市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

県立高2年女生徒のいじめ自殺に係る遺族の保護者と県教委職員を巡る公務執行妨害事件についての考察

2024-04-24 16:28:11 | オンブズマン活動



保護者が県職員らの110番通報で駆け付けた前橋署員らに現行犯逮捕された現場の県庁24階エレベーターホール

■2月28日に県庁24階で発生した公務執行妨害事件は、その後、逮捕された容疑者がどうなっているのか、マスコミ報道がないため、皆目見当がつかない状況にあります。まずは、この事件を報じた報道記事を見てみましょう。

**********群馬テレビ2024年2月28日21:47
群馬県庁で職員に暴行疑い 68歳の男を逮捕 男は高2自殺でいじめを訴えていた遺族

【当会コメント】この写真は、保護者が警察に護送される時のもので、背景に写っている車両のエンブレムが見えることから、護送車に乘るところだと思われる。警察は、容疑者を護送車に乗せるところと降ろすところを、マスコミに撮らせるため、あらかじめ場所と時間を伝えて、「何時に出るから、カメラ席はここだ」と規制線で場所をセットしておき、写真を撮らせる。前橋地検に入るときは建物に乗り付けてすぐに出入りしてしまい撮影できないが、前橋地裁へ勾留請求に来るときは裏口のところにきて、ブルーシートを張って容疑者を乗降させる。そのため、要領のよい記者はブルーシートの下から容疑者の足を撮ったりする。ところが、この保護者が護送車に乘るシーンは、ブルーシートも貼っておらず、何の防御もなく、まさに見せしめとしか言いようがない。背景に地裁の庭の植え込みの緑の樹木が見える。制服の警察官の後ろに見える護送車と思しき車両のエンブレムは、「・・bow」と読み取れるため、日野のレインボーというバスを護送車に改造したものと思われる。
 28日午後、群馬県庁で県の職員に暴行を加えたとして68歳の男が現行犯逮捕されました。男は2019年、高校2年の女子生徒が自殺で亡くなり、いじめを訴えていた遺族でした。
 公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されたのは、前橋市内に住む68歳の男です。警察によりますと、男は、28日の午後2時半頃県庁24階のエレベーターホールで、応対した県教育委員会の2人の職員に足蹴りするなどの暴行を加え、職務の執行を妨害した疑いがもたれています。警察の調べに対し、男は、「蹴ってはいない」などと容疑を否認しています。暴行を受けた2人の職員は、いずれもケガはないということです。
 県教育委員会によりますと、男は2019年、高校2年の女子生徒が自殺で亡くなり、いじめを訴えていた遺族でした。この問題を巡っては、2020年の第三者委員会による調査結果を不服とした遺族の要請を受け県の「いじめ再調査委員会」が再調査を行っていて、今月24日に「学校の対応が不十分」などとした報告書を県に提出していました。
 遺族である男には、今月26日に県が報告していたということです。警察で動機など詳しく調べています。

**********上毛新聞2024年2月28日22:20
群馬県庁で職員を蹴った疑い、県警前橋署が男を逮捕 「蹴っていない」と否認
 群馬県警前橋署は28日、公務執行妨害の疑いで、群馬県前橋市の無職の男(68)を現行犯逮捕した。
 逮捕容疑は同日午後2時20分ごろ、県庁24階で公務として応対した52歳と27歳の男性県職員を蹴るなどの暴行を加え、職務の執行を妨害した疑い。職員にけがはなかった。
 同署によると、「蹴っていない」と容疑を否認している。別の男性職員が110番通報した。

**********毎日新聞2024年2月29日
自殺高2の父、県教委職員を蹴ったか 公務執行妨害容疑で逮捕

群馬県庁=前橋市で、田所柳子撮影© 毎日新聞 提供
 28日午後2時35分ごろ、前橋市大手町1の群馬県庁24階エレベーターホールで、「訪問してきた男に足蹴りされた」と県教育委員会の職員から110番があった。通報で駆け付けた前橋署員が、同市の無職、伊藤竹行容疑者(68)を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した。県教委によると、伊藤容疑者は2019年2月に自殺した県立高2年の女子生徒の父親。遺族は自殺の原因が同級生によるいじめが原因だと訴えており、24日には第三者委員会が再調査結果の報告書を公表し、26日に遺族に手渡していた。
 同署によると、伊藤容疑者は「蹴っていない」などと容疑を否認しているという。職員にけがはなかった。
 県教委によると、伊藤容疑者は午後2時ごろに県教委を訪問。第三者委が山本一太知事に答申した報告書の内容を巡って、応対した職員に対し一方的に暴言を吐き続けたため、職員2人が伊藤容疑者を別の階に案内しようとしたところ、足蹴りするなどしたという。
 19年に当時17歳の女子生徒が自殺した問題では、県教委が設置した第三者委が19~20年に調査したが、内容を不服とした遺族の求めで、県が再調査委を設置し、21年7月から今年2月まで審議してきた。
 再調査委の報告書では、「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性は十分にあった」などとして、学校の体制に問題があったと指摘した。自殺の原因は「いじめを含むさまざまな要因が心理的苦痛を高めた」としつつも、飼い猫の死を「直接的な要因」と位置づけた。【西本龍太朗】

**********産経新聞2024年2月29日15:06
群馬県教委職員を蹴った疑い、自殺した高2の父を逮捕
 群馬県警は29日までに、県庁内で県教育委員会の職員を蹴ったとして、公務執行妨害の疑いで、前橋市上大屋町、無職、伊藤竹行容疑者(68)を現行犯逮捕した。「蹴っていない」と容疑を否認している。県教委によると、伊藤容疑者は2019年に自殺した県立高2年の有紀さん=当時(17)=の父親。遺族は自殺の原因はいじめだと主張していた。
 県の再調査委員会は2月24日、自殺といじめとの因果関係などを再調査した結果について報告書を公表。いじめが直接的な原因ではないものの「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性はあった」とした。
 県教委によると、伊藤容疑者は28日午後2時ごろ、県教委を訪問。応対した職員に暴言を浴びせるなどしたため、男性職員2人が別の階に案内しようとしたところ蹴ったという。
 逮捕容疑は28日午後、県庁のエレベーターホールで職員2人を蹴り、公務執行を妨害したとしている。

**********朝日新聞デジタル2024年2月29日
自殺の高2生徒のいじめ再調査めぐり県職員を蹴った疑い 父親を逮捕

再調査委員会の報告書© 朝日新聞社
※参考:群馬県いじめ再調査委員会報告書 公表版
 群馬県庁舎内で県教育委員会の職員2人を蹴ったとして、前橋署は28日、前橋市の男(68)を公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕し、発表した。「蹴っていない」と容疑を否認しているという。男は2019年に自殺した県立高2年の女子生徒(当時17)の父親で、県のいじめ再調査委員会がまとめた報告書を26日に受け取っていたという。

いじめと自殺の直接的な因果関係は認めなかったが、「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性は十分にあった」とした再調査委員会の報告書
 署の発表によると、逮捕容疑は、28日午後2時20分ごろ、前橋市大手町の県庁24階のエレベーターホールで県教委の27歳と52歳の男性職員2人を蹴ったというもの。約15分後に職員が110番通報し、署員が駆けつけて逮捕した。
 県教委によると、父親は報告書の内容をめぐって県庁に来たとみられる。「主訴を聞き取ろうと対応したが、暴言を言われたり蹴られたりしたため通報した」としている。一方で、「(遺族として)ご要望がある場合には受け止めていきたい」という。
 女子生徒は19年2月、前橋市内の踏切で自殺した。遺族は「学校でのいじめが原因」と訴えていた。
 県の再調査委員会が24日に公表した報告書は、生徒へのいじめは認めたものの、自殺との直接的な因果関係は認めなかった。そのうえで自殺のきっかけは「飼い猫の死」としたうえで、複合的な要因を指摘している。また「相談体制が機能していれば、命は救えた」「学校の対応が適切なら自死を回避できた可能性があった」などと、学校側の対応を批判する内容が盛りこまれていた。(川村さくら、高木智子)
**********

■この事件は、これまでも群馬県から準・反社勢力視された経験のある当会としても、看過できないため、事の顛末を関係先から聴取する必要があると考え、3月25日に県庁を訪れました。



 さっそく24階のエレベーターホールを出て、現場をチェックし、同じ階の教育委員会事務局の管理課に行きました。県立高校の管理に携わっていると考えたからです。しかし、管理課に聞いたところ、「本件は総務課だ」ということで、同じ24階の北フロアに移動しました。

■応対に出たのは、教育委員会事務局総務課行政係(教育委員会会議、市町村教委連絡調整、叙勲、表彰、広報)の井澤悟志係長でした。

 当会からは「なぜ公務執行妨害の形で警察を呼んだのか?また、こういう場合、県庁内のどこが110番通報を判断するのか?経緯を知りたい」と質問したところ、「公務執行妨害になるかどうかは警察が判断している。事件の端緒となった110番をした具体的な事情については、警察からあまり口外しないように、とクギを刺されている」とのことでした。

 そして、「今回のような事件に対処する場合、一般的には、内規というものは教育委員会にはなく、庁舎管理全体の中で、県庁は一般県民がいろいろと訪れる施設なので、財産有効活用課(財活課)のほうで、どういった時にどうなるかを判断している」ということでした。

■これまで市民オンブズマン群馬の経験では、庁舎内での一般県民と県職員とのトラブルが発生した場合、県庁2階の生活こども部県民活動支援・広聴課広聴・案内係(わたしの提案(知事への手紙)、一般広聴、出前講座、県民センター運営、案内業務、行政対象暴力対策、公益通報者保護制度)が担当すると考えていました。

 ところが、教育委員会事務局総務課行政係によると「それとは別で、庁舎管理全体では、たとえば県庁で大声を出したり、長時間居座ったりした場合、こういう対応をせよ、と言うことで、県庁11階の財活課が対応する。ここが庁舎を管理しているので、一般県民により、通常の業務を妨げる行為があった場合、どういう取扱いをするのか、という内規については11階の財活課に行って聞いてほしい」のだそうです。

 当会から「それでは、今回の事件について、業務執行妨害と判断した動機は警察で聞く。また、110番するような状況についても、警察からあまり言うなと言われているとのことだが、この背景状況は非常に重要。なぜ、110番する必要があったのか。起訴・不起訴はどうなるのか。これらについて警察に聞いても、『教えられない』と言うはず。となると、本件が仮に検察により起訴されて、裁判所で公務執行妨害に係る刑事事件として公判が開かれ、検察の冒頭陳述が為される場合には、傍聴などを通じて公表されることになる。だが、今のところ、逮捕された保護者に関するその後の報道がされていない」と説明しました。

 そして当会は、「一般県民は、県職員に対して不満を示した場合、つい暴言や手を出してしまいがちだが、県職員の110番通報で警察が呼ばれ、今回は公務執行妨害容疑で逮捕されたわけだ。一方、県職員の場合、知事部局も教育委員会も同じく、職員の懲戒等に係る指針には、告発義務が記されていないため、一般人は起訴されたら前科者にされてしまうリスクを負っているが、県職員は不正をしても県から告訴・告発されないため、前科者になるリスクはない」と述べました。

 さらに当会は、「教育委員会の場合、日本版DBS(Disclosure and Barring Service)制度は、性犯罪を行っても警察に逮捕されずに、教育委員会内部での処分だと前科がつかないので、機能しないことになる。だから、人事課に『職員の懲戒等の指針に、告発義務を追記してほしい』と再三頼んでも聞いてもらえない」と県民と県職員の不公平な実態を説きました。

 行政係によると「今回の事件は、警察から発表したものであり、県がプレスリリースしたものではない。また、この事件に係る調査委員会(第三者委員会)の調査結果は、2021年に県のホームページで公表しており、調査委の会議録も、どこまで詳しいかどうかは何とも言えないが、一応オープンにしている」ということです。

■そこで、次に県庁11階の財産有効活用課(財活課)を訪れて、この事件の対応についてヒヤリングをしました。対応したのは同課財産管理係の高橋担当でした。

 財産管理係によると「こうしたトラブルへの対応業務について、所掌が被る部分はあるものの、基本的には県民活動支援・広聴課が管理し、財活課は庁舎管理の立場で退去命令を出す、ということで一部業務が重なる。例えば、県庁内の共用部で暴れている人物がいる場合、他の来庁者への迷惑や危害が加えられるおそれがある。その時に退去命令を出す場合がある。このとき、共用部分ということで財活課が担当することになる。それに対して、例えば、執務室の中に来て、暴力行為を働く人物がいる場合、当然執務室の中で、ということになるため、管理している当該部署が退去命令を出すことになる。さらに、そこから、暴力行為がエスカレートして、行政対象暴力の段階になった場合、2階の県民活動支援・広聴課が対応することになる。そういう意味で棲み分けはしているが、微妙に業務が重なる部分がある」と言う説明がありました。

 また、財産管理係では、あくまで私見としながら、「110番通報をなぜしたのかについて、たぶん、『こういう規定でここまでのことがあったので通報する』というプロセスではなく、単純に、当該職員に対して具体的な危害が加えられたためだと推察される。病院や学校でも同じだが、職員が殴られたとか、怪我をさせられたと言えば、おそらくそれは、規則云々ではなく、暴力を働かれたということで、当該職員の判断で110番通報したということになるのでは」とのコメントがありました。

 当会は、「それを暴力と捉えるかと言うところだが、暴言・暴行について、一般県民から県職員に対するハラスメント、カスタマー・ハラスメントがあったとしても、110番されて公務執行妨害容疑で逮捕されたらメディアに名前を晒されかねず、さらに送検され起訴され、裁判で執行猶予付きでも有罪になれば、前科者となる。なぜ公務執行妨害罪が適用されたのかは、24階の担当者は全部の警察のほうが判断したので自分は何とも答えられないという。それはそうかもしれないが、110番をすることは重大な行為。それに対応する事件があったことはあったのだろうが、父親として自分の娘の自死の真相を知り、再発防止を願うのは当然のことである。きちんと調査をしたのかどうか、調査結果に不満があったので、そこのところを何度も何度も伝えて善処を要望しても、聞いてもらえなければ、精神的に不安定となり、つい手足が出てしまったことは容易に想像できる。娘をなくした父親の心境を斟酌してもなお、足蹴りをされた県職員がなぜ110番までしなければならないのか。よほど深刻な事が起きたのだろうが、新聞記事によると職員にケガはなかったという。父親の心境や立場を考えれば、ある程度の許容範囲はあってしかるべきと考える。その辺を検証してみたいと思って今回ヒヤリングをお願いしている」と説明しました。

 これに対して財産管理係からは、あくまで私見だとして、「現場にいたわけではないので、あくまで推測に留まるが、(県職員は)何でもかんでも110番はしない。本件について、本人(自死した高2女子生徒の保護者である父親)は何度も県庁に来ている。単純に、毎回来るたびに、大声を出していたら、そこで既に110番通報されているはず。大きい声ももちろんだが、胸倉を掴んで『殺すぞ』などと強迫したり、結果的にケガはしなかったものの、本人に思い切り蹴られて、県職員が『これは危ない』と生命の危険を感じたとすれば、通報で駆け付けた警察官は、中立の立場で、双方に確認をとって、『これは公務執行妨害に当たる』という判断を現場でした、本人が現行犯逮捕されたということだというふうにも思える。本人がしつこく来庁し、あれこれ抗議することについて、対応が面倒くさいから110番通報することはないはずだ」と言うコメントがありました。

