入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

      ’24年「冬」(11)

2024年11月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 
 また消えた。きょうは入魂して呟いたのに、そういう日に限ってこういうことが起こる。もう少し何とかならないのか。文字のサイズを変えようとした時だった。
 ワードで呟き、それからコピー、貼り付け? こんな世迷い事、それほどまでの価値はなく、どうでもいいと言いながら、しかし、同じような思いをしている人もいるだろうに。

 午前8時ごろだっただろうか、この独り言も消えたので寝直そうとしていたら、キャンプに来ていた一人が「オヤジさん、今回も風呂をお願いします」だと。もう冬支度を済ませ、煙突も取り外してある。それでもあの露天風呂にはいろいろな訳、意味があり、やむなく再び立ち上げ、本年最後の湯を今沸かしている。たくさんの人に感謝を込めてだ。
 午後には4名が小屋に来る。この人たちも、風呂に入りたいと言うかも知れないが、そうなれば、それなりに対応する。
 
 このように呟くと、ここも初冬のキャンプ地ながら結構賑やかに思われるかも知れないが、そんなことはない。この広いキャンプ場にテントが3張り、それだけだ。
 木枯らし1号と言っていいだろう、初冬の侘しさを、泣くような風の音が裸になった樹々の間を吹き抜けていく。長居を決めていた秋の名残も、こんな風に吹かれては、ついに消えていくしかないだろう。

 若い男女二人が、クマよけの鈴の音を鳴らしながらテイ沢の方へ行く姿があった。できたらそのまま林道を下るのではなく、御所平峠から高座岩を訪れ、それから沢に行ってくれたらいいのだが。
 本日はこの辺で、明日は沈黙します。
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      ’24年「冬」(10)

2024年11月15日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 里に2泊して早朝、霧雨の降る中また上に来た。杖突街道周辺の藤沢谷のみすぼらしかった紅葉がようやく艶やかな色彩に変わり、さらに松倉の集落を過ぎると、樹々の葉が今まさに黄色から赤色に移行しつつあるところだった。
 ブナやケヤキの色付が見ごろを迎えた千軒平(せんげんでぇら)に至る山や谷は絢爛たる色彩に加え、白い靄までが流れ、その見惚れんばかりの幻想的な眺めには言葉や写真では到底及ぶところなく、観念して先を急いだ。

 きょうはこんな雨が降ったり止んだりの天気だから気温は高い。きょう、明日と予約があるため水回りはまだこのままにしておくが、例年であればとっくに終えている。今年は水を流しっぱなしにすることで何とかしのいできた。露天風呂の方はすでに養生を終えている。
 ガスコンロについてはさすが標高1700㍍の高地であるためか、朝のうちは使えない。気温のせいではなく、コンロが原因だと言う人もいるが、よく分からないまま不自由を甘受している。
 
 冬鳥が1羽飛んでいった。その鳥ではないが、鳴き声もしている。あっ、今度は2羽だ。ツグミだろうか。
 改めて見れば、落葉松の落葉が一段と進んだ。きょうも権兵衛山は雲の中だが、樹々の間から山を隠した雲が背景に見えている。シラカバもほぼ丸裸になってしまい、それまで葉の付いていた個所には早くも翌春に控えた小さな芽が出始めた。
 きょうから狩猟が解禁になったはずだが、それにしては山は静かだ。銃声どころか車の音も、人声もしない。そう言えば、鹿の鳴き声も聞こえてこない。
 
 本日をもって、山小屋、キャンプ場の営業案内は終わりとします。なお、ここでの越年を希望される方は、人数に限りがありますのでお早目に連絡ください。
 伊那側からは枯れ木の頭付近で今年も道路工事が始まり、千代田湖からは千軒平経由となります。芝平からオオダオ(芝平峠)までの山道は荒れていて、車による通行には不向きです。本日はこの辺で。
 

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      ’24年「冬」(9)

2024年11月13日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 11月もほぼ半ばまで来たというのに、一時のような寒さは遠のき、今朝6時の気温は3度と、零下までは落ちなかった。例年なら小屋の冬支度もとっくに済ませているが、今年はまだ水道をそのまま使っている。これも温暖化のせいということだろうか。この分では、初雪の到来はまだ先のことになりそうだ。

 ここで暮らす日々も1週間を切った。来週の19日には小屋を閉ざし、キャンプ場の営業も原則来春までは休止となる。
 それでも猟期が始まるから時々は様子を見にこなければならないし、小屋やキャンプの予約を例外的に受け入れることもある。それに、越年は例年通りここで過ごすつもりでいるから、年内は完全には里の暮らしに戻ることはできないだろう。

 今のところ、5か月の冬休みには何の計画も入れていない。せいぜい炬燵の虜囚となって、長く寒い冬を過ごすつもりでいる。
 ただし、近い将来には牧守の仕事を辞めて、山を去る日が来ることは確実である。となれば、今から里の暮らしに慣れるため、この冬はその予習ということにでもすれば良さそうに思うが、具体的にはまだ何も思い付かない。やりたいことも特にない。
 何にしても、背後に終局を控えているから、おちおちとしてはいられない身ながら、あまり切迫感は感じていない。せめて近くにいい茶飲み友達でもいればいいがその当てもないという、正しくないないずくしで金もなく、あるのは暇だけだ。

