■群馬県東吾妻町萩生地区で、群馬県による圃場整備事業が行われましたが、あろうことか、農道の敷砂利として大量の有害スラグが不法投棄されたことが発覚した為、市民オンブズマン群馬では、早急に有害スラグを撤去して、安全・安心な営農環境を回復するように群馬県農政部農村整備課に申入れをしました。ところが、県農政部は、聞く耳を持たず、有害スラグのうえに簡易舗装工事でフタをしてしまいました。そのため、当会では、有害スラグを隠ぺいするための無駄な公金支出に当たるとして、住民監査請求を群馬県監査委員に提出しましましたが、残念ながら県監査委員は、群馬県の主張を認めて、当会の請求を棄却しました。そこで、やむなく当会は、期限ギリギリの本日午後4時に、前橋地裁に、次の訴状を提出しました。今後の群馬県の対応に注目していきたいと思います。
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訴 状
平成27年4月30日
前橋地方裁判所 御中
原告 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
小 川 賢
同 〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
鈴 木 庸
被告 〒371-8570 群馬県前橋市大手町一丁目1番1号
群馬県知事 大澤 正明
住民訴訟事件
訴訟物の価格 160万円(算定不能)
貼用印紙額 13,000円
第1 請求の要旨
1.被告 群馬県知事 大澤正明は、「工事名 萩生川西地区農道舗装工事」請負契約に係る支出6,490,800円を吾妻農業事務所長に請求せよ。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
第2 当事者
(1)原告らは群馬県の住民であり納税者である。
(2)被告は、群馬県知事であり、群馬県が受けた損害・損失について、賠償・不当利得返還請求すべき義務を有する者である。
(3)訴外 池原工業株式会社 佐藤建設工業株式会社 大同特殊鋼株式会社
第3 住民監査請求
(1)平成27年1月30日、原告らは群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、「工事名 萩生川西地区農道舗装工事」(以下、「本件舗装工事」という。)にかかる請負契約(以下、「本件契約」という。)について措置請求(甲第1号証)を行った。
(2)平成27年2月16日、原告らは群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述(甲第3号証)を行った。
(3)平成27年3月31日、原告らは、請求棄却の監査結果(平成27年8→3月30日付、群監第202-25号)(甲第10号証)を受け取ったが不服である。
第4 群馬県の損失
(1)本件契約に基づいて群馬県吾妻農業事務所長が支出した6,490,800円は、群馬県の公金で負担すべき理由がなく、群馬県の損失である。
第5 本件契約の違法性
(1)本件契約は、群馬県が本件舗装工事以前に、同じ場所で不法投棄された「工事名 萩生川西地区 区画整理補完3工事」で使用された有害物質を含む路盤材を、本来、原因者の費用で撤去させるべきところ、それを怠ったうえに、有害物質に蓋をするために施工されたものであり、そもそも不要で、違法な工事であった。
(2)原告らは、東吾妻町萩生地区で、産業廃棄物として群馬県が認めた大同特殊鋼渋川工場由来の有害スラグが混入され、無許可処理された偽装再生砕石が敷砂利として使われていることを住民監査請求で指摘した。ところが、吾妻農業事務所は「下層路盤工として使用した」と反論した。
(3)しかし、監査委員は「路面敷砂利として積算しているので、農村整備課及び吾妻農業事務所の説明は一貫性の低いものである」と指摘しており、原告らは「敷砂利」ということで間違いはないと考えている。
(4)にもかかわらず、群馬県吾妻農業事務所は、この有害スラグ敷砂利に蓋をする目的で、平成26年6月11日に本件舗装工事を吾妻農業事務所で入札にかけ、翌6月12日に訴外池原工業株式会社と本件契約を5,292,000円で締結した。さらに、群馬県吾妻農業事務所は、なぜか同年7月11日になり、池原工業株式会社と、本件舗装工事にかかる変更契約を6,490,800円で締結した。
(5)だが、この有害スラグは、平成26年6月11日の入札時点で、既に廃棄物であることが、群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課や、排出者である訴外大同特殊鋼株式会社自身が認めていた。
