■安中市原市の公立碓氷病院で職員が診療報酬の請求文書に虚偽記載した疑いと、同じく有給休暇の不正取得の疑いで、当会が安中市長に通報した事件では、調査の結果、後者のほうの不正は54時間分だとして当会の試算の半分に過ぎず、前者の方は依然として全容が判明しないまま、不祥事が公に発覚してから半年以上が過ぎようとしています。このため、当会では3月27日付で安中市監査委員に対して公立碓氷病院の事務部長にかかる職員措置請求、いわゆる住民監査請求を行いました。この度、4月27日に配達証明郵便で監査結果通知が当会に届きました。
安中市監査委員から届いた通知の内容はつぎのとおりです。また、住民監査請求の提出に関しては次のブログを参照ください。
〇2018年3月28日:公立碓氷病院で不正行為?…不祥事の損害回収等を担保すべく住民監査請求を提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2605.html#readmore
*****住民監査結果通知*****PDF ⇒ img_20180428_0026.pdf
安監委発137号
平成30年4月25日
請求人 安中市野殿980番地
小川 賢 様
安中市監査委員 安藤 忠善
同 奥原 賢一
住民監査請求について(通知)
平成30年3月27日に提出のあった安中市職員措置請求について、内容を審査しましたので、その結果を下記のとおり通知します。
記
1 審査の結果(請求に対する判断)
本件請求を却下する。
2 理由
(1)住民監査請求の対象となる行為等は、地方公共団体に積極消極の損害を与えひいては住民全体の利益に反するものでなければならいもので、たとえ違法・埠頭な行為又は怠る事実があるとしても、当該地方公共団体に損害をもたらさない行為等は住民監査請求の対象にならないとされており、「(1)療法士別リハビリ実施記録と実際の実施開始・終了時間の間に、明らかに矛盾のあるケースが多発していること。」について、市に損害が発生しておらず、監査の対象とすることはできない。
(2)住民監査請求は、地方自治法第242条第2項の規定により財務会計所の行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、これをすることができないとされており、「(2)勤怠簿への年休、時間給の未記載が多発していること。」について、当該行為は、措置請求が行われた日(平成30年3月27日)の時点で1根に状経過していることとなるので監査の対象とすることはできない。
**********
■当会が監査委員事務局を訪れて直接窓口に提出したのが3月27日ですから、監査委員は1カ月も経たないうちに通知をよこしたことになります。つまり、なんら具体的な監査業務をしないまま、当会の請求を門前払いしたことがうかがえます。
今回当会が提起した監査請求のうち、(1)診療報酬の不正申告については、現在、関東厚生局からいろいろな指摘が為されており、それに対して碓氷病院側からの資料提供や調査報告が行われ、不正の実態解明が進められているものとみられます。
そのため、碓氷病院が受ける被害は明らかです。にもかかわらず、安中市監査委員らは「たとえ違法・不当な行為又は怠る事実があるとしても、安中市に損害をもたらされていない限り、監査の対象とすることは出来ない」と結論付けています。
実際に碓氷病院の関係者にヒヤリングもせず、被害がなかったなどと結論付けた可能性もあるので、当会では、監査委員に対して質問書を出すことも検討したいと思います。
ちなみに、最近の他地方公共団体における住民監査請求では、千葉県の住民が平成27年12月24日に住民訴訟を提起した「病院事業管理者に対し、県病院局の健康保険組合等への不正な診療報酬の返還等に係る支出に関し損害賠償請求することを求める」事件が挙げられます。
今回の結果通知で、監査委員が引用した「積極消極の損害」という表現は「監査の対象となる行為等は、地方公共団体に積極消極の損害を与えひいては住民全体の利益に反するものでなければならないというべきである」(最高裁平成6年9月8日第一小法廷判決)を参考にしたようです。これは他の自治体における監査委員らもよく使うフレーズですが、住民全体の利益に明らかに反する公立碓氷病院の不祥事件に対して、躊躇なく引用するあたり、安中市監査委員のレベルの低さを象徴しています。
■また、(2)の勤怠簿の不正申告について、安中市監査委員らは、財務会計上の行為と認定しているようですが、今度は「1年を経過した」あとの監査請求なので、監査の対象ではない、として、これもまた門前払いとなりました。
