■安中市の岡田義弘市長が兼務する安中市土地開発公社には、昨年5月に元職員の妻から寄贈されたタゴお宝絵画等6点があることになっていますが、その絵画等6点のビジュアル情報、つまり絵柄情報を開示して真贋を確認しようとした当会に対して、岡田義弘市長は開示の判断を、岡田義弘公社理事長に委ねました。
その結果、岡田義弘理事長から、「市民に絵柄情報を公開すると、換価処分の際に、犯罪に関係した絵画という印象を与える為、価格の決定に悪影響を与えるので、ひいては公社の経営に支障をきたすから、開示を拒否する」という回答が、岡田義弘安中市長に出されました。
安中市長はその言葉を額面どおりに受け止めるとともに、タゴのお宝の絵画等6点は、岡田義弘市長が理事長をしている安中市土地開発公社が保有しているものの、公社を監理する安中市企画課では、絵画等6点を保有していない為、不存在であるから、絵柄を市民に公開することはできない、として、タゴお宝の開示を拒んでいます。
■安中市役所を16年前に震撼させた、安中市民がタゴ51億円事件と呼ぶ、前代未聞の巨額横領事件の使途不明金の行方を占う重要な絵画等6点の図柄について、なんとしても市民、とりわけ当会に対して開示しようとしない岡田義弘理事長ですが、その岡田理事長の言い分を100%認めるだけで、自らも公社の運営に理事・監事として関与したことのある岡田義弘安中市長が、現在、東京高裁で当会の追及に対して、チンプンカンプンな論理を繰り広げています。
その矛盾に満ちた論理を検証する為、先日、埼玉県の川越市役所、東京都霞ヶ関の総務省、そして前橋市の群馬県庁を訪れて、土地開発公社の理事長を、それを管理する自治体の首長が兼務している実態を調査しました。その様子は昨日の当会のブログにも紹介済みです。
■そして、一昨日、12月20日の判決日の1週間前ではありますが、当会としても、安中市の主張に対して、一矢報いておかなければならないと感じた為、控訴人として次の準備書面(2)を東京高裁の民事第4部宛てに、書留で郵送しておきました。
おそらく昨日に東京高裁に届いたはずですから、早ければ本日、遅くとも明日までには被控訴人である安中市にも届くと見られます。
この準備書面(2)は、本件の控訴審が11月8日(火)に開かれた第1回口頭弁論で即日結審したため、法廷で陳述はされませんが、裁判所の裁判官が安中市の主張のなかの疑問点について追加説明を求めた為、安中市の追加説明に対して、当会も追加コメントをこの準備書面(2)で出したものです。
■それでは、当会が12月12日付で、東京高裁と、被控訴人の岡田市長に出した準備書面(2)を次に紹介します。
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平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件
控 訴 人 小 川 賢
被控訴人 安 中 市
準 備 書 面 (2)
平成23年12月12日
東京高等裁判所第4民事部 御中
〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
控訴人 小 川 賢
本件裁判は11月8日の第1回口頭弁論をもって結審したが、裁判長の指揮により、(1)安中市が公社に対して積極的にビジュアル情報の開示を求めないのはどうしてか、(2)公社が開示を拒否する理由が曖昧なのはどうしてか、2点についてもう少し被告側の説明が必要となり、裁判長から、被告に対して、このことについて検討し必要な範囲で書面を提出するのであれば11月末までに提出するよう求めたところ、11月29日付で、被控訴人から準備書面(2)が提出された。控訴人としては、既に主張は尽したと感じていたところ、被控訴人からの準備書面(2)が12月1日に届いたため、内容を一読したところ、いつくか言っておきたいことがあるため、次のとおり陳述する。
第1 被控訴人の準備書面(2)についての感想等
1. 「第1 安中市土地開発公社(以下「公社」という)が、ビジュアル情報の開示を拒否した理由について」に関して
被控訴人の主張によれば、公社の説明として「インターネット上でのオークションにかけることを検討していた」とあるが、これは到底信用できない。なぜなら、控訴人は、広報あんなか平成23年3月1日号に、同5月22日にテレビ東京の「出張!なんでも鑑定団」が安中市内で公開録画されるため、鑑定をしてもらいたい品物があれば、3月15日までに申し込めることを知った。そのため、絵画等6点の真贋を確かめてほしいと思い、平成23年3月10日に、安中市土地開発公社理事長岡田義弘宛に、次の内容で絵画等6点にかかる鑑定要請を書面で提出したが、一切無視された。
平成23年3月10日
〒379-0192 安中市安中1-23-13
安中市土地開発公社 理事長 岡田義弘 様
写し:安中市長 岡田義弘 様
住所:〒379-0114安中市野殿980番地
氏名:小川 賢 (59歳)
TEL:027-382-0468
「出張!なんでも鑑定団in安中」における公社所有の絵画等6点の鑑定要請
前略、このたび広報あんなか平成23年3月1日号を拝見しました。鑑定をしてもらいたい品物があれば、3月15日までに申し込むと、5月22日(日)午後1時から安中市松井田文化会館大ホールで公開録画されるTV番組で鑑定してもらえます。ぜひ、この機会に、次のとおり、安中市土地開発公社が保有している「お宝」である絵画等6点を鑑定して、真贋を確かめていただきたく、ここにお願い申し上げます。
ご承知のとおり、安中市土地開発公社では、平成7年5月18日に、総額51億円余りの史上空前の巨額横領事件が発覚しました。それまで15年にわたり、同一職場に配置されていた元職員が、公社の理事長印を勝手に使い、公共事業の名目で銀行から巨額の融資を引き出し、地元の銀行支店に開設した公社の特別会計と称する預金口座に振り込ませ、巨額の公金を横領していたものです。
警察の懸命な捜査にもかかわらず、使途不明金が14億円以上残るとともに、安中市長印や公社理事長印が押印された金銭貸借契約証書にもとづき横領金を融資した地元の銀行は、返済をもとめて安中市と公社を提訴し、約3年後に和解判決がくだり、公社は安中市の連帯保証により地元銀行に対して、103年間にわたり、毎年クリスマスの日に2000万円ずつ支払っています。これからまだ92年残っており、安中市民は子々孫々にわたり、元職員の豪遊のツケを払わされているという悲惨な状況にあります。
