市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

記者クラブと県幹部の懇談会に参加した職員らに社会参加費返還を求める住民監査請求でオンブズマンが陳述

2017-02-27 23:19:00 | 県内の税金無駄使い実態
■かつて「官官接待」や「カラ出張」が日常茶飯だった群馬県ですが、この地で22年間オンブズマン活動に従事した経験では、我々の「血税」であっても、役所では「打ち出の小槌」とばかりに、ただ使い切ればよく、その中身は情報不開示にすれば、納税者である県民になど、実態が分かるはずがない、などとする考え方が一向に抜け切れていない様子を感じ取ることができます。我々市民オンブズマン群馬は、役所における税金の無駄遣い廃絶の観点から、原則として地方自治法第2条第14項および地方財政法第4条第1項に定められた「最小経費で最大効果」の観点から、税金の正しい使い方を指南することを活動目的の柱の一つにしてます。

 一方、県庁5階に鎮座ましましている県庁記者クラブは、我が国のジャーナリズムの象徴でもありますが、記者クラブについてはこれまでにも「閉鎖的である」「自分で取材しようとせずに聞いたことだけ、ただ、報道している」などというイメージが一般に取りざたされています。そのような“偏見”を振り払うべく、日本新聞協会は開かれた記者クラブを目指すとしており、記者クラブの役割を「公的情報の的確・迅速な報道」「公権力の行使を監視し、一層の情報公開を迫る」「誘拐事件など人命・人権を優先するための取材・報道の調整」「市民からの情報提供の共同の窓口」を目指すとしています。

 こうした、いわば2つの権力同士が、毎年懇願会を年中行事的に開催していることについては、議論をもっと尽くす必要があります。

■そのことはさておいて、今回は、この懇談会に群馬県の幹部でもないヒラ職員らが「社会参加費」という得体の知れない税金支出費目を編み出した群馬県ならでは血税浪費で参加していることについて焦点を当てつつ、住民監査請求に踏み切りました。

 これまでの経緯は、2017年1月30日に住民監査請求書を群馬県監査委員あてに提出後、2月10日付で群馬県監査委員から補正命令が送られてきたので、2月15日午前10時過ぎに補正書を群馬県監査委員事務局の窓口に提出したところ、2月21日付で、受理確認と合わせて、証拠の提出及び陳述の機会について通知されました。そして、本日2月27日午後4時から監査委員の前で当会のメンバーが陳述を行いましたので、報告いたします。

 報告の趣旨は概ね次の通りです。但し実際には請求人の代理として出席した当会副代表の発言にならいます。

**********
         陳  述  書

              2017年2月27日(月曜日)16時
              請求人:市民オンブズマン群馬代表 小川賢
              代理人:市民オンブズマン群馬副代表 大河原宗平

 請求人は、本日どうしても都合により出席できないので、代理人である私から陳述をさせていただきます。
 それでは、これから陳述を開始します。
 群馬県ではかつて「官官接待」や「カラ出張」が日常茶飯事だったことがあります。
 こうした実態は1996年に市民団体の活動から発覚しました。
 1996年11月に市民オンブズマン群馬による指摘が発端となり、全庁的に発覚したもので、日帰り出張なのに宿泊したとする手口で裏金を作り、残業代の不足分の手当や備品購入、中央官僚の接待費などに充てていたことが明るみにでました。
 当時、庁内の調査で不正だと認められた金額は、調査対象とした1994年度と1995年度の2年間で、合計約7億1700万円に上ったのでした。
 当時の副知事が「自主的に返還する」と呼びかけ、職員有志から拠出金をつのった結果、県民も含め、幹部職員と退職者ら約3千人から約9億8700万円が集まりました。
 さらに県職員労組がカンパや闘争資金から取り崩した約1億5千万円と合わせ、2年間の不正支出額に利子分5千万円を上乗せした計7億6700万円が、1997年2月に自主返納というかたちで県に返されたのでした。
 差額の約3億7千万円は、当時の小寺県知事が「出資者は不特定多数。気持ちをそんたくし、県民も納得する形で使わせて頂きたい」として、とりあえず1996年当時、県職員から寄付を募る窓口だった「県職員公費支出改革会議」の預金通帳に保管されることになりました。
 この通帳の管理はその後も歴代の総務課長が引き継いだとされて、10年後の2006年2月の時点で、残高は約3億7600万円となっていたことがわかっています。つまり、カラ出張発覚後10年間、残額の約3億7千万円はほかの使途や返金などを決めずに、事実上放置されていたことになります。
 しかもこうした事実や経緯について、1997年の庁内広報紙に一度掲載されましたが、その後は職員らにはもとより、県民への説明は全く行われてきませんでした。
 ちなみに、この残高のその後の使途や状況については、現在に至ってもなお、群馬県から県民に対して説明や報告がなされたということを聞いておりません。
 こうした中、「カラ出張」問題発覚から10年あまりが経過したころ、県民の知らぬうちに、庁内ではまたもや裏金づくりが行われるようになっていました。
 新たな不正経理発覚のきっかけとなったのは2008年10月に会計検査院が指摘した群馬県における不正経理処理問題でした。「経費の使途を正しく申告する」という地方自治法や地方財政法で定められた当たりまえの基本的なことができていなかったことが判明したのでした。
 これは架空発注した物品の購入費を業者にプールする「預け金」や、「記またぎ」「差し替え」といった不正経理をおこなうことで、裏金をつくりだす体質が、本質的に群馬県庁内に、はびこっていることを示す結果となりました。
 当時の事件の概要については、当会の代表の次のブログ記事をご覧ください。
⇒2009年5月18日付「捜査の端緒に期待して、群馬県の不正経理問題を県警に告発」http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/252.html
 それからまた10年近い歳月が経過しています。市民オンブズマン群馬として、群馬県庁内の裏金づくりの体質が少しでも改善されたかどうか、常に関心事として捉えています。
 今回の記者クラブと県幹部との懇談会は、本来権力とは一線を画すべき立場にあるマスコミ関係者と、各種権限を有する群馬県行政マンの癒着という社会的に重要な問題に加えて、当会は税金の無駄遣いの観点から注目しています。
 なぜなら経費支出に関する県庁内の長年の悪(あ)しき慣習が、10年毎に発覚しており、オンブズマンとしてはこうした体質をひきずっている群馬県の庁内組織の膿(うみ)を定期的に出し尽くさなければならないと考えているからです。
 今回提起した住民監査請求では、記者クラブ
主催の懇談会の目的が「大沢知事をはじめ県幹部の皆様方と、これからの県政に関する意見交換を行わせていただきたい」という趣旨であることを踏まえて、次の疑問を払拭することが狙いです。
記者クラブが県庁周辺の宴会場やレストランで毎年開催している知事ら県幹部との懇談会なのに、なぜ群馬県の総務部の課長以下の職員が、準備や設営のために参加できるのか?
庁内では部長クラスは「交際費」という費目で、こうした懇談会の会費を支出しているようだが、課長以下の職員の場合、会費の支出はどのようなかたちで行われているのか?
 上記(1)については、主催者の記者クラブ側から総務部の課長以下の職員らの参加を求められているという事実は、開示された資料、つまり今回の住民監査請求で提出させていただいた事実証明書を精査する限り、確認できておりません。
 ということは、庁内側で懇談会への参加予定者としてリストアップし、事前に主催者である記者クラブ側に連絡していたことになります。課長以下の参加者は全て総務部に所属していることから、参加予定の職員の選抜は、最終的に総務部長の承認を得なければならないと考えられます。
 となれば、表面上は記者クラブが主催する形に見えますが、懇談会の準備や設営を群馬県職員が担当するということは、実質上は群馬県側が会場の設定や交渉、当日の受付業務、会の進行などを主体的に執り行っていることが伺えます。このことは、権限を有する監査委員の皆さんでないと調べることができません。監査委員事務局にまかせっきりにしないで、ぜひ、監査委員の皆さんが直接、関係者から事情聴取をして、証拠の提出を求めて、事実関係を明らかにしてください。
 上記(2)については、懇談会に参加した群馬県の課長以下の職員らの会費がどのような形で支出されたのか、ということが監査の重要なポイントだと思われます。
 冒頭に述べた通り、群馬県庁内では常に裏金づくりの体質が根強く存在しています。今回、部長クラスの場合には、「交際費」という形で支出されたことは、ホームページに掲載された情報から確認できます。ただし、領収書の写しがホームページ上に掲載されていないため、会費7000円が知事と同様に主催者の記者クラブに支払われたのか、それとも、自ら県で会の準備や設営をしたことから、会場のフォンティーヌに支払われたのかが判然としません。この点について確認が必要かもしれません。
 それよりも、今回の住民監査請求では、総務部から参加した広報課、秘書課、財政課の3名の課長と、準備・設営担当の広報課と財政課の4名の職員の合計7名の会費がどこからどのような形で支出されたのか、について明らかにすることが求められます。
 請求人は、職員措置請求書の中で、県幹部ではない総務部所属の課長クラス以下7名について、会費一人当たり7000円として、7名で4万9千円が不当に「社会参加費」から支払われたとして、それを決裁したと思われる総務部長に対して、返還させるように群馬県知事に勧告を出すよう求めています。
 事実証明書12として「群馬県・総務部の交際費・社会参加費28年4月」という情報を職員措置請求書と共に提出してあります。
 その後、監査委員事務局を通じて指摘を受けた「補正」でも述べさせていただいたように、県のホームページにある総務部の「社会参加費」を詳しくチェックしてみても、28年4月分の会費として、件数10、支出額98,000円としか記載がなく、本当にこの中から7名の職員の会費が支出されたのかどうか、定かではありません。
 市民オンブズマン群馬で行政の税の無駄遣いを長年、追及している者として、請求人は、こうした不透明な支出についてはきちんと県民に説明し、不正経理の温床をたちきることが最重要視されるべきだと考えています。
 さもないと、今回の職員7名の会費が、裏金を原資として支出された可能性が懸念されるからです。
 また「社会参加費」から支出された場合、ホームページには、支出項目として「会費」とか「懇談」「賛助会員」「香典」「供花」「見舞い」「お祝い」「記念品等」としか示されておらず、個々の支出先や支出額、支出日についても、全く記載されていません。
 やはり、監査委員の皆さんから、知事に対して、こうした不明朗な支出が疑われないように、詳しい支出情報、あるいは領収書をホームページ上に掲載して公表できるよう改善を勧告していただくようお願いする次第です。
 そもそも、この「社会参加費」というのは、意味不明な呼称です。群馬県のホームページを見ても、「社会参加費」の執行基準のような情報はどこにも見当たらないからです。
 さらに、この「社会参加費」という呼び方について、他の都道府県ではどこもこのような名称を使っていないようです。なぜなら、通常は「交際費」あるいは「食糧費」として支出されるべきものだからです。
 このように、今回の住民監査請求では、金額的には5万円以下の少額かもしれませんが、「社会参加費」が裏金で支出されている可能性も否定できない状況なので、監査委員の皆さんには、ぜひ、徹底的に監査をしていただき、県民の目の届かないところで、裏金づくりに励みたがる庁内の悪(あ)しき体質を白日の下にさらしてもらいたいと願っております。
 そうすることにより、群馬県庁のDNAとなっている不正経理の温床を、こんどこそ断ち切って、群馬県民、納税者に対して少しでも信頼を取り戻すための、スタートの一歩になるかもしれないです。

