↑保護者が県職員らの110番通報で駆け付けた前橋署員らに現行犯逮捕された現場の県庁24階エレベーターホール↑
■2月28日に県庁24階で発生した公務執行妨害事件は、その後、逮捕された容疑者がどうなっているのか、マスコミ報道がないため、皆目見当がつかない状況にあります。まずは、この事件を報じた報道記事を見てみましょう。
**********群馬テレビ2024年2月28日21:47
群馬県庁で職員に暴行疑い 68歳の男を逮捕 男は高2自殺でいじめを訴えていた遺族
↑【当会コメント】この写真は、保護者が警察に護送される時のもので、背景に写っている車両のエンブレムが見えることから、護送車に乘るところだと思われる。警察は、容疑者を護送車に乗せるところと降ろすところを、マスコミに撮らせるため、あらかじめ場所と時間を伝えて、「何時に出るから、カメラ席はここだ」と規制線で場所をセットしておき、写真を撮らせる。前橋地検に入るときは建物に乗り付けてすぐに出入りしてしまい撮影できないが、前橋地裁へ勾留請求に来るときは裏口のところにきて、ブルーシートを張って容疑者を乗降させる。そのため、要領のよい記者はブルーシートの下から容疑者の足を撮ったりする。ところが、この保護者が護送車に乘るシーンは、ブルーシートも貼っておらず、何の防御もなく、まさに見せしめとしか言いようがない。背景に地裁の庭の植え込みの緑の樹木が見える。制服の警察官の後ろに見える護送車と思しき車両のエンブレムは、「・・bow」と読み取れるため、日野のレインボーというバスを護送車に改造したものと思われる。↑
28日午後、群馬県庁で県の職員に暴行を加えたとして68歳の男が現行犯逮捕されました。男は2019年、高校2年の女子生徒が自殺で亡くなり、いじめを訴えていた遺族でした。
公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されたのは、前橋市内に住む68歳の男です。警察によりますと、男は、28日の午後2時半頃県庁24階のエレベーターホールで、応対した県教育委員会の2人の職員に足蹴りするなどの暴行を加え、職務の執行を妨害した疑いがもたれています。警察の調べに対し、男は、「蹴ってはいない」などと容疑を否認しています。暴行を受けた2人の職員は、いずれもケガはないということです。
県教育委員会によりますと、男は2019年、高校2年の女子生徒が自殺で亡くなり、いじめを訴えていた遺族でした。この問題を巡っては、2020年の第三者委員会による調査結果を不服とした遺族の要請を受け県の「いじめ再調査委員会」が再調査を行っていて、今月24日に「学校の対応が不十分」などとした報告書を県に提出していました。
遺族である男には、今月26日に県が報告していたということです。警察で動機など詳しく調べています。
**********上毛新聞2024年2月28日22:20
群馬県庁で職員を蹴った疑い、県警前橋署が男を逮捕 「蹴っていない」と否認
群馬県警前橋署は28日、公務執行妨害の疑いで、群馬県前橋市の無職の男(68)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は同日午後2時20分ごろ、県庁24階で公務として応対した52歳と27歳の男性県職員を蹴るなどの暴行を加え、職務の執行を妨害した疑い。職員にけがはなかった。
同署によると、「蹴っていない」と容疑を否認している。別の男性職員が110番通報した。
**********毎日新聞2024年2月29日
自殺高2の父、県教委職員を蹴ったか 公務執行妨害容疑で逮捕
↑群馬県庁=前橋市で、田所柳子撮影© 毎日新聞 提供↑
28日午後2時35分ごろ、前橋市大手町1の群馬県庁24階エレベーターホールで、「訪問してきた男に足蹴りされた」と県教育委員会の職員から110番があった。通報で駆け付けた前橋署員が、同市の無職、伊藤竹行容疑者(68)を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した。県教委によると、伊藤容疑者は2019年2月に自殺した県立高2年の女子生徒の父親。遺族は自殺の原因が同級生によるいじめが原因だと訴えており、24日には第三者委員会が再調査結果の報告書を公表し、26日に遺族に手渡していた。
同署によると、伊藤容疑者は「蹴っていない」などと容疑を否認しているという。職員にけがはなかった。
県教委によると、伊藤容疑者は午後2時ごろに県教委を訪問。第三者委が山本一太知事に答申した報告書の内容を巡って、応対した職員に対し一方的に暴言を吐き続けたため、職員2人が伊藤容疑者を別の階に案内しようとしたところ、足蹴りするなどしたという。
