↑安中市副市長らが今年2月から4月にかけて乗り回していた車検切れ・保険切れの公用車ニッサン・リーフ(Sタイプ、5人乗り、2WD)電気自動車↑
■読者の皆さんは、車を所有し運転する方も多いかと思います。とりわけ群馬県の場合、公共交通が未発達ですが、道路網は充実しており、車無しでは生活が成り立たないほどです。実際に、2022年3月末時点の群馬県における自家用乗用車保有台数は138万1714台と全国第14位ですが、総人口でみた1人当たりの保有台数は0.696台で、全国第1位です。また、令和2年国勢調査による群馬県における人口に占める運転免許保有者の割合は72.1%で全国第2位です(1位は山梨県)。
このように群馬県民と車とは切っても切れない関係ですが、自分が所有する車を運転する場合、車検切れかどうかは、運転席のフロントガラスに張り付けてある車検証で容易に確認できます。しかし、車検が切れていることを知らずに運転した場合、道路運送車両法違反になります。なぜなら道路運送車両法の第40条によると、自動車の構造が運輸省令で定めた保安基準を満たしていなければ、運行してはならないからです。
ところが、我々一般住民の常識は、役人には通用しないかもしれません。なぜなら、安中市の場合、副市長をはじめ、秘書課職員らが2か月にわたり、車検の切れた公用車を乗り回したにもかかわらず、その責任を全くとっていないからです。安中市の車検切れ公用車の違法運行事件については、当会のブログ記事を参照ください。
○2024年5月17日:車検切れ公用車を乗り回していた安中市幹部が体現する行政ガバナンス欠如無責任体質の証左↓
■当会は、この事件に関して、複数の行政文書開示請求を安中市長宛に提出し、関連情報の開示を受け、内容を精査し、疑問点については、関係先に確認をしたりするなどして、裏付けを取りました。
そして、安中市役所に対し、車検切れ公用車を乗り回していた安中市幹部や職員らはもとより、しかるべき監督責任を有する立場にある市幹部らの処分が適切に行われるよう、安中市役所に申し入れてきました。
しかし、一向に関係者の処分が行われる気配がなく、職員課長に確認したところ、安中市職員の懲戒等に関する指針に照らして、車検切れ公用車の運転は、いわゆる「非違行為」にあたらないとして、何ら処分をするつもりがないことが明らかになりました。当会代表が職員課長に「市長にもきちんと処分について確認したのか」と訊いたところ、「市長も口頭での注意でよいと言った」とのことでした。さすがタゴ51億円事件を起こしてまでも、誰も未だに責任を取っていない稀有な市役所だけあります。
一方、一般住民が車検切れの車を乗り回せば、当然警察沙汰となって、罰則なり罰金、そして免停処分を受けることは必至です。
安中市のHPによれば、「なお、令和6年4月17日、安中警察署に報告いたしました」と公表していることから、警察は市役所の本件被疑者らに対して、何らかの処分、たとえば、免許停止や、道路運送車両法及び自動車損害賠償保障法に基づく罰則や罰金を科すはずです。しかし、これについても、安中市幹部や秘書課職員らは、その後免停はおろか、罰則や罰金を科せられた風情はありません。となると、安中警察署が本件不祥事について、なんら関心を示さずにいることが懸念されます。
■そのため、当会では、しかるべき処分を求めるため、次の2件の告発状を令和6年5月13日付で群馬県警本部長あてに提出しました。
*****5/13県警本部長あて市職員に係る告発*****
告 発 状
令和6年5月13日
群馬県警察本部長 殿
告発人 小川 賢 印
告発人 住 所 群馬県安中市野殿980
氏 名 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
生年月日 昭和27年3月5日
電話番号 090-5302-8312
被告発人 住 所 群馬県安中市安中1−23−13(市役所住所)
氏 名 企画政策部及び運転者
職 業 安中市役所職員及び特別職の公務員(清水副市長)
電話番号 027―382−1111(代表番号)
第1 告発の趣旨
安中市が4月18日に公表し、マスコミ各社にも報道もされた公用車の車検切れ及び自賠責保険切れの事案に関して、道路運送車両法第58条(無車検運転)、自動車損害賠償保障法第5条(無保険運転)などの諸法違反に該当すると思料するので、捜査の上、厳重に処罰されたく、告発する。