 以上で、請求人の陳述をおわります。
**********

■上記の陳述内容で、「請求人」「会計検査院」「社会参加費28年4月」など3点ほど監査委員から誤字として指摘がありましたが、概ね陳述内容については理解してもらえたようです。

 なお、当日、監査委員で出席したのは代表監査委員の丸山委員と議会選出の須藤委員の2名のみでした。このことについて、監査委員事務局は「陳述人の小川さんが出席するかどうかわからなかったため」などと説明していましたが、この問題について監査委員事務局が十分重要性を認識していないのではないか、と思わせる発言です。

 監査委員による監査結果は、おそらく新年度の4月上旬までに当会に通知されるものと思われます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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大同有毒スラグ問題を斬る!・・・国土交通省はなぜ瑕疵担保責任を問わないのか?

2017-02-27 00:38:00 | スラグ不法投棄問題

■2017年3月19日(日)に全線開通することになると国交省が発表した上武道路は、さながら「有毒スラグ街道」の異名をほしいままにしています。この有害スラグ街道について、本来なら天然盛り土を使用しなければならないところ、工事を請け負った建設会社のミスで有害スラグ入り盛土材を使用してしまったのですから、故意か否かを問わず業者の瑕疵担保責任を適用して、有害スラグ入り盛土材を撤去させ、天然盛り土に入れ替えさせるために、業者に費用を負担させなければならないはずです。ところが、実際には国の予算を使って、しかも、環境に対し安全な「がれき類」を装って有害スラグを撤去(?)しているように見受けられます。盛土材撤去を巡るドサクサに紛れて、国土交通省のお役人様による、国民に対する背任行為がウヤムヤにされてしまわないか、当会ならずとも心配なところです。

上武道路環境対策その1工事で発生した産業廃棄物の保管場所の看板。盛り土に不法投棄された有害スラグをほんの一部撤去すると思われる工事?であるのに、なぜコンクリートなどを砕いた有毒物質のない「がれき類」を装っているのだろうか?その心は、看板には「がれき類 H25 上武道路田口改良工事で路体盛り土に使用した盛土材」と書いてあるからだ。
※この謎について、詳しくはこちらをご覧ください。↓↓
大同有毒スラグ問題を斬る!・・・国交省によるゴマカシの極み「上武道路環境対策工事」は謎だらけだ!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2148.html#readmore



上武道路田口改良工事と言えば、高崎河川工事事務所から優良工事表彰まで受賞した、あの工事なのだろうか?有害スラグで盛土の費用は安く抑えられるし、優良工事まで受賞するし、で、さらにお咎めも無し、とくれば、さぞかし建設会社としてはご満悦であったことだろう。




盛土材を「がれき類」として撤去した後、また別な盛り土で埋め戻していた。側溝などを敷設するための工事ではなく、文字通り有害スラグを撤去する環境対策である、と疑われてれも仕方あるまい。

■さて「H25 上武道路田口改良工事で路体盛り土に使用した盛土材」が「がれき類」として撤去されていた上武道路環境対策その1・2工事ですが、上武道路田口改良工事で使用された路体盛土材に問題があったから撤去されているのだと考えられます。

 大型トラックが頻繁に通ることが予定されている大動脈の上武道路工事の基礎となる盛り土材に問題があったなら、その道路は致命的欠陥をもった道路という事ができます。この田口改良工事について建設を請け負った業者にはどのような責任があるのでしょうか?

 国交省のお役人様、きちんと責任の所在を明確化する気はあるのかどうか、有言実行でお願いします。

■第187回国会の経済産業委員会において、塩川委員から次の質問がありました。

「路体という盛り土。この上武国道の工事においては、材料はどのような仕様を指定しているんでしょうか。」

 この質問に対し国土交通省・山田政府参考人は、次のとおり答えています。

「れき質土という仕様でございますので、仕様には合っていないということが言えると思います。」

 つまり上武道路工事の路体盛り土材には「れき質土」というものが指定されていて、スラグ混入盛土は「仕様に合っていない」と答えているのです。そこには、フッ素毒が基準値以内であるかどうかなどは関係ないのです。たとえ環境基準値上は無害であっても、仕様に合っていなければ問題がある、とは国交省の参考人がハッキリと話しているのです。

■この仕様に合っていない、スラグ入り盛り土は本来どのように対処されるのでしょうか? 引き続き、第187回国会の経済産業委員会を見ていきましょう。

**********
○塩川委員 仕様で指定されたもの以外を実際は使用しているということになるわけであります。
 その上で、このように仕様書に反するような事案が既に発生している。こういった鉄鋼スラグは、路体部分だけではなくて路床部分にも使われているという指摘もあって、それのエージングの措置がきちっと行われていないために、膨張して、結果、壁面が膨れ上がるような事態が現に上武国道などで生まれているんですよね。そういったこともしっかりと調査が求められておりますし、そもそも仕様に違反するような事例があるのであれば、撤去を含めた必要な是正措置を行うべきだと考えますが、いかがですか。

○山田政府参考人 お答えいたします。

 まず、一般論といたしまして、発注者は、工事目的物に仕様に反した材料の使用などの瑕疵がある場合には、受注者に対してその瑕疵の補修を請求するか、損害の賠償を請求することができます。しかしながら、実際にどのような請求をするかということにつきましては、瑕疵の程度を総合的に検討し、判断することになります。
 今回の案件等につきましては、廃掃法に基づく調査が今群馬県において行われております。この結果も瑕疵の程度を判断する材料の一つになると考えておりますので、群馬県の調査結果あるいは対応を踏まえて、関係機関と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。
**********

■第187回国会では、路体盛土に瑕疵があれば、工事の受注者に対して瑕疵担保責任を負担させると議論されています。実際にはどうなっているのでしょうか?

 
上武道路環境対策その1・2工事として3億4千万もの血税が使用されて、国が問題(瑕疵)を不完全ながら補修していることになっています。

 国土交通省は国会での議論を何だと思っているのでしょうか?

 群馬県は大同特殊鋼由来のスラグを「鉱さい」という廃棄物と認定しました。それを踏まえ、あえて「がれき類」と表示して、スラグを国土交通省自ら撤去することは、瑕疵担保責任が発生しないようにしているとしか思えません。

 血税を使用して別工事を発注してでも、工事の瑕疵から受注業者をかばい、優遇しようとする。これは、国民に対する国土交通省の背任行為そのものではないでしょうか?

■2016年10月6日に上武道路・日輪寺改良工事の盛土材にまたしても、鉄鋼スラグが混入していることがわかりました。


日輪寺改良工事にまたしても混入されていた有害スラグ。検査結果も何カ所も検査をして、0.18mg/Lと通常の0.08より高い値を示し、全体に有害スラグが少しずつ混ぜられていたことが分かる。
※この件について、詳しくはこちらをご覧ください。↓↓
【続報】大同有毒スラグを斬る!・・・前橋の上武道路・鉄鋼スラグがまたしても混入報道?!②
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2152.html#readmore

 国土交通省は有害スラグ混入に関し、「調査結果は土壌環境基準に適合していることから、環境保全上の影響はないと判断できる」として基準値以内を理由として工事を再開しました。
※この件について次のURLを参照ください。↓↓
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/takasaki_00000290.html

 土壌環境基準に適合していることが、レキ質土という盛り土の仕様に合っていると、果たして言えるのでしょうか?

 山田政府参考人によれば、「スラグ入り盛り土は仕様に合っていない」と国会で答弁が為されています。日輪寺改良工事を受注した建設会社には何の責任を取らせることなく、国交省は工事を再開させていますが、このことも国民に対する背任行為ではないのでしょうか?特定の業者に便宜をはかり、優遇しているのではないのでしょうか?


田口改良工事と同じく有害スラグが混入していた日輪寺改良その8工事。スラグを撤去しなくて良いのか!


上武道路日輪寺改良その8工事に掲げられた旗印。田口改良工事に続きスラグ入り盛り土を使用?したようだ。


有害スラグ入り盛り土事件の全てに関与していた(株)佐藤建設工業。日輪寺改良その8工事も佐藤建設工業が下請けをしていた。

 スラグの撤去については、まずは工事を受注した建設業者が瑕疵担保責任を負担し、佐藤建設工業とその負担について話し合っていただく必要がある。それでも佐藤建設工業が四の五の言うなら、当然工事を受注した業者は、警察に詐欺の被害届を出すなり、不法投棄で刑事告発するなり対応をすることになるのではないでしょうか? 何もしないと言うのであれば、そこには、悪質性の存在を疑わざるをえないのではないでしょうか?

