↑前橋市元総社町の国道17号線沿いにある群馬銀行本店営業部↑
■安中市土地開発公社を巡る史上空前絶後の巨額詐欺横領事件が安中市役所の内部で密かに発覚した平成7年(1995年)5月18日から28周年を迎える前日の5月17日、当会は、これまでの取り組んできたこの「タゴ51億円事件」と安中市民の間で称される事件の大きな節目と捉えて、安中市の岩井均市長、そして安中市土地開発公社理事長を兼務する清水昭芳副市長、および群馬銀行の会長と頭取あてに次の申入書を提出しました。
*****5/17申入書*****
令和5年(2023年)5月17日
〒371-8611群馬県前橋市元総社町194番地
株式会社群馬銀行
代表取締役会長 堀江 信之 様
代表取締役頭取 深井 彰彦 様
〒379-0192群馬県安中市安中1丁目23番13号
安中市土地開発公社
理 事 長 清水 昭芳 様
〒379-0192群馬県安中市安中1丁目23番13号
安中市
市 長 岩井 均 様
〒379-0114安中市野殿980番地
小川 賢
電話090-5302-8312
FAX 027-381-0364
E-mail ogawakenpg@gmail.com
申 入 書
件名:安中市土地開発公社不祥事件にかかる元職員の死亡に伴う
和解条項の即時解消について(要請)
標記事件につきましては、平成を象徴する大事件であるにもかかわらず、真相究明、責任の明確化が十分に行われたとはいえないまま、元職員の単独犯行とされました。しかし、この大事件の発生の背景には、当事者によって抱えられていた様々な要因が存在していたこと、そして、この事件の刑事裁判や民事裁判の過程でそれらが浮き彫りになったことは言うまでもありません。
民事裁判の結果、当事者間では、裁判所の和解条項に基づき、平成10年12月25日に4億円が市の連帯保証のもとに、公社から群銀に支払われ、残り20億5千万円が、毎年2千万円ずつ、計算上では103年かけて支払われることになっており、これまでに25回計5億円が市の連帯保証のもとに、公社から群銀に支払われてきました。
しかし、和解後25年目を迎えて、今後も同様にこのような支払いが行われるべきなのかどうか、少子化、高齢化、過疎化、温暖化などとともに、安中市民の皆さんは、地元の将来に影を落とし続けるこの事件の行く末を憂慮しております。とりわけ、本年1月9日に、標記事件の単独犯とされた元職員が死亡し、遺族全員が相続放棄をしたことにより、その時点で債権元金残額22億653万1500円と遅延損害金26億6162万7292円の合計48億6815万8792円が安中市債権総額であり、この金額の回収が困難な状況になったことを、公社を設立した安中市も認識している状況にあります。
つきましては、これ以上、表記事件の負の遺産を行政が抱えることによる次世代へのいわれなき負担を回避するために、直ちに、群馬銀行と安中市・土地開発公社との3者で、和解条項で定めた和解金の支払いを解消するための協議を、速やかに開始するよう、ここに強く要請いたします。
なお、この協議が必要な背景や合意が可能な理由等を下記に示します。3者協議に向けた情報として資すれば幸いです。
記
1.標記事件にかかる和解条項による群銀への和解金の支払いについて、安中市・公社は元職員からの返済がまがりなりにも継続していたことで、市民・納税者への説明としていましたが、これ以上債権の回収が不能と判断していることから、群銀への和解金支払いについて市民・納税者への説明も厳しくなることを認識されたい。
2.事件が発覚した平成7年6月から28年が経過しようとしており、群銀の当時の関係者は既に全員リタイヤしており、市・公社の当時の関係者も誰も責任を取らずに退職してのうのうと余生を過ごしています。また、安中市民はもとより国民の約3分の1が当時まだ生まれていなかった世代となっており、不祥事件とは無関係の住民の存在は無視できない状況にあることを認識されたい。
3.和解条項に基づき、群銀は、市・公社に対し、 借入金元金9億3618万2425円及び利息損害金全額相当額の支払いを免除し、市・公社はこれまでの25年間で、当初一括返済の4億円及び25年間の和解金計5億円の総計9億円を群銀に支払いました。ほぼ拮抗する金額を、この事件により双方が負担してきた状態であることを認識されたい。
4.群馬銀行が和解金支払いを受ける権利を放棄する場合、それなりの重要な決定を求められるわけですが、これまでにも群銀は、いわゆる「超法規的」措置で、債権放棄をした経緯があるはずです。たとえば、山本一太知事の父親の山本富雄氏が、バブルの頃、地元草津のリゾート開発でホテル「ホワイトタウン」事業を始めた当時、群馬銀行から多額の借り入れをしましたが、事業がうまくゆかず、多額の負債が遺りました。これについて、自民党県議団が群馬銀行に政治的に交渉を続け、当時の副頭取の五十嵐哲夫氏(後に会長)がこれを担当していましたが、結局31億円とも32億円とも言われる負債を群馬銀行は大局的判断から帳消しにした経緯があります。
幸い、昨年4月に就任した安中市長は長年県議として自民党に所属してきた政治家です。この機会にぜひ3者で協議をして、元職員が遺したこのいわれなき不祥事件の負の遺産を解消するよう、今こそ互いの英知を結集して取り組むことが求められています。よって、当事者全員におかれましては、この負の遺産を次の世代に引き継がせることのないよう、特段の配慮の必要性を認識されたい。
以上
**********
■当会では、上記の申入書にも記載したとおり、今年1月9日に急逝したタゴ51億円事件で単独犯とされた元職員が急逝したことから、これ以上この事件を当事者間で引きずることは、いずれも行政機関と金融機関にとって最も重視される要素である「信用」の観点から、好ましくないと判断し、事件発覚から28年目、安中市・土地開発公社と群馬銀行との民事裁判和解から25年目のこの機会に、安中市が連帯保証をしている安中市土地開発公社と群銀との間で継続中の和解条項に基づく103年ローンの支払いを解消するよう、関係者に申し入れることにしたものです。
