市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同スラグ訴訟…4.14第9回口頭弁論を再来週に控え原告が準備書面(13)と鑑定申立補充書を提出(その2)

2017-03-31 23:56:00 | スラグ不法投棄問題
■前回2017年1月20日の第8回口頭弁論期日で、原道子裁判長は原告らに対して、次の訴訟指揮をしていました。
(1) 甲53及び54の証拠説明書を提出されたい。
(2) 平成29年3月31日までに、被告準備書面(平成28年12月27日付け)の第2(4頁)に対して認否反論されたい。
(3) 平成29年3月31日までに、原告らの鑑定申立書(平成28年11月30日付け)について、被告の鑑定申立に対する意見書(平成29年1月13日付け)を踏まえ、以下の2点を検討の上、「鑑定申立書の補充書」と題する書面及び鑑定の必要性を裏付ける資料を提出されたい。
ア 裁判所における鑑定とはどのようなことを行うものか。
イ 化学的知見を専門家に相談し、原告らが希望する鑑定結果を得るために、どのような申立てをし、どのような事項を鑑定すればよいか。

 この訴訟指揮に基づいて、原告は、(1)と(2)に加えて、次に示す通り「鑑定申立書の補充書」を作成し、提出しました。

*****鑑定申立書の補充書*****PDF ⇒ o.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                       平成29年3月31日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中
            鑑定申立書の補充書
                     原告  小 川  賢  ㊞
                     原告  鈴 木  庸  ㊞

 平成29年1月20日の第8回口頭弁論期日で、裁判所からの指揮に基づき次の事項について陳述する。

第1 平成29年1月13日付の「被告の鑑定申立てに対する意見書」に対する反論

 原告は、被告が本件農道整備工事に使用された有害物質を含む“スラグ混合砕石”と称する路盤材を、本来、原因者の費用で撤去させるべきところ、それを怠ったばかりか、有害物質に蓋をするために施工した本件農道舗装工事は、そもそも不要で違法である、と当初から主張してきている。
 同様に、被告が農道整備工事に使用した有害物質を含む路盤材は、そもそも、日本工業規格にも違反している(原告準備書面(11)3頁参照)。
 このように、当初から原告は、「大同特殊鋼由来のスラグは、廃棄物処理法に則り撤去するべきだ」と指摘してきている。
 被告は、当初はステージコンストラクションにより、本件農道舗装工事は最初から計画されていたものだと主張していたが、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ(以下「スラグ」という)がブレンド骨材と称して敷設されていることは、否定しておらず、萩生川西地区の農道にはスラグが存在していることに争いは無い。
 被告は、最近になって、土壌汚染対策法の観点からのみ反論するようになったが、原告はスラグが敷設された直下の土壌については、本件訴訟では追及していない。このため、原告は、土壌汚染対策法については、必要な部分のみ指摘する。


 原告らの平成28年11月30日付け鑑定申立てに対する被告の意見は,下記のとおりである。
               記
第1 意見の趣旨
   鑑定の必要を認めない。
第2 意見の理由
 1 はじめに
   原告らの鑑定申立ては,鑑定方法の点において不適切であるという問題があるが,その問題は後述することにして,まず,本件農道の下層路盤材やその下の土壌を鑑定することの要否について説明する。
 2 原告らの申立てに係る鑑定は原告らの請求を何ら基礎付けないこと
被告の平成28年12月27日付け第8準備書面の第2・5項(6頁以下)で明らかにしたとおり,仮に本件農道に下層路盤材として敷設されているブレンド骨材やその下の土壌から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合,以下のようになる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 本件農道に下層路盤材として敷設されているブレンド骨材から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合,被告が乙22号証で示した「土壌汚染ガイドライン」の「1.1.1 土壌汚染対策法の目的」によると、まず「①新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ために、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することになる。(甲58号証)
 今回のスラグは有害物質が基準値を超えていることから、撤去の上、廃棄物処理法第15条第1項および廃棄物処理法施行令第7条第1項第14号イに定める遮断型最終処分場に最終処分しなければならないことになる。
 そのうえで、周辺の土壌が汚染されている場合に、その後、②適時適切に土壌汚染の状況を把握すること、③土壌汚染による人の健康を防止する、ということが土壌汚染対策法の主たる役割となる。
 そもそも被告は、①に示された土壌汚染源たる大同特殊鋼由来のスラグの対処を怠っていることを肝に銘じなければならない。


 地下水を経由した摂取リスクの観点から,本件農道から概ね500メートルの範囲における飲用の井戸の存否を確認し,飲用の井戸が存在する場合は,その範囲に存在する適当な井戸(この井戸は飲用に限らない。)から採取した地下水の水質測定を行い,その結果が地下水に係る基準値を超過していなかったときは,「汚染の除去等のための措置」として,継続的に地下水の水質測定を行うことになる(土壌汚染対策法施行規則別表5・1)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 乙22号証の中のぺージ2にある「図1.1.1-1土壌汚染対策法の概要」(甲58)には、本件農道に下層路盤材として敷設されているブレンド骨材の下の土壌から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合、まず要措置区域に指定及び公示(台帳に記帳)が行われ要措置区域の管理が行われる、とある。
 また、乙22号証の中のページ282と283にある「第5章 汚染の除去等の措置」の「5.1.1基本的な考え方」(甲59)には、「地下水の水質の測定(地下水モニタリング)は、地下水汚染が生じないことを確認するものであることから、措置の期限は定められない。したがって措置実施者が地下水の水質の測定を実施した場合、要措置区域の指定は解除されることがない。」とある。
 要措置区域の指定が解除されない状態で風評被害が防げるのであろうか?もしくは土壌汚染対策法を無視して要措置区域に指定しないのであろうか。被告の主張は支離滅裂で何を言っているのかよくわからない。
 原告は、あらためて論理的でわかりやすい釈明を原告に求めたい。


 ② 人体に直接触れるリスクの観点から,舗装等を行うことになるが,これは本件農道舗装工事により,既に施工されている。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 甲60号証に示す現場写真のとおり、舗装は有害スラグや汚染された土壌を完全に覆うものではなく、一部は薄く盛り土した状態なので不完全であると言わざるを得ない、この点からも被告の主張は支離滅裂である。


(2)以上の説明では若干分かりにくいと思われるので,以下,鑑定を実施した場合に,その結果によって明らかになることや,論理的に帰結されることについて,場合を分けながら整理する。
 ア まず,鑑定の結果,土壌汚染対策法所定の基準値を超えていなかった場合は,その時点で,原告らの請求に理由がないことが明らかになる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 土壌汚染対策法所定の基準値を超えていなかった場合でも、廃棄物処理法所定の廃棄物の適正処分を原因者に行わせなければならない。廃棄物は廃棄物処理法施行令第7条に定められている処理施設に適正処分しなければならない。


 イ 他方,鑑定の結果,土壌汚染対策法所定の基準値を超過していた場合は,次に概ね500メートルの範囲に飲用の井戸があるかを調査することになる。
  (ア)概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在しない場合は,地下水を経由した摂取リスクの観点からの措置は求められず,求められるのは,人体に直接触れるリスクを除去するための舗装等の措置のみとなる。したがって,この場合は,結果的に本件農道舗装工事の正当性を裏付ける帰結となり,原告らの請求に理由がないことが明らかになる。
  (イ)他方,概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在する場合は,更に適当な井戸を選定して地下水の水質測定を行うことになる。
   i 水質測定の結果,地下水に係る基準値を超過していなかった場合は,地下水を経由した摂取リスクを除去するための水質測定を継続することになる一方,人体に直接触れるリスクを除去するために舗装等が求められることになる。すなわち,この場合も,結果的に本件農道舗装工事の正当性が裏付けられることになり,原告らの請求には理由がないことが明らかになる(なお,水質測定を継続するか否かは,原告らの本件請求とは関連性がなく,本件訴訟の審理の対象外である。原告らの請求を離れて継続的な水質測定の要否の判断に踏み込むことは,住民訴訟の制度趣旨を逸脱するものであり,許されない。)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 原告は、ブレンド骨材なるスラグを「廃棄物だ」と被告群馬県が指摘したので、廃棄物処理法に則り適正に処分してもらいたい、と考えた。そのため、本件訴訟に踏み込んだ。
 水質測定を継続するか否かなどは,原告らの本件請求とは関連性がなく、原告は請求を離れて、継続的な水質測定の要否の判断に踏み込むことはしない。
 被告は、本件訴訟の途中で、自ら土壌汚染対策法について主張し始め、原告を巻き込もうとしている、大変迷惑な話であり、群馬県が認定した廃棄物「鉱さい」の適正処理について、原点に戻って考えてもらいたい。


   ii 他方,水質測定の結果,地下水に係る基準値を超過していた場合は,遮水工封じ込めや土壌汚染の除去等の措置(乙21・5頁以下参照)が求められることになる。この場合に限って,本件農道舗装工事の正当性に疑義が生ずる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 土壌汚染源たる大同特殊鋼由来のスラグを廃棄物である「鉱さい」と認定しておきながら、しかも土壌と接する方法で使用した場合、フッ素による土壌汚染の可能性がある(甲57号証)、と指摘しておきながら、地下水まで基準値を超過してした場合、萩生川西地区は農地として壊滅的であり、風評被害どころではないのではないか。被告は県民農業者の生活及び営農環境の安全・安心を担保するのが責務のはずである。


(3)要するに原告らの請求が基礎付けられるのは,上記2(2)イ(イ)iiの場合に限られるから,結局,①下層路盤材その下の土壌が土壌汚染防止法上の基準値を超えていること,②概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在すること,③概ね500メートルの範囲から選定した適当な井戸から採取した地下水が地下水に係る基準値を超過していることの3つが全て証明されなければならない。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 甲58号証の「土壌汚染対策の目的①新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ため、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することを、被告は全く無視している。被告が主張する下層路盤材が土壌環境基準を超過している場合、土壌汚染源として萩生川西地区の農道に厳然と存在することになる。

   しかるに被告は,大同特殊鋼株式会社から排出された鉄鋼スラグが用いられた群馬県内の地点について,土壌汚染対策法所定の手順に従って水質測定を実施しているところ,平成28年9月末現在,地下水に係る基準値を超過した結果が出た地点はない(添付資料参照)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
被告の鑑定申立書への意見書の添付資料「【12月15日】大同特殊鋼㈱渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する使用箇所の解明等の状況について(廃棄物・リサイクル化)」を参照すると、群馬県廃棄物・リサイクル課が「大同特殊鋼株式会社渋川工場から排出された鉄鋼スラグについて、平成27年9月11日に廃棄物処理法に基づく調査結果を公表後、使用箇所の解明及び環境調査を進めてきたところですが、現在の状況は次のとおりです。」として「(3)環境への影響調査について」を示している。廃棄物処理法に基づく調査があれば、法律に則った対策が示されるのが通常である。
 この報告を見ると、廃棄物処理法に基づく調査の延長として「使用箇所の解明及び環境調査を進めてきたところ」と説明しているのであり、その中の現在の状況として「地下水への影響は認められない」としているのである。
 土壌汚染対策法なる法律名はどこにも示されていないばかりか、廃棄物処理法上どのように対策していくのかも示されていない。
 被告群馬県農政部のみが、土壌汚染対策法所定の手続きによる水質調査と勘違いしているのではないか。
 群馬県廃棄物・リサイクル課は「今後とも鉄鋼スラグの使用箇所の解明を進め」ている状況であり、とりあえず環境への影響についての監視をおこなっていく、として今後の対応方針を示しているのである。
 被告には、いつまでもこのような現在の状況の報告だけに留まっていないで、なるべく早く廃棄物処理法に則った対策を示すことが求められているのである。

したがって,現時点で鑑定を進めても,上記③の事実が証明される可能性すなわち,本件農道から概ね500メートルの範囲から選定した適当な井戸から採取した地下水が地下水に係る基準値を超過している可能性は,極めて低い。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告がブレンド骨材と称する大同特殊鋼由来のスラグは、群馬県が廃棄物と認定しているものである。萩生川西地区の農道に敷設された状況は不適切であるので、原因者の負担で撤去の上適正に処分しなければならない。その際、有害物質が基準値を超えて含まれていれば、廃棄物処理法施行令第7条第1項第14号イに定める遮断型最終処分場に最終処分することになる。


(4) 以上の次第であるから,原告らの申立てに係る鑑定によりどのような結果がでても,それによって原告らの請求が基礎付けられる見込は極めて乏しいから,鑑定の必要性はないと言わざるを得ない。
   なお,現時点で,地下水に係る基準値を超過している可能性が皆無と言い切れるものではないので,原告らにおいて,私的に測定を実施するなどして地下水に係る基準値を超過している可能性があることを疎明した場合(例えば,基準値は超過していないが,相当程度の有害物質が検出された場合など)は,別途検討する余地はある。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する
 以上、縷々反論してきたが、本件農道に被告が主張する下層路盤材として敷設されているブレンド骨材から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合,被告が乙22号証で示した「土壌汚染ガイドライン」の「1.1.1 土壌汚染対策法の目的」(甲58)によると、まず「①新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ために、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することになる。今なお萩生川西地区の本件舗装工事を施した現場の農道には、廃棄物が敷設されたままになっている。これらの廃棄物が土壌汚染源としてどのくらいの有害物質を含んでいるのかを確認することは重要であり、「鑑定の必要性はないと言わざるを得ない」とする被告の主張は失当である。

3 鑑定の方法について
  以上のとおり,そもそも鑑定の必要性は認められないが,念のため,原告らが提案する鑑定の方法について意見を述べておく。
  原告らは,ブレンド骨材の中から鉄鋼スラブのみを抽出して検査を行う方法を提案している。
  しかし,地下水を経由した摂取のリスクの除去の観点からは,一定の広がりのある範囲内に有害物質がどの程度含有されているかが環境に与える影響の程度を左右するから,鉄鋼スラブを抽出して検査することには全く合理性がない。むしろ,環境負荷の程度を判断する上で誤りを生ずる恐れが高く,不合理な検査方法である。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 常温・常圧では大同特殊鋼由来のスラグは天然石とブレンドしても、混ざり合う事は無いのでスラグのみを抽出して検査を行わなければ、誤った数値が検出されてしまうのは明らかである。
 学校で理科を履修してきて当然そのことに気付いている被告は、よほどスラグのみを抽出して検査を行われるのが嫌であるらしい。もっとも支道27号線などは、ほぼスラグ100%の状況であったことを原告は確認しているし、県会議員もそのように証言をしている(甲32号証)。


第2 裁判所における鑑定とはどのようなことをおこなうものか、について

1 鑑定とは
 一般的に「鑑定」とは,専門性の高い分野について,特別の学識経験を有する第三者に意見を求める手続のことをいうようである。世間では、とくに医療分野の訴訟でこの手続きが多用されるようだ。この背景としては,医学という専門性の高い分野がハードルとなるため,専門知識と経験の豊かな医師に意見を求めなければ,適切な判断をすることが困難であるという事情があると思われる。
 この専門性の観点から言えば、今回の事案は、中学校の理科や高校の物理・化学の基礎知識があれば、鑑定作業において困難はさほど問題にならないと思われる。
 鑑定の手続きは、「鑑定の申出」⇒「鑑定事項の作成・鑑定人の選任」⇒「鑑定事項の確定、鑑定の実施(鑑定人による鑑定書の作成)」⇒「(場合によっては)補充の質問」という手順を踏むようである。

2 本請求事件における鑑定の意義
 前項の視点から、原告らが所属する市民オンブズマン群馬と関係のある弁護士にアドバイスを乞うたところ、次の見解を聴取した。その結果は次のとおりである。
 はじめに「目的」としては、「路盤の下にスラグが埋まっていることを証明すること」そして「採取したスラグの化学的性質について専門性を有する分析機関に測定させ、分析結果について化学的な解析をし、環境への影響について客観的な鑑定人に求めること」とする。
 そのための「方法」としては、「検証の申立て(採掘手続;業者の手配,採掘作業,原状回復,道路占用許可などはこちらが費用負担する)」⇒「そこで採掘した土砂についての鑑定を申立て」という手順を踏む。
 原告は上記が正論と考える。
 ただし、当該弁護士によれば、仮に原告の上記の申立てが採用されない場合、次善の策として、原告は「現地での進行協議手続の申立て」⇒「進行協議期日において採掘手続を行う」⇒「採取した土砂について鑑定を申立て」という方法を取ってもよいとのことである。
 ここで、本請求事件のこれまでの経緯を振り返ることにする。
 本請求事件は、群馬県東吾妻町萩生川西地区の圃場整備事業で農道に鉄鋼スラグが不法投棄されてしまったわけだが、それを撤去してくれと原告は何度も電話で吾妻農業事務所に要請したにもかかわらず、舗装で蓋をされてしまった事案である。舗装工事の費用を公金から支出したのは違法だから、工事の決裁をした吾妻農業事務所長に費用請求せよというのが、本事件の端緒である。
 そのため、舗装されてしまった農道において、舗装の下に、本来であれば敷砂利として使用してはならないスラグが存在すること(このためこれまで被告群馬県は、敷砂利ではなく、ステージコンストラクションだとして、過渡的に下層路盤材として使ったと主張してきたが、この期に及び、土壌汚染対策法を持ち出し、周辺の井戸の地下水を汚染した証拠はないから、舗装で蓋をしたことには合理性がある、などと主張しはじめたわけだ)を証明することがこの度の鑑定申立ての目的である。
 また、下層路盤材として再生砕石の使用は認められているが、今回使用されたのは、産業廃棄物であるスラグを天然砕石と任意に混ぜて「再生砕石」を偽装して使ったものであり、しかも有毒物質(フッ素、六価クロム)を環境基準の10倍まで含むスラグを使用していることから、廃棄物処理法に違反するとともに、JIS(日本工業規格)の観点からも本来使用してはならない有毒スラグが土木資材として使用されていることを証明することもこの度の鑑定申立ての目的である。
 被告が、不法投棄されたスラグの存在をなかなか認めないまま、やれ下層路盤材だのステージコンストラクションなど、根拠のない言い逃れの主張を続けてきたが、平成28年12月27日付で被告が提出してきた乙20号証により、スラグが投棄された農道工事は、もともと「敷砂利工」として施工されていたことが明らかとなった。
 と同時に被告は、乙21号証と乙22号証で「仮に、本件舗装工事に先立って下層路盤材を敷設した地点の土壌から基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されていたとしても、土壌汚染対策法により、本件舗装工事と同等の舗装工事が実施されていたものと認められる」などと新たな主張を繰り出してきた。
 これと前後して、裁判所から「鑑定」という手段で、鉄鋼スラグの存在を第三者機関に証明してもらうという手続きがある、との指揮があったことから、原告は平成28年11月30日付で鑑定申立書を提出した。
 こうしたやりとりに呼応するかのように、平成28年12月22日に前橋地検により大同スラグ告発事件に対する不起訴処分決定(嫌疑不十分)が行われた。被告は、さっそく同年12月27日付の乙22号証で、この検察の決定を所掌として裁判所に提出してきた。
 原告は、乙20号証により、敷砂利に、廃棄物処理法で定める「鉱さい」である有毒スラグが使われたのは明らかであるから、ただちに撤去しなければならないとここに主張する。そもそも原告は、スラグを撤去しないまま農道舗装工事でスラグに蓋をしたのは廃棄物処理法による不法投棄を看過したことになり、舗装工事で蓋をした費用は、原因者(支出決裁者)が負担すべきだとして本件請求事件を提起しているのである。
 訴外大同特殊鋼、大同エコメットそして佐藤建設工業は、廃棄物処理法により産業廃棄物として認定されている「鉱さい」であるスラグを、しかも有毒物質を含んだままのスラグを、天然砕石とまぜて「再生砕石」として偽装して不法投棄をしでかした。
 被告はこれを廃棄物だと認めているのだから、廃棄物処理法により適正に撤去措置を原因者に命じればよいところ、あろうことか、土壌汚染対策法にからめて不法投棄から目をそらそうとする画策する始末である。
 こうした言い逃れを許さないためにも、被告は原告の鑑定申立の必要性を認めて、実態の把握に協力しなければならない。
 しかも被告は、萩生川西地区の本件農道整備工事において、大同特殊鋼由来のスラグがブレンド骨材と称して敷設されていることは、認めているのであるから、鑑定の必要性については当然理解できているはずだ。

3 科学的知見を有する専門家の見解

 原告は、裁判所からの「化学的知見を専門家に相談し、原告らが希望する鑑定結果を得るために、どのような申立てをし、どのような事項を鑑定すればよいか」という指揮に基づき、専門家に化学的知見を相談したところ、専門家から平成29年3月24日付で「東吾妻町萩生川西地区にみられる有害スラグの取り扱いに関する意見書」を書面で取得した(甲64号証)。
 これによれば、基準を超えたフッ素が含まれている可能性が高く、環境汚染のリスクが高いこと、強アルカリの毒性による健康面への影響も危険度が高いこと、アスファルトの被覆状況も完全な水系の遮断とは程遠く周辺農地への土壌汚染の脅威が無視できないことが、問題視されている。
 こうした観点から、現場の萩生川西地区の農道において投棄されたスラグの賦存状況とフッ素の残留状況を測定し、その環境負荷について、得られたデータをもとに専門的見地から分析および解析を行う必要があると結論付けることができる。
                       以上
**********