■当会は微力ながら全力を挙げて、この稀代の組織的不法投棄事件を追及し、責任の所在の明確化によって、再発防止につなげたいと思います。

【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】

※参考資料1
この上武道路環境対策工事にはなんと3億4千万円もの血税が投入されています
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000654811.pdf
上武道路環境対策その 1工事
群馬県 前橋市 261日間 一般土木工事 高崎河川国道事務所 群馬県高崎市栄町6-41 2016/7/13 萬屋建設(株)
群馬県沼田市上原町1 756-2
一般競争入札 有 予定価格185,814,000 契約金額176,904,000落札率 95.20%

上武道路環境対策その 2工事
群馬県 前橋市 ~ 群 馬県 北群馬郡 吉岡 町
262日間 一般土木工事 高崎河川国道事務所 群馬県高崎市栄町6-41 2016/7/12 宮下工業(株)
群馬県前橋市石倉町5 -14-9
一般競争入札 有 予定価格180,457,200契約金額 167,400,000 落札率92.76%

※参考資料2
第187回国会の経済産業委員会第8号(平成26年11月12日)において、国土交通省の山田政府参考人は、次のように述べています。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009818720141112008.htm
**********
○塩川委員
あわせて、次に国交省にお尋ねしますが、前橋市内の上武国道の工事であります。

 上武国道の工事に当たって、再生砕石を使用することになっているのか、なっていないのか。その点について、道路の場合には、アスファルト舗装面の下に路盤があって、その下に路床があって、さらには路体という盛り土部分があるわけですけれども、こういった路盤、路床、路体というのは、この上武国道の工事においては材料はどのような仕様を指定しているんでしょうか。

○山田政府参考人 お答えいたします。

 道路に使用する材料の仕様につきましては、それぞれの工事ごとに定められているわけでありますけれども、例えば上武道路の小神明地区ほか改良工事におきましては、国が示した契約図書のうち、工事数量総括表で、路体部分の材料の仕様はれき質土というふうに記載をされているところでございます。(塩川委員「路床、路盤はどうですか」と呼ぶ)路盤のデータは持っておりません。済みません。

○塩川委員 少なくとも路体部分はれき質土ということですから、再生砕石、つまり、鉄鋼スラグも含めたリサイクル品をまぜ合わせたものということになっていないわけであります。

 実際に国交省の調査においても、盛り土部分に相当する路体の部分に鉄鋼スラグが使用されているという事例があったわけであります。これは、路体はれき質土だという仕様の指定に反している事例ではありませんか。

○山田政府参考人 れき質土という仕様でございますので、仕様には合っていないということが言えると思います。

○塩川委員 仕様で指定されたもの以外を実際は使用しているということになるわけであります。

 その上で、このように仕様書に反するような事案が既に発生している。こういった鉄鋼スラグは、路体部分だけではなくて路床部分にも使われているという指摘もあって、それのエージングの措置がきちっと行われていないために、膨張して、結果、壁面が膨れ上がるような事態が現に上武国道などで生まれているんですよね。そういったこともしっかりと調査が求められておりますし、そもそも仕様に違反するような事例があるのであれば、撤去を含めた必要な是正措置を行うべきだと考えますが、いかがですか。

○山田政府参考人 お答えいたします。

 まず、一般論といたしまして、発注者は、工事目的物に仕様に反した材料の使用などの瑕疵がある場合には、受注者に対してその瑕疵の補修を請求するか、損害の賠償を請求することができます。しかしながら、実際にどのような請求をするかということにつきましては、瑕疵の程度を総合的に検討し、判断することになります。

 今回の案件等につきましては、廃掃法に基づく調査が今群馬県において行われております。この結果も瑕疵の程度を判断する材料の一つになると考えておりますので、群馬県の調査結果あるいは対応を踏まえて、関係機関と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 最後に大臣にお尋ねします。

 群馬県内において、広範囲に大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグが使われておりました。その中には、今の国交省の工事のように、仕様に合わないものを使うという形での、仕様に反するような事例も現に起こっている。これはこれとしての是正が必要であります。さらには、何よりも、土壌環境基準を超えるような有害物質を含む鉄鋼スラグというのが、住民の生活の身近なところで大量に使われているという問題があるわけであります。

 こういった鉄鋼スラグがリサイクルとして使われてきたということがそもそも問われるわけで、この点での大同特殊鋼自身の責任というのが大いに問われるということについての大臣のお考えをお聞きしたいのと同時に、こういったリサイクル品の活用を促進する政府の政策そのものがこのようなひずみを生み出したんじゃないのか。結局は、コストダウンを図るために、廃棄物に回すと金がかかるからリサイクルにしてという形でコスト削減を図るような企業のこういう行動を、政府のリサイクル推進の姿勢が結果として後押しをするようなゆがみになっているんじゃないのか。

 こういう二点についてお答えください。

○宮沢国務大臣 私も、地元が広島県の福山市で、JFEの大変大きな工場がありまして、鉄鋼スラグというのはある意味で大変大事なものだということだと私自身は思っております。

 ただし、今回の事案というのは、あってはならないことが起こったわけでありますので、まず一点、大同特殊鋼自身については、国交省、環境省とも連携しながら、しっかり指導監督をしてまいります。

 また一方で、同様の事案の再発というようなことが一番いけないわけでございますので、再発防止のために、業界に対して、今、自主管理基準の見直しをお願いしております。それでしっかり対応していきたいと思います。

○塩川委員 コスト優先の企業体質とリサイクル品の使用拡大を進めてきた政府、国の意図というのがこういう結果につながったんじゃないのかということを改めて強く指摘して、質問を終わります。
**********

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東電の毒牙から赤城と県土を守れ!・・・環境アセス不要の根拠文書不存在訴訟の原告準備書面(1)を提出

2017-02-26 20:25:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災
■群馬県環境影響評価条例では、事業者が排出ガス量が1時間当たり最大4万ノルマル㎥を超える工場又は事業場を新設または増設する場合、環境影響評価方法書の作成を義務付けています。そして、事業者から送付された環境影響評価方法書は群馬県により公告、縦覧され、県民は意見書を提出することができることになっています。

 ところが、東電グループでも最大の関電工らが計画している前橋バイオマス発電施設では、排出ガス量が毎時4万ノルマル㎥を超えるにもかかわらず、条例に基づく環境影響評価方法書の作成が為されていません。関電工の説明では、群馬県との協議により、特例扱いとされたことになっています。

 そのため、当会ではなぜ群馬県が関電工に対して「特例」措置を行ったのか、その経緯を徹底追及するため、情報開示請求を行いましたが、不存在という理由で一切開示されませんでした。

 ところがその後、当会の調査で、実際には水分20%として排ガス量を計算してもよいという起案が群馬県の環境行政内部文書として存在することが判明したのです。そこで当会は2016年11月4日に不存在決定処分の取消を求めて提訴しました。

■その第1回口頭弁論期日が、2017年1月18日(水)午前10時30分から前橋地裁の第21号法廷で開催されました。

 第1回口頭弁論では、裁判長から原告に「反論があると思うが、どうか?」と聞かれたので、原告は「はい、山ほど反論があります」と答えました。すると裁判長は「どのくらいの期間が必要か?」と聞くので、原告は「1ヶ月あれば十分対応できます」と答えました。

 その上で裁判長は、「では原告には、2月17日までに書面を出してもらいたい。そうすると次回の第2回口頭弁論期日は3月1日午前10時30分でどうか?」と述べたので、原告は「分かりました」と答えました。ところが、被告の訴訟代理人は「差支えます」と述べました。

 裁判長は、「そうすると、3月8日午前10時30分ではどうか?」というので。原告は「異存ありません」と言いましたが、被告訴訟代理人はまたもや「差支えます」と注文を付けました。結局、第2回口頭弁論は3月15日(水)午前10時30分。大丈夫か?」というので、原告らは「大丈夫です」というと、ようやく被告訴訟代理人も「はい」と言いました。

 この第1回口頭弁論期日までの本件の経緯は次のブログをご覧ください。
〇2016年11月6日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!・・・環境影響評価条例を歪めた証拠文書不存在でオンブズが県を提訴
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2155.html
〇2016年12月12日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!・・・環境アセス不要の根拠文書不存在訴訟で地裁から補正指示
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2184.html
〇2017年1月15日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!・・・環境アセス不要の根拠文書不存在訴訟で被告群馬県から答弁書
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2208.html
〇2017年1月19日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!・・・環境アセス不要の根拠文書不存在訴訟の1.18第1回弁論の様子
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2216.html

■それから1ヶ月が経過した2月20日(月)午前11時35分に前橋地裁の書記官から電話がありました。聞くと、「2月17日(金)までに反論のための準備書面の提出がないが、どうしたのか?」と書記官が言うので、原告は「確か3月15日が次回弁論期日だったので、1週間前に提出すればよいと考えていました」と言いました。

 すると書記官は、「たしかに今すぐでなくても構わないが、裁判長は大変時間を気にするかたなので、法廷で決めたことにこだわられるため、早めに出せるなら出した方がよい」という趣旨を述べました。

 そこで早速、原告準備書面(1)の作成に着手し、4月23日までに書き上げました。そして、一昨日2月24日(金)午前11時30分に、当会の事務局長が裁判所と被告訴訟代理人に次の内容の裁判資料を提出しました。

*****原告準備書面(1)*****
事件番号 平成28年(行ウ)第24号 公文書不存在決定処分取消請求事件
原告  市民オンブズマン群馬
被告  群馬県

                        平成29年2月24日

前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中

            原告準備書面(1)

