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3月17日午後2時半から高専機構を相手取った第一次訴訟控訴審が開かれた東京高裁のある裁判所合同ビル。同日午後2時撮影。↑
■国立高専校長の選考実態、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用、長野高専連続自殺の発生年月日などなど、高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報は枚挙にいとまがありません。そうした悪質な不開示処分の取消しを求め高専機構を提訴した第一次訴訟では、卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えてようやく結審し、2020年11月24日に森英明裁判長らにより判決が下されました。
しかしそれは、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通しし、ごくわずかの勝訴部分を除いて当会の全面敗訴というあからさまな不当判決でした。「こんな滅茶苦茶な判決を許してはいけない」という憤りとエールの声が次々に高専関係者らから寄せられたこともあり、当会では2020年12月8日に第一次訴訟の不当判決に抗うべく控訴を行い、追って本年(2021年)1月27日に控訴理由書を提出しました。そして、高裁での口頭弁論期日が3月17日に設定されました。
○2020年11月25日:
【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:
【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年1月31日:
【高専過剰不開示体質是正訴訟】第一次訴訟控訴審の弁論日が3/17に決定&控訴人当会が控訴理由書提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3274.html
■そのまま高専機構側からの控訴答弁書を待っていると、口頭弁論期日の約1週間前となる3月9日の午後4時過ぎ、銀座の田中・木村法律事務所による同日付けの控訴答弁書が当会事務局にFAXで送られてきました。
第一次訴訟控訴審の被控訴人となった高専機構による控訴答弁書の内容は以下のとおりです。
●第一次訴訟控訴審・控訴答弁書 ZIP ⇒ 20210309til.zip
*****送付書兼受領書*****
2021年3月9日 16時08分 田中・木村法律事務所 No.7886 P.1
準備書面等の送付書
令和3年3月9日
下記のとおり書類をご送付いたします。
受領書欄に記名・押印のうえ,この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。
●送付先:
東京高等裁判所第17民事部 ニ係 御中
FAX 03-3592-0942
控訴人 市民オンブズマン群馬 御中
FAX 027-224-6624
●発信者:
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
被控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559
●事件番号:令和2年(行コ)第251号
●当事者名:
控訴人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
●次回期日:令和3年3月17日(水)午後2時30分
●文書名:答弁書
●送信枚数:9枚
●相手方への送信の有無:有
=====受領書=====
受 領 書
東京高等裁判所第17民事部 ニ係 御中 (FAX:03-3592-0942)
被控訴人代理人 弁護士 木村美隆 宛 (FAX:03-3572-4559)
上記書類を受領しました。
令和 年 月 日
控訴人
通信欄:本FAXを正式書面として受領ください。
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*****答弁書*****
令和2年(行コ)第251号
控訴人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構
答 弁 書
令和3年3月9日
東京高等裁判所第17民事部ニ係 御中
(送達場所)
〒104―0061
東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
田中・木村法律事務所
電話 03(3573)7041番
FAX 03(3572)4559番
被控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
記
控訴の趣旨に対する答弁
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
との判決を求める。
控訴の理由に対する反論
1 原判決別紙1項について
(1)控訴人は,原判決の別紙1項(控訴状別紙1項)について,甲第47号証の再開示で開示された一覧表の「学校名」等の項目名により,この一覧表が高専や大学を含む教育機関からの推薦(控訴人の言う細目番号②)に関するものであることや,その他研究機関の推薦(同じく細目番号①)に関するものであることが極めて強く推知できる,とする。そして,それぞれの一覧表に付されたNoから推薦機関ごとの推薦者数が推測され,これと高専校長に就任した者の前職(甲48)を比較すれば,甲第47号証のうち区分に係る推薦機関の種別が推知可能であるため,各文書が取り扱う大まかな推薦機関の種別は,人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人車の確保に支障を及ぼすおそれ(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という)5条4項ヘ)のある情報にあたらない,と主張する。