■そして上記の準備書面と補充書に関係する証拠説明書その他も提出しました。

*****証拠説明書(甲55~64)*****PDF ⇒
5564170331.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                    平成29年3月31日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中
          証拠説明書(甲55~62)
                  原告  小 川  賢  ㊞
                  原告  鈴 木  庸  ㊞
 号証/標目/原本・写しの別/ 作成年月日/作成者/立証趣旨
●甲55/第187回国会 経済産業委員会 第8号会議録(抜粋)/写し/ 平成26年11月12日/衆議院/鉄鋼スラグが廃棄物に該当するか否かについての委員の質問に対して、環境省の政府参考人が、個別具体的な判断は、群馬県が適切に判断すると答弁したことを示す議事録。
●甲56/環廃産発第1303299号 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長 行政処分の指針について(通知)(抜粋)/写し/平成25年3月29日/環境省大臣官房/法が定めたルールをみだりに破り不法投棄された廃棄物について「違反行為」を把握した 場合には、生活環境の保全上の支障の発生又はその拡大を防止するため速やかに行政処分を行うこと。特に、廃棄物が不法投棄された場合には、生活環境の保全上の支障 が生ずるおそれが高いことから、速やかに処分者等を確知し、措置命令により原状回復措置を講ずるよう命ずること。」と地方自治法第 245 条の4第1項の規定に 基づく技術的な助言を行っている。
●甲57/大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について/写し/平成27年9月11日/群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課 平成29年3月29日日現在、大同特殊鋼由来のスラグは廃棄物に認定されていることが、群馬県のホームページにより確認できる。
●甲58/土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)ページ1、2/写し/平成24年8月/環境省 水・大気環境局 土壌環境課/乙22号証と同じ文書の一部抜粋。土壌汚染対策法の目的として、①~③まで記載があり、①の有害物質を含む廃棄物の適正処分は廃棄物処理法で実施され、残る②③が土壌汚染対策法で実施されることを定める。
●甲59/土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)ページ282、283/写し/平成24 年8 月/環境省 水・大気環境局 土壌環境課/乙22号証と同じ文書の一部抜粋。汚染の除去等の措置における基本的な考え方を示していて、「地下水の水質の測定(地下水モニタリング)は、地下水汚染が生じないことを確認するものであることから、措置の期限は定められない。したがって措置実施者が地下水の水質の測定を実施した場合、要措置区域の指定は解除されることがない。」とある
●甲60/乙24号証で示された舗装措置概念図と支道27号線の実際の舗装の様子の対比/写し/平成29年3月29日/原告/被告が提示した舗装措置概念図は、基準不適合土壌を覆うように舗装するとなっているが、実際の支道27号線の舗装の現場写真が基準不適合土壌を完全に覆い切れていない様子を写し取っている。
●甲61/土地汚染対策法の施行について/写し/平成15年2月4日/環境省環境管理局水環境部長/同文書の33ページ目。土壌含有量基準を超える指定区域において封じ込め措置(原位置、遮水工、遮断工)を行い、その上を50cm以上の汚染されていない土壌により覆う場合も盛土措置として位置づけられることになる旨記載あり。
●甲62/廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条第一項第三号イ(6)に掲げる安定型 産業廃棄物として環境大臣が指定する産業廃棄物/写し/平成18年7月27日/環境省/告示第105号。同じ「鉱さい」の分類である石綿含有廃棄物を溶融したことにより生じた「鉱さい」にフッ素の基準値が示されていることからも裏付けられる、基準値を超えるおそれのある「鉱さい」は特別管理産業廃棄物として処理しなければならないことを示す。
●甲63/鉄鋼スラグの撤去工事について/写し/平成26年6月11日/(独法)水資源機構/有毒スラグが埋め込まれた現場からスラグを撤去し、きちんと原状回復を実践した事例。
●甲64/東吾妻町萩生川西地区に見られる有害スラグの取り扱いに関する意見書/原本/平成29年3月24日/東京農工大学環境毒性学教授 渡邉泉教授/スラグにはフッ素が土壌環境基準を超えて含まれており、天然砕石と混ぜても汚染可能性があること、甲アルカリ物性は健康に有毒で、アスファルト舗装も不十分で浸み込んだ水は周辺農地を汚染するリスクを有することを示す。
                    以 上

*****甲号証*****
●甲55 PDF ⇒ b55.pdf
●甲56 PDF ⇒ b56.pdf
●甲57 PDF ⇒ b57qnypahrosxop.pdf
●甲58 PDF ⇒ b58yi.pdf
●甲59 PDF ⇒ b59il.pdf
●甲60 PDF ⇒ b60to.pdf
●甲61 PDF ⇒ b61ys.pdf
●甲62 PDF ⇒ b62ypbwyp.pdf
●甲63 PDF ⇒ j.pdf
●甲64 PDF ⇒ b64wniwj.pdf

*****送付書兼受領書*****
●送付書兼受領書(原告準備書面(11)、鑑定書の補充書、証拠説明書(甲55~64)、甲号証) PDF ⇒ tei13j2017.3.31.pdf
**********

■今回原告が前橋地裁に提出した裁判資料は、昨年2016年12月22日に前橋地裁が、大同スラグ不法投棄問題の原因者である大同特殊鋼ら3社に対して、突如として不起訴処分を発表してから年を越して間もなく今年2017年1月20日に開かれた第8回口頭弁論における原道子裁判長の訴訟指揮に基づき、原告が準備してきたものです。

 ここでもう一度、前橋地検が下した衝撃的な不起訴処分について、昨年12月23日前後の報道内容をもとに、その概要をまとめてみました。

1.はじめに
 環境基準を超える有害物質を含んでいたスラグの処分を無許可の業者に委託していたとして、大同特殊鋼(名古屋市)、大同エコメット(愛知県東海市)、佐藤建設工業(渋川市)の法人3社と大同特殊鋼の役員(57)、大同エコメットの役員(66)と元従業員(68)、佐藤建設工業の役員(73)と従業員(65)ら計5人は、2016年4月26日に群馬県警から廃棄物処理法違反容疑で書類送検されていましたが、前橋地方検察庁は、2016年12月22日、「鉄鋼スラグを廃棄物と認定するのは困難で、立証には疑義が残った。関係者の故意を認定することも証拠上、困難だ」などとして嫌疑不十分で不起訴にしてしまいました。

2.送検の経緯
 スラグは鉄を生成する際に発生する副産物で、有害物質が含まれていなければ再生利用ができます。群馬県は関係先を調査した結果、大同がスラグに環境基準を超えるフッ素が含まれていることを把握していたことや、その取引形態から、再生資材を装った廃棄物処理だったと判断し、処理に必要な許可を受けていない会社に処理を委託した、などとして2015年9月7日に3社を刑事告発し、県警が2016年4月26日に書類送検をしていました。一方、大同は「製品としての再生資材だ」と主張していました。

3.リサイクル材かサンパイか
 「再生資材」か「産業廃棄物」なのか、大同特殊鋼渋川工場から排出されたスラグについて、群馬県や県警は「廃棄物」と認定しましたが、大同側は「再生資材だ」と主張し、前橋地検の判断が注目されました。
前橋地検は判断のポイントとして、①スラグは廃棄物と認められるのか否か、②仮に廃棄物だとして、関係者が廃棄物であると、それぞれ認識していたのか否か、を挙げた上で、いずれの点も刑事事件として裁判において十分な証拠をあげて立証していくことは困難であり、「嫌疑不十分」と不起訴の理由を説明する一方で、「廃棄物では絶対ないという言い方はしない」という歯切れの悪さが目立ちました。

4.県と県警の判断
 廃棄物処理法で扱う「不要物」の定義をめぐっては、過去の最高裁の判例で、その物の性状▽排出の状況▽通常の取り扱い形態▽取引価値の有無▽事業者の意思、などを総合的に勘案して決めるのが相当と示されていました。
 群馬県は、廃棄物処理法を所管する環境省と1年以上協議を重ねた上で、大同側が、スラグを環境基準を超える有害物質「フッ素」が含まれていると知りながら出荷▽販売額以上の金額を「販売管理費」名目で支払う「逆有償取引」だった、などの観点から「廃棄物」と認定し、2015年9月7日に大同など3社を刑事告発していました。
 県警も、これら2要素のほか、「製品」にもかかわらず流通経路が送検された3社間のみで完結していた点などから「廃棄物」と認定し、2016年4月に書類送検したものです。

5.地検の判断
 群馬県や県警は有害性や取引形態に着目したのに対し、地検の築雅子次席検事は会見で、「鉄鋼スラグを廃棄物と認定することや、関係者の故意性(廃棄物との自覚)の認定は、証拠上、困難だ」とし「刑事裁判で求められる合理的な疑いを超すだけの立証をするには、(証拠が)不十分だと判断した」と述べました。さらに、副産物の有効利用などを促す資源有効利用促進法に言及し、「有用な副産物は材料として利用できる、という視点もある。法が定めた生活環境の保全の重要性や、再生資源の必要性など、それらの法の趣旨に鑑みて、総合的に考慮して判断した」と述べました。

6.大同の行状
 名古屋市に本社がある大手鉄鋼メーカーの「大同特殊鋼」は、2011年(平成23年)3月1日から翌年2012年3月31日まで、およそ1年間にわたって、渋川市にある工場から鉄鋼の製造工程で出た有害物質を含む鉄鋼スラグおよそ2万8300トンの処分を、廃棄物処理の許可を受けていない無許可の関連会社である大同エコメットに委託処理をし、佐藤建設工業も同様に約1万8500トンを収集したなどとして、関連会社など2社やそれぞれの会社の役員らあわせて5人とともに廃棄物処理法違反の疑いで2016年4月26日に書類送検されました。


7.地検の不起訴処分への反応
(1)大同
 大同特殊鋼の本社広報室は、マスコミ取材に対して、「弁護人を通じて全員の不起訴の連絡を受けた。皆様のご心配やご懸念に対して引き続き誠実に対応したい」とのコメントを発表しました。
(2)群馬県
 群馬県の大沢知事は「県警は『被疑事実あり』として検察官に送致しており、不起訴処分は意外だ、不起訴の理由をよく確認し、今後の対応を決めたい。県としては引き続き、鉄鋼スラグの使用場所や環境への影響について調査を進め、県民の安全と安心の確保に努めたい」というコメントを発表しました。
 群馬県の廃棄物・リサイクル課は「不起訴処分は意外だ。今後よく理由を確認したい」としたうえで、「刑事罰と、環境面のことは別の問題だ」として、スラグの使用状況と、土壌や地下水への影響調査を続ける方針を示しました。
(3)群馬県警
 スラグを廃棄物と認定し、書類送検した県警生活環境課の幹部は「検察の判断について何も話すことはない」と言葉少なに語るのみでした。ある捜査関係者は「地検が疑義があるとしたのは、大同など当事者が故意性を否定していることが大きかったのではないか。残念だが仕方がない」と無念そうに言いました。

8.スラグ汚染の実情
 群馬県は、2014年1月27日の大同特殊鋼渋川工場などへの立ち入り検査で、同工場から鉄鋼スラグを廃棄物と認定し、2016年9月現在で、県内の公共工事337カ所、民間70カ所の計407カ所で、道路舗装などの工事現場で大同のスラグの使用が発覚しており、うち318カ所の環境調査の結果、スラグ134カ所、土壌86カ所から環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されています。大同は「不良製品への対応」との名目で、調査や被覆工事の費用を負担しています。

9.これまでの時系列
 2002年4月   大同特殊鋼が大同原料サービス(現大同エコメット)と鉄鋼スラグの委託加工、売買契約を締結
 2009年7月   大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業の3社で鉄鋼スラグを混ぜた路盤材の製造・販売契約
 2013年10月  渋川市が市スラグ砕石対策調査委員会を設置
 2014年1~2月 県が3社の立ち入り検査を開始
 2014年8月   大同特殊鋼が内部調査の結果などを公表
 2014年8月   国交省が調査に着手
 2015年1月   鉄鋼スラグ協会が再発防止ガイドラインを改正
 2015年9月7日 県が3社を県警に刑事告発
 2015年9月11日 県警が3社の本社や工場を家宅捜索
 2016年4月   県警が書類送検


■ところで、明日から新年度ですが、これまで本件訴訟を指揮してきた原道子裁判長の異動の可能性に注目が集まっています。たまたま、3月23日発売の週刊文春に関連記事が掲載されていました(本項末尾掲載参照)。

 これによると原裁判長は59歳で間もなく定年を迎える年齢となります。別件の前橋バイオマス訴訟でも、自身の所属する民事第2部から民事第1部にシフトした経緯もあり、4月15日の裁判に姿を見せるかどうか注目されます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「59歳の原道子裁判長が下した原発避難者訴訟判決に関わる記事」
*****週刊文春3月30日号「This Week」*****PDF ⇒ 20170323ttthisweekliqj.pdf
【社会】「国と東電は三千八百万支払え」 原発訴訟「想定外」の地裁判決
 福島第一原発事故は、東京電力が巨大津波を予見できたのに対策を怠ったため起きた。国も「同罪」――。前橋地裁は三月十七日、原発事故の原因を人災と断定し、国と東電に対して避難者ら六十二人に総額三千八百五十五万円を賠償するよう命じる判決を言い渡した。福島県からの原発避難者ら約一万二千人が全国二十カ所の裁判所で起こした集団訴訟で初めての判決だった。
 司法担当記者が解説する。
大規模な訴訟では通常、口頭弁論は二~三か月に一回程度しか開かれませんが、原道子裁判長(59)は月一回という異例のハイペースで裁判を進めました。『自分が裁判長であるうちに判決を下したい』という意図が明確に読み取れたため、記者の間では『原告が何らか喝のだろう』とは予想されていました。
 判決は、国の地震調査機関が〇二年に三陸沖大津波を予測する見解を出し、東電は実際に十五メートル超の津波を試算していたのに、非常用電源の高台設置といった対策を講じなかったとして「東電は安全性より経済的合理性を優先した」と責任を認めた。
 だが、国の賠償責任まで認めた点は「想定外」と受け止められた。
「原子力損害賠償法は、原発事故が起きた際の賠償責任は、一義的に電力会社が負うと規定しています。国も同様の主張をしてきましたが、判決は『国の責任は東電に比べ補充的とは言えず、賠償額は同額だ』と指摘した。国策として原発を推進してきたのだから、責任も同じだという考え方が根底にあるようです」(同前)
 もともと集団訴訟は、福島からの避難者が「加害者側が決めた基準に従った補償しか得られないのはおかしい」と疑問を抱いたことから、各地で起こされてきた。判決はこの疑問に応える形となったが、「従来の司法判断から逸脱している」との批判もある。
 国家賠償訴訟に詳しい元裁判官は言う。
「国の不作為が違法と認められた裁判は、過去にじん肺被害、アスベスト被害などの例があります。これらは実際に被害が生じているのに、国が対策を講じなかった点が違法とされました。今回は震災前に原発事故が起きていたわけではなく、高裁で取り消される余地は大いにあります」
 未曽有の事故の責任を巡る議論はしばらく続きそうだ。
**********

■この原発避難者訴訟の判決について、原告側からは国の賠償責任を指摘した点は評価の声があるものの、被害者認定や賠償額が限定的だったという落胆の声もあり、原告には厳しい判決となりました。

**********毎日新聞2017年3月17日 21時20分(最終更新 3月18日 01時41分)
原発避難者訴訟 原告、笑顔なき勝訴…苦労報われず落胆

前橋地裁判決を受け、報告集会でメモを取りながら弁護士の解説に耳を傾ける人たち=前橋市で2017年3月17日午後3時53分、徳野仁子撮影
 笑顔なき「一部勝訴」だった。17日の原発避難者訴訟の判決で、前橋地裁は東京電力と国の賠償責任は認めたものの、命じられた賠償額は原告の請求からは程遠かった。古里を奪われた代償を求めて3年半。大半の原告が周囲に知られないように名前も伏せ、息をひそめるようにして闘ってきた。「もっと寄り添ってくれる判決を期待していたのに」。苦労が報われなかった原告の顔には落胆の表情が浮かんだ。【尾崎修二、山本有紀、鈴木敦子】
★認定、137人の半分以下
 「国と東電の責任を認めさせた。心からうれしいのは間違いない」。判決後の集会で壇上に立った原告の丹治(たんじ)杉江さん(60)はこう言った後、言葉に詰まった。「この6年間つらいことばかりだった。納得できるかな……」
 原発事故当時、福島県いわき市に住んでいた。夫の幹夫さん(63)はワープロ修理業を営み全国から注文を受けていたが、事故後、「福島にワープロを送るのは……」と敬遠され、注文が激減した。
 事故の4カ月後、夫と群馬県へ自主避難した。私たちだけ逃げる選択をした--。福島にとどまった人たちへの後ろめたさは消えない。それでも「原発事故を繰り返してはいけない」との思いから、群馬県内で脱原発の集会や街頭活動に積極的に参加し、避難者訴訟の原告にも加わった。
 原告は45世帯137人。丹治さんを含めほぼ全世帯の代表が法廷に立ち、避難の苦しみや東電と国への怒りを訴えた。しかし、原告の中に名前を公にしている人はほとんどいない。「裁判をしていると周囲に知られたら、子どもが差別を受け、仕事へ影響することを恐れている」ためだ。丹治さん自身も「裁判すれば金(賠償金)がもらえるんでしょ」と、心ない言葉を受けたことがある。
 国の指針に基づくと、自主避難の場合、東電からの慰謝料は生活費との合算で総額8万円。原告たちを突き動かしてきたのは「ふるさとを奪われた苦しみへの賠償が不十分」という思いだったが、判決で賠償が認められたのは原告の半分以下の62人だけだった。
 「もっと温かい判決を期待していたのに」。喪服姿で傍聴した原告の50代女性は、判決の内容を知って肩を落とした。いわき市で暮らしていたが、事故の影響でパート勤めしていた会社が業績不振に陥り、解雇された。
 被ばくへの不安もあり、夫と共に群馬県へ避難したのは2カ月後。翌年、県の借り上げアパートに入居できて生活が落ち着いた後に夫が悪性脳腫瘍で倒れ、14年秋に52歳で帰らぬ人となった。
 いまだに働く元気も出ない。頼りは貯金と夫の遺族年金だけ。今月末には福島県による住宅補助も打ち切られる。地裁が認めた賠償額は「想像できないぐらい低い額」だった。この6年間の苦しみは何だったのか。「これでは主人にも報告できない」。女性はそう言って涙をぬぐった。
「国と東電が断罪された」福島訴訟の原告
 前橋地裁は、各地で起こされている同様な原発避難者訴訟の中で最初に判決を言い渡した。各地で同様の訴訟を起こしている原告や弁護団も17日は前橋市を訪れて見守った。
 福島県いわき市の訴訟の原告で、「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」の佐藤三男事務局長(72)は「国と東電が断罪された。両者の責任が明らかになったことは大きい」と話しつつ、「私たちの被害の実態や苦しみが分かっていないのではないか。お金のために裁判をやっているのではないが、損害認定には納得できない」と不満をもらした。【杉直樹】
原告の自宅検証…原裁判長
 原発避難者訴訟で国と東電に賠償を命じた前橋地裁の原道子裁判長(59)は1985年に裁判官となった。千葉、東京、宇都宮地裁を経て2013年から前橋地裁で裁判長をしている。
 今回の訴訟では積極的な訴訟指揮を執り、月1回のペースで口頭弁論や争点整理の期日を設定。昨年5月には福島第1原発の30キロ圏内にある原告4世帯の自宅を検証した。福島地裁を除き、各地の集団訴訟では初の現地検証だった。【尾崎修二】(当会注:原道子裁判長には、大同スラグ問題でも、東吾妻町萩生川西地区のスラグ不法御つき現場を現地検証してほしかった。)
**********

■さらに遅れて3月30日発売の週刊新潮のP148に、妙な記事が掲載されました。「原道子は女の敵」というタイトルを見て、最初は女優のスキャンダル記事かと思いきや、読んでみると前橋地裁の原道子裁判長のことでした。一体どんな記事が見てみましょう。

