■国立高専校長の選考実態、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用、長野高専連続自殺の発生年月日などなど、高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報は枚挙にいとまがありません。そうした悪質な不開示処分の取消しを求め高専機構を提訴した第一次訴訟では、卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えてようやく結審し、2020年11月24日に森英明裁判長らにより判決が下されました。
しかしそれは、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通しし、ごくわずかの勝訴部分を除いて当会の全面敗訴というあからさまな不当判決でした。「こんな滅茶苦茶な判決を許してはいけない」という憤りとエールの声が次々に高専関係者らから寄せられたこともあり、当会では同年12月8日に第一次訴訟の不当判決に抗うべく控訴を行いました。
○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
その後、本件控訴審の第一回口頭弁論日程が決まるとともに、当会から控訴理由書の提出も済ませましたので、流れをご報告します。
■控訴状を提出して間もなく、高専機構側から予期せぬアクションがありました。同年12月16日に突然、高専機構本部からの郵便物が届いたのです。封筒を開けてみると、令和2年12月14日付けの法人文書開示決定通知書とともに、第一次訴訟で唯一の被告敗訴部分である項目名及び整理Noの黒塗りのみが外された各年度の高専校長候補者一覧表が入っていました。
○修正開示の決定書と各年度の高専校長候補者一覧表 ZIP ⇒ 202012141ljmj11.zip
202012142j12to3.zip
202012143j14to6.zip
202012144j17to8.zip
202012145j18to9.zip
※参照比較:https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2676.html 内開示文書
文書が届いた当初、高専機構がこうした突飛な行動に出てきた理由が呑み込めませんでした。良心的に考えると、第一次訴訟判決の敗訴部分(50分の1)については高専機構が控訴せず事実上確定したことから、とりあえずそこだけ開示することにしたのでしょうか。
悪い方に考えれば、第二次訴訟における訴訟おじゃん作戦大成功のトンデモ判決に味を占め、50分の1の敗訴部分も潰すべく、「おじゃん作戦その2」をかましてきたのかもしれません。しかし、向こうは控訴をしていないので、裁判所はそもそもその点について判断できないはずです。この場合、どこかのタイミングで附帯控訴を仕掛けてくることが想定されますが、附帯控訴費用19,500円はじめ追加の弁護士費用は当然かかります。さすがに無いとは思いますが、3年前の群馬高専アカハラ情報不開示取消訴訟で控訴してきた時のように、莫大な公金を投じてバカな真似をしでかすのだけは勘弁してほしいものです。
■一方で、控訴した東京高裁での手続きの進捗はというと、まず12月22日の午前11時ごろに同高裁から着電がありました。出ると、東京高裁第17民事部の渡邊書記官と名乗り、「控訴に伴い、当事者双方の資格証明書を新たに提出願いたい」とのこと。担当部と担当書記官はそのように決まったようです。当会ではさっそく、当会の資格証明(会則と代表選出会議録)と高専機構の登記簿(履歴全部証明書)の謄本を同日中に郵送提出しました。
○当事者双方の適格証明書 ZIP ⇒ 202012221eiki.zip
202012222iki.zip
その翌々日となる24日、今度は訴訟進行に関する照会書が当会事務局宛てにFAX送信されてきました。見ると、控訴審の事件番号は「令和2年(行コ)第251号」、使用法廷は812号法廷に決まったようです。
○訴訟進行に関する照会書(第一次訴訟控訴審) ZIP ⇒ 2020122417iisfax.zip
口頭弁論期日の候補としては、2021年の3月17日、3月22日、4月14日、4月21日の4つが提示されていました。審理が早く済むに越したことはないので、3月中の日程を希望することにしました。
■年が明けて1月13日、渡邊書記官から電話があり、控訴審の第一回口頭弁論期日が3月17日(水)の11時00分に決まったとのこと(※後述のとおり後に変更)。
高裁のセッティングが整ったので、控訴状提出からちょうど50日目となる1月27日、当会では第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の控訴理由書を以下のとおり提出しました。
*****控訴理由書(第一次訴訟控訴審)*****ZIP ⇒ 20210127itir.zip
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構
控 訴 理 由 書
令和3年1月27日
東京高等裁判所第17民事部御中
控訴人 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 印
頭書の事件について,控訴人の控訴理由は以下の通りである。
なお,本書面においては,特に断らない限り,原判決が用いたものと同様の略称を用いる。
控 訴 の 理 由
1 控訴状別紙1項(本件文書1)にかかる情報について
(1)原判決を受けた被控訴人による文書の追加開示
被控訴人は、令和2年11月24日の原判決を受け、本件決定のうち本件文書1の項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分(原判決敗訴部分)を取り消す再決定を同年12月14日に行った。そして、その日付の高機第105号法人文書開示決定通知および不開示の一部取消しを行った新たな開示文書(以下「本件再開示文書」)を控訴人に送付した(甲47)。
(2)各文書の扱う推薦機関の種別について
本件再開示文書は、本件決定において開示された被控訴人における各年度の国立高等専門学校長候補者一覧のうちで、それまで不開示としていた項目名及び整理Noを新たに明らかにしたものである。