                原告  市民オンブズマン群馬  ㊞

 平成29年1月10日付の被告答弁書に関する原告の反論を次のとおり陳述する。

第1 「第3 被告の主張」について

(1)「1 本件文書(請求の原因第1の1と同義。以下同じ。)は存在しない」について
 被告は、「群馬県環境影響評価条例に基づく環境アセスメント(以下「条例アセスメント」という)は,事業者において,その対象となるか否かを自ら判断する制度である。つまり,後述のとおり,行政機関は,条例アセスメントにつき,その対象となるか否かを判断する立場にない。したがって,その判断に関する情報を記録する必要性はなく,また,同条例上も求められていないことから,これに係る公文書は存在しないのである」と主張するが、失当である。
 被告が定めた群馬県環境影響評価条例(以下「条例」という)(甲6)の第3条(県等の責務)には、「県、事業者及び県民は、群馬県環境基本条例(平成8年群馬県条例第36号)第3条の基本理念にのっとり、事業の実施前における環境影響評価の重要性を深く認識して、この条例の規定による環境影響評価その他の手続が適切かつ円滑に行われ、事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し、又は低減することその他の環境の保全についての配慮が適正になされるようにそれぞれの立場で努めなければならない。」と明記してある。
 この趣旨は、「この条例により、手続きが円滑に行われることにより、環境保全等を図れる」ことが前提である。にもかかわらず被告は「事業者の自らの任意の判断で実施しなくてもよい」と断言している。条例のどこにそのようなことが記載されているのか、原告はもとより県民の誰もが読み取れない状況に置かれていることを被告は知るべきである。このことについて、被告に釈明を求める。こうして被告は条例を捻じ曲げて解釈しようとしており、その主張は県民の健康や命、そして、環境の保護をないがしろにするものである。
 条例第46条(勧告及び公表)第1項には、「知事は、事業者が条例の規定に違反して環境影響評価その他の手続を実施しなかったときには、当該事業者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる」と明記してある。ところが被告の主張は、事業者が自らの任意の判断で手続きを実施しなくても、それは事業者次第であるから問題ないというふうに受け取れる。このことは、「事業者が条例に定めた手続きをしなかったときに、当該事業者に対して、必要な措置をとるべきことを勧告できるが、被告はそれを怠ったので勧告をすることができなかった」という意味とは全く異なり、条例の趣旨を完全に逸脱するものである。もし被告が主張するように、環境アセスメントの実施の有無を、事業者自らの判断に委ねているとすれば、この第1項は意味をなさず不要なものになってしまう。このことに関する被告の釈明を求める。
 条例第46条第2項には、「知事は、事業者が前項の規定による勧告に従わなかったときは、規則で定めるところにより、その旨を公表することができる」と定めがある。被告の主張が仮に正しいとすれば、事業者が自らの任意の判断で環境アセスメントの手続きをしなくてもよいのだから、第1項の規則による勧告に従わなくても何ら問題がないのであり、この第2項は意味をなさない不要なものになる。このことに関する被告の釈明を求める。
 さらに条例第46条第3項では、「知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、その公表の理由を当該事業者に通知し、当該事業者が意見を述べ及び有利な証拠を提出する機会を与えなければならない」と定めている。だが、被告の主張が仮に正しいとすれば、環境アセスメントの手続きをしない業者に対して、公表の理由を通知する必要もなく、当該事業者から意見を聴取する機会も不要になるわけであり、この第3項は意味をなさない不要なものになる。このことに関する被告の釈明を求める。
 被告が定めた群馬県環境影響評価条例施行規則(以下「施行規則」という)(甲7)の第3条(第一種事業)には「条例第2条第2項の規則で定める事業は、別表第一の第一欄に掲げる事業の種類ごとにそれぞれ同表の第二欄及び第三欄に掲げる要件に該当する一の事業並びに第5条第1号の規定により第一種事業に係る環境影響評価その他の手続を実施するものとする一の事業とする」と明記してある。本件事業は第一種事業に該当するのだから、施行規則によっても環境影響評価等の手続きを実施するものとされており、完全に義務付けがうたわれている。
 以上のことから、被告が主張する「条例アセスメント」では、事業者が自ら要否を判断するという根拠は全く見当たらない。被告は特定の事業者の権益を脱法的に守るために、特例措置をとったことになり、まさに、条例順守を事業者に支持する立場の被告が、自ら条例をないがしろにしていることになり、被告の存在意義を自ら否定することになる。この自己矛盾に関して、被告の釈明を求める。

(2)「2 環境アセスメントの手続について」について
 被告は「群馬県内における環境アセスメントには,環境影響評価法(以下「法」という)に基づくアセスメント(以下「法アセスメント」という)と,群馬県環境影響評価条例に基づく条例アセスメントの2種類があり,それぞれアセスメントの対象事業を別個に規定する。すなわち,法アセスメントの対象事業に該当しない類型及び規模の事業であっても,環境に影響を及ぼす程度が著しいと考えられる類型の事業について,一定の規棋要件を満たす場合に条例アセスメントの対象事業となる。 まず,法アセスメントは,その対象事業として,第一種事業及び第二種事業を規定し,第一種事業については無粂件でアセスメントが必要であるとし,第二種事業については,アセスメントが必要かどうかにつき行政機関による「判定」を行うものと規定している(同法2条3項,4条)。この「判定」手続では,事業者の届出により,主務大臣等が,都道府県知事の意見を聴いたうえ,環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあると認めるときに,アセスメントが必要であると決定する(同法4条)。例えば,火力発電所の設置工事事業を行う場合,出力が15万キロワット以上であれば第一種事業に該当し,出力が11万2500キロワット以上15万キロワット未満であれば,第二種事業に該当する(法施行令別表第1の5号ホ)。第二極事業に該当する場合,法アセスメントが必要かどうか「判定」が行われることになる。この点,「前橋バイオマス発電施設」については,出力が6700キロワットであるため,その設置工事が法アセスメント対象事業ではないことは明白である」などと、条例とは関係のない法について縷々説明しているのは争点を意図的にぼやかすものであり遺憾である。
 さらに被告は「他方,群馬県環境影響評価条例に基づく条例アセスメントは,法アセスメントの適用対象とならない事業のうち環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業を対象とするものである(同条例2条2項,3項)。同条例は,その規定する第一種事業及び第二種事業について,いずれも条例アセスメントの対象事業となるか否かにつき「判定」を必要としていない(同条例2条2項,3項,5条,25条)。この点,「前橋バイオマス発電施設」設置工事は,同条例施行規則別表第1のG号イ(工場又は事業場の新設又は増設の事業)により,排出ガス量(温度が0度で圧力が1気圧の状態に換算した1時間あたりの湿り排出ガスの最大量)が「4万立方メートル以上」である場合,条例アセスメントの対象となる」と主張して、「判定」は必要とされない、などと、およそ原告が聞いてもいないことを持ち出して、あたかも「判定」は不要だから、事業者が自ら任意で該当するかどうかを判断することが正当であるかのような、呆れた論旨を主張しているのは、順法精神が強く求められる自治体・公務員としてあるまじきふるまいであることをここにはっきりと指摘しておきたい。ちなみに、同条例2条2項、3項では、「別表に規則として定めるもの」と明記があり、同条例5条、25条では、「環境影響評価方法書を作成しなければならない」と明記されており、「判定」ではなく、「義務」付けがなされているのである。
 ところが被告はあくまでも自らのコンプライアンス違反を糊塗したいらしく、挙句の果てに被告は、「このように,『前橋バイオマス発電施設』設置工事は,法アセスメントの対象とならないことは明白であり,条例アセスメントの対象となる可能性があるのみであるから,法アセスメントの第2種事業に適用される『判定』(スクリーニング)は不要である。この点,原告は,法アセスメントと条例アセスメントに必要とされる手続を混同し,環境政策課がアセスメント対象除外を判断したのであると誤解したものと思料する」などと、自ら特定事業者に便宜を図るあまり、法外な理屈をこじつけて自らの不法行為を正当化しようとしているが、到底許されてはならないものである。

第2 求釈明

(1) 被告は「事業者の自らの任意の判断で実施しなくてもよい」と断言するが、条例のどこにそのようなことが記載されているのか、具体的な個所を示してわかりやすく説明されたい。
(2) もし被告が主張するように、環境アセスメントの実施の有無を、事業者自らの判断に委ねているとすれば、条例第46条(勧告および公表)第1項は意味をなさず不要なものになってしまうと思われるが、被告の見解を質したい。
(3) 仮に被告の主張が正しいとすれば、条例第46条第1項の規則による勧告に従わなくても何ら問題がないわけであり、条例第46条第2項は意味をなさない不要なものになると思われるが、このことに関する被告の見解を質したい。
(4) 仮に被告の主張が正しいとすれば、環境アセスメントの手続きをしない業者に対して、公表の理由を通知する必要もなく、当該事業者から意見を聴取する機会も不要になるわけであり、条例第46条第3項は意味をなさない不要なものになると思われるが、このことに関する被告の見解を質したい。
(5) 被告が主張する「条例アセスメント」では、事業者が自ら要否を判断するという根拠はどこにも見当たらない。被告は特定の事業者の権益を脱法的に守るために、特例措置をとったことになり、まさに、条例順守を事業者に支持する立場の被告が、自ら条例をないがしろにしていることになり、被告の存在意義を自ら否定することになると思われるが、この自己矛盾のリスクに関して、被告の見解を質したい。
                       以 上
*****証拠説明書(甲6・7)*****
PDF ⇒ buev20170224.pdf

*****甲第6号証*****
PDF ⇒ 20170224b61.pdf
    20170224b62.pdf
    20170224b63.pdf

*****甲第7号証*****
PDF ⇒ 20170224b71.pdf
    20170224b72.pdf
    20170224b73.pdf
**********

■まもなく東日本大震災と東電福島第一原発事故から6年が経過します。今日の東京新聞の一面記事によれば、福島第一原発をはじめとする廃炉や使用済み燃料処理など原発の後始末に要する費用が膨張していて、同紙が政府推計や予算資料を集計してみたら、国内の原発処理の経費は最低40兆円に達することが判明したということです。

 また、政府は、福島の原発事故の処理費を2014年の時点で11兆円と推計していましたが、現在は21.5兆円に倍増していて、被災者への賠償金は、新電力会社も含めて全国民の電気代に転嫁され、福島原発廃炉費用も東電管内では電気代負担となる見通しであり、除染費用も一部地域について2017年度から税金投入(初年度300億円)されることになっています。

 原発事故のせいで、これほどまでに国民に負担を強いておきながら、群馬県の場合、さらに放射能汚染された林地の間伐材や廃材を、バイオマス発電という名目で、焼却処理をしようとする東電グループの関電工の陰謀計画に加担し、我々国民・県民の血税4.8億円を間伐材・廃材チップ工場建設のためにくれてやるほか、環境アセスメント条例さえも不問にして、便宜を図る始末です。

■群馬県がいかに関電工のために便宜をはかっているのか・・・3月15日(水)午前10:30から前橋地裁本館2階21号法廷で開かれる第2回口頭弁論において、裁判長がどのような訴訟指揮をするのか、引き続き注目されます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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群馬高専によるアカハラ事件情報開示拒否と、マスコミによる万引き事件「犯行画像」公開批判との比較考察

2017-02-24 22:25:00 | 群馬高専アカハラ問題
■全国で万引き被害店による「犯行画像」の公開が相次いでおります。これに関連して、こうした行為は「人権侵害」の恐れがある、などという意見が一部のマスコミ評論で見受けられます。この問題と、現在当会が東京地裁で係争中の群馬高専を巡るアカデミックハラスメント(通称:アカハラ)事件の関連性を検証してみました。

めがねお~御徒町店のHPのモザイク付「犯行画像」。なお、万引き犯は2月14日に逮捕された。


 群馬高専のアカハラ事件では、学科長による学内でのアカハラ行為に関して被害者である学生らからの告発や一部教職員からの学校長に対するアカハラ被害状況報告と是正措置の申し立て、そしてそれらに対する学校側の対応に関する情報開示を群馬高専に行わせることが、開かれた教育環境の実現のためには必須である、と考えて、当会は情報開示請求を行いました。