第2 告発事実
証拠資料(公文書)の車検切れの車両の運行記録参照。
第3 告発に至る経緯
令和6年4月18日に、安中市は、公用車の車検切れ及び自賠責保険切れの事案を公表し、当該車両が清水昭芳副市長も利用する車両であることを含め、マスコミ各社によって報道され事件を把握し、情報開示請求を行ない、5月8日に開示を受け、公表された事案が事実であり、安中警察署が責務の放棄、任務の違背の結果、犯人の放置に加担する行為を行なっていることを掌握した。
当該車両の運行記録は公文書であり、違反行為の証拠能力を有することは、群馬県警察本部に確認をしており、安中警察署への報告などの記録については、群馬県警察本部より、安中警察署が隠蔽などを行わないように、安中警察署内、安中市役所内において、至急、証拠の押収・確保を希望する。
なお、末筆ではあるが、告発人は、本件に関し、以後捜査に関して全面的な協力をすること、および、捜査機関の指示ないし許可なく決して取下げをしないことを、ここに約束する。
以上
証拠資料
1 運転者を特定できる「公文書」である運行記録を含む情報開示文書(秘書課分)
2 同(資産活用課分)
*****5/13県警本部長あて安中署員に係る告発*****
告 発 状
令和6年5月13日
群馬県警察本部長 殿
告発人 小川 賢 印
告発人 住 所 群馬県安中市野殿980
氏 名 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
生年月日 昭和27年3月5日
電話番号 090-5302-8312
被告発人 住 所 群馬県安中市原市707−2(警察署住所)
氏 名 署長及び交通課
職 業 警察官
電話番号 027―381−0110(代表番号)
第1 告発の趣旨
安中市が4月18日に公表し、マスコミ各社にも報道もされた公用車の車検切れ及び自賠責保険切れの事案に関して、安中警察署は、安中市より4月17日に相談・報告があったにも関わらず、少なくとも情報開示のあった5月8日まで放置していた。これらは、本来、罰則として6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金や免許停止などの行政処分が科せられる道路運送車両法第58条に該当し、免許停止など、車を運転することのできない可能性のある違反者を、安中警察署が積極的に見逃していたという事実を示している。このことは刑事訴訟法、道路交通関連法のみならず、犯人隠避を行ない、さらに特定の人物である公務員らに「便宜供与」を行なったことを意味する。よって、本件は、警察官を辞するべき事件であり、組織的な犯罪行為であるので、司法警察官、法律の関わる職務・権限を鑑み、重大な責務違反と判じるため、厳重に処罰されたく告発する。
第2 告発事実
被告発人である安中警察署及び同交通課は、安中市公表に先立ち、令和6年4月17日に車検切れ及び自賠責保険切れの事案について報告を受けた。
しかし、告発人が安中市より本件にかかる行政文書開示請求に基づく情報開示と説明を受けた同5月8日の段階で、安中警察署からの処分や対応についての連絡がないことを、安中市役所企画政策部秘書課・伊丹課長、中曽根係長からの説明で確認した。
このことにより、公務員としての職権の濫用や、責務の放棄、任務の違背の結果、犯人の放置に加担する行為を繰り返していると思惟できることから、その犯罪性は極めて悪質である。
第3 告発に至る経緯
令和6年4月18日に、安中市は、公用車の車検切れ及び自賠責保険切れの事案を公表し、当該車両が清水昭芳副市長らも利用する車両であることを含め、マスコミ各社によって報道された。このため、本事件を把握した告発人は、安中市情報公開条例に基づき、行政文書開示請求を行なったところ、5月8日に関連情報の開示を受けた。その結果、公表された事案が事実であり、安中警察署が責務の放棄、任務の違背の結果、犯人の放置に加担する行為を行なっていることを掌握した。
