■群馬県前橋市富士見町は、2009年5月5日に前橋市に編入されるまでは富士見村と呼ばれて、赤城山の南面に広がる村でした。実際に、晴れた日には南南西の方向に遥か遠く富士山を望むことができます。また、夜は、前橋市を中心とした夜景を楽しむこともできます。編入前の富士見村は、北半分は赤城山の山頂から森林が広がり、南半分は緩やかな丘陵地帯を開墾した畑作を中心とする都市近郊農業地帯でした。今も農場がいくつも点在しています。前橋市に隣接していたため都市部から住民が流入して、人口が増加し、全国で4番目に人口の多い村でした。この自然環境に恵まれた富士見町で今大変な事態が起きています。
2021年12月19日(土)、富士見町西大河原自治会の年末総会の折に、伊勢崎の翼電気株式会社がやってきて「前橋市富士見町赤城山の西大河原地区の山林にバイオマス発電所を建設したいので、発電所予定地に隣接する土地の利用を地権者に求める」旨の発言がありました。しかしその際には、バイオマス発電所自体についての説明はほとんどありませんでした。
↑
翼電気の「富士見赤城山バイオマス発電所」建設予定地。2021年12月22日撮影。以前は全部雑木林だったという。奥にソーラーパネルが見える。↑
前橋市では、東電グループの筆頭子会社である関電工がトーセンと群馬県森林組合連合会(県森連)及び群馬県素材生産流通協同組合(素材協)を共同出資者として、当初トーセンが2014(平成26)年2月28日に㈱松井田バイオマスとして設立した商号を、同年10月27日に㈱前橋バイオマスに変更し、同10月30日に登記しました。そして翌2015(平成27)年6月22日に前橋バイオマス発電㈱と社名変更し、さらに補助金をもらいやすくするために、同年10月5日に同じ所在地の前橋市苗ケ島2550番地に、同じ施設内にある前橋バイオマス発電㈱のボイラー燃料の木質チップを製造する前橋バイオマス燃料㈱が法人登録されました。
この所在地は、電力中央研究所赤城試験センターの一角にあり、関電工らは電中研からこの土地を譲り受けて、出力6,750kWの木質バイオマス発電事業を計画し、行政から多額の補助金を受けたにもかかわらず、住民の生活環境にとって最重要である環境アセスメントも行わないまま、2018(平成30)年3月4日から営業運転を開始してしまいました。
今回、この前橋バイオマス発電所からわずか4キロほどしか離れていない場所で、翼電気による冨士見赤城山バイオマス発電所が計画されており、木質チップは、前橋バイオマス燃料から供給される可能性も考えられます。
■国有会社同然の東電と群馬県及び前橋市行政が癒着した間伐材有効利用を隠れ蓑にした前橋バイオマス発電事業では、地元住民への説明会が、形式的ながら3回開催されました。説明会の会場では、福島第一原発事故による放射能汚染にさらされた群馬県内の北部や西部の森林から間伐された樹木を集めて燃焼させることによる騒音、大気、排水、焼却灰などによる生活環境への悪影響を懸念する意見が、多数の周辺住民から発せられました。
にもかかわらず、結局、事業者や行政は住民からの意見や要望に耳を傾けるフリをしただけで、事業者が住民に約束した稼働後の工場視察会は、度重なる住民からの実施要請に対して未だに無視され続けています。そして今もなお、県内外から得体のしれないものが連日搬入されたり、昼夜を問わず環境基準を超える騒音がまき散らされ、持ち込まれる木質燃料や燃焼灰、排ガス、排水の放射線レベルの測定結果は住民に公表されず、行政も事業者に忖度して、そうした情報を明らかにしようとする姿勢が見られません。
こうした行政と事業者との癒着が優先されている実態が、前橋バイオマス発電事業の設置手続きの過程で明らかになったことから、類似の事業が新たに持ち上がるのではないかと、懸念されていたところ、今回の事業計画が発覚したのでした。
■昨年末に開かれた富士見町西大河原自治会の年末総会で突然、事業者からバイオマス発電事業計画を知らされた西大河原地区の住民の皆さんは、仰天し、さっそく県内におけるバイオマス発電事業について調べを開始しました。すると、前述のとおり、すでに市内苗ケ島町で稼働中の関電工らによるバイオマス発電事業の許認可手続きにおける行政と事業者、そして県森連やそのトップらの出身である自民党県連幹部らによる住民無視の強引な手法の実態を知ったのです。
