■平成21年6月7日(日)午前1時ごろ、高崎市の県立高崎高校の校門前で、文化祭の準備をしていた高校1年生が乗用車ではねられ、乗用車は、そのまま逃走しました。この乗用車を運転したのが、安中市の自営業者でした。
事故から1年Ⅰヵ月が経過し、ひき逃げされて一時は意識不明の重体に陥って集中治療を続けていた被害者の高校1年生は、驚異的な回復ぶりを示して、昨年9月の2学期から登校していると、今年1月23日の高崎高校同窓会新年総会で、同校の藤倉校長から報告がありました。
一方、ひき逃げをした加害者の製印業者は、安中市消防団の第1分団(安中)の元副分団長でしたが、その後、平成21年6月30日付けで、分団長を通じて安中市消防団の横山公男団長宛に退団届を提出しており、平成21年7月6日付けの東京新聞の報道によると、「安中市は受理する見通し。退職金の規定もあるが、現在は凍結し、刑事処分の内容によって支給の可否を判断する」という対応でした。
■ところが、その後、現在に至るまで、「退団届は受理されたのか」「刑事処分は確定したのか」「退職金は支払われたのか」など、全く公表されていません。
一方、滝本容疑者の配偶者で安中市議会議員の滝本夏代市議は、所属する創政会派代表の柳沢健一市議と一緒に、田中伸一市議会議長や、消防団長の任命権を有する岡田義弘市長に根回しをしていたことが、情報として伝えられています。その甲斐あってかどうか、未だに、滝本容疑者の動静については全くベールに包まれたままとなっています。
そうした中で、平成22年6月10日付けの新聞記事で、元消防団分団長は、既に起訴されて、前橋地裁高崎支部で、6月9日に論告求刑公判が開かれていたことが判明しました。刑事処分が既に確定したことが判明していたことになります。
■そこで、その後の元分団長への処分の動向を確認するために、当会は、平成22年2月15日に引き続き、6月14日付けで、岡田市長宛に行政文書開示請求をしました。その結果、岡田市長(事務担当課:市民部安全安心課 TEL027-382-1111)から平成22年7月1日付け安安発第7044号で「行政文書開示決定通知書」が到来しました。
それによりますと、「平成22年3月26日午後1時30分から安中市役所で開かれた安中市消防委員会で本件処分等について審議した結果、平成21年6月30日付けで元分団長から提出されていた退職金等の辞退届と退団届を正式に受理し、条例による懲戒処分は行わないことに決定した」ことが判明しました。
それでは、平成22年3月26日に開かれた安中市消防委員会会議の審議の模様を見てみましょう。
**********
【消防委員会会議開催の復命書】
回議用紙
年度 平成21年度
文書種類 内部
文書番号 第27477号
保存年限 3年
受付年月日 平成22年3月26日
保存期限 平成25年6月1日
起案年月日 平成22年3月26日
廃棄年度 平成25年度
決裁年月日 平成22年3月26日
分類 大3 中5 小2 簿冊番号7 分冊番号3
完・未完別 完結
簿冊名称 各種団体(委員会)関係書類
完結年月日 平成22年5月31日
分冊名称
施行区分 普通
公関 1 非公開 時限秘( 年)部分秘 全部秘 2 公開
起業者 市民部安全安心課生活安全係 職名 主査 氏名 久保庭 高明 内線(1131)
決裁区分 市長
印欄 市長・- 部長・- 課長・原田 係長・丸山 係・佐藤 公印・-
件名 安中市消防委員会会議について(復命)
平成21年度の安中市消防委員会会議を開催しましたので、下記のとおり復命します。
1.日時 平成22年3月26日(金)午後1時30分~
2.場所 市役所306会議室
3.出席者 委員5名、市長及び市民部長、事務局6名(安全安心課5名、安中消防署1名)
4.内容
①開会 別添会議次第にもとづき、安全安心課長の進行により開催される。
②あいさつ 市長によるあいさつ
③移植状の交付 前委員の在任期間である、富澤委員に市長が委嘱状を手渡しにより交付する。
④議題
Ⅰ.委員長の選出について
安中市消防委員会条例第5条の規定により、委員による互選が行われる。(慣例により区長会長を座長とする。)
互選により、委員長に小坂上司さん、引続き副委員長に新津勇さんが選出される。
Ⅱ.安中市の消防概要について
「消防費等」「年齢及び勤続年数」「消防団及び女性防火クラブの活動状況」を丸山係長が、「安中市火災・救急発生状況について」を安中消防署中澤係長が説明する。
説明終了後、一括して質疑応答がなされる。(内容については、別紙参照)
Ⅲ.安中市消防委員会条例第2条第1項第1号に基づく協議について協議がなされる。(内容については、別紙参照)
⑤閉会
以上
【質疑記録】
平成21年度安中市消防委員会会議における質疑
日時:平成22年3月26日(金)
場所:安中市役所第306会議室
出席者:事務局 原田市民部長、原田課長、丸山係長、久保庭、佐藤
消防署 中澤係長
委 員 小坂、富沢、前川、横山、小俣
議題(2)消防概要
前川委員 団員及び女性防火クラブの定員の決め方は?