当該車両の運行記録は公文書であり、違反行為の証拠能力を有することは、群馬県警察本部に確認をしており、安中警察署への報告などの記録については、群馬県警察本部より、安中警察署が隠蔽などを行わないように、安中警察署内、安中市役所内において、至急、証拠の押収・確保を希望する。
なお、末筆ではあるが、告発人は、本件に関し、以後捜査に関して全面的な協力をすること、および、捜査機関の指示ないし許可なく決して取下げをしないことを、ここに約束する。
以上
証拠資料
1 運転者を特定できる「公文書」である運行記録を含む情報開示文書(秘書課分)
2 同(資産活用課分)
**********
■当会が開示された資料をはじめ、関係当事者の安中市役所の秘書課や職員課など関係部署、ならびに当該公用車を安中市に納入した群馬日産安中高崎西店に確認したところ、今回の公用車の車検切れ乗り回し不祥事件について、以下のことが判明しました。
(1)購入仕様書
(2)自動車検査証
自動車登録番号:高崎300に8786
登録年月日/交付年月日:令和3.2.4
車名:ニッサン
車台番号:ZE1-102091
型式:ZAA-ZE1
原動機の型式:EM57
所有者の氏名:安中市
有効期間の満了する日:令和6.2.3
備考:〔群馬〕新規登録 自動車重量税免税
〔31年度税制〕令和3.2.4新規登録 免税措置済み
次回継続検査時の免税対策車
平成28年度騒音規制車:騒音カテゴリM1A1A
(3)自動車損害賠償責任保険証明書
標識の番号(車台番号):ZE1-102091
保険期間:自 令和3.2.4 至 令和6.2.4
保険料:¥30,170
保険契約者の住所及び氏名:群馬県安中市安中1丁目23-1 安中市
自動車損害賠償責任保険料:収納済 3.2.3 損害保険ジャパン株式会社
(4)当該公用車の調達経緯
令和2年12月15日起案・同日決裁の起案用紙によると、安中市長茂木英子と群馬日産自動車株式会社代表取締役天野慎太郎との間で、「電気自動車(日産リーフ)の特命随意契約による物品購入契約締結」が決まった。
電気自動車(日産リーフ)及び附属設備(以下「電気自動車」という。)の購入については、令和2年12月14日付安財第1733号で決裁し、契約金額3,623,138円(うち消費税及び地方消裁税の額325,409円)で、群馬日産自動車株式会社(前橋市城東町一丁目6番地の8)から、令和3年2月末日納期で、予算科目:2款1項5目2-2(庁舎管理事業)17節(備品購入費)により納品場所・安中市役所とした。
なお、特命随意契約の該当性について、市は「電気自動車の購入については、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第167条の2第1項第2号の規定(その性質又は目的が競争入札に適しないもの。)に該当すると考えられるため、随意契約によることとする」とし、理由について「鼈気自動車は、環境性能に優れ、二酸化炭素の排ガスがなく、騒音等も少ないことから次世代自動車として、期待されている車です。なお、電気自動車は安中市内の事業所が取り扱いできる自動車はなく購入後の車検、点検等のメンテナンス等を考慮した際に、群馬日産自動車株式会社からの購入と考え、特命随意契約といたしたい。また、蓄電池が搭載されていることから、可搬型給電器『パワームーバー』を使用することにより、電気機器に電力を供給することができ、災害発生時における避難所等の電力不足を補うこともできます。なお、可搬型給電器『パワームーバー』は、令和元年危機管理課において無償提供を受けております」とある。
つまり、群馬日産から前年度に可搬式給電器をもらったので、その厚意に応えるべく、安中市は匿名随契で購入した。したがって、価格は群馬日産の言い値であり、極めて不透明な調達となっている。
(5)車検切れ発覚の経緯
令和6年4月17日に秘書課職員が、EV公用車を使おうと起動したところ、全く動かず、パネルに異常を知らせる「販売店に要連絡」の表示が出たので、群馬日産の安中高崎西店に連絡した。同店はただちに積載車を差し向けて、EV公用車を積んで同店併設の整備工場に運び込んだが、車検が切れていることが判明。同店の整備責任者の話によると、「不具合は動力系のリチウム蓄電池ではなく、制御系の通常の鉛蓄電池が放電状態である」ことが判明。充電後、EV公用車の車検と自賠責保険を付保した上で納車した。
