↑安中市による破壊検査の結果集計表。全ての結果が「不可」となっている。鉄筋の径は規格よりも遥かに細く、バラツキがある上に縦方向の鉄筋は異型でなく単なる丸棒(出所:安中市)↑
■群馬県内の道路インフラの安全性の信頼を大きく損ねた磯貝建材による群馬県型側溝(GPU)の製品偽装問題は、その後も引き続きメディアが報じており、その衝撃は止みそうにありません。
**********朝日新聞デジタル2024年6月11日10:45
磯貝建材、自己破産申請へ 偽装側溝問題
群馬県発注の道路工事で規格を偽装したコンクリート側溝が見つかった問題で、偽装側溝を製造した磯貝建材(群馬県安中市)が事業停止し、自己破産申請の準備に入ったことがわかった。信用調査会社の帝国データバンク群馬支店によると、負債総額は少なくとも2億円を超える見込み。
同支店によると、磯貝建材は1937年創業。公共土木工事に使われるU字溝などのメーカーとして、2021年7月期には年売上高約8億4700万円を計上していた。
だが昨年9月、県は同社の偽装側溝が県発注工事に使われていたことを公表した。2月に甘楽町の林道整備工事で品質が劣ると見られるコンクリート側溝が見つかり、調査の結果、中に入っている鉄筋が県の定めた規格と比べて細く、本数も少ないことが確認された。
同社は問題発覚前にM&A(合併・買収)で経営陣が創業家から代わっており、偽装を始めた時期や理由について「3月の社長交代以前のことは分からない」と説明したとされる。
偽装公表後、売り上げは激減。安中市発注工事でも偽装側溝が使われていたことが発覚するなど、先行きの見通しが立たないことから事業の継続を断念したという。(杉浦達朗)
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この問題は、原因(真相)究明と責任の所在の明確化、そして再発防止策が重要ですが、道路インフラの安全性を担保するためには、規格通りの側溝に交換することが必要です。そのための費用は、責任の所在を明らかにすることで、当然原因者である製造者の磯貝建材が負担しなければならないはずです。また、検査を省略して不正の温床を助長させた群馬県にも責任の一端が問われるべきです。
しかし、群馬県は未だに真相解明や責任の所在の明確化に二の足を踏んでおり、当会の情報開示請求にも極めて消極的です。そうした中、安中市が独自で非破壊検査と破壊検査を実施しました。これらは既に群馬県が実施していますが、なぜか、情報共有がなされていないようです。そのため、当会は、これ等の検査にかかる費用を安中市が負担するのではなく、群馬県が負担すべきであと考え、4月16日付で住民監査請求を行ない、6月6日付で監査結果通知が交付され、6月8日に配達記録付き郵便で届けられました。この経緯は、以下のブログ記事を参照ください。
○2024年6月10日:【磯貝不正側溝】県とは別に独自に非破壊・破壊検査を自前で実施した安中市に住民監査請求した結果、なんと「却下」↓
ところが、このタイミングで、上記のとおり、磯貝建材が自己破産申請手続きを開始する準備を進めているとメディアが報じたのです。
このままだと、側溝の取り換えに必要な費用が原因者から回収できなくなります。せめて、安中市が実施した非破壊検査・破壊検査の費用は、事前に群馬県からの検査結果の情報を得ていれば、余計な支出をせずに済んだわけで、本当に必要だったのかどうかを問うため、当会は住民監査請求をしたわけです。
ところが、安中市監査委員は、「棄却」ではなく、あっさりと「却下」の判断を下して、当会の住民監査請求を切り捨ててしまいました。
■安中市監査委員2名のうち、田島龍一氏は、市内で公認会計士・税理士事務所を営んでいますが、その経歴たるや、目を見張るものがあります。
