世に偶然というものはあるのだろう。
美形でホモセクシャルな吸血鬼。一読してすぐ思い出したのが、萩尾望都の「ポーの一族」。話の筋はまったく違うのだが、萩尾女史のほうが若干作品発表は早い。当時、日本の少女漫画がアメリカに伝わる可能性は、極めて低いと思われるので、やはり偶然なのだろうと思う。
それにしても、恐ろしい偶然だ。作者がどちらも女性であることも印象深い。やおい本という、特異な分野のマンガ本があるが、女性ってホモで美形の男子がお好みなのだろうか?このあたり、性的志向が正統派の私にはさっぱり分からない。
それはさておき、モダンホラーの分野では、ちょっと変わったポジションにいると思われるのが、著者のアン・ライス。吸血鬼もの以外にも、ミイラものも発表しており、ヨーロッパ伝統(?)の古典的ホラーをモダンライズして、独自のホラー小説の世界を構築している。なぜか日本では、少し影が薄いが、古典の見直しもそう馬鹿にしたものではない。
ご存知の方も多いと思うが、本作は映画化されている。あまりヒットはしなかったようだが、SFXを控えめにして、重層的な暗い雰囲気を堪能できる佳作だと思う。主演はトム・クルーズ、これはまあまあ当たりかな。もう少し落ち着いた雰囲気が欲しかったが、吸血鬼の現代的な狂気を表現することを考えると、案外これで良かったかも、
私は小説の映画化には、いささか否定的。頭のなかでイメージされた小説の雰囲気と、実際に映画化された映像とのギャップが気になり、どうしても映画より小説に軍配を上げてしまう。本作は正直言って、ホラー映画としては弱いが、原作の映像化という点では、私的には高得点。
それにしても、あまり怖くないホラー小説なのだが、なぜか気の置けない一作です。
萩尾氏のメ[の一族は エドガーとアランという登場人物がいます 続けると エドガー アランメ[になります
以前「ジャンケン隊」のインタビューで、「メ[の一族」は最初から構成が決まっていたわけでなく、その都度つじつまを合わせていたと、萩尾女史が述べていましたが、驚異というか天才ですね。脱帽です。