また,甲第47号証の一覧表のうち,実際に校長に就任した者に係る記載情報について,もともと公開されている情報を開示しても,人事管理に支障が生じるおそれはなく,他の候補者に係る情報が明らかとなるわけではないとして,法5条4号ヘに該当するとの原判決の判断は誤りであると主張する。
(2)控訴人の言う,「推薦機関の種別」は,甲第47号証の一覧表のうち,上部の「(年度)付国立高等専門学校長推薦者一覧」の標題に続く不開示部分を指すと解する。
高専の校長の前職は高等専門学校や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所といったように複数あり(甲48),これらの出身者が甲第47号証の一覧表のどこに掲載されているかは明らかになっていない。控訴人は,甲47号証の項目にある「学校名」,「推薦機関名」の表示と実際に校長に就任した者の前職から,上記の「推薦機関の種別」を強く推認することができるとする。しかし,たとえば甲第48号証記載の各人が,甲第47号証の一覧表のどのNoの箇所に記載されているかはもちろん,控訴人の言う細目No①と②のどちらの表に記載されているかも,具体的に特定することはできないのであり,同号証の現在の開示内容が,人事管理に支障を及ぼすおそれがないものとなっているとは言えない。
かえって, 上記「推薦機関の種別」を開示すると,控訴人が控訴理由書で指摘したように,候補者の人数(甲第47号証のNo)と実際に校長に就任した者の人数との比較により,ある程度の精度で推薦機関ごとの校長採用の割合を推測することが可能となる。これにより,推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあることは,原判決 (19頁)の指摘するとおりである。
したがって,上記「推薦機関の種別」を開示しても,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれはなく,5条4号ヘの不開示事由に当たらないとの控訴人の主張は,失当である。
(3)また,甲第48号証のうち,実際に校長に就任した者の情報を開示した場合には,甲第48号証に記載された情報が,単なる項目名に止まらず具体的にどの程度のものなのかが明らかとなり,被控訴人における校長の選考においてどのような項目が重視されるかを推測することが可能となって,校長の選考に関する自由な議論が阻害されるおそれがある。さらに,校長に就任した者の項目を開示することにより,甲第48号証の一覧表がどのような分類(控訴人のいう,大まかな「推薦機関の種別」)によるものか,より具体的に推測することが可能となる。この「推薦機関の種別」が明らかになることにより,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じることは,前記(2)と同様である。
このように,甲第47号証の一覧表のうち,校長に就任した者についてのみ各項目の記載事項を開示したとしても,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあるのであり,校長に就任した者の各記載事項は法5条4号ヘに該当しないとの控訴人の主張もまた,失当である。
2 原判決別紙2項について
(1)控訴人は,原判決別紙2項の不開示部分について,該当する辞職顔が「西尾典眞」元校長のものと特定されているにもかかわらず,辞職理由が法5条1号の「個人職別情報」に該当すると判断した原判決を論難する。
(2)しかし,控訴人が指摘する原判決の「個人識別情報」(原判決21頁,2項(1)下から2行目)との記載は,不開示部分の記載から記載対象の個人を特定できることのみを意味しているわけではなく,当該情報の関示が特定人に関する情報を開示することになる,ということを当然の前提としている。
辞職願の作成者の氏名と,記載された辞職理由はそれぞれ別個の個人識別情報であり,作成者の氏名が明らかになっているからといって,別の個人識別情報である辞職理由が開示されなければならないわけではないことは,自明である。
原判決が,辞職理由について,個人に関する情報であって個人を識別できる情報(法5条1号)に該当するとし,辞職は単に職を辞する行為にすぎず職務の遂行(法5条1号ただし書ハ)にあたらないと判断したことは,極めて当然である。
(3)また控訴人は,被控訴人が甲第9号証により西尾氏の退職理由は公開されている旨指摘するが,同号証は控訴人が群馬工業高等専門学校を訪問した際の面談記録であり,このやりとりをもって被控訴人が西尾氏の辞職理由を公開したことにはならない。さらに,原判決(21頁)が指摘するように不開示部分は20字強の記載があり,甲第4号証の不開示部分の記載が「交流元への復帰」(甲9,10頁)といったものに止まらないことは,その体裁上明らかである。このことからしても,甲第9号証の記載をもって,西尾氏の退職届けの記載が公開されているということはできない。
原判決別紙2項の開示請求に関する控訴人の主張に理由がないことは,明らかである。
3 原判決別紙3項について
(1)控訴人は,原判決別紙3項の不開示部分について,氏名の部分を除いた所属や職名のみを開示することで,内部の者に個人が特定できるとしても,内部の者にとって人事異動は既知の情報であり,職名等のみでは外部の者は個人を特定することはできないため,所属や職名は不開示情報には該当しない,と主張する。
また,技術補佐員については,採用,昇進,異動等の情報が群馬高専のHPで事実上公表されており,群馬高専において,技術補佐員を含む技術職員の所属は群馬高専の教育研究支援センターに一元化され,同センターの所属が採用や退職と直結しているとして,技術補佐員の人事に関する情報は法5条1号ただし書イに該当する,と主張する。
(2)まず,甲第5号証のうち,氏名を除く所属や職名等(原判決別紙3項(1)の項目)は群馬高専の補助職員に関する記載であり,補助職員は群馬高専の各学科に1名ないし若干名しかいないため,退職や異動等に関する所属や職名を明らかにすることにより,群馬高専内や群馬高専と関係のある者について,当該記載の対象となる個人を特定することが容易に可能となる。