 ところが、群馬高専(=国立高専機構)側では、アカハラ情報は個人情報のため開示することか「プライバシーの侵害」にあたるとして、当初は、存否の応答さえ拒否しました。当会が異議申し立てをしたところ、群馬高専から諮問を受けた内閣府の情報公開・個人情報保護審査会が、1年ほどかけて審議をした結果、「不開示処分取り消し」の答申を行いました。しかし群馬高専側は、存否を明らかにしただけで再度不開示処分を行いました。

 アカハラ事件の態様に関する情報の公表について群馬高専側は、公表を拒む理由を「個人のプライバシー保護」の観点からだ、と主張しています。

■他方、万引き事件の態様に関する情報の公表について、マスコミの一部は、万引きの「犯行画像」の公開は「名誉棄損、人権侵害」にあたる、と批判しています。

 万引き事件の場合、被害者は万引きで利益が失われた店舗となりますが、一部のマスコミによる人権侵害を理由とする批判によれば、被害者は「犯行画像」の公開で名誉を棄損される万引き犯人ということになってしまいかねません。これでは本末転倒です。なぜなら万引き犯人は加害者のはずですから。

 ひるがえって、群馬高専内で発生したアカハラの被害者は学生や一部の教職員です。ところが、群馬高専は、当会の情報公開請求に対して、存否を含めて一切の情報を開示しないとした理由は、「個人のプライバシー」だと主張しています。この時の個人のプライバシーというのは、誰のプライバシーなのでしょうか。

 当会は、もし保護されるべきプライバシーがあるとすれば、それはアカハラの被害を受けた学生や一部の教職員だけだと考えています。ところが群馬高専側は、万引き事件における一部のマスコミの論調と同様に、加害者にも「人権」があり、アカハラの事実を公表することは、加害者とされる学科長の「名誉棄損」に当たると考えているようです。

 万引きの場合、被害店の「犯行画像」で犯行の態様がビジュアルに明らかになっているわけですが、万引き被害店の経営者が警察に被害届を出しても、警察では「画像には、被疑者が店から出るところは映っていないので証拠として不十分だ」として、捜査に慎重な姿勢を示すため、なかなか被害届を受理してもらえないようです。

■確かに、万引きの「犯行画像」だけでは、万引き犯が商品をポケットにこっそり入れ込んでいるのが画像で判別できたとしても、万引きの被疑者が万引きした商品をもって店を出たかどうかがわかりません。だから、万引き犯を現行犯で捕まえるには、店を出た直後に直接被疑者を拘束して、商品を保持しているかどうかを確認したうえで、現行犯で逮捕するしかありません。

 万引きをしたかどうかは、商品が対価を支払われずに店の外に持ち出されたかどうか、で判断されるわけです。したがって、万引き防止のために、商品のひとつひとつにICチップを装着して、店の出口にセンサーを設けておく店舗もあるようです。ここでアラームをならせば、結果的に万引き犯として逮捕するに至らなくても、店側としては商品の対価は支払ってもらえるからです。

 万引きの「犯行画像」だけでは、いくら客観的な助教証拠が固まっているとしても、僅かな疑義がある限り、「冤罪」の可能性があるから、「名誉棄損」というそしりを受けかねないので、「犯行画像」の公表はよくない、というのが、一部のマスコミの論拠のようです。

 当会は、むしろ「犯行画像」を公開することで、被疑者から堂々と「名誉棄損」で訴えてもらえばよいというふうに考えています。事実無根による名誉棄損であれば、「犯行画像」を公開した万引き被害店側も納得できるからです。万引きによる被害額に比べれば、むしろ名誉棄損で告訴されて裁判で決着させたほうが、敗訴して名誉棄損による損害賠償金を支払っても、そのほうが合理的だと思うのではないでしょうか。

 いずれにしても、現行犯逮捕ではなく、防犯カメラによる画像だけでは被疑者特定に疑義を生じかねないので、「犯行画像」の公開は、被疑者に対する人権侵害や名誉棄損だというのが一部のマスコミの論調の根拠とみられます。

■これを群馬高専のアカハラ事件と比較してみましょう。

 万引きされた商品は、万引きされたときの状況を語ることができません。しかし、アカハラの被害を受けた学生や一部の教職員らは、実際にアカハラの被害者として一部始終を語ることができます。そうした状況を口頭、あるいは文書のかたちで、学校の管理責任者である学校長に告発あるいは報告を申し立てたのですから、これらに関する情報が公開されたとしても、当該被害者にとっては「人権侵害」でもなければ「名誉棄損」でもないはずです。

 むしろ、アカハラにかかわる告発や報告の申し立て情報を、学校側が隠匿すること自体、被害者の尊厳を損なわせることになるため、これこそ「人権侵害」であり「名誉棄損」であるに違いありません。

 ましては、加害者に関する情報を公開することは、「プライバシー保護」となるはずがなく、ましては「人権侵害」や「名誉棄損」になるはずがありません。

 このように群馬高専には、アカハラ事件の情報開示をためらう理由がまったく見当たりません。一刻も早く、自ら率先してアカハラ事件に関する情報公開を行うことで、開かれた教育環境を、学生や保護者のみならず、将来の受験生やその保護者、中学校や塾の関係者に対して有言実行の姿勢をアピールできるのです。

 アカハラと決別する気概を本当に持っているのか。その踏み絵として、群馬高専には、これまでのアカハラ事件の情報をすべて公表し、責任の所在と再発防止策を明らかにする義務があるのです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報
**********デイリー新潮2017年2月23日 8時0分
万引き画像公開騒動 めがねお~社長が語る「警察が動かないならやるしかない」
〈WANTED〉〈あなたです!! 徹底的に追いかけます!!覚悟してください!!〉
 上野近辺に店舗を構える眼鏡小売店「めがねお~」。その御徒町店のHPに物騒な言葉がアップされたのは、2月7日のことだった。
 遡るその3日前、店は万引きの被害に遭遇。激怒した社長が、防犯カメラに映った“犯人”のモザイク付画像をアップし、3月1日までに返却か弁償をしなければ、モザイクも外す、と宣言したのだ。
■「めがねお~」社長が語る
 この言動、すぐにマスコミに報じられ、物議を醸すことになったのは周知の通り。まずは騒動そのものを、渦中のご本人に振り返ってもらおう。
「店長から“緊急です”と連絡があったのは、2月4日の夕方6時前でした」

