安東伸昭ブログ

安東伸昭の行動日記

「中国スパイ気球」ミサイルで撃墜がベストだったワケ

2023年02月23日 | 情報

令和5年2月23日

米軍機撮影の写真公開=上空飛行中の中国気球

時事通信

米軍は22日、米本土上空を飛行中の中国の偵察気球をU2偵察機から撮影した写真を公開した。

米戦闘機が撃墜する前日の3日に撮られたもので、白色の風船に通信傍受が可能とされる機器や太陽光パネルがつるされ、

空に浮かぶ様子が写っている。

   

 米軍のU2偵察機から撮影された米本土上空を飛行する中国の偵察気球=3日撮影(米国防総省提供)
 © 時事通信 提供

偵察機内から撮影されたとみられる写真では、操縦士が気球を見下ろし、眼下には米国の陸地が広がる。

米高官によると、気球は高さ約60メートルで、太陽光パネルや電子機器などで構成する本体部分の幅は約27メートル。 

 

装備機器については公表されていませんが、太陽光パネルを設置していることで、長期間の観測ができる設備です。

 

 

 

令和5年2月17日

気球は空自機で破壊可能=空幕長、「厳正に対応」

航空自衛隊トップの井筒俊司航空幕僚長は16日の定例記者会見で、

領空内に飛来する気球への対応について「戦闘機から空対空ミサイルを発射するなどの手段で破壊は可能と考えている」と述べ、

空自の戦闘機で撃墜可能との認識を示した。

井筒空幕長は、気球の大きさや飛行高度、付随する機器などによって対応の難易度は異なるとした上で、

「自衛隊の各種レーダーで探知することは可能」と説明。

「無人機や気球など多様な手段による領空への侵入の恐れが増している。

国際法規にのっとり厳正に対応したい」と強調した。

 

領空侵犯の気球、撃墜も検討 政府、武器使用へ法解釈変更案浮上|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)

 

 

令和5年2月10日

「中国スパイ気球」ミサイルで撃墜がベストだったワケ 

アメリカ軍が中国の観測気球を空対空ミサイルで撃墜しましたが、

素人意見だと「気球ならミサイルじゃなくて機銃などで穴を開けて落としたほうが、爆散せず回収が容易で良いのではないか」と思うのですが、

なぜミサイルを使ったのか疑問でした。

   

アメリカ本土に飛来した中国の観測気球

アメリカ空軍は2023年2月4日(現地時間)、アメリカ本土上空を飛行していた中国の高高度偵察気球を、

F-22「ラプター」戦闘機から発射した空対空ミサイルで撃墜したと発表しました。

  

 

大推力エンジン2基搭載というアドバンテージ

 今回の出来事で注目されるのは、他国の飛行物体をアメリカ空軍が実際に撃墜したことと、

それにF-22「ラプター」という高性能な主力ステルス戦闘機と空対空ミサイルを利用したことです。

 偵察用とはいえ、気球相手にステルス戦闘機とミサイルを持ち出すのは、

一般的には「牛刀をもって鶏を割く」といった感じの大げさな印象を受けるかもしれません。

しかし、アメリカ空軍の発表から当時の様子を見てみると、この事案はF-22でないと対応が難しい過酷な環境下であったことが理解できます。

 

撃墜時に中国の偵察用気球が飛んでいた高さは、6万~6万5000フィート(約1万8000~1万9500m)という高高度でした。

これは旅客機などの一般的な航空機が飛ぶ高度、おおむね3万~4万フィート(9000~1万2000m)よりも高く、

戦闘機であっても簡単に行くことができない位置です。

 アメリカ空軍が運用する戦闘機のなかで、今回のような飛行目標を攻撃できる機体は

F-16「ファイティングファルコン」、F-35A「ライトニングII」、F-15C「イーグル」、F-22「ラプター」の4機種ありますが、

この中でスペック上の数値で高度6万フィート(約1万8000m)以上まで上昇できるのは、エンジンを2つ搭載したF-15とF-22のみとなります。

 そして、両者を比較すると後者の方がエンジン推力が大きく、ミサイルをウエポンベイで機内搭載できるため、

武装しても空気抵抗が低くなる空力的な利点もあることなどから、F-22の方が高高度での任務に適しているといえるでしょう。

 実際、発表によるとF-22は、高度5万8000フィート(約1万7000メートル)からミサイルを発射しており、

今回の特殊な任務では同機が持つ優れた高高度飛行能力が生かされていたことがわかります。

 

