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入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

      ’24年「秋」(11)

2024年08月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


「焼き合わせ」のツタウルシの葉に気の早い秋の色を見付けた。ほとんどがまだ緑色だが、チラホラと赤や黄の色が混じっていた。もう、ここでは夏を惜しむ気はなく、こちらも無意識のうちに少しでも秋の気配を探そうとしている。
 そのうちには落葉松は水揚げを止めて、少しづつ葉の色をその名のように枯らしていく。ススキ穂は穂先を白くし、牧草の色も含めて周囲の色調が緑からアンバー系へと変わっていく。季節が滅びの色合いを強め、濃くする。そうなれば、高い空の下、牛たちは短い自由の暮らしを終えて里へと下りていく。
 まだ秋は始まったばかりだし、長い秋を望んでいるけれど、それだけに時の移ろいに抗えぬことをより意識する季節でもある。

 東の空の色が少しづつ薄れ、日が昇る。今のところ天気はまずまずだが、きょうの予報は曇りだ。
 牛たちはすでに囲いから姿を消して働きに出たようだが、きょうはどのあたりで草を食むのか。昨日も牧柵の点検のため小入笠まで登っていく途中、かなり上部の木陰に彼女らの休んだ跡が草の上に残っていた。
 もっとたくさんの牛がいたころは、そういう跡をいたるところで見かけたが、入牧頭数が減った近年は、牛ではなくすっかり鹿の憩いの場になってしまっている。その上、イノシシの跋扈も大分目立つようになってきて、これについても頭が痛い。
 案じていた電気牧柵は一か所も切れていなかった。電圧に若干の不満を感じたものの、その原因がアルミ線の上に倒れたコナシの太い枯れ枝だと分かり、それをどけたらほぼ正常値に回復した。
 きょうは忙しなる。本日はこの辺で。

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      ’24年「秋」(10))

2024年08月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 台風7号は太平洋上に抜けたようだが、東北沿岸などにまだその影響が残るため警戒が必要なようだ。ここは雨は降ったがそれほどでもなく、雨具を付けずに外の作業ができた。

 牛たちはもう外へ働きに出たようで、囲いの中には1頭の姿もない。群れは結構ばらけ、4,50メートルの距離を保って今2頭が、落葉松やコナシの木が混在する急な斜面に見えてる。
 中間検査の際に入牧した牛たちも、電気牧柵の洗礼を受けたのかどうか分からないが、ざっと見まわった限りではアルミ線の切断個所はなかった。
 
 今朝改めて驚いたのは、マルバタケブキの異常と言ってもいいほどの繁茂だ。どぎつい黄色の花はグロテスクで、鹿すらも食べようとしない。どこへ行っても目の付くその鹿と同様、ますます数を増やして、そのうちにはあの花で第5牧区は埋もれてしまうかも知れない。
 鹿、イノシシ、ネズミ、マルバタケブキ、課題は尽きない。

 きょう、久しぶりに山を下る。前回がいつだったかもう覚えていないが、帰宅しても泊まらずに上に戻るため、家でゆっくり過ごしたことがない。
 ここに寝起きするようになって一番不便に感じているのは入浴で、下にいれば日に2,3回は入るのに、上ではそうはいかない。しかも悪いことに、大分以前から湯が出なくなり、シャワーすら使えない。
 仕方ないから冷たい水で身体を洗い、富士見に食料を買いに行った折に麓の風呂に950円なりを払って入るようにしている。

 自分では若いつもりでいるが、やたら物を落とすし、包装された中身をなかなか取り出せずにすぐ癇癪を起す。物忘れもますますひどくなるようだ。身体は元気だと人にも言われるし、自分でもそう思っているが何しろもうすぐ喜寿、とくればいろいろと不便、不都合は次々と襲ってきてもまったく不思議ではない。
 身体は固く、運動神経も大したことはなかったが、バランスは良い方だと半ば言い聞かせて岩登りに励んだ時代もあった。しかし、これもいけなくなってきている。そろそろ自覚せよと身体のいろいろなところが、呑み込みの悪い者を説得してくれているのだろう。

