「続 明暗」を読んだ。
奔湍 という 語 が出てくる。
「昼に聞く奔湍の音は、星月夜に聞くほど凄まじいものではなかったが、それでも、津田を改めて驚かせるには充分であった。」
その水音になんだか懐かしさを感じて 私は 自分の記憶の中のどこかに潜むその音を探した。
そうか。
三十年も四十年も昔の夏に
願 というところに泊り
寝付いだ先の止めどない潮騒に心許なかったその夜のことを思い出したのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハイ。創作を試みましたがムズカシイモンデス。
とにかく 奔湍 に導かれたかなんだかで、読了となった。めでたい。
水村氏による 漱石「明暗」 の続編。
そう来るか。そう来るよね。
誰もが漱石代理人となって 読んでいくのかしら。
私はちゃっかりそうなって
「なーんか怖くない。」と啖呵を切ってみる。
星月夜に聞く奔湍の音を もっと お延に見たかった。
そしてもし
「なーんか怖くない。」なぞと言えぬ雰囲気の続編であったからには、
正編読了後
“登場人物のもしやすべての人の中に自分を見てしまった。
と言うことはです、津田小林はもちろん、吉川夫人の中にまでもなのである。
えらいこっちゃ。”
と踊った私は 今回いったいどうなっていたことやら。