このため、土地開発公社を管理する安中市を5月2日に訪れた際に、上記の申入書案を示し、群銀にもこれを提出するとともに、安中市長と公社理事長にも併せて提出する意向を、公社の管理監督を担当する企画政策部の政策・デジタル推進課の大溝泰彦課長らに伝えました。そして、その場で、市・公社から103年かけて返済を受ける側の群馬銀行の担当部署であるリスク総括部コンプライアンス室のKシニア・エキスパートに電話をし、面談日時の申し入れをしました。その際、5月連休明け早々でのアポイントを希望したところ、群銀側から「連休明けは多忙なので、5月15日の週が好都合」ということで、最終的に5月17日(水)午前10時で面談の約束を取り付けました。
↑群馬銀行リスク統括部組織図(2020年9月改定)↑
このため、安中市側に対しても、5月17日の午後に岩井市長と清水副市長(市土地開発公社理事長兼務)との面談を申し入れたのですが、生憎5月17日の午後は岩井市長は全国市長会の関係で東京方面に出張するということと、清水副市長も都合で不在となるということなので、応対に出た公社を管轄する政策・デジタル推進課の大溝課長が当日午後、市長・副市長の名代として申入書を受領していただくことになりました。
■5月17日当日、午前10時前に前橋市元総社町の国道17号線沿いにある群馬銀行本店営業部を訪問しました。
そして同行リスク総括部のKシニア・エキスパート(前・同部コンプライアンス統括室長)と同部お客様サポート室のQ室長とおよそ50分にわたり面談しました。
内容は当方から事件のこれまでの経緯、最近の安中市政の状況、1月9日に死去した安中市元職員に関する雑情報、そして、この未曽有の事件に関わった安中市の関係者のその後の動向など、当会がこれまでに収集・分析した情報を説明しました。
群銀側からは、元職員の死亡について既に確認して知っているとのコメントがありました。当会からは、安中市から開示された情報を提示し、元職員死亡確認後に開かれた安中市土地開発公社理事会の会議録についても、事前に安中市側から群銀への開示について承諾を受けていたので、それについても、提示し、安中市側の対応状況について、当会の見解を説明しました。
当会の説明の間、群銀側は真剣に耳を傾けていただいていることが感じられました。なぜなら、応対したリスク総括部のシニア・エキスパートらは「最終決断はトップが判断するため、我々実務担当者としては、その決定権限は持ち合わせていないが、いただいた申入書と今日の説明いただいた内容については、上層部と審査部に、これまで同様、しっかりと報告させていただく」旨、述べたからです。
当会は「本件は、最終的にはトップ同士の判断であり、その端緒は安中市側から交渉の申し入れをすることになると思う。したがって、安中市長が当会の申し入れ内容の趣旨を理解し、公社理事長である副市長に貴行との交渉の必要性を指示し、併せて市長の政治力を駆使して、貴行との交渉を進めるためのプロセスを決断することが要件となるので、安中市側の動きを待っていただく形になろうかと考えている」という趣旨のコメントをしました。
■当会は、これまでにも何度もタゴ事件の件で、群馬銀行に足を運んだことが有ります。最近では、「和解後20年目の対応」ということで、2018年9月13日と2019年7月5日に群銀の本店営業部を訪問したことがあり、今回は約4年ぶりの訪問ということになります。2018年から2019年当時の当会のブログ記事を時系列下記します。
○2018年7月11日:【速報】タゴ51億円事件から23年目・・・安中市長に103年ローン解消に向けた動きの有無を情報開示請求↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/3ff00ed94371259cd01975866f449458
○2018年7月13日:平成の負の遺産は平成で終わらせよう!…タゴ51億円事件103年ローンの20回目支払い迄あと165日↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/d19df4d3fdda6d6bd5a72863b8791c92
○2018年7月21日:平成の負の遺産は平成で終わらせよう!…群銀の103年ローン見直し交渉未着手の安中市長と市民への説明責任↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/13a7c32ac4f362316450a38d9b23f5ba
〇2018年8月2日:平成の負の遺産は平成で御終いに!…群銀103年ローン20年で公社の連帯保証を返上しよう!↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/014f77c3256113242731e8ced69dcb4f
〇2018年9月13日:「タゴ51億円事件」の103年ローン解消に向けて群銀や安中市トップらに申入書を提出↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/76bbc5a6901c495c1a62cdf2bb0f4777
○2018年12月22日:安中市土地開発公社巨額詐欺事件・・・103年ローン解消に暗雲!↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/0b2a27324a60ed22e18f2965e78b3cdb
○2018年12月25日:ついに平成最後のクリスマス・・・安中市公社タゴ51億円事件の103年ローンの行方が決まる節目の日↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/b77e87cf7411c8d053965ac967658d9f
〇2019年1月7日:平成の負の遺産は平成で終わらせよう!…群銀と103年ローン交渉中の安中市・公社が20回目の和解金支払い↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/5218c2ad76bd1f7a2a5b255de7e97d33
〇2019年6月2日:平成の負の遺産「タゴ103年ローン」16億5千万円を令和に引き継いだ安中市の無責任体制↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/97ee506b4314804a4b0be8792cacd005