防犯カメラの映像を公開した「めがねお~御徒町店」
 と述べるのは、社長の張谷満氏(59)。PC量販店の営業本部長を経て、約20年前に同社を設立した。従業員は10名程度、年間売り上げは1億から1億5000万円の規模である。
 社長が続ける。
「聞くと、俳優の哀川翔さんプロデュースの眼鏡『SAMURAI SHO』が7本なくなった、おそらく万引きです、と。瞬間、頭に血が上りましたよ。あれは予約制の限定発売で、1本約3万円。計21万円の損失は、うちみたいな会社にとっては洒落になりません。何とか捕まえられないかと思い、防犯カメラの映像を確認したら、やっぱりすぐに不審な男が見つかったのです」
 映像をみると、男は棚の前に立ち、「SAMURAI SHO」を下のトレイに降ろし、死角に消える。そんな動きを2度繰り返し、いつの間にか店を去っていたのだ。2月13日になって逮捕された容疑者と酷似している。
「ちょうどあの男が来る前には眼鏡が7本あり、去った後はない。確信を持ったのは翌日です。以前店に勤めていた従業員が、いま近くの中古ブランド眼鏡の買取店で働いている。彼に訊いたら、その夜、『SAMURAI SHO』をまさに7本売りに来た男がいるというじゃないですか。盗品ぽいから買わなかったと言うので、慌てて男の画像を送ると“こいつです!”と断言するのです」
 間違いない――そう思った社長は、さっそく警察に被害届を出した。が、反応は鈍かったという。
「画像には、男が店から出るところは映っていない。これでは、その男が万引きしたことの証明にはならないのだとか。買取店の話もしたけど、同じでした」
■動かない警察
 犯人の顔までわかる。それでも泣き寝入りしかないのか。眠れぬ夜を過ごした社長が思いついたのがHPでの“指名手配”だったのだ。
「警察が動かないなら、自分がやるしかない、と。店長も責任を感じて謝ってばかりで、店の雰囲気も悪かった。自分が何か手を打つしかないと思ったんです。うちの土日の売り上げは30万~40万円程度。利益はその何分の1かですから、これで数日分の労働がムダになってしまう。また、後でわかったのですが、この男は、万引きの日の昼にも店に来て、下見めいたことをしていました。悪質ですよ」
 とはいえ、もちろん葛藤はあったという。
「弁護士に相談すると、やはりリスクは高い、と。名誉毀損やプライバシー侵害で訴えられる可能性もあるそうです。でも、うちのような小さな会社にとっては、これくらいしないと取り返せない。“自衛”です。警察だって、殺人や強盗などの事件に人員を割くのはよくわかりますし……。それに、顔を出せば“ここでは万引きはできない”という抑止力にも繋がると思いました。それでも結局、決断まで2日半悩みまして……」
 ようやく7日の公開に至ったというワケなのだ。
 記憶に新しいのは、3年前、古書店「まんだらけ」が同じく万引き犯のモザイク写真をアップしたこと。結果、犯人は検挙された。
「それも頭にありました。当時、私も『まんだらけ』はけしからんと思っていましたが、同じことをやられてみるとよくわかる。今回の件は、リスクも、どんな批判でも甘んじて受ける覚悟を持っています」
■インテリは「人権侵害」と
 これが大きく報じられたのは、全国で同様の事態が相次いでいたからだ。
 その直前、千葉市内のファミリーマートや神戸市内のセブンイレブンが、「万引き犯」の顔写真を、こちらは店にモザイク無しで掲示していたことが発覚。
 テレビや新聞は、〈「人権侵害」指摘も〉と見出しを打った朝日新聞はじめ、多くは「店主の気持ちはわかるが、モザイクを取ることには、問題点もある」式の取り上げ方をした。
 曰く、その「問題点」とは、大別すれば3つ。
「万引きという罪とネット公開という罰のバランスが取れていない」「法的に名誉毀損、プライバシー侵害に当たる」「法治国家で禁じられている私刑に相当する」
 これらを弁護士や“識者”などがコメントするのである。こうした点に留意してか、先のコンビニ2店は早々に掲示を取り下げている。
■1日12億円の被害
 ところが、だ。
 NPO法人「全国万引犯罪防止機構」の福井昂事務局長は言う。
「確かに人権侵害になるかもしれない。一方で店主たちがそれほど困っているということをどれだけ理解してもらえているのでしょうか」
 一昨年の全国の万引きの件数は、11万7000件余り。うち検挙されているのは7割で3割は見逃されてしまっている。しかも、検挙率はここ10年で5%低下しているのだ。被害金額は年間4615億円、つまり、1日12・6億円の計算になる。
「店を責めるのはお門違いではないかと思います」
 と言葉を継ぐのは17年間この世界に携わる、万引きGメンの伊東ゆう氏である。
「以前は万引きの主な動機は、“魔が差した”的な“出来心”ゆえのものだった。しかし、最近は、大量、集団、高額、換金目的といった、シノギ的なものが目立ち、悪質さが増しています」
「めがねお~」の“犯人”も犯行の数時間後にさっそく換金を図っていたのは先に記した通り。
「こうした中で、被害者は苦しみ続けている。大型のチェーン店などでは、毎週のように大量万引きが起きていますが、警察もなかなか取り合ってくれない。私が関わった店で酷いところでは、ピーク時で売り上げの10%が持って行かれていたなんてところもありました。その責任は店長に押し付けられますからね。万引き犯を捕まえた時、殴りかかる店長もいましたし、そうでなくても大抵は“ぶっ殺してやる”という目をして睨んでいるものですよ」
 実際、小売店に聞いてみても、
「万引きはイタチごっこ。防犯カメラを付けても死角は生まれますしそれをチェックする時間も膨大にかかるのです。月に2万~3万円はやられますが、コストとして諦めていますよ」(都内のコンビニ店主)
 と言うのは随分マシな方で、より利敵率が低い書店に至っては、
「少年ジャンプ1冊盗まれると、50冊も売らないとカバーできません。うちの店は万引きで赤字になっていると言ってもおかしくない。他も同じで、書店店主の集まりでは、いつも万引きの苦労ばかり話題になっていますよ」(中部地方の書店店主)
 と嘆くのである。
「公開なんて当たり前。むしろ甘いくらいで、経営者の当然の権利ですよ」
 と断じるのは、福島県はいわき市在住の芹沢道雄氏。この芹沢氏、かつて同市で「セリザワ書店」を経営し、四半世紀前、万引きに耐え兼ね、防犯カメラで撮影した画像をビデオにして売ることを宣言。魏路を巻き起こした、言わば、本件の“パイオニア”的存在である。
 芹沢氏は言う。
「何せ、被害が酷くてね。知り合いの本屋の奥さんはノイローゼになってしまったくらい。結局、売るのはやめたけど、効果はあって、、万引きはゼロになったばかりか、地域でも少年犯罪が減ったと警察に褒められたくらいです。あの時は“火をつけてやるぞ!”なんて電話もあったものだけど、逆に“よくやってくれた”という励ましも多かった。人権なんて言っているのは、自分が関係ないから。自分が被害に遭っていたらとてもそんなこと言えるはずがないよ」
 当事者にとっては、まさに生存権の問題。「加害者の人権」なんて言われても、寝言にしか聞こえないことは容易に想像しうるのだ。
■イデオロギーファースト
 そもそも、である。
 モザイクを外したとして、本当に店主は名誉棄損の罪に当たるのだろうか。
「確かにその構成要件は満たしていますが…」
 と述べるのは、元東京高検検事の川口克巳弁護士。
「名誉棄損は、それが専ら公益を図る目的であった場合、免責されます。この場合、21万円という多額の被害からの回復を図るのは、社会秩序を守ることの一環として捉えることも出来る。公益性があると解釈する余地はあるのです」
 仮に公益性が認められなかったとしても、被害者感情を考えれば、あえて「処罰」するほどの違法性があるかは疑問だというのだ。
「そもそも、今回のケースを『万引き』とする報道の仕方が気にかかる。態様、金額から見て、進入窃盗タイプの重大犯罪です」(同)
 評論家の呉智英氏も言う。
「『自力救済はダメ』『国家に委ねるべし』というのは、法律論としてはその通り。近代国家は国民から処罰権を召し上げていますからね。でも逆に言えば、それも『法治主義』なるひとつのイデオロギーに過ぎません。一方で万引きの被害者が救済されないという現実がある。それを補おうとする店主の自衛行為を『私刑』と批判する人は、イデオロギーを守ることが最優先。現実に盲目な余り、目の前の現象がその矛盾を衝いていることに気が付かないのです。まさに『イデオロギーファースト』で、被害者のことなど眼中にはないのです」
 いかがだろうか。
 冒頭の「めがねお~」張谷社長は今でも葛藤の中にいるという。
「公開の後、電話が店に殺到しています。“バカバカバカ!”と言って切られたり、“売名行為だろ。潰れてしまえ!”との電話もある。信念を持ってやったことですが、店や従業員、取引先に迷惑が掛かるのではないか、との不安に苛まれます。毎日さまざまな意見を聞いては励まされたり、へこんだり、一喜一憂していますよ。今も悩みつつ、犯人が一日も早く弁償してくれるのを待っているのです」
 こうして自問自答する姿を見るに、安全地帯から「人権侵害」とのたまうお歴々と比して、どちらの主張により説得力があるのかは明らか。そんなに人権が大事なら、率先して、出演料の一部でも被害店主に寄付してあげてはいかがだろうか。

特集「インテリが人権侵害とのたまう『万引き画像』公開」より
「週刊新潮」2017年2月23日号 掲載
**********

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アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専・・・東京地裁と被告国立高専機構に原告準備書面(1)を提出

2017-02-23 01:56:00 | 群馬高専アカハラ問題
■群馬高専を舞台に問題となっている学科長による陰湿なアカデミックハラスメント事件は、被害を受けた学生や一部教職員らの勇気ある告発にもかかわらず、学校長はそれらを隠蔽し、原因者の学科長を処分することもなく、現在に至っています。この過程で、当会にも被害者の皆様からの悲痛な声が寄せられてきたため、当会は開かれたキャンパスを実現するために群馬高専に対して、アカハラ事件に関する一切の情報開示を請求しました。
 ところが、群馬高専側は、アカハラ事件に関する情報の存否さえ明らかにせず、全面不開示という秘密体質をそのまま当会に示してきました。その後、異議申立てをして、内閣府情報開示・個人情報保護審査会から不開示の取消しが同校及び国立高専機構に対して答申されましたが、あろうことか、同校と機構は再び不開示処分を通告してきました。
 そのため、当会ではアカハラ情報に関連する法人文書の不開示処分取消請求事件として、東京地裁に提訴しました。先日、2017年2月3日(金)午前11:00に、東京地裁5階の522号法廷で第1回口頭弁論が開かれ、裁判長の訴訟指揮に基づき、2月23日に次の内容の原告準備書面(1)を書留で裁判所と被告訴訟代理人弁護士事務所あてに発送しました。

*****原告準備書面(1)*****
事件番号 平成28年(行ウ)第499号 法人文書不開示処分取消請求事件
原告  市民オンブズマン群馬
被告  独立行政法人国立高等専門学校機構

                            平成29年2月24日
東京地方裁判所民事第3部B2係 御中

              原告準備書面(1)

                        原告  市民オンブズマン群馬
                            代表 小川 賢

 平成29年1月23日付の被告の答弁書に対する反論を次のとおり陳述する。

第1 被告の「請求の原因に対する答弁」のなかの「2 請求の原因、第2「本件処分の違法性について」および「4 法5条1号ロ及びハの除外事由に該当しないこと」について

 被告は「原告の開示請求にかかる法人文書(以下「本件文書」という)が,第5条1号ロ及びハに該当するため,被告による本件処分は違法であるとの主張は,否認ないし争う。 本件文書が法5条1号の不開示事由に該当し,同号ロ及びハの除外事由に該当しないことは,後述のとおりである。」と主張している。
 そして、その理由として次のように主張する。

(1)法5条1号ロについて
 被告はこの条項に基づく理由について、「原告は,『開示請求①から③にかかる文書について,アカハラを受けた被害者の生命,健康,生活を保護するため,アカハラの実態を記した本件文言を公表することは実態の真相究明,責任所在の明確化,再発防止策の確立のために不可欠である』と主張する。 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という)5条1号ロの『人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報』が不開示の除外事由となるのは,対象情報を開示することにより,当該情報にかかる個人の権利利益よりも,人の生命,健康,生活又は財産の保護の必要性が上回る場合に当該情報を開示する正当性が認められるという趣旨と解される(乙1及び2)。しかし本件の開示請求①から③にかかる書面は,ハラスメントに係る事実の有無という,加害者とされる側,被害者とされる側双方にとってプライバシーのなかでも秘匿性の高い情報であることは明らかである。これに対して,ハラスメントの事実の有無を調査することや,その調査内容にもとづいて懲戒処分等を行うかどうかは,人事管理に関する事項として被告ないし群馬高専が対応すべき事柄であり,しかもすでに甲第1号証の開示請求から1年半以上の期間が経過しているのであるから,開示請求①から③にかかる書面を開示することと,開示請求①から③の文言に記載された関係者の健康や生活を保護することとは何ら関係がない。なお,原告から開示請求(甲1)を受けて以降,その開示請求にかかる事項について,被告ないし群馬高専は関係者から新たな申告や要請を受けていない。」を挙げている。
 