19年に当時17歳の女子生徒が自殺した問題では、県教委が設置した第三者委が19~20年に調査したが、内容を不服とした遺族の求めで、県が再調査委を設置し、21年7月から今年2月まで審議してきた。
再調査委の報告書では、「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性は十分にあった」などとして、学校の体制に問題があったと指摘した。自殺の原因は「いじめを含むさまざまな要因が心理的苦痛を高めた」としつつも、飼い猫の死を「直接的な要因」と位置づけた。【西本龍太朗】
**********産経新聞2024年2月29日15:06
群馬県教委職員を蹴った疑い、自殺した高2の父を逮捕
群馬県警は29日までに、県庁内で県教育委員会の職員を蹴ったとして、公務執行妨害の疑いで、前橋市上大屋町、無職、伊藤竹行容疑者(68)を現行犯逮捕した。「蹴っていない」と容疑を否認している。県教委によると、伊藤容疑者は2019年に自殺した県立高2年の有紀さん=当時(17)=の父親。遺族は自殺の原因はいじめだと主張していた。
県の再調査委員会は2月24日、自殺といじめとの因果関係などを再調査した結果について報告書を公表。いじめが直接的な原因ではないものの「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性はあった」とした。
県教委によると、伊藤容疑者は28日午後2時ごろ、県教委を訪問。応対した職員に暴言を浴びせるなどしたため、男性職員2人が別の階に案内しようとしたところ蹴ったという。
逮捕容疑は28日午後、県庁のエレベーターホールで職員2人を蹴り、公務執行を妨害したとしている。
**********朝日新聞デジタル2024年2月29日
自殺の高2生徒のいじめ再調査めぐり県職員を蹴った疑い 父親を逮捕
↑再調査委員会の報告書© 朝日新聞社↑
※参考:群馬県いじめ再調査委員会報告書 公表版↓
群馬県庁舎内で県教育委員会の職員2人を蹴ったとして、前橋署は28日、前橋市の男(68)を公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕し、発表した。「蹴っていない」と容疑を否認しているという。男は2019年に自殺した県立高2年の女子生徒(当時17)の父親で、県のいじめ再調査委員会がまとめた報告書を26日に受け取っていたという。
↑いじめと自殺の直接的な因果関係は認めなかったが、「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性は十分にあった」とした再調査委員会の報告書↑
署の発表によると、逮捕容疑は、28日午後2時20分ごろ、前橋市大手町の県庁24階のエレベーターホールで県教委の27歳と52歳の男性職員2人を蹴ったというもの。約15分後に職員が110番通報し、署員が駆けつけて逮捕した。
県教委によると、父親は報告書の内容をめぐって県庁に来たとみられる。「主訴を聞き取ろうと対応したが、暴言を言われたり蹴られたりしたため通報した」としている。一方で、「(遺族として)ご要望がある場合には受け止めていきたい」という。
女子生徒は19年2月、前橋市内の踏切で自殺した。遺族は「学校でのいじめが原因」と訴えていた。
県の再調査委員会が24日に公表した報告書は、生徒へのいじめは認めたものの、自殺との直接的な因果関係は認めなかった。そのうえで自殺のきっかけは「飼い猫の死」としたうえで、複合的な要因を指摘している。また「相談体制が機能していれば、命は救えた」「学校の対応が適切なら自死を回避できた可能性があった」などと、学校側の対応を批判する内容が盛りこまれていた。(川村さくら、高木智子)
**********
■この事件は、これまでも群馬県から準・反社勢力視された経験のある当会としても、看過できないため、事の顛末を関係先から聴取する必要があると考え、3月25日に県庁を訪れました。
さっそく24階のエレベーターホールを出て、現場をチェックし、同じ階の教育委員会事務局の管理課に行きました。県立高校の管理に携わっていると考えたからです。しかし、管理課に聞いたところ、「本件は総務課だ」ということで、同じ24階の北フロアに移動しました。
■応対に出たのは、教育委員会事務局総務課行政係(教育委員会会議、市町村教委連絡調整、叙勲、表彰、広報)の井澤悟志係長でした。
