二銭銅貨

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オネーギン/プーシキン(池田健太郎訳)

2010-06-26 | 読書ノート
オネーギン/プーシキン(池田健太郎訳)

岩波文庫

タチアーナはそれでもオネーギンを深く愛してしまっていた。何でだか分からない。どうしてだか分からない。多分、少女の時のオネーギンの第一印象の打撃が深く深く心の底に打ち込まれているからなのかも知れない。理性では排除すべき恋愛と分かっていて、また、平凡な結婚から紡ぎだされる習慣の色どりが有力な恋愛の1つであって、自分が今その環境にあることも分かっていて、それでも、その打ち込まれた楔は抜かれることが無いし、また抜こうともしない。メラメラと燃え上がる恋の炎は抑制されていない。そのエネルギーの高さは隠されているだけなのだ。

彼女は強い理性で、その恋愛の炎を完璧にカバーして外に漏れないようにしている。その強力な理性は白く輝くセラミックのように美しく、宇宙船に貼られるタイルのように強固だ。

それだけではない。タチアーナの美しさは、その外見の美しさにあるだけではない。内面の情熱の炎の強烈なエネルギーの高さがその美しさの本質なのだと思う。厳冬のロシアの古風な家屋の中にある暖かい暖炉みたいだ。

10.06.19
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