(6)吾妻農業事務所は、有害スラグが施工された道路について、舗装を急いだ理由を、「いわれなき風評被害を防ぐ」と主張している。
(7)しかしこれまでにも、平成26年2月19日の第186回国会予算委員会の場で、地元選出の石関貴史・衆議院議員が質問し、さらに、国土交通省の「半田その4改良」現場において平成26年3月の分析調査で有害物質が検出され騒ぎになっていた。
(8)従って、吾妻農政→業事務所は、農政の重要な柱のひとつである「食の安全」に配慮して、訴外大同特殊鋼株式会社の負担で有害スラグ敷砂利を撤去することを最優先とすべきであった。このことは原告らが再三、群馬県農政部農村整備課を通じて吾妻農業事務所に要請していたが、結果的に、吾妻農業事務所は、原告らの要請を無視して、本件舗装工事を強行してしまった。
(9)産業廃棄物が農道に大量に不法投棄されているにもかかわらず、それを撤去しないまま、本件舗装工事により、産業廃棄物の上部に蓋をしたことは、不法投棄という違法行為を隠ぺいする目的で為されたものであるから、本件契約にかかる支出もまた違法である。
第6 まとめ
そもそも、本件舗装工事が必要となった原因は、平成26年1月27日に群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課が訴外大同特殊鋼株式会社渋川工場に、廃棄物処理法に基づく立入検査がきっかけで、同社が排出してきた鉄鋼スラグが産業廃棄物であることが世間に知られて、平成27年3月までに、国や県や渋川市がそれまでに施工した公共工事で、大量に使用されてきたことが判明し、さらに鉄鋼スラグには有害物資が基準値を超えて含有していることも判明したためである。
このため、国の水資源機構は平成27→6年6月11日に群馬用水の管理道路に使用されていた鉄鋼スラグの撤去作業を決断し、平成27→6年12月26日に、大同特殊鋼株式会社の費用で全量の撤去作業を完了している。
また、渋川市も平成8年渋川スカイランドパーク建設当時、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ砕石を路盤材として使用してきたが、この路盤材の有害性が問題となり、渋川市が撤去したあと、当該撤去費用を、大同特殊鋼が負担することを渋川市に申し入れて、渋川市はこれを了承した経緯がある。
いずれにしても、平成26年6月11日の時点では、既に大同特殊鋼渋川工場由来の鉄鋼スラグは、その有害性がひろく認識されており、群馬県自身も産業廃棄物であることを認識していたことは明らかである。
もともと、大同特殊鋼から排出された鉄鋼スラグは「鉱さい」として分類される産業廃棄物であり、食の安全性が担保されるべき農地に隣接する農道に使用すること自体、違法である。
群馬県県土整備部は、平成22年10月15日付で監第647-003-1号として、監理課建設政策室長の倉嶋敬明により、吾妻農業事務所を含む県土整備部内所属長・土木事務所長・関係機関の長宛の、「砕石骨材(クラッシヤラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をプレンドした骨材の取扱いについて」と題する通知を、本件契約の妥当性の根拠として挙げているが、実際には、県土整備部が大同特殊鋼からの要請を受けて、リサイクル法に定めた「再生砕石」を偽装したものであり、佐藤建設工業株式会社が、自社の砕石場から切り出した天然の砕石骨材と、大同特殊鋼株式会社が排出した基準値以上の有害物質を含む有害スラグを混合して、主に群馬県内に広く不法投棄される状況を作り出した不法書類であるから、群馬県農政部農村整備課と吾妻農業事務所の主張は失当である。
蓋をされたままの大量の鉄鋼スラグの撤去費用や復旧費用は、原因者に負担を求めるのが当然であるところ、「臭い物には蓋」という間違った判断により、本件舗装工事に係る本件契約を、訴外池原工業株式会社と締結し、公金を支出することを決定した群馬県吾妻農業事務所長は、群馬県が被った損失を賠償する責務がある。
証 拠 方 法
甲第1号証 群馬県職員措置請求書
甲第2号証 事実証明書
甲第3号証 意見書(陳述時の読み上げ用原稿)
甲第4号証 陳述資料1 県から大同特殊鋼に対する廃棄物に関する指示書
甲第5号証 陳述資料2 県から大同エコメットに対する廃棄物に関する指示書
甲第6号証 陳述資料3 県から丸太運輸に対する廃棄物に関する指示書
甲第7号証 陳述資料4 国交省による記者発表資料(2,014年12月26日)
甲第8号証 陳述資料5 東吾妻町圃場整備事業計画図
甲第9号証 陳述資料6 県土整備部から吾妻農業事務所等関係先への通知
甲第10号証 群馬県職員措置請求にかかる監査結果について
(群監第202-25号)
各号証とも写し
添 付 書 類
