■東邦亜鉛が既に自家処理用のサンパイ処分場をいつの間にか作っていたという衝撃の地元説明会からわずか3日後の、平成22年12月21日(火)午後7時から、岩野谷公民館で地元有志による「岩野谷地区産業廃棄物処分場計画についての学習会」が開催されました。
これは、「岩野谷の自然環境を考える会」(仮称)が、すでに廃棄物処分場と中間処理場が1か所ずつ稼働中で、さらに東邦亜鉛のサンパイ処分場がいまにも稼働しようとしている岩野谷地区に、さらに多くのサンパイ処分場計画が目白押しであることから企画された学習会で、当日は当会を含め22名が集まりました。
この学習会は、今年6月7日に、廃棄物最終処分場建設計画が既に3ヵ所で行われている安中市岩野谷地区の地元住民代表ら5人が群馬県庁を訪れ、大沢正明知事あての住民1915人分の計画反対の署名簿を稲山博司副知事に手渡したことから、その後の経緯の報告も兼ねて開催されたものです。
↑
岩野谷地区の廃棄物処分場計画地。このほかにも、水面下で蠢いている計画がたくさんある。↑
■当時、地元住民代表らから請願書を受け取った稲山副知事は「住民の不安は重く受け止める。制度上の制約や限界もあるので、よく検討したい」と述べましたが、当の副知事はその後総務省に戻っており、群馬県知事がどの程度この問題について、地元住民の請願を真面目に検討しているかは非常に疑問です。
その群馬県でごみ最終処分場の設置許可権限を持つ群馬県環境森林部廃棄物政策課(TEL:027-2226-2861 FAX:027-223-7292)のホームページによると、岩野谷地区で現在事前協議中の最終処分場は次の3つです。
**********
事業者名/種類/設置場所/事前協謹書提出日/埋め立てる廃棄物の種類/縦覧場所
①エム・ケイ・エス(株)/管理型/安中市大谷宇長坂1200-1ほか/平成16年2月4日/一般廃棄物:焼却灰、産業廃棄物:燃え殼、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリー卜くず及び陶磁器くず、鉱さい、がれき類、ぱいじん、13号廃棄物/西部環境森林事務所027-323-5530
②昇健(株)/安定型/安中市大谷字長谷津815ほか/平成17年10月5日/産業廃棄物:廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリー卜くず及び陶磁器くず、がれき類/西部環境森林事務所027-323-5530
③(株)環境資源/管理型/安中市大谷字新山1259-2ほか/平成l8年7月7日/一般廃棄物:焼却残さ、不燃性廃棄物、産業廃棄物:燃え殼、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず及び陶磁器くず、鉱さい、ばいじん、がれき類、動植物佳残さ、13号廃棄物/西部環境森林事務所027-323-5530
**********
■上記計画中の3か所のうち、産業・一般廃棄物の双方を扱う1ヵ所は事前協議の最終段階に入っており、隣接の吉井町では、業者が山林の所有者に、処分場の造成で発生した土砂の受け入れを打診しているという情報も入っており、状況は予断を許さない段階にあります。安中市の岡田義弘市長は、住民代表らには「絶対に同意しない」などと言っていますが、二枚舌なので信用できません。
岩野谷地区では現在、廃棄物最終処分場1ヵ所と産業廃棄物の中間処理施設1ヵ所が稼働しており、高崎市と富岡市のそれぞれの一般廃棄物最終処分場(現在は満杯となり閉鎖中)も市境を越えた隣接地に存在しています。
■このような状況になった背景として、岩野谷地区では、平成の初めごろから廃棄物最終処分場の計画があちらこちらで出され、そのうち、住民による粘り強い反対運動にもかかわらず、とうとうサイボウ環境㈱による群馬県で3番目の民営による一般廃棄物の管理型最終処分場が平成19年4月から稼働を許してしまったことが挙げられます。その他にも、大和建設による廃棄物中間処理場が大谷地区の一番奥で稼働しています。
岩野谷地区を構成する岩井、野殿(のどの)、大谷(おおや)の3地区のうち、野殿北部と岩井は東邦亜鉛安中製錬所によるカドミウム公害である重金属土壌汚染が深刻ですが、製錬所から距離のあった大谷と野殿南部は、幸い鉱毒による深刻な被害からは免れた格好になっていました。