そこで本件再開示文書を確認すると、まず、平成23年4月付けから平成29年4月付けまでの各年分においては、右上に資料番号が付されており、いずれも細目番号①と②の二つに区分されていることがわかる。また、被控訴人の原審における主張によれば、当該文書は、各候補者を推薦機関の種別によって区分し、表にまとめたものである。そこでさらに確認すると、細目番号①では所属先もしくは推薦機関を現わした一つ目の項目が「推薦機関」となっており、一方で細目番号②では「学校名」となっていることがわかる。
すると、細目番号②は高専や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を、細目番号①はその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者を、それぞれまとめたものであることが極めて強く推知できる。すると、各細目番号に区分される資料が扱う推薦機関の種別は事実上すでに明らかであり、直接的にこの種別を示す記載を開示しても、新たに法5条4号ヘにいうおそれが生じるとはいえないことは明らかである。
また、平成30年4月付けと平成31年4月付けの分については、記載方法が変わっているので、個別に検討する。平成30年4月付けの分については、細目番号1で6名、細目番号2で4名、また細目番号なしの資料3点についてそれぞれ1名、2名、1名の候補者が記載されている。
一方で、実際に同年に高専校長に就任した者の前職をみると、高専教員4名、大学(院)出身者5名、文部科学省2名、国立教育政策研究所1名となっている(甲48)。
ある区分について、就任者数が推薦者数を上回ることはありえないので、細目番号1が大学出身者、細目番号2が高専出身者、また細目番号なしの資料のうち2名記載分が文部科学省出身者であることがここから推知できる。よって、区分に係る推薦機関の種別が推知可能である。また、平成31年4月付け分についても、同様の手法で区分に係る推薦機関の種別が推知可能であると考えられる。
よって、本件文書1に含まれる情報のうちで、各文書が取り扱う大まかな推薦機関の種別は、すでに明らかになっている情報から推知できる情報であり、法5条4号ヘにいう人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれをあらたに生じさせる情報ではないことは明らかである。
また、さらに言えば、本件文書1において推薦機関の種別はせいぜい2つか3つ程度に区分されていることが明らかであり、多数の様々な推薦機関に対してかなり大まかな区分方法となっていることは明らかである。すると、本件文書1の各文書が取り扱う推薦機関の種別にかかる情報を明らかにしたところで、選考に通過しなかったものの構成は極めて大雑把にしか把握しえないのであって、法5条4号ヘにいうおそれが生じるとは考えられない。
(3)各候補者の推薦機関又はその種別に係る情報について
原判決は、本件文書1に記載のある各候補者の推薦機関又はその種別に係る情報について、これを開示した場合、校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となり、そのため、推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどするおそれがあるとして、法5条4号ヘに該当すると判示する(原判決19頁)。
しかしながらこれは、被控訴人が推薦機関によって候補者を差別していることを前提とした判断である。甲8号証や甲37号証のとおり、国立の機関の長となるものの選考にあたっては、被控訴人独自の判断基準は多少あるにせよ、基本的には候補者本人の純粋な実力や資質のみをみて公平に選考が行われていることが前提とされるべきことは言うまでもない。原判決は、判断にあたってこの点にまったく言及しておらず、極めて不合理である。
(4)選考通過者のうち実際に校長に就任した者にかかる記載情報について
また原判決は、選考通過者のうち実際に校長に就任した者にかかる記載情報について、公開情報として法5条1号但書イに該当したとしても、同条4号ヘ該当性による不開示を否定するものでない旨判示する(原判決20頁)。しかし、もともと公開されている情報を開示したところで、法5条4号ヘにいうおそれが新たに生じるわけがなく、また他の候補者に係る情報が明らかにされるわけでもないであるから、この判断もまた不合理である。また仮に、この情報を明らかにすることで、記載のある文書が取り扱う推薦機関の種別が明らかになるとしても、上記指摘のとおり、推薦機関の種別は法5条4号ヘにいうおそれを生じさせる性質のものではない。よって、原判決の判断は誤りである。
2 控訴状別紙2項(本件文書2)にかかる情報について
原判決は、本件文書2について、「本件文書2は,西尾の辞職願のうち群馬高専を辞職する理由を記録した部分であって,その記録部分の長さから20字強の記載があり,相応の記載内容があることがうかがわれ(甲4),その記載内容から群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能であるものと考えられることから,本件文書2に記録された情報は法5条1号本文の個人識別情報に該当するというべきである。」(原判決21頁)と判示する。
しかし、本件文書2はそもそも最初から「西尾典眞」の辞職願と特定されているものであり、もはや個人を識別することを要さないにも関わらず、「群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能である」ことを理由に、辞職理由が法5条1号本文の個人識別情報に該当すると認定するのは明らかに不合理である。
すなわち、辞職理由が法5条1号本文の個人識別情報に該当するかどうかは、あくまで当該情報が個人識別性をもつプライバシーに属する情報であり、その開示によって西尾への権利利益侵害が生じるかどうかに帰せられるところ、かかる辞職理由は、すでに甲9号証のとおり被告自身が事実上明らかにしているものであり、本件文書2について辞職理由を開示しても西尾への権利利益の侵害は起こらないか、あるいは受忍限度に留まるものと解するべきである。
したがって、本件文書2における西尾の辞職理由は法5条1号本文にあたらないから、開示されるべきである。
3 控訴状別紙3項(本件文書3)にかかる情報について
(1)異動・退職等人事が行われた者の所属・職名等情報について
