少し旧聞になるが、先月、北京で行われたサッカー東アジア選手権で、日本は久しぶりに最下位に沈んだ。
サッカー評論家は、ここぞとばかりにハリルホッジ監督の采配批判を繰り広げ、自身の見識の高さをアピールしていた。
その記事を、私は苦々しく思いながら読んでいた。
これは予測された事態に過ぎない。日本が予想を覆す成績を上げたワールドカップ南ア大会が終わった後、私はこれで当分、日本サッカー代表がワールドカップの場に出ることは当分ないのではないかと考えていた。
理由は簡単で、若手が育っていないからだ。トルシェエ監督がアンダー17を準優勝に導いて以降、日本の若手選手は、国際大会で目立った戦績を上げていない。特に次世代の代表候補が出てくるはずの、五輪サッカーの成績がヒドイ。
これは、ロンドン大会でも、北京大会でも、そして、それ以前のアテネ大会でも同様である。若手が十分育っていない以上、今後のA代表でも苦戦することは自明の理である。
しかし、ザッケローニという名監督を得た日本は、順調にワールドカップ予選を勝ち抜き、ブラジル大会に臨んだ。ザッケローニには分かっていたようだ。ワールドカップで成績を残すためには、実績ある選手だけではダメで、若手の急成長したスターが必要であることを。
南ア大会で、日本が予想外の成績を上げられたのは、本田という若手のスターが登場したからだ。それが分かっていたので、ザッケローニは実績あるベテランを外して、若手に期待を賭けた。そして、その賭けに敗れた。これがブラジル大会惨敗の真相である。
さて、その後だが代表監督は二転三転の末、ハリルホッジを監督に迎えることになる。私は当初から苦戦を予想していた。アジア予選は、ヨーロッパのサッカーとは大きく異なる。低レベルではあるが、独特の激しさと、不安定な審判、長大な移動距離とアジア予選独特の厳しさがる。
それを始めて経験する監督が苦労するのは当然なのだが、それ以上に問題なのは、世界で戦える水準にあるとは言い難い国内の若手である。武藤をはじめ、ヨーロッパに渡った選手は多く、若手は育っていると錯覚している人は多いと思うが、現実にはそうではない。
それが証明されたのが、国内選手のみで戦った東アジア選手権である。シナ、南コリア、北コリアの三か国に一勝も出来ず、無様な最下位である。サッカー評論家の多くは、それをハリルホッジの采配ミスだと論じたが、これは筋違い。
本当の原因は、国内で若手が育っていない。その一点に尽きる。それは国内のサッカー指導者の責任以外の何物でもない。国内サッカーでは、指導者としてそれなりに実績を挙げた日本人コーチを、アンダー23、アンダー17などの若手代表チームの監督にやらせている。
だが、その結果、国際大会で通用しない選手ばかりが育っている。これは日本人コーチに、世界に通用するサッカーを指導出来る人材がいないことの証明に他ならない。にもかかわらず、相変わらず日本人コーチを採用している。
これは、国内の景気低迷を受けて、優秀な外国のコーチを呼べないからではない。日本サッカー協会は、世界中から羨ましがられる金満団体である。問題は、相変わらず、派閥次元の人事に終始する日本サッカー協会の素人ぶりにこそある。
ぶっちゃけた話、日本人コーチの就職先としてのアンダー代表監督である。それを大学サッカーの派閥、社会人サッカーの派閥で取り合っているのが、今の日本サッカーの現状である。
不愉快なのは、サッカー評論家どもで、その惨状を知りながら、この先数十年付き合いが続く日本人コーチを批難することを避けていることだ。また将来のスター候補である若手選手たちを厳しく批評することも避けている。おおかた、後々取材に差し支えるとでも思っているのだろう。
そのかわりに、いずれ日本を去るはずの外国人代表監督を批難することで誤魔化している。日本サッカーの三大問題、すなわちアマチュアの日本サッカー協会の幹部、世界レベルにない日本人コーチ、そして誤魔化しばかりが達者になったサッカー評論家(スポーツ新聞記者も含む)である。
この三バカに囲まれてやらねばならないのが、日本サッカー代表監督である。高額な報酬もやむを得ないと思いますね。