 原告は次の通り反論する。
 但し書きである法5条1号ロは、人の生命・健康・生活・財産保護と、個人の権利利益の双方について比較衡量をしたうえで、どちらが重要かを判断して決定する意義を定めている。
 被告は、ハラスメントの加害者及び被害者双方のプライバシー保護のほうが、人の生命・健康・生活・財産保護よりも必要度が高いと主張している。しかし、ハラスメントにより被害者がうつ病になったり、中には自殺しかねない精神状況に追い込まれたりする場合もあるわけだから、当然、被害者のプライバシー保護より、被害者の生命・健康等の保護が大切であることは自明の理である。ましてや、ハラスメントの加害者のプライバシー保護はさらに必要度が低いことは誰が見ても明らかである。
 被告が被害者のプライバシー保護のほうが、被害者の生命・健康等の保護より大切だと主張する背景には、加害者である学科長を被告が庇いたいとする思惑のあることがうかがえる。実際に被告は加害者である電子情報工学科長(事件発生当時)に対してなんら処分を行っていない。被告は被害者のプライバシー保護を優先するあまり、このような社会的にみても非常識で理不尽な対応を正当化しようとしているが、言語道断である。
 被告は「ハラスメントの事実の有無を調査するかどうかは、被告・群馬高専が対応する事柄だ」としているが、ハラスメント事件の発生を報告したのは被害者である学生や一部の教職員であり、報告を受けても調査に消極的だった被告には、自らの消極性について偉そうに言える資格はない。
 しかも被告は「懲戒処分等を行うかどうかは人事管理に関する事項として被告・群馬高専が対応すべき事柄だ」としているが、こうなるとハラスメントの隠蔽体質を自ら露呈しているに等しい。だから、電子情報工学科長によるハラスメント事件の発生以前にも、物質工学科教授らによるハラスメント事件が群馬高専内で起きていたのである。
 後者の物質工学科におけるハラスメント事件については、原告は独自の調査結果を昨年2016年12月19日に被告に報告済みだが、依然として調査中だとして、未だに調査の具体的な進捗状況や調査結果を原告に通知しようとしていない。
 そしてここで強く指摘しておかなければならないのは、被告が「甲第1号証の開示請求から1年半以上の期間が経過しているから、情報開示とハラスメント被害者の健康や生活とは無関係だ」と理不尽に主張していることである。
 開示請求からすでに1年半以上が経過していることについて被告が答弁書で触れているが、この時間経過は被告が、原告の開示請求を1度拒否したうえで、さらに原告からの審査請求を受けた被告が内閣府の情報公開・個人情報保護審査会に諮問した結果、同審査会から被告に対して開示を求める答申が出たにもかかわらず、改めて被告が情報開示を拒否したことにより、原告側に時間を無用に浪費させたことによるものである。それなのに被告は、自らの不作為の結果が生んだ不開示処分の理由に仕立て上げる始末である。甚だ遺憾である。
 最初の開示請求から1年半以上の期間が過ぎたのは被告の隠蔽体質によるものと言わざるを得ない。被告は当初から「存否応答拒否」の姿勢を貫き、原告が思い余って被告に審査請求を行ったところ、被告が上級庁である内閣府情報公開・個人情報保護審査会に諮問をした結果、1年近く要してようやく審査会の答申を受けた。それを踏まえて被告はようやく「存否応答」を行い、原告らの指摘する文書の存在を渋々認めたが、その後は再びそれらの公文書の不開示処分を行っている始末である。このことだけを見ても、被告のプライバシー保護という主張の背景としては、加害者のことしか保護の対象として念頭にないことを物語っている。
 極めつけは、被告が「なお,原告から開示請求(甲1)を受けて以降,その開示請求にかかる事項について,被告ないし群馬高専は関係者から新たな申告や要請を受けていない。」と主張していることである。あらたな申告や要請は被告・群馬高専には正式には出されていないかもしれないが、ネット上ではハラスメント事件の関連する被害者らと思しき匿名の投稿記事が多数検索できる。彼らが匿名で投稿せざるをえない背景には、被告・群馬高専による有形・無形の圧力が存在するからである。その具体的な証が、今回のハラスメント事件に対する被告の隠蔽体質として表れている。


(2)法5条1号ハについて
 被告はこの条項に基づく理由について、「また原告は,開示請求①から③にかかる文書は,ハラスメントの加害者及び被害者がいずれも独立行政法人の役員及び職員であり,職務を遂行している学校内で発生したアカハラ情報に関するものであるので,職務遂行の内容に係る文書として開示されるべき,と主張する。 法5条1号ハは,『(法人情報が)その職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分』を,不開示情報の除外事由としている。これは,公務員等が行政機関等の一員として,その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味しており,行政機関や独立行政法人等の諸活動を説明する責務が全うされる容認する観点から,不開示の除外事由となるとされる。その一方で,公務員等の職務遂行に係る情報が同時に職務遂行の相手方等の個人情報に当たる場合には,当該公務員にとっての不開示情報該当性と相手方にとっての不開示情報該当性を別個に検討し,そのいずれかに該当する場合には,当該部分は不開示とされると解されている。たとえばある公務員AがBによって分限免職処分を受けた場合,当該処分を行うことはBの職務の遂行にかかる情報ではあるが,Aにとっては職務の遂行にかかる情報ではなく,懲戒処分を受けることが被処分者に分任された職務遂行にかかる情報とはいえない,とされる(乙2)。 本件では,開示請求①及び③にかかる文書が、被告の教職員が職務上作成した文書であったとしても,同文書の記載内容は作成者以外の個人情報(プライバシー情報)に関するものであることは,前記3項記載のとおりである。当該記載は『(公務員等の)職務遂行の内容にかかる部分』という法5条1号ハの不開示情報の除外事由にはあたらない。」を挙げている。

 原告は次の通り反論する。
 但し書きである法5条1号ハは、公務員の職務執行情報の開示の重要性を定めているが、これは公務員が行った職務執行状況をきちんと国民に知らせることにより、公務員の職務の健全性や遵法性を担保することがいかに大切であるか、透明性をもって示す必要があるためだ。
 にもかかわらず被告は、「本件では,開示請求①及び③にかかる文書が、被告の教職員が職務上作成した文書であったとしても,同文書の記載内容は作成者以外の個人情報(プライバシー情報)に関するものであることは,前記3項記載のとおりである。当該記載は『(公務員等の)職務遂行の内容にかかる部分』という法5条1号ハの不開示情報の除外事由にはあたらない。」などと故意に争点をはぐらかしている。
 加害者の電子情報工学科長は、群馬高専における職務遂行の過程で、学生やほかの教職員に対してハラスメントを起こしたのであり、これは紛れもない事実である。開示請求①から③に関する文書は、加害者の学科長によるハラスメント行為について記述されたものであるから、但し書きである法5条1号ハの適用を受けることは明らかである。
 なお、乙2に記載があるように、行政情報公開部会の情報公開法要綱案(中間報告)第6①ロにおいては「公務員の職務遂行に際して記録された情報に含まれる当該公務員の官職及び氏名」の開示を義務付けることとしていたが、同部会最終報告書は職と氏名を区別し、職については全て公開する方針をとったとしている。しかし、これは被告の判断に都合の良いように執筆された逐条解説本であり、本来、加害者の学科長の職位や氏名を黒塗りにする理由はない。にもかかわらず、被告はハラスメント事件に関する一切の情報を不開示としている。このような傲慢な対応は、開かれたキャンパスの実現を阻害する最大の要因であり、直ちに解消されなければならない。
 なお、この観点からすれば、被害を受けた教職員の職位や氏名も開示されなければならないはずである。


第2 被告の「請求の原因に対する答弁」のなかの「3 本件文書が法5条1号の不開示事由に該当すること」について

 被告は「原告の開示請求のうち,法人文書開示請求書(甲1)2頁①(以下「開示請求①」という)に該当する文書が3件,同2頁②(以下「開示請求②」という)に該当する文書が2件,同2頁③(以下「開示請求③」という)に該当する文書が1件あることは,甲7に記載されたとおりである。」と主張するが、原告はこれが本当のことかどうかは不知である。

(1)開示請求①について
 被告は「このうち,開示請求①に該当する文書には,被告の群馬工業高等専門学校(以下「群馬高専」という)が同校学生の保護者に対して,同校の内部者からハラスメントの申告があったこと,及び申告に対する対応状況と学校としての今後の対応方針を説明した書面が3通ある。 これらの書面には,ハラスメントの加害者及び被害者とされる者の属性(所属)や、群馬高専において行った調査の期間及び概要と,学校としての対象者への対応状況が明記されており,群馬高専が公表している他の資料と付き合わせてこれらの書面の内容を読めば,文書に記載された当事者が特定の個人として識別可能な内容となっている。 このため,開示請求①に該当する3通の文書は,法5条1号の個人に関する情報としての不開示情報が記録された文書に該当する。」と主張するが、原告はこれが本当のことかどうかは不知である。
 被告は公益的観点からハラスメント事件発生の重要性を十分に認識し、再発防止策をしっかりと講じなければならない。そのためには、勇気を奮って内部申告をした通報者の尊厳を踏みにじることなく、内部申告のあったハラスメント事件の全貌をきちんと学内外に公表し、ハラスメント事件の全貌を明らかにする義務がある。
 被告はハラスメントの被害者についての属性(所属)について原告に知られることを極度に警戒しているが、すでに述べた通り、ハラスメントでうつ病になったり、あるいは希望の進路をあきらめて絶望にひしがれた学生が出たりしていたのは事実である。ハラスメントとの直接的な因果関係は今のところ立証されないものの、ハラスメントが起きた電子情報工学科所属の学生である寮生が2名も自殺し、さらにハラスメント発生が新たに判明した物質工学科所属の学生である寮生1名が自殺し、これら3名の自殺者がわずか2年間という短期間で若い尊い命を絶ったのである。このことからも、ハラスメントの被害者においては、プライバシー保護よりも生命や健康、それに生活等の保護の必要性が優先するのである。
 また、同校学生の保護者に対する説明資料などは個人の氏名以外はすべて開示されなければならない。


(2)開示請求②について
 被告は「次に開示請求②に該当する文書には,群馬高専内におけるハラスメントとされる行為について事実を申告する群馬高専内部者が作成した書面と,同じく群馬高専内部者複数名が連名でハラスメント行為とされる事実について群馬高専校長に申告した書面の2通がある。 これらの書面には,ハラスメント行為を行ったとする対象者の氏名と,ハラスメントを受けたとする被害者の氏名や,なされたとされるハラスメント行為の内容が具体的に記載されており,これら書面も法5条1号の個人に関する情報としての不開示情報が記録された文言に該当する」と主張するが、原告はこれが事実かどうかについて不知である。

(3)開示請求③について
 被告は「開示請求③に該当する文書には,前記のハラスメントの申告を受けて,群馬高専が事実関係を調査のうえ作成した書面が1通ある。 この書面にも,群馬高専が調査として事情聴取した対象者の氏名払対象者が調査者に説明した事実関係が個別具体的に明記されており,この書面も法5条1号の個人に関する情報としての不開示情報が記録された文言に該当する」と主張するが、原告はこれが事実かどうかについて不知である。