↑群馬日産安中高崎西店↑
(6)自動車運行日誌
当該EV公用車の無車検・無保険期間中の運行記録は以下のとおり。
(7)安中署への報告
安中市が今回の不祥事を踏まえて安中署の水野良大・交通課長に報告したとする文書は「R.C.Cシート」というタイトルのA4判1枚の文書。秘書課に「『R.C.C』の意味は何か?」と訊ねたところ、「いわゆる『報・連・相』と呼ばれるビジネス用語で、報告・連絡・相談を英語の「report・communication・consultation」のそれぞれの頭文字で表したもの」だという。
この中で、安中市は、車検通知について「群馬日産高崎西店によると、車検の案内通知は、販売店で購入している場合は発送しているが、法人営業部からの購入の為発送していないと思われる(現在確認中)とのこと」と安中署に報告しているが、当会が直接同店の責任者に確認したところでは「安中市から、車検通知は不要と言われた」と説明された。
安中市は「今後、庁内の調査が終了次第、議会に説明し、公表する」としているが、議会への説明と公表は4月18日に行ったという。
また、配布先として市長のみチェックマークが付けられているだけで、肝心の副市長のところにチェックマークが見当たらない。秘書課の監督責任があり、自分自身、無車検車・無保険車を乗り回していた人物なのだから、イの一番に報告すべきではないか。あるいは、パワハラ体質の副市長に報告した場合の「叱責」を秘書課職員がおそれて報告するのをビビったのかも。
■5月13日に当会が県警本部長あてに、上記のとおり2件の告発状を提出した後、5月下旬に安中署が市役所に来て関係者からヒヤリングしたという情報が当会に寄せられました。このことは秘書課長も認めていました。
そのため、当会の2件の告発のうち、安中署長と交通課を被疑者にした告発状が奏功したのかどうか確認する術はないものの、安中署は当会のもう一つの告発状の趣旨に基づき、捜査をしていることがうかがえました。
そして、8月6日に当会代表の携帯電話に安中署交通課の高橋担当から電話があり「いただいた告発事件について、7月26日付で前橋地検に送致しました」との連絡がありました。
その後、全く動きもなく、3カ月半が経過しようとした11月20日午前9時54分に当会代表の携帯電話に着信があったことを午前11時に知りました。電話番号にこころあたりがないため、さっそく11時6分に折り返し電話をしてみると、前橋地方検察庁であることが分かりました。
すぐにピンときた当会代表は、逸る心を押さえつつ「1時間ほど前に電話をいただいたオンブズマンの小川と申します。農作業中で電話に出られずすいません」と告げました。
すると電話に出たのは、ちょうど電話をした本人の検察官のかたでした。そして、「5月13日付で警察に告発された小川さんですね。安中署から7月26日に送致を受けた安中市役所の車検切れ公用車の件で、間もなく通知を出す予定ですが、封筒は前橋地方検察庁のロゴの入ったもので、宛先は告発状の住所でよろしいでしょうか。また、通知文の宛先は市民オンブズマン群馬代表小川賢さんでよろしいでしょうか」と確認を求められました。
当会代表は「はい、それでかまいません」と答えました。
■これまで、当会では数々の告訴・告発状を警察や検察に提出してきましたが、いずれも突然、忘れたころに、とくに長い連休に入った直後のタイミングに合わせて、いきなり配達記録付き郵便で告発に関する通知文が送られてくることがもっぱらでした。
こうして、事前にわざわざ電話連絡を受けたことは記憶にありません。検察官は電話口で「通知文の発送までに、あと数日程度かかります」とまで親切におっしゃっていただきました。
となると、「もしや、今度こそは・・!!」と期待でワクワクした気持ちがフツフツを湧き出てくる高揚感を禁じ得ません。その一方で、これまで何度も味わった落胆や挫折感も沸き上がってきます。なぜなら、これまで数多く告訴・告発をしてきましたが、検察からいただいたのは不起訴処分通知ばかりだからです。
やはり平常心で、おそくとも今月中には届くであろう前橋地検からの通知を、粛々と待ちたいと存じます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】