■こうして、足蹴りされたという52歳と27歳の県の男性職員2名の特定は叶わず、110番通報をした状況も、群馬県側からの事情説明が得られないため、まったくわかりませんでした。







 そのため、やはり110番通報を受けて現場に駆け付け、父親を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した前橋署にも事情をヒヤリングする必要があると考えて、4月11日午前11時に前橋警察署を訪れ、捜査1課の中村担当と面談しました。

 1時間ほど粘って問い質してみましたが、結局、いつものとおり、住民からの情報提供を広く積極的に求めるのに、それらの提供された情報を踏まえたその後の捜査について、警察からは「捜査の過程や結果について、一切話すことはできない」とする紋切り型の回答しか返ってきませんでした。

 当会は「世間ではギブ・アンド・テイクという言葉が常識的に使われていますが、警察は普段から捜査協力を得るため、事件や事故に関する緊急通報、いわゆる110番をはじめ、内部通報、外部通報、公益通報など、住民からの情報提供を常に求めているのに、実際に通報した事案がどの後、どのように扱われたのか、情報を積極的に開示したり、説明したりする姿勢が見られません。このことは、一般市民からの情報提供の協力を自ら得られなくしていることになりかねないのでは」と指摘しました。

 元警察官の当会副代表は、「今回の事件では、公務員のからだを蹴ったとして公務執行妨害罪を適用しているが、公務員が今やっている仕事を妨害したわけではない。ケガをさせたことによる障害は別だが、公務員が今まさに職務執行しようとしている仕事を妨害するのが公務執行妨害と言える。ところが、警察官は『俺に暴行したから公務執行妨害だ』というふうに考えている。公務執行妨害罪は、公務である職務が保護法益であるため、事務をしている公務員が、そこで脅されたから事務が滞ったとか止めたとか、それが職務執行妨害で、職務が保護法益となる。だが、警察は不勉強だから、体にさわったことが公務執行妨害だと思っている。こうして逮捕のでっちあげがまかり通っているのが現状と言える。私もそれででっち上げ逮捕をされた。警察は私を逮捕してから、体当たりされた際に、壁に手をついてケガをしたと偽の診断書をとってきた」と自らの経験を踏まえて、「警察は保護法益を勘違いしている」と語っています。

■結局、この公務執行妨害事件では、関係者からのヒヤリングはすべて空振りに終わりました。

 ところが、当会が4月11日に前橋署にこの事件の顛末についてヒヤリングした3日前に、地元紙が次の報道をしていたことが後日わかりました。

**********上毛新聞2024年4月8日
群馬県庁で公務執行妨害疑いの男性を不起訴 前橋地検
 群馬県庁で2月、県職員2人を蹴るなどの暴行をしたとして公務執行妨害の疑いで逮捕、送検された前橋市の男性(68)について、前橋地検は7日までに、不起訴とした。3月28日付。理由は明らかにしていない。
 男性は同19日に、処分保留で釈放されていた。
**********

 このことから、この事件の時系列を整理してみると、次のとおりになります。
○2月24日
 群馬県いじめ再調査委員会が報告書を公表。
○2月26日
 保護者が、県いじめ再調査委員会がまとめた報告書を受け取る。
○2月28日午後2時20分ごろ
 再調査報告書の内容を巡り県庁24階の群馬県教育委員会を訪れた保護者が、応対した職員に暴言を浴びせるなどしたとして、県教育委員会の27歳と52歳の男性職員が保護者を別の階に案内しようとしたところ、保護者が県庁24階エレベーターホールで県教育委員会職員2名を足蹴り。
○同日午後2時35分ごろ
 足蹴りされた男性職員らが「(保護者の)主訴を聴き取ろうと対応したが、暴言を言われたり蹴られたりした」として県警に110番電話をする。
○同日午後3時ごろ?
 県警から連絡を受けた最寄りの前橋署から複数の警察官が現場に駆け付け、保護者と職員らの双方から事情を聴き、公務執行妨害罪容疑が適用されると判断し、保護者を現行犯逮捕する。
○2月29日ごろ?
 警察が2月28日午後3時ごろ逮捕し留置した保護者の身柄を48時間以内に前橋地検の検察官へ送致(送検)。
○3月1日ごろ
 前橋地検の検察官が、警察から送致された保護者を引き続き留置施設・拘置所に拘束する必要があると判断し、24時間以内に裁判所に勾留請求を行う。
○3月1日~3月18日
 裁判所から10日間の勾留に加えて、さらに10日間の勾留延長が認められ、最長20日間の勾留期間中、前橋地検の検察官が保護者の起訴か不起訴を判断。
○3月19日
 前橋地検が、20日間の勾留満期ギリギリで、処分を決めないまま(処分保留)で保護者を釈放。
○3月28日
 前橋地検が保護者の不起訴処分を決定。不起訴処分の理由は公表せず。
○4月8日
 この日、地元紙が保護者の不起訴処分を報道。

■このように、前橋地検は、保護者を不起訴処分としましたが、その理由を公表しません。このことは、大変重要な意味を有します。

 なぜなら、不起訴処分となる理由は様々であり、勾留満期時点で不起訴処分の理由が明確でないなら、処分を下すことはできないからです。

 例えば、不起訴処分の理由のひとつである「嫌疑なし」は、被疑者とされた保護者が犯罪の行為者でないことが明白なときや犯罪の成否を認定するべき証拠のないことが明白な場合です。

 勾留満期の段階において、人違いや犯罪の証拠がどこにも存在しないことがハッキリしていないなら、直ちに「嫌疑なし」と断定することはできず、処分保留として捜査を続けることになります。

 同じように、不起訴処分の理由のひとつの「嫌疑不十分」は、犯罪の成立を認定するべき証拠が足りない場合です。これは、犯罪を推認させる証拠があっても、勾留満期の段階において、仮に起訴をしても裁判官をして確信に至らせるまでの証拠は揃っておらず、既に捜査は尽くしたので、これ以上の捜査をしても追加の証拠が出てくる見込みもない、という場合です。

 一方で、まだ捜査が尽くされたとは言えない状況であり、捜査を継続すれば追加の証拠を得られる可能性が高い場合には、直ちに「嫌疑不十分」として不起訴とすることはできず、処分保留としてさらに証拠を探すことになります。

 また、勾留満期の段階で有罪判決の見込みがあっても、必ず起訴処分となるわけではなく、検察官は、行政や政界などからの圧力を含む諸般の事情を考慮して、訴追を必要としないと判断した場合には、「起訴猶予」として不起訴処分とすることもあります。

 今回の事件は、保護者が現行犯逮捕されており、現場での状況は当事者同士からの聴取も済んでいることから、これが公務執行妨害罪にあたるかどうか、について検察官は慎重に判断したはずです。

 その結果、不起訴処分となったわけですから、その理由について、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」のどれに該当するのか、しっかりと前橋地検に確認しておく必要があります。

 しかし、今回の事件で、保護者は、不起訴処分をおそらく口頭で検察官から告げられただけだと思いますが、検察官はこの不起訴処分の理由を明らかにしていません。

 なので、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された保護者がなぜ不起訴となったのか、その理由を明らかにしておかないと、今後、公務員の不当な事務事業に対して苦情を申し立てた場合、大声を挙げたり、思わず公務員のからだに触れたりした場合、警察に110番通報され公務執行妨害罪の容疑で逮捕されかねません。

■このように考えた当会は、保護者の方に面談して、この事件できちんと不起訴処分告知書を前橋地検の検察官から取得しておき、さらにその理由について、「嫌疑なし」か「嫌疑不十分」か「起訴猶予」のどれかを確認しておくことを進言すべく、4月21日午後、当会役員が保護者ご本人の自宅を訪問しました。

 ご本人とは、玄関先でお会いし、言葉をおかけしましたが、当会の話は聞いてもらえませんでした。いじめによる愛娘の自死や、その原因究明・責任所在明確化・再発防止策をまとめるべき県教委の不誠実な対応、さらには「蹴ってはいない」と主張したにもかかわらず県職員らの110番通報で現行犯逮捕され、群馬テレビで逮捕の様子が報道され、実名を晒され、警察や検察の取り調べを受け勾留されただけに、無理もありません。

 保護者のかたは、一方的に社会の不満を述べられ、結論的には立ち入ったお話は何も窺えませんでした。そして、取り付く島もなく、数分後に玄関ドアを閉められてしまいました。

 保護者のかたと面談した当会役員の印象では、「不満が積もり積もって爆発寸前という感じで、性格的なこともあるのかもしれないが。一瞬の会話でも精神的にかなり重症と感じた」とのことです。

■そこで、4月23日午後、県庁24階の教育委員会総務課行政係を再び訪れて、井澤係長に、「今回の公務執行妨害事件で容疑者とされた保護者のからが不起訴処分になったが、この処分理由について、行政として前橋地検に対し、不起訴処分理由を問い合わせてほしい」と強く依頼しました。


教育委員会総務課の廊下と執務スペースの間にある書類用キャビネットの上にあるスタンド式の案内プレートの裏面には、このように「群馬県県庁舎等管理規則(抜粋)」が記されており、職員は来訪者と面談する際に、これを見ながら対応しており、来訪者の言動・挙動が少しでもこれらの禁止行為に抵触すると判断すれば、110番通報されるリスクもあり得る。(上記写真は同課の許可を得て撮影)

 しかし、同係長は「なぜ、我々がそのようなことをしなければならないのか。業務執行妨害罪の容疑があると判断したのは警察だ。警察に聞けばよいのではないか」と述べるのみでした。

 当会は「今回の事件で、群馬県は「110番通報をする判断は、直面した事案の状況に応じて自身が身の危険を感じた職員自身が判断したもの」としていますが、そうした曖昧なまま、職員が110番通報を乱発すると、納税者県民にとって、行政を批判したりする際にリスクを抱えることになる。行政と県民との間の安心で平等な付き合いを担保するために、今回の事件を奇貨として、きちんと検証すべきではないでしょうか」という趣旨で、職員が県民の振る舞いに対して110番通報をする際のルールつくりを申し入れたのですが、結局受け入れてもらえませんでした。

 こうして、この事件を巡る当会の検証作業は不完全燃焼のまま、現在に至っています。今後も、類似の事案が発生するかもしれませんので、引き続き、研究を重ねてまいりたいと存じます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関係情報
**********NHK群馬 NEWS WEB 2024年02月24日15:55
高2女子生徒の自殺 “いじめの影響大 否定できず”報告書

 5年前、前橋市内の県立高校の女子生徒が自殺した問題で、群馬県の調査委員会はいじめがあったことを認め、「自殺に与えた影響は大きなものであった可能性は否定できず、学校の対応が適切であれば回避できた可能性は十分にあった」とする報告書をまとめました。
 5年前、前橋市内の県立高校の2年生だった女子生徒が自殺し、その後、学校でのいじめをうかがわせるメモが見つかった問題で、群馬県教育委員会が設置した第三者委員会はよくとし、いじめを一部認めた一方、「自殺の要因としては主要なものではない」と結論づけました。
 遺族の求めを受けて、6人の有識者による県の「いじめ再調査委員会」が改めて調べ、24日、山本知事に報告書を提出しました。
 報告書はいじめがあったことを認め、「自殺に与えた影響は大きなものであった可能性は否定できない」と指摘しました。
 その上で、「学校にはいじめ予防の指導体制が十分に構築されておらず、対応が適切であれば自殺を回避できた可能性は十分にあった」と結論づけました。
 「いじめ再調査委員会」の八島禎宏委員長は記者会見し、「学校は教員研修を活性化させ、再発防止に向け、きちんと生徒に向き合うことが必要だ」と述べました。
※参考:群馬県いじめ再調査委員会報告書 公表版

**********群馬県HP「教育委員会」2021年4月16日更新
平成31年2月1日県立高等学校生徒死亡事案
1 事案の概要
 平成31年2月1日、県立高等学校2年に在籍する女子生徒が、上毛電気鉄道沿線の踏切で電車にはねられ、その後、搬送先の病院で死亡が確認される事案が発生しました。
 死亡した生徒の保護者の証言からいじめによる自殺が疑われたため、当該校においていじめ防止対策推進法第23条第2項及び文部科学省が策定した「子供の自殺が起きた時の背景調査の指針」に基づく基本調査が行われました。
 平成31年3月31日、当該校から県教育委員会教育長に対し、調査の結果として、当該生徒がフラワー装飾技能士検定の試験を控え授業が辛いと感じていた時期があったことや、学校行事を巡るクラスメートとのトラブルの中で一部の言動にいじめに該当する行為が確認されたことなどが報告されました。また、当該生徒が亡くなったことと基本調査で把握できたことの因果関係の有無を判断するには、専門的な観点から、さらなる調査が必要であるとの考えが示されました。
 県教育委員会では、本事案をいじめ防止対策推進法第28条第1項に掲げる重大事態として対処することとし、事実関係を明確にするともに、同種の事態の発生の防止に資するため、当該校の設置者として詳細調査を行うことを、平成31年4月10日に開催した教育委員会会議臨時会で決定しました。

2 群馬県いじめ問題等対策委員会への諮問
 詳細調査の実施にあたっては、県条例に基づき、県教育委員会の附属機関である群馬県いじめ問題等対策委員会(以下、「対策委員会」)が行うこととされています。
 対策委員会では、平成31年4月24日に開催した第1回対策委員会で県教育委員会から諮問を受け、調査審議を実施しました。

<諮問事項>
・当該生徒に係るいじめの事実関係の検証について
・当該生徒の死亡に至る過程や心理の検証について
<今後の対応と再発防止策について>
 参考:諮問書(平成31年4月24日群馬県教育委員会)(PDFファイル:40KB)↓

3 群馬県いじめ問題等対策委員会からの答申(調査結果)の概要
 令和2年11月30日付けで、県教育委員会に対し、対策委員会委員長から答申書が提出されました。

 参考:答申の概要(令和2年11月30日記者会見資料)(PDFファイル:167KB)↓

4 調査審議のための対策委員会開催状況
 ※重大事態の調査審議に係る議事及び審議内容は非公開です。

・平成31年4月24日 第1回対策委員会会議(諮問)
・令和元年5月22日 第2回対策委員会会議
・令和元年6月26日 第3回対策委員会会議
・令和元年7月18日 第4回対策委員会会議
・令和元年8月11日 第5回対策委員会会議
・令和元年10月3日 第6回対策委員会会議
・令和元年10月23日 第7回対策委員会会議
・令和元年11月14日 第8回対策委員会会議
・令和元年12月10日 第9回対策委員会会議
・令和2年1月29日 第10回対策委員会会議
・令和2年2月26日 第11回対策委員会会議
・令和2年3月12日 第12回対策委員会会議
・令和2年3月30日 第13回対策委員会会議
・令和2年4月30日 第14回対策委員会会議
・令和2年5月26日 第15回対策委員会会議
・令和2年6月30日 第16回対策委員会会議
・令和2年7月29日 第17回対策委員会会議
・令和2年8月18日 第18回対策委員会会議
・令和2年9月14日 第19回対策委員会会議
・令和2年10月12日 第20回対策委員会会議
・令和2年10月29日 第21回対策委員会会議
・令和2年11月16日 第22回対策委員会会議
・令和2年11月26日 第23回対策委員会会議(調査審議終了)
・令和2年11月30日 答申・調査報告書の提出
・令和2年12月15日 教育委員会から知事に調査結果を報告
・令和3年4月16日 対策委員会からの提言対応を報告 参考:報告資料(PDFファイル:149KB)↓

