先月に破綻した暗号資産(仮想通貨)大手の交換所であったFTXの破綻は、未だその余波が納まらない。
個人のトレーダーは日本に限らず、世界中の投資家たちが仮想通貨に手を引き出している。現行の法制度の下では、暗号資産の破綻は国内法では対処しきれない。回収の術はほとんどないと私は聞いている。
そう遠くないうちに、暗号資産に関する国際的な規制が設けられるのではないかと思うが、完全に安全な金融資産となるのは当分先だと予想している。
私自身は暗号資産に手を出していない。でも密かに期待していたのも事実だ。ただし金融資産としてではなく、為替手段としてである。
元々、私は政府保証の通貨自体、少し危うんでいる。
通貨とは、元をたどれば国家成立以前の交換経済の利便性を図るための手段の一つであった。すなわち原始時代である。当時は貝殻や石を刻んだ円状の石貨、珍しい宝飾品などが使われていた。やがて銀や金で作られた貨幣が通貨の中心となった。
その金貨や銀貨の財産価値を統一し、保証したのが古代国家である。金や銀の含有量により、その財産性が保証されると同時に、一定の価値の平準化が国家により保証されることにより、物々交換から貨幣を為替手段として使うことで、市場の至便性が図られ、経済規模は拡大して国家財政を潤した。
しかし市場が拡大するに従い、貨幣の財産価値を裏付けする金や銀が不足してきた。また貨幣自体の重さも、巨大な市場に見合わぬものとなった。そこから生まれたのが紙幣である。
紙幣が財産であると保証したのは国家である。この国家保証の紙切れが世界中で通用するのは、その時代の覇権国家が裏付けした紙幣だからだ。そして現在の紙幣の中心は、アメリカ政府が保証するドル紙幣である。
もっとも当初、ドル紙幣は金との交換が可能な兌換紙幣であった。しかし、世界経済の拡大は金や銀といった貴重な金属を裏付けされた兌換紙幣の限界を超えた。その結果、アメリカ政府の権威のみを裏付けとした不兌換紙幣が登場して今日に至る。
ただ、この不兌換紙幣という奴は使い方が難しい。さほど信用の低い政府の発行した不兌換紙幣が、安易に大量に印刷されて市場に出回って貨幣価値を下げてしまい、結果ハイパーインフレに陥り破綻したことが幾度も起きている。
不兌換紙幣の大量発行という悪魔の囁きに耐えて、冷静に通貨を保持できる政府はそう多くない。だからこそ、現在、国際的に通用する不兌換紙幣は、アメリカドル、EUのユーロ、そして日本の円の三種類だ。スイスも信用度は高いが、国家規模が小さすぎる。
なお流通が多い中国の元だが、これは経済規模が大きいだけで国家的信用度は低いため、不兌換紙幣としての価値は低いのが実情である。更に云えば、ユーロは旧ワルシャワ機構の東欧諸国が健全な市場経済を育てぬ限り、徐々に衰退止む無しだと思っている。
そしてEU以上に衰退が明らかなであるのは、少子化と高齢化により規模が小さくなる日本の円である。つまるところ、アメリカのドル一強が不兌換紙幣の現在である。
ではアメリカはこの先も覇権国として安泰なのか。ここが怪しいから困る。人口は増大傾向にあるし、軍事的優勢は当分揺るがないが、国内の状況が危うい。また膨大な対外債務(アメリカ国債)の問題も無視できず、ドルが安定資産だとは言い難い。
繰り返すが、不兌換紙幣はその発行する国家の安定度、政治力に大きく依存する。そして歴史が教えてくれるように、永遠なる覇権国は存在しえない。
そうなるとアメリカドルの不安定化は、世界経済の不安定化に他ならない。では、その日が到来したのなら、どうしたら良いのだろうか。世界経済は規模が大きくなり過ぎて、今さら金本位制や銀本位制には戻れない。だが異なる経済圏をつなぐ為替機能に、国際的な通貨はどうしても必要だ。
その一つの解決法が、暗号資産すなわち仮想通貨を使用することだと予測している。ただし、現状の暗号資産はFTXの破綻をみれば分かるように、まだまだ不安定なものである。
誰が、あるいは何が暗号資産の信頼性を担保するのか。ここが定まらぬ限り、安易に手を出すべきものではないと思います。
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