バイオマス発電所が建設され、稼働されたら、安全・安心な生活環境の保全の観点から、いくつかの大きな問題が発生する可能性があります。西大河原地区の皆さんが、生活環境面の危機意識を抱く背景には、上述のとおり、地域住民をはじめとする一万人以上の反対署名を無視して、2018年3月から稼働している「前橋バイオマス発電株式会社」(群馬県前橋市苗ケ島町2550-2)と、長野県東御市の「木質バイオマス発電所」に関する事例があります。
これらの前例から住民の皆さんは、西大河原や近隣地区において懸念される生活環境上の問題点をまとめたチラシを配布して情報共有を図っています。その内容を以下に記します。
*****地元配布チラシ*****ZIP ⇒ ocixd_i3j2021.12.26.zip
1-1 前橋バイオマス発電株式会社では、
材料は群馬県産の木材と言いながら、福島ナンバーのトラックが多数来ています。住民が証拠写真を撮っていますが、近隣住民の問い合わせに対する会社側からのきちんとした返事はありません。
1-2 全国を対象とした専門家のデータでは、
前橋の放射線量が時々とても高くなっているそうです。
1-3 西大河原に建設予定のバイオマス発電所でも、群馬県産の木材を使用とするとのことですが、もし
実際に稼働が始まれば、どこから木材を搬入しているかを細かくはチェックできないので、苗ケ島と同様の問題が生じる可能性がないとは言えません。
1-4
群馬県内の山々の樹木も福島の原発事故の影響によりかなり放射能の汚染度は高く、しかも、バイオマス発電の際にさらに濃縮され、空気中に拡散されることが予想されるので、その危険性は決して無視することはできません。
1-5 また、業者は木材を燃焼させるということですが、
木材に限らずいろいろな有害な物質を搬入して燃焼させる可能性がないと言えません。もちろん、業者自身はそんなことはないと言うかもしれませんが、それをチェックすることは難しいので、私たちにはその実態を知ることはできないのです。
1-6
放射能がまき散らかされることになれば、土地や空気や水の汚染によって、地域住民の健康被害だけでなく、家畜、牛乳、野菜、果樹などの農作物が悪影響を被ることになります。強い放射能が続くようであれば、住むこともできなくなるかもしれません。特に今回西大河原に
予定されているバイオマス発電所は、水源地にも近く、住民の健康が大変懸念されます。
1-7 また、バイオマス発電所建設予定地は多くの西大河原住民のご先祖様たちの共同の墓地のすぐ近隣でもあります。これは決していい加減に考えるべきことではないと思います。
2-1 苗ケ島の
バイオマス発電所は24時間稼働され続けるので、苗ケ島では騒音がひどいそうです。西大河原地区でも同様の
騒音被害が懸念されます。
3-1 数年前に西大河原では(たぶん福島原発で放射能に汚染されたものではないかと懸念される) 大量の土砂が毎日何台もの大型のトラックで搬入され、谷を埋め尽くすということがありました。
3-2 その結果、それらの
大型トラックが通行した西大河原地区の道路では
あちこちが陥没して穴が開きデコボコになりました。そのため通行は難儀し、トラックが通過するたびに大きな
騒音とともに、道路に面した
家々は大きく揺れました。道
路が修復されるまでその状態が何年間も続いたことは未だに生々しい記憶として残っています。
3-3 もし、西大河原にバイオマス発電所が建設され、稼働されることになれば、
木材を満載した大型トラックが毎日毎日何台も通過することになり、その道路に隣接する家だけでなく、西大河原地区全体に大きな悪影響をもたらすことになると思われます。
4-1 西大河原の豊かな森も含めて、
バイオマス発電所建設のために樹木を広範囲に伐採することは、大雨などの際、過去にあった白川の氾濫のような大洪水にもつながります。そうなれば、西大河原や下流の白川地区など、そして、富士見だけでなく、前橋一帯にも大きな被害をもたらしかねません。