本件文書3の人事が行われた教職員に関する不開示部分のうち、氏名等情報を抜いて人事前後の被控訴人内部における所属や職名のみ開示しても、それは単に当該部署等で人事が行われたことを示すだけの情報であり、また内部の者として当然その事実(かかる者にかかる人事が行われたこと)は既知であり、外部の一般人から推測する余地もないから、差し支えなく開示されるべきである。
しかし原判決は、「しかしながら,法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは,当該情報により,又は当該情報と他の情報とを照合することにより,特定の個人を識別することができるか否かにより決せられるのであり,当該情報が内部の者にとって既知であるか否かにより決まるものではなく,原告の主張は失当である。」とし、さらに、「原告は,「職名」は法5条1号本文の個人識別情報に該当しない旨主張するが,群馬高専において一時期に異動等する者の人数は限られることからすれば,「職名」に異動等の時期を併せることで,群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者において当該情報に係る個人を特定することが可能になると考えられるから,「職名」は同号本文の個人識別情報に該当するというべきである。」などと判示する(原判決22頁)。
しかし、原判決がいうように、既に特定機関内部の者等にとって既知であるかどうかに関係なく、特定機関内部の者を基準にして同じく内部の個人を特定する性質の情報だからといって一律に不開示とするのであれば、あらゆる公文書や法人文書において、公表されている以外ではいかなる職名や職位の記載も不開示が許されてしまうのであり、ひいては不開示範囲も野放図に広がってしまうのは明らかであって、極めて強引で不合理な法解釈というべきである。個人に関する情報のすべてを片端から情報公開の対象外とすることは、法が想定しているところでないのは明らかである。
ある情報が法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは、一般人基準を採用するのが通例であり、また仮に特定機関内部者や他関係者の基準から個人識別性を認めようとすれば、それは特定される対象人物の権利利益が害される場合と解されるのが通例である(甲49)。
これを本件に適用して考えると、まず職員の氏名が公表されていない場合は、職名のみを開示しても外部の一般人がそれ以上の情報を推量する余地はなく、他方で氏名が公表されているならそもそも法5条1号ただし書イに該当するわけだから、いずれにせよ個人識別性は問題とならない。また、異動や退職等の人事が行われた者を現に知る群馬高専の内部関係者等の基準を採用するにせよ、その人物に当該異動や退職が行われた事実は常識的に考えて既知なのであり、したがって、異動が行われた部署や職名を開示したところで、かかる人事の対象者の権利利益を害さないのは当たり前である。よって、人事前後の群馬高専における部署や職名・職位等情報のみが、法5条1号本文の個人識別情報にあたらないことは明らかであって、当然開示されるべきである。
(2)群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員について
原審において控訴人は、群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員について、その採用・昇進・異動・退職に関する情報が同校HPで様々な方法で事実上公表されており、公開情報であるから当然開示されるべきことを指摘した。
ところが原判決は、「技術補佐員の退職挨拶が掲載されているのは,当該技術補佐員の勤務期間や担当職務等の個別事情を考慮したものであり,技術補佐員が退職する際に「年報」に挨拶を掲載するといった慣行はなく,(中略)本件文書3の(1)で不開示となっている技術補佐員の採用,異動及び退職に係る情報が群馬高専の外部に公開されている事実を認めることはできない。」(原判決23頁)などとし、さらに、「原告は,ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡することで,異動や退職といった人事状況を事実上公表されている情報として把握することができるから,技術補佐員の異動や退職について公表する慣行が存在している旨主張する。しかしながら,原告の主張する方法によっても,職員が当該部署に在籍するようになったり,在籍しなくなったりしたことが確認できるのみであり,異動,退職等の具体的な内容が明らかになるわけではないから,群馬高専において異動,退職等の人事情報を公表する慣行が存在しているとはいえない。」(原判決23ないし24頁)などと判示して、法5条1号ただし書イに該当しないとした。
しかしながら、法5条1号ただし書イの公表慣行とは事実上の慣行で足りるのであって、「個別事情を考慮した」という恣意的な理由付けの有無で慣行かどうかが即座に決せられるわけではない。また少なくとも、「個別事情を考慮して人事に関する挨拶等を掲載する」という慣行が成立していることは明らかであり、すでに年報その他によって人事が明らかになっている分の群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員に関する本件文書3の不開示情報は、法5条1号ただし書イを適用して開示とすべきである。
また原判決は、ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡しても、教育研究支援センターに所属するようになったりしないようになったりした事実が分かるだけであると判示する。しかしながら、まず教育研究支援センター内での昇進や降格、異動はホームページの記載形式からして容易に判明しうる(甲10)。また群馬高専において、技術補佐員を含む技術職員の所属は教育研究支援センターに一元化されており(甲50)、所属するようになったりしないようになったりすることは採用や退職と直結している。よって、原判決の指摘は誤りであり、かかる人事は慣例公表情報から事実上把握可能なものとして、法5条1号ただし書イに該当するから、開示が妥当である。
4 控訴状別紙4項(本件文書4)にかかる情報について