こうした最中、平成22年6月22日付で地元の新聞にひとつの記事が掲載されました。“安中・巨額詐欺事件「債務履行の一部に」 元職員の妻 絵6点、公社に提出”と題する記事です。
ところが、これらの絵画等6点は、真贋が不明だというのです。そこで、私は情報公開請求で、どのような絵画等なのか、確認しようとしましたが、公社の理事長を兼務する安中市長である貴殿は開示を拒否しました。私は、さっそく異議申立てを行い、真贋を確かめるためには、積極的に公表して、鑑定をしてもらうのが最善の策であると主張しました。
しかし、残念ながら、安中市の情報開示審査会は私の主張を棄却し、いまでも絵画等6点は公社に保管されたまま、日の目を見ない状態になっていると想像されます。
今回、安中市に「出張!なんでも鑑定団」が来ることはまさに天恵です。この絶好の機会にぜひ、安中市土地開発公社に、絵画等6点を出品してもらい、専門家に鑑定してもらえれば、安中市の置かれている状況をひろく全国に知ってもらうことができます。安中市民のためにも、絵画等6点の真贋と鑑定額を、公の場で確かめていただきたいと思います。
<絵画等6点の内訳>
番号 種類 補足説明事項 備考
1 絵画 作者:立川 広己 作品名:薔薇の中で 価格約1億円
2 絵画 作者:浅井 忠 作品名:山間の部落 価格約1億円
3 絵画 作者:萬 鉄五郎 ※サイン有り、その他黒字有り 価格約1億円
4 絵画 作者:高橋 由一 作品名:風景 価格約1億円
5 絵画 作者:林 武※日動画廊社長サイン有り 価格約1億円
6 版画 作者:東洲斉写楽 ` 価格約1億円
こうして、公社は、絵画等6点の真贋を確かめる絶好の機会を見逃したのである。3月10日の時点で既に、元職員から絵画等6点を寄贈されてから、約10ヶ月が経過していた。現在では、既に1年7ヶ月が経過している。それにもかかわらず、まだ公社は真贋を確かめようとしない。
安中市は、今年はじめに、市民税の滞納者から差し押さえた絵画を複数、インターネットオークションにかけたようだが、なぜか、公社が保有している絵画等6点については、公社が別法人というわけか、積極的に公社に対して、インターネットオークションに向けた準備を促している風情も感じられない。
ところが、あろうことか、被控訴人は、そのような公社の開示に向けた消極的な姿勢を遺憾に思うどころか、控訴人がインターネットでブログを通じて、地方自治体としては史上最大級の巨額詐欺横領事件(以下「タゴ51億円事件」という。)の真相解明と責任所在明確化、そして再発防止を祈念して、積極的に市民に情報発信していることを不服として、「巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交え記事にしている」と中傷めいた言葉を発した。
被控訴人は、来る12月25日にも都合12回目となる群馬銀行への和解金2000万円を、公社を通じて公金を支出しようとしている。元職員の豪遊の尻拭いともいえるこの和解金名目の公金支出は、本来であれば市民の為に使われるべきものであるはずだ。それなのに、謙虚に反省するどころか、控訴人がインターネットを通じてブログで、タゴ51億円事件の真実をひとりでも多くの住民に知ってもらうため日夜尽力している行為をなじろうとするのは、タゴ51億円事件について、被控訴人が未だに真に悔い改めていないことを如実に表している。
理論的にはあと91年間も群馬銀行に公金を支払い続けることになりかねないタゴ51億円事件の負の遺産のことを、ひろく世間に伝え、後の世代に伝えることは控訴人、被控訴人を問わず、今を生きる我々の使命である。
さらに驚かされたのは、被控訴人が、公社が控訴人に絵画等6点のビジュアル情報を開示すると、「インターネット上でそれらの画像を全国的に広く流布される可能性があった」と断定していることである。
というと、公社の岡田義弘理事長がそのような見解を抱いていることになる。岡田義弘理事長は、かつて理事として元職員と一緒に公社の運営に携わり、一時は監事として公社の決算承認をしたことがあり、元職員とは業務を通じて親しい関係にある。そのような立場の理事長が、公社とは別組織の安中市のトップにいるのだから、どうみても、公正、公平な見解とは思えない。
というのは、岡田義弘市長は、控訴人がかつて、公社の理事監事ら24名を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起したとき、ただひとり反省もせず、自分は正しいと主張し続け、前橋地裁を動かして、控訴人の訴えを退けさせたことがある人物であるからだ。
控訴人としては、もし絵画等6点のビジュアル情報の開示を受けた場合、それを携えて、元職員がこれらの絵画等6点を16年間も預けていたという富岡市在住の元金融マンを訪ねる予定である。そして、そのビジュアル画像を見せて、いつ、どの骨董商から、いくらで購入したのかヒヤリングする予定である。
なぜなら、その人物が自ら元職員の変わりに絵画等6点を買い付けたのであるから、当然、真贋についても、確かめていたはずである。その人物は平成7年5月当時、金融マンでありながら古物商の免許をもっており、本物かどうかを確認したうえで、これらの絵画等6点を購入したはずだからだ。
こうしたことは、当然公社が自発的に行うべきものであるが、なぜか公社はその人物に真贋を確認しようとしない。いや、本当は真贋を確かめたのかもしれないが、それを市民に知られると、その人物の存在や関係を疑われかねないため、表向きは真贋が分からないというふうに市民に言っているだけなのかもしれない。公社が、その人物に確認することをはばかるのであれば、控訴人がその役目を果たすしかない。
そうした控訴人の心情を汲み取ることなく、公社は、控訴人にビジュアル情報を開示したら、ただちに全国的にインターネットで流布するに違いないと決め付けている。
控訴人は、絵画等6点のビジュアル情報の開示を受けたら、まず真贋を確かめるために、上記のように美術商や鑑定士、あるいはそれぞれの作者の作品を集めているコレクターや美術館を訪ね、真贋の確認のために必要な情報収集に努める所存である。
もちろん、公社の岡田義弘理事長には、逐次情報を共有化して、とくに元職員の関係者へのヒヤリングでは、積極的な支援を要請するつもりである。
こう言うと、被控訴人は、控訴人一人に開示したら他の誰からの請求に対しても同様に開示しなければならない義務があるから、とにかく開示ができないのだ、と反論するかもしれない。しかし、ビジュアル情報を不特定多数の人に開示した場合、どんな不都合があるというのだろうか。