当会からは「なぜ公務執行妨害の形で警察を呼んだのか?また、こういう場合、県庁内のどこが110番通報を判断するのか?経緯を知りたい」と質問したところ、「公務執行妨害になるかどうかは警察が判断している。事件の端緒となった110番をした具体的な事情については、警察からあまり口外しないように、とクギを刺されている」とのことでした。
そして、「今回のような事件に対処する場合、一般的には、内規というものは教育委員会にはなく、庁舎管理全体の中で、県庁は一般県民がいろいろと訪れる施設なので、財産有効活用課(財活課)のほうで、どういった時にどうなるかを判断している」ということでした。
■これまで市民オンブズマン群馬の経験では、庁舎内での一般県民と県職員とのトラブルが発生した場合、県庁2階の生活こども部県民活動支援・広聴課広聴・案内係(わたしの提案(知事への手紙)、一般広聴、出前講座、県民センター運営、案内業務、行政対象暴力対策、公益通報者保護制度)が担当すると考えていました。
ところが、教育委員会事務局総務課行政係によると「それとは別で、庁舎管理全体では、たとえば県庁で大声を出したり、長時間居座ったりした場合、こういう対応をせよ、と言うことで、県庁11階の財活課が対応する。ここが庁舎を管理しているので、一般県民により、通常の業務を妨げる行為があった場合、どういう取扱いをするのか、という内規については11階の財活課に行って聞いてほしい」のだそうです。
当会から「それでは、今回の事件について、業務執行妨害と判断した動機は警察で聞く。また、110番するような状況についても、警察からあまり言うなと言われているとのことだが、この背景状況は非常に重要。なぜ、110番する必要があったのか。起訴・不起訴はどうなるのか。これらについて警察に聞いても、『教えられない』と言うはず。となると、本件が仮に検察により起訴されて、裁判所で公務執行妨害に係る刑事事件として公判が開かれ、検察の冒頭陳述が為される場合には、傍聴などを通じて公表されることになる。だが、今のところ、逮捕された保護者に関するその後の報道がされていない」と説明しました。
そして当会は、「一般県民は、県職員に対して不満を示した場合、つい暴言や手を出してしまいがちだが、県職員の110番通報で警察が呼ばれ、今回は公務執行妨害容疑で逮捕されたわけだ。一方、県職員の場合、知事部局も教育委員会も同じく、職員の懲戒等に係る指針には、告発義務が記されていないため、一般人は起訴されたら前科者にされてしまうリスクを負っているが、県職員は不正をしても県から告訴・告発されないため、前科者になるリスクはない」と述べました。
さらに当会は、「教育委員会の場合、日本版DBS(Disclosure and Barring Service)制度は、性犯罪を行っても警察に逮捕されずに、教育委員会内部での処分だと前科がつかないので、機能しないことになる。だから、人事課に『職員の懲戒等の指針に、告発義務を追記してほしい』と再三頼んでも聞いてもらえない」と県民と県職員の不公平な実態を説きました。
行政係によると「今回の事件は、警察から発表したものであり、県がプレスリリースしたものではない。また、この事件に係る調査委員会(第三者委員会)の調査結果は、2021年に県のホームページで公表しており、調査委の会議録も、どこまで詳しいかどうかは何とも言えないが、一応オープンにしている」ということです。
■そこで、次に県庁11階の財産有効活用課(財活課)を訪れて、この事件の対応についてヒヤリングをしました。対応したのは同課財産管理係の高橋担当でした。
財産管理係によると「こうしたトラブルへの対応業務について、所掌が被る部分はあるものの、基本的には県民活動支援・広聴課が管理し、財活課は庁舎管理の立場で退去命令を出す、ということで一部業務が重なる。例えば、県庁内の共用部で暴れている人物がいる場合、他の来庁者への迷惑や危害が加えられるおそれがある。その時に退去命令を出す場合がある。このとき、共用部分ということで財活課が担当することになる。それに対して、例えば、執務室の中に来て、暴力行為を働く人物がいる場合、当然執務室の中で、ということになるため、管理している当該部署が退去命令を出すことになる。さらに、そこから、暴力行為がエスカレートして、行政対象暴力の段階になった場合、2階の県民活動支援・広聴課が対応することになる。そういう意味で棲み分けはしているが、微妙に業務が重なる部分がある」と言う説明がありました。
また、財産管理係では、あくまで私見としながら、「110番通報をなぜしたのかについて、たぶん、『こういう規定でここまでのことがあったので通報する』というプロセスではなく、単純に、当該職員に対して具体的な危害が加えられたためだと推察される。病院や学校でも同じだが、職員が殴られたとか、怪我をさせられたと言えば、おそらくそれは、規則云々ではなく、暴力を働かれたということで、当該職員の判断で110番通報したということになるのでは」とのコメントがありました。