ネット情報等によると、同氏は、安中市2丁目にある田島屋本店を実家にもち(事務所も同じ住所)、公認会計士・税理士の両方の国家資格を持ち、関東信越税理士会や安中ロータリークラブの会員です。新島学園から同志社大学経済学部に進み、在学中、1973年米国ホイットマン大学への留学を経て、同志社大を1974年に卒業後、1977年に監査法人サンワ東京丸の内事務所(現・有限責任監査法人トーマツ)へ入所し、6年間会計監査業務を担当、1982年に公認会計士登録を果たし、1983年、国際税務コンサルティング部に移り、国際税務・組織再編税務等に従事しました。1990年、勝島敏明税理士事務所(その後、税理士法人トーマツを経て、現・デロイト・トーマツ税理士法人)開設とともに転籍し、組織再編チームの長として海外から日本へ、及び日本から海外へのM&A税務デューデリジェンスや日本国内での合併・分割等の組織再編税務相談業務に従事し、税理士法人トーマツの代表社員を歴任しました。2008年に、実家に戻り、公認会計士・税理士田島龍一事務所を群馬県安中市に開設し、現在に至っています。
もう一人の監査委員である高橋由信氏は、安中市議会議員で、現在8期目のベテランです。
そのプロフィールを拝見すると、同氏は1956年、安中市岩井に生まれ、1975年、県立安中高等学校を卒業し、1953年に安中手話サークル設立とともに手話通訳及び指導を開始しました。1955年に安中市青年団連合会会長、第9回群馬県洋上大学への参加を経て、1988年に仲間と共に地域づくり団体「未来塾」を創立しました。1991年に安中市議会議員に初当選を果たし、2010年には安中市長選挙に立候補し次点となりました。その後再び市議に返り咲き、2022年に安中市議会副議長、2023年4月の安中市議会議員選挙で8期目の当選を果たして、現在、安中市監査委員、高崎安中消防組合監査委員、総務文教常任委員会委員として活動しています。この間、ボランティア歴47年の経験から、群馬県地域づくり協議会理事、地域づくり団体「未来塾」運営委員、安中聴覚障害者協会相談役、安中手話サークル役員手話検定2級取得の資格を有しています。
このように、市議会から選任された高橋由信氏の監査委員としての資質や実績はともかく、税理士と公認会計士としての田島龍一氏の赫々たる経歴は、まさに監査委員の職能にふさわしいと言えるでしょう。
なぜなら、税理士は税のスペシャリストとして、納税者に代わって確定申告や相続税申告を作成する「税務書類の作成」や税務調査の立ち合いを行う「税務代理」、様々な税金についての相談に回答する「税務相談」が主な業務として挙げられますが、「公平な税負担により、住みやすい豊かな暮らしを守ること」が税理士の社会的使命であるからです。
また、公認会計士は、会計の専門家として、各国の制度によって業務の範囲と比重は異なるものの、共通して会計監査(財務諸表監査)を独占業務としています。主な業務には、財務情報が適正に表示されているかどうかについて、独立した立場から意見を表明する財務諸表監査が挙げられます。これは、上場会社などの社会的に影響力の大きい会社に義務付けられており、虚偽の財務情報によって投資者や債権者などの利害関係者が損害を被ることを防ぐための重要な役割を担っています。これは、行政に義務付けられた監査を、市民の目線で行う監査委員としての役割に合致するものです。
■そのため、当会では、今回の磯貝建材製の不正側溝にかかる実態調査として、非破壊検査と破壊検査を安中市が独自に支出したのは、果たして適切であったのかどうか、国際税会計コンサルティング業務に精通した田島龍一・監査委員であれば、しっかりと調査し、判断していただけるに違いないと期待していたのも事実です。
だからこそ、たまたま、監査委員事務局で、5月の定例監査のため、出席した田島委員と高橋委員と話す機会があったので、非公式ながら口頭で、この住民監査請求の重要性を熱っぽく説いたのでした。
■しかし、誠に残念ながら、当会の住民監査請求は、門前払い同然の「却下」という結果に終わりました。そこで、今回の住民監査に関して、監査委員はどの程度のレベルの労力を費やして、監査業務を実施したのか、検証する必要性を感じ、6月10日に次の開示請求書を安中市監査委員あてに提出しました。
*****6/10安中市行政文書開示請求書*****
令和6年6月10日
行政文書開示請求書
安中市監査委員 田島龍一様・高橋由信様
郵便番号 379-0114
住 所 安中市野殿980
氏 名 小川 賢
電話番号 090-5302-8312
安中市情報公開条例第6条第1項の規定により、次のとおり行政文書の開示を請求します。
<開示を請求する行政文書の内容又は件名>
令和6年6月6日付安監委発第66001号「安中市職員措置請求書について(通知)」に関する次の情報。