昨年9月に当会は、安中市長に直訴状でこのことを指摘しておりましたが、その結果を監査委員に確認してもらおうと思い、今回の住民監査請求となりました。ところが監査委員は、きちんと調べるつもりは皆無で、ひたすら、碓氷病院の事務部長を庇うべく、当会の請求を問答無用で却下したのでした。
■以上のとおり、これほど酷い監査結果も近年珍しいことですが、タゴ51億円事件を起こした安中市政では、監査委員のレベルもこの程度だということがあらためて証明された形です。
住民訴訟は、「(住民監査結果)通知があった日等から30日以内に住民訴訟を起こすことができる」(地方自治法第242条の2第1項2項)とありますので、5月26日までが提訴の期限となります。それまでに、関東厚生局など関係機関に現在の状況を聴取したうえで、対応を検討する所存です。
【市政をひらく安中市民の会事務局からの報告】
※参考情報「住民監査請求書」
**********
安中市職員措置請求書
公立碓氷病院事務部長に関する措置請求の要旨
1.請求の要旨
公立碓氷病院事務部長の神宮潔は、2017年6月8日付で現場から嘆願書が出されていたにも関わらず、その後、2017年7月31日付で請求人が安中市長に書面で通報し事実関係の調査を要請するまで、損害を放置した。請求人による安中市長への通知以降、ようやく神宮潔は、院内調査を開始し、平成29年第4回市議会定例会の12月15日開催の全員協議会に、碓氷病院に係る不正事案の説明を行った(事実証明書1)。しかし、未だに損害額の特定や、損害の具体的な回収を実施したのかどうか、市民に公表していない。
本事案の概要は次のとおりである。
請求人は2017年8月4日付で行政文書開示請求を行い、安中市は同8月17日付で2通の部分開示通知と1通の不存在決定通知を送ってきた。そして、前者の通知に基づき請求人は同8月23日に安中市役所2階の法制課で次の資料の部分開示を受けた。
① 嘆願書(事実証明書2)
② 単位単価情報(事実証明書3)
③ 公立碓氷病院組織規則(事実証明書4)
④ 公立碓氷病院患者別業務月報(事実証明書5)
⑤ 公立碓氷病院療法士別実施一覧(事実証明書6)
⑥ 安中市職員の給与に関する条例(事実証明書7)
⑦ 公立碓氷病院組織図(事実証明書8)
この結果をもとに、請求人は問題となっている次の2項目についてそれぞれ損害額を試算してみた。
(1) 療法士別リハビリ実施記録と実際の実施開始・終了時間の間に、明らかに矛盾のあるケースが多発していること。
(2) 勤怠簿への年休、時間給の未記載が多発していること。
このうち(1)については、2017年7月10~25日の半ヵ月に限ってみても、次に示す矛盾事例のあることが判明した。
**********
●7月10日(月)16:00に当該職員は療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、16:07~17:07に内科3病棟の女性患者に対して運動器リハビリ料【3単位】+早期リハビリ加算【3単位】を施療したことになっていること。⇒170点×3単位+30点×3単位=600点
●7月11日(火)15:40に当該職員は療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、15:50~16:05に内科3病棟の男性患者に対して運動器リハビリ量【1単位】を施療したことになっていること。さらに、16:07~16:48に内科3病棟の別の女性患者に対して運動器リハビリ料【1単位】+早期リハビリ加算【2単位】を施療したことになっていること。⇒170点×1単位+170点×1単位+30点×2単位=400点
●7月13日(木)15:35に当該職員は療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、16:05~16:25に内科4病棟の男性患者に運動器リハビリ料【1単位】+早期リハビリ加算【1単位】+リハビリ総合計画評価料+目標設定等支援・管理料(初回)を施療したことになっていること。さらに、16:28~16:49に内科3病棟の男性患者に対して廃用症候群リハビリ料【1単位】+早期リハビリ加算【1単位】を施療したことになっていること。⇒170点×1単位+30点×1単位+300点+250点+146点×1単位+30点×1単位=926点
●7月18日(火)9:25に当該職員は午前の施療を開始し、11:20に療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、11:05~11:45に内科3病棟の男性患者に対して運動器リハビリ料【2単位】を施療したことになっていること。さらに、午後の場合、当該職員は15:46に待機室に戻っているにもかかわらず、16:08~17:08に整形外科3病棟の男性患者に「運動器リハビリ料【3単位】を施療したことになっていること。⇒170点×2単位+170点×3単位=850点