当会は、「それを暴力と捉えるかと言うところだが、暴言・暴行について、一般県民から県職員に対するハラスメント、カスタマー・ハラスメントがあったとしても、110番されて公務執行妨害容疑で逮捕されたらメディアに名前を晒されかねず、さらに送検され起訴され、裁判で執行猶予付きでも有罪になれば、前科者となる。なぜ公務執行妨害罪が適用されたのかは、24階の担当者は全部の警察のほうが判断したので自分は何とも答えられないという。それはそうかもしれないが、110番をすることは重大な行為。それに対応する事件があったことはあったのだろうが、父親として自分の娘の自死の真相を知り、再発防止を願うのは当然のことである。きちんと調査をしたのかどうか、調査結果に不満があったので、そこのところを何度も何度も伝えて善処を要望しても、聞いてもらえなければ、精神的に不安定となり、つい手足が出てしまったことは容易に想像できる。娘をなくした父親の心境を斟酌してもなお、足蹴りをされた県職員がなぜ110番までしなければならないのか。よほど深刻な事が起きたのだろうが、新聞記事によると職員にケガはなかったという。父親の心境や立場を考えれば、ある程度の許容範囲はあってしかるべきと考える。その辺を検証してみたいと思って今回ヒヤリングをお願いしている」と説明しました。
これに対して財産管理係からは、あくまで私見だとして、「現場にいたわけではないので、あくまで推測に留まるが、(県職員は)何でもかんでも110番はしない。本件について、本人(自死した高2女子生徒の保護者である父親)は何度も県庁に来ている。単純に、毎回来るたびに、大声を出していたら、そこで既に110番通報されているはず。大きい声ももちろんだが、胸倉を掴んで『殺すぞ』などと強迫したり、結果的にケガはしなかったものの、本人に思い切り蹴られて、県職員が『これは危ない』と生命の危険を感じたとすれば、通報で駆け付けた警察官は、中立の立場で、双方に確認をとって、『これは公務執行妨害に当たる』という判断を現場でした、本人が現行犯逮捕されたということだというふうにも思える。本人がしつこく来庁し、あれこれ抗議することについて、対応が面倒くさいから110番通報することはないはずだ」と言うコメントがありました。
■こうして、足蹴りされたという52歳と27歳の県の男性職員2名の特定は叶わず、110番通報をした状況も、群馬県側からの事情説明が得られないため、まったくわかりませんでした。
そのため、やはり110番通報を受けて現場に駆け付け、父親を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した前橋署にも事情をヒヤリングする必要があると考えて、4月11日午前11時に前橋警察署を訪れ、捜査1課の中村担当と面談しました。
1時間ほど粘って問い質してみましたが、結局、いつものとおり、住民からの情報提供を広く積極的に求めるのに、それらの提供された情報を踏まえたその後の捜査について、警察からは「捜査の過程や結果について、一切話すことはできない」とする紋切り型の回答しか返ってきませんでした。
当会は「世間ではギブ・アンド・テイクという言葉が常識的に使われていますが、警察は普段から捜査協力を得るため、事件や事故に関する緊急通報、いわゆる110番をはじめ、内部通報、外部通報、公益通報など、住民からの情報提供を常に求めているのに、実際に通報した事案がどの後、どのように扱われたのか、情報を積極的に開示したり、説明したりする姿勢が見られません。このことは、一般市民からの情報提供の協力を自ら得られなくしていることになりかねないのでは」と指摘しました。
元警察官の当会副代表は、「今回の事件では、公務員のからだを蹴ったとして公務執行妨害罪を適用しているが、公務員が今やっている仕事を妨害したわけではない。ケガをさせたことによる障害は別だが、公務員が今まさに職務執行しようとしている仕事を妨害するのが公務執行妨害と言える。ところが、警察官は『俺に暴行したから公務執行妨害だ』というふうに考えている。公務執行妨害罪は、公務である職務が保護法益であるため、事務をしている公務員が、そこで脅されたから事務が滞ったとか止めたとか、それが職務執行妨害で、職務が保護法益となる。だが、警察は不勉強だから、体にさわったことが公務執行妨害だと思っている。こうして逮捕のでっちあげがまかり通っているのが現状と言える。私もそれででっち上げ逮捕をされた。警察は私を逮捕してから、体当たりされた際に、壁に手をついてケガをしたと偽の診断書をとってきた」と自らの経験を踏まえて、「警察は保護法益を勘違いしている」と語っています。
