ヌマンタの書斎

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飛行艇の輸出

2013-04-03 12:40:00 | 社会・政治・一般

飛行機が離陸するためには長大な滑走路が必要だ。

その滑走路を滑らかな水面を活用しようとしたことから生まれた飛行機が水上機だ。水上機には二種類あり、主翼の下にフロート(浮き漕)を備えて機体を水面に浮かせるタイプと、機体の胴体部自体にフロート機能を持たせて水面に浮かぶタイプがあり、後者は飛行艇と称される。

前者はその構造上の問題で小型機に多く、セスナなどを改造したものが主流だ。一方後者は、その構造的に水上機専用の機体を設計する必要があり、中型から大型の機体が多い。ちなみにアニメ映画の「紅の豚」の主人公のポルコ・ロッソの愛用機は小型機でありながら胴体部にフロート機能を持たせた変り種だ。


大半の水上機は、小型のセスナタイプを改造して作られている。この方法が一番コストが安いので、現代でも数多くの水上機がこのタイプである。この主翼の下にフロートを備えた小型機は利便性が高く、カリブ海などのリゾート地では必需品となっているし、堅牢な滑走路が造れない湿地帯や、小さな離島などは水上機なしでは暮らせない。

ただし、このタイプの小型水上機は荒れた水面を苦手とするので、入江や湖水などで活用される。波が大きい海では、飛行艇でないと離発着は難しい。もっとも航空技術の進歩により、長大な滑走路がなくても離発着できる大型機が造られるようになった第二次大戦以降は、あまり活用されなくなった。

日本では太平洋戦争で二式大艇が活躍したが、敗戦後は長く水上機は活用されなかった。対潜哨戒機として開発されたPS1が久しぶりの水上機であったが、電子機器の進歩で、対潜哨戒は水上機である必要性が薄れてしまった。おまけにPS1は当初の設計が甘く、事故が多発した問題機でもあり、自衛隊員が延べ30人あまり墜落による事故死している。

だが、数少ない国産の航空機でもあったPS1は、製造元の新明和工業が威信をかけて改良に改良を重ねて安全性は飛躍的に高まった。しかし、当初の対潜哨戒の役割は終わり、役立たずの機体として終わるはずであった。ところがだ、荒れた海でも離発着が可能な水上機は、海難救難には威力を発揮する。そのために開発されたのがPS1を改良したUS1であった。

多くの犠牲者を出しながらも改良を重ねた甲斐があり、US1はほぼ無事故(一度墜落している)であり、750回を超える海難救助に活躍したばかりでなく、遠方の離島での医療搬送などにも威力を発揮した。

ただ、後継機をどうするかについては、いろいろと揉めたのは事実だ。一つにはヘリコプターの登場と、その特性(ホバリングによる空中停止)を活かした海難救助が実績を挙げるにつれて、大型水上機の必要性が薄れたことがある。

それでも飛行艇の長距離飛行能力や、荒天時での運用能力はヘリコプターを上回るものがあり、日本では開発続行の決断がされた。幸いアメリカが飛行艇の製造を止めていたこともあり、この開発には口出ししてこなかったことも大きい。

ただ、後継機の開発を巡る富士重工の贈収賄問題が、US1の後継問題をこじらせた。それでも海上自衛隊は諦めなかった。まっさらな新型機こそ諦めたが、US1を大幅に改良した後継機US2を開発し、既に実用化している。

そればかりか、カナダやロシアで森林火災への消防活動における飛行艇に倣って、US2にも消火機能を持たせて消防飛行艇への改造も進めている。そしてかねてから日本の飛行艇に関心を持っていたインドへの輸出も試みられている。

私の知る限り、日本で独自開発された軍用機が海外に輸出された例はない。もちろんUS2には哨戒機能は付加されていないし、もっぱら海難救助に特化している特殊な機体ではある。しかし、海上自衛隊という名称の日本海軍が保有する機体であり、イギリスのジェーン年鑑には軍用機として記載されている。

おかしなことに、憲法9条固守や、自衛隊の海外派遣反対などと大騒ぎするマスコミ様は、このUS2のインドへの輸出にはほとんど反応していない。このあたり、平和馬鹿で軍事知識がないからなのか、それとも崇拝するシナが反応しないからなのかは知らない。

私は憲法改正論者だし、武器の輸出を禁じることの無意味さを痛感している。もちろんUS2のインド輸出には賛成なのだが、反対意見が出ないことが不思議で仕方ない。

US2は確かに海難救助機能の高い飛行艇であるが、ちょっと改良すれば立派な対潜哨戒機にもなれるし、当然対潜兵器ぐらいは搭載できる立派な軍用機だ。その輸出は立派な憲法違反だと思うが、何故に平和真理教の皆様方は反対しない?

これはトヨタのトラックを輸出して、現地で機関銃を搭載する改造をして軍用トラックとするのとは訳が違うぞ。まったく軍事知識のない平和信者って奴ほど間抜けなものはないと思う。本気で平和を望んでいるのか、疑われても仕方ないと思うな。

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