被控訴人が特定事件について木村弁護士に支払った弁護士費用情報を不開示としたことについて、原判決は「弁護士は,報酬の算定方法や金額等を依頼者との合意によって自由に定めることができるところ,弁護士費用の額が明らかになると,これを認識した競合する弁護士や弁護士法人が,上記の額を踏まえて,より有利な弁護士費用の額を提示して競争上優位な立場に立つ可能性があり,木村弁護士の競争上の地位に影響を与えるおそれがある。」という理由で、弁護士費用情報が法5条2号イの不開示情報に該当すると判断し、よって不開示としたことは適法であると判示する(原判決26ないし27頁)。
しかしながら、特定の事件について、競合する弁護士や弁護士法人が有利な金額を提示して容喙するなどというおそれが有り得るとしても、それは提訴されたあるいは応訴する当事者が訴訟代理人となる弁護士を探しており受任契約に至っていない状態においてである。または、せいぜい事件がまだ係争中の状態においてである。一方で、控訴人は決してそのような状態にある事件も含めて弁護士費用を開示することが当然と主張しているわけではない。控訴人が開示を求める弁護士費用が支払われた木村弁護士の受任事件である平成28年(行ウ)第499号及びその控訴・付帯控訴事件はいずれも甲1の開示請求時点で判決が確定しており、他の弁護士や弁護士法人が容喙することにより木村弁護士の競争上の利益が害される余地は存在しない。
よしんば、過去の他事件に関する弁護士費用情報から、少なくとも判決未確定状態の事件についてその弁護士費用を推測するにしても、原判決自体が判示するとおり、弁護士費用は弁護士自身が個々の事件について自由に定められるのであり、当該事件についての弁護士費用を知り得ない他弁護士等が確実に「有利な金額」を提示することは不可能である。
また、本件文書4に記載のある項目のうち、「うち消費税額」や「配分金額」は、個々の対応にかかる費用として木村弁護士の営業秘密に属するとしても、全体として支払った金額から事案性質や対応内容を推察することは困難であり、開示を阻む事情は存在しない。
さらに、控訴人は原審において、国や地方自治体の答申においては弁護士費用等情報が問題なく開示された事例が多数あり、特定弁護士事務所の競争上の利益が害されるおそれが現に生じていないことは明らかであることを指摘したにも関わらず、原判決はこの点との整合性も一切説明していない。
よって、原判決のうちかかる箇所はその根拠を欠いたものであり、支払決議書の不開示部分のうち,「合計金額」,「支払金額」は開示されるべきである。
5 控訴状別紙5項(本件文書5)にかかる情報について
控訴人は原審において、本件文書5にかかる本件報告書等の記載年月日等情報について、開示請求の対象文書の作成時期を個別に区切ることにより,開示される文書に違いが生じることから、公衆が知り得る状態に置かれているものとして,記載年月日等情報が法5条1号ただし書イに該当することを指摘した。
ところが原判決は、「しかしながら,原告の指摘する開示請求の方法によって本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があるとしても,それは,開示請求の対照(ママ)文書の作成時期の区切り方という偶然に左右されるものといわざるを得ない。したがって,原告の指摘する開示請求の方法によって,本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があることをもって,当該情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。」などとして、法5条1号ただし書イ該当性を否定し、かかる情報の不開示が適法であると判示する(原判決28頁)。
しかし、開示請求の対象文書の作成時期の区切り方は、開示請求者が任意に設定できるものであり、複数回開示請求を行うまたは複数人が開示請求した結果が付き合わされることなどによって、対象文書の作成時期は、少なくとも年単位、月単位において容易に絞り込めうるものである。すると、対象文書の作成時期が自ずと特定されていくことは偶然ではなく必然に寄っていくのであり、これを「偶然に特定されるもの」とした原判決は明らかに誤りというべきである。そしてここから、本件報告書の年月日等に係る情報は公の国民一般が知り得る状態に置かれていることは明らかであるから、記載年月日等情報が法5条1号ただし書イに該当し、開示が妥当である。
6 結語
以上のとおりであるから、控訴の趣旨のとおり請求する。
以上
附 属 書 類
1 控訴理由書副本 1通
**********
○証拠説明書(甲47~50)及び甲48-50号証 ZIP ⇒ 20210127ib4850.zip
○甲47号証 ZIP ⇒ 202012141ljmj11.zip
202012142j12to3.zip
202012143j14to6.zip
202012144j17to8.zip
202012145j18to9.zip
■ところで、この控訴理由書の提出に前後して、トラブルに見舞われました。もともと予定されていた第一回口頭弁論期日は、前述のとおり3月17日(水)の11時ちょうどでしたが、当会の出廷担当者において、同日のその時間帯にどうしても外せない用事が入ってしまいました。仕方がないので、1月27日、弁論期日の変更にかかる上申書を同高裁に提出しました。電話口で事情を話し、上申書を提出したことを伝えた際の渡邊書記官曰く、「期日変更が認められるかは裁判官の判断になる。認められても(既に日程が詰まっているので)5月以降になるかもしれない」とのことで、冷や汗が出ました。
すると翌日、東京高裁第17民事部の渡邊書記官から電話があり、「昨日申し出のあった期日変更について、新たな日時が決まりました。新たな期日は3月17日(水)14:30から第812号法廷です。ついてはあらためて期日請書を送ってください」とのこと。幸いなことに、日付は同じまま、時間が数時間後ろにズレるだけで済んだようです。
■よって、第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の第1回口頭弁論日程は、以下のとおり決定しました。
日時:令和3年3月17日 14時30分~
場所:東京高裁8階812号法廷
今後、口頭弁論一週間前となる3月10日頃に被控訴人である高専機構からの控訴答弁書が提出されたのち、東京高裁の第812号法廷で再び機構御用達の銀座弁護士たちと相まみえることになります。