■結局、この公務執行妨害事件では、関係者からのヒヤリングはすべて空振りに終わりました。
ところが、当会が4月11日に前橋署にこの事件の顛末についてヒヤリングした3日前に、地元紙が次の報道をしていたことが後日わかりました。
**********上毛新聞2024年4月8日
群馬県庁で公務執行妨害疑いの男性を不起訴 前橋地検
群馬県庁で2月、県職員2人を蹴るなどの暴行をしたとして公務執行妨害の疑いで逮捕、送検された前橋市の男性(68)について、前橋地検は7日までに、不起訴とした。3月28日付。理由は明らかにしていない。
男性は同19日に、処分保留で釈放されていた。
**********
このことから、この事件の時系列を整理してみると、次のとおりになります。
○2月24日
群馬県いじめ再調査委員会が報告書を公表。
○2月26日
保護者が、県いじめ再調査委員会がまとめた報告書を受け取る。
○2月28日午後2時20分ごろ
再調査報告書の内容を巡り県庁24階の群馬県教育委員会を訪れた保護者が、応対した職員に暴言を浴びせるなどしたとして、県教育委員会の27歳と52歳の男性職員が保護者を別の階に案内しようとしたところ、保護者が県庁24階エレベーターホールで県教育委員会職員2名を足蹴り。
○同日午後2時35分ごろ
足蹴りされた男性職員らが「(保護者の)主訴を聴き取ろうと対応したが、暴言を言われたり蹴られたりした」として県警に110番電話をする。
○同日午後3時ごろ?
県警から連絡を受けた最寄りの前橋署から複数の警察官が現場に駆け付け、保護者と職員らの双方から事情を聴き、公務執行妨害罪容疑が適用されると判断し、保護者を現行犯逮捕する。
○2月29日ごろ?
警察が2月28日午後3時ごろ逮捕し留置した保護者の身柄を48時間以内に前橋地検の検察官へ送致(送検)。
○3月1日ごろ
前橋地検の検察官が、警察から送致された保護者を引き続き留置施設・拘置所に拘束する必要があると判断し、24時間以内に裁判所に勾留請求を行う。
○3月1日~3月18日
裁判所から10日間の勾留に加えて、さらに10日間の勾留延長が認められ、最長20日間の勾留期間中、前橋地検の検察官が保護者の起訴か不起訴を判断。
○3月19日
前橋地検が、20日間の勾留満期ギリギリで、処分を決めないまま(処分保留)で保護者を釈放。
○3月28日
前橋地検が保護者の不起訴処分を決定。不起訴処分の理由は公表せず。
○4月8日
この日、地元紙が保護者の不起訴処分を報道。
■このように、前橋地検は、保護者を不起訴処分としましたが、その理由を公表しません。このことは、大変重要な意味を有します。
なぜなら、不起訴処分となる理由は様々であり、勾留満期時点で不起訴処分の理由が明確でないなら、処分を下すことはできないからです。
例えば、不起訴処分の理由のひとつである「嫌疑なし」は、被疑者とされた保護者が犯罪の行為者でないことが明白なときや犯罪の成否を認定するべき証拠のないことが明白な場合です。
勾留満期の段階において、人違いや犯罪の証拠がどこにも存在しないことがハッキリしていないなら、直ちに「嫌疑なし」と断定することはできず、処分保留として捜査を続けることになります。
同じように、不起訴処分の理由のひとつの「嫌疑不十分」は、犯罪の成立を認定するべき証拠が足りない場合です。これは、犯罪を推認させる証拠があっても、勾留満期の段階において、仮に起訴をしても裁判官をして確信に至らせるまでの証拠は揃っておらず、既に捜査は尽くしたので、これ以上の捜査をしても追加の証拠が出てくる見込みもない、という場合です。
一方で、まだ捜査が尽くされたとは言えない状況であり、捜査を継続すれば追加の証拠を得られる可能性が高い場合には、直ちに「嫌疑不十分」として不起訴とすることはできず、処分保留としてさらに証拠を探すことになります。
また、勾留満期の段階で有罪判決の見込みがあっても、必ず起訴処分となるわけではなく、検察官は、行政や政界などからの圧力を含む諸般の事情を考慮して、訴追を必要としないと判断した場合には、「起訴猶予」として不起訴処分とすることもあります。
今回の事件は、保護者が現行犯逮捕されており、現場での状況は当事者同士からの聴取も済んでいることから、これが公務執行妨害罪にあたるかどうか、について検察官は慎重に判断したはずです。
