あまり取り上げられていないけど、私としては要注意だと思っている。それがサウジアラビアなど中東4か国によるカタールへの断交だ。
中東というか、原油産出国の中では最大の埋蔵量を誇るサウジアラビアだが、その政治的な地位はあまり高くはない。イスラムの聖地メッカを管理しているから、尊重をされてはいるが、アラブ社会のリーダー的存在ではない。
そもそもサウジアラビアという民族は存在しない。サウド家を中心とした多数の部族連合国家である。原油を元手に成り上がった金持ち、それがサウジアラビアである。
そもそも中東の地を近代まで支配していたのは、オスマン朝トルコであり、対抗馬としてサファビー朝ペルシャ(イラン)である。異民族による支配を受けていたのが中東の特徴である。だが、敢えてアラブ社会のリーダーといえば、エジプトであろう。
OPECという組織の中にあれば、サウジにもリーダーの資格はあった。しかし、非OPEC諸国の台頭でサウジのリーダーとしての地位は低下していた。おまけに石油よりも天然ガスで急速に成長したカタールという隣国も出てきた。
サウジアラビアの支配者たちは、相当な焦りがあったのではないかと思う。成金意識の強かったファイサル元国王の世代と異なり、今の支配者たちは石油危機以降の生まれであり、生まれながらにして大富豪であり、支配者であった。
その権勢の根源が石油にあることは理解していたが、肥大した優越感を優先していたからこそ、サウジは決して近代国家となり得ず、イスラム教ワッハーブ派というスンニ派の異端の少数教義に支配されるサウド王朝であり続けた。
石油とアメリカの軍事力に支えられたサウジという現実を素直に受け入れていた旧世代のサウジ王家とは異なり、現在のサウジ王家は生まれながらにして富と権力を握った若き王族たちに率いられている。
カタールもまた同様なのだが、だからこそサウジの若き王族たちはカタールを許せない。原油の枯渇が現実の脅威となっている今日、サウジもまた新たな国家像を模索している。今年のサウジ王家の来日は、その一環である。脱石油による国家運営は至急の命題である。
小国カタールと異なり、部族連合であるサウジには統一国家意識は希薄である。だからこそ、ワッハーブ派という伝統的イスラム社会でも異端の匂いのする教義にしがみ付かざるを得ない。カタールが許容しているイスラム原理主義なんぞ、断じて認める訳にはいかないのだ。
この危機感あってこそのカタール断交であろう。
アメリカも今回のカタール断交への対処には頭を抱えている。打つ手が乏しく、サウジをコントロール出来ていない。カタールに対しても同様であるが、幸か不幸かトランプ政権は中東への関心が薄く、強く関与する気もないようだ。
拳の下ろしどころを失したサウジに対し、ロシアが介入を試みているが、正直難しいだろう。私はそう遠からぬ将来、サウジは西側社会から離反するのではないかと思っている。
原油が枯渇しても、まだ天然ガスなどがあるはずだが、資源大国としての立場は大きく揺らぐ。アメリカも無理してサウジを支えようとはしない可能性もある。本来、西側の民主主義を基礎とした近代国家とは、まったく異質の国であるサウジは、その時本性をむき出しにするように思う。
サウド家中心の部族連合国家であるサウジアラビアが西側からの自立を考えるならば、どうしても確固たる軍事力が必要となる。その肝は間違いなく核兵器であろう。
コリア半島の貧乏独裁国家とは異なり、膨大な金融資産を持つ(個人で・・・だが)サウジアラビアは、その有り余るドルを使って容易に核兵器を輸入するであろう。
その時、中東において北朝鮮を遥かに上回る危険な独裁国家(これは今もだが)が誕生することになる。既にイラン、イスラエルなどの周辺国家が核兵器を保持していると思われる以上、この流れは必然だと思う。
果たしてアメリカをはじめ西側国家は、この異端の独裁国家をどう遇するのか?
中東の地が、再び戦乱を迎える日はそう遠くないように思えてなりません。