二銭銅貨

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偽大学生

2010-05-16 | 邦画
偽大学生 ☆☆
1960.10.08 大映、白黒、横長サイズ
監督:増村保造、脚本:白坂依志夫、原作:大江健三郎「偽証の時」
出演:ジェリー藤尾、若尾文子、藤巻潤、船越英二

当時の学生運動を批評した物語で、まだ1970年頃の病的なまでに狂ってしまった学生運動のはるか前の時代のものである。学生運動に参加して狂ってしまったジェリー藤尾を病院のスタッフが称して「最近はこういう狂人がはやっているんだ」と言うけれども、そのセリフはその後の学生運動の狂気を早い時期に予測していて凄いと思った。

狂気に走る学生運動とか、宗教活動とか、政治活動とかのメカニズムが良く分かる映画だと思った。

伊丹一三(後の十三)が学生運動のリーダ役で出て来る。マジメっぽく、正義感に溢れた感じの秀才風なんだけれども、実はコアは凶悪なんではなかろうか、という雰囲気を醸し出していて良い芝居だった。

偽学生のジェリー藤尾に、しまいには他の正規の学生が同一化してしまうという所にこの寓話の狙いがあるのではないだろうか?若尾文子が真実を告白する場面があるけれども、学生たちからは無視され、若尾文子は茫然とする。学生たちはすでにジェリー藤尾の嘘を信じ込んでいて、この偽学生に同一化しているのだ。この寓話の狙いは、偽ものは、すなわち学生運動に血道をあげる正規の大学生そのものじゃないかと言う主張なんではないかと思う。偉そうな事を言ったり、正義面したり、したり顔で話したり、断言したりする奴らや、奴らの言っている事や、ジャーナリズムなんてものは、みんな偽物なんだ、という事かなと思った。

10.04.29 新文芸座
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