二銭銅貨

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浮草

2010-12-06 | 邦画
浮草 ☆☆
1959.11.17 松竹、カラー、普通サイズ
監督・脚本:小津安二郎、脚本:野田高梧
出演:中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、杉村春子、川口浩

ダークブルーの夜空の中へ、
濃いオレンジの小さな丸いバックライトが2つ、
ゆっくりと吸い込まれていく。
ごうごうと音を残して、
走り去る夜汽車の後姿も、
徐々に小さくなる。
中には2人。
京マチ子とそれに鴈治郎。

雨の土砂降り。
喧嘩のつぶて。
派手にやりあう京マチ子と鴈治郎。
格子の壁の家の前で、
ぬれて、髪がほどけて、
必死の形相で、
メラメラとめりめりと、
燃える憤怒の炎、
恋の青筋、
雨宿りする京マチ子。
嫉妬と怒りがどっと噴出し、
あふれ出す。
鴈治郎は通りのこちら側。
イライラと雨を蹴散らし、
罵声が苛立つ。
豪雨の中の痴話喧嘩。

戦前の「浮草物語」のリメーク。川口浩は三井弘次のやった役。その三井弘次が役者の一人として出演している。25年たったんだから当然かもしれないけれども、あんな可憐な青年がこうなってしまったんだと、興味深い。川口浩はちょっと不良っぽい、すこし神経質そうな若者の印象。

若尾文子は美しい。そのままで美しい。

前作でもあったけれども、京マチ子が「おみつ」、若尾文子が「お染」で化粧をしながら話し合う場面がある。今度のはカラーなので衣装が美しい。京マチ子の「おみつ」はちょっと仁では無いようにも思うけれども、この2人の舞台があるなら見てみたいと思った。映画では京マチ子の国定忠治がたっぷりと見られる。これも良い。

前作をかなり忠実に再現していた。色使いも良かった。白い灯台、水色の空、赤いバケツ、緑の着物、赤に水色の振袖、濃紺の闇夜、古い家屋の錆びた木材の色。

10.11.27 神保町シアター
コメント
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