控訴人は,職名等のみでは外部の者は個人を特定することができないと指摘するが,控訴人のいう内部の者,外部の者の区別は不明確である。群馬高専の職員会議等において異動,退職を告知された者や,群馬高専の学生を内部の者と解するとしても,それ以外に群馬高専の取引関係者や補助職員の知人等不特定多数の者が,退職や異動等に関する欄に記載された所属や職名の記載のみによって,記載対象である個人を特定することが可能である。
このように,控訴人の言う(と解される)外部の者であっても,不特定多数が個人を識別することが可能となる以上,氏名を除く所属や職名のみの記載も個人識別情報に該当することは明らかである。原判決(22頁)も,「職名」に異動等の時期を併せることで群馬高専と関係のある者において当該情報に係る個人を特定することが可能になると考えられるから,「職名」は法5条1号本文の個人識別情報に該当すると判断しているが,至極当然である。
なお控訴人は,個人識別情報該当性を判断するにあたり,照合することができる「他の情報」(法5条1号本文)について,一般に入手可能なものに限定される旨主張する。しかし,情報公開や法人文書開示請求を行う請求者が「何人も」として限定されていないことから,上記「他の情報」は,一般に容易に入手可能なものだけでなく,当該個人の近親者や地域住民が保有するか入手可能であると通常考えられる情報も含むと解されており(総務省HP,「総務省情報公開審査基準」),この点に関する控訴人の指摘にも,理由がない。
(3)また,群馬高専に所属する技術補佐員の多く(すべてではない)が,同高専の教育研究支援センターに所属することになっていることは控訴人の指摘するとおりであるが,同センターの所属が技術補佐員の採用や退職と直結しているとの控訴人の指摘が,法5条1号ただし書イに該当するという主張とどう関係するのか不明である。しかし,同センターにおいて技術補佐員の氏名や異動情報をホームページ等で公開している事実はなく,技術補佐員の異動が法令の規定ないし慣行として公にされた情報であるとの控訴人の指摘は当たらない。
さらに控訴人は,技術補佐員の採用,昇進異動等の情報が群馬高専のHPで事実上公表されていると主張する。これは,年度に応じて群馬高専のHPのうち教育研究支援センターの年報の記事に一部の技術補佐員の氏名が記載されているものがあることを指していると解される(上記教育研究支援センターの所属に関する主張も同様と解される)が,これにより判明するのは当該年度に氏名が記載された技術補佐員(全員ではない)が群馬高専に所属しているということのみであり,これをもって技術補佐員の採用や異動が公表されている,ないし公表される慣行があるなどと言えないことは明らかである。原判決(23から24頁)も,職員が当該部署に在籍するようになったり,在籍しなくなったりしたことが確認できるのみであり,異動,退職の具体的な内容が明らかになるわけではないから,群馬高専において(技術補佐員の)異動,退職等の人事情報を公表する慣行が存在するとは言えない,と判示しており,極めて当然である。
以上のとおり,原判決別紙3項に関する控訴人の主張にもまた,何ら理由はない。
4 原判決別紙4項について
(1)控訴人は,原判決別紙4項の不開示部分について,控訴人が開示を求めている弁護士費用(甲第6号証のうち「合計金額」,「支払金額」)は,開示請求(甲1)の時点で判決が確定している事件に関するものであり,他の弁護士等が容喙して競争上の利益を害する余地はなく,また原告が開示を求めている甲第6号証のうち,「合計金額」,「支払金額」を開示しても弁護士費用の内訳は明らかにならないとして,少なくともこれら「合計金額」,「支払金額」は開示すべきであると主張する。
(2)しかし,支払決議書(甲6)に記載された弁護士費用が,既に判決が確定した事件に関するものであるとしても,本件がまさにそうであるように,被控訴人が支払決議書の対象となる事件と同種の事件について訴訟代理人を選任して対応を依頼することは充分に見込まれるのであるから,支払決議書の対象事件が終了していることと,弁護土費用の開示が当該弁護士の競争上の利益を害するかどうかはまったく別の問題である。
また,支払決議書(甲6)には,被控訴人が支払った弁護士費用や訴訟に関連する実費,弁護士費用に関する源泉徴収の項目しか記載されておらず,支払決議書のうち,「合計金額」,「支払金額」のみを明らかにした場合でも,被控訴人が訴訟代理人に支払った弁護士費用の額を容易に推測することが可能となる。
原判決(26頁)が,弁護士費用にかかる情報は,事業を営む個人である木村弁護士の弁護士事業に関する情報に該当し,「合計金額」,「支払金額」もこれを開示することにより弁護士費用の額が明らかになるとして,法5条2号イの不開示情報に該当すると判断したことは極めて当然であり,この点に関する控訴人の主張にも,何ら理由がない。
5 原判決別紙5項について
(1)控訴人は,原判決別紙5項の不開示部分について,開示請求の対象文書の作成日をどのように区切るかは,開示請求者が任意に設定できるのであり,複数回開示請求を繰り返すことにより開示請求対象文書の作成時期をある程度特定することができる以上,事件・事故等発生状況報告書等(甲7,以下「本件報告書」という)のうち年月日の情報については公衆が知り得る状態に置かれているものとして,法5条1号ただし書イに該当すると主張する。
(2)しかし,控訴人の主張する方法でおおよその作成時期をある程度特定できるとしても,それは控訴人による文書開示請求の内容と付き合わせた結果にすぎない。
法5条1号ただし書イの「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とは,情報の保有者である独立行政法人が法令の規定等により公にし,または公にすることを予定している情報を指すことは自明であるところ,被控訴人は,本件報告書のうち日時に関する記載を不関示としており,被控訴人が本件報告書の日時を公にした事実はない。控訴人の開示請求書と合わせて本件報告書に記載されたおおよその日時を特定できたとしても,これをもって当該日時が公にされ,公にすることが予定された情報と言えないことは明らかである。