確かに、もしかしたら絵画等6点は犯罪に絡んだ「盗品」であるかもしれない。それならそれで、一般に広く公開したほうが、情報は集まりやすいはずだ。絵画や版画は、そのビジュアル情報を公開してこそ、その価値の判断材料となる情報を得易くなることは自明の理である。
逆に言えば、ビジュアル情報なくして、そのものの価値判断は不可能である。ピカソの「ゲルニカ」のような、世界的に有名な絵画であれば、名前を聞いただけで画像がイメージできるが、通常の絵画の場合、例えば絵画の通販で、もしビジュアル情報以外の絵画に関する情報を与えられても、一般消費者が商品の価値判断が正確にできて、購入したがるなどと、被控訴人として思っているのだろうか。
2. 「第2 安中市がビジュアル情報の開示を公社に積極的に求めなかったことについて」に関して
被控訴人は、裁判長から言われた「なぜ市はビジュアル情報の開示を公社に積極的に求めなかったのか」という問いに対して、明確に答えていない。
被控訴人は、ここでも「ビジュアル情報が公開されると“犯罪に関係のある絵画”という印象を世間一般に与えるため、結果として取引が敬遠され、売却価格の低下を招き、売却金を巨額詐欺事件の損害賠償に少しでも多く充当することができなくなり、公社が本来得られるべき利益を失い、大きな損失が生じる」という論理を展開している。これは、すならち、公社の岡田義弘理事長の見解だと思われる。
安中市と公社が別法人であれば、当然、安中市は公社に対してビジュアル情報の開示を積極的に働きかけなければならない。なぜなら、前述のように安中市はインターネットで市税滞納者から差し押さえた絵画をオークションにかけた実績があるためだ。したがって、安中市の経営に支障を及ぼしている公社の負債を軽減する為に、当然、ビジュアル情報を自ら公社に求めて、真贋の確認作業やインターネットオークションの実施に向けた準備を積極的に行うはずだ。しかし、そのような決意や方針について、被控訴人は準備書面(2)で全く言及していない。
むしろ、公社が主張する“犯罪に関係のある絵画”という点について、被控訴人は神経質なほど非常に理解を示しているようだ。岡田理事長が、前述の通り、「なんでも鑑定団」の安中市での公開録画に絵画等6点を出品する絶好の機会をみすみす看過したことからも、岡田理事長が、この絵画等6点が犯罪に関係のある絵画であることを非常に気にしていることがうかがえるし、被控訴人もそれを容認しているようだ。
たしかに、この絵画等6点の購入資金の出所は不明だが、タゴ51億円事件で使途不明金とされている14億円あまりから支出された可能性はある。だが、本当にそうなのかどうか、確かめもしないうちに、犯罪に関係のある絵画だと見なすことは性急すぎる。この絵画等6点を元職員から預かった元金融マンの古物商の親しい友人に、この絵画等6点の由来をきちんと質して、本当に犯罪に関係するのかどうかを確認することが最も重要である。しかし不思議なことに、公社の岡田理事長に、そのような事実確認を行ったような風情は見られない。
一方、安中市の岡田市長は、「安中市と公社は別法人である」として、ビジュアル情報の開示について、岡田市長から岡田理事長に対して、情報開示を書面で促したと主張している。別法人だが、同一人物同士で、互いの判断を求めているという変な格好になっている。民法でいえば、双方代理ということになり、このような形はコンプライアンス違反である。
タゴ51億円事件が起きた後、群馬県地方課(現在の市町村課)は再発防止のため、公社の理事長を設立母体の自治体の首長が兼務することは好ましくないという指導をしていた。なぜなら、タゴ51億円の発覚当時、ゴルフのシングルプレーヤーだった元職員は、当時の安中市長であり公社理事長を兼務していた小川勝寿(故人)がゴルフ好きなこともあり、しょっちゅう市内にある太平洋ゴルフ場高崎コースでプレーし、その帰りに国道沿いの洋食屋で一緒に食事をとっていた姿を市民に目撃されていた。元職員は小川勝寿のことを「おやじ」と呼び、市長に気軽に声をかけられる立場を利用して、市役所内で一目置かれるようになったのである。したがって、公社においても、理事長である小川勝寿との親しい関係については、上司や同僚も当然知っており、数十万円の高級スーツを着て、高価そうな古伊万里の湯飲み茶碗を見せびらかす元職員にことを「市役所の七不思議」と噂する程度で、誰も忠告できるものがおらず、元職員の犯行についても、周囲の目が遠慮していた為、犯行はやりたい放題だった。
被控訴人は、公社にビジュアル情報の開示を積極的に迫らない理由に事欠いて、公社の理事長を設立母体の自治体の首長が兼務することが、珍しくないことを強調する為に、川越市土地開発公社の定款を例に挙げて、兼務の正当性を主張する有様だ。
控訴人は、12月5日(月)午前11時半に実施に川越市役所の4階の総務部管財課を訪れて、川越市土地開発公社事務局を兼務する管財課の主任と、副主任にヒヤリングをした。
その結果、確かに定款どおり市長が公社理事長を兼務しており、副理事長1名は副市長が兼務していて、その他9名の理事は全員市議から構成されているという。理事の市議らは各会派から満遍なく構成されており、互いに牽制しあうことで、合計11名の理事会では、いつも熱心な論議が尽されるという。また、職員が理事長に「おい、おやじ」などと声をかけるという場面はおよそありえず、直接1対1で会うことさえはばかれるという。
職員らの説明によると、「昔のことではっきりとは分からないが、こうした定款の条項は、昭和49年に公社を設立した際、前身となる組織の慣例が定款に反映されたため、そのまま現在に至ったものだと思う。たまたま例として安中市に引用されたようだ」と感想を漏らした。
控訴人は、タゴ51億円事件のことを説明したが、耳を傾けていた川越市の公社職員らは、「当方ではクロスチェックが厳しいので、絶対にそのようなことは起こりえない」と断言した。さらに、「安中の事件は市民の財産を奪ったのも同然ですから犯罪ですよね。これはだから、個人が、元職員が悪いということにとどまらず、組織的に市長も含めて幹部も責任を取るべきですね。これがもし本当であったらね」と率直な感想を控訴人に述べた。
また、公社の理事長職と、設立母体の自治体の首長が、それぞれの組織の代表者として同一人物であることについて、やはり同日午後2時に総務省地域力創造グループ地域振興室を訪れて、課長補佐に総務省の見解を聴取した。