4-2 事業者による説明書などには「間伐材を燃やすのでエコ」とか「バグフィルターを使うので煙に害はない」とうたわれているようですが、平成29年の林野庁の発表によれば、
バイオマス発電で実際に燃やされる資材は間伐材30%、おがくず17%、建築資材廃棄物47%で、建築廃棄物の方が多く利用されています。
4-3
林野庁は、森林を伐採することにより日光が豊富に入って光合成が盛んになり、その結果、CO2 の削減となる、と言っています。しかし、実際は福島原発事故による汚染廃棄物の処理をしたいのだと思われます。
4-4 というのは、東京電力を中心とする除染廃棄物技術協議会の協議によると、再利用の対象に一般のゴミ焼却炉、セメントと並んで、バイオマス発電が計画に入っているからです。福島の中間貯蔵施設は満杯で、それを何とか処理するために森林再生事業を行い、間伐してそれをチップ化してお金を得ているのです。
4-5 2017年の福島県のデータによれば、樹皮付きチップを燃やすと放射能がかなり濃縮されます。
4-6
また、不完全燃焼で温度が下がった場合にはダイオキシンが発生する可能性があります。無垢の木材を燃やしても発生すると言われています。
4-7 高温のまま燃やすとバグフィルターが燃えるので、温度を下げると今度はダイオキシンが発生します。
4-8 バイオマス発電の事業者等は
高温で燃やすから大丈夫と言っていますが、真実は、バイオマス発電はエコどころか放射能や汚染物質をまき散らす非常に危険なものなのです。
4-9 また、
熱効率は30%で、他の70%は捨てています。設備を冷やすために、冷却水が必要ですが、例えば、長野県の東御市の施設(出力1.99Mワット)の場合、毎日300トンの水が必要です。農業用水用の深井戸が利用されていますが、鉄さびを防ぐために薬剤を使用し、さらに冷却後の水を捨てる際に薬剤で中和し、農業用水と一緒に千曲川に流すということです。なお、着工前に、近隣住民等に対して、そのことについての説明はなかったとのことです。
4-10
バイオマス発電には冷却水が多量に必要です。冷却水は危険な薬剤で処理され、川に流したり、地下浸透で処理されます。それが白川流域あるいは西大河原地区の住民の健康を大きく阻害する可能性があります。
●説明会等について
1 苗ケ島の状況から、
前橋市には条例ができて、住民への説明が必要になっています。その際は、西大河原だけでなく、新地、天神、皆沢、石井、時沢なども対象になってきます。
2 平成28年12月1日から、「
前橋市自然環境、景観等と再生エネルギー発電設備事業との調和に関する条例」が施行されました。それによると、市内の一部地域(赤城山山麓の一部や土砂災害警戒区域など)で再生可能エネルギー発電設備(太陽光、風力、水力、
バイオマス、地熱など)の設置を行う場合は、設置事業ごとに、事前に前橋市の許可が必要です。
3 前橋市の条例によると「再生可能エネルギー発電設備の設置に許可が必要です。その許可の対象となる発電設備と規模は、「発電出力が2000キロワット以上のもの」となっています。
4 前橋市の条例では「市の許可が必要となる区域での再生可能エネルギー発電設備設置の事業計画について、事業者に近隣住民等説明会(以下「説明会」)の開催を義務付けています。すなわち、発電所が位置する西大河原自治区の住民に対しては説明をしなければならないということです。
5 近隣住民等は、条例第12条第3項の規定により、説明会を開催した事業計画について意見がある場合は、説明会開催の日から
14日以内に事業者への意見書を提出し、意見を申し出ることができます。
6 事業者は、近隣住民等から意見書の提出があった場合は、条例施行規則第8条各項の規定により、
当該意見書に対する見解書を当該近隣住民等に提出してその内容を説明するとともに、協議を行い、当該近隣住民等の理解を得ることが必要です。
7 西大河原に建設予定のバイオマス発電所は「発電出力は1990キロワットで2000キロ以上ではない」ということです。しかしながら、事業者は許可を得るために必要な諸々の面倒な条件に引っかからないように、「発電出力を1990キロワット」と言って、市の許可なしにやって行こうとしているものと予想されます。
