平成25年11月1日 時事通信社の記事
◎減反廃止の機運高まる=政府・自民にも容認論―農政、転換期に
25年11月1日 時事通信
コメの生産調整(減反)廃止の機運が高まっている。林芳正農林水産相は1日、減反廃止を視野に制度改革を進める考えを表明した。環太平洋連携協定(TPP)の参加交渉など農業を取り巻く環境が激変する中、政府・与党内にも「日本農業の足かせ」と批判が強い減反は廃止もやむなしとの容認論が広がりつつある。保護から競争へ。減反開始から40年余を経て、日本の農業政策は転換期を迎えた。
江藤拓農水副大臣は10月31日夕、減反やコメ補助金見直しを議論する自民党農林関係の会合に政府を代表して参加し、「いつの日かこれ(減反)が無くなる世界を目指さなければならない」とあいさつし、廃止に前向きな姿勢をにじませた。
農水省がこの日、自民党に示した見直し案の柱は「需要や農家の判断で生産できる環境整備」。会合では拙速な見直しにくぎを刺す声は出たものの、かつてのように大物農林族議員の反発が相次いで紛糾する事態には至らなかった。
自民党農林族の幹部、宮腰光寛衆院議員は30日、東京都内で講演し、「国が(減反達成のための)生産数量目標を配分するのは難しい」とさえ発言している。
政府は2014年度から農地中間管理機構(農地集積バンク)を活用して田畑を大規模化し、競争力を高める方針だ。規模拡大と生産を抑制する減反は矛盾するため、農水省内でも減反廃止は不可避との見方が多い。
一方、日本人1人当たりのコメ消費量は12年度中に56キログラムとピーク時(1962年度の118キログラム)に比べ半分以下に減った。減反廃止で供給が増えて米価が急落すれば農家経営はさらに立ちゆかなくなる。
そこで、農水省は主食用から飼料用米への生産転換を図る方針だ。家畜のエサ(配合飼料)は輸入トウモロコシが主原料だが、昨年は主産地・米国の干ばつで価格が高騰した。
年間1000万トン以上のトウモロコシを輸入に頼る日本にとって、飼料原料が外国頼みのままでは食料安全保障上問題がある。農水省は面積に応じて支払う飼料用米の補助金(水田10アール当たり8万円)に加え、生産量に応じた加算をして、農家の作付けを飼料用に誘導する方針だ。
コメの減反
コメの減反 供給過剰による値崩れ防止を狙った生産調整制度。1971年から本格的に始まった。毎年の需給予測を基に国が生産数量目標を決め、都道府県を通じて農家に作付面積を割り当てる。2013年の生産数量目標は791万トン。減反への参加は農家の自由だが、不参加の場合は所得安定化のための補助金を受け取ることができない。零細農家を保護する色合いが強く、農業強化の足かせになるとの批判が多い。