**********東京新聞2021年2月17日07:51
前橋・高2自殺 報告書の全文判明 重要証言削除し送付 遺族「都合悪い部分隠蔽では」

伊藤有紀さん(遺族提供)
 前橋市の群馬県立勢多農林高二年だった伊藤有紀さん=当時(17)=が二〇一九年二月に自殺した問題で、県教育委員会が設けた有識者の県いじめ問題等対策委員会がまとめた調査報告書の全文が分かった。県教委は当初、死に関連した複数の重要な証言や指摘を削除して一部だけを遺族に送付した事実が判明。父親(65)は取材に「非人道的なやり方だ。最初から全文を渡すべきだった。都合の悪い部分を隠蔽(いんぺい)したと感じる」と厳しく批判している。 (菅原洋、市川勘太郎)
 報告書の本文の全文は七十一ページだが、昨秋に遺族へ送付したのは二十八ページ。このため、父親は県教委に全文を情報公開請求し、今月上旬に全文が公開された。
 この問題では、報告書は一九年一月にクラス発表の配役を巡り、同級生の言動に有紀さんへのいじめがあったと認定した。
 しかし、いじめの言動があった同じ日に、有紀さんが「死ねと言われた」と訴えたことは証言がないとしていじめと認めなかった。有紀さんはその二週間後に亡くなった。
 この訴えについて、全文では「同級生が『死ね』みたいなことを言っていた。(有紀さんに)聞こえてたような」との証言があるが、当初の送付分では削除。別の同級生が「『死ね』のフレーズは使用したかもしれない。(有紀さんには)直接言っていない」と証言した部分も削除された。
 父親は「娘に『死ね』と言った同級生らが有識者の調査に素直に認めるわけない。この証言は遺族にとって重要だ。削除したのは許せない」と語気を強めた。
 さらに全文では、有紀さんが「亡くなる当日かその少し前か、三〜四人の友人に『私もうすぐで死んじゃうのかな』と言っていた」との証言もあるが、当初の送付分では削除。父親は「娘のSOSだったのではないか」と声を震わせた。
 一方、有紀さんは自殺未遂をしていたが、把握した学校側が県教委への報告などを怠っていた事実が既に判明している。
 全文では提言で自殺未遂に触れ「学校の組織的な事後的対応が不十分であったことは、自死防止の観点から問題があった」と指摘。当初の送付分ではこの指摘も削除された。父親は「教育委員会や学校にとって都合の悪い部分を隠蔽したのでは」と憤っている。
 県教委によると、報告書の全文を当初は送付しなかったのは、有識者の委員会による判断。県教委が削除し、要点を遺族へ送った。情報公開で全文を開示したのは、条例などに基づいた県教委の判断という。担当者は「削除は意図的ではない。結果的に(遺族にとって重要な部分は)残らなかった」と説明している。

**********J-CASTニュース2019年3月13日13:13
踏切自殺の伊藤有紀さん 友人に語っていたいじめ「『死んじゃえばいい』と言われた」「先生は取り合ってくれない」
 2月1日(2019年)に、いじめを訴えて26枚のメモを残して踏切で自殺した群馬・前橋市の高校2年生の伊藤有紀さん(17)宅に、きのう12日(2019年)に高校側が訪れ、家族に中間報告した。学校側は「さらに詳細な状況を調査する必要があると確認しています。調査結果は再度ご説明させて頂きます」と話した。
 しかし、父親は「これから調査をして明らかにしますということだけでした。学校側は、いじめがあったと認めているとは私は思っていません。すみません、これ以上は爆発寸前で(言葉になりません)」と憤りを隠せなかった。
学校はいじめ認めず「詳細な状況はまだ調査中です」
 有紀さんのメモとは別に、有紀さんから相談を受けていた中学時代の友人5人が「いじめの状況」をまとめた3枚の文書があり、「スッキリ」が入手した。いじめがあったという証拠のために使って下さいと家族に渡したものだ。
 「ハダカデバネズミといわれたり、女子に悪口を言われた」「その後、学年主任の女の先生にそうだんするも、まともに取り合ってもらえなかった」「『死んじゃえばいいのに』などと言われた」と、細かく綴られていた。
 リポーターの大竹真が説明する。「お父さんは26枚のメモと3枚の文書を学校側に報告しているんです。ところが、きのうはまだ調査中ということだったので、何ら進展していないではないかと憤ったわけです」
 キャスターの近藤春菜「第三者に入ってもらわないと」
 司会の加藤浩次「いじめがあったということが、調査のスタートではないですか」
 ようやく学校側は、今後、第三者委員会を検討するという。
**********

コメント
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三分咲きのサクラの中で開催された東邦亜鉛安中製錬所第33回工場視察会の一部始終(後編)

2024-04-14 19:11:54 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題


■毎年恒例の東邦亜鉛安中製錬所の第33回工場視察会は、現場視察を終えて、参加者は午前10時55分までに、事務棟前に戻りました。





 その後、事務棟2階の会議室に全員が集まり、しばし、休息した後、午前11時から意見情報交換会が始まりました。当会からは、予め用意した東邦亜鉛安中製錬所から排出される降下煤塵を群馬県環境保全課が月例で測定したデータをまとめた資料を、会社側も含めて参加者25名全員に配布しました。





司会:ご視察大変ご苦労様でございました。本日のスケジュールによりますと、この後、11時から10分間、休憩というふうに記載があるんですが、(大地を守る会事務局長の)白石さんに相談いただいて「このまま続ける」ということでお話をいただきましたので、再開をさせていただきたいと思います。本日のこの工場視察会につきましては、終了予定を12時ということで、用意しておりますので、ご協力のほう、よろしくお願い申し上げます。では、意見情報交換会のほうを進めさせていただきたいと思います。意見情報交換会で会社側の司会を引き続き務めさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。それでは、令和5年度の経過と、令和6年度の設備改善計画につきまして、所長の森田よりご報告をさせていただきます。

所長:まずは工場視察、大変ご苦労様でございました。それでは令和5年度の設備改善経過と、令和6年度の改善計画の内容につきまして、ご説明させていただきます。まず、2023年度、令和5年度でございますが、大きな工事案件としては、一番目に、キルンの修理、函体ですね、の第2支点、全部で3つ支点がございましてその第2支点の受けローラーの製作、それから第2支点の受けローラーの、こちらは交換を行いました。これはすべて夏の定修期間中でございます。で、2番目としましては、電解工場、電解工程の第3電解、アノードクリーナーというのがございまして、まあ、陽極板のアノードでございますけど、それを工場の中で、ある一定の時間が経過しましたら、抜いてですね、これをクリーニングするという工程がございます。ここの設備を、以前は1台で全部、2系列を賄っていたのですが、それを1台ずつにしたということで、一つクリーナーを増設してラインのほうに設置しました、ということでございます。で、3番目としましては、第1集水池の西側の、まあ、集水地のですね。だいぶ古くなってきておりまので、これをきれいにコンクリート替えをしまして、補強工事を行った。これは大きな工事の内容でありまして、昨年ご報告いたしました計画はすべて実行して完工しております。続きまして、24年度、今年でございますが、大きな工事としましては、同じく1番目として、キルン工程の第2エプロン・コンベアの交換工事ということで、キルンから排出されますK砕を高いところまで持ち運ぶコンベアでありまして、これがだいぶ老朽化しておりますので、これを新しくするという工事。これが一つでございます。2番目としましては、共沈脱鉄、No.3の撹拌機の交換です。共沈脱鉄というのは、いわゆるキルンで回収されました酸化亜鉛を溶解するんですが、どうしても鉄の成分があるということで、それを落とす工程でございまして、そこの酸化亜鉛槽の撹拌機が老朽化しましたので、その為交換するということでございます。
(当会注:「共沈脱鉄」とは、工業排水から重金属を除去する際の、鉄の水酸化物による共同沈殿法の糊塗と思われます。工業排水に硫酸鉄(FeSO4)を入れて、水中に多量のFe2+を溶存させて、これにアンモニア水や水酸化ナトリウムを添加してアルカリ性に保ってやれば、FeO(OH)のコロイドができます。このとき、溶存する微量な金属元素も水酸化物や酸化物の難溶性の超微粒子を形成します。多量のFeO(OH)コロイドは、他元素の水酸化物微粒子を巻き込んで沈殿〔共同沈殿=共沈〕します。この沈殿を回収すれば、工業排水から重金属を効率的に除去することができる、ということのようです)
3番目としましては、第3の集水池、一番東側のですね、浄水工程、その西側の集水池、これもだいぶ老朽化しているということで、コンクリートを打ち直しまして補強工事を行うということで、これらもすべて昨年同様、夏期定修、7月、8月の期間に、工事を完工するという計画で進めております。その他、持続可能な亜鉛製錬所として鋭意改良を進めておりまして、製錬所内設備も休止設備も撤去を進めて、空地づくりのほう、現在展開しております。一方、公害防止設備をはじめ各設備は計画的に更新して日々公害防止に努めております。これからも地元の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いしたいと申し上げます。まあ、以上でございますが、引き続きましては、中島のほうから懸案事項等、ご説明を進めさせていただきたいというふうに思っています。よろしくお願いします。

司会:続きまして、環境問題等、懸案事項に関して、課題につきまして、環境管理室の中島、私のほうから報告をさせていただきます。最初にですね、公特事業の進捗につきまして、ご報告を申し上げます。岩井畑地区の碓氷川流域農用地土壌汚染対策事業。こちらでございますけれども、ご承知のとおり、令和5年の3月で完了をしたということでございます。令和5年から7年にかけて指定地解除をすべく、解除前の試験を実施するということになっているということで、県のほうに確認をしました。県に確認をしたところ、令和5年、昨年ですね、につきましては3箇所で陸稲を栽培したということでございました。その結果なんですけれども、県に問い合わせをしたんですが、「現在、効果を確認中」ということで、まだ、報告がいただけておりません。今日視察会ということでしたので、「できれば3月中に」というお願いをしていたのですが、すいません、残念ながら、まだ報告をいただけていないという状況でございます。野殿地区の公特事業ですけれども、こちら令和6年度、今年度ですね。境界確認を完了していく、という予定であるというふうにお伺いをしております。以上が、公特事業に関する実施状況、情報等でございます。今後も県と市ですね、情報交換をしながら進めていきたい、というふうに考えております。こちらについては皆様のほうが情報をお持ちかなというふうに思いますので、情報共有等できればと思います。次に、令和5年度産米のカドミウムについてですが、令和5年度産米のカドミウム濃度の調査結果につきましては、安中市で行った検査結果については「特に問題ない」ということでご報告いただきました。また高崎市の検査結果についても「異常なし」ということでご報告を頂いております。以上が、会社が把握しています令和5年度の情報等でございます。詳細部分につきましては、ご質問にお答えするかたちということで、ご理解を賜りたいというふうに思いますのでよろしくお願いをいたします。では以降の進行につきましては、高坂先生のほうにお願いをしたいと思います。高坂先生宜しくお願いをいたします。

弁護団長:皆様どうもお疲れ様でした。それでは、これから、質疑応答の時間ということで皆様のほうから、ご質問やご意見を出していただいて、会社側にお答えしていただくというかたちで進めていきたいと思います。それでは、先ほどの視察の結果でも結構ですし、普段思っている事でも結構ですけども、ご質問ありましたら皆さんのほうからお願いします。はい、どうぞ。

当会:はい。いつもお世話になります。小川です。

司会:小川さん、ちょっとマイクのほう。

当会:声でかいから、いつものとおり。あ、届かないのか。ああそうか、届かないのか。もう(声)入ってますよね。テスト、テスト。はい。野殿の小川です、いつもお世話になっています。いくつか事前に考えたのがあるんですけど、えーと、すいません。順不同で申し上げたいと思います。まず先ほど中島次長のほうから、昨年の産米の結果について問題なしというふうにレポート頂きました。安中市の場合、本当に問題ないというふうに会社側に報告があったんですよね?

会社側:・・・(頷く)。

当会:はい、ここはあらためて確認します。齟齬があるようなので。で、続きまして、先ほどというか、打合せ前に皆様の前にお配りしました、毎年、毎回恒例の、最近これ2年間くらいに亘っている降下煤塵。降下煤塵というのは、今日も、TCAという一番上のところにある排ガス塔から吹き出るのをメインとして周辺に降り注ぐ煤塵のことですね。で、当然、東邦亜鉛さんは、鉱石で亜鉛鉱石を取り扱っていますから。ただし亜鉛鉱石の中には亜鉛以外のいろんな成分が混じっております。亜鉛と類似した金属の、原子周期律表。難しい言葉になるんですが、まあ、カドミウムとか鉛とか、そういうやつが当然混じってくるわけですね。で、これについて、スラグという形で前々から鉱石中に含まれる亜鉛分を除いたやつ。硫黄については今、小名浜で除去しているたやつをここに運んできているということですが、そうするとカドミウム、鉛、砒素、水銀もあるようですけど、あと銀とか有用な成分もあるようですが、この降下煤塵で、そうした成分が混じっているということは昔から言われておりまして、このデータを、群馬県が毎月そこにお手元になるように計測し続けております。で、黄色く着色したのは、私が勝手にそれぞれの閾値を設定して、それを上まわっているものを着色しております。で、これを見ますと、確かに、令和4年の3月までに焙焼炉の休止、稼働の休止。それと併せて、操業量の減少ということですね。今日朝、バスの中で鈴木製造部長が申し上げておられましたけれども、本来だと、14、15万ドンくらいの、なんというか、製造能力を経産省に申請して認定されているわけですけれども。で、大体11万とか12万トンずつ今まで、つまり令和3年頃までやって来ていたんですけど令和4年4月頃からは、今言ったように小名浜で硫黄を飛ばした、いわゆる焼鉱、焼いた鉱石というやつを、タンク車という、安中貨物と呼ばれる、毎日夕方、こう(列車で)来ますよね。これで運び込んでいるやつです。それで、減産をしているんですよね、4割くらい減産をしている。で、まあ、そういうことを背景としてみてきますと、トータルで当然処理量が、製錬量が減っているわけですから、黄色の着色もそれに応じて4割減くらいだという会社側の公表値ですが、でもそれにしてはまだしぶとく残っているんですよね。これはやはり問題だと。1年経つとやっぱりこれだけの分量。これミリグラムでわずかではあるんですが、鉛とかカドミウムはとくに猛毒ですから、これがやっぱりきちっとゼロに近づけてほしいということで、今までも何度もお願いしているわけです。で、スラグの問題につきまして、大気中に周辺に拡散する、排ガスを37mの塔の、先ほど見ましたけど、ここから空気中に放出されるやつのほかに、スラグという固形物として、会社の外に排出される副産物がございます。これについては今日拝見させていただいて、バスの中でも第1班の人には声が届いたと思うんですが、えーと、なんと昔使っていたものがまた稼働中だと。で、数年前に鳴り物入りで、設置をした、群馬県の手続きを取ってね、防塵対策の、これは許可が必要ですから、届出か。これを使っていないということで、これ、恒久的なものかそれとも、仮の、ある一定時期かと思って、その後、最後に案内されたところは、昔の第1電解工場というところ、これもその前に撤去した跡地なんですけれどもね。ここに移すという話で、これは会社側として「まだ決定ではない」と、こういうご説明でした。すいません、説明の前段が長くなってしまったが、このスラグの取扱いについては、これ、報道でも為されたんですが非常に杜撰な取り扱いがされて、これが有価物かどうかということで、会社側にも私も以前からモニタリングしてきたんですけどね。現在は産業廃棄物だということで所定の場所に引き取ってもらうというか、管理型の最終処分場というんですけども、どうもその辺がハッキリしません。で、これに絡めてですね。何回か前の席上で、このスラグについて、県内の各地区、特に西毛地区にいろいろ路盤材とか、埋め土材として、使っていたわけですよね。とくに、岡田興業とか、これは群馬町にあるんですけれども、岡田興業とか、その兄ちゃんがやっている岡田工務店、ここに大量に出してたんです。あとは前橋市の土建屋さんとか太平洋セメントとかね、部出していたんですけれども、とくに、ビックリしたのは、県に会社が届けた120数カ所のうち、安中市に、安中市に埋め立てた、そういう場所があるのかどうかということで、で、会社側のほうに聞いても「みんな行政側に報告しているから」ということで、群馬県に3年半くらい前に情報開示請求をしました。その結果、開示しないというか、もう不開示で真っ黒け同然のやつがきて、これはいかがなものか、ということで審査請求をずっとしてまいりましたところ、昨年秋に、ようやく2年8カ月ぶりに開示されました。しかし、肝心の安中市に2か所あるということが判明したんです。だけど、その黒塗りになっている、それ以外は、現場の写真も含めて真っ黒塗りなんですよ。で、その報告をしたのが1か所は東邦亜鉛で、もう1カ所が東邦亜鉛以外の業者。東邦亜鉛の名前は出ているんですが、それ以外の業者は、つまり下請けの業者の名前は出てきません。ということで安中市に「東邦亜鉛から改めてこの情報を取ってくれ」と、「群馬県じゃなくて今度は安中市で摂ってくれ」ということで取ってもらったんですが、やはり群馬県と調整したんでしょうね。同じようなモノしか出てこないんです。これやはりね、開示してもらいたいんですけれども、東邦亜鉛さんは「行政に聞け」というが、行政はそういうことで(東邦亜鉛に)忖度しているわけですね。で、安中市で2か所、実際に東邦亜鉛の有害スラグが、まあ有毒スラグと言ってもいいですが、使われたんですよ。これやはりきちんと、もう少し、安中市内のどこなのかくらい、岩野谷地区なのか、旧安中なのか、磯部なのかね、原市なのか、秋間なのか教えてもらえませんかね。これ後でお願いしますよ。それから・・・。まあ、とりあえずそれくらいかな。