高専機構からの控訴答弁書の内容と第一回口頭弁論の様子は、結果がまとまり次第、追ってご報告いたします。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
しかしそれは、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通しし、ごくわずかの勝訴部分を除いて当会の全面敗訴というあからさまな不当判決でした。「こんな滅茶苦茶な判決を許してはいけない」という憤りとエールの声が次々に高専関係者らから寄せられたこともあり、当会では同年12月8日に第一次訴訟の不当判決に抗うべく控訴を行いました。
○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
その後、本件控訴審の第一回口頭弁論日程が決まるとともに、当会から控訴理由書の提出も済ませましたので、流れをご報告します。
■控訴状を提出して間もなく、高専機構側から予期せぬアクションがありました。同年12月16日に突然、高専機構本部からの郵便物が届いたのです。封筒を開けてみると、令和2年12月14日付けの法人文書開示決定通知書とともに、第一次訴訟で唯一の被告敗訴部分である項目名及び整理Noの黒塗りのみが外された各年度の高専校長候補者一覧表が入っていました。
○修正開示の決定書と各年度の高専校長候補者一覧表 ZIP ⇒ 202012141ljmj11.zip
202012142j12to3.zip
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202012144j17to8.zip
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※参照比較:https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2676.html 内開示文書
文書が届いた当初、高専機構がこうした突飛な行動に出てきた理由が呑み込めませんでした。良心的に考えると、第一次訴訟判決の敗訴部分(50分の1)については高専機構が控訴せず事実上確定したことから、とりあえずそこだけ開示することにしたのでしょうか。
悪い方に考えれば、第二次訴訟における訴訟おじゃん作戦大成功のトンデモ判決に味を占め、50分の1の敗訴部分も潰すべく、「おじゃん作戦その2」をかましてきたのかもしれません。しかし、向こうは控訴をしていないので、裁判所はそもそもその点について判断できないはずです。この場合、どこかのタイミングで附帯控訴を仕掛けてくることが想定されますが、附帯控訴費用19,500円はじめ追加の弁護士費用は当然かかります。さすがに無いとは思いますが、3年前の群馬高専アカハラ情報不開示取消訴訟で控訴してきた時のように、莫大な公金を投じてバカな真似をしでかすのだけは勘弁してほしいものです。
■一方で、控訴した東京高裁での手続きの進捗はというと、まず12月22日の午前11時ごろに同高裁から着電がありました。出ると、東京高裁第17民事部の渡邊書記官と名乗り、「控訴に伴い、当事者双方の資格証明書を新たに提出願いたい」とのこと。担当部と担当書記官はそのように決まったようです。当会ではさっそく、当会の資格証明(会則と代表選出会議録)と高専機構の登記簿(履歴全部証明書)の謄本を同日中に郵送提出しました。
○当事者双方の適格証明書 ZIP ⇒ 202012221eiki.zip
202012222iki.zip
その翌々日となる24日、今度は訴訟進行に関する照会書が当会事務局宛てにFAX送信されてきました。見ると、控訴審の事件番号は「令和2年(行コ)第251号」、使用法廷は812号法廷に決まったようです。
○訴訟進行に関する照会書(第一次訴訟控訴審) ZIP ⇒ 2020122417iisfax.zip
口頭弁論期日の候補としては、2021年の3月17日、3月22日、4月14日、4月21日の4つが提示されていました。審理が早く済むに越したことはないので、3月中の日程を希望することにしました。
■年が明けて1月13日、渡邊書記官から電話があり、控訴審の第一回口頭弁論期日が3月17日(水)の11時00分に決まったとのこと(※後述のとおり後に変更)。
高裁のセッティングが整ったので、控訴状提出からちょうど50日目となる1月27日、当会では第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の控訴理由書を以下のとおり提出しました。
*****控訴理由書(第一次訴訟控訴審)*****ZIP ⇒ 20210127itir.zip
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構
控 訴 理 由 書
令和3年1月27日
東京高等裁判所第17民事部御中
控訴人 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 印
頭書の事件について,控訴人の控訴理由は以下の通りである。
なお,本書面においては,特に断らない限り,原判決が用いたものと同様の略称を用いる。
控 訴 の 理 由
1 控訴状別紙1項(本件文書1)にかかる情報について
(1)原判決を受けた被控訴人による文書の追加開示
被控訴人は、令和2年11月24日の原判決を受け、本件決定のうち本件文書1の項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分(原判決敗訴部分)を取り消す再決定を同年12月14日に行った。そして、その日付の高機第105号法人文書開示決定通知および不開示の一部取消しを行った新たな開示文書(以下「本件再開示文書」)を控訴人に送付した(甲47)。
(2)各文書の扱う推薦機関の種別について
本件再開示文書は、本件決定において開示された被控訴人における各年度の国立高等専門学校長候補者一覧のうちで、それまで不開示としていた項目名及び整理Noを新たに明らかにしたものである。
そこで本件再開示文書を確認すると、まず、平成23年4月付けから平成29年4月付けまでの各年分においては、右上に資料番号が付されており、いずれも細目番号①と②の二つに区分されていることがわかる。また、被控訴人の原審における主張によれば、当該文書は、各候補者を推薦機関の種別によって区分し、表にまとめたものである。そこでさらに確認すると、細目番号①では所属先もしくは推薦機関を現わした一つ目の項目が「推薦機関」となっており、一方で細目番号②では「学校名」となっていることがわかる。