事 務 局 団員については、旧安中地区を例に挙げれば各地区条例で、磯部15名、板鼻20名、外の地区は12名と定めている。また、旧松井田地区については、条例変更無し、市全体では、定数545名。
前川委員 合併したのに、条例は統合されていない。アンバランスではないか?女性防火クラブは、どのような決め方をしているのか?
小俣委員 旧消防団員の人数に応じ配置。松井田地区は3支部あったが、合併後は、2地区と減ってしまった。
前川委員 団は、分団ごとに決めているのか?
岡田市長 合併協議会の中で、専決で決め、臨時議会にかけ最終的に決定している。
前川委員 最低人員の決め方、防火クラブを例に挙げれば、後閑地区は大字3つあるが、地区によっては定員割れを生じている。世帯数が少ないことによるものだが、面積が広くなれば、対応も取れなくなるので、定員を決めていくべきではないか?また、従来のものを引き継ぐことは良いことだが、適切な消防車両の配置も再検討した方が良いのではないか?
小坂議長 前川委員の意見を取り入れた、組織作りをしてもらいたい。
事 務 局 検討していきます。
富沢委員 車両火災の一例を挙げてもらいたい。
中澤係長 碓氷峠を持つ、坂本地区に多発。原因は、登り坂でもあり、オーバーヒートによるオイル漏れが元で、発火。車両の老朽化による火災が占めている。
富沢委員 その他については、どのようなものがあるのか?
中澤係長 河原等での野火火災やJRの架線によるものもある。
小坂議長 団員の定年制は?
事 務 局 活動面から見れば、60歳くらいまで。
議題(3)安中市消防委員会条例に基づく協議
横山委員 飲酒時は、団事業ではなかった。個人的な用事。しかし、瀧本氏は、性格は極めて円満で何事にも無欲闊達として献身的であり、実行力に富んで事にあたっては、旺盛な責任観念を十分発揮する気丈夫の人であった。温厚な人柄、また信頼感があり誰からも好かれ各階層に幅広く友人、知人を持ち、その人たちとの親交は深く広い。また、部長を命ぜられると団員の統率はもちろん、機械器具の点検整備、出動後の処理等完璧に責任を果たし、市民からの信望を得ていた。入団以来26年という永きに渡り、消防人としての使命に徹し、市の防災のために犠牲的奉仕活動を続けてきた。本団の意見でもあるが、団としては、退団届で処理したい。
前川委員 20年以上にも渡り、消防団活動に従事して来た功績を称え、また、報酬及び退職金も辞退していることを考慮して、寛大な処置を願いたい。
横山委員 瀧本氏は、これからの消防団を背負っていく大幹部の道もあったが、本当に残念な事になってしまった。私の方からも、市長さんに対して、寛大な処置を願いたい。よろしくお願いします。
小俣委員 私も、同じ意見です。
富沢委員 寛大な処置がよろしいのではないか。
小坂議長 寛大な処置を市長さんにお願いします。
その他
小俣委員 地区によっては、入団者がいない。現状では、自営業者は少なく、ほとんどが会社員である。消防回の部長から訓練等の行事に出席するように言われれば、断れない状況である。私の息子も団員であるが、そういった実情を聞かされると、親として入団させたくない気持ちも解る。部長の融通が効かない、もう少し個人の言い分を考慮し、臨機応変に対応してもらいたい。
事 務 局 地域の安全といった意味合いを含んで、仕事優先を前提に、勧誘していきたい。
小俣委員 消防団活動に参加するため、休暇を取る際、会社に言いづらい。
富沢委員 会社に言ってまで、抜けることは出来ない現実がある。
横山委員 消防車両は、ある程度、人数が揃えば出勤いたします。主な活動は、現在、放水のための中継送水を行っています。また、様々な実情を踏まえ、災害時に、人員による経費を減らすことよりも、詰所、及び消防車同等の統合を進めています。なお、施設面でもよりよい設備を構築していきます。
事 務 局 12分団についても、行田地区と八城地区の車両を1台に統合しました。
横山委員 地域の方や、それぞれの分団から、圧力的に自分勝手な言い方をしてきます。
富沢委員 板鼻地区の女性防火クラブは、25名おりますが、1,570世帯の割には、他の地区に比べて割合は低いのではないか、また、任期は3年であるので、各区長がクラブ員集めに、その都度、動いている。今回、3入の区長が交代します。