8 また、仮に、最初は「発電出力は2000キロワット以上ではない」と言いながら、気が付かないうちに、2000キロワット以上のものにされても、
私たちには(そして、たぶん市も)それをチェックすることは難しいので、実態を知ることができないという問題があります。
<付記>
1 最近のバイオマス発電事業に関しては、以前はメガソーラーで電気産業を進めていた会社が、規制が出てきたので、木質バイオの火力発電に方向を変えてきています。
2
今回、西大河原の山林でバイオマス発電所の建設と稼働を計画している事業者については、前橋市富士見町のバイオマス発電の認可許可は2021年8月時点までは出ていません。(ただ、太陽光発電については、2013年に中之条町での事業が許可されてリストに入っています。)
**********
■この富士見町赤城山での、翼電気による木質バイオマス発電計画について知った当会では、前橋バイオマス発電事業で住民として計画阻止を目指し活動してきている赤城山の自然と環境を守る会の関係者の皆さんからの要請もあり、まずは、この事業計画がどのような内容なのかを把握すべく、2022年1月12日(水)15時56分に公文書開示請求書を群馬県庁2階の県民センターに提出し受領されました。
開示請求書の提出に先立ち県庁16階南の環境森林部林政課を訪れて、本件事業計画の相談を受けた部署を確認したところ、バイオマス発電関連は環境政策課(前橋バイオマス発電事業で、木質燃料の水分量のオマケをして、環境アセスを関電工にさせずに済ませた張本人の部署)と思いきや、県庁15階北の林業振興課が担当だということで、そちらに移動し、担当者に面談を申し入れました。すると、当会会員が被害を被っている藤岡市内の保安林違法手続き問題で、現地の保安林場所の特定のための立会いの際に面識のあった林業振興課次長の青木均氏と、係員の佐々木氏が応対しました。
彼らに本件事業計画についての有無をはじめに聞いたところ、佐々木係員が調べてくるとして中座したあと再び戻ってくると「FIT制度による事業登録で、燃料調達計画として申請が出されている」とのことでした。そのうえで、提出予定の公文書開示請求書を見せて、「このような情報を開示してもらいたい」と申し入れました。
とくに補助金については、関電工・トーセン・県森連・素材協による前橋バイオマス発電燃料事業で、ありとあらゆる補助金が使われていたこともあり、今回も重要な関心事です。そのため、補助金情報についてしっかり開示するように依頼したところ、青木次長曰く「自分の部署が扱っている補助金制度のことはわかるが、ほかの部署のことはわからない」と述べました。このように県職員は、知っていなければならないことも知らないフリをします。
押し問答をしても時間の浪費なので、そのあと2階の県民センターで開示請求書を提出するとき、開示担当者には、「この事業計画で補助金の申請が出されていることも想定されるので、心当たりの関連部署にも、本件開示請求があったことを伝えてもらいたい」と申し入れておきました。請求した公文書の情報は以下のとおりです。
※群馬県公文書開示請求書↓
ZIP ⇒ 2020112qnjiymocixdvj.zip
*****開示を請求する公文書の内容又は件名*****
聞くところによると最近、前橋市富士見町赤城山地区に伊勢崎市内の電気業者が木質バイオマス発電設備を建設し稼働する事業計画を立てているようです。ついては、当該事業計画について、以下の情報。
(1) 業者が群馬県に提出している事業計画内容を含む資料。
(2) 燃料の木材チップの調達先と調達ルートがわかる情報。
(3) 周辺住民の方に対する説明会開催予定がわかる情報。
(4) この事業に投入される各種補助金の内容がわかる情報。
(5) この事業に関するそのほかの関連情報(業者とのやり取りを記したメモ等を含む)
**********
この結果、同1月26日付で群馬県林業振興課と群馬県中部振興局中部環境事務所から開示通知書が送付されました。
※群馬県林業振興課と中部環境事務所からの部分開示通知書↓
ZIP ⇒ jm040126.zip
■全部開示もしくは部分開示された情報は以下のとおりです。