その結果、不起訴処分となったわけですから、その理由について、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」のどれに該当するのか、しっかりと前橋地検に確認しておく必要があります。
しかし、今回の事件で、保護者は、不起訴処分をおそらく口頭で検察官から告げられただけだと思いますが、検察官はこの不起訴処分の理由を明らかにしていません。
なので、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された保護者がなぜ不起訴となったのか、その理由を明らかにしておかないと、今後、公務員の不当な事務事業に対して苦情を申し立てた場合、大声を挙げたり、思わず公務員のからだに触れたりした場合、警察に110番通報され公務執行妨害罪の容疑で逮捕されかねません。
■このように考えた当会は、保護者の方に面談して、この事件できちんと不起訴処分告知書を前橋地検の検察官から取得しておき、さらにその理由について、「嫌疑なし」か「嫌疑不十分」か「起訴猶予」のどれかを確認しておくことを進言すべく、4月21日午後、当会役員が保護者ご本人の自宅を訪問しました。
ご本人とは、玄関先でお会いし、言葉をおかけしましたが、当会の話は聞いてもらえませんでした。いじめによる愛娘の自死や、その原因究明・責任所在明確化・再発防止策をまとめるべき県教委の不誠実な対応、さらには「蹴ってはいない」と主張したにもかかわらず県職員らの110番通報で現行犯逮捕され、群馬テレビで逮捕の様子が報道され、実名を晒され、警察や検察の取り調べを受け勾留されただけに、無理もありません。
保護者のかたは、一方的に社会の不満を述べられ、結論的には立ち入ったお話は何も窺えませんでした。そして、取り付く島もなく、数分後に玄関ドアを閉められてしまいました。
保護者のかたと面談した当会役員の印象では、「不満が積もり積もって爆発寸前という感じで、性格的なこともあるのかもしれないが。一瞬の会話でも精神的にかなり重症と感じた」とのことです。
■そこで、4月23日午後、県庁24階の教育委員会総務課行政係を再び訪れて、井澤係長に、「今回の公務執行妨害事件で容疑者とされた保護者のからが不起訴処分になったが、この処分理由について、行政として前橋地検に対し、不起訴処分理由を問い合わせてほしい」と強く依頼しました。
↑教育委員会総務課の廊下と執務スペースの間にある書類用キャビネットの上にあるスタンド式の案内プレートの裏面には、このように「群馬県県庁舎等管理規則(抜粋)」が記されており、職員は来訪者と面談する際に、これを見ながら対応しており、来訪者の言動・挙動が少しでもこれらの禁止行為に抵触すると判断すれば、110番通報されるリスクもあり得る。(上記写真は同課の許可を得て撮影)↑
しかし、同係長は「なぜ、我々がそのようなことをしなければならないのか。業務執行妨害罪の容疑があると判断したのは警察だ。警察に聞けばよいのではないか」と述べるのみでした。
当会は「今回の事件で、群馬県は「110番通報をする判断は、直面した事案の状況に応じて自身が身の危険を感じた職員自身が判断したもの」としていますが、そうした曖昧なまま、職員が110番通報を乱発すると、納税者県民にとって、行政を批判したりする際にリスクを抱えることになる。行政と県民との間の安心で平等な付き合いを担保するために、今回の事件を奇貨として、きちんと検証すべきではないでしょうか」という趣旨で、職員が県民の振る舞いに対して110番通報をする際のルールつくりを申し入れたのですが、結局受け入れてもらえませんでした。
こうして、この事件を巡る当会の検証作業は不完全燃焼のまま、現在に至っています。今後も、類似の事案が発生するかもしれませんので、引き続き、研究を重ねてまいりたいと存じます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※関係情報
**********NHK群馬 NEWS WEB 2024年02月24日15:55
高2女子生徒の自殺 “いじめの影響大 否定できず”報告書
5年前、前橋市内の県立高校の女子生徒が自殺した問題で、群馬県の調査委員会はいじめがあったことを認め、「自殺に与えた影響は大きなものであった可能性は否定できず、学校の対応が適切であれば回避できた可能性は十分にあった」とする報告書をまとめました。
5年前、前橋市内の県立高校の2年生だった女子生徒が自殺し、その後、学校でのいじめをうかがわせるメモが見つかった問題で、群馬県教育委員会が設置した第三者委員会はよくとし、いじめを一部認めた一方、「自殺の要因としては主要なものではない」と結論づけました。