小俣委員 現にクラブ員も少ない。元々区長が作った女性防火クラブです。今後も、消防団とは、肩を寄せ合って活動をしていきます。
横山委員 団員等の募集時には、PR活動を応援して下さい。
【元分団長の処分決定に関する起案書】
起案用紙
年度 平成21年度
文書種類 内部
文書番号 第28309号
保存年限 3年
受付年月日 平成22年3月26日
保存期限日 平成25年6月1日
起案年月日 平成22年3月26日
廃棄年度 平成25年度
決裁年月日 平成22年3月26日
分類番号 大3 中5 小2 簿冊番号7 分冊番号3
完・未完別 完結
簿冊名称 各種団体(委員会)関係書類
完結年月日 平成22年5月31日
分冊名称
施行区分 至急
公開 1 非公開 時限秘( 年)部分秘 全部秘 2 公開
起案者 市民部安全安心課生活安全係 職名 課長補佐 氏名 丸山 誠一郎 内線(1131)
決裁区分 市長
決裁 市長・岡田 部長・原田 課長・原田 係長・- 係・- 公印・-
関係部署合議 総務部長・鳥越 安中市消防団長・横山 秘書行政課長・佐俣 職員課長・真下
件名 安中市消防委員会会議における市消防団員の処分等について
上記のことについて、次のように決定してよろしいか伺います(別紙 枚)
3月26日午後1時30分より市役所306会議室に於いて開催しました安中市消防委員会での議題「安中市消防委員会条例第2条第1項第1号に基づく協議について」の中で、昨年6月、高崎市内の市道で自動車運転過失傷害などの罪で逮捕、起訴された安中市安中の滝本雄次氏の処分等について審議していただいたところ、その内容は別紙のとおりでした。
この審議結果に基づき、平成21年6月30日付けで本人から提出されました「手当・退職金の辞退及び退団届」を正式に受理の上、「安中市消防団員服務規律及び懲戒条例」による懲戒処分は行わないことに決定してよろしいか伺います。
**********
■つまり、消防委員会会議の審議結果をそのまま100%受け入れて、岡田市長は、「元分団長に対して、安中市消防団員含む規律及び懲戒条例による懲戒処分は行わない」という決定を下したことが分かります。
消防委員会には、岡田市長も出席して挨拶をしており、会議に対する影響力を行使した形跡が見えます。一方、消防委員会での席上、出席委員からは、次の意見が出ました。あきらかに、結果有りきの討議だったことがわかります。
冒頭、横山消防団長から、退団届の受理だけで処理したいとの発言要旨は次のとおりでした。
①飲酒時は団事業ではなく個人的な用事だった。
②本人の性格は極めて円満で無欲闊達で献身的で実行力に富み、旺盛な責任感を十分発揮する気丈夫だった。
③また、温厚な人柄、信頼感で、誰からも好かれ各階層に広く友人知人を持ち、信仰は深く広かった。
④部長として団員統率のみならず機械器具の点検整備、出金後の処理等完璧に責任を果たし市民の信望を得ていた。
⑤入団以来26年に亘り消防人としての使命に徹し、氏の防災のために犠牲的奉仕活動を続けてきた。
冒頭に消防団長からここまで明確な方針が示されると、あらかじめ根回しされていた他の4人の委員からは、これに異議を唱える意見が出るはずもありません。を擁護したり支持したりするものばかりとなるのは無理もありません。「寛大な処置を市長さんにお願いしたい」という横山委員(消防団長)の意見にただただ同調一色で、僅か2分で懲戒処分はかき消されたのでした。
■飲酒運転事故という反社会的な行為を犯した事実に対しても、同じ釜の飯を食ってきた消防団員の仲間意識のほうが、長年付き合った者同士としては強いのでしょうが、誰も、異論を唱えないというのはやはり違和感を覚えます。民間では、問答無用でクビにされても仕方のないケースだからです。
しかし、日ごろから真のボランティア精神を掲げている岡田部長としては、条例遵守、法規順守を遵守するように指導するはずですから、消防委員会の協議結果を示されても、妥協せず、きちんと元分団長を懲戒処分にして、規律のけじめをつけるはずでした。
■ところが、上記の起案用紙が回覧されるやいなや、岡田市長はイの一番に、自ら「でかいハンコ」を決裁欄に押印したのでした。