原判決が,控訴人の指摘する開示諸求の方法により本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があることをもって,当該情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえないと判断したことは,極めて当然である。
6 結語
以上のとおり,控訴人の控訴には何ら理由がないことは明らかであり,本件控訴はすみやかに棄却されるべきである。
以上
**********
■以上のとおり、高専機構は、ありとあらゆる理屈を総動員して情報隠蔽に太鼓判を押してくれた地裁判決を何が何でも死守しようと、詭弁強弁のオンパレードを並べ立ててきました。とはいえ長々と並べ立てたその内実は相変わらず、機構の業務に支障をきたす・自分たちの利益を害する・個人識別情報であると言い張っているだけです。
気になったのは、控訴答弁書に関する動き方が、並行して同じく控訴している第二次訴訟控訴審と明らかに違っていることです。
第二次訴訟控訴審において高専機構側は、口頭弁論期日に2週間も先立ち、控訴答弁書のクリーンコピーを郵送で提出してきました。しかしその内容はというと、実質2ページ程度の分量で、主要な論点や問題点をいくつも丸々無視したお粗末な代物でした。
○2021年3月23日:
【高専過剰不開示体質是正訴訟・第二次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と 3/9高裁弁論(即日結審)の一部始終↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3287.html
ところがこの第一次訴訟控訴審での控訴答弁書は、口頭弁論期日1週間前の夕方になって、FAXによる駆け込み提出がされてきました。しかも、追ってクリーンコピーを郵送するというわけではなく、「本FAXを正式書面として受領ください」という間に合わせぶりです。
そして内容はというと、控訴人当会からの都合の悪い指摘や主張のいくつかは例の通りしれっとスルーされているものの、ある程度正面から「反論」に努めた様子がうかがえ、その労力が実質8ページ分という分量に表れています。また、「準備書面等の送付書」下部にある「受領書」の記載をよく見ると、第二次訴訟控訴審の控訴答弁書では「被控訴人訴訟代理人」と(正確に)記載しているにも関わらず、今回第一次訴訟のそれでは「被控訴人代理人」となっており、内容とは関係のない送り状まで余さず目を通す余裕がなかった様子がうかがえます。すると、このFAXによる駆け込み提出は、意図的な調整によるものではなく、本当に直前まで反論作成に手を取られたためという可能性も浮上してきます。
■つまり、控訴答弁書について、第二次訴訟控訴審では「杜撰でもいいので早く提出する」方針で来ていたところ、第一次訴訟控訴審では「駆け込み提出になっても入念に反論する」方針で来ていることがわかります。この明らかな方針の違いは、いったい何を意味しているのでしょう。
第二次訴訟控訴審では、稀代のトンデモ判決を問答無用で出した東京地裁の清水知恵子裁判長から、これまた「前科」が多い上に開廷前から機構優遇姿勢が見え隠れする東京高裁の白石史子裁判長へと審理が引き継がれています。すると高専機構としては、当事者双方が何を言っても言わなくても高専機構勝訴ありきで処理してくれると確信して、どう勝たせるかの方針を白石裁判長がさっさと立てられるようにと、内容はそっちのけで早期提出に踏み切ったのかもしれません。
一方、この第一次訴訟控訴審では、打って変わって反論の分量にリソースが割かれています。すなわち、高専機構と田中・木村法律事務所として、あまり手を抜けない状況にあることがうかがえます。となると第一次訴訟控訴審については、高裁での担当裁判長・裁判官らが高専機構側にとって「コントロール外」であり、果たしてどんな判断を下してくるのか見通せない状況にある可能性が指摘されます。
すると、第一次訴訟控訴審を担当する矢尾渉裁判長らがどのような訴訟指揮と判断をするのか、注目されました。
■3月17日当日、当会出廷者は午前中に前橋地裁で10時10分と同20分の2件連続で住民訴訟の口頭弁論を終えた後、11時35分の前橋発両毛線高崎行きに乗車し、11時50分に高崎駅に着きました。新幹線で早く行っても時間が余ってしまい、かといって東京で時間を潰す用事も特に思い当たらなかったので、鈍行でゆったり向かうのも一興と考え、ちょうど発車直前の11時52分発上野東京ラインに乗り込みました。そして、13時46分に東京駅に着きました。そこから丸の内線に乗り換え、14時ごろ地下鉄霞ヶ関駅に着きました。地上に出ると、9日の大音響演説の時とは打って変わって、裁判所前の歩道は静かそのものでした。
さっそく裁判所庁舎に入り、東京高裁8階の812号法廷の開廷表を確かめました。以下のとおり、間違いなく本日開催されることを確認しました。
*****東京高裁812号法廷開廷表(3月17日)*****
令和3年3月17日 水曜日
●開始/終了/予定:13:30/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2418号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:仙波仙太郎/武田裕二
○代理人:-
●開始/終了/予定:13:30/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2490号/詐欺、ストーカーによって損害賠償請求控訴事件
○当事者:武田香/小林直哉
○代理人:-
●開始/終了/予定:14:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第251号/法人文書不開示処分取消請求控訴事件
○当事者:市民オンブズマン群馬/独立行政法人国立高等専門学校機構
○代理人:―
●開始/終了/予定:15:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3361号/土地明渡請求控訴事件