弁護団長:小川さん。

当会:長くなってすいません。もうお仕舞いにします。ありがとうございます。

弁護団長:要点を絞ってご質問をお願いします。

当会:ではまず、お願いしたいのは、安中市から昨年の産米のデータについて問題なしということについては、「そうだ」というお答えを頂いたので、それは間違いないですよね?

司会:・・・はい、安中市のほうからは、そういうふうにうかがっております。
(当会注:当会が、この確認にこだわった理由は、令和5年度産米で、地元北野殿地区の谷津田で実際に稲を栽培していた農家のかたが、初めて玄米中カドミウム含有量検査を申請されました。ご本人は、毎年収穫した自家米を食べていたのですが、検査の結果、基準値を超過した場合、影響が広範囲に及ぶのを懸念されて、敢えて「飼料米」として検査申請しました。この結果、心配した通り、カドミウム含有量が基準値0.4ppmを大幅に超過する0.73ppmも検出されました。後日、安中市農林課に確認したところ、「東邦亜鉛には、食用米として申請された玄米のカドミウム含有量検査のみ通知した」ということが判明しました。したがって、東邦亜鉛側が、今回の工場視察会で発表した結果は、安中市から連絡のあった範囲内での内容であることが確認できました。しかし、実態は、やはり、北野殿地区の農地は、ことほど左様に重金属汚染されていることが明白に確認されたことになります。一刻も早い、汚染土壌除去のための公害防除特別土地改良事業の推進が必須であることのは変わりありません)

当会:で、先ほどのそのスラグの使用が市内に2箇所あったと、いうことは、県のあれ(開示資料)にあるんですが、市内の2か所は、あまり番地まではとは言わないが、どういう経路で、いつ、それが使われたかということを、今、ご説明頂けるとありがたいですね。

弁護団長:その点どうですか?どうぞ。

司会:えー、すいません、こちらにつきましては、えー、・・・まあ、毎度毎度で申しわけないですが、あのう、うーんと、所有者様はもちろんですけど、行政のほうにもご報告させていただいております。具体的な場所、それと経緯等につきましては、回答を控えさせていただきたいというふうに思っております。申し訳ありません。よろしくお願い申し上げます。

当会:排出者責任の認識を、もう少しきちっとお願いしたいと思います。ではすいません、時間もないんでね。簡潔に言います。その他について、いくつか申し上げたいんですけども、昨年岩井地区の排土、排客土工事で出た排土が、御社の所有する、あの農免道路のすぐ西側のわき、あそこに埋め立ててありまして、これが一昨年11月に土壌調査を、これは群馬県の環境保全課のほうから、任意で所有者である東邦亜鉛さんのほうにね、「測定してはどうか」というか、「測定してみてくれ」とこういう形らしいんですけれども。その結果、これは1昨年の5月ね、半年後に11月に業者を呼んで。あそこで土壌汚染対策法に基づく調査をしました。その結果が昨年1月までに群馬県に出されたんですけども。そこで、3箇所、というか3項目、群馬県ははっきり言わないんですが、カドミウムと鉛と砒素、これが土壌基準、土対法の基準を超えたということで、いろいろ騒ぎが今、起きているわけですけれども。これについて、群馬県は「任意でお願いした」んですけども、東邦亜鉛のほうは、これ、どういうふうな認識で、測定したんですか?群馬県から命令があったんですか?それともやはり任意で、と思うんですけどね。これなぜ測定したんですか?

弁護団長:土捨て場?排土?

当会:はい、排土、土捨て場です。

弁護団長:では、会社のほう、どうですか?

司会:えー、これは前回も多分お聞きになったようですが、えー、まず、えーと群馬県から調査依頼について、どういう位置づけがあったのか、という質問かと思いますが、えーと、命令ではございませんでした。

当会:うん。

司会:はい。ただ、そうは言えども、群馬県さんから、公文書を頂いたものですから、なかなかお断りもできずにですね、えーと、結果的には調査をした、という経緯でございます。

当会:うん、だからすいません。ありがとうございます。「任意で測ったから公表しない」と、こういうスタンスなんですね。でも3種類(重金属が)出たということは、これはやっぱり重大な影響があると思うんですけど、これについて、行政も、県も市も、まあ、市は関係ないか、県は出さないんですよ。依然として情報開示請求に対して不開示なんですね。これは審査請求しております。ありがとうございました。引き続き開示の努力をお願いします。最後にもう一つ、今日もお願いしたんですが。最初にも触れましたが、スラグ置場をなぜ、前使っていて、ああいう、その、ただ穴を掘っただけのようなところだったので、きちんと床とか、壁、それから防塵の為に、スプレーを施した塀付きの広大なところを整備したにもかかわらず、また、一時的とはいえ、あのような昔のところを、今、お使いになっているわけですよね。で、あれ、ちゃんと対策していらっしゃいます。で、いつまで、あのような状況をやっているんですか?きちんと群馬県には、防塵施設として、届けて、認可、認可かどうか知りませんけど、届出だけかもしれませんが、許可というかOKをもらっているんですか。お願いします。

弁護団長:旧スラグ置場ですね。

司会:そうですね、今日一番最初に見ていただいたスラグ置場。

当会:そうそう。

弁護団長:昔、使用した場所ですか?

当会:そうそう、そのとおりです。

司会:えーと、届出の件ですね?

当会:変更、はい。

司会:はい。こちらについては、ですね。もともと使っていた時に、一般粉塵発生施設としての届出をしておりました。これはあのう、鉱山法で管理をしていたときの続きで、一般法に移った時に、大気汚染防止法の一般粉塵発生施設の届出をしておりました。今回ですね、今日ご覧いただいたように散水の方法を今までと変えたものですから、えー、この辺についての変更届を、提出をさせていただきました。

当会:はい。で、施設的に、その、直接、土壌に触れないような、側壁も含めてね。そういった配慮はした上で、再使用したんですか?

司会:そうですね、まず、床面については今回、きちっと整理するために、コンクリートを、追加を一応しました。打設をしました。壁についてはですね、今日も小川さん、見ていただき、ご指摘もあったとおり、大分、頑張ったんですが、あれ以上、重機、大きいのを入れてやったんですけど、あれ以上はもう取れないんので、あそこまで、ということになっております。

当会:取れないというか、せめて遮水シートとかね、そういうやつを設置すべきだし、散水後の水の処理は、以前と同じように、排水処理施設に導いているんですか?

司会:えー、はい。今日ご覧いただいた散水したあとの水ですね。えー、こちらについてはですね、えーと、まあ、あのこの製錬所を大きく排水が3系統に分かれているんですが、まあ、真ん中の中央系統といわれる排水のところに入って、ですね。第2集水地。今日、ご覧いただい集水地ですね、そのあと、排水処理にかかると、こういうことになっております。

司会:はい、大体以上なんですが、最後に要望。今、県と市と情報共有をして、これからも公特事業について進めたいと、最後には「地元にいろいろお世話になる」という話が有ったんですが、私のほうも情報共有、最近ちょっと怠っているんですけれどもね、会社のほうとは、行政と負けないほど情報共有しながら、一刻も早くこの事業の着工に向けて進めさせていただきたいと、思いますので、これは要望なので、よろしくお願いしますね。お願いしますよ!本社のほうも。はい、どうもありがとうございます。

弁護団長:はい、他の方でご質問、ご意見、ございますか?

場内:・・・。



弁護団長:先ほどの、繰り返しで申し訳ないんですが、先ほどの小川さんの質問に関連してなんですけど、あのう、第1電解工場の跡地を今度新しく、スラグの置場とか出荷場にされるということで、あそこはちゃんとコンクリートを打ってあるところですよね。だから、あそこのところを、使えるようにしてから、新しい、今、これまで使っていたところから、直に移すとよかったのではないかな、という気がするんですけれども。要するに、旧(スラグ置場)を復活させるのではなくて、新しいところを作って、直にそちらへ移すと、何の懸念もないような、と思われるんですけど。

司会:・・・はい、あのう、そうですね。えーと、もともと「東」が、今日、カラになったところをご覧いただいたK砕出荷場から、旧第1電解工場の、今日、最後にご覧いただいたところ、これに直接移すという、お話だと思うんですが、コスト的に見てこちらの方が間違いなく・・・あの、えーとですね、以前使っていたとはいえ、そのまま使えないので、当然、先ほど申し上げたように整理をしましたので、当然コストも、設備対応もしてますので、当然、その分もコストがかかっております。という意味では、本来であれば、今、高坂先生のおっしゃったようにですね、直接というのが、ということもなかったわけではないんですが、とりあえず、こちらにつくるのに、ですね。えーと、土壌調査をしたり、えーと、コンベアの設計をしたり、えー、とにかくいろいろな時間が結構かかるもんですね。で、すぐにと、いうわけにはなかなかいかないものですから、「ちょっと早めに空けろ」という指示もございまして、すいません。真ん中で一回、仮に使わせしていただいて、最終的には移すという計画でございます。

当会(つぶやき):どうしようもないね・・・。

弁護団長:あの、新しい事業については、何かご説明はしていただけるのですか?要するに、私たちは、会社の経営に何か口を挟むということはできませんが、それが公害、あるいは、周辺への排出に影響するのかどうかというのは、やっぱり、知っておくべき事柄だと思いますので、はい。

司会:今日、ご披露できるような情報があったら、と思うのですが、現段階ではまだご説明できるようなレベルではないようです。すいません、詳細は私のほうもわかりません。ということで、申し訳ないんですが、もうちょっと具体的になったところで、あの、この前も、協議会のなかでも先生からご指摘いただきましたように、ですね、内容を把握できましたところで、まあ、時期的に、あの、協議会なり、視察会の時期でなければ、臨時でご報告ということにもできようかと思いますので、その時はお時間を作っていただいて申し訳ないですが、そんな形でご報告できれば、と思いますが、よろしくお願いいたします。

弁護団長:あのう、ちょっと司会があんまり発言してまことに申し訳ないですが。

当会:いえいえ、いいですよ。

弁護団長:新しい、今、中止になった、スラグ置場、出荷場。会社が、あれを作るときに、やっぱり大地の会に、あまりご説明がなくて、大きな問題になって、「これからそういうことが無いように」ということで文書で取り交わしをしたんですね。ですから、まあ、かなり大きな計画の変更だと思いますので、そういうことが繰り返されないように、できるだけ早く、あのう、大地の会をはじめ、住民のかたに、ですね、ご説明の協議の場をお願いしたいと思います。

司会:はい、大丈夫です。はい、そうしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

弁護団長:えー、皆さんのほうでご質問、ご意見ございます?

場内:・・・。

弁護団長:じゃあ、よろしいでしょうか?じゃ、ここまでで。

司会:高坂先生、ありがとうございました。ここでですね、協定書の調印。こちらを行いたい、というふうに思います。協定書につきましては、3年ごとに更新ということになってございます。前回は令和3年の第30回視察会の際に調印をしていただいております。今年で3年目が経過したので、協定書に調印ということでお願いしたいと思います。安中緑の大地を守る会を代表しまして、大塚会長。会社を代表しまして、常務の森田。立会人としまして、高坂先生。調印のほうをお願いしたいというふうに思います。なお、協定書につきましては2通作成をして、ですね。安中緑の大地を守る会と会社、それぞれが保管、ということになっております。それではお三方、前のほうにお願いしたいというふうに思います。



 午前11時36分に、協定書調印式が開始されました。そして、同11時42分に調印式が無事に終了しました。

※当会注:協定書の内容は、参加者に公表されていませんが、1991年に締結された最初の協定書の内容は以下のとおりです。おそらく、この内容のまま3年毎に更新されているものと思われます。

=====最初の協定書=====
               協定書
 緑の大地を守る会(以下甲という)と東邦亜鉛株式会社(以下乙という)とは、下記の目的のために、次のとおり協議会及び工場視察会をもつことに合意した。
                記
1 目的
 ⑴周辺住民と会社との隣人同士の信頼関係の維持拡大
 ⑵公害防止に関する継続的な努力及び相互理解
 ⑶畑地土壌改良問題に関する意見並びに情報交換
2 協議会
 ⑴年2回(3月及び9月)、定期協議会を開く。
 ⑵必要に応じ随時的な協議会を開く。
 ⑶参加者
  ①甲のメンバーのうち旧安中公害原告団及びその家族の代表 5名程度
  ②安中公害弁護団                    5名程度
  ③乙(東邦亜鉛)                    7名程度
   第1項の目的に沿った意見・情報交換及び協議。
3 工場視察会
 ⑴年1回(4月)、工場視察会を実施する。
 ⑵参加者
  ①1項のメンバーのうち、旧安中公害原告団とその家族
  ②安中公害弁護団                   15名程度
  ③甲、乙が合意するオブザーバー             5名程度
 ⑶内容
  乙の案内、説明による安中製錬所の主な公害防止機器の視察
  視察後の意見・情報交換及び協議 
4 費用
 原則として各自の負担とする。
5 期間
 1991年9月23日以降3年間とする。
 本協定は、双方合意の上、更新することができる。

 以上の協定の証として本協定書2通を作成し、各自署名捺印の上、各1通を保有する。

  1991年4月14日
                  甲   緑の大地を守る会
                  乙   東邦亜鉛株式会社
                 立合人  安中公害弁護団
==========






司会:ありがとうございました。それではですね。大塚会長と森田所長と握手をして頂ければ、と思います。立っていただいて、はい。(拍手)すいませんありがとうございます。それでは1枚ずつ持っていただいて、高坂先生、横に入っていただいて、3人で写真を撮っていただいて。3人並んでお願いします。