第3 被告の「請求の原因に対する答弁」のなかの「5 法5条4項の不開示事由について」について

 被告は「また,開示請求①から③にかかる書面は,前記のとおりいずれも群馬高専において発生したとされるハラスメントについて作成されたものであり,その内容も当事者の氏名を明記のうえ,関係者から聴取した事実経過をまとめたものや,関係者が事実経過を具体的に説明したものである(開示請求②及び③)。これらは,群馬高専がその所属する教職員について,ハラスメントに該当する事実の有無及び対象職員への処分の要否を検討することを念頭に作成した書面であり,これら書面が公開された場合には,今後・ハラスメント等が疑われる事案が生じた場合に関係者が情報公開を恐れて萎縮するなどすることが容易に想定され,関係者から事実関係を聴取する等の調査を実施して人事管理を行うことが困難となる。 それゆえ,開示請求②及び③にかかる書面については,法5条4号へ「人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」のある情報が記載されたもの,にも該当する」と主張するが、ハラスメント事件を隠蔽しようとするための方便であり、ハラスメント再発の温床を残す口実であり、絶対に許されるものではない。

第4 本ハラスメント事件の概要に関する再確認

 前項まで、被告の答弁書に対する反論を行った。以下にあらためて、本件アカデミックハラスメントの概要について再度、説明をする。
 被告である群馬工業高等専門学校においては、原告の調べによって確認されている限りでは、平成24年から平成27年にかけて、上位にある教員による下位の教員および学生への深刻なアカデミックハラスメント(学術機関におけるハラスメント行為)が発生していた。とくに平成26年度に発生した被害は甚大で、罵倒や人格否定、脅迫、過度の業務の強要、セクシュアルハラスメントを伴ったこのアカデミックハラスメントにより、少なくとも教員2名が退職、多数の学生が不登校に追い込まれた。また、精神的に追い込まれ進学を断念した学生や、卒業研究の遂行が不能になった学生も存在した。
 このような悲惨極まりない状況の中、平成26年12月24日、アカハラの被害を受けていた教員が被害状況と対処を訴えた「ハラスメントに関する申立書」(開示請求②に含まれる可能性大)を被告の学校長及び学校幹部に対し提出し直訴を行った。さらに続く平成27年2月25日には被害学生13名が、連名のもと被害状況と対処を訴えた「人権・被害救済の申し立て」(開示請求②に含まれる可能性大)を同じく学校長及び学校幹部あてに提出し直訴を行った。ちなみに、この「ハラスメントに関する申立書」および「人権・被害救済の申し立て」については、被害者側関係者の手により個人情報に関わる箇所が黒塗りされたものがすでにインターネット上にアップロードされており、誰の目にも確認が容易である。なお、この2文書についても、原告の開示請求の対象内に入っている。
 制裁を覚悟して行われた被害者らによる被告へのハラスメントの実態の告発であったが、このような事態になってもなお被告は実効的な対応、すなわち、被害者側への聞き取りを含めた大規模な実態調査、加害者への懲戒処分、被害者へのケア・謝罪・賠償・ハラスメントの事実認定といったことを一切行わなかった。これに加えて外部に対して事件の存在の一切を隠匿した。唯一といってもよい対応として、被告側学校長と加害者である教員との間で協議がなされ、ハラスメントと受け取られるような問題行動を慎むよう「誓約書」を書かせたと学校長は被害者の学生らに説明した(開示請求①に含まれるべきもの?)。しかし当時この「誓約書」について、内容および不履行時の罰則は一切周りに知らされることはなかった。そればかりか、原告の行った情報不開示にかかる審査請求の結果、平成28年4月27日に被告が存否応答を行った(甲7)が、その中に「誓約書」と認められるようなものは存在せず、唯一の対策であったはずの「誓約書」の存在ですら虚偽であったことが判明している。
 被告が、ハラスメントに関する申し立てに対し、ほとんど全くと言っていいほど対応を行わないという異常事態に対し、被害者側から原告に対して、アカデミックハラスメント事件に関する告発、すなわち情報の提供が行われたのである。個人に過ぎず、ハラスメント被害によって憔悴している被害者側が長期間にわたり社会的制裁のリスクや途方もない労力、金銭的負担を背負いながら事件の解決に向け公的機関である被告と渡り合うことは困難であるため、原告はそれを代理し、第三者団体の立場から、事件解決のための第一歩としてアカデミックハラスメント事件の経緯・実態・調査結果が外部に向け開示され被告が公的に事件の具体的な存在と経緯を認めるよう働きかけているものである。なお、この情報公開を巡るその後の1年半以上にわたる経緯については、訴状および答弁書において原告・被告双方が陳述した通りである。

第5 開示されないことによる不利益と開示されることによる利益の比較衡量

(1)情報開示の意義
 開示を通じて被告(群馬高専)側がアカデミックハラスメントの存在及び実態を公に明らかにすることにより、第三者の目を通じ、当時学校という密室でなされた加害者への処分、被害者へのケアや謝罪、事件への対応や再発防止策が本当に妥当なものであったのか再度検討されるべきであり、公的機関である被告(群馬高専)の場合、この事件に関する被告の対応について、第三者の目が入れられることは、当然なされるべきである。
 被告は「1年半も時間が経過しているため、開示の有無と関係者の権利回復とは関係がない」と主張するが、ハラスメント行為による被害者側の心の傷は1年半程度で癒えるものでは決してなく、事件の実態が明らかにされ、加害者への処分、被害者へのケアや謝罪について再度妥当であったか検討されることは、過去のアカデミックハラスメント被害者の権利回復に繋がり、公益に寄与する。
 加えて、対応や再発防止策の改善は、現在発生している、あるいは今後発生する可能性のあるアカデミックハラスメントの被害を食い止めることに繋がり、公益に寄与するものである。視点を変えて、法の目的を鑑みても、アカデミックハラスメント事件の存在および実態を、開示を通じて公に明らかにするべきであるという原告側の主張の正当性は明らかである。 なぜならば、我が国に在住する中学生すべてが群馬工業高等専門学校に進学する可能性を持つ以上、ハラスメント事件の存在は当然進学の際の判断材料となされるべきであり、開示は公益にかなっている。

(2)告発の有無とアカデミックハラスメントに関わる現状の関係性
 また被告は、「アカデミックハラスメントに関する学校側への新たな告発が行われていない」と主張するが、告発にかかる労力や、行った場合の制裁のリスク、さらに学校側がそれらに対しまともな対応をしなかったという事実から、学校側に報告するのを被害者側が諦めているだけである可能性が極めて高く、告発がないこととアカデミックハラスメントが発生していないことは決して同じ意味ではない。制裁のリスクに関して言えば、平成28年7月8日にも、被告は学内の全学級に「学生側が原告側に与し、被告(群馬高専)に逆らった場合、その進学や就職に影響する」とも読める文書を掲示してインターネット上でいわゆる炎上を起こし、さらに全国区で報道がなされたという事実も忘れてはならず、被告の態度が教職員・学生を圧迫し、委縮させているのは明らかである。

(3)法第7条による公益上の理由による裁量的開示
 以上のとおり、アカデミックハラスメントの存在、事実、および経過を開示することは明らかに公益に寄与しており、同法第7条より開示が可能なケースとして認められるため、2次被害の発生する可能性の高い現在在籍中の被害者にかかる個人情報を除き、すべて開示されるべきである。
 なお、被告は一律にハラスメントの加害者と被害者の全員について、「プライバシー保護を尊重するので情報秘匿には正当性がある」などと主張しているが、実際に加害者である学科長はともかく、被害者の学生や一部の教職員に対して、開示の意思を確認したうえでそのような主張をしているのか、極めて疑問である。なぜなら、勇気を奮ってハラスメントの実態を被告に訴えた被害者にとって、プライバシー保護を理由にそうした行為をなかったものとして被告によって隠蔽されることは、個人の尊厳にもかかわる重大な人権侵害であるからだ。
 被告は答弁書において一切触れていないが、訴状にも示したとおり、法第6条により、被告は不開示とされるべき情報を除いて(黒塗りして)、残るすべての箇所の情報を開示する義務があり、被告が行った当該情報の全面不開示は明らかに失当である。

(4)法第6条の不開示情報およびそれ以外の情報の区分について
 さらに、当該情報については、法6条の例外の場合として考えられる「不開示情報とその他の分離が情報の性質的に、あるいは技術的に困難な場合」あるいは「不開示にされるべき情報を除いた部分に有意の情報が記録されていない場合」のいずれにも該当しないことは明白である。なぜならば、すべての情報が紙の文書として記録されており、開示請求②に含まれるであろう情報として、「名前・生年月日といった個人情報」と「アカデミックハラスメント事件の存在および経緯に関する情報」については容易に分離可能であり、原告が開示を求めているのは後者だからである。
 また、どこまでが不開示情報、すなわち個人の特定につながる情報で、どこまでが開示可能な情報かを決定するにあたり、被告側の恣意的な判断に委ねられることは不適切である。すなわち、被告は「関係者のプライバシー保護」の論理を一律に不開示の理由として適用しているが、被害者に連絡してその意志を確認することもなく、開示の可否あるいは開示の範囲を被告側が勝手に決定したうえで、被害者の人権保護のためと弁明するのは、明らかに詭弁である。
実際に、原告が別件である「寮生連続不審死事件(当会呼称)」の情報開示を被告に対し求めた際は、遺族側に情報開示の意志および範囲を確認してから情報開示が行われている。このことからも、「プライバシーの帰属する被害者側への意思確認」は全く不可能ではなく、被告が意図して不作為としているだけであることがわかる。

第6 結び
 不開示情報を開示可能な場合について定めただけの法第7条とは異なり、法第6条に定められた部分開示は義務であるから、被告は必ずこれに従わなければならない。仮に、百歩譲ってアカデミックハラスメントの被害者側の個人情報、および個人を特定することのできる情報以外に、仮に公務員である加害者、および他の公務員の関係者に関する個人情報、および個人を特定することのできる情報が不開示情報に認定されたとしても、これらを除いたアカデミックハラスメントの存在、経過および状況等の事実関係については、公益的観点からすべて開示されなければならない。

                            以 上
**********

■第2回口頭弁論期日は2017年3月3日(金)午前11:15から同じく東京地裁5階第522号法廷で開かれます。追って、口頭弁論の様子についてご報告いたします。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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