○当事者:株式会社マックアース/畔上平和
○代理人:―
●開始/終了/予定:15:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2545号/労働契約上の地位確認等請求控訴事件
○当事者:日高正人/パシフィックコンサルタンツ株式会社
○代理人:―
■東京高等裁判所第17民事部
裁判長 矢尾渉
裁判官 橋本英史
裁判官 三浦隆志
裁判官 今井和佳子
裁判官 田中一隆
書記官 坪田朋子
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まだ20分余り時間があるので、1階のロビーの隅にある休憩スベースで時間調整をしました。つい時間を忘れて過ごしていた所、開廷5分前になっていたので、急ぎ8階に向かいました。
■812号法廷に入ると、既に被控訴人訴訟代理人の藍澤弁護士が法廷内の被控訴人席に座っているのが見えました。筆者も出頭カードにサインして、法廷に入りました。傍聴席には、中ほどに高専機構本部からの職員とみられる男が一人、メモ帳を片手に、待機していました。眼鏡をかけておらず、つい8日前の3月9日に行われた第二次訴訟控訴審口頭弁論に来ていた職員とは別人のようでした。
第一次訴訟控訴審の第1回弁論は、午後2時半から開廷しました。
冒頭、書記官が「令和2年(行コ)第251号。控訴人、市民オンブズマン群馬。被控訴人、独立行政法人国立高等専門学校機構」と事件番号と当事者を告げました。以下、控訴人=当会出廷者、被控訴人=藍澤弁護士です。
裁判長が「では弁論を行います。控訴人は控訴状よろしいですね?」とさっそく訊いてきたので、控訴人当会は「はい、陳述します」と答えました。すると裁判長は、「控訴の趣旨について、2(訴訟費用)は分かるが、1について確認したい。自分の理解では、今回の控訴の趣旨1項別紙に示す部分の不開示取消請求というのは、要するに原判決が取り消さなかった部分……原判決が取消請求を棄却した部分全部を取り消す、という把握の仕方なんですが……」というので、控訴人として「その通りです」と答えました。
裁判長が再度「そうですかね」と確認したので、控訴人は「その通りです」と重ねて答えると、裁判長は「はい、はい」と苦い微笑みを浮かべながら返しました。
裁判長は「一部を取り消したことが前提の上で控訴状の陳述をする、ということですね?」と言うので、「はい。一部はね。『ごく』一部は認容されていますが」と、控訴人の主張の殆どが認められなかった一審判決を思い出しながら言いました。
■続いて裁判長は「それで、被控訴人は答弁書を陳述でよろしいですね?」と被控訴人の藍澤弁護士に訊くと、藍澤弁護士は「はい」と答えました。
裁判長は「双方、原判決記載の通り、現審の口頭弁論の結果を陳述」と決まり文句を口にしながら、続いて「控訴人の方から控訴理由書」と言ったので、控訴人として「はい、陳述します」と答えました。さらに裁判長は書証について「甲の47から50をいずれも写しですね?」と確認を求めてきたので、控訴人は「はい、写しで提出します」と言いました。原本はきちんと保管しておくべきなのですが、膨大な書証を保管する場所の確保が大変なので、よほど重要書類でない限り、写しでパソコンに保存しているのが当会の現状です。
裁判長は「あと当事者の方から何かございますか?」と訊くので、控訴人も被控訴人も「特にありません」と答えました。ここで裁判長が終結宣言をするかと思いました。
■すると裁判長は続けて「念のため確認したい点が1点あります」として、控訴理由書の2ページ目(2)中、高専校長候補者の推薦機関などの種別が書いてある(と思われる)箇所の不開示にかかる控訴人の主張について、「被控訴人に確認を求めたい」と問いかけました。具体的には、2ページ目の第2段落と第3段落の記載についてのようです。
裁判長が指摘したのは、「『第3段落の中の細目番号②は高専や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を、細目番号①はその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者を、それぞれまとめたものであることが極めて強く推知できる』との控訴人の意見ないし評価という部分について、被控訴人の答弁書の中では直接の認否が、あるいはこれに反論した記載の有無が、ハッキリしない」ということでした。
そして裁判長は、「この点につき、もし答弁書の中で言及しているつもりでも、できれば個別に認否ないし反論という形で書いていただけると、裁判所としては理解しやすくて助かる。これについて、被控訴人としての見解を聞かせてほしい」と、被控訴人に尋ねました。
それに対して被控訴人は「細目番号に関する当方の理解としては、甲47号証の一覧表のうちの、例えば2枚目のもので言えば、『推薦機関』という記載になっていて、3枚目は『学校名』というふうに書いてあり、こうした項目の表記の違いによって、細目番号①②と分けている、というように理解している」と答えました。
裁判長は「控訴人の主張をそう理解しているということですかね?」というと、被控訴人は「はい」と答えました。被控訴人は続けて、「内容について、控訴人は推知できると指摘するが、そうした推知はできないだろうというのが被控訴人としての反論。答弁書で記載した趣旨のとおりであり、それ以上の細部については、特に補充の要がないと思う」と答えました。それを聞いた裁判長は、「推知できるという主張につき、争うということか?」と問うと、被控訴人は「はい」と答えました。
■それを聞いてしばし黙り込む裁判長を見て、右陪席裁判官が「よろしいですか?」と、裁判長に申し出ました。裁判長のOKを得た右陪席裁判官は、「さきほど裁判長が指摘した控訴理由書の2ページ目の第2、第3段落について細かく確認したい。年度で言うとH23/4付~H29/4付までと、次の第4段落で、H30/4付とH31/4付でそれぞれ分けて開示された文書の内容について、控訴人は番号を具体的に記載したうえで、それぞれ違う主張をしている」と、控訴人側の主張の論理構成を細かく確認しました。
