の独自の理念、信条、信念の赴(おもむ)くままに都の象徴、最高責任者であることが唯一の政治判断、決定者であるかのような政治思想性で、民主主義政治とは無縁のある意味作家としての「石原フィクション政治」(fictional politics)もどきの石原都知事の存在だった。