**********週刊新潮2017年4月6日号(3月30日発売)PDF ⇒
20170404034128.pdf
連載 変見自在 「原道子は女の敵」 高山正之
 米国の遺伝子学者ハーマン・マラーは1890年にニューヨークで生まれた。コロンビア大に入って、ここで生涯の遺伝子研究の伴侶となる猩々蠅(しょうじょうばえ)に出会った。
 猩々蠅は遺伝子の数も少なく、10日間で産卵し、すぐ交尾できるから実に手っ取り早い研究素材だった。
「研究に近道はない」が科学の鉄則だが、実は猩々蠅こそ禁断の近道だったことが、ずっと後に分かる。
 マラーはあるとき猩々蠅にX線を照射してみた。結果は凄かった。ほんの2週間で100例の突然変異体を生み出せた。これは過去7年間の研究で見つけた変異体数と同じだった。
 平たく言えばX線を当てれば面白いように突然体ができた。奇形は子孫にも遺伝した。
 1928年、大恐慌の前年にベルリンであった国際遺伝子学会での彼の発表は世界に衝撃を与えた。
 彼の研究は各機関で追認された。さらにスズメバチとか別の素材で実験が行われたが、なぜかそっちはうまくいかなかった。
 大恐慌が起きてマラーは忘れられた。覚えていてくれたのはスターリンだけで、彼は思想もこっちだったから喜んでソ連に移り住み、ソ連科学アカデミー所長のニコライ・ヴァヴィロフの下で研究を進めた。
 しかしソ連はヘンな国だ。遺伝子は環境でも変えられるというルイセンコが出てきた。春蒔き小麦も育て方で秋蒔きになり得ると。
 スターリンはそれが気に入った。共産主義にぴったりだ。突然変異―適者生存のメンデル遺伝学は「退廃した西側の思想」と見做され、レーニン賞も受賞したヴァヴィロフは逮捕され、監獄で食事も与えられずに餓死した。
 後ろ盾を失ったマラーは命からがら米国に逃げ帰った。折あたかも日米開戦前夜のことだった。
 赤い国から戻った男は冷や飯を食べ続けたが、米国が原爆を完成させてから境遇は大きく変わった
 広島と長崎に落とされた核爆弾は20万人を殺し、被爆地は草も生えないと言われた。被災者は放射線を浴びたことで遺伝子が異常をきたし、奇形を産むだろう。それは末代まで遺伝するというマラーの発見がここで蘇ったのだ。
 そんな恐怖の兵器を米国のみが持つ。逆らう国などあるわけもない。米国は世界の絶対的な覇者になった、と思われた。
 その恐怖を科学的に実証したことになるマラーは再び脚光を浴び、広島原爆の翌年、ノーベル賞を受賞した。彼は言う。「核兵器が生む放射線は将来にわたって人類の危機となる」
 米国が最も高揚した瞬間だった。
 しかしそれから間もなく人類はDNAの存在を知る。その研究でDNAには自己修復力があって遺伝子がX線で傷ついてもすぐ直すことが分かってきた。
 ではなぜ猩々蠅に奇形が生まれたか。実は猩々蠅はその自己修復力がない例外的存在だった。
 道理でスズメバチなどのほかの実験で奇形が出にくかったかの説明がつく。マラーは近道しすぎた。手っ取り早い研究ぐらいいい加減なものはない。
 しかしマラーの猩々蠅研究は国際放射線防護委の許容基準にもなっている。例の人体の年間許容量1ミリシーベルトがそれだ。
 だから今ではその250倍でも安全とされ、むしろ生命体の活性を助けるという説も支持されている。
 ただ東電福島の事故ではマラーのウソをもとにしたミリシーベルトが基準に使われ、避難地域が決められた。危険地域とされたところでイノシシや豚が元気にやっているのは見ての通りだ。
 そんな常識を朝日新聞だけは書かなかった。逆に放射能はコワいと風評を煽った、そんな朝日を信じる裁判官がいた。
 前橋地裁判事の原道子はマラーも知らず、朝日の言う「見えない放射線」に覚えて自主避難した住民の訴えを丸ごと認めた。
 女三宮は男に漢籍を教えた。清少納言は噂の害を1章仕立てで指摘した。
 あほな判決を出した原道子は「聡明な日本女性」の面汚しと言っていい。
(当会注:朝日新聞を批判する姿勢はさておき、この高山正之というジャーナリストは原道子裁判長の下した判決をきちんと読んだのだろうか。筆者も読んだわけではないが、「『見えない放射線』に怯えて自主避難した住民」にどのような非があるというのか。しかも原道子裁判長は「住民の訴えを丸ごと認めた」わけではない。物事の事象の上っ面だけ取り上げて「あほな記事」を書いたこのジャーナリストは、ジャーナリズムの面汚しと言っていい。そんなえせジャーナリストの戯言を連載する週刊新潮の編集方針も疑問だ。だからいつまでたっても週刊文春に追いつけない)
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大同スラグ訴訟…4.14第9回口頭弁論を再来週に控え原告が準備書面(13)と鑑定申立補充書を提出(その1)

2017-03-31 22:45:00 | スラグ不法投棄問題
■東吾妻町の農業地帯における区画整理事業で農道にサンパイである鉱滓=有毒スラグ入りの“再生砕石”が敷砂利として多量に不法投棄された事件で、当会は有害物質を原因者に撤去させず公金で舗装による蓋をしてしまった群馬県吾妻農業事務所長に、無駄に出費した舗装工事費を支払わせるべく、群馬県を相手取り住民訴訟を係争中です。前回1月20日に行われた第8回口頭弁論期日に基づき、次回4月14日(金)の第9回口頭弁論に向けて訴訟資料を準備していましたが、次の原告準備書面(11)及び関連する裁判資料を、本日3月31日午後3時過ぎに、前橋地裁と被告訴訟代理人弁護士事務所に提出しました。

*****原告準備書面(13)*****PDF ⇒ i13j201703331o.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                       平成29年3月31日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中
             原告準備書面(13)
                     原告  小 川  賢  ㊞
                     原告  鈴 木  庸  ㊞

 平成29年1月20日の第8回口頭弁論期日で、裁判所からの指揮に基づき次の事項について陳述する。

第1 平成29年1月11日付の原告準備書面(12)に係る甲第53・54号証をそれぞれ甲55・56号証に変更する。

 具体的にいうと、ページ3の上から13~15行目にある「(3)平成26年11月12日の衆議院第187回国会経済産業委員会第8号において塩川委員の質問に答えた環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長の鎌形浩史政府参考人の答弁(甲第53号証)」の証拠を「甲第55号証」とする。
 同じく、ページ3の上から24~25行目にある「(5)環廃産発第1303299号 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長 行政処分の指針について(通知)(甲第54号証)」の証拠を「甲第56号証」とする。
 なお、これに合わせて、平成29年1月11日付の証拠説明書を廃棄し、あらたに本日付の甲第55、56号証の証拠説明書を提出する。

第2 平成28年12月27日付の被告第8準備書面の第2(4頁)に対する認否反論

 今回、認否反論をするにあたり、まず触れておかねばならないことがある。
(1) 原告、被告の双方ともに、萩生川西地区の本件農道整備工事において、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ(以下「スラグ」という)がブレンド骨材と称して敷設されていることは、認めており、萩生川西地区の農道にはスラグが存在していることに争いは無いこと。
(2) この農道のスラグは、今話題となっている東京都豊洲で東京ガスが長年にわたり石炭を乾留して作っていた都市ガス製造工場の跡地に築地市場を移転するにあたり阻害となっている土壌汚染問題とは異なり、被告自身が公共事業で定めのない違法な土木資材であるスラグを施工業者に持ち込ませた結果発生した問題であり、上記(1)のとおり、被告がスラグの存在を認識した時点で撤去しておけば、土壌汚染問題は発生し得えなかったこと。
(3) この大同特殊鋼由来のスラグは、廃棄物の監督官庁である群馬県が平成27年9月11日に「鉱さい」という分類の廃棄物と認定している。そして。その認定の事実は、平成29年3月29日現在、被告群馬県のホームページ上で確認できることから(甲57)、このスラグは、今なお廃棄物であること。
(4) 被告群馬県の廃棄物認定の内容を注意深く読むと「フッ素の土壌環境基準等が設定されて以降、大同特殊鋼(株)渋川工場から製鋼過程の副産物として排出された鉄鋼スラグは、土壌と接する方法で使用した場合、フッ素による土壌汚染の可能性があり、」としていることから、このスラグは特別管理産業廃棄物として処理しなければならないことに触れているのが分かること。
このことは、甲48号証にフッ素の基準値が示されていること、および甲62号証に同じ「鉱さい」の分類である石綿含有廃棄物を溶融したことにより生じた「鉱さい」にフッ素の基準値が示されていることからも裏付けられる。基準値を超えるおそれのある「鉱さい」は特別管理産業廃棄物として処理しなければならない。
(5) 環境基本法は、その第1条で、環境の保全について、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とし、第16条で「政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする」と定め、第21条で大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染などについて規制の措置を講じなければならない、としている。土壌汚染については、廃棄物処理法や土壌汚染対策法などさまざまな法律が制定されていると思われ、これらの法律を選択適用するのではなく、同時に適用して生活環境保全に資するべきであること。
(6) 被告群馬県は、土壌汚染について土壌汚染対策法にしか触れようとしないこと。ところが、「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)」(甲58)を見ると、土壌汚染源たる廃棄物が土壌の上にあるときには間違いであることが分かる。
 「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)平成 24 年8月」の「第1章 土壌汚染対策法の概要」を見ると、「1.1.1.土壌汚染対策法の目的」に次の記述がある。
     (以下引用はじめ)
「 土壌汚染対策は、①新たな土壌汚染の発生を未然に防止すること、②適時適切に土壌汚染の状況を把握すること、③土壌汚染による人の健康被害を防止すること、の三つに大別される。これらのうち、新たな土壌汚染の発生を未然に防止するための対策は、有害物質を含む汚水等の地下浸透禁止(水質汚濁防止法(昭和45 年法律第138号 。 以下 「水濁法 」 という 。))、 有害物質を含む廃棄物の適正処分(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下 「廃棄物処理法」という 。))等により既に実施されている。 」
   (以上引用おわり)
被告は②適時適切に土壌汚染の状況を把握することについて何も行っていないばかりか、③のすでに起きてしまった土壌汚染による人の健康被害を防止すること、についてのみ主張を展開している。萩生川西地区に敷設してしまった土壌汚染源たる廃棄物について対策を怠っている。
(7) 廃棄物処理法第19条の5には、つぎのとおり述べてあること。
    (以下引用はじめ)
「 産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準(特別管理産業廃棄物にあつては、特別管理産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物保管基準)に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、都道府県知事は、必要な限度において、「処分者等」に対し、期限を定めて、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。 」
       (以上引用おわり)
   これは生活環境の保全を図るため都道府県知事に与えられた権限を定める趣旨である(甲56号証:平成29年3月31日環廃産発第13032993号「行政処分の指針」参照)。
(8) 本件農道舗装契約では、被告群馬県が本件舗装工事以前に、同じ場所で不法投棄された「工事名 萩生川西地区 区画整理補完3工事」で使用された有害物質を含む路盤材を、本来、原因者の費用で撤去させるべきところ、それを怠ったこと。しかもスラグを撤去しないまま、さらにその上に、有害物質に蓋をするためと称してアスファルトを施工したものであり、そもそも不要で違法な工事であった、として原告が住民訴訟を提起して係争しているものであること。(訴状「第5 本件契約の違法性(1)」参照)


 以下、「2(1) 求釈明事項」における裁判所の質問に対する被告の回答ごとに認否反論を行う。
 被告は,下層路盤材は基準値内であるが,風評被害を避けるためもあって補完工事をしたと主張しているが,「風評被害を防ぐことができるということは,仮に,下層路盤材から基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されるおそれがある場合であっても,その後アスファルト整備をすれば,環境基準を超えないことになる。」ことがその主張の前提でよいのか。
(2) 回答
  御庁が指摘される前提は,被告の主張と若干異なる。
  仮に,下層路盤材を敷設した地点の土壌から基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出される場合,その対処方法は,土壌汚染対策法によって決められることになる。そして,詳細は次項で述べるが,仮に,本件舗装工事に先立って下層路盤材を敷設した地点の土壌から基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されていたとしても,土壌汚染対策法により,本件舗装工事と同様の舗装工事が実施されていたものと認められる。このとき,下層路盤材を敷設した地点の土壌からフッ素や六価クロムを除去するわけではないので,その地点の土壌は基準を超えたままである。
第2 下層路盤材が敷設された地点の土壌が土壌汚染対策法所定の基準を超えていると仮定した場合と土壌汚染対策法の関係
1 土壌汚染対策法とは
   土壌汚染対策法は,「土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により,土壌汚染対策の実施を図り,もって国民の健康を保護することを目的」とする法律である(同法1条)。
2 土壌汚染の2つのリスク(なお,本項ないし5項については,乙21参照)
   土壌汚染は,それがあることによって当然に人の健康に影響を及ぼすわけではない。
 そのことを踏まえて,土壌汚染対策法は,上壌汚染による健康への影響を2つのリスクの観点から整理している。すなわち,1つは,①土壌に含まれる有害物質が地下水に溶出し,その有害物質を含んだ地下水を経口摂取するリスクであり,もう1つは,②有害物質を含む土壌を直接的に経口で摂取し,又は,その土壌が皮膚に接触することで皮膚から有害物質を摂取するリスクである。
 そして,土壌汚染対策法は,まず,前者のリスク除去の観点から,25の物質(これを「特定有害物質」という。土壌汚染対策法施行令1条)について土壌溶出量基準を定め(土壌汚染対策法施行規則31条1項,別表第3),他方,後者のリスク除去の観点から,その25の特定有害物質のうち9の物質を「第二種特定有害物質」という。土壌汚染対策法施行規則4条3項2号ロ)について土壌含有量基準を定めている(土壌汚染対策法施行規則31条1項,別表第4)。

 上記について、原告は次のとおり認否反論する。
 被告は、甲58号証の「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン (改訂第2版)」の「第1章 土壌汚染対策法の概要」「1.1.1.土壌汚染対策法の目的」において記述のある、「土壌汚染対策は、①新たな土壌汚染の発生を未然に防止すること、②適時適切に土壌汚染の状況を把握すること、③土壌汚染による人の健康被害を防止すること、の三つに大別される。」のうち、すでに起きてしまった③土壌汚染による人の健康被害を防止すること、にしか触れていない。
 これではあまりにも、恣意的な解釈であるという謗りを免れることはできない。
 本件農道には敷砂利工または下層路盤工として敷設されたブレンド骨材と称する資材の中に、土壌汚染源たる特別管理産業廃棄物と認定された有害スラグが存在し続けている。
 これから先、何年にも渡って起こる可能性を孕む新たな土壌汚染の発生を未然に防止するための対策は、有害物質を含む廃棄物の適正処分(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)等により実施しなければならない。土壌汚染から人の健康被害を防止するために、被告の土壌汚染対策法のみ適用を検討することは、間違いであり、ましてや風評被害を防止することなど到底できない不十分な対策であることは明らかである。
 なお,仮に本件農道舗装工事の施工前に検査を実施していたとすれば,土壌含有量の関係では,ブレンド骨材ないしそれを含めた表土の成分検査を実施することになるが,土壌溶出量の関係では,ブレンド骨材そのものの成分検査ではなく,ブレンド骨材の下にある土壌の成分検査を実施することになる。
 大同特殊鋼由来のスラグは、群馬県が「鉱さい」という廃棄物と認定している(甲57)。それによれば、①新たな土壌汚染の発生を未然に防止するため、まず廃棄物処理法第19条の5の措置命令により、毒があろうと無かろうと撤去すべきである。撤去した廃棄物について処分先を検討するに当たり「鉱さい」の成分検査をすることになる。
 その後、②適時適切に土壌汚染の状況を把握すること、③土壌汚染による人の健康被害を防止すること、のため被告の言うブレンド骨材の下にある土壌の成分検査を実施することになる。
 よく聞かれる話として、コンクリートを不法投棄した事例で、逮捕され、コンクリートを撤去させられ、廃棄物処理法施行令第7条に規定されている処理施設に処分させられているニュースを目にする。この場合、コンクリートに土壌汚染を誘発する毒などあるのであろうか。にもかかわらず、不法投棄されたコンクリートは強制的に撤去されるのが通例なのである。


3 土壌の汚染が基準値を超えていた場合
 土壌汚染の調査は,有害物質を使用していた施設の使用を廃止するときなどに行われるが(土壌汚染対策法3条など),調査の機序はさておき,調査結果が基準値を超えていたときは,都道府県知事は,その汚染が上記2つのリスクの観点から人の健康に被害が生じ,又は生ずるおそれがある場合には,その汚染区域を「要措置区域」に指定し(土壌汚染対策法6条),他方,人の摂取経路がなく,上記2つのリスクの観点から人の健康に被害が生ずるおそれがない場合には,その区域を「形質変更時要届出区域」に指定する(土壌汚染対策法11条)。

 原告は、被告の上記の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告も「土壌汚染の調査は,有害物質を使用していた施設の使用を廃止するときなどに行われるが(土壌汚染対策法3条など)」と主張している。被告は、土壌汚染対策法はすでに起こってしまった土壌汚染対策について調査が行われると認めているではないか。
 被告は、平成25年に施工されたばかりの萩生川西地区の農道の廃棄物による新たな土壌汚染対策はいかにするのか?「調査の機序はさておき」などと主張しているが、土壌汚染による生活環境を保全する気概など毛頭ないのではないか?ましてや食の安全が最優先される農道について風評被害などの心配を本当にしているのであろうか?原告には、被告の主張が、“臭い物には蓋”のため被告が犯した過ちを取り繕う言い訳のために、苦し紛れの風評被害を持ち出したとしか考えられないのである。


4 「要措置区域」に指定された場合の汚染の除去等の具体的措置
 「形質変更時要届出区域」に指定された場合は,その土地の形質を変更するときに,その変更をしようとする者が都道府県知事に形質変更の届出を行うなどすることになり(土壌汚染対策法12条),即時に汚染の除去等の措置を講ずる必要はないが,「要措置区域」に指定された場合には,即時に「汚染の除去等の措置」を講じなければならない(土壌汚染対策法7条)。
  そこで求められる「汚染の除去等の措置」は,具体的には,その区域の汚染の状況に応じて,地下水の水質の測定,原位置封じ込め,遮水工封じ込め,遮断工封じ込め,土壌汚染の除去,地下水汚染の拡大の防止,不溶化,土壌入換え,盛土,舗装,立入禁止などとされている(土壌汚染対策法施行規則36条,別表5)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 萩生川西地区の農道の本件農道舗装工事で、被告の主張するような「原位置封じ込め,遮水工封じ込め,遮断工封じ込め,土壌汚染の除去,地下水汚染の拡大の防止」が果たして可能なのか、原告は、はなはだ疑問を持つものである。
 萩生地区は斜面に位置しており、水は高い所から低い所に流れる性質があるので、たとえアスファルト舗装を施しても水が差し込み、有害スラグから新たな汚染が拡大するのではないか。
 また本件農道舗装工事は、アスファルトと土で構成されていて、アスファルト舗装の脇を土で擦り付けているだけである(甲60号証「舗装概念図と現場写真」)。これではブレンド骨材を覆い切れていない、土の部分から雨水が侵入し、ブレンド骨材の有害物質が新たな土壌汚染や地下水汚染を引き起こす恐れがある。また、盛り土で覆う場合は50cm以上の厚さが必要なはずだ(甲61号証)。


5 本件農道で仮に基準値を超えていた場合はどのような措置が取られるか
(1) 本件農道の下層路盤材の中に混在している鉄鋼スラグが含有していると認められる特定有害物質は,六価クロムとフッ素であるところ,この2つの物質は,いずれも第二種特定有害物質とされている(土壌汚染対策法施行令1条2号,21号,土壌汚染対策法施行規則4条3項2号口)。したがって,土壌溶出量と土壌含有量の両方が問題となる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告の主張の考え方自体が、根本的に間違いである。場所は周辺を農地で囲まれた農道なのである。新たな土壌汚染を防止するため、群馬県が「鉱さい」という分類の廃棄物に認定したスラグを含むブレンド骨材をまずは即刻撤去すべきである。その後直下の土壌について被告が主張する土壌汚染調査をすべきである。


(2) 土壌溶出量の点,すなわち,地下水へ溶出した特定有害物質の経口摂取のリスクの除去の点については,下層路盤材の下に位置する土壌を採取して成分検査を実施することになる。
  そして,その結果,基準値を超過していた場合には,次の手順として,土壌溶出量は地下水からの経口摂取のリスクを回避するためのものであることから,近隣の飲用の井戸の有無を確認し,飲用の井戸が存在する場合には,近隣の地下水質の調査を実施することになる(なお,調査を実施するかは飲用の井戸の有無によって決まるが,調査白体は飲用の井戸に限らず周辺の地下水質を把握するのに適切な井戸から試料を採取する。)。
  調査対象とすべきの範囲については,環境省が定めた「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)」(乙22)に準拠する。これによれば,六価クロムについては汚染地点から概ね500メートルの範囲,フッ素については概ね250メートルの範囲の井戸が対象となる(乙22・13頁)。
  そして,仮に飲用の井戸が500mの範囲内にあったとしても,地下水の検査結果により,基準値を超過していなかった場合は,土壌溶出量基準には適合していないけれども地下水に係る基準は超過していないということなので,「汚染の除去等のための措置」としては,地下水の水質測定を行うことになる(土壌汚染対策法施行規則別表5・1)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告の主張の考え方自体が、根本的に間違いである。場所は周辺を農地で囲まれた農道なのである。新たな土壌汚染を防止するため、群馬県が「鉱さい」という分類の廃棄物に認定したスラグを含むブレンド骨材をまずは撤去すべきである。その後直下の土壌や地下水について被告が主張する土壌汚染対策調査をすべきである。