○2019年7月12日:平成の負の遺産「タゴ103年ローン」20年後の対応情報開示で第3者意見照会に及び腰の安中市の問題先送り体質↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/446d6a7eb10694e9aea5cca6ef400ed9
■ところで、5月17日午後4時に当会は安中市の岩井市長と市土地開発公社理事長の清水副市長の名代として政策・デジタル課長に上記の申入書を渡し、群銀との面談の様子を報告するとともに、申入書を必ず市長と副市長に渡し、当会の説明内容を伝えてほしいと要請しました。しかし、直接、市長と副市長に当会の要請を伝えることができておりませんでした。そのため、安中市が、新庁舎建設基本計画に基づき検討を行っていた「安中市新庁舎建設基本設計」の内容について、5月22日午後6時から安中市文化センター大ホールで全市民を対象とした住民説明会を開催する際に、市長と副市長が出席するはずなので、その場で直接この件を申し入れることにしました。
なぜなら、新庁舎建設に向けて約58億円もの巨費を調達するためには財政負担を少しでも軽くする必要があるからです。しかも、安中市が連帯保証をする土地開発公社が、元職員タゴに対して保有していた48億6815万8792円もの虎の子の債権が、タゴの死去と遺族の財産放棄により回収不能の危機に直面しているのです。
そのため、この事件でタゴの豪遊の尻拭いのかたちとなっている群馬銀行への和解金の103年ローンの残り79年分を群馬銀行と交渉して、帳消しにしてもらうことは、安中市の今後の安心・安全な財政運営にとって不可欠だ、と当会は考えました。
■そこで、当日の説明会に参加を予定していましたが、別件で桐生市におけるトルコ人による解体ゴミの不法投棄事件で、午後3時半から桐生市役所で記者会見をしなければならなくなり、結局午後4時半に会見を終えて桐生市役所を出発し、安中市に向かいました。
ところが、高崎市内に入ったころ、ゲリラ雷雨に襲われ、そうでなくでも夕刻のラッシュアワーの渋滞に巻き込まれ、新幹線の高架下を通過するころには午後6時を過ぎていました。結局、安中市文化センターの会場に到着したのは午後6時40分でした。入場の手続きを済ませて会場内に入るとすでに市側によるプロジェクターを使っての説明は最終段階でしたが、いつものように前列2列目辺りに座ろうとすると、3列目のところにテープが張ってあり、それ以上前に行けませんでした。今回はじめての設営方法です。そのため、前から4列目に座らざるを得ませんでした。
説明会の様子は安中市HPに掲載中のYouTubeをご覧ください。ちなみに当会が、説明会に出席された市側の執行部や岩井市長、清水副市長兼公社理事長に直訴したくだりは2:14:30~2:21:50にかけてのタイムラインです。
**********安中市HP
https://www.youtube.com/watch?v=j1E5jnaL2zY&list=PL82s0iLzdn5PwKZzXJCMtUxrwuFp_5YiB&index=3
安中市新庁舎建設基本設計 住民説明会
限定公開
安中市
**********
■当会が市長と副市長に、ぜひ群馬銀行に対してタゴ事件の総決算として、和解金の支払いについて永久的に休止するための交渉をしてほしいと、強く要請した際に、市長は心なしか僅かに頷いたように感じました。
会場内で、思わぬ出会いがありました。後ろから、白髪で血色の良い男性に声を掛けられました。聞くと、なんと1995年11月の出直し市長選挙で、市長の座を巡って選挙戦を戦った候補者の伊藤成氏ではありませんか。なんと28年ぶりということになります。伊藤氏は当会の発言を聞いて、「いい提案だと思う。岩井市長ならきっとやってくれる」という趣旨のコメントをくれました。また、伊藤氏があの時選挙戦に出馬したのは、「タゴは当時自分の部下だったので、自分の育てた部下があのような事件を起こしたため、自分は責任を痛感して、いてもたってもいられず立候補した」と動機を語ってくれました。
また、説明会に参加して発言もしたという若い男性からは「タゴ事件のことを常々知りたいと思っていたので、さきほどの質問でこの事件に触れていたことから、いくつか聞きたいことがあります」として、タゴ事件の不可思議な出来事をなるべくわかりやすく説明しました。その男性は、「自分の二級下にタゴの息子がいて、同じ学校なので知っていたが、それまで秋間にいたのに、事件のあと、学校で見かけなくなってしまった」と話してくれました。タゴの息子の件では、当時、日本から出て留学したという噂もあり、今は高崎で外車の商売をやっているという話も聞きますが、確かなことはわかりません。
これまで当会は、1995年5月下旬に安中市役所内でなにやらトンデモナイ不祥事件が起きたらしいとの情報に接して以来、28年間にわたり、タゴ事件の真相究明と責任所在の明確化、再発防止に向けて、多大なエネルギーを投入してきました。
しかし、安中市役所では事件発覚後の混乱ぶりを肌で覚えている職員は28年を経て、ほぼ全員が退職しました。群馬銀行でも同様に、事件の背景を知る行員は殆どいなくなり、安中市が連帯保証人となっている市土地開発公社との和解条項の履行のみが、事件の痕跡として継続しているだけとなっています。そして、原因者の元職員タゴが1月9日にこの世を去り、27年前にタゴの刑事裁判の法廷で裁判長の前で「一生をかけて償います」と証言した配偶者も、その息子とともにタゴの遺産相続の放棄を前橋家裁に申述したことがうかがえます。
■群馬銀行では、当会の調べによると、草津町のホテル「ホワイトタウン」事業への融資が焦げ付き、31億円とも32億円とも言われる債権を帳消しにした実績があります。その時の債務者は、現在の群馬県知事の父親でした。
一方、タゴ事件の場合、群銀との間で25年前の民事訴訟の和解条項で、債務者の立場となっているのは安中市土地開発公社とその連帯保証人である安中市です。安中市民は納税者でもあり、全員ではないかもしれませんが、多くの住民は群銀の利用者でもあります。群銀の立場にしてみれば、政治的決断をするにしても、債務免除という観点では、政治家個人がメリットをうけた「ホワイトタウン」事業より、タゴ事件とは無縁な安中市民全体が裨益対象となるわけで、はるかに決断を下し易いのではないでしょうか。