すると、細目番号②は高専や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を、細目番号①はその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者を、それぞれまとめたものであることが極めて強く推知できる。すると、各細目番号に区分される資料が扱う推薦機関の種別は事実上すでに明らかであり、直接的にこの種別を示す記載を開示しても、新たに法5条4号ヘにいうおそれが生じるとはいえないことは明らかである。
また、平成30年4月付けと平成31年4月付けの分については、記載方法が変わっているので、個別に検討する。平成30年4月付けの分については、細目番号1で6名、細目番号2で4名、また細目番号なしの資料3点についてそれぞれ1名、2名、1名の候補者が記載されている。
一方で、実際に同年に高専校長に就任した者の前職をみると、高専教員4名、大学(院)出身者5名、文部科学省2名、国立教育政策研究所1名となっている(甲48)。
ある区分について、就任者数が推薦者数を上回ることはありえないので、細目番号1が大学出身者、細目番号2が高専出身者、また細目番号なしの資料のうち2名記載分が文部科学省出身者であることがここから推知できる。よって、区分に係る推薦機関の種別が推知可能である。また、平成31年4月付け分についても、同様の手法で区分に係る推薦機関の種別が推知可能であると考えられる。
よって、本件文書1に含まれる情報のうちで、各文書が取り扱う大まかな推薦機関の種別は、すでに明らかになっている情報から推知できる情報であり、法5条4号ヘにいう人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれをあらたに生じさせる情報ではないことは明らかである。
また、さらに言えば、本件文書1において推薦機関の種別はせいぜい2つか3つ程度に区分されていることが明らかであり、多数の様々な推薦機関に対してかなり大まかな区分方法となっていることは明らかである。すると、本件文書1の各文書が取り扱う推薦機関の種別にかかる情報を明らかにしたところで、選考に通過しなかったものの構成は極めて大雑把にしか把握しえないのであって、法5条4号ヘにいうおそれが生じるとは考えられない。
(3)各候補者の推薦機関又はその種別に係る情報について
原判決は、本件文書1に記載のある各候補者の推薦機関又はその種別に係る情報について、これを開示した場合、校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となり、そのため、推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどするおそれがあるとして、法5条4号ヘに該当すると判示する(原判決19頁)。
しかしながらこれは、被控訴人が推薦機関によって候補者を差別していることを前提とした判断である。甲8号証や甲37号証のとおり、国立の機関の長となるものの選考にあたっては、被控訴人独自の判断基準は多少あるにせよ、基本的には候補者本人の純粋な実力や資質のみをみて公平に選考が行われていることが前提とされるべきことは言うまでもない。原判決は、判断にあたってこの点にまったく言及しておらず、極めて不合理である。
(4)選考通過者のうち実際に校長に就任した者にかかる記載情報について
また原判決は、選考通過者のうち実際に校長に就任した者にかかる記載情報について、公開情報として法5条1号但書イに該当したとしても、同条4号ヘ該当性による不開示を否定するものでない旨判示する(原判決20頁)。しかし、もともと公開されている情報を開示したところで、法5条4号ヘにいうおそれが新たに生じるわけがなく、また他の候補者に係る情報が明らかにされるわけでもないであるから、この判断もまた不合理である。また仮に、この情報を明らかにすることで、記載のある文書が取り扱う推薦機関の種別が明らかになるとしても、上記指摘のとおり、推薦機関の種別は法5条4号ヘにいうおそれを生じさせる性質のものではない。よって、原判決の判断は誤りである。
2 控訴状別紙2項(本件文書2)にかかる情報について
原判決は、本件文書2について、「本件文書2は,西尾の辞職願のうち群馬高専を辞職する理由を記録した部分であって,その記録部分の長さから20字強の記載があり,相応の記載内容があることがうかがわれ(甲4),その記載内容から群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能であるものと考えられることから,本件文書2に記録された情報は法5条1号本文の個人識別情報に該当するというべきである。」(原判決21頁)と判示する。
しかし、本件文書2はそもそも最初から「西尾典眞」の辞職願と特定されているものであり、もはや個人を識別することを要さないにも関わらず、「群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能である」ことを理由に、辞職理由が法5条1号本文の個人識別情報に該当すると認定するのは明らかに不合理である。
すなわち、辞職理由が法5条1号本文の個人識別情報に該当するかどうかは、あくまで当該情報が個人識別性をもつプライバシーに属する情報であり、その開示によって西尾への権利利益侵害が生じるかどうかに帰せられるところ、かかる辞職理由は、すでに甲9号証のとおり被告自身が事実上明らかにしているものであり、本件文書2について辞職理由を開示しても西尾への権利利益の侵害は起こらないか、あるいは受忍限度に留まるものと解するべきである。
したがって、本件文書2における西尾の辞職理由は法5条1号本文にあたらないから、開示されるべきである。
3 控訴状別紙3項(本件文書3)にかかる情報について
(1)異動・退職等人事が行われた者の所属・職名等情報について
本件文書3の人事が行われた教職員に関する不開示部分のうち、氏名等情報を抜いて人事前後の被控訴人内部における所属や職名のみ開示しても、それは単に当該部署等で人事が行われたことを示すだけの情報であり、また内部の者として当然その事実(かかる者にかかる人事が行われたこと)は既知であり、外部の一般人から推測する余地もないから、差し支えなく開示されるべきである。