続けて右陪席裁判官は、「それに対して答弁書は、この第2、第3段落と第4段落における年度別の個別具体主張に対して、特に区別せず包括的に色々と混合して反論している。だから被控訴人がどういう理由で、どの部分を、どのように争うのか、というのが裁判所にとって分かりにくい。弁論の全趣旨を解釈すると、第2、第3段落、とくに第3段落については、特に争わないというような読み取り方もできる。答弁書の読み取り方によってはそういう解釈も可能だということを踏まえて念のため確認しておきたい。よって、できればそのあたりを正確に裁判所の方で把握できるように、裁判長の指摘した通り、第2、第3段落、とりわけ第3段落について、個別的な反論を書面でいただけた方が、受訴裁判所として正確な把握ができると考えている。自分としては、そのことにより適正な判断ができると思う。今日は第1回目の期日だから、被控訴人にあらためてこの点を検討してもらい、書面化していただいても結構。この点よく確認していただいて、個別説明の必要がないという見解であればもう弁論の終結をしてもよいが、またあらためてその箇所の答弁をできるのであれば、それを願いたい。そこを明確にしてほしいと思っている」と、言葉を変えながら同じ趣旨の発言を繰り返しつつ、詳しく説明しました。
それを聞いた被控訴人は「第2段落と、第3段落については、今申し上げた通り。第4段落のH30年4月付け、H31年4月向けの部分について、個別に検討するとして、細目番号1で6名、細目番号2で云々という記載があるが、これ(細目番号)は甲47号証のこのH30年以降の候補者一覧のどこをさしているのか。これは控訴人に訊いているが」と、突然、控訴人に話を振ってきました。どうやら控訴理由書の中身をよく精査し理解しないままで、裁判官から何を質問されているのか分かっていない様子です。
■それを見かねてか、右陪席裁判官が「控訴理由の2枚目の第4段落ですね?」と念押しすると、被控訴人は「今、裁判長から指摘いただいた2ページ目、第4段落はその前と記載内容が異なっていて、甲48号証を引用しつつ各人数を記載されているが、甲47号証の一覧表でいうとどれと対応しているのか分からないのですが」と困惑したようすで返事をしました。
右陪席裁判官は「こちら側が今設明している点に関して、確認したいということですね?」と再度問うと、被控訴人は「そうです。第2段落と第3段落については、H29年までの一覧表は確かに項目の中身や記載の仕方に差が付いているので、そこは細目番号①と②という区別の仕方でわかります。さっき申し上げたとおり、そういう推知はできないだろうというのが被控訴人の反論です。それで、今指摘いただいた第4段落のH30年4月付け、H31年4月付けの部分については、この記載の中身が甲47号証の平成30年4月付け高専校長候補者一覧表のどこの部分を指しているのか分からない」と、相変わらず「細目番号」の意味が把握できていない様子です。
右陪席裁判官は「『平成31年4月付け』とあるこの表示が分かりますか」と言い、一覧表の右上に小さく表示された文字がよく判るように、当該ページを抜いて、よく見るように被控訴人に促しました。
右陪席裁判官はさらに具体的に「平成30年4月付の一覧表の右上に資料6-1とありますよね?」と確認し、被控訴人が「はい」と言ったので、「これが控訴理由書の第4段落で言うところの番号です。それで、次のページの右上にもやはり資料6-2とありますよね?」と言うと、被控訴人はまだわかっていない様子です。
「右上まで見ないと、ズレ方によって見難いんですよ」と裁判官に言われて、ようやく被控訴人は、何を言われているのか悟ったようです。
右陪席裁判官は「資料6-1と資料6-2が第4段落で言うところの細目番号。その次の、裏面に『No.1』としか書いてないのが細目番号無しの最初の1点。次のページが細目番号無しの資料の2点目。それで次のページの裏、ナンバーが『1』しかないんですが、これが番号のない資料の3点目です」と、控訴人に代わって丁寧に説明しました。控訴人は、高専機構自身が資料に割り振っている番号を便宜上そのまま使って区別しているだけなのに、藍澤弁護士は、雇い主の高専機構が資料に番号を振っているという目の前の事実をずっと認識していなかったのです。
被控訴人がようやく「はい」と言うのを聞いて、裁判官は「そういうことです」と安堵した様子でした。
■しかし、被控訴人がまだよく訳の分からないことを言い続けるのを見て心配になったのか、さらに右陪席裁判官が口を開き、「H23からH29までの、細目番号①②としかないものについてはこういうふうに推知をしますと。一方で、H30、H31については資料が細かいときもあるので、校長の実際の就任状況と併せてこういう推知をします、H31についても同じように推知ができますと。控訴人が別個の推知の仕方を用いているのに、被控訴人の答弁書では、その最初の方についても、『実際に校長に就任した者との対比によれば』という言い方をして、ゴチャゴチャに答弁をしている」と、被控訴人に言い聞かせるようにして懇切丁寧に指摘しました。
「はい……はい」と返すだけの被控訴人について、まだ完全に分かっていないのではないかと懸念したのか、右陪席裁判官は被控訴人に「先生。その書証の綴じ代の上の方が見えなかったのかもしれませんね。だから、分かりにくくて、ごっちゃにしてしまったのかもしれませんね」とフォローしました。それにしても、ここまでプロの弁護士に対して裁判官が懇切丁寧に説明しなければならないとは……すったもんだの光景を目の当たりにした当会出廷者の率直な感想です。
被控訴人はようやく「ご説明の趣旨は分かりました。ただし、反論の骨子は、今申し上げた通り。どういうふうに一覧表にまとめているかというのは、必ずしも控訴人の控訴理由書の記載の通りとは限らないだろう、というのが骨子になる。なので、それはH30、H31についても同様、ということにはなると思うが、書面でその旨を指摘したほうが良ければそうさせていただく」と答えました。