 なお,これまで,大同特殊鋼株式会社から排出された鉄鋼スラグが混合されているブレンド骨材が使用された群馬県内の場所に関し,現時点までに,上記の基準に従って実施された飲用の井戸から採取した地下水の検査において,基準値を超過した地点はない。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 萩生川西地区の農道における本件農道工事は平成25年に施工されたばかりである、土壌汚染源たる「鉱さい」という廃棄物により、これから何年にもわたり土壌汚染が進行していく恐れがある。農道の付近に飲用の井戸がたまたま見当たらない、ということではなく、周辺一帯が農地であり、スラグから染み出した有害物質は、土壌を汚染するのみならず、農地に入り、作物に対しても悪影響を与えるのは必至である。
 現時点までに地下水の調査で基準値を超過した地点はないなどと悠長なことを言っていては、新たな土壌汚染の防止はおぼつかないし、県民の生活環境の安全・安心は担保できない。
 新たな土壌汚染を防止するため、被告は廃棄物処理法に則り対策をすべきである。

(2) 他方,土壌含有量の点,すなわち,直接的に経口や皮膚から摂取するリスクの除去の点については,盛土や舗装を行うことになる(同別表5・9)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告が行ったと主張するアスファルト舗装は、脇が土で擦り付けてあるだけである。この擦り付けた土は厚さが薄く、いずれ浸食によりブレンド骨材が露出する恐れがあるため、対策としてお粗末としか言いようがない。まずは廃棄物処理法に則ってブレンド骨材を適正に処分すべきである。


6 小活
 以上のとおり,仮に本件下層路盤材が敷設された地点の土壌が基準に適合していなかったとしても,土壌汚染対策法により,舗装工事が行われ,かつ,地下水の水質測定を行うことになるのであり,結局は,本件農道舗装工事と同じ結果になったのであり,本件農道舗装工事が最少経費最大効果の原則に合致していることは明らかである。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 「仮に本件下層路盤材が敷設された地点の土壌が基準に適合していなかった」場合、汚染源たる土壌の上に敷設されたブレンド骨材は環境基準に適合していないことを意味することになるから、廃棄物処理法に則り適切に処分しなければならない。


第3 平成29年3月7日付の被告第9準備書面に対する反論

 被告は冒頭で「平成29年1月20日の第8回口頭弁論調書の別紙1項の御庁からの求釈明について,下記のとおり回答する。」と述べている。

 今回、反論をするにあたり、まず触れておかなければならないことがある。
(1) 原告、被告の双方ともに、萩生川西地区の本件農道整備工事において、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ(以下「スラグ」という)がブレンド骨材と称して敷設されていることは、認めており、萩生川西地区の農道にはスラグが存在していることに争いは無いこと。
(2) このスラグには国土交通省の調査(甲第7号証)などにより、フッ素が環境基準を超えて含まれている可能性が極めて高いこと。そのため、このような建設資材を使用できるはずはないこと。日本工業規格JIS A5015では、環境安全性の考えが平成25年に導入され、本件農道に使用されたスラグは、工業規格にも違反するものであること。(原告準備書面(11)3頁参照)
(3) このスラグは、廃棄物の監督官庁である群馬県が平成27年9月11日「鉱さい」という分類の廃棄物と認定しており、その認定は平成29年3月29日現在、被告群馬県のホームページ上で確認できることから(甲57)、このスラグは、今なお廃棄物であること。
(4) 被告群馬県は、土壌汚染について土壌汚染対策法にしか触れようとしないこと。ところが、「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)」(乙22)を見ると、土壌汚染源たる廃棄物が土壌の上にあるときには間違いであることが分かる。
 「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)平成24年8月」の「第1章 土壌汚染対策法の概要」を見ると、「1.1.1.土壌汚染対策法の目的」(甲58)に次の記述がある。
     (以下引用はじめ)
「 土壌汚染対策は、①新たな土壌汚染の発生を未然に防止すること、②適時適切に土壌汚染の状況を把握すること、③土壌汚染による人の健康被害を防止すること、の三つに大別される。これらのうち、新たな土壌汚染の発生を未然に防止するための対策は、有害物質を含む汚水等の地下浸透禁止(水質汚濁防止法(昭和45 年法律第138号 。 以下 「水濁法 」 という 。))、 有害物質を含む廃棄物の適正処分(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下 「廃棄物処理法」という 。))等により既に実施されている。 」
   (以上引用おわり)
被告は②適時適切に土壌汚染の状況を把握することについて何も行っていないばかりか、③のすでに起きてしまった土壌汚染による人の健康被害を防止すること、についてのみ主張を展開している。萩生川西地区に敷設してしまった土壌汚染元たる廃棄物について対策を怠っている。

第1 求釈明(1)
 風評被害を避けるために工事をすれば環境上周辺住民の生活の安全が図られることになるのか。
 (回 答)
1 被告が本件農道舗装工事を施工した5か所の農道(乙19に①ないし⑤の番号を付しか5路線)は,舗装工事施工前は,鉄鋼スラグが含まれたブレンド骨材が露出した状態であった。
  そして,本件農道舗装工事の目的は,本件圃場整備事業の目的,すなわち,農業生産性の向上による農業振興と地域住民等の便益の増進であったが,これと共に,未舗装のままにしておくことによる地域住民等の不安や農作物の風評被害に波及することを未然に防ぐ目的も併有していた(被告の平成28年3月15日付け第3準備書面6ないし7頁)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告は、本件農道整備の目的について、言うことに事欠いて、本来の目的はどこへやら、とうとう「未舗装のままにしておくことによる地域住民等の不安や農作物の風評被害に波及することを未然に防ぐ目的も併有」とまで認めてしまっている。
 これは、ブレンド骨材が有害物質を含むおそれのある産業廃棄物であることを被告が知りながら、舗装を強行したことを意味する。このことは、はじめからスラグの不法投棄の隠蔽が主目的だったことを意味するものである。こうなると公務員に厳に課せられているコンプライアンス(法令順守)など、どこかに消し飛んでしまったことになる。
 甲5号証により群馬県が廃棄物と指摘した「鉱さい」を含むブレンド骨材を原因者の(株)佐藤建設工業の負担で撤去するよう、原告は、被告の事務所をわざわざ訪ね丁寧に説明したのに、被告はこれを無視し、本件舗装工事を挙行した。
 この甲5号証は表題こそ「廃棄物に関する指示書」として行政指導の形になっているが、その内容は廃棄物を適正処理するよう改善を指示しており、大同特殊鋼グループもこれを認めており、群馬県による行政処分が下されたと同等であると考えられ、萩生川西地区の農道も同様の改善を図らなければならない。
 風評被害を気にするのであれば、なぜ、原告の指摘を真摯に受け止め、廃棄物処理法に則り、撤去の上適正に処分させなかったのか?この指摘は県会議員も行っている(甲43号証)。
 環境基本法や廃棄物処理法、土壌汚染対策法など様々な法律があるが、被告群馬県には、これらすべての法律を駆使して、農地の安全を守らなければない責務があるはずだ。土壌汚染対策法だけにこだわる被告群馬県農政部の局所的かつ近視的な対策では風評被害は防げない。コンプライアンスを軽視したための、失策を犯したことは明らかである。もはや後戻りはできない。今後、ブレンド骨材を撤去の上、適正に処分することになれば、本件農道舗装工事は完全に無駄な支出となる。舗装をかける前に、原因者の大同特殊鋼らに撤去させれば、緊急な農道舗装工事費用の出費は不要であった。
 それどころか、原因者の大同特殊鋼が撤去すると申し出てきた場合、農道舗装部の除去工事の出費が必要となりかねない。この費用も被告が負担し、その費用を原因者である吾妻農業事務所長に請求しなければなるまい。


2 上記で防止を図った風評被害等は,具体的には,大同特殊鋼に由来する鉄鋼スラブが含まれているブレンド骨材が露出した状態になっているという噂により,萩生川西地区の農作物のイメージが傷付き,売上に悪影響が生ずるのではないかというものであった。
  上記の懸念を払拭し,風評被害等を避けるためには,ブレンド骨材を被覆すれば必要かつ十分であったことから,時期を早めて本件農道舗装工事を施工したものである。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 甲58号証である「土壌汚染対策法ガイドライン」の「1.1.1 土壌汚染対策法の目的」によると、まず「①新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ため廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することになる」と示されている。新たな土壌汚染が今後何年もかけて起こり得る可能性を孕んでいる以上、被告の主張する「風評被害等を避けるためには,ブレンド骨材を被覆すれば必要かつ十分」とは言えない。
 また、「風評被害等を避けるためには、時期を早めて本件農道舗装工事を施工」するのではなく、土壌汚染源たるブレンド骨材を原因者に撤去させた上、廃棄物処理法に則り適正に処分させるべきである。事実、国の独立行政法人水資源機構は、コンプライアンスに基づき、適正に撤去・処分の対策を行った(甲63号証)。


3 本件農道に敷設されたブレンド骨材は環境基準(なお,土壌汚染対策法所定の基準も同一)を超えていないので,もともと周辺住民の生活の安全が害されるものではないが,本件農道舗装工事により,周辺住民の生活の安全はより十全に図られることになったものといえ,また,仮に下層路盤材から基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されるおそれがある場合であっても,環境上周辺住民の生活の安全は図られたものといえる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告が“ブレンド骨材”と称する大同特殊鋼由来のスラグは、群馬県が廃棄物と認定しているものである(甲5号証・甲31号証)。環境基準を超えても超えていなくても、萩生川西地区の農道に敷設された状況は不適正であるので、原因者の負担で撤去の上、廃棄物処理法施行令第7条第1項のいずれかの処理施設に適正に処分しなければならない、
 その際、撤去した廃棄物について環境調査を行い、有害物質が基準値を超えて含まれていれば、同施行令第7条第1項第14号イに定める遮断型最終処分場に最終処分することになる。
 廃棄物の適正処分なくして環境上周辺住民の生活の安全は図られたものとは言えな
し、廃棄物が不適正に敷設されてあれば風評被害など到底防げない。


 なぜなら,一般に土壌が有害物質により汚染された場合,これが人の健康に影響を及ぼすリスクとしては,①土壌に含まれる有害物質が地下水に溶出し,その有害物質を含んだ地下水を経口摂取するリスクと,②有害物質を含む土壌を直接的に経口で摂取し,又は,その土壌が皮膚に接触することで皮膚から有害物質を摂取するリスクがあるところ(被告の平成28年12月27日付け第8準備書面4ないし5頁参照),本件農道舗装工事によってブレンド骨材を被覆することにより,上記②のリスクを除去することができたからである。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告が施したアスファルト舗装は、有害スラグを完全に覆い切れておらず、脇を盛り土で覆っている(甲60号証)。
 被告が示す土壌汚染対策法ガイドラインとは、土壌汚染対策法が平成15年2月15日から施行されることに対応して、平成15年2月4日付けで、環境省環境管理局水資源部長が全国の都道府県と政令指定都市に対して示した通達で、正式名称「土壌汚染対策法の施行について」(甲61号証)のことと思われる。これには。土壌汚染対策法施行規則を補うため、詳細な解釈基準が盛り込まれているが、これを読むと、盛り土で覆う場合は50㎝とある。
 ところが、被告がガイドラインどおりに対策を講じたとしているが、現場の舗装工事直後の状況を確認すると(甲60号証)、とうてい50cmの厚みがあるとは思えない。被告の主張は、後付けの言い逃れであることは明らかである。
 舗装脇は斜めになっており、雨水によって崩れやすく、有害スラグが容易に露出することになってしまう。そのため、直接的に経口摂取のリスクが増えることや、汚染された滲出水が隣接する周囲の田畑等農地に入り込むことで、食の安全・安心を害することになる。


 ただし,本件農道舗装工事では,上記①のリスクを除去することはできないから,地下水の汚染に関しては別途の考慮が必要ではあるが,被告の平成28年12月27日付け第8準備書面・7頁で述べたとおり,これまで,大同特殊鋼株式会社から排出された鉄鋼スラブが混合されているブレンド骨材が使用された群馬県内の場所に関し,地下水汚染が確認された地点はない。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 この大同特殊鋼由来のスラグは、廃棄物の監督官庁である群馬県が「鉱さい」という分類の廃棄物と認定しており(甲31号証)、その認定は平成29年3月29日現在、群馬県のホームページにより、確認できることから(甲57号証)、今なお廃棄物である。
 この廃棄物認定の内容を注意深く読むと「ふっ素の土壌環境基準等が設定されて以降、大同特殊鋼(株)渋川工場から製鋼過程の副産物として排出された鉄鋼スラグは、土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり、」と記されており、今後の土壌汚染のおそれに言及している。
 他の場所で現時点での地下水汚染が確認できなくとも、本件農道に汚染源たる廃棄物をそのまま放置すれば、被告の言う上記①のリスクは、さらに高まると言える。
「土壌汚染対策法ガイドライン」の「1.1.1 土壌汚染対策法の目的」(甲58)によると、まず「①新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ため廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することになる」と示されている。原告は納税者・県民として、被告には、新たな土壌汚染を一刻も早く防止していただき、水質汚染のリスクを減らしていただきたいと強く要請する。


第2 求釈明(2)
 土壌汚染対策法により行う舗装工事と,本件舗装工事が同等あるいは同一の工事内容なのか。
 (回 答)
1 被告の平成28年12月27日付け第8準備書面7頁で述べたとおり,仮に本件下層路盤材が直接摂取のリスクの点,すなわち,土壌含有量の点て基準に適合していなかった場合は,土壌汚染対策法により,盛土や舗装が求められる(土壌汚染対策法施行規則別表5・9項)。
 そして,ここにいう「舗装」の仕様については,同規則別表6・8項により,「イ 当該土地のうち基準不適合土壌のある範囲を,厚さが10センチメートル以上のコンクリート若しくは厚さが3センチメートル以上のアスファルト又はこれと同等以上の耐久性及び遮断の効力を有するもの・・・・により覆うこと。」,「ロ イにより設けられた覆いの損壊を防止するための措置を講ずること。」が必要とされる。
 上記の仕様の更に具体的な説明は,乙22号証として一部抜粋部分を提出済みの「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)」の舗装の項(乙24)で明らかにされている。そこでは,アスファルト舗装については,最低3センチメートルの肩厚とされ(乙24・403頁),更にその下の路盤については,歩道程度の用途であれば最低10センチメートルの肩厚とされる(乙24・405頁)。
2 他方,本件農道舗装工事の仕様は,アスファルト舗装厚は3センチメートルであり,その下の下層路盤は,既設の下層路盤材(鉄鋼スラブを含んだもの)5センチメートル厚の上に補足材として下層路盤材(鉄鋼スラブを含まないもの)を10センチメートル厚で敷設しており,合算して15センチメートル厚となっている。
 一般的に農道のうち支道と耕道については,アスファルト舗装厚3センチメートル,下層路盤材厚15センチメートルで設計されており,舗装の強度としてはこれで十分である。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 乙22号証として被告が提出済みの「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)」の抜粋と支道27号の舗装の様子が分かる現場写真を見ると(甲60号証)、まず写真から、被告が主張する「既設の下層路盤材(鉄鋼スラブを含んだもの)5センチメートル厚の上に補足材として下層路盤材(鉄鋼スラブを含まないもの)を10センチメートル厚で敷設しており,合算して15センチメートル厚となっている。」部分をアスファルト舗装が覆い切れていない。またアスファルト舗装の脇は盛り土であるが、アスファルトと盛り土の厚みは同じに見える、つまり3cm程度の厚みである。他方、被告が示すガイドラインによると50cmとある。
 被告はこの食い違いの理由説明について、「舗装の強度としてはこれで十分である。」と強度の話に恣意的にずらし込んでいるが、被告が農道舗装工事の目的の一つとしている、風評被害を防ぐためには、盛り土3cmはあまりにもお粗末ではないか。


3 したがって,本件農道舗装工事の仕様は,土壌汚染対策法及び同法施行規則により求められる舗装の仕様を充たしており,仮に本件下層路盤材が土壌含有量の点て基準に適合していなかったとしても,本件農道舗装工事をもって土壌汚染対策法により求められる措置と同等の措置が講じられたものとみなされる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 有害スラグを完全に覆わないアスファルト舗装、そして薄い盛り土による舗装により、土壌汚染対策法及び同法施行規則により求められる舗装の仕様を充たしているのか、被告の土壌汚染対策法とやらに基づく措置については、原告としてはなはだ疑問である。原告としては、こんな対策で風評被害が防げるとは、到底思えない。


第4 スラグの撤去工事について

 スラグ撤去に極めて消極的な被告群馬県と異なり、きちんとスラグを撤去した役所の事例を次に紹介する。
 被告が東吾妻町萩生川西地区の農道の工事現場でスラグを含む路盤材が敷かれたことを知りながら、折からスラグ問題が浮上したことから、これを隠蔽するために、2014年6月11日に、敷砂利の上に舗装をかけた農道舗装工事の入札を実施したが、奇しくもその同じ日に、水資源機構群馬用水管理所は、路盤として大同特殊鋼由来のスラグを使っていた群馬用水沿いの管理道路計1945メートルと、資材置き場や駐車場など計1340平方メートルを工事し、スラグを撤去すると発表した。
 しかも、大同特殊鋼側は、応分の負担額を支払う意向を示し、原告らは事実確認してはいないものの、撤去費用は全額、大同特殊鋼側が負担したものと思われる。なお、水資源機構群馬用水管所が実施するスラグの撤去作業は、管理道路が赤城山南面を中心とした前橋市の11カ所と、榛東村の1カ所。資材置き場や駐車場などが前橋市の3カ所と渋川市の1カ所で、スラグが使われていた全16カ所を対象としていた(甲63)。
 甲63を見るとわかるとおり、水資源開発機構はそのホームページ上に、次のような声明を発表した。
        (以下引用はじめ)
    (鉄鋼スラグの撤去工事について)
○独立行政法人水資源機構では、当機構が管理する群馬用水幹線水路沿いの管理用道路等の鉄鋼スラグに、基準値を超えるふっ素等が含まれることについて、3月27日に緊急調査結果を公表したところです。その後、当機構ではバリケードにより立入を制限するとともに、群馬県等の環境部局の助言を踏まえ、その対応について主務省、利水関係者等と調整してまいりました。
○その結果、今般、これらの鉄鋼スラグについて、
①水道用水等の水源として利用される用水路等の直近に基準値を超えるふっ素等を含む鉄鋼スラグが使用されていること、
②群馬用水を使用している水道事業者等から強い撤去要望があること、等の状況を踏まえ、全量を撤去することとしました。
○撤去工事は、すべての鉄鋼スラグ(16箇所、別紙参照)を対象とするものであり、6月中に工事契約の手続きを開始し、概ね半年程度で工事を完了する予定としています。撤去した鉄鋼スラグについては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に従い適正に処理いたします。また、管理用道路等については、アスファルト舗装で復旧します。
平成26年6月11日独立行政法人 水資源機構 群馬用水管理所
発表記者クラブ:刀水クラブ、テレビ記者会
問い合わせ先:独立行政法人 水資源機構 群馬用水管理所 所長代理 林 (はやし)
住 所:群馬県前橋市古市町386
電 話:027(251)4266
        (以上引用おわり)
 このように、独立行政法人水資源機構では、冒頭に、「その後、当機構ではバリケードにより立入を制限するとともに、群馬県等の環境部局の助言を踏まえ、その対応について主務省、利水関係者等と調整してまいりました。」(下線部は原告が記入)と言い切っている。なぜ被告は、この時と同様な措置を取ろうとしないのか、それとも取れないのか? その理由として、大同特殊鋼への何らかの配慮をする必要があるのか?
                      以上
**********

 これに加えて、鑑定申立書の補充書を次のとおり提出しました。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・その2に続く】

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安中市の0.5%が中国資本に渡る安中メガソーラー計画…信用情報不開示の異議申立てを棄却した群馬県の売国心

2017-03-29 23:39:00 | 安中市内の大規模開発計画
■親中派の朝日新聞と関係の深い日刊スポーツ新聞社の子会社が管理をしていたゴルフ場計画跡地が、中国系資本の息のかかったタックスヘイブンのペーパー会社が設立した特別目的会社に売却され、現在、関東地方で最大級の規模のメガソーラー施設建設のため、安中市東部の大谷・野殿地区の里山一帯が大規模に造成工事中です。100数十億円とみられるこのメガソーラー事業の資金として、いったいどんな金融機関がどのような条件で資金協力をしているのか等を確認し、中国の脅威から我が国の国土の保安を守る必要があると考えた当会では、開発許認可権をもつ群馬県に対して情報開示請求をしてきました。ところが肝心の開発事業者の財務・信用情報等は黒塗りや除外されてしまいました。