遺族の求めを受けて、6人の有識者による県の「いじめ再調査委員会」が改めて調べ、24日、山本知事に報告書を提出しました。
報告書はいじめがあったことを認め、「自殺に与えた影響は大きなものであった可能性は否定できない」と指摘しました。
その上で、「学校にはいじめ予防の指導体制が十分に構築されておらず、対応が適切であれば自殺を回避できた可能性は十分にあった」と結論づけました。
「いじめ再調査委員会」の八島禎宏委員長は記者会見し、「学校は教員研修を活性化させ、再発防止に向け、きちんと生徒に向き合うことが必要だ」と述べました。
※参考:群馬県いじめ再調査委員会報告書 公表版↓
**********群馬県HP「教育委員会」2021年4月16日更新
平成31年2月1日県立高等学校生徒死亡事案
1 事案の概要
平成31年2月1日、県立高等学校2年に在籍する女子生徒が、上毛電気鉄道沿線の踏切で電車にはねられ、その後、搬送先の病院で死亡が確認される事案が発生しました。
死亡した生徒の保護者の証言からいじめによる自殺が疑われたため、当該校においていじめ防止対策推進法第23条第2項及び文部科学省が策定した「子供の自殺が起きた時の背景調査の指針」に基づく基本調査が行われました。
平成31年3月31日、当該校から県教育委員会教育長に対し、調査の結果として、当該生徒がフラワー装飾技能士検定の試験を控え授業が辛いと感じていた時期があったことや、学校行事を巡るクラスメートとのトラブルの中で一部の言動にいじめに該当する行為が確認されたことなどが報告されました。また、当該生徒が亡くなったことと基本調査で把握できたことの因果関係の有無を判断するには、専門的な観点から、さらなる調査が必要であるとの考えが示されました。
県教育委員会では、本事案をいじめ防止対策推進法第28条第1項に掲げる重大事態として対処することとし、事実関係を明確にするともに、同種の事態の発生の防止に資するため、当該校の設置者として詳細調査を行うことを、平成31年4月10日に開催した教育委員会会議臨時会で決定しました。
2 群馬県いじめ問題等対策委員会への諮問
詳細調査の実施にあたっては、県条例に基づき、県教育委員会の附属機関である群馬県いじめ問題等対策委員会(以下、「対策委員会」)が行うこととされています。
対策委員会では、平成31年4月24日に開催した第1回対策委員会で県教育委員会から諮問を受け、調査審議を実施しました。
<諮問事項>
・当該生徒に係るいじめの事実関係の検証について
・当該生徒の死亡に至る過程や心理の検証について
<今後の対応と再発防止策について>
参考:諮問書(平成31年4月24日群馬県教育委員会)(PDFファイル:40KB)↓
3 群馬県いじめ問題等対策委員会からの答申(調査結果)の概要
令和2年11月30日付けで、県教育委員会に対し、対策委員会委員長から答申書が提出されました。
参考:答申の概要(令和2年11月30日記者会見資料)(PDFファイル:167KB)↓
4 調査審議のための対策委員会開催状況
※重大事態の調査審議に係る議事及び審議内容は非公開です。
・平成31年4月24日 第1回対策委員会会議(諮問)
・令和元年5月22日 第2回対策委員会会議
・令和元年6月26日 第3回対策委員会会議
・令和元年7月18日 第4回対策委員会会議
・令和元年8月11日 第5回対策委員会会議
・令和元年10月3日 第6回対策委員会会議
・令和元年10月23日 第7回対策委員会会議
・令和元年11月14日 第8回対策委員会会議
・令和元年12月10日 第9回対策委員会会議
・令和2年1月29日 第10回対策委員会会議
・令和2年2月26日 第11回対策委員会会議
・令和2年3月12日 第12回対策委員会会議
・令和2年3月30日 第13回対策委員会会議
・令和2年4月30日 第14回対策委員会会議
・令和2年5月26日 第15回対策委員会会議
・令和2年6月30日 第16回対策委員会会議
・令和2年7月29日 第17回対策委員会会議
・令和2年8月18日 第18回対策委員会会議
・令和2年9月14日 第19回対策委員会会議
・令和2年10月12日 第20回対策委員会会議
・令和2年10月29日 第21回対策委員会会議
・令和2年11月16日 第22回対策委員会会議
・令和2年11月26日 第23回対策委員会会議(調査審議終了)
・令和2年11月30日 答申・調査報告書の提出
・令和2年12月15日 教育委員会から知事に調査結果を報告
・令和3年4月16日 対策委員会からの提言対応を報告 参考:報告資料(PDFファイル:149KB)↓