しかし原判決は、「しかしながら,法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは,当該情報により,又は当該情報と他の情報とを照合することにより,特定の個人を識別することができるか否かにより決せられるのであり,当該情報が内部の者にとって既知であるか否かにより決まるものではなく,原告の主張は失当である。」とし、さらに、「原告は,「職名」は法5条1号本文の個人識別情報に該当しない旨主張するが,群馬高専において一時期に異動等する者の人数は限られることからすれば,「職名」に異動等の時期を併せることで,群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者において当該情報に係る個人を特定することが可能になると考えられるから,「職名」は同号本文の個人識別情報に該当するというべきである。」などと判示する(原判決22頁)。
しかし、原判決がいうように、既に特定機関内部の者等にとって既知であるかどうかに関係なく、特定機関内部の者を基準にして同じく内部の個人を特定する性質の情報だからといって一律に不開示とするのであれば、あらゆる公文書や法人文書において、公表されている以外ではいかなる職名や職位の記載も不開示が許されてしまうのであり、ひいては不開示範囲も野放図に広がってしまうのは明らかであって、極めて強引で不合理な法解釈というべきである。個人に関する情報のすべてを片端から情報公開の対象外とすることは、法が想定しているところでないのは明らかである。
ある情報が法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは、一般人基準を採用するのが通例であり、また仮に特定機関内部者や他関係者の基準から個人識別性を認めようとすれば、それは特定される対象人物の権利利益が害される場合と解されるのが通例である(甲49)。
これを本件に適用して考えると、まず職員の氏名が公表されていない場合は、職名のみを開示しても外部の一般人がそれ以上の情報を推量する余地はなく、他方で氏名が公表されているならそもそも法5条1号ただし書イに該当するわけだから、いずれにせよ個人識別性は問題とならない。また、異動や退職等の人事が行われた者を現に知る群馬高専の内部関係者等の基準を採用するにせよ、その人物に当該異動や退職が行われた事実は常識的に考えて既知なのであり、したがって、異動が行われた部署や職名を開示したところで、かかる人事の対象者の権利利益を害さないのは当たり前である。よって、人事前後の群馬高専における部署や職名・職位等情報のみが、法5条1号本文の個人識別情報にあたらないことは明らかであって、当然開示されるべきである。
(2)群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員について
原審において控訴人は、群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員について、その採用・昇進・異動・退職に関する情報が同校HPで様々な方法で事実上公表されており、公開情報であるから当然開示されるべきことを指摘した。
ところが原判決は、「技術補佐員の退職挨拶が掲載されているのは,当該技術補佐員の勤務期間や担当職務等の個別事情を考慮したものであり,技術補佐員が退職する際に「年報」に挨拶を掲載するといった慣行はなく,(中略)本件文書3の(1)で不開示となっている技術補佐員の採用,異動及び退職に係る情報が群馬高専の外部に公開されている事実を認めることはできない。」(原判決23頁)などとし、さらに、「原告は,ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡することで,異動や退職といった人事状況を事実上公表されている情報として把握することができるから,技術補佐員の異動や退職について公表する慣行が存在している旨主張する。しかしながら,原告の主張する方法によっても,職員が当該部署に在籍するようになったり,在籍しなくなったりしたことが確認できるのみであり,異動,退職等の具体的な内容が明らかになるわけではないから,群馬高専において異動,退職等の人事情報を公表する慣行が存在しているとはいえない。」(原判決23ないし24頁)などと判示して、法5条1号ただし書イに該当しないとした。
しかしながら、法5条1号ただし書イの公表慣行とは事実上の慣行で足りるのであって、「個別事情を考慮した」という恣意的な理由付けの有無で慣行かどうかが即座に決せられるわけではない。また少なくとも、「個別事情を考慮して人事に関する挨拶等を掲載する」という慣行が成立していることは明らかであり、すでに年報その他によって人事が明らかになっている分の群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員に関する本件文書3の不開示情報は、法5条1号ただし書イを適用して開示とすべきである。
また原判決は、ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡しても、教育研究支援センターに所属するようになったりしないようになったりした事実が分かるだけであると判示する。しかしながら、まず教育研究支援センター内での昇進や降格、異動はホームページの記載形式からして容易に判明しうる(甲10)。また群馬高専において、技術補佐員を含む技術職員の所属は教育研究支援センターに一元化されており(甲50)、所属するようになったりしないようになったりすることは採用や退職と直結している。よって、原判決の指摘は誤りであり、かかる人事は慣例公表情報から事実上把握可能なものとして、法5条1号ただし書イに該当するから、開示が妥当である。
4 控訴状別紙4項(本件文書4)にかかる情報について
被控訴人が特定事件について木村弁護士に支払った弁護士費用情報を不開示としたことについて、原判決は「弁護士は,報酬の算定方法や金額等を依頼者との合意によって自由に定めることができるところ,弁護士費用の額が明らかになると,これを認識した競合する弁護士や弁護士法人が,上記の額を踏まえて,より有利な弁護士費用の額を提示して競争上優位な立場に立つ可能性があり,木村弁護士の競争上の地位に影響を与えるおそれがある。」という理由で、弁護士費用情報が法5条2号イの不開示情報に該当すると判断し、よって不開示としたことは適法であると判示する(原判決26ないし27頁)。
