二銭銅貨

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南の島に雪が降る

2008-10-28 | 邦画
南の島に雪が降る  ☆☆☆
1961.09.29 東宝、カラー、横長サイズ
監督:久松静児、脚本:笠原良三、原作:加東大介
出演:加東大介、伴淳三郎、有島一郎、西村晃、渥美清、桂小金治
   三橋達也、志村喬、森繁久彌、三木のり平、フランキー堺
   小林桂樹

戦地に集まる芸達者を集めて作られた演芸分隊の、
活躍する場所は立派に建てられた戦地の劇場、
マノクワリ歌舞伎座。

舞台の上、
幕間、
幕の内側、
演劇を見ながら無くなった最前列の兵隊を舞台の上に引き上げて、
演芸分隊の兵隊たちは舞台の上に衣裳そにままに立ちつくす。
天井からはハラハラと紙の雪。
亡くなった兵隊の上に落ちかかる。
この演芸分隊の隊長は加藤大介。
1人、その反対の方向を向いて、
じっと、こらえている。

若干の静寂。

加藤大介の手記に基づく映画で、
数多くの仲間が出演している。
演劇大好きの仲間たちが、
加藤大介のために集まって出来た映画だ。
その楽しさ。

戦争に行っても演劇をする。
演劇命の男たち。
南の島だろうと、戦場だろと、
あるいは、また宇宙の果てだろうと、
どこだろうと雪を降らして見せるという、
演劇人の気概。

最後の場面の劇中劇は瞼の母、忠太郎を加藤大介、母を西村晃がやる。ある兵隊がこれを見て、見ながら亡くなるという、その話は、まさに観客の鑑ともいうべき最後である。こういう重要な部分を観客にやらせるという脚本に、演劇人がどれだけ観客を大事に思っているかというメッセージを伺い知る事ができる。

もちろん反戦のメッセージも潜在的には色濃くあって、たとえば最後の兵隊の死は戦争のむごさを表現するものでもあるけれど、映画全体としては、あまり強い表現にはなっていない。それよりもやっぱり、芝居がしたいっていう気持ちのほうが強い。

登場した演劇人はみんな大暴れ、やりたいようにやっていた。1人、加藤大介だけは神妙にまじめにやっていて、とても印象的だった。自分の話に皆が協力してくれて恐縮しているというようにも、また緊張しているようにも見えた。幸せそうだった。

08.10.19 神保町シアター、昔TVで
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