*****群馬県林業振興課扱いの開示情報*****
<全部開示情報>
1-1.【富士見赤城山発電所】翼電気の事業概要
URL ⇒
yxmrdztv_dc.zip
1-2.翼電気法人登記簿
URL ⇒
dclolisjixo.zip
<部分開示情報>
2-1.2021年11月17日:燃料の調達及び使用計画書(案)
URL ⇒
yr031117azrbgpvp0108.zip
yr031117bzrbgpvp0914.zip
2-2.2021年11月25日:燃料の調達及び仕様計画書(案)
URL ⇒
yr031125azrbgpvp0107.zip
yr031125bzrbgpvp0814.zip
2-3.2021年12月1日:燃料の調達及び使用計画書(県への提出版)
URL ⇒
yr031201azrbgpvp0112.zip
yr031201bzrbgpvp1323.zip
2-4.富士見赤城山発電所の認定申請書(抜粋)
URL ⇒
_1p0107.zip
_2p0810.zip
_3p1112.zip
2-5.2021年11月30日:群馬県林業振興課の回議資料
URL ⇒
r031130c.zip
2-6.森林事業体としてのビジョンについて
URL ⇒
rw.zip
2-7. 群馬県と事業者(実際には仲介者)とのメールのやり取り
(1) 2021年11月17日:事業仲介者⇒群馬県林振課
2021年11月18日:群馬県林振課⇒事業仲介者
2021年11月18日:事業仲介者⇒群馬県林振課(翼電気法人登記簿、認定申請書、事業概要をメール添付)
URL ⇒
1p0108i202111171119j.zip
(2) 2021年11月19日:群馬県林振課⇒事業仲介者(面談協議申入れの件)
2021年11月19日;事業仲介者⇒群馬県林振課(11月22日面談日時の確認)
2021年11月22日:事業仲介者⇒群馬県林振課(11月22日16時面談日時確定)
URL ⇒
2p0916i202111191122j.zip
(3) 2021年11月25日:事業仲介者⇒群馬県林振課(燃料調達と仕様計画書の変更)
2021年11月26日:事業仲介者⇒群馬県林振課
2021年11月30日:群馬県林振課⇒事業仲介者(修正コメント)
2021年11月30日:事業仲介者⇒群馬県林振課(県修正コメントを反映した申請書提出)
2021年12月01日:事業仲介者⇒群馬県林振課(修正した申請書の送付連絡)
URL ⇒
3p1725i202111251201j.zip
2-9.採択事業計画書
URL ⇒
v1p0104.zip
v2p0508.zip
v3p0912.zip
v4p13.zip
*****群馬県中部環境事務所扱いの開示情報*****
<部分開示情報>
3-1.2021年11月22日:中部環境事務所⇒業者仲介者(燃料発生時の廃棄物妥当性に係る見解)
URL ⇒
ipjf20211122.zip
**********
■このように、地元説明会をやらないうちに、群馬県は昨年11月から12月にかけて事業者から本件事業に関する相談に対して、国の資源エネルギー庁が定めるガイドラインにより、事実上、ゴーサインのお墨付きを出していたことが反映しました。
しかし、誰が考えても不可思議なことがあります。例えば以下の疑問点です。
①従業員8名の翼電気が、初期投資が少なく見積もっても16億円が見込まれるバイオマス発電事業を単独で申請していることについて、群馬県は融資元などを確認しているのか?融資証明書の提出の有無は?
②木質燃料の調達はどのような計画なのか?群馬県森林組合連合会(県森連)などとの関連や関与は?
③県森連の副会長と翼電気の代表取締役の名字が一致しているが、何か関連があるのか?
④事業者は地元説明会をやる必要がないと言っているが、ガイドラインに抵触すると思う。行政からきちんと指導したのか?
⑤燃焼残差の処理、とりわけ濃縮による放射線濃度の懸念について、業者からどのような説明が行政にあったのか?また、燃焼残差(主灰、飛灰)の処分先はどこか確認しているのか?
⑥発電用の蒸気タービンの復水の冷却方式は、空冷式なのか?冷却水は地下水のかけ流しなのかそれとも循環式なのか?