3月28日付けで簡易書留で郵送されてきた公文書不開示審査請求に対する裁決書謄本を同封した封筒。

 そのため当会は2016年8月10日に審査請求を申立てました。このほど、7か月半ぶりに群馬県から審査会からの答申書の写しが3月22日付けで当会に送られてきました。大局を見失い、目先の行政の事務事業を無難に遂行することで、自らの保身を図ろうとするあまり、中国系資本による我が国の国家安全と国土保安を揺るがしかねない開発事業を幇助するという体たらくです。群馬県には国家の安全保障を憂える職員が不在であることがこれではっきりしました。

 本来は、こうした不審や外資による水源地帯の広大な土地買収には、行政がバリアーとなって許認可の際に、国家や国土の安全や健全な保全の観点から厳しく査定すべきです。そして、中国系資本による本件事業に関連した重要情報を事業地周辺の地権者や水利権者、さらには下流の河川沿線の住民らに積極的に公開しなければならないはずです。にもかかわらず、中国系資本に融資をした金融機関の情報や、キャッシュフローを住民から隠すことを正当化しているのです。これでは、我が国が中国の属国になるのも時間の問題です。

 いかに群馬県の公務員が、不作為=不開示により我が国の尊厳を棄損しているか、とくとご覧ください。とくに当該箇所を赤字で示してみました。

*****裁決書の送り状*****PDF ⇒ 20170328_saiketsusho_pdf.pdf

                        県セ第40-89号
                        平成29年3月28日

 小川 賢 様

                   群馬県知事 大渾 正明
                    (県民センター)

    平成28年8月10日付け審査請求に対する裁決書謄本の送付について

 あなたから平成28年8月10日に提起のあった審査請求について、別添謄本のとおり裁決をしたので送付します。

               担当:生活文化スポーツ部県民セッター
                  情報公開係
               電話:027-226-2271(ダイヤルイン)

*****裁決書*****PDF ⇒ 20170328_saiketsusho_pdf.pdf

<P1>
           裁   決   書

                審査請求人
                   住所 群馬県安中市野殿980番地
                   氏名 小川 賢
                処 分 庁 群馬県知事

 審査請求人が平成28年8月10日に提起した処分庁による群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号)第18条第1項の規定に基づく公文書部分開示決定に対する審査請求について、次のとおり裁決する。

            主    文

1 本件審査請求に係る処分のうち、「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」中の各業務委託契約等の相手方企業名並びに「工程表」中の連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)住所及び氏名欄に記載された情報(個人の氏名を除く。)を非開示とした部分を取り消す。
2 本件審査請求のその余の請求を棄却する。


第1 事案の概要
1 公文書開示請求
 審査請求人(以下「請求人」という。)は、群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「処分庁」という。)に対し、平成28年6月8日付けで、「現在、安中市岩野谷地区の水源地帯約140ヘクタールで、日刊スポーツによるゴルフ場計画跡地に、事業者である安中ソーラー合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このう。も4月26日付で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。①林地開発許可申請書 ②地番明細表 ③開発行為に関する計画書(I)及び(II) ④工程表 ⑤申請書の信用及び資力に関する書類 ⑥保証書又は工事誓約書 ⑦他法令の許認可申請又は許認可


<P2>
書の写し ⑧地域住民又は市町村の長との協定 ⑨残置森林等の保全に関する協定の締結について ⑩残置森林等の保全に関する協定書 ⑨当該開発行為により影響を受ける者の同意書 ⑩土地所有者等関係権利者の同意書 ⑩隣接土地所有者の同意書 ⑨各構造物の安定計算書、度量計算書及び調査試験報告書等」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 開示決定等の期間の延長
 処分庁は、平成28年6月21日、本件請求に対して開示決定等の期間を延長し、その理由を次のとおり付して、請求人に通知した。
(延長の理由)
  開示請求文書の一部に群馬県情報公開条例(以下、「条例」という。)第14条に規定する非開示情報が存在し、開示請求文書が大部(約5、500頁)となるため、非開示部分を特定するのに相当の時間を要する(条例第13条による第三者保護に関する手続(意見照会)を実施するか否かの判断を含む。)ほか、他の事務(当該開示請求文書等の審査を含む)による業務繁忙により、条例第19条第1項の規定による決定期間内に開示決定が困難であり、開示決定を行うには、条例第19条第2項の期間延長期限程度までの期間を要すると見込まれるため。
3 処分庁の決定
(1)請求人は、平成28年6月30日、処分庁に対して、本件請求を次のとおり補正するとして「公文書開示請求書(補正書)」を送付した。
(開示を請求する公文書の内容又は件名〈補正後〉)
  「現在、安中市岩野谷地区の水源地帯約140ヘクタールで、日刊スポーツによるゴルフ場計画跡地に、事業者である安中ソーラー合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち4月26日イ寸で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。
〈最優先で開示を請求するもの〉
  ①林地開発許可申請書 ④工程表 ⑤申請書の信用及び資力に関する書類 ⑧地域住民又は市町村の長との協定 ⑨残置森林等の保全に関する協定の締結について ⑩残置森林等の保全に関する協定書 ⑩隣接土地所有者の同意書〈それ以外のもの〉 ②地番明細表 ③開発行為に関する計画書(I)及び(II) ⑥保証書又は工事誓約書 ⑦他法令の許認可申請又は許認可書の写し ⑨当該開発行為により

<P3>
影響を受ける者の同意書 ⑩土地所有者等関係権利者の同意書 ⑨各構造物の安定計算書、度量計算書及び調査試験報告書等
(2)処分庁は、平成28年7月1日、本件請求に係る公文書のうち、その一部を「現在、安中市岩野谷地区の水源地帯約140ヘクタールで、日刊スポーツによるゴルフ場計画跡地に、事業者である安中ソーラー合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち4月26日付け[原文まま]で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。〈最優先で開示を請求するもの〉①林地開発許可申請書 ④工程表 ⑤申請者の信用及び資力に関する書類 ⑧地域住民又は市町村の長との協定書 ⑨残置森林等の保全に関する協定の締結について ⑩残置森林等の保全に関する協定書 ⑩隣接土地所有者の同意書」(以下「本件公文書1」という。)であると判断し、公文書部分開示決定(以下「本件処分1」という。)を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を別表1のとおり付して、請求人に通知した。
(3)処分庁は、平成28年8月5日、本件請求に係る公文書のうち、その一部を「現在、安中市岩野谷地区の水源地帯約140ヘクタールで、日刊スポーツによるゴルフ場計画跡地に、事業者である安中ソーラー合同会社がメガソーラー施設設置計画を進めているが、このうち4月26日付け〔原文まま〕で群馬県に提出された林地開発許可申請に関する次の情報。〈それ以外のもの〉②地番明細表 ③開発行為に関する計画書(I)及び(II) ⑥保証書又は工事誓約書 ⑦他法令の許認可申請又は許認可書の写し ⑨当該開発行為により影響を受ける者の同意書 ⑩土地所有者等関係権利者の同意書 ⑩各構造物の安定計算書、土量計算書及び調査試験報告書等」(以下「本件公文書2」という。)であると判断し、公文書部分開示決定(以下「本件処分2」という。)を行い、当該公文書の一部を開示しない理由を別表2のとおり付して、請求人に通知した。
4 審査請求
 請求人は、処分庁に対して、本件処分1を不服として平成28年8月10日付けで審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
5 群馬県公文書開示審査会への諮問
 処分庁は、条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成28年12月22日、本件審査請求事案の諮問を行った。

<P4>
6 諮問に対する審査会の答申
 審査会は、処分庁に対して平成29年3月22日、後記第3の1(3)のとおり答申した。

第2 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求書における請求人の主張要旨
(1)非開示情報該当性について
 ア 「④工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所・氏名が黒塗りされているが、資本金1円の安中ソーラー合同会社の代表社員であるGDH社はタックスヘイブンで知られる米国デラウェア州ウィルミントン市で設立登記をしているペーパー会社であり、開発事業者の得体は非常に怪しいので、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。
 イ 「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」中、各業務委託契約等の相手方企業名が黒塗りされているが、開発事業者の得体は非常に怪しいので、きちんと事業スキームを見極めることは、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。
 ウ 「融資意向表明書」中、金融機関名、当該金融機関印影及び融資極度額が黒塗りされているが、開発事業者の得体は非常に怪しいので、きちんと融資が履行なされるのかどうかを見極めることは、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。
(2)本件公文書1の特定について
 森林法で定めた申請書類である「申請者の信用及び資力に関する書類」として「20年間のキャッシュフロー表」が含まれていない。これが不存在なのか、不開示なのかは請求人として判断できない。もし不存在であるとすれば、森林法で定めた「申請者の信用及び資力に関する書類」として、事業者に提出を求めていないことが想定されるが、開発事業者の得体は非常に怪しいので、きちんとこの事業のキャッシュフローを提出させてそれを見極めることは、この事業が信用のおける開発事業者によって実施されることが担保されているかを確認するために必須である。
2 弁明書における処分庁の主張要旨

<P5>
(1)非開示情報該当性について
 ア 「工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所・氏名及び「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」中の各業務委託契約等の相手方企業名について、取引先を示す情報であるが、法人の事業活動における取引先は、法人が自らの事業活動を適切かつ有効に実行するために開拓した取引相手であり、その情報は法人の内部管理情報であって、一般的には公にすることを予定していないことから、公にすることにより、当該法人が取引先からの信用を失う、当該法人の事業戦略が競争同業者に知られるなど、権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものである。
 イ 特定の法人がどのような金融機関からどのような融資を受ける予定であるかなどの金融取引に関する情報は、法人の事業の中でも取り分け重要かつ機微な情報で、事業の根幹に触れる秘匿されるべき情報である。
 ウ 融資限度額は、金融機関の与信判断の度合いを端的に示すものである。また、これは、申請者の事業戦略の深度・熱度を示すものといえ、これが他の同種競争企業に公にされることになると、借入元である申請者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。(当会注:この借入元は中国系資本の影響が請けている可能性がある)
 エ 金融機関の法人印影は、当該金融機関名を端的に示すものであるので、上記の理由により秘匿すべきものであると同時に、記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであって、当該法人において、むやみに公にしていないものである。これが公にされた場合には印影が偽造され悪用されることも考えられるなど、当該法人の正当な利益が害されるおそれがあるものである。
(2)本件公文書1の特定について
 ア 本件請求の内容から、請求に係る情報の内容が、群馬県林地開発許可申請要領(平成12年3月23日付け森第212号、各林業事務所長あて林務部長通知。)に定める「I 申請に必要とする書類」のうち「許可申請」に必要とされる書類を全て網羅していることから、安中ソーラー合同会社による平成28年4月15日付け申請の林地開発許可申請書の一切の書類と特定した。
 イ 請求人から、「最優先で開示を請求するもの」として項目を指定し、決定期間の延長に関わらず、早急に開示すべき旨の申し出がされたことから、処分庁は、

<P6>
「最優先で開示を請求するもの」については、申請要領に規定する該当文書であると特定した。
 ウ 「20年間のキャッシュフロー」について、請求人は「申請者の信用及び資力に関する書類」に存在すべきとするが、当該書類については、林地開発許可申請書中の「開発行為に関する計画書(1)」の「事業経費内訳書」を補足する書類として「安中太陽光発電所 事業計画(20年間のキヤツシュフロー)」として添付されている。
 エ 「20年間のキャッシュフロー」は、請求人が「それ以外のもの」とした書類の一つで、平成28年8月5日付け森第407-6号で公文書部分開示決定をしている。
 オ 「20年間のキヤツシュフロー」に関連して審査請求が具体的に行われていないので、本弁明書においては、当該書類に一部非開示部分はあるものの、当該非開示部分においての弁明等は行わないものとする
3 反論書における請求人の主張要旨
(1)非開示情報該当性について
 ア 「工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所・氏名及び「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」の各業務委託契約等の相手方企業名について、この事業計画がどのような資金で作られるのかを知るのは、事業の実現性、妥当性、健全性、信頼性等を計るために不可欠な情報である。
 イ 周辺を外資系特別目的会社である開発事業者が買い占められることになり、事業の実現性等を知ることは、土地所有者の生活や財産の保護の観点から、公にしてもらうことが必要不可欠である。
 ウ この事業計画のエリアは、周囲に耕作地や居住地が点在しており、ここから流れ出す水は水境川と岩井川となって下流に流下している。この事業がきちんとした資金計画に基づいているかどうかを知ることは、水害や獣害など、地元住民が最も懸念している災害事件が発生した場合でも、きちんと対応能力があるかどうか、関係住民らの生命、健康、生活及び財産保全のための資金面でのチェックは不可欠だからである。よって、条例第14条第3号ただし書に該当するため、開示すべき情報である。
 エ 処分庁は、事業主体の安中ソーラー合同会社の「取引先」や「競争同業者」

<P7>
とはいったいどれを指すのか明らかにされたい
 オ 処分庁のいう当該法人の事業戦略の機密保持の重要性よりも、この得体の知れない外資法人によるメガソーラー開発事業によって、地元住民等の生命、健康、財産の保護の方が、比較衡量的にけるかに重要であると考えている。
 カ 「融資意向表明書」中の金融機関名、当該金融機関印影及び融資限度順について、得体の知れない外資系の特別目的会社に対して、どのような金融機関が何を担保に融資をしたのかを確認することは、県民等の生命、健康、財産の保護の観点等から重要であり、条例第14条第3号ただし書に該当する。
 キ 得体の知れない外資系の合同会社が提出した文書が偽造書類でないことを証するためにも、金融機関の法人印影の開示は条例第14条第3号ただし書に則って、正しく判断されなければならない
 ク 処分庁が当該法人のことを「我が国において適法な法律的手続により設立された法人」であり、得体の知れた会社と判断したのであれば、当然、当該情報は公開されるべきである。なぜなら、日本の社会で認知された法人であれば、当然、法人情報は明らかにされるべきであり、とくに今回のような水源地域における大規模な開発事業の場合には社会的責任を伴うことから、当該情報の秘匿に行政である処分庁が加担することはあってはならないからである。
 ケ ただちに、当該事業情報を全面的に開示することにより、今回の開発事業者の素性を広く世間に知らしめ、誰がどれほどの融資をこのペーパー会社に対して行ったのかを明らかにし、ひろく世論の判断を仰ぐ必要があると考えられる。
(2)本件公文書1の特定について
 平成28年8月5日付け森第407-6号公文書部分開示決定通知書には、「3-1開発行為に関する計画書中(1)中、①所要経費(総事業費)、②工事施工者 住所・氏名、③事業経費内訳書金額及び事業計画(20年のキャッシュフロー)金額」について、条例第14条第3号イ該当として別表2のとおり記してあった。
 このため、仮に開示を受けたとしても、黒塗りになることから、この情報についても不開示情報として扱われることは誰の目にも明らかであるとして、請求人は8月19日の開示手続に応ずる意義を見出せなかったのである。この件も今回の審査請求に含まれなければならない。
4 審査会において処分庁が改めて開示することとした情報
 処分庁は、審査会での口頭説明において、次の情報については、事業主等が開催

<P8>
 した地元説明会等において、当該相手方企業名が明らかにされたこと等から、非開示とする必要が消滅したとして、改めて開示することとすると述べた。
(1)「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」中の各業務委託契約等の相手方企業名
(2)「工程表」中の連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)住所及び氏名欄に記載された情報(個人の氏名を除く。)

第3 裁決の理由
1 審査会の判断
 本件審査請求に対する審査会の判断(平成29年3月22日付け答申第181号)は次のとおりである。なお、以下において実施機関とは処分庁のことをいう。

(1)争点1(非開示情報該当性について)
 ア 本件審査請求について
   本件請求は、本件公文書1及び本件公文書2の開示を求めるものであるが、実施機関は本件公文書1について、その一部を条例第14条第2号及び第3号イに該当するとして、部分開示とする本件処分1を行った。これに対し、請求人は条例第14条第3号イによる非開示部分の開示等を求めているが、実施機関は、前記第2の4のとおり、当審査会における実施機関の口頭説明において、非開示部分のうち、「工程表」中の「連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所及び氏名」の欄に記載された情報(個人の氏名を除く。)及び「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」の各業務委託契約等の相手方企業名は開示するものの、その余の非開示部分(以下「本仲井開示維持部分」という。)はそれを維持するとしていることから、以下、本件公文書1を実際に見分した結果を踏まえ、本件非開示維持部分であって請求人が開示を求めると主張する部分の非開示情報該当性について検討する。
 イ 個人の氏名について
(ア)「工程表」中の「連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所及び氏名」の欄には個人の氏名が記されているが、当該個人は林地開発許可申請書を作成した法人における担当者であることが認められる。
(イ)本件処分1は、当該個人の氏名も含めてこの連絡先の住所及び氏名欄に記

<P9>
された情報の全てを条例第14条第3号イに該当すると判断されたものであるが、前記第2の4(2)のとおり個人の氏名以外を開示するという判断に伴い、当該個人の氏名については「特定の個人を識別することができる情報として条例第14条第2号に該当する」として、実施機関はなお非開示を維持すると主張するため、当該情報の条例第14条第2号該当性について判断する。
(ウ)林地開発許可申請書を作成した法人の担当者の氏名は、特定の個人を識別することができる情報であると認められる。また、当該情報は法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報とはいえないことから条例第14条第2号ただし書イに該当せず、その性質上、同条第2号ただし書口及びハにも該当しない。
(エ)したがって、「工程表」中の「連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所及び氏名」の欄にある個人の氏名は、条例第14条第2号に該当し非開示とすることが妥当である。
ウ 金融機関名並びに印影及び「融資極度額」について
(ア)「申請者の信用及び資力に関する書類」中の「融資意向表明書」には、金融機関名並びに印影及び「融資極度額」が記されている。実施機関は、当該情報について「開発事業に関する通常一般に入手できない情報であり、公にすることで、当該申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」と主張するため、条例第14条第3号イの該当性について判断する。
(イ)この「融資意向表明書」は、特定の金融機関が特定の条件を前提として、安中ソーラー合同会社に対して、記載された概要による融資を行う意向であることを表明したものであることが認められる。
(ウ)一般に、特定の法人がどこの金融機関からどのような融資を受けるかなどの金融取引に関する情報は、当該法人の事業に関する情報の中でも重要かつ機微な情報であって、事業の根幹に触れる秘匿されるべき情報であると考えられる。そして、この特定の法人名を既に明らかにしている以上、当該取引先金融機関名を公にすることにより当該特定の法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。
(エ)次に、金融機関の印影であるが、当該印影は当該金融機関を識別することができる情報であると認められる。そのため、上記(ウ)と同様に、公にす

<P10>
ることにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。
(オ)次に、「融資極度額」であるが、一般に、特定の法人がどこの金融機関からどのような融資を受けるかなどの金融取引に関する情報は、当該法人の事業に関する情報の中でも重要かつ機微な情報であって、事業の根幹に触れる秘匿されるべき情報であると考えられる。そして、この特定の法人名を既に明らかにしている以上、「融資極度額」を公にすることにより当該特定の法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められる。(※当会注:特定の法人とは中国系資本の影響下にあるのに、そのことを考慮しようとしない)
(カ)一方、請求人は、「融資意向表明書」の金融機関名並びに印影及び「融資極度額」について条例第14条第3号ただし書に該当する旨を主張するため、その点について判断するが、当該規定は、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときにはこれを開示する趣旨である。そこで「融資意向表明書」の金融機関名並びに印影及び「融資極度額」について考えるが、これらの情報を公にする場合、安中ソーラー合同会社に著しい不利益を甘受せしめることになると判断されるため、そうである以上、公にするときは、人の生命、健康等に対する危険又は損害が現実に発生している場合又は将来それらが侵害される「おそれ」があり、その「おそれ」が法的保護に値する蓋然性が高い場合に限定されるものと解する。 しかしながら、現時点において危険又は損害が発生していることは確認できず、また、請求人の主張する「おそれ」は法的保護に値する蓋然性があるとまではいえず、さらに、審査会もそれを見出すことはできなかった。そのため、当該情報は、条例第14条第3号ただし書に該当しないと判断する。
(キ)したがって、「融資意向表明書」の金融機関名並びに印影及び「融資極度額」は、条例第14条第3号イに該当し、非開示とすることが妥当である。
(2)争点2(本件公文書1の特定について)
 ア 請求人は、審査請求書において、「森林法で定めた申請書類である『申請者の信用資力に関する書類』として、20年間のキヤツシュフロー表が含まれていない。これが不存在なのか、不開示なのかは請求人として判断できない。」と主