■高崎の観音山の背中にひろがる丘陵地帯は、サンパイ業者にとって格好の処分場設置に適した地形となっています。このため、昭和50年代から、大谷に隣接する吉井町上奥平地区に、高崎市の公営最終処分場(現在は満杯になったため閉鎖中)を含め、民営の廃棄物処分場がどんどん建設され、新規設置計画を含めると10か所以上という異常な状態を呈しています。
同じく大谷に隣接する富岡市も、市境のすぐそばに公営の最終処分場(現在は満杯になったため閉鎖中)を設置するなどして、隣接する大谷地区が既に業者によって狙われていたのでした。このあたりの経緯は、当会のブログに詳しく報告してあります。
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/278.html#readmore
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/279.html#readmore
■一方、野殿南部には、137ヘクタールもの広大な里山がほとんど手つかずの状態で残っていましたが、ここに昭和40年代後半に、朝日新聞グループの日刊スポーツがゴルフ場開発をもくろんで、およそ半分程度の山林を買収した段階で、昭和48年に発生したオイルショックにより計画が凍結されました。
その後、再びバブル景気を迎えた昭和63年になり、飛島建設がゴルフ場開発を計画し、地上げ屋として九州の熊本にある再春館製薬の子会社で、九州山口組系の企業舎弟であるジャパンビラインターナショナル㈱が起用され、地元に入り込んできました。
やがてバブル崩壊とともに、飛島建設のゴルフ場計画は頓挫しましたがら、地元有力者に取り入ったジャパンビラの圧力に屈して、日刊スポーツがジャパンビラを地上げ業者に起用して、残りの半分の未買収地の確保を開始しましたが、買収や賃貸を含めて全部の土地の手当てが終わった時は既にバブルがとっくに過ぎており、銀行からの融資が継続して得られなくなったため平成16年に日刊スポーツもゴルフ場計画を断念しました。
■ところが最近、日刊スポーツのゴルフ場予定地にサンパイの最終処分場や中間処理場の計画が浮上しており、日刊スポーツ側も、一説によると3億円で広大な里山を売り飛ばしたいと考えているという情報もあり、いまや関東エリアに残された貴重な里山の自然が風前の灯となっているのです。
岩野谷地区は、東邦亜鉛安中製錬所の公害問題で、東邦亜鉛が地元の反対運動を弱体化させるために、カネをばらまいたため、拝金主義的な体質が育ってしまっていたことは事実です。
前述のように大谷と野殿南部は、東邦亜鉛の鉱毒もなく、岩野谷地区の水源地として、安全な自然に恵まれていましたが、サンパイ業者による長年にわたる地元工作により、既に山林の地権者は日刊スポーツや業者の手に渡ってしまっており、中山間地農業への行政の無理解も手伝って、しかも、違法だらけの手続きを行政が黙認して完成したサイボウ環境の最終処分場が、絶好の見本となっており、今や全国規模でサンパイ業者の注目を集めている始末です。
■12月21日に開催された住民による学習会では、当会から、サイボウの最終処分場の17年間にわたる反対運動の経緯と、違法手続の実態について詳細に報告をしました。
当会からの報告の趣旨は、「岩野谷に1か所でもごみ処分場を作られたら、もう歯止めが利かなくなるという危機感をもって、群馬県や安中市行政を相手取りサイボウの最終処分場設置手続の違法性に関して10数件もの住民訴訟を提起したが、全て敗訴したこと」や、「既に物故した住民の署名や押印をした申請書をサイボウが行政に提出したことについて、再三、警察に告発状を提出したがなかなか受理されず、ようやく受理されて警察が捜査したが、請負業者に罪をかぶせて、結局サイボウを見逃したこと」、さらには、「住民が証拠書類の入手のために、30年前に亡くなった父親が押印したという県道からごみ処分場までの私道取り付けのための交差点協議の境界確定にかかる同意書の個人情報開示を群馬県に申請したところ、なんと、群馬県と群馬県警が相談して、犯罪捜査にかかわる文書だとして非開示にし、住民の告発に対しても既に捜査済みだとして受理を拒否したこと」など、巨額の利権が絡む最終処分場問題の根深さについて説明しました。
