■深刻なアカハラ事件が起きた群馬高専がこの事件に対してどのような対応をとったのかについて、自ら説明責任を果たせるのかどうかを学校側に問うべく、当会はこれまで3年にわたり情報公開請求を通じて、群馬高専が開かれたキャンパスに生まれ変われることを祈念して活動を続けています。来る2017年7月7日(金)午後2時30分から東京地裁で第5回目の口頭弁論が開かれる予定ですが、それまで残すところ1週間となった6月30日に、被告の国立高等専門学校機構の訴訟代理人の弁護士から、FAXで3回目の被告準備書面が送信されてきました。
被告準備書面の内容は次のとおりです。
*****被告準備書面(3回目)*****PDF ⇒ 2017063013.pdf
<P1>
平成28年(行ウ)第499号 法人文書不開示処分取消請求事件
原 告 市民オンブズマン群馬
被 告 独立行政法人国立高等専門学校機構
準 備 書 面
平成29年6月30日
東京地方裁判所民事第3部B2係 御中
被告訴訟代理人弁護士 木 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
記
別紙一覧表の不開示事由について
1 法5条1号柱書前段
原告による開示請求①ないし③にかかる文書に記載のある項目の内容は,別紙一覧表のとおりである。
同一覧表にあるとおり,特に開示請求②及び③にかかる文書には,申告者,申告の対象者だけでなく,ハラスメントとされる行為の相手方やその他関係者の教職員や学生が実名で記載されており,しかもこれらの実名は具体的な事実関係と混在一体として記載されているものであるから,これらの文書は個人識別情報の記載されたものとして,法5条1号柱書前段の不開示事由に該当する。
また,開示請求②及び③にかかる文書のうち,部分的に個人識別情報がない項
<P2>
目を分離したり,実名を黒塗りにしても,記載内容は群馬高専の特定の学科,学年の関係者についての出来事であり,関係者にとって事実関係の内容から記載された当事者を特定することも充分に考えられることであるから,実名が記載されていない部分や,実名を黒塗りにするといった対処をしたとしても,開示請求②及び③にかかる文書が,個人識別情報の記載された文書に該当することに変わりはない。
2 法6条2項
さらに,開示請求②及び③にかかる文書には,申告者と申告の対象者との関係や,ハラスメントとされる行為の内容や経過,申告者が説明する被害内容等が記載されていることは,別紙一覧表のとおりである。これらの情報は,通常他人に知られたくないプライバシーに属するものとして当然に法的保護の対象となるべきものである。仮に,開示請求②及び③にかかる文書のうち実名部分等を黒塗りにしたとしても,上記記載内容からすれば,同級生や教職員等の一定範囲の者には申告者や申告の対象者等の当事者を識別することが可能であり,これらの者に他人にみだりに知られたくない個人のプライバシーに関する情報が明らかになる(乙6,長崎地裁判決参照)。
以上から擦れば、開示請求②及び③にかかる文書に記載された情報は,その実名部分等を黒塗りにしたとしても,同情報が個人利益侵害情報に該当することを免れることができない。同情報は,法6条2項の個人利益侵害情報としての不開示事由にも該当する。
以上
*****別紙*****PDF ⇒ 2017063023.pdf
<P1>
平成28年(行ウ)第499号 法人文書不開示処分取消請求事件
●ハラスメント行為を行ったとされている者(申告の対象者):氏名
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒―
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告の対象者
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
●ハラスメント行為を行ったとされている者(申告の対象者):所属(属性)
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告の対象者
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
●ハラスメント行為を受けたと申告した者(申告者):氏名
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
●ハラスメント行為を受けたと申告した者(申告者):所属(属性)
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
●申告の経緯
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者,申告の対象者,調査担当者,調査対象者,(開示請求②③)
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒申告者,申告の対象者のプライバシー(開示請求②③)
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
●申告された事実:概要(次の各点を含まない)
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒―
・開示請求②の文書 ⇒―
・開示請求③の文書 ⇒―
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒―
・誰の個人識別情報か ⇒―
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒―
●申告された事実:ハラスメントとされる行為に至った経緯
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒―
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者,申告の対象者,調査対象者,関係する教職員及び学生
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒申告の対象者及びハラスメントとされる行為の相手方(申告者を含む)のプライバシー
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○
●申告された事実:申告者と申告の対象者との関係
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者,申告の対象者(開示請求②③)
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒申告の対象者及びハラスメントとされる行為の相手方(申告者を含む)のプライバシー
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
●申告された事実:ハラスメントとされる行為の具体的内容,時期、頻度
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒―
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者,申告の対象者,調査対象者,関係する教職員,及び学生
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒申告の対象者及びハラスメントとされる行為の相手方(申告者を含む)のプライバシー
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○
●申告された事実:申告者が説明する被害の内容