<P11>
張する。これに対して、実施機関は、当該書類(20年間のキャッシュフロー)については、「林地開発許可申請書中の『開発行為に関する計画書(1)』の『事業経費内訳書』を補足する書類として『安中太陽光発電所 事業計画書(20年間のキヤツシュフロー)』として添付されている。当該書類については、平成28年6月30日付け公文書開示請求書(補正書)中の『それ以外のもの』とした書類の一つで、平成28年8月5日付け‥・公文書部分開示決定通知書により‥・審査請求人に通知している」と主張する。
イ そこで、それぞれの主張を踏まえた上で本件処分1で本件公文書1を特定したことの妥当性について判断する。実施機関は、「20年間のキャッシュフロー」が「開発行為に関する計画書(1)」の「事業経費内訳書」を補足する書類として添付されているものであると説明するため、当審査会事務局職員をして実施機関に確認させたところ、その説明のとおりに「20年間のキャッシュフロー」が綴られていたということであった。そのため、「20年間のキヤツシュフロー」を請求人が最優先で開示を求めるもの以外のものとして本件処分2で特定したことに、特段不合理な点は認められない
ウ また、本件審査請求日は平成28年8月10日付けのものであるが、本件処分2は、それ以前の平成28年8月5日に決定されたものであることから、仮に、請求人の主張が「20年間のキヤツシュフロー」を本件処分1に含めて特定するべきであったというものだとしても、審査請求日時点において本件処分2が既になされていることを踏まえると、本件審査請求書における請求人の「20年間のキャッシュフロー」が不存在なのか不開示なのか請求人として判断できないという主張には理由が認められない
エ したがって、本件処分1で「20年間のキャッシュフロー」を特定しなかったことに問題は認められず、本件処分1で本件公文書1を特定したことは妥当である。
オ なお、請求人は、反論書において、「平成28年8月5日付け・・・公文書部分開示決定通知書には、‥・(20年のキャッシュフロー)金額‥・について、・‥【情報公開条例第14条第3号イ該当】・‥と記してあった。このため、仮に開示を受けたとしても、黒塗りになることから、この情報についても不開示情報として扱われることは誰の目にも明らかであるとして、請求人は8月19日の開示手続に応ずる意義を見出せなかったのである。‥・従って、この件も今回

<P12>
の審査請求に含まれなければならない。」と主張する。この点について当審査会は、請求人が作成した審査請求書における「2 審査請求に係る処分の内容」の記載が本件処分1のみを特定させているものと明確に認めることができることから、本件処分1の妥当性についてのみ審査したものである。
(3)結論
 以上のことから、「別表1に掲げる文書につき、その一部を非開示とした決定について、実施機関がなお非開示とすべきとしている部分は、非開示とすることが妥当である。また、本件処分1で本件公文書1を特定したことは妥当である」と判断する。
 また、請求人はその他種々主張するが、本答申の判断を左右するものではない(※当会注:この「縷々主張する」という「縷々」は、まさに中国系資本による大規模土地取得から派生するさまざまな生活環境上、また国家安全保障上の懸念、脅威、問題点、課題のことを言っているのであり、当会がもっともアピールしたいところだった。しかし、審査会や行政マンは「縷々」の2文字によって、それらもろもろの重大事項があっさり否定されてしまった)
2 当庁の判断及び結論
 当庁の判断の理由は、審査会が判断した部分にあっては前記1の審査会の判断と同じであるが、前記第2の4のとおり処分庁が改めて開示することとした情報があることから、その点については次のとおり判断する。
 処分庁は、前記第2の4(1)及び(2)の情報については、事業主等が開催した地元説明会等において、当該相手方企業名が明らかにされたこと等から、非開示とする必要が消滅したとして、改めて開示すると述べる。そのため、当該情報は公にすることにより、法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれが認められないものであるため、条例第14条第3号イに該当しない。
 よって、本件審査請求には理由があることから、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第46条第1項の規定により、主文のとおり裁決する。

                 平成29年3月28日
                  審査庁 群馬県知事 大澤 正明

<P13>
                教   示
1 この採決については、この採決があったことを知った日の翌日から起算して6カ月以内に、群馬県を被告として(訴訟において群馬県を代表する者は群馬県知事となります。)、採決の取消しの訴えを提起することができます。
  ただし、この採決の取消しの訴えにおいては、不服申立ての対象として処分が違法であることを理由として、採決の取消を求めることはできません。
  処分の違法を理由とする場合は、この採決があったことを知った日の翌日から起算して6カ月以内に、群馬県を被告として(訴訟において群馬県を代表する者は群馬県知事となります。)、処分の取消しの訴えを提起することができます。
2 ただし、上記の期間が経過する前に、この採決があった日の翌日から起算して1年を経過した場合は、採決の取消しの訴えは処分の取消しの訴えを提起することはできなくなります。なお、正当な理由があるときは、上記の期間やこの採決があった日の翌日から起算して1年を経過した後であっても採決の取消しの訴えや処分の取消しの訴えを提起することが認められる場合があります。

*****別表1*****
■文書名
申請者安中ソーラー合同会社による平成28年4月15日付け林地開発許可申請に係る文書中の次の文書
①林地開発許可申請書、④工程表、⑥申請者の信用及び資力に関する書類、⑧地域住民             又は市町村との協定書、⑨残置森林等の保全に関する協定の締結について、⑩残置森林等の保全に関する協定書、⑩隣接土地所有者の同意書
※附番数字は、開示請求書に記載された開示請求文書の附番帯数字である。
●非開示部分
「①林地開発許可申請」中、印影
○非開示理由
【情報公開条例第14条第3号イ該当】
登録された法人印であり、記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであるとともに、これにふさわしい形状のものであって、申請者において、むやみに公にしていないものであり、これが公にされた場合には印影が偽造され悪用されることも考えられるなど、申請者の正当な利益を害するおそれがあるため。
●非開示部分
「④工程表」中、連絡先(林地開発許可申請書作成の責任者)の住所・氏名
○非開示理由
【情報公開条例第14条第3号イ該当】
申請者の取引内容に関する事項で内部管理情報であり、公にすると、取引先から信用を失うなど、申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
●非開示部分
「⑤申請者の信用及び資力に関する書類」中、
・会社定款の事業者印影
・「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」中、各業務委託契約等の相手方企業名
・融資意向表明書中金融機関名、当該金融機関印影及び融資限度額
○非開示理由
【情報公開条例第14条第3号イ該当】
・印影については「①林地開発許可申請書」に記載した非開示理由と同様
・「安中ソーラーに関する事業スキーム図(詳細)」は開発事業における取引関係を記述した文書で、当該取引先の情報は、内部管理情報であり、公にすると、取引先から信用を失うなど、申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
・「融資意向表明書」は、申請者の金融機関との取引関係に関する情報を含む文書であり、取引金融機関名及び融資限度額は、開発事業に関する通常一般に入手できない情報であり、公にすることで、当該申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
●非開示部分
「⑬隣接上地所有者の同意書」中、個人名、住所及び印影、隣接地地番、事業者印影
○非開示理由
【情報公開条例第14条第2号該当】
・承諾書は、個人の住所・氏名及び同意に係る個人の意思表示の有無を含む文書である。個人名は個人を識別することができるものであると同時に当該意思表示を示す個人を特定するものであり、これを公表すると当該個人の権利利益を害するおそれかおるため。地番については、他の情報(登記事項証明書)と照合することにより、当該土地の所有者個人を識別することが可能となるため。
・印影については「①林地開発許可申請書」に記載した非開示理由と同様

*****別表2*****
■文書名
申請者安中ソーラー合同会社による平成28年4月15請に係る文書中の当該請書の図書目次(別紙)に掲げるもの(ただし、平成28年7月8日に開示済みのものを除く)
●非開示部分
2-1及び2-2地番明細書中、法人以外の所有者の氏名及び住所並びに当該所有者の所有に係る土地地番
○非開示理由
【情報公開条例第14条第2号該当】
氏名及び住所は、特定の個人を識別することができるものであり、また、地番は他の情報(登記事項証明書)と照合することにより、当該土地の所有者個人を識別することが可能となるため。
●非開示部分
3-1開発行為に関する計画書中(I)中、①所要経費(総事業費)、②工事施工者住所・氏名、③事業経費内訳書金額及び事業計画(20年のキャッシュフロー)金額
○非開示理由
【情報公開条例第14条第3号イ該当】
①及び③:申請者の開発事業に関する財務計画であって、申請者は内部情報として管理しており、それが公にされると申請者の資金調達力や経営戦略が明らかとなるなど、申請者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
●非開示部分
5-2工事誓約書中、施行者住所・氏名・法人印影
○非開示理由
3-1文書の②の非開示理由と同様
●非開示部分
6-1他法令の許可申請又は許認可書の写し中、①法人印影、②「農地法第5条第1項の規定による許可申請書」中「5資金調達についての計画」中資金等の金額
○非開示理由
【情報公開条例第14条第3号イ該当】
①:登録された法人印であり、記載事項の内容が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであるとともに、これにふさわしい形状のものであって、申請者において、むやみに公にしていないものであり、これが公にされた場合には印影が偽造され悪用されることも考えられるなど、申清者の正当な利益を害するおそれがあるため。
②:3-1文書の①及び③の非開示理由と同様
●非開示部分
9-1土地所有者等関係権利者の同意書中、法人印影、②「関東財務局前橋財務事務所長の国有地使用承諾書」の附属図面(公図等転写連続図)中、法人以外の所有に係る地番、③法人以外の関係権利者の住所・氏名・印影
・当該権利者の権利に係る土地の地番
○非開示理由
①:6-1文書の①の非開示理由と同様
②及び③:2-1及び2-2の非開示理由と同様
●非開示部分
10-2堤体の安定計算書中、調査会社社名・電話番号、調査主任技師等氏名
○非開示理由
3-1文書の②の非開示理由と同様
●非開示部分
10-3長大切土、高盛土 安定計算書中、調査会社社名
○非開示理由
3-1文書の②の非開示理由と同様
●非開示部分
10-4土質調査試験報告書中、調査会社社名・電話番号、調査主任技師等氏名
○非開示理由
3-1文書の②の非開示理由と同様
●非開示部分
11-4公図・造成計画平面図複合図中、地番(法人以外が所有するものに限る)
○非開示理由
2-1及び2-2文書の非開示理由と同様

**********
この「裁決書の謄本は原本と相違ないことを証明する。

平成29年3月28日

                群馬県知事 大澤 正明
**********

■ご覧のとおり、裁決書は、3月22日に群馬県公文書開示審査会第一部会(部会長・久保田寿栄)から群馬県知事あてに答申された内容と全く同じであり、「実施機関」を「処分庁」に置き換えただけの代物です。

 群馬県の公文書開示審査会のメンバーは次のとおりです。いずれも任期は平成28年10月15日~平成30年10月14日です。
●第一部会
久保田寿栄(会長兼第一部会長・弁護士)※「白田・久保田法律事務所」 群馬県桐生市巴町2-1821根岸ビル2階
宮武  優(委員・弁護士)※「宮武法律事務所」高崎市上並榎町256-3センチュリーハイツ1階
茂木 三枝(委員・中小企業診断士)㈲コンサルティングオフィス・ウィル前橋市文京町3-22-5-407、群馬県内初の女性中小企業診断士。
●第二部会
村上 大樹(職務代理者兼第二部会長・弁護士)村上大樹法律事務所 群馬県伊勢崎市安堀町1867-9GG2階
山崎 由恵(委員・弁護士)「風の詩法律事務所」 群馬県前橋市川原町1-57-3、所長の増田智之弁護士は以前依頼者を裏切って群馬弁護士会から懲戒処分を受けた人物
青木美穂子(委員・群馬県スクールカウンセラー)「日本学校教育相談学会群馬県支部理事長」事務局:佐波郡玉村町上福島1155-3 

 このメンバーを見ると、情報公開法や情報公開条例をきちんと判断できる陣容なのか、首をかしげざるを得ません。弁護士を多数起用していますが、彼らは法律を杓子定規に判断するだけで、今回のような、大所高所からの判断を要する情報の取り扱いには不適な人材です。

 また、弁護士の中にも、群馬弁護士会や日弁連から懲戒処分を受けた弁護士事務所に所属する者も含まれています。

 さらに中小企業診断士や、スクールカウンセラーもメンバーに入っています。もちろん、弁護士ではないから資格がないということではありません。むしろ、一般の民間人として、さらに女性の目から、今回の国家安全を脅かす事案の金目に関する情報開示の重要性について、官僚的でなく、市民のセンスで判断できる立場にあるかたがたです。

 しかし、残念ながらそうした期待は完全に裏切られました。こうした役所の審議会のメンバーは、初めから役所に対してイエスマン、イエスウーマン的な人材が優先して人選されるようです。

■本件について、提訴するかどうかは、今後6か月間の猶予があるため、処分が行われた2016年7月2日から1年後の2017年7月2日までに決めればよいことになります。

【ひらく会情報部】

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安中市の児童体罰事件で住民訴訟を見送った翌日に栃木県で起きた雪崩による高校生ら8名死亡事故

2017-03-28 23:23:00 | 安中市の行政問題

■2015年11月に安中市内の小学校で発生した体罰事件について、当会は3月26日までに住民訴訟を提起しなかったため、体罰教師への損害賠償請求の手段は失われてしまいました。ところがその翌日3月27日朝お隣の栃木県那須町のスキー場付近での登山講習会に参加した高校生40人と教員8人らが雪崩に巻き込まれ、高校生7人と教員1名が死亡、残る40人全員が負傷し、うち7人が重傷を負うという事故が起きました。

雪崩に巻き込まれた生徒が通う県立大田原高校=27日午後4時7分、栃木県大田原市、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影

 安中市内の小学校で起きた体罰事件では、暴行罪で起訴された元教諭が安中市による被害児童の代理人の弁護士に賠償金50万円を支払ったことが考慮されて前橋地検により不起訴処分(起訴猶予)となったので、当会は、公金での損害賠償金の支払いが妥当かどうか今年1月6日付で住民監査請求を安中市監査委員に提出し、1月27日に監査委員らの前で陳述をしていました。

 しかし、遺憾ながら2月24日付で監査委員から「本件請求については合議により『本件請求は、理由が無いものと認める』ことに決した」との棄却決定通知が25日に届きました。このため、3月26日を期限として住民訴訟を提起するかどうか慎重に検討してきましたが、多忙のため3月24日(金)までに訴状を前橋地裁に提出できませんでした。

 そのため、現在学習の杜で勤務しているとみられる元体罰教諭に対する公金による和解金支出については、本人が市に自主的に返還する以外、強制的に損害賠償を行わせる手立てはなくなってしまいました。この場を借りて、お詫びとともにご報告します。この件に関する関連ブログは逆時系列で次のとおりです。
〇2017年3月3日:学校での体罰に寛容な教育界・・・公金で体罰を不問にしてくれる安中市にお墨付きを与えた市監査委員
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2249.html#readmore
〇2017年1月28日:公金で損賠金が支払われ不起訴になった体罰教諭に係る住民監査請求で安中市監査委員の前で陳述
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2219.html#readmore
〇2017年1月18日:公金で損賠金が支払われ不起訴になった体罰教諭に係る住民監査請求で安中市監査委員から陳述等案内通知届く
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2212.html#readmore
〇2017年1月6日:学校での体罰に寛容な教育界・・・暴行罪適用でも損害賠償金を公金で払い起訴猶予となった安中市のケース
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2200.html#readmore

■こうした最中、3月27日午前8時半ごろ、栃木県那須町湯本のスキー場「那須温泉ファミリースキー場」付近で雪崩が発生しました。積雪をかき分けながら歩く「ラッセル」の訓練をしていた高校生らが巻き込まれ、栃木県警によると、県立大田原高校山岳部の男子生徒7人と顧問の男性教員1人が死亡したというニュースが報じられました。

 栃木県警は、こうした悪天候の中で訓練をなぜ実施したのか、業務上過失致死傷容疑で捜査を開始しました。

 この悲惨な出来事の原因の追究と、責任の所在は県警の捜査の結果を待たねばなりませんが、犠牲となった高校生や教師に対しては、国家賠償法第1条第1項の「「国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とする定めが適用され、公金で補償がなされるものとみられます。

 なぜなら警察は業務上過失致死傷容疑で捜査をしているわけですから、当然、この事件は過失だとみなした上で、捜査を進めていることになるからです。もちろん、この講習会の総責任者の公務員が、「故意に」講習会参加者らを雪崩に遭遇させて、死傷者をだしても、国家賠償法が適用されることになります。

■一方、当会が今回住民訴訟を見送ってしまった安中市内の体罰事件では、公務員である教諭が、体罰という故意の行為で、小学校の児童にケガを負わせたわけですから、国家賠償法で公費から和解のための補償金が支出されることに問題はないと考えます。

 しかし、国家賠償法第1条第2項では、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」としています。

 このことは、栃木県那須のスキー場で起きた悲惨な出来事で、県警が業務上価値土師匠容疑で捜査をした結果、重大な過失があった場合には、当該公務員に対して求償権が適用される可能性があることになります。雪崩注意報発令や、ビーコン不携帯などの状況のもとで、あえてラッセル訓練を実施したことが、重大な過失かどうかのポイントになるかどうか、でしょうが、いずれにしても「故意」で行った行為の結果が、この悲惨な出来事を招いたわけではありません。

■他方、安中市内の小学校における体罰事件は、警察が暴行罪で捜査をして、検察に送検していました。暴行罪は、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときに成立する(刑法208条)とされており、人の身体を傷害するに至ったときは傷害罪(狭義の傷害罪、刑法204条)として判断されることになります。

 実際に体罰を受けた児童は打撲や擦り傷を受けた模様ですので、本来であれば傷害罪に該当したのかもしれませんが、警察は暴行罪として捜査をしたうえで、体罰教師を送検したのでした。

 それではなぜ警察は体罰教師に対して、業務上過失傷害罪を適用しなかったのでしょうか。刑法211条1項前段は「業務上必要な注意を怠り、よって、人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」と定めています。これが業務上過失致死傷罪のことです。

 教師は学校において公務員として児童を継続的に管理・指導する職業ですから、業務上の仕事のはずです。そして、体罰を受けた児童は軽傷かもしれませんが、ケガを負ったことは事実のようです。

 今回の当会の住民監査請求では、安中市監査委員は、「本件監査において市が甲に対しての求償権を有するか否かの判断をするには、甲に故意又は重大な過失があるか否かを判断する必要がある」とし、結果的に「体罰教師の任命権者である県教育委員会が、体罰教師に対して、教育公務員特例法第9条に基づいて県教育委員会が評議会を開催して群馬県教育委員会懲戒指針に則して審議したものであり、体罰により児童を死なせたり重傷を負わせたりしなかったことと、体罰を常習的に行っていなかったから、故意でも重過失でもない。よって単なる過失だから、国家賠償で体罰教師に損害賠償請求をしなかったことは正当だ」とする判断を下しました。

 学校での体罰が常習的でない限り、「故意ではない」というのですから、今後も、教師はスポット的に適宜、体罰を与えることが許されることになります。

 確かに、児童や生徒、学生の中には手の付けられない者が存在することは事実です。また、モンスターペアレント問題もあり、教職に携わる公務員の苦労は、並大抵ではない部分もあることでしょう。

 今回、当会が住民訴訟を見送った背景には、時間的な余裕がなかったことが一番の理由ですが、今回の検察の暴行罪不起訴処分や国家賠償法の「故意または渋滞な過失」に非該当と判断された事件を奇貨として、教職に携わる公務員の皆さんには萎縮せず、熱血教育を実践してもらいたいと思います。

 また、体罰を受けた児童や保護者から「二度と授業を受けたくない」とされ、現在学習の森で隠遁状態で勤務している元体罰教師の方を、安中市教育庁は、一刻も早く本来の教職の現場に戻すよう、新年度の人事でさっそく配慮すべきでしょう。