1発0.5億円の最新空対空ミサイル

 また機体と共に世間で驚かれたのが空対空ミサイルの使用です。

使用されたのはAIM-9X「サイドワインダー」空対空ミサイルで、1発あたりの価格は約40万ドル(約5290万円)と言われています。

F-22「ラプター」には、より安価な20mm機関砲が装備されているため、これを使ったほうが

「より低コストに気球を撃墜できたはずでは?」と考える方も多いでしょう。

 しかし、気球への機銃攻撃は簡単ではなく、実際に行って失敗した例もあります。

1998年にカナダ空軍のF/A-18「ホーネット」(同国ではCF-188と呼称)が制御不能となった気象観測用気球の撃墜を試みましたが、

2機で1000発以上の射撃を行ったにも関わらず、その場で完全撃墜することができませんでした。

 撃墜失敗の理由のひとつは、気球と戦闘機の速度差がありすぎたためです。

戦闘機は高速で飛びますが、気球は風に流されるだけで速度は低く、戦闘機から見れば止まっているのと、ほぼ同じ状態です。

速度差がありすぎるため逆に照準が難しく、気球が大きすぎるため、接近しすぎると空中衝突する危険性までありました。

また、機銃弾自体が気球に対して効果が薄く、命中しても表面に穴が開いてガスが抜けるだけで気球自体を直接破壊することができなかったのです。

 今回の気球撃墜の場合も、気球が6万フィート(約1万8000m)以上という高高度を飛んでいたことを考えると、

それに接近すること自体が難しく、そこから機銃を命中させるのは困難だったと予想できます。

たかが気球されど気球、やっぱりF-22は凄かった!?

 アメリカ空軍がカナダ空軍の過去の例を参考にしたかはわかりませんが、偵察用気球を確実に撃墜するためにはミサイルの使用がベストな選択だったのでしょう。

今回の攻撃には2機のF-22が出撃し、さらに支援機としてF-15も飛行していましたが、撃墜はたった1発のAIM-9Xミサイルで達成されています。

なお、AIM-9「サイドワインダー」シリーズは熱源を追尾する赤外線誘導方式のミサイルとしてよく知られた存在ですが、

ジェットエンジンなどの推進機器を持たない気球相手に使用できるかは以前より疑問も呈されていました。

 しかし、最新モデルであるAIM-9Xは赤外線画像による誘導方式に改良されており、目標を熱源ではなく画像として捉えることが可能です。

だからこそ、今回のような高高度を飛ぶ大型気球(報道によるとその大きさは約27mもあったとのこと)の場合、

表面を太陽光に照らされて一定の熱を帯びたことから、ミサイルの誘導が可能だったと推測できます。

 アメリカ空軍の発表によると、撃墜した偵察用気球の残骸は海岸から約6マイル(約9km)離れた深さ約47フィート(約14m)の海底に落下したそうで、

現地には撃墜前の段階からアメリカ海軍の艦艇が待機しており、今後はダイバーを使った回収作業も予定されているとか。

中国が諜報活動のために送り込んだ気球によって、逆に中国の諜報能力を知られる可能性もあるかもしれません。

 報道によれば、中国政府は気球が自国の物だと認めたうえで、それが偵察用でなく気象研究用であり、

領空侵入も不可抗力でアメリカに迷い込んだと説明。

また、アメリカの撃墜に対しては中国外務省が強い抗議と対抗措置を匂わす声明を発表しています。

 F-22「ラプター」の知名度と性能を考えると、その初撃墜の相手が気球だったことを味気ないと感じる人も多いかもしれません。

しかし、6万フィート(約1万8000m)以上を飛ぶ目標を単独で撃墜できたというのは、

すなわちF-22の機体性能の高さを示す偉業ともいえるでしょう。

 

 

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