訴状(副本) 1通
甲各号証 2通
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■群馬県の安全な営農環境の保全を第一に考えなければならない農政部が、果たしてどのような主張をしてくるのか、その実態を逐次ご報告しますので、今後の住民訴訟の展開にぜひご注目ください。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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訴 状
平成27年4月30日
前橋地方裁判所 御中
原告 〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
小 川 賢
同 〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
鈴 木 庸
被告 〒371-8570 群馬県前橋市大手町一丁目1番1号
群馬県知事 大澤 正明
住民訴訟事件
訴訟物の価格 160万円(算定不能)
貼用印紙額 13,000円
第1 請求の要旨
1.被告 群馬県知事 大澤正明は、「工事名 萩生川西地区農道舗装工事」請負契約に係る支出6,490,800円を吾妻農業事務所長に請求せよ。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
第2 当事者
(1)原告らは群馬県の住民であり納税者である。
(2)被告は、群馬県知事であり、群馬県が受けた損害・損失について、賠償・不当利得返還請求すべき義務を有する者である。
(3)訴外 池原工業株式会社 佐藤建設工業株式会社 大同特殊鋼株式会社
第3 住民監査請求
(1)平成27年1月30日、原告らは群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、「工事名 萩生川西地区農道舗装工事」(以下、「本件舗装工事」という。)にかかる請負契約(以下、「本件契約」という。)について措置請求(甲第1号証)を行った。
(2)平成27年2月16日、原告らは群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述(甲第3号証)を行った。
(3)平成27年3月31日、原告らは、請求棄却の監査結果(平成27年8→3月30日付、群監第202-25号)(甲第10号証)を受け取ったが不服である。
第4 群馬県の損失
(1)本件契約に基づいて群馬県吾妻農業事務所長が支出した6,490,800円は、群馬県の公金で負担すべき理由がなく、群馬県の損失である。
第5 本件契約の違法性
(1)本件契約は、群馬県が本件舗装工事以前に、同じ場所で不法投棄された「工事名 萩生川西地区 区画整理補完3工事」で使用された有害物質を含む路盤材を、本来、原因者の費用で撤去させるべきところ、それを怠ったうえに、有害物質に蓋をするために施工されたものであり、そもそも不要で、違法な工事であった。
(2)原告らは、東吾妻町萩生地区で、産業廃棄物として群馬県が認めた大同特殊鋼渋川工場由来の有害スラグが混入され、無許可処理された偽装再生砕石が敷砂利として使われていることを住民監査請求で指摘した。ところが、吾妻農業事務所は「下層路盤工として使用した」と反論した。
(3)しかし、監査委員は「路面敷砂利として積算しているので、農村整備課及び吾妻農業事務所の説明は一貫性の低いものである」と指摘しており、原告らは「敷砂利」ということで間違いはないと考えている。
(4)にもかかわらず、群馬県吾妻農業事務所は、この有害スラグ敷砂利に蓋をする目的で、平成26年6月11日に本件舗装工事を吾妻農業事務所で入札にかけ、翌6月12日に訴外池原工業株式会社と本件契約を5,292,000円で締結した。さらに、群馬県吾妻農業事務所は、なぜか同年7月11日になり、池原工業株式会社と、本件舗装工事にかかる変更契約を6,490,800円で締結した。
(5)だが、この有害スラグは、平成26年6月11日の入札時点で、既に廃棄物であることが、群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課や、排出者である訴外大同特殊鋼株式会社自身が認めていた。
(6)吾妻農業事務所は、有害スラグが施工された道路について、舗装を急いだ理由を、「いわれなき風評被害を防ぐ」と主張している。
(7)しかしこれまでにも、平成26年2月19日の第186回国会予算委員会の場で、地元選出の石関貴史・衆議院議員が質問し、さらに、国土交通省の「半田その4改良」現場において平成26年3月の分析調査で有害物質が検出され騒ぎになっていた。
