日本政府の財政状態は危機的である。
以前から言われていたことであり、まったくのウソではない。ウソではないが、真実とは程遠いと私は考えています。
会計学では当たり前のことですが、財政状態の危機とは債務(負債)が増えて債務超過になっていることを意味します。ところが日本政府は、債務の巨額さだけをもって騒ぐ。記者クラブで配布される資料を垂れ流すだけの新聞TVは、批判することなく、ただ財務省の言い分だけを報道する。
日本政府の債務が巨額であることは事実。しかし、その反対勘定である資産もまた巨額であり、時価評価可能な金融資産と対比すれば、とんとんもしくは若干の債務超過であり、決して危機的な状況ではない。
実際問題、日本政府の有する巨大な金融資産から得られる利子配当収入は先進国でも際立って巨額であり、これを無視した財政危機報道に何の価値があるのか、私には理解不能です。
そんな矢先、財務省の矢野事務次官が雑誌に論文を投稿した。それも衆議院選の前のタイミングで、要はばら撒き行政を批判する内容です。
はっきり言いますと、あたしゃ笑っちゃいました。あんた、それ言えるのかい。
官僚が、とりわけ日本政府の財政を握る財務省が、事あるごとに財政危機を口にするのは、もはやイソップの狼少年に近い。でも、この狼少年は嘘をついているとは思っていない。
何故なら本当に財務省の権限が抑制されてしまっているからだ。
霞が関の官庁のなかでもKING OF KINGSだと云えるのが財務省である。その権力に源泉は予算の編成権にこそある。各官庁に予算を配分する権限を有するが故に、最強の官庁として他の官庁に君臨する。
だが、大平内閣以降、なし崩し的に赤字国債が発行され、国家歳入のなかで国債の発行の占める割合が増えてきた。その国債の償還に充てるため、必然的に国家予算の支出、すなわち歳出のなかに国債償還額が増えてきている。
これが予算配分を武器に他の官庁に君臨してきた財務省の権威を大きく損ねる。この現実故に、狼少年は今日も「オオカミが来たぞぅ」と叫ぶ。
まったくのウソではないが、でも敢えて問いたい。あなた方財務省(旧大蔵省も含め)がやってきた予算配分と云う名のばら撒きは適正といえますか、と。
プラザ合意の結果、円高が急速に進むと、その趨勢に逆らってのドル売り介入を支持し、多額の税金を浪費したのは適正だったのか。
バブルを弾けさせ、土地神話を破壊した総量規制は適正であったのか。
官僚たちが企画、立案して予算配分したその結果について、成功もあれば失敗もある。その結果責任を一度でいいから取った官僚がいたのか。
いつも内々で傷をなめ合い、決して表舞台には曝さず、国民の批判の届かぬところで曖昧に済ませてきたのは、どこのどいつだ。
私に言わせれば、財務省の予算配分も又ばら撒きに他ならない。
ただし、国家による予算配分は、所得の再分配の性格を有しており、それ自体は否定しない。しかし、予算が決まれば、それですべてが終わったとして、その結果についての適切な検証を避け、結果責任から逃げてきたが故に、失敗は繰り返され、税金が無駄に使われたのも事実。
同じばら撒きでも、政治家のばら撒きは選挙により審判が下される。しかし官僚のばら撒きは、常に無罪放免である。
一部のマスコミが賛美してますけど、私に言わせれば矢野事務次官の発表した「ばら撒き批判」は、相も変らぬ自己賛美に他なりません。