**********東京新聞2021年2月17日07:51
前橋・高2自殺 報告書の全文判明 重要証言削除し送付 遺族「都合悪い部分隠蔽では」
↑伊藤有紀さん(遺族提供)↑
前橋市の群馬県立勢多農林高二年だった伊藤有紀さん=当時(17)=が二〇一九年二月に自殺した問題で、県教育委員会が設けた有識者の県いじめ問題等対策委員会がまとめた調査報告書の全文が分かった。県教委は当初、死に関連した複数の重要な証言や指摘を削除して一部だけを遺族に送付した事実が判明。父親(65)は取材に「非人道的なやり方だ。最初から全文を渡すべきだった。都合の悪い部分を隠蔽(いんぺい)したと感じる」と厳しく批判している。 (菅原洋、市川勘太郎)
報告書の本文の全文は七十一ページだが、昨秋に遺族へ送付したのは二十八ページ。このため、父親は県教委に全文を情報公開請求し、今月上旬に全文が公開された。
この問題では、報告書は一九年一月にクラス発表の配役を巡り、同級生の言動に有紀さんへのいじめがあったと認定した。
しかし、いじめの言動があった同じ日に、有紀さんが「死ねと言われた」と訴えたことは証言がないとしていじめと認めなかった。有紀さんはその二週間後に亡くなった。
この訴えについて、全文では「同級生が『死ね』みたいなことを言っていた。(有紀さんに)聞こえてたような」との証言があるが、当初の送付分では削除。別の同級生が「『死ね』のフレーズは使用したかもしれない。(有紀さんには)直接言っていない」と証言した部分も削除された。
父親は「娘に『死ね』と言った同級生らが有識者の調査に素直に認めるわけない。この証言は遺族にとって重要だ。削除したのは許せない」と語気を強めた。
さらに全文では、有紀さんが「亡くなる当日かその少し前か、三〜四人の友人に『私もうすぐで死んじゃうのかな』と言っていた」との証言もあるが、当初の送付分では削除。父親は「娘のSOSだったのではないか」と声を震わせた。
一方、有紀さんは自殺未遂をしていたが、把握した学校側が県教委への報告などを怠っていた事実が既に判明している。
全文では提言で自殺未遂に触れ「学校の組織的な事後的対応が不十分であったことは、自死防止の観点から問題があった」と指摘。当初の送付分ではこの指摘も削除された。父親は「教育委員会や学校にとって都合の悪い部分を隠蔽したのでは」と憤っている。
県教委によると、報告書の全文を当初は送付しなかったのは、有識者の委員会による判断。県教委が削除し、要点を遺族へ送った。情報公開で全文を開示したのは、条例などに基づいた県教委の判断という。担当者は「削除は意図的ではない。結果的に(遺族にとって重要な部分は)残らなかった」と説明している。
**********J-CASTニュース2019年3月13日13:13
踏切自殺の伊藤有紀さん 友人に語っていたいじめ「『死んじゃえばいい』と言われた」「先生は取り合ってくれない」
2月1日(2019年)に、いじめを訴えて26枚のメモを残して踏切で自殺した群馬・前橋市の高校2年生の伊藤有紀さん(17)宅に、きのう12日(2019年)に高校側が訪れ、家族に中間報告した。学校側は「さらに詳細な状況を調査する必要があると確認しています。調査結果は再度ご説明させて頂きます」と話した。
しかし、父親は「これから調査をして明らかにしますということだけでした。学校側は、いじめがあったと認めているとは私は思っていません。すみません、これ以上は爆発寸前で(言葉になりません)」と憤りを隠せなかった。
★学校はいじめ認めず「詳細な状況はまだ調査中です」★
有紀さんのメモとは別に、有紀さんから相談を受けていた中学時代の友人5人が「いじめの状況」をまとめた3枚の文書があり、「スッキリ」が入手した。いじめがあったという証拠のために使って下さいと家族に渡したものだ。
「ハダカデバネズミといわれたり、女子に悪口を言われた」「その後、学年主任の女の先生にそうだんするも、まともに取り合ってもらえなかった」「『死んじゃえばいいのに』などと言われた」と、細かく綴られていた。
リポーターの大竹真が説明する。「お父さんは26枚のメモと3枚の文書を学校側に報告しているんです。ところが、きのうはまだ調査中ということだったので、何ら進展していないではないかと憤ったわけです」
キャスターの近藤春菜「第三者に入ってもらわないと」
司会の加藤浩次「いじめがあったということが、調査のスタートではないですか」
ようやく学校側は、今後、第三者委員会を検討するという。
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