自宅待機中、大幅に使用量が増えたのがオリーブオイルだ。
以前はごま油とサラダ油がメインだったのだが、知人から頂いたオリーブオイルが大量で、これを消化するために欧州料理を作ることが増える始末であった。
でも、私の料理のレバートリーも大幅に増えた。失敗もいくつかやらかしたが、自分でも上手く出来たとご満悦のものもある。
ところで、オリーブオイルというかオリーブという果実が日本に入ってきたのは明治40年代だそうだ。当初は三か所ほどで栽培していたが、続いたのは小豆島だけ。おかげで小豆島のオリーブは特産品として令和の日本では立派なブランド品である。
そのオリーブオイルの採れたてというか、エキストラヴァージンオイルと称される本物のオリーブオイルをある洋食屋さんで味わったことがある。けっこう期待していたのだが、内心その癖の強さというか香りのきつさに素直に美味しいとは言えなかった。
でも店のシェフは、私の反応は予想通りだったようで、次に普通のオリーブオイルを出してくれた。こちらは熟成しているというか、素直に美味しいと楽しめる味わいであった。
そんな私をみながらシェフは「実はどちらもエキストラヴァージンオイルなんですよ」と一寸困った顔で説明してくれた。驚く私たちに、最初に出したのは小豆島で採れた本物というかヨーロッパの基準(IOC)を満たしたもの。次に出したのは、日本のスーパーなどで店頭で大手食品会社の製品として売られているJAS規格のものだそうだ。
どちらも決して偽物ではないが、オリーブオイルの基準が違うだけだそうだ。でも西欧の方だったら、後者の大手食品会社のものをエキストラヴァージンオイルだとは認めないでしょうとも言っていた。
逆に前者のものを出せば、ほとんどの欧州の方は本物だと認めてくれるそうだ。小豆島のオリーブ農家もすごいものだ。
ただし、日本人の多くは後者の味を好むらしい。つまり本物の味には馴染めていないのが実情だそうだ。当然に大手の食品会社もそれを知っていて敢えて味を変えたエキストラヴァージンオイルを販売しているそうだ。
思い出してみれば、私がオリーブオイルを実際に食したのは、成人になってからだ。多分パスタ料理に使われていたと思う。その後バブル期に雨後の竹の子みたいに増えたイタリアン料理の店で、オリーブオイルにパンを浸す食べ方を知ったぐらいだから、それほど馴染みのある味でないのも当然だろう。
もっとも近年はかなり一般家庭にも普及したようで、イタリアンに限らずフレンチやスパニッシュの料理でも良く使われている。小豆島だけでなく、熊本でも本格的にオリーブ栽培を始めて(厳密には明治時代に失敗しているので再開だ)、その製品が市場に出回っていると聞く。
実際、この私も自宅待機中にオリーブオイルを多用した料理を幾つも作っている。かなり馴染んできたと思うけど、やはり本場のエキストラヴァージンオイルとなると、まだまだ舌に馴染んでいないのだろなァ。
でも身体に良い油みたいなので、少しずつ馴染もうと思います。あたしゃ、美味しければ何でも良いのさ。