【ひらく会情報部】

※関連報道「登山講習会で訓練中の高校生ら8名死亡事故」
**********TBS NEWS 2017年3月27日17時57分
栃木・那須町のスキー場で雪崩、8人心肺停止
 27日午前、栃木県那須町のスキー場で雪崩が発生し、登山の講習会に参加していた高校生らが巻き込まれました。安全な登山を学ぶ春山で、一体、何があったのでしょうか?
 27日午前、栃木県那須町の「那須温泉ファミリースキー場」で雪崩が発生しました。通報があったのは午前9時20分ごろ、引率していた高校の男性教諭からでした。
 「雪崩が発生して生徒が巻き込まれ、連絡が取れない」
 雪崩に巻き込まれたのは登山の講習会に参加していた高校生らで、当時、現場では県内7つの高校の生徒と教諭、あわせて48人が参加し、「春山安全登山講習会」が行われていました。生徒らは、積雪期の登山に必要な知識や技術を習得する目的で、2泊3日で講習を受けていたということです。
 「ラッセル訓練中に雪崩が発生した。新雪の所を切り開いていく訓練だと思われる。行った隊員によると、完全にずぶずぶと入ってしまう状態。かなりの積雪があったと思われる」(那須地区消防本部 会見)
 現場には消防に加え、自衛隊も駆けつけました。救助に向かう隊員でしょうか、山の中腹を歩いて進みます。現場は午後になっても雪が降り続き、悪天候のなかでの救助活動となりました。
 午後2時前から、雪崩に巻き込まれた高校生らが下山を開始。けがをした人たちが病院に運ばれました。この事故で、県立大田原高校の男子生徒ら8人が心肺停止の状態になっているほか、40人がけがをしたということです。雪崩に巻き込まれた生徒のうち、自力で脱出した人もいました。
 那須温泉ファミリースキー場は、東北新幹線・那須塩原駅から北におよそ20キロにあります。雪崩が発生したのはスキー場の第2ゲレンデで、この冬のスキーの営業は今月20日に終了していました。
 県の教育委員会などによりますと、春山登山の講習会は毎年行われているということで、生徒が心肺停止になっている大田原高校の山岳部は、県大会を8連覇している強豪校です。
 「きちんとした登山に関する専門的知識を持った顧問が、冬山にあたっての注意事項、もろもろの天候の状況とか、講習会という位置づけですので、それは止めるように言ったことはない」(栃木県教育委員会の会見)
 27日、真冬並みの寒さに見舞われた関東や東北地方。福島県の安達太良山でも雪崩が発生し、登山していた男性2人が巻き込まれ、このうち70代の男性が意識不明になっているということです。
 宇都宮地方気象台では、26日から、栃木県の北部に大雪や雪崩注意報を出して注意を呼びかけていました。気象庁の観測によりますと、「那須高原」では、午前1時に0センチだった積雪が、午前9時には33センチに。短時間で一気に雪が積もったことがわかります。今回の雪崩の原因について、専門家は・・・
 「今回は雪崩が起きる前に、昨夜から大量の雪が降り積もっている。大量の雪が降り積もったことが(今回の)雪崩の原因と考えられる。古い雪の上にどんどん新しい雪が積もり、その雪が不安定になり崩れたものと考えられる。今回、可能性が高いのは、この『表層雪崩』が起きた」(防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 平島寛行主任研究員)
 表面の雪が崩れ落ちる表層雪崩は、予兆を見つけるのが難しいといいます。過去には、富山県でも表層雪崩と見られる大規模な雪崩が発生し、山スキーを楽しんでいた7人が犠牲になりました。
 滑り落ちる雪が時速100~200キロにも達することがあるという表層雪崩。雪崩から逃れたスキーヤーは、その瞬間をこう振り返ります。
 「雪煙がこっちに向かった瞬間に、これは逃げなきゃって思った。あっという間で、雪煙の高さもすごく高かった。もうのまれるって思いました」(雪崩から逃げたスキーヤー)
 今回、栃木県那須町のスキー場で高校生を襲った雪崩。現地では、警察、消防、山岳遭難救助隊による救助活動が続いています。

**********上毛新聞ニュース2017年3月27日(月) PM 07:00
雪崩で高校生ら8人心肺停止 登山講習中、栃木
 27日午前9時20分ごろ、栃木県那須町湯本のスキー場「那須温泉ファミリースキー場」付近で、雪崩が起きたと110番があった。県警は、登山講習会に参加していて巻き込まれた、いずれも県立大田原高山岳部の男子生徒7人と顧問の男性教員1人が心肺停止になったと明らかにした。消防によると、このほか多数のけが人がいるという。
 県警や消防が状況の確認を急いでいる。
 県警などによると、講習会は県高等学校体育連盟が主催。大田原、那須清峰、矢板東、真岡女子、真岡、宇都宮の県立6校に私立矢板中央の計7校の1~2年生ら60人以上が参加し、午前7時半ごろから登山を始めた。


↑雪崩があった「那須温泉ファミリースキー場」の27日午前11時すぎのライブカメラ画像(同スキー場のホームページより)↑

**********毎日新聞2017年3月27日 16時11分(最終更新 3月27日 19時40分)
心肺停止は高校生8人に 多数負傷 栃木のスキー場

高校生らが遭難した現場近くに駆けつけた救急車。後方が雪崩が発生した那須温泉ファミリースキー場=栃木県那須町湯本で2017年3月27日正午ごろ、柴田光二撮影
 27日午前9時20分ごろ、栃木県那須町湯本の那須温泉ファミリースキー場で雪崩が発生したと110番があった。地元消防などによると、県内7高校から登山講習会に参加していた団体が雪崩に遭い、生徒8人が心肺停止の状態で見つかったほか、重傷者2~3人を含む多数が負傷した。同スキー場は20日に今季の営業を終えており、雪崩は第2ゲレンデ付近で発生したとみられる。

発生現場の地図
 7校は25~27日の日程で組まれた県高体連主催の「春山登山研修」に参加していた。参加校は、▽大田原▽矢板中央(矢板市)▽矢板東(同市)▽宇都宮(宇都宮市)▽真岡(真岡市)▽真岡女子(同市)▽那須清峰(那須塩原市)--の計約60人。
 心肺停止で見つかった生徒は大田原高に集中しており、雪崩は同校の隊列を直撃したものとみられる。
 同県北部では26日から降雪が続き、気象庁によると27日午前10時に那須高原で34センチの積雪を観測。宇都宮地方気象台は、同県北部に26日午前10時から雪崩注意報を発令していた。【田中友梨、金秀蓮】

**********上毛新聞ニュース2017年3月28日(火) PM 07:39
スキー場「典型的な雪崩発生区」 現地調査のNPO理事
 NPO法人「日本雪崩ネットワーク」(横浜)の出川あずさ理事(56)が28日、雪崩で高校生ら8人が死亡した那須温泉ファミリースキー場(栃木県那須町)付近で現地調査を実施、調査後に「目視でも分かるほど、雪崩の起きやすい斜度や気候条件がそろっている典型的な雪崩発生区だ」と明らかにした。
 ネットワークによると、雪崩の痕跡はその後の降雪ではっきりと残っていなかったが、スキー場の第2ゲレンデ上部にある樹林帯を抜けた尾根手前付近の斜面で発生したとみられる。
 雪崩が起きたとみられる斜面は斜度30度以上で大きな木が少なく、風の影響を受けやすい環境だった。

**********日テレNEWS24 2017年3月28日 11:48
雪崩犠牲の高校生 全員「ビーコン」不携帯
 27日、栃木県那須町のスキー場で雪崩が発生し、登山講習会に参加していた地元の高校生ら8人が死亡した事故で、死亡した高校生ら全員が、遭難した際に位置情報を発信できる「ビーコン」を身につけていなかったことがわかった。
 27日は吹雪だった現場は天気も回復し、消防などによる現地調査が始まっている。いまだに「なだれ注意報」が出ている現場では、ドローンで雪の状況を撮影していて二次災害の恐れがないか慎重に確認し、本格的な調査が始まるものとみられる。
 この事故は、27日朝、栃木県那須町のスキー場周辺で雪崩が起き、登山講習会に参加していた高校生ら48人が巻き込まれ、このうち8人が死亡したもの。27日は悪天候だったため、教師の判断で高校生らは当初予定していた登山を中止し、雪を踏み固めて進む「ラッセル訓練」を行っていたが、その後の取材で、死亡した高校生ら全員が、雪崩に巻き込まれた際などに、自分の位置を発信できる「ビーコン」という機器を装着していなかったことがわかった。
 救助にあたった那須山岳救助隊「(Q.掘り出す時にビーコンは活用された?)全員つけていませんでした。現場到着してから掘り出すまでは30分ぐらいしかかかっていないけど、その間の時間は相当かかってますよね。発生してから掘り出されるまでは3時間以上が経過」
 山岳救助隊によると、「ビーコン」を装着していれば、遭難した場合も早期発見につながるということで、本来、冬山に入るのであれば持つべきものだと指摘した。
 警察は、正しい装備をしていたのか、登山講習会を開催したことが正しかったのかなどを、特別捜査班を設置して詳しく調べる方針。

**********NHK NEWS WEB 2017年3月28日 12時07分
高校生など8人死亡の雪崩 約100m崩れたか
 27日、栃木県那須町にあるスキー場付近で、登山の講習中の高校生と教員合わせて48人が雪崩に巻き込まれ、生徒ら8人が死亡した事故で、27日の救助活動の際の情報では、雪崩はおよそ100メートルの長さで起きたと見られることがわかりました。警察はヘリコプターで上空から雪崩の状況などの確認を進めています。
 27日午前8時半ごろ、栃木県那須町にある「那須温泉ファミリースキー場」の付近で雪崩が起き、登山の講習を受けていた県内の高校の山岳部の生徒や教員合わせて48人が巻き込まれました。
 この事故で、県立大田原高校の男子生徒7人と男性教員1人の合わせて8人が死亡し、生徒と教員合わせて40人がけがをしました。
 警察によりますと、雪崩が起きたのは、スキー場にある「センターハウス」と呼ばれる小屋から山頂に向かって500メートルほど進んだゲレンデよりも上にある斜面で、27日の救助活動の際の情報では、雪崩はおよそ100メートルの長さで起きたと見られることがわかりました。
 警察は28日午前、ヘリコプターを飛ばして、上空から雪崩が起きた状況や範囲などの確認を進めています。
 一方、現場検証については、現地の天候の状況などから、再度雪崩が起きる危険性があり、行うかどうか検討しているということです。
★消防と栃木県 ドローンで現場を調査
 事故を受けて、消防や栃木県は28日朝から、小型の無人機、ドローンを使って上空から雪崩の現場を調査しました。
 雪崩が起きた現場近くにある那須町のスキー場の入り口には、28日午前8時ごろ、地元の消防と県の職員、それにドローンを所有するさいたま市消防局の消防隊員ら10人余りが集まり、ドローンが入ったケースなどを持って現場に向かいました。
 調査地点に到着した消防隊員らは斜面に沿うようにしてドローンを飛行させ、雪に覆われた斜面の状態を上空から撮影していました。
 消防の担当者によりますと、調査には警察も立ち会い、ドローンで撮影した映像を分析して、雪崩の規模や発生状況の解明につなげるということです。
 さいたま市消防局警防課の大塚成人消防司令長は「立ち入りが難しい雪崩の現場をドローンで撮影することで、原因を少しでも明らかにしたい」と話していました。
★安倍首相 原因究明し防災対策強化
 安倍総理大臣は、参議院決算委員会で「痛ましい災害が発生した。亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族に心からお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げる」と述べました。
 そのうえで、安倍総理大臣は「政府では、融雪出水期を迎え、雪崩などの発生に備えた防災体制の強化を関係機関などに働きかけていたところだが、今回の事態を踏まえ、再発防止を徹底するため、原因の徹底究明を行うとともに、警戒避難体制の強化、危険箇所などの巡視、点検の実施の徹底などによる防災対策の強化を図っていく」と述べました。
★松野文科相 高校生以下は冬山登山行わないよう通知
 松野文部科学大臣は閣議のあと記者団に対し、「スポーツ庁の職員2名を栃木県教育委員会に派遣し、今回の講習会の実施に問題がなかったのか、状況の把握に努め、二度と同様の事故が起こらないよう万全を尽くしたい」と述べました。
 そのうえで松野大臣は「今回の事故にあたっては、まずは状況をしっかり把握することが重要で、今後の対応は精査・分析をしたうえで行いたい」と述べました。
 また、松野大臣は、高校生以下の生徒については、技術や体力の面から、冬山における安全を確保することは難しいとして、原則として冬山登山は行わないよう指導の徹底を求める通知を、27日付けで全国の教育委員会などに出したことを明らかにしました。

**********日テレNEWS24 2017年3月28日 14:29
雪崩犠牲 高校生の家族や友人が悲痛な思い
 27日、栃木県那須町のスキー場で雪崩が発生し、登山講習会に参加していた地元の高校生ら8人が死亡した事故で、高校生の家族や友人が、悲痛な胸の内を明かした。
 午前中から始まった消防などによる現地調査は終了した。ドローンを飛ばすなどして、生存者や生き埋めになった人がいないかの最終確認を行ったという。
 この事故は27日朝、栃木県那須町のスキー場周辺で雪崩が起き、登山講習会に参加していた高校生ら48人が巻き込まれ、栃木県立大田原高校の生徒7人と男性教師1人が死亡したもの。亡くなった高校生の家族や同級生らが無念の思いを語っている。
 浅井譲さん(17)の父親「打撲とかそういうのはなかった。顔もきれいでした。冷たくなっていた。『寒かったね』『帰ってきたね』と。妻が『ごめんね、ごめんね』と言って、誰も悪くないんですけど『ごめんね』とずっと言ってました。17年で短かったですけど幸せだったと思います。良い子でした。ただ親より先に死んじゃいけないと思います」
 鏑木悠輔さん(17)の親友「活発で運動神経がよくて正義感がある子でした。クラス替えしてクラスになじめない子がいると自分から話しかけたりしていて、悠輔のおかげで(野球の)上の大会行けて楽しかったです。もっと一緒に遊びたかったし話したかったし、でもいなくなっちゃったのでゆっくり休んでほしい」
 奥公輝さん(16)の小中の同級生「もりあげキャラみたいな感じで、頭がよかったんでテスト前わからないところ聞いたりした。勉強も部活も熱心にやってました。長距離すごく頑張ってました」
 警察は今後、雪崩の原因や、高校生の装備に不備がなかったかなど業務上過失致死傷の疑いで調べる方針。

**********読売新聞2017年03月28日
雪崩で高校生ら8人死亡…那須、注意報発令中
「春山安全登山講習会」で惨事
 栃木県那須町湯本の町営「那須温泉ファミリースキー場」で27日午前、雪崩が発生し、登山講習会に参加していた同県内の7高校の登山部員と引率教員の計48人が巻き込まれた。
県警などによると、県立大田原高校の男子生徒7人と男性教諭1人の計8人の死亡が確認された。死因は圧死や外傷性窒息だった。このほか、生徒33人と教員7人の計40人がけがをした。当時は大雪、なだれ注意報が発令中で、県警は業務上過失致死傷容疑を視野に、講習会の主催者側から事情を聞く方針。


高校生らが雪崩に巻き込まれたスキー場で続く救助活動(27日午後4時18分、栃木県那須町で、読売ヘリから)=関口寛人撮影
 県教育委員会によると、訓練は25~27日の日程で行われていた「春山安全登山講習会」。県高校体育連盟の主催で、大田原、宇都宮、那須清峰、矢板東、真岡、真岡女子の県立6校と私立矢板中央を含めた7校から、1、2年の生徒51人と引率教員11人の計62人が参加していた。
 初日は学科講習とテント設営などの講習会、2日目は雪上での歩行訓練などを実施。3日目の27日は茶臼岳(1915メートル)登山を予定していたが、大雪のため午前6時に中止を決定。雪をかき分けて進むラッセルの訓練に切り替えた。
 講習内容の変更などの判断は、登山経験が豊富な県高体連登山部の委員長と副委員長らに任されているという。委員長は無事だった大田原高校の教員、副委員長は真岡高校の教員で、ともに今回の講習会を引率していた。
 ラッセルは48人が4班に分かれ、午前8時頃からスキー場の第2ゲレンデ近くにある林の急斜面で実施していた。大田原高校が先頭で移動中、標高1550メートル付近で雪崩が発生し、約200メートル下にいた高校生らをのみこんだという。
 県災害警戒本部によると、雪崩は同8時30分に起きたと推定されている。無事だった14人は、この日の訓練に参加していないか、出発前だった。
 スキー場周辺は荒天に見舞われており、宇都宮地方気象台は26日午前10時32分、大雪、なだれ注意報を発表、雪崩が起きた時も継続していた。25日は比較的暖かかったことから、日中に解けた積雪が夜に凍り、その上に積もった新雪が滑り落ちる「表層雪崩」が起きた可能性があるという。県警は訓練実施の判断が適切だったかどうか調べる。
 県教委によると、訓練は雪が残る中での遭難や滑落を防ぐ方法を実地に学ぶ内容で、毎年の恒例行事だった。スキー場は今月20日に今シーズンの営業を終了した。ホームページによると、スキー場には、初級用から上級用まで三つのゲレンデがある。
 大雪の中、県警61人、消防80人以上、山岳遭難救助隊員20人以上に、自衛隊員117人も加わって捜索や救助が行われ、午後5時過ぎまで続けられた。
**********

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館林市長選ルポ・・・「羽衣問題」を市民にアピールすべく候補者第1号に躍り出た当会会員の小林光一氏

2017-03-26 22:06:00 | オンブズマン活動
■本日、館林市長選の火蓋が切って落とされました。保守の一騎打ちか、と見られていた館林市長選ですが、今日の地元新聞の一面に次の記事が掲載されました。


氷雨の降りしきる中、マスコミ記者らから出陣挨拶と取材を受ける候補者。

**********上毛新聞2017年3月26日一面

館林市長選きょう告示
保守分裂の公算 3人目の動きも

 安楽岡一雄市長死去に伴う館林市長選は26日、告示される。立候補を表明しているのは元自民党県議、松本耕司氏(72)=羽附町=と同党県議の須藤和臣氏(49)=松沼町=で、無所属新人による保守分裂の選挙戦となる公算が大きくなっている。投開票は4月2日。
 両陣営は25日、選挙期間中の動きなどについて最終確認し、臨戦態勢を整えた。26日は松本事寧が花山町、須藤陣営が富士原町の選挙事務所で、それぞれ午前10時から出陣式と第一声に臨んだ後、市内を遊説する。
 このほか、市長選にはコンサルタント業の男性(70)も立候補の準備を進めていることが25日、わかった。
 市長選と同じ日程で行われる市議補選(欠員1)は無所属新人の2人が立候補する見通し。
 期日前投票は27日から1日の間、午前8時半から午後8時まで市役所で行われる。
 25日現在の選挙人名簿登録者数は6万3705人(男3万1731人、女3万1974人)。
**********

 当会会員で市民オンブズマン群馬館林支部長の小林光一氏は、数年前から館林市土地開発公社を巡る土地ころがし事件、通称「羽衣疑惑」あるいは「羽衣問題」の当事者である安楽岡市長兼公社理事長を追及してきました。

 民間業者が保有する地価数千万円の土地を、館林市土地開発公社は5億4000万円の公金で購入しましたが、差額4億6000万円は当然ながら民間業者のふところに転がり込んだことになります。そのカネが裏金として政治家に還流した疑惑について、当会課員は、住民監査請求から住民訴訟を戦い、前橋地裁での一審から東京高裁での二審、そして最高裁への上告まで粘り強く法廷闘争を続けましたが、遺憾ながら棄却とされてしまいました

 その後、最高裁に対して3回にわたり再審請求を行いましたが、いずれも却下されてしまっています。

 不通であれば、最高裁まで争えばそれで諦めてしまうところですが、当会会員はそれでもあきらめずに、今度は選挙に立候補して、事件の調査結果について市民に報告しなければならないと考えて、2度の市議選にチャレンジしたあと、今回、初の館林市長選挙に出馬することを決意したものです。選挙を決断するまでの過程は当会の次のブログを参照ください。
〇2017年2月17日:館林市土地開発公社の巨額負債40億円を残したままこの世を去った安楽岡市長へのレクイエム
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2241.html#readmore
〇2017年3月7日:安楽岡一雄館林市長の死去に伴う一連のゴタゴタと経過報告
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2266.html#readmore

■3月18日に開催した市民オンブズマン群馬の3月例会で、小林氏から「出馬の意向を固めつつある」との報告が参加者に伝えられ、一同で同氏を激励しました。その後、状況が二転三転しているという経過報告を受けており、一時はギブアップ寸前まで追い込まれたとのことですが、告示日の前日である3月25日に当会事務局に電話があり「明日、出馬すべく今日までに選管の事前手続きを終えた」との連絡がありました。


市長選確認団体関係書類。

↑出陣式まで待機するマスコミ記者ら。↑

選管から届いた選挙グッズ。

 本日3月26日朝8時に、館林市台宿町の自宅兼選挙事務所から支援者2名が館林市役所4階の選挙管理委員会を訪れて、午前8時半から始まった手続で、さっそく届出を済ませた後、「選挙の七つ道具」と呼ばれる法定グッズ等を受領して戻りました。なお、選挙ポスターの掲示位置や選挙広報の公約記事の位置決めにも関わる順番では、小林陣営が第1号を引き当てました。


今回の選挙候補者の順番のトップである第1号を示す演説旗。

 結局、届出を済ませた支援者2名が選挙事務所に戻ったのは午前9時を少しまわったころでした。早速七つ道具を仕分けして、候補者が支度を整えて、選挙事務所脇の駐車場の選挙カーの前で、支援者や通りを往来する車に向かって出陣の次の言葉を発したのは9時15分でした。