司会:はい、ありがとございました。席にお戻りください。(拍手)

司会:調印式、ありがとうございました。視察会終了に当たり、代表者の挨拶を頂戴したいというふうに思います。安中緑の大地を守る会、副会長、茂木繁様。よろしくお願いいたします。



副会長:今日はお忙しい中、東邦亜鉛株式会社安中製錬所において第33回の工場視察ということで、大勢のかたがたにご参集いただきまして、本当にありがとうございました。場内を回りながら見て、そして説明を受けて、また思いを新たにされたことと、そんなふうに思っております。また、工場の皆様とですね、今回の視察にあたって、いろいろご配慮いただき本当にありがとうございます。これからも、会社と地域住民との理解がますます深まることを祈念致しまして、簡単ではありますが、締めの挨拶とします。どうもありがとうございました。(拍手)

司会:ありがとうございました。それでは私ども会社のほうから、常務執行役員総務本部長であります大久保よりご挨拶を申し上げます。



本社総務本部長:本社総務本部の大久保でございます。僭越ながら一言ご挨拶させていただきます。本日はお忙しい中、第33回安中工場視察会にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。冒頭の大塚会長のご挨拶、非常に胸に突き刺さりました。今後とも、安中製錬所、ならびにその家族従業員と家族ともども、どうぞよろしくお願いいたします。さて、ですね、昨日(4月5日)なんですけれども、当社から、臨時開示を行った事項がございました。それを若干紹介させていただきます。タイトルはですね、「当社持分法適用関連会社に対する債権の取立不能または取立遅延のおそれに関するお知らせ」というものでございます。タイトル名からしまして、ご覧になった方で驚かれた方もいらっしゃると思いますけれども、詳しい内容につきましてはですね、当社のホームページに掲載しておりますので、その事実部分をご覧になっていただければと存じます。(注⇒  https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/ednr/20240405S100T86S/?msockid=0d30a971a2cf60df214cba37a325612b
内容的にはですね、当社が40%の権益を保有しておりますオーストラリアに所在するアブラ鉱山がですね、アブラという鉱山が、当初計画に比べて、鉱石品位や採掘数量が下回ったことに加えまして、大雨による輸送障害などの想定外の外部要因により、収支と資金繰りが悪化して、オーストラリアの会社法に基づく任意管理手続きを開始することになったというリリースでございます。今後はですね、任意管理人が選任されまして、えー、豪州のアブラ鉱山の操業を継続しながら、方向性を決めていくことになります。なお、これに伴いまして、ですね、当社の債権額に相応の影響が出る可能性はございますけれども、メインバンクをはじめとする銀行団の支援のもと、当面の資金繰りに関しましては、ですね、支障がございません。で、ご報告いたします。以上がきのうのリリースしたもので、適時開示したもののご報告でございます。次に安中製錬所。まあ、安中製錬所については、亜鉛事業を取り巻く環境でございますけれども、電気代につきましては、ですね、ピーク時期よりは一服したものの、諸資材の値上がりはまだまだ続いており、なかなか出口が見えない、非常に厳しい状況が続いております。こうした中でございますけれども、先ほど協定書を更新させていただきました。今後とも、当社の、当社への、ご支援ご協力を賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。最後に大変恐縮でございますが、ここにご列席の皆様と、ご家族の皆様のご健勝を心より祈念いたしまして、私からの挨拶をさせていただきます。本日はどうも有難うございました。

以前、使用していた豪州のエンデバー鉱山とラスプ鉱山の原鉱石のサンプル


安中製錬所で使用されたり産出されたりする各種物質のサンプル

↑安中製錬所から年間数万トン産出される産業廃棄物指定の非鉄スラグ。東邦亜鉛では、「K砕」と呼び、有価物のように装っているが、実は鉛、ヒ素、カドミウムなど各種重金属が残留するシロモノ。実際に工場外のどこに、どのように「出荷」されているのか依然として不明

司会:えー、以上を持ちまして第33回工場視察会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。なお、少しですけれどもお弁当、お茶菓子、用意をさせていただきました、忘れずにお持ちをいただきたい、というふうに思います。それとですね、お帰りの際に、下の1階の玄関ロビーのところで、花の苗をお渡ししたいというふうに思います、一人一つずつお持ち帰りをいただければ、というふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。それでは気を付けてお帰り下さい。どうもありがとうございました。

 以上、午前11時48分に全ての予定を終了しました。

■以上、第33回工場視察会のやりとりを報告しましたが、今回、以下の事項について、今後、詳しい背景調査が必要になろうかと思います。

(1)会社側がスクラップ・アンド・ビルドにようやく注力しはじめたこと。

(2)8年前に鳴り物入りで、非鉄スラグの「東」保管・出荷場を屋外に新設したが、最近、その稼働を停止したこと。

(3)この場所を、同社の新規事業のための工場建設用地として転用する方針が、決まっていること(ただし新規事業が何かは明らかにされていないこと)

(3)あらたに屋内型の非鉄スラグ「西」保管・出荷場を、旧第1電解工場跡地に設け、ベルトコンベヤや磁選機などを移設して、稼働させる準備をしていること。

(4)この関連で、屋内型の「西」保管・出荷場新設のため、土壌汚染対策法に基づく土壌調査を実施する必要があること。

(5)屋内型の非鉄スラグ「西」保管・出荷場を建設し、完了するまでの間、少なくとも複数年間、かつて使用していた公害防止対策が不十分な「旧」非鉄スラグ保管・出荷場の使用がなぜか可能とされて、現在実際に稼働していること。

■東邦亜鉛が、「8年前に鳴り物入り」で、非鉄スラグ保管・出荷場を完成させた際の経緯は、当会の次のブログ記事を参照ください。

○2016年5月16日:安中緑の大地を守る会総会でわかった東邦亜鉛安中製錬所スラグ置き場新設計画の驚くべき概要

■このブログ記事に掲載されているとおり、東邦亜鉛は「地域の皆様との共存共栄を求めて <ご質問にお答えします>」と題するチラシを住民に配布しました。内容を以下に示します。

*****「地域の皆様との共存共栄を求めて」*****
●K砕(ケイサイ)つて何?
1)ロータリーキルンという装置から発生する、形状は5~20mm径の大きさで、固く多孔質で、見た目の色は黒い焼き砂状のものです。
2)主成分は、鉄が40%、亜鉛が3%前後含まれており、年間50,000T程度発生しています。
3)主な販売先は、①鉄原料 ②建材用原料 ③サンドブラスト材 ④セメント用原料向けに販売しています。
●粉じんに有害物資は含まれないの?
1)製錬所内に保管されている様々な原料は、鉱石由来のカドミウムや鉛などの重金属が含まれており、どんな粉じんでも外部に漏えいさせないことが原則です。
2)K砕は、重金属を回収した最終工程から出るもので、土壌に溶け出すような有害物質を含まない「一般粉じん」の扱いで、屋外貯蔵も認められている物質ですが、粉じん発生は極力抑えるべきとの認識でいます。
●粉じんの有無を数値化できないか?
1)製錬所周辺の降下ばいじんは、県の環境保全課が毎月測定して、結果は毎年9月に発行される「環境白書」に報告されています。
2)西の平や伊勢宮では、ダストジャーにより24時間365日測定されていますので、粉じん発生量の増減があれば、現在でも数字で評価されています。
3)27年度の白書では、「過去5年間減少傾向である」と、良い評価を継続しいて頂いていますので、新K砕保管・出荷場整備により、評価が下がるようなことはしません。
●高い塀の設置は風向きや景観に悪影響はないか?
1)新しく6mの高い塀の設置を計画していますが、当然、地域の皆様に対して悪い影響が出ないよう、経過を観察しながら継続的な改善を目指します。
2)具体的には、これまでの荒地の景観を改善し、工場の騒音や粉じんを防止する効果を追求し、工場周辺の環境改善にっなげたいと考えています。
3)今後も地域の皆様からの情報に耳を傾け、会社は継続的に改善を図っていくべきと考えていますので、何か不具合等ありましたらご連絡頂きますようお願いします。
●工事の日程は?
1)4月に実施した地元説明会の後、直ちに群馬県に対して「設置届」を提出し、5月中旬からの工事着工を目指しています。
2)地元説明会において、地元の皆さんから出されたご意見・ご要望は、計画に織り込むように工夫して、最終的な完成は9月下旬を目標にしたいと思います。
3)長い工事期間となりますが、工事中に地元の皆様が不快な思いをなされないよう、万全な準備と細心の注意をはらい、安全に工事を進めたいと考えています。
**********

 ご覧のとおり、8年前は「●粉じんに有害物資は含まれないの?」という住民の不安に対して、
「1)製錬所内に保管されている様々な原料は、鉱石由来のカドミウムや鉛などの重金属が含まれており、どんな粉じんでも外部に漏えいさせないことが原則です。」
「2)K砕は、重金属を回収した最終工程から出るもので、土壌に溶け出すような有害物質を含まない「一般粉じん」の扱いで、屋外貯蔵も認められている物質ですが、粉じん発生は極力抑えるべきとの認識でいます。」
などと、説明していた東邦亜鉛ですが、その後、非鉄スラグに大量の鉛、ヒ素、カドミウムなどが混入していたことが判明したため、現在、群馬県では、東邦亜鉛安中製錬所が排出する非鉄スラグは、産業廃棄物に指定しています。
〇2020年12月8日;【12月8日】東邦亜鉛(株)安中製錬所から排出された非鉄スラグに関する使用箇所の解明等の状況について(廃棄物・リサイクル課、環境保全課)

 しかし東邦亜鉛安中製錬所が毎日排出する非鉄スラグには、鉛、ヒ素、カドミウムなど重金属が含まれていることから、本来であれば、廃棄物処理法第2条第5項に定める特別管理産業廃棄物のうち、特に有害性の高い物質あるいはそれらを含む特定有害産業廃棄物に該当するはずです(廃棄物処理法施行令第2条の4第5項)。

 今回の、従来の屋外型の非鉄スラグ保管・出荷場の閉鎖と、屋内型の非鉄スラグ保管・出荷場の新設計画、そして完成までのつなぎの期間に、あろうことか8年前まで使用していた旧・スラグ保管・出荷場の臨時使用という、異常な対応の背景には、上記の事情が反映されているのかもしれません。

■東邦亜鉛が何かしでかす場合には、本来の目的などを隠したまま、住民への説明が事後報告となるケースが多々あり、さらに行政も東邦亜鉛の立場を忖度しますので、今回分かった非鉄スラグ保管・出荷場の突然の変更申請の背景について、慎重に調査する必要があります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項おわり】
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三分咲きのサクラの中で開催された東邦亜鉛安中製錬所第33回工場視察会の一部始終(前編)

2024-04-14 17:40:29 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題

当日朝、事務棟前から見た安中製錬所の様子

■安中公害は、昭和12年に安中製錬所が操業を開始すると同時に始まりました。操業にともなって出る有毒な煙のために、周囲の桑が枯れ、蚕がバタバタと死んでいきました。市民の憩いの場だった雉(きじ)観音の数十本のサクラもすべて枯死してしまいました。戦後の工場の大拡張、生産量の急増にともない、増大する重金属や亜硫酸ガスなどを含む排煙、排水のため、農作物被害は激しくなるばかりで、周辺に住む住民の農業経営と生活環境が破壊されるところまで追い込まれたのです。

 そのため、周辺の農業を営む住民は、長い間苦渋に満ちた生活を強いられてきましたが、昭和44年、東邦亜鉛安中製錬所の違法増設工場許認可取り消しの行政不服審査請求に立ち上がり、工場の拡張を阻止することができました。そして、昭和47年4月1日、東邦亜鉛を被告として公害による「農業経営と生活破壊」に対する損害賠償を求める訴えを提起しました。

 この裁判は、10年の審理ののち、昭和57年3月30日東邦亜鉛の「故意責任」を認める判決を下しましたが、損害の認容額が請求金額のわずか5%という低額であったため、東京高等裁判所に控訴して争われ、昭和61年9月22日、和解によって解決しました。

 この和解成立と同じ日に、周辺被害住民は、東邦亜鉛との間で「公害防止に関する協定」を締結しました。この協定に基づいて、昭和62年から毎年一回、周辺住民による立ち入り調査が行われました。この間専門の科学者のアドバイスや協力を得て、住民らによる立ち入り調査を充実したものとしながら、住民による発生源の監視を強めてきました。

 そして、平成3年4月14日に安中公害裁判原告団・安中公害弁護団と東邦亜鉛株式会社の間で確認書が交わされ、同日、安中公害裁判原告団は「安中緑の大地を守る会」に呼称をあらためるとともに、新たに東邦亜鉛との間で協定書を締結し、それに基づき、毎年4月(コロナ禍を除く)に安中製錬所工場視察会を開催してきました。今回、第33回目となる工場視察会には、地元から15名の住民が参加しました。


当日朝9時半からの工場視察会の開始前に、事務棟1階の待合用会議室に集う参加者の皆さん

■当日、朝9時30分からの視察会開始に合わせて、関係者が安中製錬所の事務棟2階の会議室に参集しました。そして、9時30分定刻に視察会が始まりました。




司会:大丈夫でしょうか。えー、皆様、おはようございます。(場内:おはようございます)事務部環境管理室を担当しています中島(正治)でございます。本日、工場視察会におきまして、会社側の司会を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それではまず、会社側の出席メンバーの紹介をさせていただきます。まず、本社のメンバーからですが、本日、業務都合によりましてWEBでの参加となるものがおります。まずはモニターのほう、ご覧ください。常務執行役員総務本部長の大久保(浩)でございます。



総務本部長:大久保でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

司会:次に、現地参加となります。総務本部長の高橋(宏)でございます。



総務部長:高橋でございます。よろしくお願いいたします。

司会:続きまして、環境安全室長の石井(光)でございます。

環境安全室長:石井です。本日はよろしくお願いいたします。

司会:再度、モニターをご覧ください。本社からWEBで参加となります、総務部顧問の安堂(英次)でございます。



総務部顧問:安堂でございます。よろしくお願いいたします。

司会:続きまして、総務部課長の山田(昌吾)でございます。



総務部課長:山田です。よろしくお願いします。

司会:続きまして、安中製錬所のメンバーでございますが、所を代表します常務執行役員所長の森田(英次)でございます。



所長:森田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

司会:副所長の原澤(浩之)でございます。



副所長:おはようございます。原澤です。よろしくお願いいたします。

司会:次に製造部長の鈴木(達也)でございます。



製造部長:鈴木です。よろしくお願いします。



司会:それと私、事務部環境管理室を担当しております中島でございます。本日の工場視察会をこのメンバーで対応させていただきます。どうぞ、今日、よろしくお願いいたします。では、続きまして朝の代表者の挨拶を頂戴したいと思います。安中緑の大地を守る会会長、大塚義枝様。よろしくお願いします。