(8)従って、吾妻農政→業事務所は、農政の重要な柱のひとつである「食の安全」に配慮して、訴外大同特殊鋼株式会社の負担で有害スラグ敷砂利を撤去することを最優先とすべきであった。このことは原告らが再三、群馬県農政部農村整備課を通じて吾妻農業事務所に要請していたが、結果的に、吾妻農業事務所は、原告らの要請を無視して、本件舗装工事を強行してしまった。
(9)産業廃棄物が農道に大量に不法投棄されているにもかかわらず、それを撤去しないまま、本件舗装工事により、産業廃棄物の上部に蓋をしたことは、不法投棄という違法行為を隠ぺいする目的で為されたものであるから、本件契約にかかる支出もまた違法である。
第6 まとめ
そもそも、本件舗装工事が必要となった原因は、平成26年1月27日に群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課が訴外大同特殊鋼株式会社渋川工場に、廃棄物処理法に基づく立入検査がきっかけで、同社が排出してきた鉄鋼スラグが産業廃棄物であることが世間に知られて、平成27年3月までに、国や県や渋川市がそれまでに施工した公共工事で、大量に使用されてきたことが判明し、さらに鉄鋼スラグには有害物資が基準値を超えて含有していることも判明したためである。
このため、国の水資源機構は平成27→6年6月11日に群馬用水の管理道路に使用されていた鉄鋼スラグの撤去作業を決断し、平成27→6年12月26日に、大同特殊鋼株式会社の費用で全量の撤去作業を完了している。
また、渋川市も平成8年渋川スカイランドパーク建設当時、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ砕石を路盤材として使用してきたが、この路盤材の有害性が問題となり、渋川市が撤去したあと、当該撤去費用を、大同特殊鋼が負担することを渋川市に申し入れて、渋川市はこれを了承した経緯がある。
いずれにしても、平成26年6月11日の時点では、既に大同特殊鋼渋川工場由来の鉄鋼スラグは、その有害性がひろく認識されており、群馬県自身も産業廃棄物であることを認識していたことは明らかである。
もともと、大同特殊鋼から排出された鉄鋼スラグは「鉱さい」として分類される産業廃棄物であり、食の安全性が担保されるべき農地に隣接する農道に使用すること自体、違法である。
群馬県県土整備部は、平成22年10月15日付で監第647-003-1号として、監理課建設政策室長の倉嶋敬明により、吾妻農業事務所を含む県土整備部内所属長・土木事務所長・関係機関の長宛の、「砕石骨材(クラッシヤラン:C-40及びC-100)にクラッシャラン鉄鋼スラグ(CS-40)をプレンドした骨材の取扱いについて」と題する通知を、本件契約の妥当性の根拠として挙げているが、実際には、県土整備部が大同特殊鋼からの要請を受けて、リサイクル法に定めた「再生砕石」を偽装したものであり、佐藤建設工業株式会社が、自社の砕石場から切り出した天然の砕石骨材と、大同特殊鋼株式会社が排出した基準値以上の有害物質を含む有害スラグを混合して、主に群馬県内に広く不法投棄される状況を作り出した不法書類であるから、群馬県農政部農村整備課と吾妻農業事務所の主張は失当である。
蓋をされたままの大量の鉄鋼スラグの撤去費用や復旧費用は、原因者に負担を求めるのが当然であるところ、「臭い物には蓋」という間違った判断により、本件舗装工事に係る本件契約を、訴外池原工業株式会社と締結し、公金を支出することを決定した群馬県吾妻農業事務所長は、群馬県が被った損失を賠償する責務がある。
証 拠 方 法
甲第1号証 群馬県職員措置請求書
甲第2号証 事実証明書
甲第3号証 意見書(陳述時の読み上げ用原稿)
甲第4号証 陳述資料1 県から大同特殊鋼に対する廃棄物に関する指示書
甲第5号証 陳述資料2 県から大同エコメットに対する廃棄物に関する指示書
甲第6号証 陳述資料3 県から丸太運輸に対する廃棄物に関する指示書
甲第7号証 陳述資料4 国交省による記者発表資料(2,014年12月26日)
甲第8号証 陳述資料5 東吾妻町圃場整備事業計画図
甲第9号証 陳述資料6 県土整備部から吾妻農業事務所等関係先への通知
甲第10号証 群馬県職員措置請求にかかる監査結果について
(群監第202-25号)
各号証とも写し
添 付 書 類
訴状(副本) 1通
甲各号証 2通
**********
■群馬県の安全な営農環境の保全を第一に考えなければならない農政部が、果たしてどのような主張をしてくるのか、その実態を逐次ご報告しますので、今後の住民訴訟の展開にぜひご注目ください。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】