ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

デューン砂丘の子供たち フランク・ハーバード

2021-11-22 11:35:00 | 

昨今、日本のライトノベルでは異世界ものが人気である。

もっとも、これは日本に限ったものではない。古来より人々は空想に夢を託して、現実とは異なる異世界を創造してきた。古代神話なんかがその典型だと思う。もっとも人が創造した異世界ゆえに、論理的な矛盾や物語の構成に無理があることも珍しくない。

だからだろうが、完全なる異世界の物語を構築した作品は稀だし、それ故に敬意が払われる。欧米だと「指輪物語」が代表的であるが、表題の「デューン」もまた非常に評価が高い。

ホラーならばラグクラフトのクトゥルー神話体系があるが、SFではFハーバートのデューン・シリーズが非常に出来が良い。私も中学生の頃にドはまりしたぐらいである。

やはり、なんといっても世界観が素晴らしい。当時の欧米では蔑視されがちであったイスラム教の雰囲気たっぷりな砂の惑星デューンと、人工知能を禁じた倫理観、キリスト教の修道院をモチーフにしたかのような宗教組織といった未来社会を背景にしている。

銀河を股にかける帝国と、中世さながらの封建領主たちと宇宙航行を牛耳るギルドが互いにけん制し合う世界で、罠にはめられた主人公の父。そこから息子が立ち上がり、帝国に反乱をしかけて勝利する第一部。

そして物語は子供たちに引き継がれる。表題の作品のエンディングで明かされる未来は、私のSF読書歴の衝撃度で確実にTOP3に入る。これはネタばらしはしたくないので、是非とも読んでもらうしかない。

ただ私の本音は、石ノ森章太郎が表紙、挿絵を担当した当初の版を読んで欲しいのだ。でもあの性悪の早川が映画化にかこつけて販売を伸ばそうとして、挿絵をなくしてしまったので、当初版は古本屋でしか入手できない。

40年以上前の古書で、しかも作りの粗い文庫本にも関わらず、既にプレミアがついているようなので、積極的にはお薦めできなのが辛いところだ。実写化された映画版よりも、石ノ森の挿絵のほうが素晴らしいと信じてやまない私です。

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