①4月16日の請求書提出以降、現在に至るまで、監査委員2名がそれぞれ本件の監査に割いた時間
②本件の監査の過程で、ヒヤリングや聴取をした関係先(請求人のほか、副市長ら市幹部、契約検査係など関係市長部局関係者、群馬県県土整備部など知事部局関係者、市顧問弁護士など)
③本件の監査の過程で、請求人が提出した資料以外に、関係先から収集し、監査の判断に用いた文書があれば、それらの内訳(聴き取りメモも含む)
④地方自治法第242条第7項及び第8項に定める請求人の証拠の提出及び陳述と市長その他の執行機関又は職員(関係職員等)の陳述や同席について、どのように判断したのか、また、その根拠
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当会では、この開示請求により、監査委員がどの程度、真剣にこの住民監査請求に取り組んだのかどうか検証したうえで、住民訴訟に踏み切るかどうか、検討する所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※関連情報
**********JC-NET 2024年6月12日
磯貝建材(株)(群馬)/自己破産へ コンクリ二次製品鉄筋偽装 倒産要約版
群馬に拠点をおく、磯貝建材(株)が自己破産の準備に入ったことが判明した。負債総額は約2億円。
以下要約。
【倒産要約版 JC-NET版】
1 破綻企業名 磯貝建材(株)
2 本社地 群馬県安中市簗瀬620-1
3 代表 長谷川裕貢
4 設立 1937年4月.(昭和12年/業暦:87年)
5 資本金 1000万円
6 事業 コンクリ二次製品製造販売
U字溝、歩道用ブロック、側溝蓋など
7 売上高 2021年7月期、約8.5億円
2023年7月期、約4億円
8 破綻 2024年5月31日.
事業停止/自己破産申請の準備中
9 委託弁護士 伊藤博昭弁護士(TH総合法律事務所)
電話:03-6911-2500
10 裁判所 未定
11 負債額 約2億円
12 破綻事由 同社はコンクリ二次製品メーカー。U字溝、歩道用ブロック、側溝、側溝蓋など製造していた。2023年3月に現代表が創業家から買収、しかし、同年に群馬県発注工事の側溝で県の指定以外の鉄筋が使用されていることが発覚、同年9月に県が40ヶ所で鉄筋の大きさなどに偽装があっとして公表し、同社の信用は失墜、受注は激減し、先行きの見通しも立たないことから、今回の事態に至った。追、買収前から鉄筋偽装が常態化していたようだ。
[2024年6月12日]
**********日経クロステック2024年05月21日
鉄筋偽装の側溝が40カ所判明、群馬県に続き安中市の発注工事でも
群馬県安中市の建材メーカー、磯貝建材が鉄筋の太さなどを偽装したコンクリート製側溝を出荷していた問題で、市発注工事の40カ所で偽装製品が使われていたことが分かった。市が2024年5月10日に明らかにした。
↑安中市による破壊検査で、鉄筋の径が規格を満たしていないと判明した側溝(写真:安中市)↑
磯貝建材の製品を巡っては群馬県が23年9月、県発注工事で偽装側溝が使われていたと発表している。群馬県型落蓋式側溝(GPU)として県の承認を受けていた同社製品が、規格を満たしていないと判明した。この発表を受け、安中市も市発注工事で偽装製品の使用について調査した。
市が工事関係資料を残している過去5年間に施工した磯貝建材の側溝の延長は約3.1kmに上る。全ての工事区間を網羅するよう各区間から1~3カ所を抽出して非破壊検査を実施。計99カ所の検査箇所のうち、35カ所で鉄筋の径が規格を満たさないことが分かった。
非破壊検査で判別できなかった偽装を見抜くため、市は残り64カ所から5カ所を選んで破壊検査を実施。その結果、5カ所全てで規格を満たさない鉄筋が見つかった。直径が規格では6.35mmのところ4mmしかなかった鉄筋を20本、4mmのところ3.2mmだった鉄筋を11本確認した。市は全ての箇所で偽装製品が使われている可能性が高いと見ている。
↑安中市が5カ所で実施した破壊検査の結果(出所:安中市)↑
(青野昌行)
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