●7月19日(水)11:40に当該職員は午前の施療を終わって療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、11:46-12:07に整形外科3病棟の男性患者に運動器リハビリ料【1単位】を施療していることになっていること。⇒170点×1単位=170点
●7月20日(木)9:20に当該職員は午前の施療を開始し、11:02に療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、11:08~11:47に内科3病棟の女性患者に運動器リハビリ料【2単位】を施療していることになっていること。なおこの時間内に、当該職員は11:20頃待機室を出ましたが数分に戻っていること。さらに、午後の場合、当該職員は15:55に待機室に戻っているにもかかわらず、16:07~16:47に内科4病棟の男性患者に運動器リハビリ料【2単位】+早期リハビリ加算【2単位】を施療したことになっていること。なお、この時間内に、当該職員は16:25に待機室を出て17:24に待機室に戻っていること。施療時間との食い違いが顕著であること。⇒170点×2単位+170点×2単位+30点×2単位=740点
●7月21日(金)9:46に当該職員は午前の施療を開始し、10:45に療法士の待機室に戻っているが、これについては09:24~10:45に内科3病棟の男性患者に廃用症候群リハビリ料【4単位】+早期リハビリ加算【2単位】を施療していることにされていること。確かにこの男性患者に対するリハビリ施療そのものは他社による目撃で確認できているが、20分ほど施療時間に食い違いが生じていることになること。さらに午後の場合、当該職員は15:00過ぎには療法士の待機室の自席にいたにもかかわらず、16:10~16:32に内科4病棟の男性患者に運動器リハビリ料【1単位】+早期リハビリ加算【1単位】を施療したことになっていること。16:20に当該職員がないか4病棟の男性患者のところにいなかったことが、他者に目撃され確認されていること。⇒146点×4単位+30点×2単位+170点×1単位+30点×1単位=844点
●7月24日(月)15:25に当該職員は、療養病棟から療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、15:25~16:25に内科3病棟の女性患者に運動器リハビリ料【3単位】を施療したことになっていること。さらに当該職員は、そのあと、16:29~16:50に内科療養病棟2階の男性患者に運動器リハビリ料【1単位】+早期リハビリ加算【1単位】を施療したことになっていること。⇒170点×3単位+170点×1単位+30点×1単位=610点
●7月25日(火)9:33に当該職員は午前の施療を開始し、11:16に療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、10:45~11:48に内科4病棟の女性患者に運動器リハビリ料【3単位】+早期リハビリ加算【3単位】を施療したことになっていること。さらに、午後の場合、当該職員は15:40に療法士の待機室に戻っているにもかかわらず、16:09~16:50に内科療養病棟2階の男性患者に運動器リハビリ料【2単位】+早期リハビリ加算【2単位】を施療したことになっていること。⇒170点×3単位+30点×3単位+170点×2単位+30点×2単位=1,000点
*********
以上の通り、僅か半ヵ月でこれほど多くの施療に関する虚偽記載が確認されている。
虚偽記載による療法実施の単位数がどれほどの診療報酬を意味するのか分からないが、同病院の信用問題にも関わる深刻な問題であることは容易に理解できる。
⇒半月合計で6,090点→60,900円となる。これと同様な不正行為を過去にさかのぼって行っていたとすると1年間で、60,900円×24=1,461,600円に上ることになる。
次に、(2)については、平成28年1月~平成29年2月に限ってみても、年次休暇の取得申請において、次に示す勤怠簿への年休、時間休の未記載の疑い、もしく明らかな未記載が判明した。
**********
●2016年1月5日:2時間休の未記載の疑い
●2016年2月16日:2時間休の未記載の疑い
●2016年2月17日:2時間休の未記載の疑い