しかしこれらの疑問点は、おそらく行政側からは何も説明が得られないことでしょう。なぜなら、事業者の円滑な事業の推進に悪影響を与えるという理屈で、情報開示がなされないためです。したがって、行政が住民の疑問や不安に対してしかるべく対応しないのですから、当然、事業者が直接住民に対して説明することが不可欠となります。
■ところが先日、富士見町赤城山の区長が翼電気を訪問して、事業内容について住民説明会を開催するよう要望したところ「(本件事業で計画しているバイオマス発電施設は2000キロワット未満の出力の)小規模バイオマス発電であり住民説明会の開催は不要と承知している」の回答だったそうです。この翼電気の回答は、「行政側もそうした対応を認めている」という自信からの発言のようにも聞こえます。
何しろ、関電工・トーセン・県森連・素材協による前橋バイオマス発電事業では、排ガス量が毎時4万立米をはるかに超える火力発電施設にもかかわらず、環境アセスメントを骨抜きにする特例まででっち上げて、関電工らにアセスメントを免除させてしまった群馬県行政ですので、県森連がバックにつけばなんでもあり、という無法認可が、翼電気の本件事業計画に対しても繰り返される予感がします。
地元住民説明会については、経産省資源エネルギー庁の「事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)」(2021年4月改訂)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_biomass.pdf
のP5およびP6に次の記載があります。
↑
資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)」(2021年4月改訂)P5、P6から抜粋。↑
また、業界団体である一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会のHPにおいても、「事業説明会の実施について(住民理解への対応)」として、「木質バイオマス発電事業(大規模木質バイオマス利用設備)計画時には、関係する環境規制等、法律基づく施設整備を実施し、近隣住民へ十分に事業説明を行い、理解を得ることが肝要です。」と明記されており、2000kW 未満だから住民説明会は不要という理屈にはなりません。
※(一社)日本木質バイオマスエネルギー協会「事業説明会の実施について」↓
https://www.jwba.or.jp/explanation/electricity/
■こころもとないのですが、地元自治体の前橋市には、きちんと住民説明会を実施するように業者への指導を申し入れる必要があります。また、群馬県も同様に県民の安全・安心な生活環境保全の立場から業者への指導や申し入れを行う立場にあります。そのため、当会では、本件情報開示の際に、住民説明会開催の必要性について県に口頭で申入れを行いました。しかし群馬県は、「行政としてそうした権限はない」などと、きわめて無責任な見解を述べています。。
その一方で、群馬県は、「緑の県民税」と称して独自の税金を平成26年度から県民より徴収しています。
https://www.pref.gunma.jp/04/e3000113.html#:~:text=%E6%A3%AE%E6%9E%97%E7%92%B0%E5%A2%83%E7%A8%8E%E3%81%AF%E5%9B%BD%E7%A8%8E,%E5%86%86%E3%81%8C%E8%AA%B2%E7%A8%8E%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
この群馬県独自の税金は、森林環境の保全をうたい文句にしていますが、県の補助金の上乗せ原資として、森林行政にはびこる不透明な利権の構図に組み込まれています。群馬県が森林行政で費消する補助金のずさんな実態については、現在、藤岡市内の保安林をめぐる間伐事業で公文書が長年にわたり買い残されている事件で、当会が訴訟を提起しています。この裁判をめぐる対応で、群馬県は、当会が県職員との直接接触をしないように、顧問弁護士を群馬県代理人として我々の税金で任命し、裁判ではこの弁護士を訴訟代理人として、これまた公金で業務委託をして、自分たちの悪行を徹底的にもみ消そうと躍起になっています。
しかも、始末の悪いことに裁判官まで、同じ公務員仲間ということで、悪徳公務員や不良弁護士に加担する始末です。
■こうしたことから、群馬県や前橋市のような行政側が、住民の安全・安心な生活環境保全の観点からでなく、政治的なバックアップを得た業者の利益を優先する観点から、こうしたバイオマス発電事業を推進しているため、群馬県内では次々に同種の補助金事業が各地で計画されています。