右陪席裁判官はようやくホッとした様子で「そうしてください」と声を掛けました。そしてさらに、「ちなみに、実際の資料をみると、平成29年も別の組み立て方になっている部分がある。できれば、別の組み立て方になっているものについて別の仕方で争う、という方針でよければ、非常に参考になると思う」と、もはや裁判の公平性が疑われるレベルで、更に痒いところに手が届くアドバイスをしました。
■被控訴人と右陪席裁判官とのすったもんだが一段落し、ようやく裁判長が控訴人に向かって「よろしいでしょうか? 一回、先方にて書面でまとめるというので」と意見を求めてきました。控訴人は「はい、ぜひ被控訴人からの書面を拝見したいと思います」と答えました。
すると裁判長は「それでは弁論を続行します」と宣言し、被控訴人に向かって「どのくらい期間を置けばよろしいですか」と尋ねました。被控訴人は「早急に」と言ったきり、具体的な日数を言いませんでした。
裁判長が「早急というと、来週の終わりまでくらいですか?」と確認を求めると、被控訴人は「はい、はい」というので、裁判長は、今度は控訴人に向かって「では、その書面を見て、何か反論があったらまた出していただくということでよろしいですか?」と確認を求めてました。控訴人は「はい、かしこまりました」と答えました。
そして、裁判長は、「そのための期間を勘案して、次回弁論期日は1か月後くらいで……4月14日、10時というのはどうですか?」と、控訴人・被控訴人に提案しました。双方とも「はい、結構です」と答えました。
その結果、次回期日は4月14日で、被控訴人の書面提出期限は3月26日までとし、控訴人はそれを見て認否や反論があれば4月7日までに提出することに決まりました。
控訴人としては、被控訴人からの準備書面が、どんな内容のものが出てくるのか分からないため、裁判長にできればもう少し期限を延ばしてもらいたいと要請しましたが、裁判長は「1、2日くらいはいいが、裁判所としては4月14日の期日になるべくやりたいので」というので、「裁判長がそう仰るのであれば、それを目途に努力し、7日提出を厳守します」と裁判長に告げました。
裁判長は「それではよろしくお願いします。ではそれを見て特段さらに議論が必要か必要でないかによりますが、必要なければ次回終結ということにしたい」と述べ、「では今日はこれで終わりにします」と言って陪席裁判官2名と共に退出していきました。
以上がメモと記憶により再現した今回の弁論の概要です。不正確な箇所もあるかもしれませんが、概ね様子を分かって頂けたかと思います。
■こうして、初回で終結するかと思われていた高裁での控訴審は、意外なほどに裁判官からの突っ込みが差し込まれて継続となり、次回期日が4月14日(水)午前10時に設定されました。
今回の第1回口頭弁論の大半は、裁判官に質問攻めにされる藍澤弁護士を、蚊帳の外の当会出廷者が眺める構図でした。あまりにも主張が杜撰な高専機構の訴訟代理人のせいで、裁判官が自ら手取り足取り指南とフォローをしてあげている感が強いものでした。同時に、東京高裁第17民事部の裁判官らが、当会と高専機構双方の主張を割と読み込んできていることに驚きました。同高裁第2民事部が担当する第二次訴訟の初回口頭弁論が、白石裁判長の指揮によりさっさと即日結審したのとは雲泥の差です。
やはり事前に予測されたとおり、第17民事部は「完全な手抜き答弁でも忖度して勝たせてくれる」わけではないようで、高専機構と田中・木村法律事務所としてもやりにくさを感じているのは確かなようです。
ただ、公平中立であるべき裁判官自ら、藍澤弁護士を「先生」呼びしながら「主張の改善点」を詳細にアドバイスしてくれるということは、裏を返せば、どんなにポンコツでも一応は法曹仲間の弁護士センセイであり、さらに行政側の訴訟代理人である藍澤弁護士をなるべく勝たせてあげたいとは思っている証左なのかもしれません。
■さて、口頭弁論が終わるとまだ午後3時前でした。第二次訴訟控訴審での手数料還付手続について教示を受けるべく、16階の高裁第2民事部窓口に行き、参考資料を受け取りました。こうして、裁判所での用事を済ませた当会出廷者は、玄関から庁舎の外にでました。
すると、南側の傍聴希望者コーナーで40名くらいの人たちが並んでいるのを目にしました。まだ河合夫妻の夫の裁判が続いていることから、その裁判かと思いきや、掲示板を見ると「裁判所名: 東京高等裁判所 第22民事部. 日時・場所: 令和3年3月17日 午後3時40分 2番交付所. 事件名: 査証発給拒否国家賠償請求控訴事件 令和2年(ネ)第1320号. 備考: 【抽選】当日,午後3時40分までに2番交付所に来られた方」とあります。
後で調べたところ、いわゆる安保法制反対を訴える市民団体が、日本の過去の戦争犯罪を議論するためのゲストに中国人十数名を招こうとしたところ、日本政府がビザを発給拒否したことに端を発する「中国人ビザ拒否訴訟」に関しての高裁判決言渡期日だったことがわかりました。昨年1月に地裁で市民団体側が全面敗訴したため控訴審に移行しており、この日に高裁での判決言い渡しが控えていたようです。なお、その後の高裁判決結果については、またも全面敗訴に終わってしまったようです。
●参考:
https://news.yahoo.co.jp/articles/97d5791794ca63e8a2f8c0ac1b63d93718ab3fe2
たまたま居合わせた判決言渡を傍聴している時間的余裕はなかったので、当会出廷者は裁判所をあとにし、群馬へ帰投することにしました。
■さて、上記のとおり、口頭弁論の次週までに高専機構から主張補充がなされるはこびになったため、当会では被控訴人準備書面の来着を待つことにしました。すると、3月22日の午後5時過ぎ、さっそく銀座の田中・木村法律事務所から当会事務局宛てに補充準備書面がFAXされてきました。
●被控訴人(高専機構)R3.3.22付け準備書面 ZIP ⇒ iitirj.zip
*****送付書兼受領書*****
2021年3月22日 17時20分 田中・木村法律事務所 No.7930 P.1
準備書面等の送付書
令和3年3月22日
下記のとおり書類をご送付いたします。
受領書欄に記名・押印のうえ,この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。
●送付先:
東京高等裁判所第17民事部 ニ係 御中