会長:皆さん、おはようございます。(場内:おはようございます)春爛漫のこの良き日に、本当に、会員の皆さんはじめ、弁護団の皆さん、また、市議会のほうの皆さん、大変ありがとうございます。私、あの、このような会長を引き受けるわけではなったのですけれども、時代と共に、やはり、こう、どんどんと、いなくなりまして。跡を継ぐ、今後この後、次ぐひとたちも、もうこれで、いろいろなことがわからなくなってきていると思います。でも、私たちの代で、この安心して暮らせる、これからを作って行ければなと思います。また、考えています。もうこれ、33回ですね。私の舅である父が、弁護団の団長をしまして、その後亡くなって、まあ、私ごとで申し訳ないのですけど、私の家も主人が亡くなって4年になります。あっという間ですが、長かったような、短かったような出来事であります。これから、このような私でも、どうしても皆さんに、「この会長を引き受けてくれ」と言われたのですけれども、このような立場になる資格も何もないですけれども、将来を考えますと、どうしても、これを引き受けて、次の世代には、安心してね。あのう、暮らせるような、最後の舅だった父が願った、土の入れ替え。まあ岩井のほうは済みましたけど、野殿地区の土の入れ替え。それが、目的を達成できるように、これからも皆さま方のご協力を得まして、ぜひとも私どもの世代に、成し遂げていきたいと思います。また、会社のほうもいろいろ大変でしょうけど、本日に当たって、いろいろ準備してくださいまして、ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします、挨拶にかえさせていただきます。(場内:拍手)


弁護団の皆さん

司会:ありがとうございました。えー、続きまして、会社を代表しまして所長の森田よりご挨拶を申し上げます。

所長:皆さん、おはようございます。(場内:おはようございます)所長の森田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。新型コロナ感染もですね、まあ昨年、2類から5類とか、いうふうに変わりまして、まだまだ撲滅とか、消滅とか、そこまでには至っておりませんが、折からの円安もあって、このあたりでも多くの外国の人も見かけるようになりまして、もうそろそろ終わりかな、というふうに思っております。そんな中で、本年度に入りまして、安中緑の大地を守る会の役員さん方と、いろいろと本日に向けまして、お打ち合わせをさせていただきました。そういうことで本日4月6日、穏やかな日にですね、を迎えまして、やっとおもてのサクラも咲き始めたところでございますが、こういうことで33回目になりますか、工場視察会を開催するにあたりまして、まあ、行なうことができましたということでございます。この機会ですので、当製錬所のですね、足元の状況をですね、簡単にお話させていただきます。創立、今度の18日で、この工場も87周年を迎えることになります。もう、かなり古い工場でございますが、まあ、そういうなかで、冒頭お話しました長引くコロナの関係で、ですね、なかなか私たち事業を取り巻く環境も、ですね、まあ、なかなかモノがなかなか売れていないと言う状況でございまして。まあ、皆さんもご承知のとおりですね、もう2年にわたるロシアのウクライナ侵攻から始まりまして、最近では、イスラエルによる侵攻によりまして、ヨーロッパ全体が非常に景気が悪い、ということで、国際商品でございます我々の亜鉛につきまして、非常にそういうところに影響を受けるということでございます。まあ、そういう中で、まあ、お隣り中国の不動産バブルがはじけまして、非常に、ひところの景気がないという背景にございます。その中で既にご案内の通りでございますが、昨年度の中間決算においてですね、当社10年に及ぶですね、鉱山経営を行っておったわけなんですが、非常に不振でございまして、まあ、これを見限り整理をするということで、報告がされたことは皆さんにもご案内のとおりでございます。まあ、本年度の最終決算、ならびに厳しい新年度の計画に向けまして、現在企画進行中という状況でございます。まあ、年始早々ですね、能登半島の地震、また今は台湾に地震がありまして、非常に不安定な状況でございまして、1-2月は逆にこのあたりは非常になんですか、温暖で、どういうことかなという状況ではございましたが、3月に今度は急に冷え込んでいるということで、体調管理も大変な今年ではないか、というふうに思いますが、やっとですね、桜も咲き始めてきましたので、今日の良き日に、ですね、どうぞ工場の中をご覧いただきまして、本日の工場視察会を進めさせていただければ、というふうに思っております。本日はよろしくお願いします。簡単ではございますがご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。(場内:拍手)

司会:続きまして、本日の視察コースや受け入れにつきまして製造部長の鈴木よりご説明をさせていただきます。

製造部長:製造部の鈴木です。よろしくお願いします。例年と同じく、製錬所内の製造工程並びに公害防止設備を中心にご案内させていただきます。操業につきましては順調でしたので、安定して事業を進めている状況をご視察いただければ幸いです。最近、インフルエンザ等の感染症流行懸念もあり、予防対策としての会議等でのマスク着用ルール、所内では引き続き実施しておりますので、私の声が聞こえづらいかもしれませんがご了承をお願いします。視察についてですが、お手元の資料で、3頁になりますかね、工場視察会、視察コース、そちらのほうをご覧ください。今年もマイクロバスを1台、ワゴン車2台をご用意いたしました。健脚コースの第1班は視察場所ごとにバスから降りてのご案内となりますので、ヘルメットの着装をお願いします。案内は私、鈴木が案内いたします。楽々コースの第2班につきましては、ワゴン車の中からの視察となります。視察中はワゴン車の乗り降りは致しませんので、乗り降りがつらくなられた方の乗車をお勧めいたします。ヘルメットは不要です。案内は総務課の長岡が担当致します。では、工場視察前に注意事項についてご説明いたします。マスク着用は、個人判断ですが多人数での車での視察となりますので、引き続き着用を宜しくお願い致します。場内での写真撮影はご遠慮いただきます。カメラ等を場内に持ち込まないようご協力をお願いします。また、携帯電話につきましては持ち込み可能ですが、撮影機能の使用はご遠慮をお願いします。健脚コースの方は、バスを降りて工場内を歩いていただきますが、安全確保を最優先としまして、昨夜の雨で路面が濡れているところもございますので、お足もとにご注意いただくとともに、設備や製品には絶対に手を触れないようお願いします。今回も例年通り4月ということで、まあ、気温のほうも上昇したり下降したりと不安定ですが、視察中にご気分が悪くなられたり、体調に異変を感じられた場合は、遠慮なく申し出てください。注意事項は以上でございます。よろしくお願いします。

司会:では、工場視察に入っていただきますが、出発前に2階のテラスで、ですね、工場をバックに記念撮影をしたいと思っております。トイレ等を済ませていただきまして、テラスのほうにご移動をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。



 午前9時45分に、ちょうど工場のサイレンの吹鳴と同時に、ほぼ三分咲き程度のサクラを背景に記念撮影をしました。その後9時50分にマイクロバスに分乗して、工場視察に出発しました。筆者は連年通り健脚コースのバスに乗車しました。





 構内に入ると、鈴木部長がマイクを手にとって、説明をしてくれました。

製造部長:皆様、あらためて、おはようございます。(車内:おはようございます)場内視察をご案内いたします製造部の鈴木です。よろしくお願いします。先ほどご説明しましたが、まず製錬所のほうの上側ですね、最上部に上がってから、降りながら、順次、視察していただきますので、よろしくお願いします。弊社は主に亜鉛、鉛、銀の地金、その他ですけれども、電子部品、および粉末冶金部品などの生産を行っております。ここ、安中製錬所につきましては亜鉛地金、亜鉛合金地金、薄硫酸、粉末冶金による焼結部品などの生産を行っております。亜鉛につきましては年間14万トン、月に1万トンの生産能力を持ちまして、国内の20%強の生産力を誇っております。精算しました亜鉛につきましては、60%程が自動車などに使用される薄板鋼板メッキ、そちらの用途に使われております。それでは最上部の排煙脱硫工程のほうへ行きますので、お待ちください。

当会:鈴木さん?

製造部長:はい。

当会:今のご説明で、薄硫酸とおっしゃっていましたが、この薄硫酸は、まだここで製造していらっしゃるのですか?

製造部長:えっ?

当会:さっき「薄硫酸を使って」というか、私、ちょっと聞き取れなかったんですが。

製造部長:薄硫酸のほうは、弊社の小名浜製錬所のほうで、そちらで硫酸を今作っておりますので、そちらのほうをこちらに持ってきて、水で薄めて98%から75%の硫酸にして、ここから販売のほうをしています。

当会:焙焼炉を休止して、硫酸プラントを止めたけれども、やはり、販路は一定の維持をしなければならないので、それで、小名浜でつくったのを、こっちに持ってきて捌いているということですね?

製造部長:あと、工程上におきまして、硫酸ですが、こちらのほうで使う必要がございます。そういうことです。

当会:はい、分かりました。それと、どのように運んでいますか。

製造部長:ローリーですね。毎日運んでいます。

当会:折角小名浜から来るのだから、貨車でもいいのかと思ったんですけど。

製造部長:貨車はかなり昔に硫酸用の車両があったんですけど、今はもうないので。

当会:わかりました。

参加者:貨車も短くなったよね。

当会:うん、今は無蓋貨車がなくなってタンク貨車のみですね。

参加者:なんか大分短くなった。

当会:だから生産量が4割くらい少なくなったわけだ。

参加者:むかしは、何両あるか、踏切で数えたものだね。

当会:踏切の待ち時間が短くなった。

 午前10時ちょうどに、排煙脱硫装置の施設脇に到着しました。一同、バスを降りて説明に耳を傾けました。

製造部長:こちらの看板のほう、見ながらご説明させていただきます。こちらが排煙脱硫工程となっております。ロータリーキルンで発生する排ガスですね。こちらのガスは、ガスクーラーで冷却してバグフィルターで、粗酸化亜鉛ダストを回収致しまして、こちらの排煙脱硫工程へ送付されます。ダストを除塵後に、こちらの排煙脱硫工程では、亜硫酸ガスである排ガス処理として、亜鉛華TCA、苛性TCA,水TCAと、3段で脱硫、水洗浄、こちらで排ガスを、手前のほうに見えます高さ37mの排気塔より大気放出しております。排ガスの硫黄酸化物の測定は、赤外線分析計を、水TCA等の出口に設置いたしまして、硫黄酸化物の濃度測定を常時行い、管理しています。また、煤塵等の測定は、2か月に1度、定期的に行っています。後ろに見えますのが、亜鉛華TCAです。手前に見えます2つの塔が苛性ソーダTCAと水TCAになっております。質問等無ければ、次の工程に行きたいと思います。

当会:「2か月に1度、排ガスの測定やっている」ということですが、これは、行政のほうには報告していますか。

製造部長:そうですね。はい。

 参加者一同はマイクロバスに午前10時5分に戻り、出発したバスは坂を下り始めました。

参加者1:下の娘がよく視察会に何回か来ていたよ。この間39歳になったもの。小学校の時よくついてきた。上(の娘)は年が違うから、ついてこなかったけど。

参加者2:排ガスの脱硫は、昔より負荷が減っている?

司会:一時期よりは、一番やっていたころよりは、多少低いですね。

製造部長;ガス量はあまりかわらないですね。

司会:処理量が減っているからその分だけ負荷が減っていますね。

 バスは、エンジンブレーキを掛けながら急坂を下りてゆきます。

司会:そこ、左に入ってください。はい。

参加者3:視察会の為にシートを張っている。

司会:いらっしゃっていただくのできれいにはしました。何とか見るに堪えられるところは変えていないんですけれども、見るに堪えられないところは、こうしてあります。

参加者1;昔の建物そのままですもんね。

司会;そうですね。

当会:スクラップ&ビルドをしていないんですよ。よごれっぱなしなんですよ。

 車内各所で話がはずんでいるうちに、ロータリーキルンのある場所に着きました。

司会:ここで回ってもらえますか。

 午前10時9分にバスがRC脇の狭いスペースで何とか切り返しを繰り返して、法転換が完了しました。

司会:はいここで、開けてみてください。ちょっとだけ30、50㎝だけバックします。はい、大丈夫です。

 バスを降りると相変わらずの騒音です。すぐわきに酸素ボンベを格納したパレットが置いてありました。太陽日酸とあり、次回検査25年3月、前回検査は24年11月との記載が見えました。

製造部長:はい、先ほど視察いただいたのは排煙脱硫工程になりますが、そこに行くガスのもとは、こちらのロータリーキルン工程になっております。このロータリーキルンに投入する原料は、一次鉱滓といいますが、先に、この計器室の裏側にあるんですが、ドライヤーに入れまして、水分を、乾燥をさせます。次に、乾燥した一次鉱滓にコークスを混ぜてロータリーキルンへ投入します。ロータリーキルンの炉の先端にはバーナーが設置されておりまして、重油燃焼によりまして、炉内の温度は一番高いところで約1300度くらいまでに加熱します。そうすることによりまして、一次鉱滓中の亜鉛が還元揮発しまして、揮発した亜鉛、これが空気とまた、再接触することによりまして、酸化物、粗酸化亜鉛になることによって、炉尻ですね、炉の後ろのほうに流れます。流れたガスと一緒に、ガスクーラーやバグフィルターを使用しまして、粗酸化亜鉛を捕集しております。この酸化物、粗酸化亜鉛と称しますが、亜鉛原料として回収されます。キルンの炉前から出て来る鉄分が濃縮された廃棄物。こちらのほうはクリンカーと呼んでおりまして、これが、クリンカー、そのクリンカーは冷却、粉砕、したあとに、K砕出荷場へ運んでおります。ガスクーラーにつきましては、排ガスの冷却と同時に熱回収を行っておりまして、その熱は、またバーナー用の空気などに再利用されております。ちょうど今こちらに見えるのが、ロータリーキルンの炉尻側ですね。ガスが逃げていく方になります。その左隣にある設備がガスクーラー。後ろにある設備がバグフィルターとなっておりまして、そちらのほうで粗酸化亜鉛の捕集を行っております。はい、ロータリーキルンの工程につきましては以上となります。

 午前10時14分にロータリーキルンの工程説明が終了しました。
当会:このバグフィルターからは、これはホッパーは要らないのですか?入らない。ここでは何が取れます。まだ揮発していないですよね。

製造部長:ドライヤーの排ガスをこちらのほうで。

当会:除塵中のチリのなかの重金属はどうやって処理するのか?

製造部長:後ろのほうに電気集塵機。後段にございます。電気集塵機を通してから回収します。

当会:最終的には工程に戻す?溶かす?

製造部長:出てきたダスト類は工程に戻します。

当会:はい。

製造部長:それではバスのほうに移動します。

 現場では間欠的にブザーの吹鳴音が鳴り響いており、相変わらず酷い騒音でした。参加者がホッパーの振動かと理由を聞くと、バグフィルターのホッパーのダンパーの音だということです。

午前10時15分に、再びマイクロバスに乗り、ロータリーキルン工程を後にしました。

 先ほど下ってきた坂に合流する前に、バスの車窓からかつて使用していたスラグ置場が右側に見えました。

当会:質問いいですか?質問。

製造部長:はい。

当会:あの、右手に見えるこの昔のスラグ置場は、もう使っていないということだったが、今回、これ見ると散水していますし、いろいろこの・・・。

司会:すいません、小川さん。これ、今からご説明しますので、ちょっとお待ちいただいてよろしいですか?

当会:はい、じゃあ、丁寧にお願いします。

参加者1:まだ、入っているじゃない?



製造部長;はい、先ほどですね、ロータリーキルンから発生しましたクリンカーですね。こちらのほうはベルトコンベアで、こちらのK砕出荷場に送られます。一応、ここは「中央」K砕出荷場と呼んでおりまして、このあと見学します「東」K砕出荷場を稼働する前に使用していた元のK砕出荷場となります。以前の「東」K砕出荷場ですね、こちらのほうは、広さとコンクリート敷を活かしまして、まあ、ちょっと、新規事業のほうに使用を検討しておりまして、一時的にこの「中央」K砕出荷場。これを使用して、またさらに後で見学いたします第一電解跡地、こちらのほうに、K砕出荷場をさらにまた移設したいと、今のところ検討しております。

当会:ええ!よくわからないな。なにか事業をされるために、今の東側にある、まあこれから見せていただくところが、なにか改築もしくは改装するために、一時的にここを、昔使っていたところのここを再使用しているとこういう認識でよろしいですか?