 日が昇ってきた。小屋の中から見る限り、権兵衛山は雪雲を思わせる雲の中で、青空も見えているとはいえ、全体的には雲の方が多い。
 囲い罠の扉は今朝も不動、落ちていなかった。近くまで群れが来ていることは間違いないし、塩を使って連日誘引しているにもかかわらず、1頭としてあの囲いの中へは入ろうとしない。その徹底した態度には、敵ながら大したものだと思う。言葉を持たない彼ら、彼女らに、どのようなお触れが出ているのか知りたいものだが、きょうあたり、捕獲を諦め罠を閉じようと考えている。

 単独で来ているKさんは、ご来光を見に入笠山へ登るといっていたが、どうしただろうか。
 山小屋&キャンプ場の営業案内は下線部をクリックしてご覧ください。
 本日はこの辺で。




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      ’24年「冬」(8)

2024年11月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

     高座岩より六兵衛山を眺める
  
 幾日も好天が続いた。もしもこれらの日々が、本年の牛守の働きに対する天の労いであるなら、これで充分に報われたという気がする。それほどここの晩秋から初冬にかけての自然はどこへ行っても美しく、感動的だった。
 
 昨日は夕暮れの大沢山に行ってみた。一昨日とその前の日は第1牧区へ、同じころに日没を見に行った。
 今は夕焼けにはならず、太陽が西駒の本峰と前岳の間に没っすると、それまで青く澄み渡っていた空が次第に色をなくし、それに合わせるかのように一切の物音が消え、静寂が深まり遠くまで広がっていく。

 昨夜はトマトピューレを使い、鶏肉やブロッコリー、キノコ、セロリーなどの野菜を煮込んだイタリアンもどきの料理を作った。白ワインしか使わず、スープよりか濃いめにした。
 それで、いつもの日本酒ではなく、久しぶりに赤ワインを温めてビールはチェイサーにして交互に飲んだ。
 半分だけで済ますつもりがいつの間にか1本飲んでしまったが、友人各位がそれを知ったら、「勿体ない」と言うだろう。酒の味、特にワインに関しては絶対音痴とされているからだが、それでも美味かった。結構濃厚な味がし、料理にも合っていたと思う。
 
 少しうたたねをしたかも知れず、何となく外へ出てみて驚いた。なんと、東の空にシリウスを欠いた冬のダイヤモンドが、オリオンを中心にして横たわるような格好で待っていた。その煌めきと輝き、その堂々たる貫禄にしばらく目を見張った。
 気になったのはダイヤモンドの中にひと際目を引く光の点があり、あまり当てにならない「iテスラ」で確認すると木星のようだった。一瞬、望遠鏡を出そうかと思ったが、その考えは同じく一瞬で消えた。
 
 冬の夜空が、季節を先駆けるようにしてその実力を見せるようになった。ここから眺める「無窮の遠(おち)」が、実はどこにも負けない金紗銀紗の星の海であることを幾度呟いてきたことか。しかしそれでも、その美しさを知る人は、多分多くない。(11月10日記)
 
 曇天のきょうは暖かい。この雰囲気もまたいい。
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 本日はこの辺で。


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      ’24年「冬」(7)

2024年11月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 今朝6時53分の気温は零下5度、快晴。この気温である、昨日にも増して野にも山にもすっかり霜が降りている。ついに季節はここまで来たかという思いが強く、ここを去るまでの残された日々を思う。
 もう、大方のことは済ませてある。昨日は小入笠まで登り、電気牧柵の最終作業を済ませた。また、第1牧区へ行く途中の作業道には雨水が流れ下るのを止める丸太、水切りを埋めてあるが、先日のような大雨にも対処できるようにした。
 
 テイ沢と北原新道へも行った。テイ沢では水流を邪魔していた流木を片付け、残置してあった他に流用できそうな丸太2本を持ち帰えり、北原新道ではツルハシを担いでまた高座岩まで登った。
 北原新道に関しては一度にすべてをやろうとはせずに、クマササ刈りも含めて、気が付いた所を少しづつ直していけばいいと考えることにした。
 夕映えの空の下に広がる「仏の谷」、そして遠くに控えた中アの峰々、一日を閉じるのに相応しい胸に沁みる景色を眺めつ、高座岩を後にした。

 権兵衛山の左肩に日が昇ってきた。そういえば、昨日修理した罠はきょうも落ちてない。昨日その点検をしにいったところ、驚いたことに仕掛けの釣り糸が切れていた。
 それこそ「フェザートリガー」と呼ぶほど、糸に触れれば即座に作動して扉が落ちるようにしてある。仮に人がハサミで切断しようとしても、その前に罠は作動するだろう。とにかく、仕掛けの糸は切れていて、それでも罠の扉は落ちていなかった。
 牧場内の行く先々で大きな顔をした雄鹿を目にする。それに対して、打つ手はない。敵もそれを知っているのか、慌てない。
 15日から猟期が始まり、そうなれば罠の使用を控えることになっている。それだけに、複雑な思いを抱えたまま今年も牧を閉じることになるだろう。

 山小屋&キャンプ場の営業案内は下線部をクリックしてご覧ください。
 本日はこの辺で。明日は沈黙します。


 
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