その結果、「全国の自治体の公社について代表者が首長と同一人物かどうか、数字としては把握はしていないが、併任されている公社が時々見られる、ということは、感触としては理解している。川越市の公社のように、割合古い時代にできた公社は割りと併任しているところが残っていたりする。公社への通知ということでは、民法上の双方代理の禁止という規定があり、契約の当事者に同一人物がなることはできない場合がある。それに明らかに抵触するというわけではないが、問題となる可能性はある。だから、“是正に努められたい”というような通達は出している。」とのコメントが得られた。
最後に、同日午後5時に群馬県庁の9階を訪れ、市町村課の係長と面談し、群馬県内にある23の自治体の土地開発公社における首長と公社理事長職の併任の実態についてヒヤリングした。その結果、群馬県では、安中市の公社を含め14の公社が依然として併任していることが判明した。すなわち、平成23年3月31日時点で、設立団体の長以外が理事長に就任している群馬県内の公社としては、前橋市土地開発公社、高崎市土地開発公社、太田市土地開発公社、沼田市土地開発公社、川場村土地開発公社、東吾妻町土地開発公社、玉村町土地開発公社、みなかみ町土地開発公社、昭和村土地開発公社の9団体。設立団体の長が理事長に就任している群馬県内の公社としては、明和町土地開発公社、伊勢崎市土地開発公社、桐生市土地開発公社、渋川市土地開発公社、館林市土地開発公社、富岡市土地開発公社、吉岡町土地開発公社、板倉町土地開発公社、安中市土地開発公社、藤岡市土地開発公社、中之条町土地開発公社、榛東村土地開発公社、西邑楽土地開発公社、甘楽郡土地開発公社の14団体となっている。
やはり、総務省からは、双方代理の禁止の観点でできるだけ併任状態の解消を指導されているという。なお、驚いたことに、係長は、タゴ51億円事件が発覚した当時、地方課に所属しており、当時の事件のことは記憶に残っているという。
以上のように、実際に定款に首長が公社理事長職にあたる、と明記しているのは、これまでのところ、川越市の公社しか見当たらないが、設立母体の自治体の首長が公社理事長を併任しているケースはかなり多いようであり、とりわけ群馬県では半数以上の6割近い公社で依然として双方代理の状態にあることが分かった。
ただし、川越市の公社職員からのヒヤリング結果のように、たとえ併任していても、タゴ51億円事件のようなとんでもない不祥事を起こす可能性は到底考えられないという。いかに、安中市の公社でおきたタゴ51億円事件が異常であるかを痛感させられた次第である。
そのことは、被控訴人が「代表者が同一人物であっても、公社と市は意思決定の方法も全く異なり、また公社においてはその利益を優先するのは当然であって、公社が上記理由により『経営に支障を及ぼすおそれがある』すなわち『損失を与える可能性もある』と理事会等で意思決定したことについては、公社の窓口機関となっている安中市企画課としても、公社との協議のなかで、その判断はやむをえないと考えたものである。したがって、使途公社の代表者が同一であること事態が本件開示請求の決定に与えた影響は全くない」などと平然と言いのけていることからも明らかである。
安中市の場合、市と公社は別法人といいながら、実は同じ人物がトップで意思決定をしている。川越市などでは、首長が公社の理事長を併任しても、理事会などで意思決定がきちんと行われているというから、独断と偏見で物事が実質的な論議を経ずに決定されるという懸念はないようだが、安中市の場合、元職員と一緒に公社の運営に携わった経験のある岡田義弘市長兼公社理事長が権勢を奮っており、副市長も助役もおかず、公務中に自分で自家用車を運転して法人や個人を訪問してまわるほどワンマンぶりを発揮していることから、16年前の公社の状態を髣髴とさせるため、タゴ51億円事件の再発を懸念する声は市民の中にも根強い。
3. 「第3 ビジュアル情報を開示することに伴う公社の不利益について」に関して
被控訴人は、公社の見解として、ここでも「犯罪にかかわった絵画」という表現で、絵画等6点の公開に神経質なほど拒否反応を起こしていることを強調している。ということは、この表現が、公社の岡田義弘理事長の見解であることが分かる。また「巨額詐欺事件の損害賠償請求権に基づく残債務の一部に充当する金額も目減りしてしまう」などともっともらしいことを主張しているが、噴飯ものである。
事件後、16年もの間、元職員が絵画等6点を警察の捜査をかいくぐり、親しい友人に預けていたこと自体、悪質であり、タゴ51億円事件が、元職員ひとりの単独犯行として幕引きが測られてしまい、事件の真相究明が途中でたち切られてしまったことが、こうした異常な事態を事件発覚後16年してから招くことになった。これは、警察が途中で中途半端に捜査を打ち切ったためであり、使途不明金が依然として14億円余りも残されたという事実の重みを証明していると言える。
控訴人は、絵画等6点の真贋を確かめるために情報開示を行ったのに、それが公社の不利益に繋がると、短絡的に判断したがる岡田市長兼公社理事長の本音は、おそらく控訴人にこれ以上、タゴ51億円事件に関係して情報を提供して痛い腹を探られたくないという強い気持ちが底辺にあるためであろう。さもなければ、絵画等6点のビジュアル情報を入手して、真贋を確かめたいという控訴人の真意を確認することもなく、頑なに開示を拒否しようとした公社の姿勢の説明がつかない。
タゴ51億円事件関連というレッテルを貼られたところで、絵画等6点は盗品ではない。真贋を確かめたのちは、事件に関係した絵画であることは話題にはなることはあっても、換価処分時に適正価格に悪影響を与える要素にはならない。公社は、ビジュアル情報を悪影響になると、なぜ、思い込むのか、依然として判然としない。
既述のとおり、絵画等のビジュアル情報を不特定多数の人に開示した場合、どのような不都合があるのだろうか。確かに、著作権の問題があるかもしれないが、別に写真に撮ったりスケッチしたりしても問題はないはずだ。複製をつくって販売するわけでもない。あるいは、もしかしたら絵画等6点は犯罪に絡んだ「盗品」かもしれない。それならそれで、一般に広く公開したほうが、情報は集まりやすいはずだ。絵画や版画は、そのビジュアル情報を公開してこそ、その価値の判断材料となる情報を得易くなることは自明の理である。