最後に、当会は、「かつて平成3年にサイボウの計画を知ってから、計画を阻止するために、地元で運動を展開し、立て看板の設置、学習会、署名活動、陳情、請願、新聞折り込みによるチラシの配布、住民訴訟など、ありとあらゆる方法でサイボウの最終処分場の設置を食い止めようとしたが、平成19年4月に稼働してしまった。今後はそれ以上の努力が必要になり、サンパイ業者と関係の深い知事や市長が現在就任してしまっているため、現在は非常に危険な状態にあり、彼らが住民を安心させるような言動をしても、決して信用せずに、徹底的に疑ってかかり、断固たる決意を持って住民運動を粘り強く展開してゆく覚悟が必要である」と締めくくりました。
■今後、サンパイ処分場計画に反対する群馬県西部の他のたくさんの地区のように、道路際に「ごみ処分場絶対反対」の立て看板を設置してゆく方針等が確認されましたが、当会にとって気になったのは、参加者の中に「ごみ処分場は1か所くらいは必要だが、こんなに沢山は要らない」という意見が見受けられたことでした。
↑
学習会の配布資料。他地区ではこのように住民の反対意思をきちんと表明する看板が至る所に掲げてあるが、岩野谷地区では、サイボウのゴミ処分場反対の看板が3か所にあるだけ。↑
これは政治家や行政の担当者がよく使う言葉で、「産業活動のためには、どうしても最終処分場が必要だ」という論理ですが、吉井町の上奥平地区を見ればわかるように、1か所でも設置されると、その時点では、その数倍もの設置計画がその裏で進行しており、食い止めるのが手遅れになるという実態です。
■東邦亜鉛が最新鋭の電解工場と自家用の巨大なサンパイ処分場を既に完成させて増産体制を固めた一方、重金属土壌汚染させた周辺の農地や住宅地を放置し、更にその上に造船による重金属の降下ばいじんを降り積もらせようと、いわば地区全体をサンパイ処分場としている現状を見るにつけ、岩野谷地区の住民にとって、試練の時が来ていることを痛感させられます。
【ひらく会事務局】
※参考資料
【群馬県産業廃棄物情報として群馬県のホームページに掲載中の情報】
群馬県環境森林部廃棄物政策課
TEL:027-2226-2861 FAX:027-223-7292
<産業廃棄物,環境に関ずる各種資料>
■設置計画を縦覧中の最終処分場及び焼却施設
1-1 事前協議書を縦覧中の最終処分場
(事前協議書は環境森林事務所又は環境事務所で閲覧できます)
事業者名/種類/設置場所/事前協謹書提出日/埋め立てる廃棄物の種類/縦覧場所
①エム・ケイ・エス(株)/管理型/安中市大谷宇長坂1200-1ほか/平成16年2月4日/一般廃棄物:焼却灰、産業廃棄物:燃え殼、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリー卜くず及び陶磁器くず、鉱さい、がれき類、ぱいじん、13号廃棄物/西部環境森林事務所027-323-5530
②昇健(株)/安定型/安中市大谷字長谷津815ほか/平成17年10月5日/産業廃棄物:廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリー卜くず及び陶磁器くず、がれき類/西部環境森林事務所027-323-5530
③(株)環境資源/管理型/安中市大谷字新山1259-2ほか/平成l8年7月7日/一般廃棄物:焼却残さ、不燃性廃棄物、産業廃棄物:燃え殼、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず及び陶磁器くず、鉱さい、ばいじん、がれき類、動植物佳残さ、13号廃棄物/西部環境森林事務所027-323-5530
④新米産業(株)/安定型/吾妻郡嬬恋村大字芦生田字山腰782番ほか/平成18年5月8日/産業廃棄物:廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類/吾妻環境森林事務所0279-75-4611
⑤エコクリーンサービス(株)/安定型/草津町大字草津字前原1025-1ほか/平成19年5月18日/産業廃棄物:廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類/吾妻環境森林事務所0279-75-4611
⑥シオサイト(株)/安定型/草津町大字草津字白根464番134ほか/平成19年11月19日/産業廃棄物:廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類/吾妻環境森林事務所0279-75-4611