タゴ事件の真相が依然としてベールに包まれたまま、事件に絡んだ関係者は全員責任らしい責任を取らないまま、事件後20年がとうに経過した今、民事責任を問われることはありません。単独犯とされた元職員タゴも、千葉刑務所で14年間の刑に服し、使途不明金14億円余りはもはや合法的に元職員のものとなりました。
そうした状況下で、71歳の誕生日まであと2か月半を残し田今年1月9日に、元職員タゴは鬼籍に入ってしまいました。併せて事件の真相も、自身の中に抱えたまま、冥土に旅立ちました。
これ以上、タゴ事件の尻拭いの影響を、事件とは全く無関係の市民が被る必要があるのでしょうか。仮に安中市が市民に対して「必要がある」と考えているのであれば、それこそ「安中の恥」です。
なので、岩井市長には、長年自民党県議団で培った政治力を駆使して、忌まわしいタゴ事件から安中市民を開放していただくよう、ご尽力いただきたいのです。
■これは、合併後の初代市長だったかつて自民党県議だった岡田義弘氏では果たせなかったことです。なぜなら、この事件で元職員と余りにも深くかかわりすぎたため、事件の真相究明や責任所在の明確化など、自らの首を絞めることになる為、言語道断だったからです。その後、群馬県初の女性市長として、茂木英子氏は、市民団体をバックに市政を司りました。しかし、この市民団体は、タゴ事件発覚直後の出直し選挙で、その半年前の事件発覚直前に行われた県議選で、岡田義弘氏に敗れて県議の座を失った中島博範氏を以前から支援しており、同氏が首尾よく市長に当選後、松井田町との合併後の新安中市長選で岡田義弘氏に敗れ、旧安中市の最後の市長だった中島博範氏と同様、茂木英子氏もタゴ事件への関心はほとんど皆無でした。
こうしてタゴ事件から苦節27年の昨年4月に、満を持して市長に就任したのが岩井均氏です。群銀との交渉に際して、学歴、職歴などの経歴、政治的人脈や実行力など、どれをとっても最強・最適なスペックを持つ政治家が安中市のトップになったのです。安中市の安心・安定な将来の為に、今こそその実力を示していただかねばなりません。
■最後に、タゴ事件が発覚した1995年5月から4年余り経過した1999年7月に発刊された「政界往来」同月号に掲載されたタゴ事件に関するレポートをこの記事の末尾に掲げました。タゴ事件の概要を改めて思い起こす際の参考になれば幸いです。
【市政をひらく安中市民の会事務局からの報告】
※参考情報1「群馬銀行歴代頭取と現在のトップのプロフィール」
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(群馬県金融社長)
01代 1932年-1932年 平田健太郎
(群馬大同銀行頭取)
01代 1932年-1932年 平田健太郎
02代 1932年-1936年 斎藤虎五郎
03代 1936年-1941年 平田健太郎
04代 1941年-1944年 小島友治郎
05代 1944年-1948年 松井敬造
06代 1948年-1955年 横山太喜夫
(群馬銀行頭取)
06代 1955年-1968年 横山太喜夫
07代 1968年-1971年 玉尾光次
08代 1971年-1977年 諸田幸一
09代 1977年-1984年 小関博
10代 1984年-1990年 荒井政雄
11代 1990年-1997年 土金琢治 (※1995年5月18日タゴ事件発覚)
12代 1997年-2003年 吉田恭三 (※1998年12月9日民事裁判和解)
13代 2003年-2011年 四方浩
14代 2011年-2019年 斎藤一雄
15代 2019年- 深井彰彦
↑深井彰彦(株式会社群馬銀行 代表取締役頭取)↑
<経歴>
1960年11月3日生れ
1979年3月 高崎高校卒業
1984年3月 早稲田大学政経学部卒業
1984年4月 群馬銀行入行
1992年頃 米国ニューヨーク支店勤務時にスタンフォード大学Graduate School of Business(経営大学院)に留学
2003年6月 大阪支店長
2005年6月 桐生支店長
2007年6月 太田支店長
2009年6月 リスク統括部長
2011年6月 総合企画部長
2013年6月 取締役総合企画部長
2014年6月 常務取締役営業統括部長
2015年6月 常務取締役
2017年6月 専務取締役
2019年6月 代表取締役頭取(現職)
↑堀江信之(株式会社群馬銀行 代表取締役会長)↑
<経歴>
1956年1月10日生れ 群馬県出身
1978年3月 慶応大学卒業
1978年4月 群馬銀行入行
2000年2月 深谷上柴支店長
2002年3月 人事部主任人事役
2004年6月 人事部副部長
2005年6月 熊谷支店長
2007年6月 法人部長
2009年6月 執行役員宇都宮支店長
2011年6月 執行役員人事部長
2012年6月 取締役兼執行役員人事部長
2013年6月 取締役人事部長
2014年6月 常務取締役コンプライアンス部長
2015年6月 常務取締役
2017年6月 専務取締役
2019年6月 取締役副頭取
2022年6月 代表取締役会長(現職)
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※参考情報2「タゴ事件発覚の4年後の評論記事」
当時この評論記事を掲載した月刊誌「政界往来」は政界往来社という出版社が発行していました。ところが、80年の伝統を誇ったこの政治情報月刊誌「政界往来」は2011年1月14日発売の2月号以降、突然発行されなくなりました。その後、別の出版社が「新政界往来」という名称で同様の政治情報誌を発行しているようです。
*****「政界往来」1999年7月号*****https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/d19df4d3fdda6d6bd5a72863b8791c92
問題レポート 小田勉
安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末
▼群馬・安中市土地開発公社で起こった職員による公金詐取事件は、どこの自治体にでも起こりうる事件なだけに改めて問題点を浮き彫りにし、警鐘とする▲
- 土地開発公社の職員はなぜ巨額を詐取できたのか?