こうしてみると、もしかしたら、被控訴人や、公社の理事長は、今回のビジュアル情報が、控訴人以外の住民からの開示請求であったら、開示しても構わないと判断するのかもしれない。なぜなら、控訴人のことを、被控訴人は準備書面82)のページ1の下段部分で、「インターネット上でブログを公表しており、巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交えて記事にしている」と色眼鏡で見ているかのごとく人格を歪めて強調しているからである。もし、そのようなことをしそうもない住民からビジュアル情報の開示を求められた場合には、全国に広く絵画等6点の画像を流布される心配がない、と見なして開示するのだろうか。ぜひ、被控訴人の判断基準について教えを請いたいが、本件裁判ではもう陳述の機会がなくなってしまい、12月20日の判決日まで本日を除いてもあと1週間しか残っていない。まことに残念と言うほかはない。
以上
**********
■こうして、タゴお宝絵画等6点のビジュアル情報(=絵柄情報)の公開をめぐる司法の判断は、いよいよ来週の12月22日(木)午後1時20分に下される判決を待つのみとなりました。(上記の控訴人の準備書面(2)では判決日が12月20日とありますが、これは12月22日の誤りです)
【ひらく会事務局】
その結果、岡田義弘理事長から、「市民に絵柄情報を公開すると、換価処分の際に、犯罪に関係した絵画という印象を与える為、価格の決定に悪影響を与えるので、ひいては公社の経営に支障をきたすから、開示を拒否する」という回答が、岡田義弘安中市長に出されました。
安中市長はその言葉を額面どおりに受け止めるとともに、タゴのお宝の絵画等6点は、岡田義弘市長が理事長をしている安中市土地開発公社が保有しているものの、公社を監理する安中市企画課では、絵画等6点を保有していない為、不存在であるから、絵柄を市民に公開することはできない、として、タゴお宝の開示を拒んでいます。
■安中市役所を16年前に震撼させた、安中市民がタゴ51億円事件と呼ぶ、前代未聞の巨額横領事件の使途不明金の行方を占う重要な絵画等6点の図柄について、なんとしても市民、とりわけ当会に対して開示しようとしない岡田義弘理事長ですが、その岡田理事長の言い分を100%認めるだけで、自らも公社の運営に理事・監事として関与したことのある岡田義弘安中市長が、現在、東京高裁で当会の追及に対して、チンプンカンプンな論理を繰り広げています。
その矛盾に満ちた論理を検証する為、先日、埼玉県の川越市役所、東京都霞ヶ関の総務省、そして前橋市の群馬県庁を訪れて、土地開発公社の理事長を、それを管理する自治体の首長が兼務している実態を調査しました。その様子は昨日の当会のブログにも紹介済みです。
■そして、一昨日、12月20日の判決日の1週間前ではありますが、当会としても、安中市の主張に対して、一矢報いておかなければならないと感じた為、控訴人として次の準備書面(2)を東京高裁の民事第4部宛てに、書留で郵送しておきました。
おそらく昨日に東京高裁に届いたはずですから、早ければ本日、遅くとも明日までには被控訴人である安中市にも届くと見られます。
この準備書面(2)は、本件の控訴審が11月8日(火)に開かれた第1回口頭弁論で即日結審したため、法廷で陳述はされませんが、裁判所の裁判官が安中市の主張のなかの疑問点について追加説明を求めた為、安中市の追加説明に対して、当会も追加コメントをこの準備書面(2)で出したものです。
■それでは、当会が12月12日付で、東京高裁と、被控訴人の岡田市長に出した準備書面(2)を次に紹介します。
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平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件
控 訴 人 小 川 賢
被控訴人 安 中 市
準 備 書 面 (2)
平成23年12月12日
東京高等裁判所第4民事部 御中
〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
控訴人 小 川 賢
本件裁判は11月8日の第1回口頭弁論をもって結審したが、裁判長の指揮により、(1)安中市が公社に対して積極的にビジュアル情報の開示を求めないのはどうしてか、(2)公社が開示を拒否する理由が曖昧なのはどうしてか、2点についてもう少し被告側の説明が必要となり、裁判長から、被告に対して、このことについて検討し必要な範囲で書面を提出するのであれば11月末までに提出するよう求めたところ、11月29日付で、被控訴人から準備書面(2)が提出された。控訴人としては、既に主張は尽したと感じていたところ、被控訴人からの準備書面(2)が12月1日に届いたため、内容を一読したところ、いつくか言っておきたいことがあるため、次のとおり陳述する。
第1 被控訴人の準備書面(2)についての感想等
1. 「第1 安中市土地開発公社(以下「公社」という)が、ビジュアル情報の開示を拒否した理由について」に関して
被控訴人の主張によれば、公社の説明として「インターネット上でのオークションにかけることを検討していた」とあるが、これは到底信用できない。なぜなら、控訴人は、広報あんなか平成23年3月1日号に、同5月22日にテレビ東京の「出張!なんでも鑑定団」が安中市内で公開録画されるため、鑑定をしてもらいたい品物があれば、3月15日までに申し込めることを知った。そのため、絵画等6点の真贋を確かめてほしいと思い、平成23年3月10日に、安中市土地開発公社理事長岡田義弘宛に、次の内容で絵画等6点にかかる鑑定要請を書面で提出したが、一切無視された。
平成23年3月10日
〒379-0192 安中市安中1-23-13
安中市土地開発公社 理事長 岡田義弘 様
写し:安中市長 岡田義弘 様
住所:〒379-0114安中市野殿980番地
氏名:小川 賢 (59歳)
TEL:027-382-0468
「出張!なんでも鑑定団in安中」における公社所有の絵画等6点の鑑定要請
前略、このたび広報あんなか平成23年3月1日号を拝見しました。鑑定をしてもらいたい品物があれば、3月15日までに申し込むと、5月22日(日)午後1時から安中市松井田文化会館大ホールで公開録画されるTV番組で鑑定してもらえます。ぜひ、この機会に、次のとおり、安中市土地開発公社が保有している「お宝」である絵画等6点を鑑定して、真贋を確かめていただきたく、ここにお願い申し上げます。
