(1)トランプ大統領は不動産王といわれて、政治経験もないまま8年前の大統領選で泡沫候補とみられながら国務長官を務めて政治経験の豊富なヒラリー・クリントン候補を破って米国大統領(1期目)に選ばれた。前歴が土地、建物売買の大統領で、日本でいうなら田中角栄元首相と似たところがある。
(2)両者に共通してみられるのが決断力、決断の早さだ。情報公開度の高い土地、建物売買、取引では決断が遅ければ他業者に取引を持っていかれる。それと世間をあっといわせる行動力がある。田中角栄元首相は懸案だった日中国交回復を実現し、日本列島改造論で日本中を高速道路網で結びこれが投資家の投機を生んで地方の土地高騰、利益につながった。
(3)トランプ大統領は2期目の就任ではグリーンランド購入、ガザの米国所有に意欲を示して、パナマ運河通航権の返還を求めている。メキシコ湾をアメリカ湾に変えると言っている。施政方針演説でも領土拡大を主張している。
ともに土建業、不動産業の経験手法を政治に持ち込んで、既得権益として独占的に取引(ディール)、利益を得ている。
(4)今日的政治では与野党から田中角栄政治の見直し、評価がみられ、与野党内に横断的に田中角栄研究会が設置されて話題になっている。石破首相も今年の施政方針で令和の日本列島改造論を目指す姿勢を示している。
田中角栄元首相はロッキード事件でワイロ政治で逮捕されて自民党の汚職政治、政治とカネの象徴的存在であり、今自民党裏金還元問題で政治とカネの問題、課題が指摘されている中で与野党間で田中角栄研究会が注目されているというのも皮肉なパラドックス(paradox)な政治状況だ。
(5)トランプ大統領は関税主義で世界から投資、カネを米国に集めて、カネが社会、市場にあふれて価値を失い、これでは高インフレ、狂乱物価を招いて対策が必要になってくるだろう。
土建業、不動産業出身の首相、大統領にはカネにまつわる問題がついて回り、政治を利用して独占的に経済利益に結びつける実利もうけ主義が手法として共通してみえる。政治の思想性、主義、理念の政治論での指導力、共有論が求められる。