 いつの間にかセミの鳴く声がしなくなった。今年はあまり赤とんぼも見ない。いつもよりか梅雨の期間は短かったし、ひと夏、気温は30度を越すことなく終わった。
 真っ青な空に白い雲が浮かび、日の光にも鋭さを感じているが、カーテンを揺らす風には秋の序章を感じている。高原にいらっしゃい。

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 本日はこの辺で。明日は沈黙します。


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      ’24年「秋」(9)

2024年08月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日は終戦記念日だった。武道館におけるやんごとなき人々やたくさんの遺族、「各界代表」が集まり、「全国戦没者追悼式」が行われ、その様子を写すテレビニュースを見るともなく見た。
 靖国神社では昇殿参拝したこともあるし、あの大戦にゆかりのある九州や四国の土地を訪ねたこともあり、関係する本もたくさん読んだ。決して関心がないわけではない。それでも、「追悼」と銘打った式典への空疎な思いは今年も長く余韻となって残った。

 雨が降り出した。台風7号の影響だろう。予報によればこの雨はすぐに止むようだが、是非そうなってほしい。あと少しで、第2牧区から第1牧区へ行く作業道の補修作業が一応だが終わる。
 できれば重機を使って路面を削り、しっかり砕石を入れたいところだがそんな大層なことは望むべくもない。ツルハシで岩や石を掘り起こし、一輪車を使って乏しい砕石を運び、惜しみおしみまき散らす程度が精一杯だ。
 以前は、4トン車が伐採した材木を運ぶ際に使った道だと聞いているが、とにかくひどい道で、掘ってもほっても後からあとから大小の岩が出てきて、ついにはツルハシの丈夫な柄にヒビまで入る有様、呆れるしかない。

 これもまた、自己満足のための力仕事で、それで終わる。黙っていれば誰も気付かないままだろう。あの道を通る人は、ごく限られた人でしかない。
 いつか誰かが、この牧場の元管理人は余程の変人らしく、一体何のためにこんなにたくさんの岩や石を掘り起こしたのだろうなんて思う日が来るかも知れない。それでもいい。若干ではあっても、作業道は以前よりか通行しやすくなるはずで、特にきょうのような雨の日はマシになるだろう。

 先ほど、雨の中を帰っていったSさん夫妻に、問われるまま牛の話をした。ここを訪れた人は、放牧しているホルスやジャージーの搾乳についてよく訊かれるが、お二人も同じ疑問を持たれたようだ。
 畜産業の実態、牛の生態など、この業界への理解が一般消費者にはまだまだ足りていないと痛感する。農協、酪農組合、関連する企業などはもっとPR(「宣伝」の意ではない)の努力をするべきだと思う。

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 本日はこの辺で。


 



 
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      ’24年「秋」(8)

2024年08月15日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

   ペルセウス座流星群、8月11日撮影  Photo by かんと氏
 
 もう呟いてもいいと思うが今年の盆休み、「混雑させないキャンプ場」はいつになく混雑しなかった。幾人もの毎年訪れる顔に会うことができず、新しい顔もそれほど見ることがないまま夏が逝き、ここにはすでに本当の秋が来たようだ。午前7時、気温19度、曇り。
 わずかな青空も見えているが、そこを羊雲が埋めている。いつか、黒部の谷で夏の終わりに眺め、とぼとぼと山を下った時に目に触れた空と同じで、太陽の光もその位置をかろうじて教えてはいるが、雲を破るような勢いはない。
 盆には今年も里へは下れなかったが、そろそろ天竜川の川面には秋風が立つ頃だ。

 今週末の土曜日、17日を含めて翌週の20日、火曜日まで予約を断っている。そしてその週末の24日と25日は、8月最後の土日となり、例年のように団体が入る。
 毎年口にするように、盆が過ぎれば信州の夏は終わる。そのころにはここも、文字通りの秋が始まっているだろう。
 東京へは送る必要がなくなってしまったが、それでもキノコを探しにいつもの森には出掛けるつもりだ。採れても、採れなくてもいい。茶色の傘を一つ二つ目にするだけでも満足しよう、それほど食べたいわけではない。