ご承知のとおり、安中市土地開発公社では、平成7年5月18日に、総額51億円余りの史上空前の巨額横領事件が発覚しました。それまで15年にわたり、同一職場に配置されていた元職員が、公社の理事長印を勝手に使い、公共事業の名目で銀行から巨額の融資を引き出し、地元の銀行支店に開設した公社の特別会計と称する預金口座に振り込ませ、巨額の公金を横領していたものです。
警察の懸命な捜査にもかかわらず、使途不明金が14億円以上残るとともに、安中市長印や公社理事長印が押印された金銭貸借契約証書にもとづき横領金を融資した地元の銀行は、返済をもとめて安中市と公社を提訴し、約3年後に和解判決がくだり、公社は安中市の連帯保証により地元銀行に対して、103年間にわたり、毎年クリスマスの日に2000万円ずつ支払っています。これからまだ92年残っており、安中市民は子々孫々にわたり、元職員の豪遊のツケを払わされているという悲惨な状況にあります。
こうした最中、平成22年6月22日付で地元の新聞にひとつの記事が掲載されました。“安中・巨額詐欺事件「債務履行の一部に」 元職員の妻 絵6点、公社に提出”と題する記事です。
ところが、これらの絵画等6点は、真贋が不明だというのです。そこで、私は情報公開請求で、どのような絵画等なのか、確認しようとしましたが、公社の理事長を兼務する安中市長である貴殿は開示を拒否しました。私は、さっそく異議申立てを行い、真贋を確かめるためには、積極的に公表して、鑑定をしてもらうのが最善の策であると主張しました。
しかし、残念ながら、安中市の情報開示審査会は私の主張を棄却し、いまでも絵画等6点は公社に保管されたまま、日の目を見ない状態になっていると想像されます。
今回、安中市に「出張!なんでも鑑定団」が来ることはまさに天恵です。この絶好の機会にぜひ、安中市土地開発公社に、絵画等6点を出品してもらい、専門家に鑑定してもらえれば、安中市の置かれている状況をひろく全国に知ってもらうことができます。安中市民のためにも、絵画等6点の真贋と鑑定額を、公の場で確かめていただきたいと思います。
<絵画等6点の内訳>
番号 種類 補足説明事項 備考
1 絵画 作者:立川 広己 作品名:薔薇の中で 価格約1億円
2 絵画 作者:浅井 忠 作品名:山間の部落 価格約1億円
3 絵画 作者:萬 鉄五郎 ※サイン有り、その他黒字有り 価格約1億円
4 絵画 作者:高橋 由一 作品名:風景 価格約1億円
5 絵画 作者:林 武※日動画廊社長サイン有り 価格約1億円
6 版画 作者:東洲斉写楽 ` 価格約1億円
こうして、公社は、絵画等6点の真贋を確かめる絶好の機会を見逃したのである。3月10日の時点で既に、元職員から絵画等6点を寄贈されてから、約10ヶ月が経過していた。現在では、既に1年7ヶ月が経過している。それにもかかわらず、まだ公社は真贋を確かめようとしない。
安中市は、今年はじめに、市民税の滞納者から差し押さえた絵画を複数、インターネットオークションにかけたようだが、なぜか、公社が保有している絵画等6点については、公社が別法人というわけか、積極的に公社に対して、インターネットオークションに向けた準備を促している風情も感じられない。
ところが、あろうことか、被控訴人は、そのような公社の開示に向けた消極的な姿勢を遺憾に思うどころか、控訴人がインターネットでブログを通じて、地方自治体としては史上最大級の巨額詐欺横領事件(以下「タゴ51億円事件」という。)の真相解明と責任所在明確化、そして再発防止を祈念して、積極的に市民に情報発信していることを不服として、「巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交え記事にしている」と中傷めいた言葉を発した。
被控訴人は、来る12月25日にも都合12回目となる群馬銀行への和解金2000万円を、公社を通じて公金を支出しようとしている。元職員の豪遊の尻拭いともいえるこの和解金名目の公金支出は、本来であれば市民の為に使われるべきものであるはずだ。それなのに、謙虚に反省するどころか、控訴人がインターネットを通じてブログで、タゴ51億円事件の真実をひとりでも多くの住民に知ってもらうため日夜尽力している行為をなじろうとするのは、タゴ51億円事件について、被控訴人が未だに真に悔い改めていないことを如実に表している。
理論的にはあと91年間も群馬銀行に公金を支払い続けることになりかねないタゴ51億円事件の負の遺産のことを、ひろく世間に伝え、後の世代に伝えることは控訴人、被控訴人を問わず、今を生きる我々の使命である。
さらに驚かされたのは、被控訴人が、公社が控訴人に絵画等6点のビジュアル情報を開示すると、「インターネット上でそれらの画像を全国的に広く流布される可能性があった」と断定していることである。
というと、公社の岡田義弘理事長がそのような見解を抱いていることになる。岡田義弘理事長は、かつて理事として元職員と一緒に公社の運営に携わり、一時は監事として公社の決算承認をしたことがあり、元職員とは業務を通じて親しい関係にある。そのような立場の理事長が、公社とは別組織の安中市のトップにいるのだから、どうみても、公正、公平な見解とは思えない。
というのは、岡田義弘市長は、控訴人がかつて、公社の理事監事ら24名を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起したとき、ただひとり反省もせず、自分は正しいと主張し続け、前橋地裁を動かして、控訴人の訴えを退けさせたことがある人物であるからだ。
控訴人としては、もし絵画等6点のビジュアル情報の開示を受けた場合、それを携えて、元職員がこれらの絵画等6点を16年間も預けていたという富岡市在住の元金融マンを訪ねる予定である。そして、そのビジュアル画像を見せて、いつ、どの骨董商から、いくらで購入したのかヒヤリングする予定である。
なぜなら、その人物が自ら元職員の変わりに絵画等6点を買い付けたのであるから、当然、真贋についても、確かめていたはずである。その人物は平成7年5月当時、金融マンでありながら古物商の免許をもっており、本物かどうかを確認したうえで、これらの絵画等6点を購入したはずだからだ。
こうしたことは、当然公社が自発的に行うべきものであるが、なぜか公社はその人物に真贋を確認しようとしない。いや、本当は真贋を確かめたのかもしれないが、それを市民に知られると、その人物の存在や関係を疑われかねないため、表向きは真贋が分からないというふうに市民に言っているだけなのかもしれない。公社が、その人物に確認することをはばかるのであれば、控訴人がその役目を果たすしかない。