「質問― 市土地開発公社五十一億円不祥事件について
(一)民事裁判での和解提案受諾に於ける市の心境と七月十七日の和解打診で議会に報告がなかった理由。
(二)真相解明について市民は不十分と多くの人が感じているが、市の真相解明プロジェクト報告を市民の前に公表を。
(三)損害賠償請求について、時効の時期はいつか、また、前市長、前理事長の責任は辞職をもって全て免責になったのか。
(四)市民負担を求めない方法、市長は税を使わず、公社で処理するとの見解ですが、財源もなく無理だと思いますが考えを伺います。
答弁―
(一)七月七日に打診があり、八月十一日に正式に受け入れ議会に報告致しました。
(二)和解交渉に影響を与えるので今後慎重に検討してまいります。
(三)損害賠償請求は金額が決定していないので、時効の起算に至っていません。また、前市長、前理事長の免責についての答弁は差し控えさせていただきます。
(四)市民に負担を求めず公社で処理していく考えに変わりありません」
これは、安中市議会平成十年九月定例会の質疑内容である。
そして、同年十一月に中島博範市長は、市民に対し次のようなコメントを発表した。
「土地開発公社不祥事件にかかわる民事訴訟の和解成立に伴い、この和解に至った経過とその内容について、ご報告させていただきます。
平成七年の五月に公社不祥事件が発党して以来、市民の皆様には、大変なご迷惑とご心配をおかけいたしましたが、お陰様を持ちまして、十二月九日和解が成立いたしました。
和解の内容につきましては、主債務者は公社となり、市についてはその連帯保証人という立場で和解条項に沿った対応が成される訳でございます。
これを教訓に二度とこのような事態が生じないよう十分配意し、公社に対し、一層適切な指導・監督をしてまいります。また、この和解成立を契機として、安中市の発展に向け、新たな気持ちで努力するとともに信頼回復に努めてまいりたいと存じますのでご理解とご協力をお願い申し上げます」
群馬県安中市は、中仙道の宿場町として栄えた城下町である。市街地は、碓氷川に沿って細長く碓氷峠へと続く。市内の秋間梅林ゴルフ場はよく知られている。念願だった長野新幹線「安中榛名駅」も開設、昨年は市政四十周年を迎えた。
人口約四万八千人。平成十年度の一般会計予算は約百八十億円。平成九年度の市税収入決算額は約七十三億円だった。
この市税収入額に匹敵する公金を「市土地開発公社」の一職員が詐取した。前代未間の不祥事である。この事件経過は、詳しく報道されていないが、全国の自治体に警鐘を鳴らす大事件だ。つまり〝職員の不祥事〟に対する「自治体の管理責任」が問われる重要な問題を示唆している。
ところで「土地開発公社」という組織について、住民はどれほどの知識があるだろうか。まず馴染みの薄い存在だろう。公社は「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づいて、地方自治体が全額出資で設立する法人である。大半の自治体が設立しているが、その業務内容は次のとおりだ。
(1)公共、公用施設用地.公営企業用地の取得、造成及びその他の管理処分。
(2)住宅用地の造成事業
(3)関連公共施設整備事業
こうした業務内容だが、業務は日常的に発生するものでないため、専従職員は一人か二人という〝閑職的な部署〟だ。問題は土地買収の必要性が発生した場合、その事業資金は、市の一般会計予算でカバーするのではなく、民間金融機関からの融資(借入)で運用されることだろう。ここに落とし穴があった。
公社の借入額に対しては、自治体が「保証」をする。金融機関にとって、取りはぐれのない安心な融資先だろう。まず貸し渋りはせず融資依頼があれば、厳しい審査などフリーパスで実行する。こうした盲点を巧妙に利用して長期間にわたって詐取を続けていた。
さらに問題なのは、公社の役職者は、首長など行政役職者が兼務していることだ。主要部署でない〝土地開発公社〟に対する関心は極度に低い。したがって提出される書類の決裁はほとんど無審査状態だったという。埼玉県A市の元公社専従職員は、次のように告白する。
「かねてから危惧していた不祥事が起きてしまった。公社には疑惑を生む危険性を内在し ている。業務は少数の担当者にまかされ、行政の中では〝離れ小島〟のような存在だ。そこへ土地絡みの〝売買操作〟で、地元有力者や議員が介入してくる。疑惑も少なくない」
さらに同職員は当初、安中事件を知った時、売買操作の贈収賄の不祥事かと思ったという。ありうることだからだ。しかし、まさか〝融資操作〟による巨額詐取とは驚いたが、決して難しい操作ではない。
公社が〝離れ小島〟とはいえ、庁舎内の片隅でもデスクがあれば、外部者は全面的に信頼する。この信頼を巧妙に利用した悪質な手口だった。
- 借用証書を偽造して〝特命口座〟に振り込ませる手口
安中事件の発覚は、平成七年五月だった。純朴な市民性、そして小都市特有の〝身内意識〟による信頼感が長期にわたる犯行を隠蔽する結果となった。つまり〝信頼性〟が犯行を可能にする死角となってしまったのではないか。
職員T(43)が許取に手を染めたのは平成二年四月のことである。Tは「市長の特命」という文書を偽造して「群馬銀行」に「安中市土地開発公社特別会計口座」を開設している。この「特命口座」を舞台にしてTは泥沼にはまり込んでいく。
平成二年五月の市長選で現市長が当選したが、Tは〝理事長(現市長)名義〟に口座変更をしている。
銀行側は、まったく不信を抱かず変更に応じ〝特命口座〟は存続した。Tの融資操作は「借用証書(金銭貸借契約証書)」を偽造し、金額を上乗せし〝特命口座〟に振り込ませて いる。
現金の引き出しは〝理事長印〟を盗用して実行した。会社の正規の借入残高は約十億二千万円。銀行の融資残高は約四十七億六千万円という異常さである。
さすがに銀行も不審を抱いたのか。平成七年三月末に「借入残高」の照会を行なっている。
公社は平成六年度の決算委員会をひかえ他の職員が、その照会を疑問に思い、逆に銀行に対し「借入金残高証明書」を請求した。
その結果、袈空の〝特命口座〟の存在が明らかとなった。Tは、事実関係を認め「有印公文書偽造」及び「同行使」で逮捕されている。