FAX 03-3592-0942
控訴人 市民オンブズマン群馬 御中
FAX 027-224-6624
●発信者:
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
被控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559
●事件番号:令和2年(行コ)第251号
●当事者名:
控訴人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
●次回期日:令和3年4月14日(水)午前10時
●文書名:準備書面(R3.3.22付)
●送信枚数:3枚(送信書を除く)
●相手方への送信の有無:有
=====受領書=====
受 領 書
東京高等裁判所第17民事部 ニ係 御中 (FAX:03-3592-0942)
被控訴人代理人 弁護士 木村美隆 宛 (FAX:03-3572-4559)
上記書類を受領しました。
令和 年 月 日
控訴人
通信欄:本FAXを正式書面として受領ください。
**********
*****3/22付準備書面(高専機構)*****
令和2年(行コ)第251号
控訴人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構
準 備 書 面
令和3年3月22日
東京高等裁判所第17民事部ニ係 御中
被控訴人訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
記
控訴理由書1項(2)(甲第47号証と推薦機関の別)について
1 控訴人は,同項において,甲第47号証で部分開示された国立高等専門学校長候補者一覧(以下「一覧表」という)のうち,平成23年から同28年分のものは,項目名に「推薦機関」とあるものと,「学校名」とあるものの2種類に分かれており(細目番号①,②),これにより各表が教育機関の推薦者と研究機関や官公庁からの推薦者をまとめたものであることが推知できる,と主張するが,この主張は争う。
高専の校長の前職は高等専門学校や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所といったように複数あり,これらの候補者が控訴人のいう細目番号①ないし②の一覧表のどちらに記載されているかは,各表の形式からは明らかではない。たとえば,国立大学の教授を,控訴人が推知しているように細目番号②の表に記載することも,細目番号①の表に記載することも,分類としてはありうるのであり,控訴人の上記指摘は,単なる推論にすぎない。
控訴人は,この推論をもとに,各文書が取り扱う大まかな推薦機関の種別を開示しても,被控訴人における人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ(法5条4項ヘ)がないとするが,控訴人の主張が単なる推論を前提にしている以上,その主張に理由がないことは明らかである。
2 また,一覧表のうち平成29年のものは,それ以前のものとは異なり細目番号①,②について,一覧表の項目名に違いはなく,平成28年以前の一覧表と比べて,より記載内容を推知することが難しくなっている。よって,前記(1)と同様,一覧表にどの推薦期間
(ママ)等からの候補者が記載されているかを推知でき,一覧表が取り扱う大まかな推薦機関の種別を開示しても,法5条4号ヘのおそれがないとの控訴人の主張は,いずれも争う。
3 控訴人は,平成30年以降の一覧表について,一覧表に記載された項目Noから推薦機関ごとの推薦者の人数が明らかとなり,これと実際に校長に就任した者の人数を比較すれば,一覧表にどの推薦機関の候補者が記載されているか,推知可能であると主張するが,この主張は争う。
平成30年の一覧表は,甲第47号証の15枚目から17枚目(各表裏で計6頁)に分かれているところ,各表に振られた項目NoをみてもNo1しかないものが2ページあり,どちらの表にどの推薦機関の候補者が記載されているか,推知することはできない。
また校長の前職(甲48)をみても,大学の研究所に所属していた者もいれば,大学院の研究科に所属していた者もあり,控訴人の指摘するように,「大学(院)出身者5名」との分類が正確か,一覧表の体裁から判断することはできない。
さらに,一覧表の項目Noにどの程度の意味があるか,たとえば推薦機関ごとに通し番号を付して表を整理しているか,といったことも甲第47号証で開示された一覧表からは不明である。たとえば同じ推薦機関からの候補者でも,経歴や年齢等の違いにより表の頁を分けてNo1から振り直して整理したり,複数回開催する会議に応じてNoを振り直した表を作成する,ということも方法としてはありうるのであって,単純に項目Noと校長の前職のみから,各一覧表がどの推薦機関の候補者が記載されたものかを推知することはできない。
控訴人は校長の出身機関を4種類に分類しているが,実際の平成30年の一覧表は,項目Noごとに分けると5種類に分けられる。このことからも,上記の観点により,控訴人の推知とは違う方法により一覧表が作成されており,控訴人の推知は当たっていないとも考えられるのである。
以上からすれば,一覧表に記載されたNoと校長の前職から,一覧表にどの推薦機関の候補者が記載されているか推知可能との控訴人の主張は,単なる推論にすぎない。平成30年,31年の一覧表のうち,各表の大まかな推薦機関を開示しても,被控訴人における人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ(法5条4項ヘ)がないとの控訴人の主張には,理由がない。
以上
**********
■当会では、被控訴人の高専機構が出してきた控訴答弁書と補充準備書面に対して、反論があれば4月7日必着で提出し、東京高裁812号法廷で4月14日(水)午前10時から行われる第2回口頭弁論を迎えることになります。
その後の本件推移については、追ってご報告します。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】