製造部長:はい。で、更にその、こちらのほうからまた、西のほうに移設すると。

当会:えっ、まあ、その辺は、後でじっくりお聞きしたいと思うんですけどね。これ昔使っていて、ここ一応問題があったわけですよ、例えば、全部コンクリートで地下浸透しないようなかたちになっていないということもあって、だけど、そこまた使っていいんですか?このような形で。こう見ますと、側壁のところは、何かユンボでひっかいたような爪の跡がありますけども、ああいうところから、このスラグは重金属が非常に多く含まれていることはご承知ですよね。

製造部長:ええ。

当会:ここにこれだけまた再度使用して、堆積させて使用しても構わないという十分な措置はとられたんですか?今、これ見て、私、びっくりしたんですけど。

製造部長:・・・。

当会:まあ、すぐ答えられないのであれば、あとでいいですよ。

製造部長:はい。

当会:まずは、スケジュールをこなしてください。

製造部長:わかりました。

参加者4:この水はどうしているんですか?

当会:この水をどうしているのかも含めて、これを排水処理施設に誘導しているのかどうかも分からないですよ。

参加者4:これが、田んぼでも入ったらね、困るね。

 当会が質問したため、一時的に止まっていたバスは再び始動し、急坂を下りて、製錬所構内の一番東にあるK砕出荷場に向かいました。車内では引続き、元のスラグ置場を再使用している現状について意見が飛び交っていました。

当会:だから、こういうところが無頓着なんですよ、昔これ使っていてやばいからというので、あそこにきちんとコンクリートで全部浸透しないように、隔離したかたちで、管理するストックヤードを作る、という話だった。そのためにこのベルトコンベアであそこまで誘導しているんですよ。今日見たらあそこ使っているから、えっと思ったので、操業量が減っている筈なのに、なぜまたあそこを使っているのかというのはやっぱり、すぐ「おかしいな」と思ったんですけどね。あのように、コンクリートで覆われていない側壁などから、重金属を含んだ雨水が地下浸透してしまうわけです。で、地下水を汚染するわけです。もう汚染されていますけど。

 参加者を乗せたマイクロバスはエンジンブレーキを掛けながら坂を下っていきます。午前10時21分に「東」K砕置場に到着しました。

司会:(運転手に)右側におりていただいて、いいです。

運転手:はい。

参加者1:こっちは、きれいになっているじゃない。ねえ。

司会:そうですね。こちらはゼロにしました。(運転手に)このまま中でぐるっと回っていただいて。

参加者1:ここよりあそこのほうが近くていいよね、距離が長すぎるので相当電気量が要るんじゃない。あそこなら安くて済むよね。

参加者2:このあれ、電気設備とか昔のPCBがあって、まだそのまま残っているんじゃないの?

司会:いや、これはもう全部抜いてあって、クリーニングしてあるので、そっちの心配はないです。ただ、中のモノは残っています。

全部きれいになったね、本当に。

司会:(運転手に)はい、ここでいいです。

製造部長:こちらの方が、ですね。「中央」K砕出荷場の前に使用していた「東」K砕出荷場となっています。磁選機とか、そちらの前方に、左、左前方ですね、見えるのが、ございましたが、こちらの磁選機と一部設備を「中央」のK砕出荷場のほうに移設して、使用しております。あと、出荷待ちで置いておきましたK砕のほうにつきましては、整理して今は、えー、見た通りのカラの状態となっております。

司会:はい、以上でお願いします。(運転手に)それでは電解工場のほうへお願いします。

 午前10時23分にマイクロバスは出発し、すぐ近くの電解工場に向かいました。
1分足らずで第3電解工場の前に着きました。参加者はバスを降りて、電解工場前の展示物の前に集まりました。

製造部長:はい、こちらのほうが、第3電解工場です。以前は「新」電解工場として説明しておりましたが、10年経ちますので、いつまでも「新」電解工場というのもなんなので、まあ、「第3」電解というふうに名称を変えております。ここでは、亜鉛の溶解液を電気分解して、金属の亜鉛を採取しております。えー、電解液ですね、こちらのほう、不純物を除去した硫酸亜鉛溶液になるんですけれども、こちらのほうをですね、各電槽、電解槽に供給いたしまして、直流電流を流しまして電気分解をさせることによりまして、こちらの真ん中にあります陰極板、これはアルミニウムでできているんですけれども、こちらの陰極板側に亜鉛が、その右の・・・にあるものですけれども・・・にありますように、亜鉛がアルミ板のほうに電着、析出します。計画された電力量に達しましたら、陰極板に電着した亜鉛カソード板を自動剥離機に搬送して剥離いたしまして、カソード亜鉛。ちょうど一番右に見えます薄い灰色の板状のものなんですけれども、カソード亜鉛として、回収します。電解後の亜鉛濃度の低下した液につきましては、亜鉛尾液として、溶解工場にまた戻しまして原料を溶解する溶液として使用しております。一応、こちらの一番左側ですね。そちらに見えてございますのが陽極板、プラス側ですね。こちらは鉛板になっております。以上が第3電解工場となっております。

当会:すいません。あの陽極板はだんだん消耗すると思うんですけど、どのくらいで替えています?

製造部長:約7年くらい。

当会:そんなですか。メンテナンスはあまり要いらないですね。

製造部長:やはり、表面の付着物がつきますので、それを落としてやらないといけないんです。

当会:では、あまり減耗しないんですか?

製造部長:鉛ですか?

当会:板そのものは?

製造部長:そうですねやはり、析出物とか、物理的に取りますので、そういった時に少しハツリとかしますが。

当会:もっと、この、薄くなってもいい、というか、それは許容値あるわけ?

製造部長:そうですね、やはり鉛なので強度的な問題になります。

当会:鉛はやわらかいですからね。銀を入れたとしてもね。はいわかりました。

製造部長:はい。それでは次の工程に移っていきます。

 結局、昨年までのように電解工場の中に参加者は入れてもらえないまま、バスに戻り、午前10時28分に、溶解工程に向けて出発しました。

参加者1:今日は中に入らないのね。

当会:見てもあまり変わりばえしないから。或いは何か見られると困る事情があるのかもね。すぐにそういうふうに考えてしますね。しかし、それにしても、鳴り物入りで1ヘクタール以上のこのストックヤードをつい数年前に作ったのに、もう使わないというのはいくら減産しているといっても、驚きましたね。

参加者5:新規事業と言っていたね。新規事業をすると言っていたが、いったい何をやるのかね?

当会:じゃあ、また何かそこで、何かまたやばいやつだと困るんだよね。新規事業か。あとできいてみよう、また企業機密だというだろうけど。

 移動のバスの車窓から見ると、銀さいなど、鉱滓置場の建物も撤去してあったのには驚きました。

参加者1:昔は火が出ていたのでこわかったね。ドロドロしたようなのがね。皆作業服が焦げていた。

当会:やはりかなり減産しているから、今、稼働していないようだね。今、溶解炉使っていないね。今ね。

 午前10時31分に、溶解工程の施設の前に到着しました。早速バスから降りて現場視察です。

製造部長:はい、こちらの方がですね、先程の電解工場で生産しましたカソード亜鉛。こちらのほうを溶解して鋳造します鋳造工場になっておリます。えー、亜鉛製品につきましては、100種類を超える品種ですね、多種多様な製品を製造しております。そのうち6割のほうが手前に見えております「調合亜鉛」と呼ばれる製品となっております。調合亜鉛につきましては、高炉メーカーですね、えー、こちらのほうへ納入いたしまして自動車用のボディ、などですね、薄板鋼板メッキ用に使用されております。調合亜鉛には他の金属を添加しない純亜鉛のものや、アルミなどですね、金属を添加する亜鉛合金がありまして、こちらのカソード亜鉛を低周波誘導溶解炉。電気を使用して溶かす炉がありますが、こちらの溶解炉のほうで、500℃まで昇温しまして溶解します。アルミにつきましては、重油バーナー溶解炉で地金のほうを溶解して、手前の中段に見えます調合炉のほうに必要な亜鉛、アルミ、その他金属ですね。こちらのほうの量を調整して、投入しまして、合金を手前の型に流し込んで、生産しております。調合炉につきましては3基ございまして、生産能力としては1日当たり240トン。それ以内になります。調合炉は自動傾倒、手前のほうにこう傾きまして、ユーザー各社指定の金型に流し込みまして、冷却、凝固させます。そのあとにですね、底部から自動押上機というのがございまして、そちらのほうで押して突き出して、製品となっております。じゃあ、続きまして、電気亜鉛のほうの工程のほうに進めて行きますので、ちょっと歩いてで、すいませんが。

 午前10時35分に電気亜鉛の工程のほうに移動しました。1分足らずで電気亜鉛製造工程に着きました。いつものとおり、ここはかなりの騒音です。特に金型から亜鉛のインゴットを抜くための振動音がすごいです。

製造部長:はい、こちらほうが、電気亜鉛を製造しております工程となっております。手前の左奥ですね、こちらの方が電気亜鉛を、聞こえません?はい、えー、左の方が電気亜鉛の工程となっておりまして、こちらのほうで電気亜鉛を製造しております。電気亜鉛は、メッキや伸銅製品に使用している純亜鉛の製造で、調合亜鉛同様、カソード板を低周波誘導溶解炉のほうで、500℃で溶解しまして、1枚当たり20キロのインゴットケースで鋳込んでおります。こちらのほうを製錬するのは・・・こちらのほうですね、鋳造、凝固いたしまして抜き出されましたスラブと呼ばれる製品はロボットにて積み上げて結束されます。こちらのスラブのほうはですね、1枚20キロで、50枚積まれて一山1トンで計測されて出荷します。ちょうど後ろにあります。こちらのスラブのほうですね。これが、50枚重なった1トンのものとなっております。一応冷却はしているんですけれども、熱は冷えないので、それもありますので、表面はかなり熱く触ったら火傷するくらいの温度になっております。はい、以上が鋳造工程となっております。では、引き続き次の工程に行きますので、バスのほうへお願いします。

 午前10時39分、バスに戻り次の工程に出発しました。

参加者2:塊にSHGと書いてあったけど、あれはグレード?

司会:そうです。スペシャルハイグレードで、日本語で最純度と呼ばれているものです。(当会注:SHGは、亜鉛純度99・995%以上となる亜鉛インゴットの品質を表し、これはLME(ロンドン金属取引所:London Metal Exchange)で取引される亜鉛地金の純度を示す用語。国際市場で取引可能な品質を確認するもので、具体的には、純度99.995%以上の亜鉛を指す)

製造部長:自動車用薄板鋼板向けで、多分メッキの層がでかかったり、小さかったりするので、それに合わせて、ああいうでかいやつや小さいのを使ったりしていると思います。プラスチックの場合は使わないが、鉄の防食用に亜鉛が使われます。

司会:(運転手に)もう少し行ったところで右側に寄せていったところで、水色のタンクの前くらいで。もう少し前で大丈夫です。

 午前10時42分排水処理施設前に到着しました。

製造部長:足元に段差がありますので、気を付けて下さい。

参加者6:ここから先、延長放流したあの先、金ケ崎までの流路。そこまでの流路は河床にあるわけですよね。その管理はどうやっているのでしょうか。

当会:何もしていないと思います。この先、市道というか、碓東小学校の裏の、田んぼの間のところ、ちょっと広めの、でもすれ違うのがやっとの道の下に埋設してあるんですが、点検している・・・半世紀絶つけれど、全くないですね。

参加者6:あれば埋設してから50年。もっと?

当会:もっともっと経過していますね。公害で騒がれてからもう半世紀ですから、

製造部長:はい、こちらは、排水処理工程です。製錬工程の雑排水を、集水池になります。集水池に集めておりまして、製錬工程内の、さまざまな水溶液は繰り返して利用しております。そのため、工程外のほうには出ません。ただ、それ以外の雑排水ですね、たとえば床を掃除した洗浄水、道路洗浄した洗浄水、生活排水などの雑排水がこちらの集水池に集められております。集水された排水は、ポンプで揚水されまして、流量を調整して中和槽のほうへ送液されます。中和槽では、苛性ソーダでpHを、アルカリ性ですね、することによりまして、排水中の金属亜鉛が水酸化物として沈殿していきます。次にシックナーと言われる固液分離設備に送りまして、この中和液に凝集剤を添加して沈殿を促進させながら、上澄み液と濃縮スラッジに分離します。濃縮スラッジのほうは自動フィルター濾過機で濾過して、その濾液は再び沈殿池に戻します。濾過滓は、再び亜鉛電解原液で溶解して製錬工程の原液として戻します。シックナーの上澄み液、こちらのほうは、まだ微細な固形分がございますので、それを更に除去するために砂濾過機のほうで濾過しまして、濾液のほうは、また、沈殿池を経由して、pHを調整いたしまして、約8.5前後に中和しています。その水は、延長放流水で、金ケ崎まで導水されて碓氷川のほうに放流されております。逆中和処理につきましては、pHを常時監視しておりまして、pHが異常な場合は、安全ダンパーが作動しまして、再び集水池に回収されます。なお、亜鉛鋳造工程とかで使用しております間接冷却水ですね。そちらの用水につきましては、水量等をチェックしたのち、旧放水水路から柳瀬川のほうに流水されております。はい、こちらの方が排水処理となっております。じゃあ、それでは、次の工程のほうに移りたいと思いますので、バスのほうに、下りましょう。

 マイクロバスに戻る際に、たまたま近くに本社から参加した石井環境安全室長がいたので、声がけをしました。

当会:最近たまに(安中に)来ている?

本社環境安全室長:いやあ、なかなか。

当会:もうコロナも空けたし、ここはメイン工場なのでお願いしますよ。

本社環境安全室長:・・・。

 午前10時50分、排水処理場前をマイクロバスが出発、第1電解工場跡へ向かいました。車中、付近の参加者と会話が弾みました。

当会:第1電解工場を片付けた跡地で、ここで。客土の仮置場にしたらどうかという話もあった。行政が不熱心なのか、会社側がOKしないのか、私はここが客土の仮置場として一番良いと思います。

製造部長:えー。こちらは「西」K砕設置予定場になっております。第1電解工場の跡地になります。キルンからこちらのほうにクリンカーを運ぶためのベルトコンベア。こちらのほうを持ってきました。設置しまして、さらに「中央」K砕出荷場にあります磁選機。こちらのほうですね、設備を移設して、まあ、建屋を建設して、屋内置場として、する計画となっております。はい。では事務所に向かいます。

当会:すいません。いいですか?移動中で。なぜ移設して、それも建屋の中でストックしなければならなくいけないということになったのでしょうか?なぜ鳴り物入りで・・・。・

製造部長:ああすいません、今ちょっと(ほかのかたからの)質問が。ああ、延長放流?

参加者6:あの放水、延長放流、地下何メートルなんでしょうか?

司会:えーとですね。深いところ浅いところあるんですけど、一概には言えないんですけど。深いところで1m半とか、そんなものかな。浅いところでは1mとか、もっと浅いところもあります。50センチくらいのところもあるでしょうね。

参加者6:掃除は?