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒―
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者,申告の対象者,調査対象者,関係する教職員,及び学生
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒申告の対象者及びハラスメントとされる行為の相手方(申告者を含む)のプライバシー
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○
●申告された事実:申告者が見聞きした,申告者以外を対象とするハラスメントとされる行為の内容
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒―
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒申告者,申告の対象者,調査対象者,関係する教職員,及び学生
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒申告者,申告の対象者,関係する教職員,及び学生のプライバシー
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○
●申告された事実:申告者以外のハラスメントの相手方の氏名,所属(属性)
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒ハラスメントとされる行為の相手方(教職員及び学生)(開示請求②③)
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒ハラスメントとされる行為の相手方(教職員及び学生)のプライバシー
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
<P2>
●同校において行った調査:期間・概要・方法
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒―
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒調査対象者(申告者,申告の対象者を含む)(開示請求③)
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒調査対象者(申告者,申告の対象者を含む)のプライバシー(開示請求③)
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求③)
●同校において行った調査:調査に至った経緯,調査担当者,調査結果(いずれも関係当事者からの具体的な聴取内容,関係当事者の実名を含む)
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒―
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒○
・誰の個人識別情報か ⇒調査対象者(申告者,申告の対象者を含む)(開示請求③)
○法6条2項
・主張の有無 ⇒○
・誰のどのような権利利益か ⇒申告の対象者,ハラスメントとされる行為の相手方(申告者を含む),および調査対象者のプライバシー(開示請求③)
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求③)
●申告の対象者への対応の概要
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒―
・開示請求③の文書 ⇒―
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒―
・誰の個人識別情報か ⇒―
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒―
●学校としての今後の対応方針
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒―
・開示請求③の文書 ⇒―
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒―
・誰の個人識別情報か ⇒―
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒―
●文書の作成者の氏名・肩書
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒―
・誰の個人識別情報か ⇒―
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒○(開示請求②③)
●文書の作成年月日
◎各文書の記載内容:
・開示請求①の文書 ⇒○
・開示請求②の文書 ⇒○
・開示請求③の文書 ⇒○
◎被告が主張する不開示事由:
○法5条1号柱書前段
・主張の有無 ⇒―
・誰の個人識別情報か ⇒―
○法6条2項
・主張の有無 ⇒―
・誰のどのような権利利益か ⇒―
○法5条4号へ
・主張の有無 ⇒―
●その他(具体的に):なし
▼備考:※上記のうち,(開示請求②③)等は,左欄の項目に該当する開示請求①ないし③の項目が複数ある場合に,その一部の文書についてのみ不開示事由に該当する旨の記載である。
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■前回、2017年5月26日(金)13:45に東京地裁で開かれた第4回口頭弁論で、裁判長は、不開示の理由等を一定の方式で分類・整理した一覧表を被告に渡し、できる限りこれに沿って被告の主張する不開示理由をもとに、該当する欄を埋めるように訴訟指揮をしました。
この一覧表は、いわゆるヴォーン・インデックスとも言えるものです。これは、被告が保有する開示対象情報である文書量あるいは情報量が多く、複数の不開示規定が複雑に関係するような事案などで、効率的かつ的確な審理を行うために有効なやり方として注目されます。
今回、被告の機構が送ってきた一覧表をみると、ハラスメント行為者(=申告の対象者)についての法6条2項は不開示事由として主張しないものの、その他の項目はすべて、ハラスメント行為者のプライバシーを理由にして、不開示を正当化しています。
このことは、山崎新校長に変わってからも、西尾前校長を庇う体質はそのまま温存されていることを示していると考えられます。
■今回の一覧表の提示により、被告の機構側の主張が、相変わらずプライバシー保護にしがみついていることが明らかになりました。どうやら原告側の主張であるハラスメント被害者へのヒヤリングを通じて、開示を希望するかどうか確認する必要性の判断について、被告は都合が悪いと考えていることは確かなようです。
裁判長がこうした頑なな被告の主張に対して、厳しい判断をすることが期待されます。
また、さらに言えば、このヴォーン・インデックス方式の審理に加えて、裁判所によるインカメラ方式による審理の導入が有効だと思われます。
これは裁判公開の原則を定めた憲法82 条に基づき、証拠調べも公開法廷で行う必要があり、裁判所が、被告に対してインカメラ審理のために検証物を提示するよう命令を出すことにより、裁判所が、実際に被告が秘匿したがる書類についても、きちんと裁判所が内容をチェックして、開示・不開示の最終判断を行う方式です。
こうした流れに果たして結び付けられるかどうか、来る7月7日、七夕の日に行われる東京地裁での第5回口頭弁論の結果にご注目ください。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】