そもそも補助金は、社会に貢献する事業や団体に足りない分を補助するのが目的であり、その人たちは、全て善人であるとの前提で補助しています。だから補助金は、書類審査のみで現場確認はありません。このような仕組みとなっているため、行政は与党議員の口利きがあれば簡単に補助金をつけてもらえるのです。審査する側の担当職員は驚くほど少なく、その職員が通してしまえば補助金が出てしまいます。
また、補助金事業は、儲かります。関電工・トーセン・県森連・素材協による前橋バイオマス発電事業では、木質チップにした生木の水分を減らすため油圧プレスを補助金で導入しましたが、2億5千万円(税抜き)もの補助金が、何の疑問もなく事業会社に支払われました。2000トンの油圧プレスの価格はせいぜい2000万円(トン当たり1万円)ですが、これだけでそのほかの機材も全部調達できるほです。
さらに補助金の旨味として、補助金をもらって、実際は黒字でも本事業が赤字であれば税務署に赤字申請することで、税金が免除されることが挙げられます。その為にも、監視する仕組みが必要なのですが、行政内には、当会のようなオンブズマン機能を持つ部署はありません。監査委員はいますが、職員が用意した資料に目を通し、監査済みの押印をするだけが仕事です。また、外部監査制度は、ちゃんとした外部監査人であれば、有効に機能することが期待され、事実、成果を上げている自治体も少しはありますが、ほとんどは形骸化してしまっています。
■このように、群馬県行政が頼りにならないため、地元自治会長と住民の皆さんが、地元の意見として前橋市長あての要望書を2月16日に持参して、前橋市役所を訪れました。
ところが、地元自治会長と住民の皆さんが前橋市役所を訪れたところ、前橋市環境部はハナから面会に応じようとせず、逃げまくり、ほかの部署にたらいまわしする始末でした。「自治会長が来ました」と伝えたところ、ようやく面会に応じたのが都市計画課でした。しかし、要望書を渡して地元の意向を伝えてもなお、担当職員らは「規模が小さいので住民説明会を行う義務はない」と繰り返すのみでした。
さすがに、関電工・トーセンに県森連・素材協が絡んで補助金をぼったくった前橋バイオマス発電事業で、あいかわらず環境基準を超える騒音を周辺に巻きちらし、住民の皆さんが苦情と是正を申し入れても、一向に重い腰を上げようとしない前橋市ならでは、の実態が如実に示されているといえます。
地元自治会長らは、あらためて行政の呆れた対応に失望させられましたが、気を取り直して、地元説明会の開催と、共有地を勝手に私物化されないよう、あてにならない行政にすがるよりも、地元として結束を固める決意を固めたのでした。
■今回開示された情報によれば、この翼電気の事業で木質燃料を調達するとみられる10文字の黒塗り関係業者に対して、中部環境事務所は「第二山子田発電所と富士見赤城山発電所」に供給する木質燃料の廃棄物該当性について見解を示しています。ということは、群馬県内でもうひとつのバイオマス発電計画が榛東村の山子田地区で計画されていることになります。
さらに当会に寄せられた情報では、渋川市村上地区小野子でも出力約2,000kWのバイオマス発電建設計画が進められていることがわかっています。
※放射能ごみ焼却と木質バイオマス発電を考えるオンライン・シンポジウム↓
https://youtu.be/vPQM7q-xo7o
(渋川市のバイオマス発電関係は1:28:00~1:36:50をご覧ください。)
すなわち、現在少なくとも3か所の木質バイオマス発電計画が粛々と進行しているのが群馬県内の実情です。
■さて、今回の開示資料である燃料調達及び使用計画などからいくつかの事項が判明してきました。主なものを以下に示します。
①剪定枝は対象となっていないこと。
②地域社会に対する対応として、2021年10月15日に前橋市の行政担当者へ説明を行ったこと。
③その際、事業者が「事業者の代表者の地元であることから地元の調整を開始したところである。本申請として開発許可申請を行う中で必要な地元説明会を行う予定である。」と述べていること。
④翼電気の狩野代表は富士見町赤城山と隣り合わせの東金丸町と関係があり、地元説明会を行う予定と記載されているのは地元重視の姿勢を見せていること。
⑤それにもかかわらず、前橋市役所が「小規模の発電施設だから地元説明会はやらなくてもよい」と、住民軽視の発言したことは遺憾であること。
⑥発電出力は1,990kWで、稼働は24時間、340日であること。
⑦FITでは一般木材バイオマスの区分であれば、一定の条件を満たした輸入木質チップを使うことは可能(ただし未利用木質バイオマスのカテゴリーにはならない)であるが、調達先が変わる場合は届出が必要であること。
⑧今回の事業では翼電気が調達先は沼田市もしくは群馬県内としているが、仮に事業者が説明会で群馬県内と言っておきながら、実際には調達先が(前橋バイオマス発電のように)群馬県外からとなる懸念もあること。