司会:そのときどきですね。私になってから2回。ただ全部が全部、できるわけではないですね。マンホールのところは全部開けてやります。私になって、12、13年になりますが、4年に1回くらいですかね。

製造部長:はい、すいません。

当会:あのね、だから今、その、なぜわざわざ鳴り物入りで数年前に1ヘクタールのちょいのK砕ヤードを設置されたにも関わらず、今回こちらのもうこれも7、8年前ですかね。第1電解工場跡地の整理したところに移設、また新たに作るという、それも屋内で行うということは、どういう理由でそのようにされたのですか?イニシャルコストもかかると思いますけどね。

製造部長ら:・・・

当会:企業機密?別に、あのう、屋内でやったほうがいいというのは前々から防塵対策でよいというのは分かっていましたけどね。

司会:屋内でやるというのは、今、小川さんおっしゃるとおりなんです。あの、防塵をしっかりやろうというのがひとつ。屋内にするという理由の一つとしては挙げられる。すいません。移設の件に関しては、ちょっとまだ申し上げられる段階ではないので、ちょっと新しいことを考えての、そういうところまでで、すいません。今日は勘弁していただきたいと思います。

当会:じゃあ、社内で検討、予算とか・・・。

司会:はい、まだ検討中です。確定はしていません。

当会:そうですか、でも(実施は)まちがいないですよね、時期的なところはともかく、答え辛そうだな。

 午前10時55分、事務棟に戻りマイクロバスから下車しました。

当会;(運転手に)運転おつかれ様でした。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・後編に続く】
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虚偽公文書作成三昧のタゴ51億円事件から29年…国にすら平然とウソをつく安中市役所の危うい現況

2024-04-05 09:28:20 | 安中市の行政問題

広報あんなか2022年6月1日号の16ページ目の上段に掲載された写真記事。「国の制度を活用し・・・」などと虚偽情報を平然と公表している。

■2024年4月3日朝、のエープリルフール人事異動のわずか二日後、台湾東部の花蓮市の沖合を震源とする地震と沖縄への津波警報が報じられましたが、その日の朝日新聞朝刊に、3月30日の報道記事の続報として、安中市役所を巡る不正行為を報じる記事が掲載されました。エープリルフール人事異動の僅か二日後、新年度早々、またもや明らかになった安中市行政の体たらくに、市民の皆さんも呆れ果てたのではないでしょうか。

**********朝日新聞2024年4月4日
総務省、事前に指摘 安中市、地域活性化制度「対象外」
 群馬県安中市が国の支援をあてにして民間から職員を受け入れたのに、条件を満たさず制度を活用できなかった問題で、総務省が事前に市側へ「このままでは交付税措置の対象外」と伝えていたことがわかった。市は指摘後も申請内容を改めず、結局、職員の給与など約450万円を全額負担することになった。市は「事前に指摘を受けたかはわからない」としている。
 安中市が利用しようとしていたのは、総務省の「地域活性化起業人」制度。企業と協定を結ぶ自治体が総務省へ申請して対象と認められれば、派遣された社員の給与や発案した企画の経費として、1人あたり年間で最大560万円の特別交付税が自治体に支給される仕組みだ。
 市は、2022年4月にこの制度の利用を総務省に申請。同28日にこの制度を使って旅行大手「エイチ・アイ・エス」(HIS)と協定を結び、同社員を非常勤職員として迎え入れると発表した。
★市、申請内容改めず全額負担★
 だが、総務省によると、勤務条件を週2日とした市からの申請内容が交付税措置の条件を満たしていないことに気づき、締結よりも前に市に「このままでは対象外」と伝えたという。記録も残っているという。
 市はこのことについて、「4月28日の発表より前に総務省から『対象外』と告げられたかどうかはわからない」とした。対象外であることは発表後から同年5月末までに自発的に気づき、「総務省へ連絡した」とも主張している。
 市は結局、その後も申請内容を変更しなかった。これについては「調整の上の勤務日数なので、増やすことは難しかった」としている。(杉浦達朗)
**********

■このように総務省の指摘に対して平気でしらばくれる安中市にとって、市民にウソをつくのは朝飯前のことでしょう。

 そして、何よりも市民として心配なのは、今回の事件で交付税措置を受けることが前提の地域活性化起業人制度そのものが使えていないのに、市の内部においても、「この制度を活用している」とする文書が飛び交っていたことです。さらに、総務省の指摘を受けていたのに、制度活用の手続きの誤りを是正することなく、不正な手続きにより、市民の血税である一般会計からHIS職員の給与など約450万円が賄なわれたことも重大問題です。

 これはまさに安中市役所内部のコンプライアンスとガバナンスが、29年前のタゴ事件発覚当時の不正の温床レベルにあることを如実に示していると言えます。

 当会では、第二のタゴ事件の発生を抑止するため、住民監査請求など、しかるべき対応を検討中です。

【市民オンブズマン群馬・ひらく会事務局からの報告】

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交付税で起業人活用のはずが予備費450万円でHIS社員を受け入れ…ウソまみれ安中市行政

2024-04-03 09:47:58 | 安中市の行政問題
■2023年度の最後の週末である3月30日土曜日の朝日新聞朝刊に、安中市役所を巡るとんでもない報道記事が掲載されました。起床後、同紙の朝刊を開き、群馬版を見ていっぺんに目が覚めた安中市民も少なからずいたのではないでしょうか。

**********朝日新聞2024年3月30日
安中市、国の支援受けられず 民間企業との地域活性化制度
2年間の経費450万円全額負担
 安中市に旅行大手「エイチ・アイ・エス」(HIS)から派遣されている職員の勤務状況が、市が活用しているとしていた国の制度の条件を満たしていなかったことがわかった。このために国からの支援がまったく受けられず、2022年4月からの2年間でかかった経費約450万円を市が全額負担することになった。市は「(補助の)対象外だったことに後から気付いた。致し方ないこと」としている。

2022年4月28日、安中市は総務省の「地域活性化起業人」制度を活用し、HISの社員を非常勤職員として迎えると発表した=HISのホームページから
 安中市が活用しようとしていたのは「総務省の「地域活性化起業人」制度。企業人材派遣制度とも呼ばれ、観光やデジタルなど専門知識を持った民間企業の社員を、自治体が職員として迎えることを促すものだ。企業と協定を結び自治体が総務省へ申請して対象と認められれば、派遣された社員の給与や発案したkぃ核の経費について、1人あたり最大で年間560万円が特別交付税として自治体に支給される仕組みだ。
 市とHISは22年4月28日に、この制度を活用して同社員を非常勤職員として迎え入れる協定を締結したと発表した。同年6月の市議会でも、当時の産業環境部長が「制度を活用している」と答弁していた。
 市によると、当初は自治体と企業などの専門人材をマッチングさせる内閣府の制度を利用してHISから職員を受け入れることにしていた。ただ、この制度には交付税措置などはなく、給与や企画に対しての補助がある総務省の制度の併用を検討したのだという。
 総務省によると、市からは「HISと協定を結び、来年度から社員を週2日非常勤職員として迎える」という内容で、特別交付税の申請があった。ただ、週2日の勤務が「受け入れ自治体の開庁日の半分以上を同自治体区域内での業務に従事する」という交付税措置の条件を満たしていなかったため、市に「このままでは対象外」と伝えたという。その後、市から条件を改めた申請はなかった。
 非常勤職員は、2年間で秋間梅林や磯部温泉といった観光地活性化などの業務をし、今年の4月にHISへ戻るという。
★「後から気づいた」「致し方ないこと」★
 安中市は「勤務日数を調整した結果、交付税の対象外だったことに後から気づいた」としている。その後、条件を改めなかったことについては「調整の上で勤務日数なので、増やすことは難しかった」
 その上で、「市としては総務省の制度を使ってHISから職員を迎えられた。致し方ないことだ」とし、現在でも制度を活用しているとの認識を示した。また、費用面も含めて問題はないとの考えだという。
 総務省によると、制度は特別交付税を受けることを「前提」としたもので、安中市を除くほぼ全ての市町村が交付税を受けているという。同省のホームページにある22年度の「起業人の活躍先」には、群馬県は中之条町と嬬恋、高山、片品の各村が記載されているが、安中市はない。
(杉浦達朗)
**********

■この記事のサブタイトルにもある「後から気づいた」「致し方ないこと」を平然と言いのけるあたり、さすが29年前に、地方自治体としては空前絶後、前代未聞の51億円事件の舞台となった安中市ならではの独自の「言い草」です。

 「致し方ない」とは、「仕方ない」の丁寧語とも言われますが、取材記者に追及に対して、シドロモドロで、「仕方がない」を丁寧語で表現して、なんとかその場をとりつくろうとした様子が目に浮かびます。

 しかし、行政手続き上、虚偽(ウソ)があったにもかかわらず、その事実を直視せず、「後から気づいた」などと出まかせを言い、さらに「致し方ない」などと言い訳することは、自らの不正支出手続きについて、真摯に反省し是正するつもりがないことを、公表したのも同然です。

 このような体質に陥っている安中市の現在の様相は、29年前に発覚したあの忌まわしいタゴ51億円事件当時のどうしようもない安中市政の体たらくを想起させます。

■「致し方ない」と言う表現について、さらに考察してみましょう。

 これは、「仕方がない」とか「やむを得ない」という意味を謙譲語の「致す」を使って丁寧に表した言葉です。何か物事をやるとき、物事をどうにかする方法ややり方がない状態のことです。例えば、天候や天変地異、予測できないような突発事変や先方の都合などの不可抗力により、自分の努力ではどうにもならないとき、その状況を受け入れるしかないときに使います。

 このように「致し方ない」は「他にどうすることもできない状況である」という意味を持つため、「満足はしていないが、どうしようもないので受け入れる」といったニュアンスを含みます。基本的にネガティブな印象を与える言葉でもあります。

 また、自分の行いによる結果に対して、実際にはもう少し努力できる状況であったにもかかわらず「致し方ない」と表現した場合は、それを聴いて、「やる気がない」と感じたり、「無責任だ」と思ったりする人もいるでしょう。

 今回の指摘を記者から受けた安中市の回答は、まさにこれに当てはまります。

■記事によれば、安中市は、当初から不認可と承知している総務省「地域活性化起業人制度」を「活用」とうたい、事実ではないのにあたかも同制度を活用したかのような公文書を作成し、この事案の執行にあたって予算措置(稟議・決裁)を行わず、安中市予算から、決裁なく予備費で不適切な執行を行なったことがわかります。

 なぜ、安中市は、このようなことをしでかしたのでしょうか。当会の調べでは、「当時の副市長の強い指示があった」という関係者の証言を得ております。すなわち、遅くとも令和3年11月までに、市の観光事業の進行を図るため、国の支援制度である総務省の地域活性化起業人制度を活用するよう、指示されたというのです。

 このため、7社に声をかけてヒアリングシートを送り、その回答内容を踏まえて、株式会社エイチ・アイ・エス(HIS)を含む2社に絞り、オンラインで面接をして、最終的にHISの職員を受け入れた経緯が明らかになっています。

 ところが、HISがヒアリングシートに記載していた出勤可能日数が、総務省が制度の活用に必須条件としている開庁日の半分(令和4年度まで。令和5年度以降は、「半分以上」)となっていたため、選定先として不適格だったことは、その時点で安中市も承知していたはずです。

 にもかかわらず、安中市は、令和4年4月27日の令和4年度第1回定例記者発表で、デカデカとこの虚偽情報を宣伝したのでした。

**********安中市HP 2022年4月27日
地域活性化起業人制度による民間人材の受け入れについて
 市は、観光振興などを推進するため、令和4年5月から民間人材の受入れを行います。
 国の地域活性化起業人制度(地方創生人材支援制度併用)を活用し、株式会社エイチ・アイ・エスと派遣協定を締結します。
 地域活性化起業人制度は、民間企業等の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る取組です。
 協定式につきまして、下記のとおり実施いたします。
   日 時 4月28日(木曜日)午後2時
   場 所 安中市役所 本庁舎2階 203会議室
   協定先 株式会社エイチ・アイ・エス
       (代表取締役 矢田素史)
 問合せ 総務部職員課(内線:1030)
**********

 この発表を受け、翌4月28日に安中市はHISと協定式を行い、それを広報で市民に伝えました。また、協定相手のHISも、自社のホームページにこの協定について大きく掲載しました。

**********㈱エイチ・アイ・エスHP 2022年4月28日
群馬県安中市 「地域活性化起業人制度」による派遣に関する協定を締結
アフターコロナにおける観光振興による地方創生と観光消費拡大にむけて
 株式会社エイチ・アイ・エス(本社:東京都港区 以下、HIS)と群馬県安中市は、総務省が推進する「地域活性化起業人制度」を活用し、HIS より群馬県安中市へ人材を派遣する協定を締結し、本日4 月28日(木)に調印式を執り行いました。

(左から 安中市産業環境部長 大竹将夫氏、 副市長 粟野好映氏、市長 岩井均氏、HIS執行役員 高野清、官公庁・自治体営業グループ統括部長 小林健二、五日市一訓)
 安中市は群馬県西南部に位置し、江戸時代より中山道の宿場町として栄えた歴史のある街として、市内には温泉記号「♨」の発祥地である「磯部温泉」や、日本の近代化を支えた鉄道遺産の観光地「碓氷峠鉄道施設」、そして、ぐんま三大梅林である「秋間梅林」など自然豊かな観光資源にも恵まれております。
 このたびの協定により、HISと安中市は、観光資源の開発、磨き上げを強化項目とし、観光と・食の魅力を国内外に発信し、国内外旅行の需要回復、持続的に魅力ある地域の活性化を目指し、相互連携と活動を推進いたします。
 HISは、海外60ヶ国に展開するHISの集客・送客機能と、これまで事業を通じて培った経験を活かし、安中市の観光振興と、地域の様々な課題解決に取り組んでまいります。

<協定に基づく取り組み内容>
(1) 観光の振興及び安中ブランドの発信に関すること
(2) 安中市産品の販路拡大に関すること
(3) その他地方創生の推進に関すること

派遣社員略歴 ※非常勤にて派遣
五日市 一訓 (いつかいちかずのり) (法人営業本部 官公庁・自治体営業セクション)
2006年 入社 営業所にて個人旅行商品の販売に従事
2010年 法人営業本部にて主に団体旅行商品の販売に従事
2016年 群馬営業所長に着任後、法人営業と並行して地方創生事業に従事
2021年 官公庁・自治体営業セクションにて群馬県を中心に地方創生事業に従事
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■この時、令和4年4月17日投開票の安中市長選で現職の茂木英子候補をダブルスコアで破り、翌18日に市役所で当選証書を受け取り、4月25日に初登庁を果たしたばかりの岩井均市長が、そうした不透明な経過について知ってか知らずか定かではないものの、もちろん当然知らされていなければならないはずですが、HISとの協定式で誇らしげに記念撮影写真に納まっています。

 ここで不可思議なのは、特別地方交付税措置が定義づけられている総務省の地域活性化起業人制度において、安中市は、この制度の活用資格がないまま、なぜHISの社員を非常勤職員として受け入れ、その人件費を支払えたのか、ということです。

■安中市は、前述の通り、29年前に土地開発公社を舞台にした巨額詐欺横領事件を起こした自治体です。当時、公文書の取扱いはデタラメの極みで、市長印や理事長印が勝手に押された文書が飛び交い、課税台帳も改ざんされるなど、無法状態にありました。

 あれから29年が経過した現在、同様の事情が市役所内で起きているとなると、第二のタゴ事件の温床が既に出来上がっている状況にあると言っても過言ではありません。

 タゴ事件では、元職員多胡邦夫だけがしょっぴかれ、共同正犯同然だった多くの市幹部、上司や同僚職員、政治家、反社勢力関係者などは、いずれも罪を問われませんでした。

 そのため、公文書の取扱いに対して、コンプライアンスが徹底しきれず、再び市役所が29年前の状況に陥っていることは、重大事態と言えます。

 引き続きこの問題について、当会としてもフォローしてまいります。

【市民オンブズマン群馬・ひらく会事務局より】

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