しかしながら、特定の事件について、競合する弁護士や弁護士法人が有利な金額を提示して容喙するなどというおそれが有り得るとしても、それは提訴されたあるいは応訴する当事者が訴訟代理人となる弁護士を探しており受任契約に至っていない状態においてである。または、せいぜい事件がまだ係争中の状態においてである。一方で、控訴人は決してそのような状態にある事件も含めて弁護士費用を開示することが当然と主張しているわけではない。控訴人が開示を求める弁護士費用が支払われた木村弁護士の受任事件である平成28年(行ウ)第499号及びその控訴・付帯控訴事件はいずれも甲1の開示請求時点で判決が確定しており、他の弁護士や弁護士法人が容喙することにより木村弁護士の競争上の利益が害される余地は存在しない。
よしんば、過去の他事件に関する弁護士費用情報から、少なくとも判決未確定状態の事件についてその弁護士費用を推測するにしても、原判決自体が判示するとおり、弁護士費用は弁護士自身が個々の事件について自由に定められるのであり、当該事件についての弁護士費用を知り得ない他弁護士等が確実に「有利な金額」を提示することは不可能である。
また、本件文書4に記載のある項目のうち、「うち消費税額」や「配分金額」は、個々の対応にかかる費用として木村弁護士の営業秘密に属するとしても、全体として支払った金額から事案性質や対応内容を推察することは困難であり、開示を阻む事情は存在しない。
さらに、控訴人は原審において、国や地方自治体の答申においては弁護士費用等情報が問題なく開示された事例が多数あり、特定弁護士事務所の競争上の利益が害されるおそれが現に生じていないことは明らかであることを指摘したにも関わらず、原判決はこの点との整合性も一切説明していない。
よって、原判決のうちかかる箇所はその根拠を欠いたものであり、支払決議書の不開示部分のうち,「合計金額」,「支払金額」は開示されるべきである。
5 控訴状別紙5項(本件文書5)にかかる情報について
控訴人は原審において、本件文書5にかかる本件報告書等の記載年月日等情報について、開示請求の対象文書の作成時期を個別に区切ることにより,開示される文書に違いが生じることから、公衆が知り得る状態に置かれているものとして,記載年月日等情報が法5条1号ただし書イに該当することを指摘した。
ところが原判決は、「しかしながら,原告の指摘する開示請求の方法によって本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があるとしても,それは,開示請求の対照(ママ)文書の作成時期の区切り方という偶然に左右されるものといわざるを得ない。したがって,原告の指摘する開示請求の方法によって,本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があることをもって,当該情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。」などとして、法5条1号ただし書イ該当性を否定し、かかる情報の不開示が適法であると判示する(原判決28頁)。
しかし、開示請求の対象文書の作成時期の区切り方は、開示請求者が任意に設定できるものであり、複数回開示請求を行うまたは複数人が開示請求した結果が付き合わされることなどによって、対象文書の作成時期は、少なくとも年単位、月単位において容易に絞り込めうるものである。すると、対象文書の作成時期が自ずと特定されていくことは偶然ではなく必然に寄っていくのであり、これを「偶然に特定されるもの」とした原判決は明らかに誤りというべきである。そしてここから、本件報告書の年月日等に係る情報は公の国民一般が知り得る状態に置かれていることは明らかであるから、記載年月日等情報が法5条1号ただし書イに該当し、開示が妥当である。
6 結語
以上のとおりであるから、控訴の趣旨のとおり請求する。
以上
附 属 書 類
1 控訴理由書副本 1通
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○証拠説明書(甲47~50)及び甲48-50号証 ZIP ⇒ 20210127ib4850.zip
○甲47号証 ZIP ⇒ 202012141ljmj11.zip
202012142j12to3.zip
202012143j14to6.zip
202012144j17to8.zip
202012145j18to9.zip
■ところで、この控訴理由書の提出に前後して、トラブルに見舞われました。もともと予定されていた第一回口頭弁論期日は、前述のとおり3月17日(水)の11時ちょうどでしたが、当会の出廷担当者において、同日のその時間帯にどうしても外せない用事が入ってしまいました。仕方がないので、1月27日、弁論期日の変更にかかる上申書を同高裁に提出しました。電話口で事情を話し、上申書を提出したことを伝えた際の渡邊書記官曰く、「期日変更が認められるかは裁判官の判断になる。認められても(既に日程が詰まっているので)5月以降になるかもしれない」とのことで、冷や汗が出ました。
すると翌日、東京高裁第17民事部の渡邊書記官から電話があり、「昨日申し出のあった期日変更について、新たな日時が決まりました。新たな期日は3月17日(水)14:30から第812号法廷です。ついてはあらためて期日請書を送ってください」とのこと。幸いなことに、日付は同じまま、時間が数時間後ろにズレるだけで済んだようです。
■よって、第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の第1回口頭弁論日程は、以下のとおり決定しました。
日時:令和3年3月17日 14時30分~
場所:東京高裁8階812号法廷
今後、口頭弁論一週間前となる3月10日頃に被控訴人である高専機構からの控訴答弁書が提出されたのち、東京高裁の第812号法廷で再び機構御用達の銀座弁護士たちと相まみえることになります。
高専機構からの控訴答弁書の内容と第一回口頭弁論の様子は、結果がまとまり次第、追ってご報告いたします。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】