⑨なので、申請以外から購入できないことになっているので群馬県内産のみであることの確証を事業者から得ておくことが必要であること。
⑩経産省資源エネルギー庁によれば、燃料区分・燃料名の変更が無い場合であっても、燃料の調達先が変更になる場合は、事前変更届出の提出が必要になるとされており、前橋バイオマス発電の場合、県外ナンバーの大型トラックが頻繁に発電所に出入りしていることから見ても、翼電気は、しっかりと木質燃料の調達先を住民に開示する必要があること。
⑪翼電気は木質バイオマス発電の実績を持っておらず、アドバイザーの会社から指導を受けることになっており、この点についても住民説明会を開き、アドバイザーの会社にも参加してもらい、その会社の実績を聞く必要があること。
⑫なぜなら、木質バイオマス発電事業で、地元住民とトラブルが発生していない案件は皆無に等しいのが現状であること。
⑬翼電気は2021年11月に定款を変更し、林業事業に進出するとしているが、林業機材の保有は現在ゼロであり、2022年6月までに台数黒塗りで不詳だが多くの「林業機械を購入する予定」とあること。また、「その他の林業機材は自社で投資する予定」としていること。
⑭購入予定の林業機材は、間伐材を切り出し、玉切り、搬送、輸送までの一式機材としており、かなりの金額と予想され、このためにどれほどの補助金が賄われることになるか注視する必要があること。
■こうした住民の疑念を払しょくするのは行政の役割のはずですが、前橋市や群馬県は事業者や群馬県森林組合連合会、そしてそのバックにいる自民党群馬県連の方ばかり顔を向け、住民の声に耳をそらせてきました。
こうした住民疎外の群馬県行政を打開するためにも、当会は、きちんと事業内容や行政手続きの透明化を推進し、実行するよう行政に申し入れ続けてまいる所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報「前橋バイオマス発電所について」
**********関電工2018年04月25日
https://www.kandenko.co.jp/news/2422
前橋バイオマス発電所が運転開始 ~当社初のバイオマス発電所が稼働~
株式会社関電工(本社:東京都港区、取締役社長 森戸 義美)および株式会社トーセン(本社:栃木県矢板市)が出資する前橋バイオマス発電株式会社(群馬県前橋市、代表取締役 野本 健司)が群馬県前橋市に建設していた前橋バイオマス発電所がこのほど完成し営業運転を開始いたしました。
営業運転開始に伴い4月24日に同発電所敷地内において、須藤雅紀群馬県環境森林部長、山本龍前橋市長をはじめご来賓ならびに工事関係者をお招きし、完成披露式を執り行いました。
同発電所は燃焼効率の高いボイラーで燃料チップを燃焼することによって得た熱で蒸気を発生させ、その蒸気によってタービン発電機を駆動して発電します。
また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を活用し、群馬県の森林組合等を通じて調達した未利用間伐材等を燃料として発電を行うもので、一般家庭約8,700世帯分の年間消費電力量に相当する4,300万kWh/年を20年にわたり発電する予定です。
当社は、太陽光、風力、小水力に続く再生可能エネルギー発電事業として木質バイオマス発電事業に取り組み、これまで使用用途がなく森林内に放置されていた未利用資源等を本発電所で活用させていただき群馬県の林業振興と雇用の創出など、地域活性化の一助となることを目指すとともに、地域資源循環型の再生可能エネルギー発電に取り組み、地球温暖化の防止に貢献してまいります。
<参 考>
前橋バイオマス発電所概要
所在地:群馬県前橋市苗ケ島町2550-2
最大出力:6,750kW
年間発電量:約4,300万kWh(一般家庭 約8,700世帯分)
営業運転開始:平成30年3月4日
燃料使用量:間伐材及び製材端材 約8万t/年
↑
前橋バイオマス発電所施設。右側のエリアがバイオマス燃焼で蒸気を発生させタービンを回して発電する前橋バイオマス発電で、関電工が主体で運営している。左側のエリアがボイラー燃料用の木質チップを製造し供給する前橋バイオマス燃料でトーセンが主体で運営している。↑
↑
前橋バイオマス燃料は写真のような欧州製チッパーを稼働させている。騒音が酷いので本来は後ろの建物の中で運転する計画だったのが屋外で稼働しているものと推察される。このチッパーの価格はほぼ1億円で、6割が補助金で賄われた。ひょっとしたら、翼電気のバイオマス発電所に供給される木質チップは前橋バイオマス燃料から供給されるのかも。↑
↑
前橋バイオマス燃料を運営するトーセンのTwitter記事↑
**********