●2016年2月19日:2時間休の未記載の疑い
●2016年3月15日:2時間休の未記載の疑い
●2016年3月30日:2時間休の未記載の疑い
●2016年4月7日:2時間休の未記載の疑い
●2016年5月31日:2時間休の未記載の疑い
●2016年7月1日:4時間休の明らかな未記載
●2016年7月22日:2時間休の未記載の疑い
●2016年8月2日:4~5時間休の明らかな未記載
●2016年8月3日:2時間休の未記載の疑い
●2016年8月8日:2時間休の未記載の疑い
●2016年8月15日:2時間休の未記載の疑い
●2016年8月18日:4~5時間休の明らかな未記載
●2016年8月29日:2時間休の未記載の疑い
●2016年9月1日:2時間休の未記載の疑い
●2016年9月6日:2時間休の未記載の疑い
●2016年9月13日:2時間休の未記載の疑い
●2016年9月14日:2時間休の未記載の疑い
●2016年9月20日:2時間休の未記載の疑い
●2016年10月4日:2時間休の未記載の疑い
●2016年10月11日:2時間休の未記載の疑い
●2016年10月12日:2時間休の未記載の疑い
●2016年10月24日:2時間休の未記載の疑い
●2016年10月26日:2時間休の未記載の疑い
●2016年10月27日:2時間休の未記載の疑い
●2016年10月28日:4時間休の明らかな未記載
●2016年10月31日:2時間休の未記載の疑い
●2016年11月1日:1日年休の明らかな未記載
●2016年11月4日:2時間休の未記載の疑い
●2016年11月11日:2時間休の未記載の疑い
●2016年11月28日:2時間休の未記載の疑い
●2016年11月30日:2時間休の未記載の疑い
●2016年12月15日:4~5時間休の明らかな未記載
●2017年1月11日:4時間休の明らかな未記載
●2017年1月26日:1日年休の明らかな未記載
●2017年2月3日:2時間休の明らかな未記載
●2017年2月6日:6時間休の明らかな未記載
**********
以上の通り、1年2カ月の期間における有給休暇の不正取得は、合計で106~109時間にのぼり、1日当たりの労働時間を8時間と仮定すると、13日と2~5時間に相当する。
⇒当該職員は療法士なので医療技師向けの医療職給料表(2)をもとに、仮に職務3級で56号給と想定した場合、給料月額が302,100円となる。そこで、月平均20日労働とすれば、有給休暇で不正取得した金額は13日5時間(13.625日)の期間分に相当するので、302,100円×13.625日/20日=205,806円となる。これがほぼ1年間に失われた人件費となる。
上記の損害が明らかであるにもかかわらず、神宮潔は、事実証明書1のとおり、不正に休暇を取得していたと判断される時間を合計54時間と特定した。これは請求人の試算の半分に過ぎない。
また、診療報酬の計算根拠となっている施療時間については、電子カルテに遺された唯一の証拠だとしているが、本事件が発覚した昨年8月から、既に8カ月が経過しようとするのに、いまだに全貌が明らかになっておらず、関東厚生局との間の協議を未だにしているという。
こうした無責任な対応は、今回の不正有給取得と不正診療記録記載という、特定の30代理学療法士による不正行為に対するものとしては、不十分としか言いようがなく、このような機器管理の不作為は、市民納税者による公立碓氷病院への信頼を大きく棄損するものである。
よって、神宮潔のこの行為は、地方自治法242条の2の3号「当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求」に該当すると思料される。
その結果、30代理学療法士が市に与えた損害を回収させるために、神宮潔に勧告されたい。
そして、回収が不可能の場合は、地方自治法24条の2の4号「当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求」に基づき、神宮潔に損害賠償を請求するよう勧告されたい。
2.請求者
住 所 安中市野殿980番地
職 業 会社員
氏 名 (自署押印)
地方自治法第242条第1項の規定により,別紙事実証明書を添え必要な措置を請求します。
平成30年3月27日
安中市監査委員(あて)
*****別紙*****
事実証明書
1 「公立碓氷病院・リハビリ室問題」について
2 嘆願書
3 単位単価情報
4 公立碓氷病院組織規則
5 患者別業務日報
6 療法士別実施一覧
7 安中市職員の給与に関する条例(抜粋)
8 公立碓氷病院・病院概要・組織構成
**********