平成七年七月から前橋地裁で公判が始まった。一職員による前代未聞の巨額詐欺事件である。市の財政基盤をゆるがせかねない不祥事だ。
Tは、昭和五十四年から「都市計画課」に在籍し、公社設立事務にかかわった。そして、公社経理を任される。すでにこの時点から、公金の流用を思いたったと供述したという。本格的な詐取に着手したのは、前述のとおり〝特命口座〟の開設以降である。
不正借入分の返済期限が迫ると、Tは、どのような隠蔽工作をしたのか。水増し融資による〝自転車操作〟による処理だ。どこまで続くぬかるみぞである。こうして事件が発覚する平成七年五月までに総額約四十八億円を詐取した。Tは、この巨額をどのように使ったのか。
明らかになったのはギャンブルをはじめ、自宅や喫茶店、倉庫などの建築費、骨董品、株券、ゴルフ会員券、リゾートマンション利用券、高級外車、貴金属類など〝欲望〟の命ずるままに使っている。
それにしても、これほどの派手な生活ぶりに、同僚や付近の住民たちは不思議に思わなかったのか。Tの実家は資産家ではない。しかも〝地方公務員〟という身分だ。Tは、派手な生活を送る一方で、借入金の返済期限に追われ、日常業務は犯行の発覚防止対策に専念する。予定のない事業用地取得資金としてせっせと〝特命口座〟に振り込ませるという手口だ。
Tは犯行が発覚するんではないかと危険を感じた時があった。平成六年九月に新規借入依頼をした際、銀行は「借入依頼申込書」に市の「債務保証限度額」を明記するよう求めている。Tは「疑われているのではないか」と不安を覚えたという。
Tは、不安を感じながらも、その後の借入額は約二十三億円である。すでに正常な感覚は失われていた。そして、平成七年五月の犯行発覚となる。
平成八年二月の公判で、Tに対する論告求刑が行われた。求刑は〝懲役十五年〟だったが、検察側は、
「公務員の地位を悪用し、公文書の持つ信用力を低下させるなど犯行は悪質である。その手口も巧妙で上司や銀行担当者の信頼を逆手にとった。犯行の動機は〝派手な生活〟をしたいという金銭欲からだ」
と厳しい論告だった。何しろ五年間で二百四十九回にわたって詐取を続けていたのである。
一方、群馬銀行は平成七年十月、安中市を相手に「貸金保証債務履行請求」訴訟に踏み切った。請求金額は、Tが弁済した六億円を差し引いた約四十億円である。どのような公判が展開するのだろうか。
- 公判でも指摘された公社および市側の問題点
平成八年四月、Tに対する刑事事件の判決が言い渡された。判決内容は、全国の公社関係者にとって多くの示唆を含んでいる。詳しい報道がされていないので要旨を取り上げてみよう。
① 犯罪事実
被告人は、安中市職員で、安中市土地開発公社の職員に併任され、同公社の用地取得事業資金借入などの事務を担当していたが、同公社の群馬銀行安中支店からの資金借り入れに際し、正規借入額に水増しして、その水増し分をだまし取ろうと企て、処理を偽造し、普通預金口座を無断で開設した上、借り入れにかかる借入依頼書、あるいは、金銭消費貸借契約証書および連帯保証契約書などを偽造・変造し、また、「安中市土地開発公社の公有地取得事業資金として、一億四千五百九十八万一千円の借入手続きをしていただきたい。そのうち一億円を特別会計の普通預金口座に入金して欲しい」などと嘘を言い、同二年四月から同七年三月までの間、十一回にわたり、被告人が同支店に特別会計用の名目で開設した同公社名義の普通預金口座に約三十二億三千万円を振込入金させて、これらをだまし取った。
② 犯行までの経過
被告人は、昭和五十七年ころから事務費の一部を使い込むようになり、昭和六十年ころまでに四~五千万円を着服して競馬や麻雀などのギャンブル資金、生活費などに充てていた。被告人は、その不正行為が発覚しないように金銭を調達する必要に迫られ、正規の借入額を水増しして、同公社名義の正規の普通預金口座に振込入金を受け、その水増し分を払い戻して使い込むようになり、平成二年四月ころまでに、その総額は十一億円余りに達した。
その後、被告人は、自己の不正行為の発覚を恐れ、密かに特別会計用の名目で普通預金口座を新規に開設し、ここから水増し分を振り込ませて本件各犯行に及んだ。
③ 犯行の動機など
被告人は、派手な生活をしたいとか見栄を張りたいなどと考えて、事務費の一部を自己のギャンブル代等に充て、入金された土地代金にも手をつけ、その発覚を免れるための資金繰りとさらに自己の用途に費消するため、借入額の水増しをする方法で犯罪を重ねた。本件各犯行の動機は、公務員の身分を弁えない誠に身勝手なものであり、酌量の余地が全くない。
本件起訴にかかる被害額は合計三十二億三千万円であるが、そのうち二十二億円余りを被告人は自己の用途に費消している。その余を被告人は、それまでの借入金の返済等に充てているが、その費消状況を見ると、被告人が公判廷で述べる「犯行の発覚を免れるため」というにはかけ離れたものであり、見栄を張るというには常軌を逸している。
また、本件犯行は、被告人が、同公社および同市役所の上司や群馬銀行融資担当者から信用・信頼を得ていたことを利用し、長期間にわたり功妙かつ計画的に反復したものである。
④ 犯行の結果など
被告人は、公務員としての職責を放棄したばかりか、その地位を濫用して巨額の私利を貪っていたのであり、これにより公務員に対する信頼を大きく失墜させるとともに、公文書の信用性を著しく損ねた。
群馬銀行に対して莫大な損害を与えたところ、結局、群馬銀行と安中市土地開発公社・安中市との間でその損害の解決を図らざるを得ないことから、群馬銀行は安中市土地開発公社および安中市を被告として、約四十憶円の返済を求める民事訴訟を提起した。
本件犯行は、安中市政に対する市民の不信を募らせて、市長、助役、収入役が辞職し、市役所関係職員が懲戒処分を受けるなどの事態に発展し、安中市政に重大な混乱を生じさせた。
