多分、小学生の時だったと思う。妹の買ってきた少女漫画雑誌の巻頭を飾っていたのが、一条ゆかりの「砂の城」だった。えらく濃い中味の話だった記憶がある。上の妹は夢中になって読んでいたが、後年一条ゆかりがインタビューで、一番嫌いなヒロインに「砂の城」のナタリーを挙げていたのには驚いた。
ずいぶんとイイ性格のおねえちゃんだわな、と思ったが妹にはそのインタビューは教えていない。高校受験の頃から、少女漫画から遠ざかってしまったので、関心も薄れたが、それでも時折一条ご本人の噂は伝わってきた。曰く「酒豪である」「グルメである」「女王様である」などなど・・・
私が十代の頃、よく遊んだ下北沢に時折出没していたらしい。私は見かけたことはないが、マンガ好きの知人がよく噂話を聞かせてくれた。そのせいか、妙に記憶に残っている。とはいえ、作品自体はせいぜい「砂の城」と「有閑倶楽部」ていどしか読んだことはない。息の長い漫画家であることは確かだと思う。
いつも思うのだが、仕事の出来る人ほど良く遊ぶ。仕事も出来て、良く遊ぶ人は、人生を楽しむことを良く知っている。そのことが、仕事そのものに直接あるいは間接的に影響を及ぼすことが多い。
で、このマンガ・エッセーである。酒豪であり、グルメである一条ゆかりの長年のノウハウが散りばめられた、なかなかのものである。読んでいて、思わず台所に立ちたくなる、美味しいノウハウが詰まっている。もっとも女性だけに、ダイエットの話が4割がた占めているのが、ちょっと興ざめ。まあ、これは致し方ないか。
それにしても、マンガによるこのような著述形式は、何時頃から始まったのだろう。手塚治虫が時折、エッセーに近い形で描いていた記憶があるが、本格的に始めたのは小林よしのりかもしれない。エッセー(随筆)というものは、簡単に書けるように思えるが、作者に十分な人生経験がないと、なかなかに楽しめるものではない。いつか、一条ゆかりの書いた小説なり、随筆も読みたいものである。
これからよろしければ時折お邪魔させていただきますのでどうかよろしくお願いいたします。それでは。