そうした控訴人の心情を汲み取ることなく、公社は、控訴人にビジュアル情報を開示したら、ただちに全国的にインターネットで流布するに違いないと決め付けている。
控訴人は、絵画等6点のビジュアル情報の開示を受けたら、まず真贋を確かめるために、上記のように美術商や鑑定士、あるいはそれぞれの作者の作品を集めているコレクターや美術館を訪ね、真贋の確認のために必要な情報収集に努める所存である。
もちろん、公社の岡田義弘理事長には、逐次情報を共有化して、とくに元職員の関係者へのヒヤリングでは、積極的な支援を要請するつもりである。
こう言うと、被控訴人は、控訴人一人に開示したら他の誰からの請求に対しても同様に開示しなければならない義務があるから、とにかく開示ができないのだ、と反論するかもしれない。しかし、ビジュアル情報を不特定多数の人に開示した場合、どんな不都合があるというのだろうか。
確かに、もしかしたら絵画等6点は犯罪に絡んだ「盗品」であるかもしれない。それならそれで、一般に広く公開したほうが、情報は集まりやすいはずだ。絵画や版画は、そのビジュアル情報を公開してこそ、その価値の判断材料となる情報を得易くなることは自明の理である。
逆に言えば、ビジュアル情報なくして、そのものの価値判断は不可能である。ピカソの「ゲルニカ」のような、世界的に有名な絵画であれば、名前を聞いただけで画像がイメージできるが、通常の絵画の場合、例えば絵画の通販で、もしビジュアル情報以外の絵画に関する情報を与えられても、一般消費者が商品の価値判断が正確にできて、購入したがるなどと、被控訴人として思っているのだろうか。
2. 「第2 安中市がビジュアル情報の開示を公社に積極的に求めなかったことについて」に関して
被控訴人は、裁判長から言われた「なぜ市はビジュアル情報の開示を公社に積極的に求めなかったのか」という問いに対して、明確に答えていない。
被控訴人は、ここでも「ビジュアル情報が公開されると“犯罪に関係のある絵画”という印象を世間一般に与えるため、結果として取引が敬遠され、売却価格の低下を招き、売却金を巨額詐欺事件の損害賠償に少しでも多く充当することができなくなり、公社が本来得られるべき利益を失い、大きな損失が生じる」という論理を展開している。これは、すならち、公社の岡田義弘理事長の見解だと思われる。
安中市と公社が別法人であれば、当然、安中市は公社に対してビジュアル情報の開示を積極的に働きかけなければならない。なぜなら、前述のように安中市はインターネットで市税滞納者から差し押さえた絵画をオークションにかけた実績があるためだ。したがって、安中市の経営に支障を及ぼしている公社の負債を軽減する為に、当然、ビジュアル情報を自ら公社に求めて、真贋の確認作業やインターネットオークションの実施に向けた準備を積極的に行うはずだ。しかし、そのような決意や方針について、被控訴人は準備書面(2)で全く言及していない。
むしろ、公社が主張する“犯罪に関係のある絵画”という点について、被控訴人は神経質なほど非常に理解を示しているようだ。岡田理事長が、前述の通り、「なんでも鑑定団」の安中市での公開録画に絵画等6点を出品する絶好の機会をみすみす看過したことからも、岡田理事長が、この絵画等6点が犯罪に関係のある絵画であることを非常に気にしていることがうかがえるし、被控訴人もそれを容認しているようだ。
たしかに、この絵画等6点の購入資金の出所は不明だが、タゴ51億円事件で使途不明金とされている14億円あまりから支出された可能性はある。だが、本当にそうなのかどうか、確かめもしないうちに、犯罪に関係のある絵画だと見なすことは性急すぎる。この絵画等6点を元職員から預かった元金融マンの古物商の親しい友人に、この絵画等6点の由来をきちんと質して、本当に犯罪に関係するのかどうかを確認することが最も重要である。しかし不思議なことに、公社の岡田理事長に、そのような事実確認を行ったような風情は見られない。
一方、安中市の岡田市長は、「安中市と公社は別法人である」として、ビジュアル情報の開示について、岡田市長から岡田理事長に対して、情報開示を書面で促したと主張している。別法人だが、同一人物同士で、互いの判断を求めているという変な格好になっている。民法でいえば、双方代理ということになり、このような形はコンプライアンス違反である。
タゴ51億円事件が起きた後、群馬県地方課(現在の市町村課)は再発防止のため、公社の理事長を設立母体の自治体の首長が兼務することは好ましくないという指導をしていた。なぜなら、タゴ51億円の発覚当時、ゴルフのシングルプレーヤーだった元職員は、当時の安中市長であり公社理事長を兼務していた小川勝寿(故人)がゴルフ好きなこともあり、しょっちゅう市内にある太平洋ゴルフ場高崎コースでプレーし、その帰りに国道沿いの洋食屋で一緒に食事をとっていた姿を市民に目撃されていた。元職員は小川勝寿のことを「おやじ」と呼び、市長に気軽に声をかけられる立場を利用して、市役所内で一目置かれるようになったのである。したがって、公社においても、理事長である小川勝寿との親しい関係については、上司や同僚も当然知っており、数十万円の高級スーツを着て、高価そうな古伊万里の湯飲み茶碗を見せびらかす元職員にことを「市役所の七不思議」と噂する程度で、誰も忠告できるものがおらず、元職員の犯行についても、周囲の目が遠慮していた為、犯行はやりたい放題だった。
被控訴人は、公社にビジュアル情報の開示を積極的に迫らない理由に事欠いて、公社の理事長を設立母体の自治体の首長が兼務することが、珍しくないことを強調する為に、川越市土地開発公社の定款を例に挙げて、兼務の正当性を主張する有様だ。
控訴人は、12月5日(月)午前11時半に実施に川越市役所の4階の総務部管財課を訪れて、川越市土地開発公社事務局を兼務する管財課の主任と、副主任にヒヤリングをした。
その結果、確かに定款どおり市長が公社理事長を兼務しており、副理事長1名は副市長が兼務していて、その他9名の理事は全員市議から構成されているという。理事の市議らは各会派から満遍なく構成されており、互いに牽制しあうことで、合計11名の理事会では、いつも熱心な論議が尽されるという。また、職員が理事長に「おい、おやじ」などと声をかけるという場面はおよそありえず、直接1対1で会うことさえはばかれるという。