被告人は、公判廷において、内心では自己の不正が発覚してもらいたいとの思いがあったなどと供述しているが、被告人は長期間にわたり、次第に発展させながら犯行を重ねていき、本件各犯行に及んでこれを反復していたこと、平成七年四月に人事異動で転出を余儀なくされるや、公社理事長印を冒捺した預金払戻請求書を作成して以降の犯行に供え、融資担当行員に対しては、「教育委員会に移った後も市長の特命を受けて公社の仕事を手伝うことになっている。」などと嘘を言い、同年五月にも払い戻しを受けていること、不正が発覚してからも、虚言を弄し、また、特別会計口座の預金通帳や預金払戻請求書を焼却して証拠の隠滅を図っていることなどからすれば、被告人の犯行継続の意思はかなり強いものであったといわざるを得ず、犯行継続中はもちろん、犯行発覚後の行状も芳しくない。
⑤ 公社および市側の問題点
もっとも、被告人の犯行がここまで拡大した背景には、安中市土地開発公社の監査方法などに問題点があったことも否定できない。
監査に際して決算書類とその預金通帳の入出金出状況を照合してさえおれば、容易に被告人の使い込みを発見でき、その後の犯行を防止できたはずである。
公社理事長の公印管理については、被告人のような部内者が故意に密かに公印を冒捺することを防止することには困難を伴うとはいえ、被告人が極めて多数回にわたって公印を暴捺していたところをみると、その管理が杜撰であったとの謗りを免れない。
次に、市長公印についても、厳密な点検をして問題点を見逃さないという姿勢に欠けていたとの非難を免れない。
また、被告人を公社設立当初から十五年も同じ職場に配置しておいたことは、被告人が本件犯行を反復する土壌となったものであり、人事管理の観点からも問題があったといわざるを得ない。
⑥ 群馬銀行の問題点
一方、群馬銀行にも問題点が少なくない。すなわち、融資金と用途について十分な調査もせず、一職員にすぎない被告人の「公社の窓口は自分だけである。融資の話は必ず自分を通して欲しい」などと言う言葉を真に受け、特別会計用口座も併設して借入金を振り分けて管理している点、特別会計用口座については預金残高証明書の発行を求めない点、借入金残高証明書の発行を求めない点、通常、地権者の銀行口座に振込入金されるべきところ、被告人一人が銀行窓口を訪れ、約二百五十回もの多数回にわたって現金でこれを引き下ろしている点など、容易に疑問を抱いて然るべきところが多々あったにもかかわらず、これらを不審に思って調査した様子もなく、却って被告人をゴルフに接待していることなどからすれば、被告人が安中市および安中市土地開発公社の職員であることに気を許し、安中市の債務保証も得られていると即断し、安易に巨額の融資を継続してきた点で、銀行としてあるべき対応に欠けるところがあったとの謗りを免れない。
⑦ 結論
本件各犯行がそれぞれに悪質極まりなく、他に例を見ない巨額な被害を発生させ、社会の多方面にわたって大変深刻な影響を及ぼしていること、被告人の得た額が莫大であることに鑑みれば、被告人の刑事責任は誠に重く、被告人が本件各犯行を素直に認めて反省の情を示していること、現在まで六億円を超える被害弁償をし、さらに今後もある程度の被害弁償が見込まれること、被告人は懲戒免職処分となり、家族を含めて社会的な制裁を受けていることなどの事情を十二分に考慮しても、懲役十四年の実刑は免れないものというほかはない。
- 民事で対立した安中市と群馬銀行の言い分
こうしてTの犯行については結審した。しかし〝債務保証〟を行っている安中市に対する民事訴訟は、両者の言い分は平行線をたどった。
ある市幹部は、
「群銀の主張を全面的に容認することは、安中市だけの問題ではない。二度とこのような事件が再発しないと信じるが、安易な妥協は前例となってしまう。たしかにTの判決で市や公社の問題点を指摘されている。謙虚に事実関係は受け止めるが、群銀の責任も回避できない」
と苦渋の弁明だった。
安中市側は、刑事事件の判決で、事実関係が明らかになった。原告は、その判決を踏まえ請求原因人(貸金、保証債務履行請求)を変更する考えがあるのかないのか。そして〝偽造〟の事実をあくまで否認するのか、または認めて新たな主張をするのかと反論した。
原告側は「表見代理(民法第一一〇条)を類推適用、さらに「使用者責任(民法第七一五条)」を主張し対立した。安中市は「偽造や変造」というTの行為は「業務遂行上」で実行された原告の〝重大な過失〟については次のように陳述している。
① 犯行行為の受け皿となった特別会計口座の開設について、市長の特命が存在したとのことであるが、これにかかわる意思確認が行われるべきところ、なされていない。市長が変わった経過もある。
② 証拠として提出されている借入にかかわる変更契約関係の書類を見ると、記名押印の不足しているもの、あるいは意思確認の押印欠如のものなどが見受けられるが、一般の借入手続きでは考えられないことである。
③ 融資額はその借入目的によりおのずと決まってくるはずであるが、借入目的に対する融資金額が、通常では考えられない過大なものもある。
④ 土地代金については事故防止のため、通常口座振替であるが、多数回に及ぶ現金払戻しは理解しがたい。
⑤ 偽造および変造の態様は、漢数字が加筆されていることがわかる形でなされているが、原告は何故疑念を抱かなかったのか。
安中市の主張に対し原告は、次のように反論した。
① 特別会計口座開設理由が、市長の特命であるとの主張は、事実に反する。
② 元となる借入契約における書類には全ての意思確認の押印があり、これが変更の場合の意思確認欄の押印は原告内部の手続き上省略を許されたものである。
③ 被告公社は、原告にとって極めて新余生の高い得意先であり、通常行われる不動産取得資金の貸付に伴う担保権の設定もしておらず、原告において借入目的を深く斟酌、詮索をすることは必要としない取引である。
④ 土地代金の支払いについては口座振替もあれば、現金払いによる場合もあると承知している。
⑤ 偽造・詐欺事件の詳細が明らかとなった現在、疑惑の目をもって検証すればいざ知らず、平常の取引下においては、むしろ「誰も」加筆されていることに気づくものはいないと言っても過言ではない。
これに対し安中市はさらに反論する。
① 被告公社の借入決定手続きおよび被告安中市の債務保証手続きについて、Tが各法令、規則などの規定上関与する場面はなく、原告の主張は適当でないこと。
② 原告が事実を誤認している点は、前記のTの権限の他にも多々あること。