隣に女性を同乗させた上、酔払い運転で高校生を撥ねて意識不明の重体に陥れたまま、その場から逃げ去り、自分から出頭せずに、市会議員の妻が本人に代わって警察に電話をしたのに、条例に基づく懲戒処分をしないとなると、未来塾との裁判の過程等で岡田市長が、声高に発信してきた次の理念は、一体どうなっているか、日ごろから岡田市長の強調する説明責任の必要性が今こそ必要なのではないでしょうか。
①いろいろな意昧での条例順守の一つの方向性を持った地域づくリ、新しい都市づくりへ結び付けていかなければなりません。
②ボランティア文化の理念を実現するためには「法規遵守(コンプライアンス)」を正確に把握しつつ、これから、どのような時間的視野のもとで、いかなる努力を積み重ねる必要があるかについて未来塾関係諸氏から語られることは無かった。
③「フリーマーケットinあんなか」を持続するためには「法規遵守(コンプライアンス)」という不自由な我慢も必要であるという点にある。その不自由を我慢してこそ、その目的実現のために「持続と蓄積」の精神で働き続けてこそ、ボランティア文化の尊い仕事である。理念のみに振り回され、現実の判断を誤ることだけは避けねばならない。
④未来塾は県議、市議(未来塾運営委員兼務)を有していることから細心の注意力をもって「法規遵守(コンプライアンス)」に努める責務がある。
⑤ボランティア活動には、市民によって育てられるボランティアの特性である関係性を大事にする心が求められると共に確固たる哲学理念が求められる。未来塾には「語るべきこと」を語ることを切望する。
⑥併せて市行政の公正公平な経営感覚もない「行政」との「なれあい」に対して、市民が納得できる説明も重要である。
⑦未来塾の行政への介入も問題だが、これまで長期に渡って市行政の「無気力」も原因であることから、重規すべきは「法令遵守(コンプライアンス)」の履行であることの再認識を最優先したい。
⑧「フリーマーケットinあんなか」主催者として、運営委員の人間教育には、これまで以上に本腰を入れなくてはならないし、それ抜きにして「ボランティア」を名乗る資格はない。市行政は条例違反の疑いがあれば詳細を明らかにし市民世論が公平性と透明性を求めるようになっていることも軽んじてはいけない。
⑨市行政が何を行い、何を行ってはいけないか、これは「この市行政の形」に関する最重要な部分である。
■とどのつまり、岡田市長としては、「未来塾と消防団ではボランティアの定義が異なる」と言いたいのでしょう。また、未来塾はメンバーに議員らを擁しながら条例を無視したり、軽視したりすることはけしからんが、元分団長の配偶者の議員が真っ先に警察に電話をしたことは、コンプライアンス上からもなんら問題ない、と言いたいのでしょう。
こうしてみると、岡田市長の温情が200%発揮されて、条例軽視の判断が出されたことで、安中市民は、市長のコンプライアンスのよりどころがどこにあるのかをはっきりと認識したことでしょう。
■ではなぜ、消防委員や岡田市長は、元分団長への懲戒処分を行わなかったのでしょうか。その理由として、例えば既に元分団長への褒章申請などの計画が進んでいるものと思われます。51億円事件に関わった行政関係者らの多くも、その後各種の褒章を受賞しており、安中市のコンプライアンスは以前からむちゃくちゃでしたが、岡田市政になってからはますます世間の常識から離れてゆく感があります。
こうして、退団届と退職金等辞退届が3月26日に正式受理されたことで、岡田市長としては、飲酒運転ひき逃げ事故の責任は不問にして、近い将来、消防関係の褒章対象に元分団長を推薦するものと思われます。やはり、「持つべきは与党会派所属の市議会議員の配偶者」ということができそうです。
■これでは、昨年秋に飲酒運転で人身事故を起こして即刻クビになった安中市職員と比較で、著しい不公平感が払拭できません。消防団員で、市議会議員を妻に持てば、かえって社会的道義的責任が重くなるはずですが、これは安中市民の感覚であって、岡田市政の感覚は全く別のようです。
なお、被害にあった高校生に対する安中市からの謝罪を示す資料は、今回も不存在でした。
【ひらく会情報部】