 昨年は、このころには秋の温泉行の話が出ていた。候補地も幾つか上がっていたが、今年はそういう話はない。「大日本湯渡党総裁」を僭称している身が情けなく思うも、あの二人がいなくなってからはどこかの政党のようにすっかり党勢は消沈してしまった。
 寂しい旅になるのを覚悟して一念発起、もう一度あの温泉に行ってみようか。たった1年の間に幽明を異にしてしまった事実を萬身で受け止め、湯に浮かべれば、彼らも喜んでくれるだろう。そうしよう。

 台風はきょうの午後には八丈島に上陸し、さらに勢力を強め北上すると予想されている。ただ、この分だと暴風圏ははわずかに長野県をかすめるも、次第に向きを変えて太平洋に移動していくようだ。これからは台風が来襲するたびに気を揉む季節が続く。
 牛たちはきょうは遠出せず、囲いの中で横になりすっかり落ち着いた様子を見せている。と思って外へ出てみたら、囲いの中にいたのは部屋から見えていたたったの4頭と1匹のキツネだけで、他の牛たちはやはりきょうも勤め人よろしく出掛けていた。ご苦労さん。
「天高く馬肥ゆる秋」、牛も肥ゆるだろう。

 本日のPH、幾つもの鋭く細い光跡が天の川に接近するように流れる。かんとさん入魂の1枚。
 
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 本日はこの辺で。

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      ’24年「秋」(7)

2024年08月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午前7時、朝の涼しいうちに電気牧柵の点検のため、小入笠の頭まで登ることにした。朝飯前である。
 8日の中間検査から4日目、新たに入牧した牛たちも少しは未知の環境に馴化したように思え、また囲い内の草もかなり心細く感じるようになって、そろそろ広い第4牧区へ出たがっている牛たちもいる。
 囲いを開放するには、まずその前に電気牧柵に問題がないかを確認しておかなければならない。前日、頭の最終点における電圧は6千ボルトをわずかながら切っていたから、途中どこかで鹿に切られた可能性も考えられた。

 急登する間に振り返ると、中腹に雲を抱いた穂高や槍が見えた。いつの間にか雪田が消えていて、眺めた山の印象に何か物足りなを感じたが、それでも早ければ3か月もしないうちに山々はまた白い衣を纏うことになる。
 止まれ、下界はまだまだ炎暑の季節、あまりにも先走りが過ぎたと、再び単調な登りを続けながら、別のことを考え始めていた。(8月12日記)

 その別なことが一体どんなことだったか、もう、思い出すことができない。助手役と一緒に、他所の使用してない牧区から多量の支柱を移し替え、新たに第4牧区を区画し直した時の苦労だったか、はたまたすっかり音信の絶えてしまったその助手役のことであったか・・・。
 いや、そういうことも頭をかすめたかも知れないが、これまでにどれほどの回数、この電気牧柵に沿って小入笠の頭まで上り下りしたかと考え、それがいつか終わりの日が来ることを漠然と頭に浮かべていたような気がする。
 一人の人間の取るに足りない人生ではあるが、過ぎ去ったこれまでをいつになく肯定的に考えたりもした。

 昨日の夕暮れ、その日も小入笠の頭まで続く縦線と、横線の交差する結び目で電圧を計ろうとしたら、1頭の小鹿がすぐ近くにいて、こちらをじっと見ていた。目と目があった瞬間、その小鹿は電気牧柵を完全に無視し、まるで見えていないかのように突進し、切った。まさに一瞬のことで、通電の途切れた間であれば衝撃は受けなかった可能性もある。 
 第1牧区では100頭以上の鹿の群れを目撃し、行儀が良くなったと思っていた鹿奴が、目の前で狼藉を働いた。鹿に関しては「いつまで続く泥濘ぞ」、頭が痛い。

 かんとさん、有難う。早速明日使わせていただきます。
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 本日はこの辺で。


 

 
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