③ 本訴請求における原告の表見代理の主張および使用者責任は各貸付について事情が異なるのであるから、それぞれ別個にその類推の基礎や職務執行性を主張すべきであること。
また、その中で、公社および市の指摘する「原告の重大な過失」については、原告は再反論する。
① 保証債務の意思確認については特に厳重な手続きが取られるべきであることが、原告の事務取扱細則に規定されているが被告安中市に対する保証債務意思確認手続が、この事務取扱規則に定める方法で行われていることは明白であること。
② 同様に、この事務取扱細則において、借入金に係る債務保証限度額の確認は必須の要件とされているが、安中市の債務保証限度額を超えての融資が行われている。
- 裁判長の勧告で和解したものの結局ツケは市民に・・・
こうして平成十年十二月、裁判長の和解勧告を受け入れ、別掲内容で和解が成立した。簡単に要旨をまとめると、
一、よりよい地域社会づくりの実現に向けて努力することを目的に、互譲の精神を持って和解を行なう。
二、土地開発公社が主債務者、安中市については連帯保証人と位置付けた上で、原告に対して、原告請求の借入元金三十三億八千六百十八万二千四百二十五円及び和解成立期日までに発生した利息損害金全額、それぞれの相当額の支払い義務の存在を認める。
三、二項でその存在を認めた債務のうち、元金相当額部分の九億三千六百十八万二千四百二十五円及び利息損害金全額相当額(約五億円)の支払いについて、原告は免除する。
四、三項において免除された後の残債務金二十四億五千万円にかかる具体的な支払い方法を示しているが、この中で、残務債権については、利息を付さない。
五、支払い期日及び額が特定された支払いが、一回でも、一月以上遅れた場合には、残額及び遅延損害金を一括して支払う。
六、訴訟開始以降公社が償還義務を履行するため、法務局に供託を行ってきたものがあり、この供託金について、公社がこれを取り戻すものとし、また、原告はこれに異議なく了承する。
七、これまでの各項に明示された内容以外の請求について、原告はこれを放棄する。
八、本訴訟に関して、この和解条項に定められた事項以外に、何も債権や債務はないことを、互いに確認する。
和解に伴って生じる負担については、公社で対応するという。和解条項第四項第一号及び二号において、平成十年十二月二十五日に四億円を、平成十一年から十年間は年二千万円を毎年十二月二十五日に支払うことになった。
平成九年度決算時における公社の準備金は四億二千万円余りで、今回の和解成立により群馬銀行に対し債務が消滅することとなる訴訟対象になっていた公社の正規の借入金の残二億二千万円等があるので、これらを合計すれば、六億円を超えることになる。この額及び支払い期日が特定された部分については、対応が可能となるものだ。ただ、準備金について、全額が現金・預金というものではなく、今後の事業活動により現金化される部分も含まれている。
今後とも適切な事業の執行が求められることになり、容易なことではない。
残債務については、両者で協議して支払い方法を定めることになっている。今後において求められる事項については十分な協議を行ない、誠実に対応するという。
それにしても、Tが詐取した確定金額は三十三億八千六百万円という巨額である。これに利息と遅延損害金などを合わせると十数億円と推定されるが、和解で免除ということになった。
しかし、平成十年十二月に四億円を支払い、十一年から毎年二千万円を分割で返済。
その後は同公社の財政状況などを見ながら、年間支払額が二千万円を下らない範囲で、十年ごとに返済額を双方で協議して決めるとされており、計算上では〝百年返済〟も可能だ。
「市長は、借金の返済は公社で処理するので、市民は理解してくれると言っているが、公社で処理しようと、しまいと公金ではないか。市民の負担であることは間違いない。市が〝管理責任〟を問われるのは当然だ。管理者が多少でも金銭的弁済が不可能ならば〝引責辞任〟すべきではないか」
と厳しく責任追及する市民の声はいまも出ている。
=====和解条項=====
一 原告と被告らは、友好的且つ健全な金融取引得を通じて、よりよい地域社会の実現に向け努力することを目的とし、本件事実の特殊性及び被告らの財務負担の軽減ひいては住民福祉に配慮した裁判所の和解勧告を尊重し、互譲の精神をもって、以下のとおり和解する。
二 被告安中市土地開発公社は主債務者として、被告安中市は連帯保証人として、原告に対し、連帯して、原告請求にかかる本件借入金元金三十三億八千六百十八万二千四百二十五円及び本日までに発生した利息損害金全額相当額の支払義務あることを認める。
三 原告は、被告らに対し、本日、前項の債務のうち借入金元金九億三千六百三十八万円及び前項の利息損害金全額相当額の支払いを免除する。
四 被告らは、連帯して、原告に対し、前項の免除後の残債務金二十四億五千万円を、次のとおり分割して、原告安中支店における群馬銀行安中支店長名義別段預金口座番号○○○○○○○に振り込んで支払う。但し、残債務金には利息を付さない。
1 平成十年十二月二十五日限り金四億円
2 平成十一年から十年間は、毎年十二月二十五日限り金二千万円宛
3 前号後の十年間の残金支払方法については、原告と被告らが前号の最終支払期日までに、その時の被告らの財務状況並びに一般経済情勢等を勘案のうえ、前号の年間支払額を下回らない範囲で協議して定め、以降も残金支払済まで同様とする。
五 被告らが前項1及び2の各分割金の支払いを一回でも一か月以上遅滞したときは、被告らは当然に期限の利益を失い、残額及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払い済みまで年十四パーセントの割合による損害金を一括して直ちに支払う。
六 被告安中市土地開発公社は、別紙供託金一覧表記載の供託金を取り戻すものとし、原告はこれに異議はない。
七 原告はその余の請求を放棄する。
八 原告と被告らは、本件に関し、本和解事項に定める他には何ら債権債務のないことを相互に確認する。
九 訴訟費用は、各自の負担とする。
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