やれば出来るもんだ。
なにがって北朝鮮の潜水艦である。元々北朝鮮は世界でも有数な潜水艦保有国であった。ただし、その大半が旧ソ連からのお下がりで、しかも沿岸警備用の潜水艇であった。冷戦期になり、やはりソ連からロメオ級潜水艦を購入するが、これも中古であり、しかも旧装備のものであった。
呆れたことに半世紀以上に渡り、これらの老朽化した潜水艇及び潜水艦を使い続けてきた。北の工業力では自力で潜水艦を建造する能力はなかった。
元々北の工業力の基盤は日本が残置していった工場等を活用したものだが、さすがに古すぎて新たな船でさえ製造することは難しかった。だから北の船舶の大半は木造船である。
だから一部のマスコミが北コリアを世界で7番目にSLBN搭載型の潜水艦保有国だと書いているのが不思議でならなかった。この国は潜水艦どころか潜水艇さえ自力では作れないと考えていたからだ。
もしあるとしたら旧ソ連のロメロ級潜水艦を改造するしかないのだが、この潜水艦は弾道ミサイルを搭載するほどには大きくない。だから水中から弾道ミサイルを発射したとの報道があっても、多分潜水艦からではなく、水中に埋設した構造物からの発射実験だろうと思っていた。
ところが、ようやく北のミサイル発射が可能だとする潜水艦の正体がみえてきた。基本的に軍事情報は第一級の機密事項であり、敵を攪乱するための偽情報も多く出回る。それを認識した上での情報なのだが、どうやら本当にミサイルを搭載できる潜水艦が実在するらしい。
その秘密は、旧ソ連の冷戦時代の通常動力型潜水艦であるロメロ級の改造である。船体が大きくないロメロ級に弾道ミサイルの搭載は無理だとされていたが、北朝鮮はなんと船体から突きだした司令塔部分にミサイルをはめ込んでしまったらしい。
おいおい、潜水艦の操縦はどうするんだと思ったが、考えてみればこれだけ強引な改造をしてしまえば外洋での航海や潜航任務はまず無理だろう。完全にミサイルの海中発射装置として割り切れば、むしろ最適解なのかもしれない。
窮すれば通ずというが、追い詰められると人はとんでもないことをやらかすものだと感心した次第。
ただ、あんな無理な改造をしでかすと艦体のバランスは大きく崩れているはずだから、自力航海は沿岸周辺が限界でしょうね。それでも自国防衛のための最後の手段としての弾道ミサイルの海中発射に拘った北の覚悟のほどが良く分かりますね。