*****出陣の言葉*****
市民オンブズマン館林代表の小林光一は戦います。
「館林市政は間違っている」と云う強い声に押されて立ち上がりました。
市民感覚から外れた政治屋から市民の手に政治を取り戻す活動をしています。
その一つに「羽衣問題」があります。
民間企業が8000万円で購入した土地を館林市が5億4000万円で購入しました。
まさに世間を騒がす森友学園事件と同じ構図ではありませんか。
当事者同士が契約成立の後、料亭で食事をしたことを議会で認めました。
常識ではありえないカネの動きに小林光一は、市民に損害を与えたとして最高裁まで戦いました。
次の元松本県議が国道354号線工事において、入札県のない身内企業を建設工事貴社に入り込ませ、公金を還流させました。
それに加担した元建設会社会長H氏は「松本氏へ配慮せよ」と云った言葉を確認しました。
自分の利益のために政治にかかわる人間を許してはいけないと思います。
多田議長は公職選挙法に違反して、身内の関係する福祉施設の障害者をバスに載せ、自分に投票させました。
さらに後援会と称し、3000円会費で5000円の食事に1000円のお土産付宴会を行った領収書を確認しました。
館林政治の腐敗の頂点には元大物代議士が陰で動いています。
そして、カネの流れを市民、市長、大物代議士といった構図を、さらに構築しようと、次なる候補を擁立するために元大物代議士の元秘書を立てています。
こういうことは豊洲、豊中問題とそっくりではありませんか。
即刻辞めさせるべきであると私、小林光一は、立ち上がりました。

**********

■冒頭の新聞記事にある通り、候補者が出馬の意向を固めたのは告示日前日でした。そのため、事前に候補者調査票への記入の形で、記者会見などで候補者の個人情報がマスコミに配布されるのですが、不意を突かれたマスコミ関係者は、告示日当日に慌てて3人目の候補者の取材をすることになりました。

 上毛新聞など2社の記者が出陣式を取材したあと、候補者は午前9時40分ごろ、選挙カーでさっそく市内東部の高速インター方面周辺の遊説に出発しました。

 候補者が遊説中、選挙事務所には、館林ケーブルテレビ、読売新聞社、群馬テレビの取材陣が押しかけましたが、候補者が不在のため、読売と群テレは正午過ぎに再度、来訪することになりました。

■ちょうど正午に午前の遊説を終えた候補者が選挙カーで公約を流しながら選挙事務所に戻ってきました。


遊説中の当会会員候補の選挙カー。

遊説中の須藤和臣候補の選挙カー。

 読売と群テレの記者らが待機していましたが、「取材は昼食後にしてほしい」との候補者の意向で、午後1時からの取材となりました。


群馬テレビの取材カーも待機。


読売新聞深川記者の取材を受ける候補者。

群テレの取材を受ける候補者。

 群テレは、夕方のニュースで放送したいとして、既に出馬の意向発表をしている自民党所属の2名の立候補者に加えて新たに出現した3人目の候補者の出陣式の映像をなんとか取りたいと、かなり焦った様子でした。

 一方、読売新聞では、候補者に、「最終学歴の証拠として卒業証書を見せてほしい」としつこく要請しました。それに答えて候補者は、「卒業証書がすぐには見つからないので、卒業した大学の成績証明書でもよいか」と読売新聞記者に伝えると、奥から資料を持ち出して来て、大学での成績証明書の綴りを記者に見せました。

 しかし、驚いたことに読売新聞記者は、「学歴詐称を回避するために、当新聞社では、候補者にかならず最終学歴を証明する卒業証書の提示をお願いしており、卒業が確認されない場合は最終学歴を記載しない方針だ」というのです。

 候補者の学歴は選管にも情報として届けますが、読売新聞社では、その情報は採用せず、自社で記者による直接候補者への確認をモットーとしているとのことです。


立候補予定者経歴調査表(館林ケーブルテレビの場合)。

 これに対して、市長選に出馬経験を有する支援者が、「それは行き過ぎだと思う。選良である候補者が役所に提出した個人情報を信じないで、いちいち候補者に根掘り葉掘り卒業の事実を証明する書類の提示を要請するのは、無用な負担を候補者に負わせることになり、一種の選挙妨害に相当する」という趣旨の忠告をしました。

 それでも読売新聞の同記者は、「これが当社の方針なので」というばかりでした。

 候補者は、大学の卒業証書を示しても納得しない読売新聞記者に対して、それ以上、時間を浪費することを避けるために、「1週間ほどまえに読売には個人情報を提供したので、もし学歴に疑義がある場合は、当該大学に問い合わせてみるのが一番だと思う」と説明するにとどめ、午後の遊説に慌ただしく出かけていきました。

 公示日の前日に出馬を決意したため、当会会員候補者のポスターは本日午後5時に納品される予定とのことです。従って、まだ掲示板には候補者のポスターが貼られていませんが、明日以降順次貼られていくものと見られます。


明日の新聞掲載用の候補者写真を撮るマスコミ記者ら。

■候補者によれば、午後は人の集まる場所で辻説法スタイルを取り入れて、一人でも多くの市民に、「羽衣事件」の理不尽さを分かってもらえるように努力したいとのことでした。

 2月の前橋市議選に次いで、今回3月の館林市長選への当会会員のチャレンジが続いています。候補者には、体の健康に常に留意して、修正すべき点は修正しながら、しかし自らの判断で、選挙期間中の運動に最善を尽くしてほしいと強く願う次第です。


候補者の選挙事務所。

【3月27日追記】
館林市長選の報道記事
**********
〇上毛新聞2017年3月27日一面: PDF ⇒ 20170327_jomo_ichimen.pdf
〇上毛新聞2017年3月27日社会面: PDF ⇒ 20170327_jomo_shakaimen.pdf
〇読売新聞2017年3月27日群馬版: PDF ⇒ 20170327_yomiuri_local_gunma.pdf
(当会注:館林市長選3氏立候補とタイトルを付けながら「主な候補の訴え(右から届け出順)」には、小林光一候補の欄がなく、小林候補を「主な候補」ではない、と判断しているかのようである。読売新聞の選挙報道の姿勢については、筆者もかつて取材をうけたことがあるが、翌日の報道記事は、デスクにより勝手に事実を捻じ曲げて掲載されたことがあり、取材をうけた女性記者に事実関係を確認したところ、「私の書いた記事をデスクが大幅に書き換えて掲載してしまった。ごめんなさい」と半ベソをかいて筆者に陳謝したことがある)

**********NHK NEWS WEB 2017年3月26日 17時23分
館林市長選告示 3人が立候補

市長の死去に伴う群馬県の館林市長選挙が26日告示され、新人3人が立候補しました。
 館林市長選挙に立候補したのは、届け出順にいずれも無所属の新人で経営コンサルタントの小林光一氏(70)、元県議会議員の須藤和臣氏(49)、元県議会議員の松本耕司氏(72)のあわせて3人です。
 館林市は、人口7万7000あまり。
 今回の市長選挙は、市長をつとめていた安楽岡一雄氏が2月亡くなったことによるもので、隣接する板倉町との合併問題や、地域医療の充実などをめぐって論戦が交わされる見通しです。
 館林市長選挙は4月2日に投票が行われ、即日開票されます。

**********産経新聞2017年3月27日 07:02
館林市長選告示 保守分裂、3氏の争いに
 安楽岡一雄市長と議員の死去に伴う館林市長選・市議補選(欠員1)が26日、告示された。市長選は、いずれも無所属新人でコンサルタント業の小林光一氏(70)と自民党元県議の須藤和臣氏(49)、同、松本耕司氏(72)の3人が出馬し、保守分裂選挙となった。市議補選は、いずれも無所属新人で訪問介護員の渋谷理津子氏(65)と会社社長の川村幸人氏(55)、アパート経営の森野茂男氏(71)の3人が立候補した。
 小林氏は、館林市台宿町のコンビニエンスストア前で第一声。「館林市から日本の政治を変えていく」などと集まった支持者らに力強く訴えた。
 須藤氏は選挙事務所がある同市富士原町の富士嶽神社境内で行われた出陣式で第一声を上げた。支持者らを前に「安楽岡市長の志を継ぐべく立候補した」としたうえで、「災害対応のできる力強いまちづくりを進める」などと語った。
 松本氏は市内の神社で必勝祈願祭を行った後、同市花山町の選挙事務所前で出陣式を開いた。第一声では「館林市と邑楽郡5町の特色を生かし、一つになり、市民本位のまちづくりを行いたい」などと支持を訴えた。
 投票は4月2日午前7時~午後8時に市内28カ所の投票所で行われ、9時から城沼総合体育館(つつじ町)で即日開票される。25日現在の選挙人名簿登録者数は6万3705人(男3万1731人、女3万1974人)。

**********東京新聞2017年3月27日
【群馬】館林市長選告示 新人3人が立候補 市議補選にも3人
 館林市の安楽岡一雄市長の死去に伴う市長選が二十六日告示され、いずれも無所属新人で、コンサルタントの小林光一さん(70)、元県議の須藤和臣さん(49)、元県議で会社役員の松本耕司さん(72)の三人が届け出た。
 同時に、市議補選(被選挙数一)も告示され、いずれも無所属新人で、訪問介護員の渋谷理津子さん(65)、会社社長の川村幸人さん(55)、元会社員の森野茂男さん(71)の三人が届け出た。
 投開票日は両選挙とも四月二日。投票は午前七時~午後八時、市内の二十八カ所で行われ、同九時から城沼総合体育館で即日開票される。二十五日現在の有権者数は六万三千七百五人。

**********毎日新聞2017年3月27日 地方版
館林市長選/館林市議補選 市長選、新人3氏が立候補 保守陣営は分裂 /群馬
   小林光一氏「市民の手に政治を」
   須藤和臣氏「次の10年を見据え」
   松本耕司氏「邑楽郡と連携強化」

 安楽岡一雄市長の死去に伴う館林市長選は26日、告示された。届け出順に、いずれも無所属新人で、市民団体役員の小林光一氏(70)、ともに元県議の須藤和臣氏(49)、松本耕司氏(72)の3氏が立候補を届け出た。選挙戦になるのは2011年以来6年ぶり。自民党県議だった須藤氏と松本氏は保守陣営を二分しての争いとなる。人口減少が進む中、板倉町との合併協議の進め方など、地域活性化を巡る論戦が始まった。
市議補選も3氏届け出
 橋本徹氏の死去に伴う市議補選(改選数1)も告示され、いずれも無所属新人の3氏が立候補を届け出た。
 両選挙とも投票は4月2日午前7時~午後8時、市内28カ所で。午後9時から城沼総合体育館で即日開票される。大勢判明は市長選が午後10時ごろ、市議補選が午後11時ごろの見込み。25日現在の選挙人名簿登録者数は6万3705人。
 一方、立候補に伴って須藤氏が県議を自動失職し、館林市選挙区(定数2)が欠員2となったため、県議長の手続き後50日以内に県議補選が実施される。【阿相久志、杉直樹】
 市長選で、小林氏は市民オンブズマン群馬・館林支部代表としてブログを通して意欲的に情報を発信している。既存の政治勢力を「市民の感覚から外れている」と批判し、「市民の手に政治を取り戻す」と訴える。板倉町との合併には「賛成」の立場で、農産物の6次産業化促進などで板倉町にキャンパスがある東洋大との連携強化を掲げる。
 元自民党県議の須藤氏と松本氏は、安楽岡氏時代の「市第5次総合計画・後期基本計画」(2016~20年度)を継承する姿勢は共通するが、それぞれ独自色を打ち出している。
 須藤氏は富士原町での第一声で、後期基本計画を完成させたうえで「次の5年、10年を見据えたビジョンを」と訴え、49歳の若さと行動力をアピールした。主要施策として、▽地域防災力の強化▽健康寿命を延ばせる生涯現役のまちづくり▽異才発掘プロジェクトや地域ブランド力向上▽板倉町との合併推進--などを掲げる。
 松本氏は花山町での第一声で「1市5町の皆さんが力を合わせるのが大事」と邑楽郡5町との連携強化を呼びかけた。県議会議長も務めた実績や県との太いパイプを強調し、後期基本計画の継続を念頭に「農業の基盤づくり、医療の充実、子どもたちの学業、そして高齢者の福祉の充実に取り組みたい」と支持拡大を求めた。
==========
◎館林市長選立候補者(届け出順)
小林光一(こばやし・こういち) 70 無新
 市民オンブズマン群馬・館林支部代表▽コンサルタント業[歴]会社員▽群馬大工業短期大学部

須藤和臣(すとう・かずおみ) 49 無新
 [元]県議[歴]衆院議員秘書▽農相秘書官▽県議会総務企画委員長▽県監査委員▽学習院大
松本耕司(まつもと・こうじ) 72 無新
 [元]県議▽会社社長[歴]館林青年会議所理事長▽県議長▽県監査委員▽県議運委員長▽成城大
==========
◎館林市議補選立候補者(改選数1-3、届け出順)
渋谷理津子 65 訪問介護員  無新
川村幸人  55 会社社長   無新
森野茂男  71 アパート経営 無新
**********

【3月28日追記】
館林市長選挙の報道記事(3月28日)
**********上毛新聞2017年3月28日社会面P26 PDF ⇒ 20170328vsiapgl.pdf
合併「板倉以外も」給食無料化は分かれる
 26日に告示された群馬県館林市長選はコンサルタントの小林光一候補(70)、元自民党県議、須藤和臣候補(49)、同、松本耕司候補(72)の3人が、4月2日の投票に向け激しい選挙戦を繰り広げている。 上毛新聞は市が抱える課題について3人の考えを探ろうと、選択肢や記述式のアンケートを実施した。回答を紹介し主張を比較する。

【館林市長選候補者アンケート】

■政策継承で是非
 2月に死去した安楽岡一雄市長の政策慶弔の是非を聴いたところ、須藤、松本両候補が前向きなのに対し、小林候補のみ否定的。継承したい主な政策として、松本候補は「つづじが岡公園の四季を通した公園造り」などを挙げた。
 うっぽう、法定合併協議会(法定協)を立ち上げて議論が進む板倉町との合併に費えは、水深で足並みがそろった。ただ、合併方式について須藤、松本両候補が法定協の意見集約を優先するのに対し、小林候補のみ「費用と手間が小さくて済む編入方式がいい」と踏み込んだ。3人は板倉町以外の自治体との合併にも前向きに検討する考えを示した。
 小中学校の学校給食無料化は意見が分かれた。導入姿勢を示した松本候補に対し、小林候補は否定的。「どちらとも言えない」と慎重姿勢を打ち出した須藤候補は「『子どもの貧困』に関る実態貯砂の結果を把握する必要がある」と説明した。
■ツヅジ振興推進
 「人口が減るのは仕方がないことだと思うか」との問いに、松本候補が「どちらかといえば思う」としたのに対し、小林、須藤両候補は「思わない」と分かれた。人口減少対策に有効な瀬策として、小林候補が「防災産業の育成」などを挙げ、須藤、松本両候補は「教育水準の向上」「雇用の場の創出や企業誘致」などとした。
 市内最大の観光拠点、つつじが岡公園の誘客対策は小林候補が「独自のテーマパーク創設」、須藤候補が「公園単独ではなく、まとまりを持った観光ゾーニングが必要」、松本候補が「ツツジを前面に拡大し、日本に誇れる公園造り」などとした。

**********産経新聞2017年3月28日 07:04
館林市長選 主な候補者の横顔 群馬
 安楽岡一雄市長の死去に伴い、4月2日に投開票される館林市長選は、自民党元県議の無所属新人2人が出馬する保守分裂の激戦となった。選挙戦では目立った争点は見当たらず、安楽岡氏の後継者選びの色合いが濃い中、今後の館林市のかじ取り役を目指す主な候補である元県議2人の横顔を探った(届け出順)。
◇須藤和臣氏(49)「危機対応能力高いまちづくり」
 「安楽岡市長は私にとっての師であり、大恩人である。安楽岡氏は私心のない人で、私心がないことでは、私たちは同志」と、安楽岡市長の“後継者”としての出馬を力強く訴える。
 谷津義男農水相秘書官を経て県議3期、49歳で市長選に初挑戦する。保守分裂については「選挙をやるということに大きな意義がある。議員間で調整することはよろしくない。お互いに政策を出し、政策を論じ、そして市民の結果に基づいて市政が運営されるべきだ」と熱く語る。
 安楽岡氏の志を引き継ぐことを強調し、「ともにつくろう、先端のまち『館林』」をキャッチフレーズに掲げる。公約の第一に「災害時の危機対応能力の高いまちを目指す」を挙げ、消防署OBの公民館館長への登用などを検討したいとしている。実現に向けては「市民のために尽力し、自らをささげ、館林のためにこれからの人生を生きていきたい」とも。尊敬する政治家は中曽根康弘氏、福田赳夫氏、岸信介氏。「続けていければ幸い」とする趣味は野球。県議会では野球部主将を務めた。
 愛読書について尋ねると「地図を見るのが好き。見ているといろいろな夢や情景がわいてくる」と、笑顔を見せながら語る。
◇松本耕司氏(72)「邑楽郡5町と大都市圏形成を」
 安楽岡市長とは安楽岡氏が代議士秘書当時からの長い付き合いで週2、3度は酒を酌み交わす仲だったという。周囲から「安楽岡市政の後を継ぐのは、あなたしかいない」と背中を押され、“後継者”として立候補を決断した。
 県議5期を務め、72歳で市長選に初挑戦する。年齢については「考え方や実行力で判断していただきたい。気持ちは実年齢より若い」としている。そして、保守分裂には「こういう事態は、館林市ではほとんどなかった。正直残念。(須藤候補が)先に考えを言ってくれれば、私は立候補する立場にはならなかった」という。
 最優先の課題としては、安楽岡氏が取り組んできた館林厚生病院の医師と科目の充実などを挙げ、「都市間競争が激しくなる中、館林市と邑楽郡5町が力を合わせて、互いが持っている特徴を生かしながら一緒になって大都市圏を形成し、しっかりとしたまちづくりを共同で進めていきたい」と語る。
 17年前に心臓のバイパス手術を受けたが、2月の検診では「問題ない。大丈夫」と医師のお墨付きを得た。座右の銘は「誠実・信頼・実践」。趣味は学生時代からの乗馬。好きな日本酒は当選を目指し、今は断っている。
(当会注:今回、産経新聞が「主な候補者の横顔」と題して、自民党所属の2名の元県議の候補のみを取り上げて紹介したことは、小林候補が「主な候補者」ではないことになる。これは公平・平等な報道姿勢に反するどころか、ある意味では「選挙妨害」に当たる重大な違反行為である。)

********************毎日新聞2017年3月28日 地方版
館林市長選 「安楽岡後継」譲らず 元自民県議対決、保守層も二分 /群馬
 4月2日に投開票される館林市長選は、小林光一氏(70)▽須藤和臣氏(49)▽松本耕司氏(72)--の無所属新人3氏の争いとなった。須藤、松本両氏は同市を地盤とする自民党県議だった上、ともに故安楽岡一雄市長の後継を強調しており、保守層を二分する激戦の様相を見せている。【阿相久志】
 「県議の私はアシスト役。いいパスを出し、市長がシュートを決める」。須藤氏はこれまでの安楽岡氏との関係をスポーツ好きらしくサッカーに例えて強調する。
 谷津義男・元衆院議員(元農相)の秘書だった安楽岡氏が1995年に県議選に出馬する際、大学卒業後に東京都内で会社勤めしていた須藤氏が後任の秘書となった。さらに、安楽岡氏が県議から市長選に転じた2007年、再び須藤氏が「後継」として県議に初当選した。
 26日の出陣式では、安楽岡氏の後援会長、宇沢充圭氏が応援のあいさつに立ち、「今日は形見のネクタイをしてきた」と、支持者に継承者としての位置づけを印象づけた。
 一方の松本氏も「安楽岡さんとの付き合いは、秘書の時代から、長く、古い」とアピールする。99年の県議初当選から2期は県議でも同僚だった。酒好きとしても知られた安楽岡氏とは「週に2、3度は酒を酌み交わす仲だった」と懐かしむ。その盟友の急死に「安楽岡さんがやり残したこと、心残りのことを仕上げるには、私が頑張らないと」と出馬の動機を語る。さらに「支援者から『館林の沈滞ムードを変えてもらいたい』と言われた」ことで決意を固めたとも明かす。
 市長選立候補に伴って県議を自動失職する選択もあったが「退路を断って、けじめをつける」として、9日に辞職願を提出し、13日に許可された。
 館林市は長年、保守勢力が強く、「無風」地区だった。
 市長選では、安楽岡氏が07年と15年に無投票当選し、11年も圧勝した。過去にさかのぼると、山本達司氏が1977年から5期連続無投票当選し、その後、97年から3選した中島勝敬氏も3回中1回が無投票だった。
 県議選も07年と15年はいずれも自民党が無投票で2議席を獲得した。
 70歳代の男性市民は「長年の無風続きが、議論をあまり活発にしないおとなしい市民性につながる一端になったのでは」と指摘する。今回の選挙を「風穴」を開けるきっかけに--との期待は大きい。
 今回の市長選で、小林氏は既存の政治勢力を「市民感覚から外れている」と批判している。
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館林市長選立候補者
 (届け出順)
小林光一 70 市民団体役員 無新
須藤和臣 49 [元]県議 無新
松本耕司 72 [元]県議 無新
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【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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