職員らの説明によると、「昔のことではっきりとは分からないが、こうした定款の条項は、昭和49年に公社を設立した際、前身となる組織の慣例が定款に反映されたため、そのまま現在に至ったものだと思う。たまたま例として安中市に引用されたようだ」と感想を漏らした。
控訴人は、タゴ51億円事件のことを説明したが、耳を傾けていた川越市の公社職員らは、「当方ではクロスチェックが厳しいので、絶対にそのようなことは起こりえない」と断言した。さらに、「安中の事件は市民の財産を奪ったのも同然ですから犯罪ですよね。これはだから、個人が、元職員が悪いということにとどまらず、組織的に市長も含めて幹部も責任を取るべきですね。これがもし本当であったらね」と率直な感想を控訴人に述べた。
また、公社の理事長職と、設立母体の自治体の首長が、それぞれの組織の代表者として同一人物であることについて、やはり同日午後2時に総務省地域力創造グループ地域振興室を訪れて、課長補佐に総務省の見解を聴取した。
その結果、「全国の自治体の公社について代表者が首長と同一人物かどうか、数字としては把握はしていないが、併任されている公社が時々見られる、ということは、感触としては理解している。川越市の公社のように、割合古い時代にできた公社は割りと併任しているところが残っていたりする。公社への通知ということでは、民法上の双方代理の禁止という規定があり、契約の当事者に同一人物がなることはできない場合がある。それに明らかに抵触するというわけではないが、問題となる可能性はある。だから、“是正に努められたい”というような通達は出している。」とのコメントが得られた。
最後に、同日午後5時に群馬県庁の9階を訪れ、市町村課の係長と面談し、群馬県内にある23の自治体の土地開発公社における首長と公社理事長職の併任の実態についてヒヤリングした。その結果、群馬県では、安中市の公社を含め14の公社が依然として併任していることが判明した。すなわち、平成23年3月31日時点で、設立団体の長以外が理事長に就任している群馬県内の公社としては、前橋市土地開発公社、高崎市土地開発公社、太田市土地開発公社、沼田市土地開発公社、川場村土地開発公社、東吾妻町土地開発公社、玉村町土地開発公社、みなかみ町土地開発公社、昭和村土地開発公社の9団体。設立団体の長が理事長に就任している群馬県内の公社としては、明和町土地開発公社、伊勢崎市土地開発公社、桐生市土地開発公社、渋川市土地開発公社、館林市土地開発公社、富岡市土地開発公社、吉岡町土地開発公社、板倉町土地開発公社、安中市土地開発公社、藤岡市土地開発公社、中之条町土地開発公社、榛東村土地開発公社、西邑楽土地開発公社、甘楽郡土地開発公社の14団体となっている。
やはり、総務省からは、双方代理の禁止の観点でできるだけ併任状態の解消を指導されているという。なお、驚いたことに、係長は、タゴ51億円事件が発覚した当時、地方課に所属しており、当時の事件のことは記憶に残っているという。
以上のように、実際に定款に首長が公社理事長職にあたる、と明記しているのは、これまでのところ、川越市の公社しか見当たらないが、設立母体の自治体の首長が公社理事長を併任しているケースはかなり多いようであり、とりわけ群馬県では半数以上の6割近い公社で依然として双方代理の状態にあることが分かった。
ただし、川越市の公社職員からのヒヤリング結果のように、たとえ併任していても、タゴ51億円事件のようなとんでもない不祥事を起こす可能性は到底考えられないという。いかに、安中市の公社でおきたタゴ51億円事件が異常であるかを痛感させられた次第である。
そのことは、被控訴人が「代表者が同一人物であっても、公社と市は意思決定の方法も全く異なり、また公社においてはその利益を優先するのは当然であって、公社が上記理由により『経営に支障を及ぼすおそれがある』すなわち『損失を与える可能性もある』と理事会等で意思決定したことについては、公社の窓口機関となっている安中市企画課としても、公社との協議のなかで、その判断はやむをえないと考えたものである。したがって、使途公社の代表者が同一であること事態が本件開示請求の決定に与えた影響は全くない」などと平然と言いのけていることからも明らかである。
安中市の場合、市と公社は別法人といいながら、実は同じ人物がトップで意思決定をしている。川越市などでは、首長が公社の理事長を併任しても、理事会などで意思決定がきちんと行われているというから、独断と偏見で物事が実質的な論議を経ずに決定されるという懸念はないようだが、安中市の場合、元職員と一緒に公社の運営に携わった経験のある岡田義弘市長兼公社理事長が権勢を奮っており、副市長も助役もおかず、公務中に自分で自家用車を運転して法人や個人を訪問してまわるほどワンマンぶりを発揮していることから、16年前の公社の状態を髣髴とさせるため、タゴ51億円事件の再発を懸念する声は市民の中にも根強い。
3. 「第3 ビジュアル情報を開示することに伴う公社の不利益について」に関して
被控訴人は、公社の見解として、ここでも「犯罪にかかわった絵画」という表現で、絵画等6点の公開に神経質なほど拒否反応を起こしていることを強調している。ということは、この表現が、公社の岡田義弘理事長の見解であることが分かる。また「巨額詐欺事件の損害賠償請求権に基づく残債務の一部に充当する金額も目減りしてしまう」などともっともらしいことを主張しているが、噴飯ものである。
事件後、16年もの間、元職員が絵画等6点を警察の捜査をかいくぐり、親しい友人に預けていたこと自体、悪質であり、タゴ51億円事件が、元職員ひとりの単独犯行として幕引きが測られてしまい、事件の真相究明が途中でたち切られてしまったことが、こうした異常な事態を事件発覚後16年してから招くことになった。これは、警察が途中で中途半端に捜査を打ち切ったためであり、使途不明金が依然として14億円余りも残されたという事実の重みを証明していると言える。
控訴人は、絵画等6点の真贋を確かめるために情報開示を行ったのに、それが公社の不利益に繋がると、短絡的に判断したがる岡田市長兼公社理事長の本音は、おそらく控訴人にこれ以上、タゴ51億円事件に関係して情報を提供して痛い腹を探られたくないという強い気持ちが底辺にあるためであろう。さもなければ、絵画等6点のビジュアル情報を入手して、真贋を確かめたいという控訴人の真意を確認することもなく、頑なに開示を拒否しようとした公社の姿勢の説明がつかない。
タゴ51億円事件関連というレッテルを貼られたところで、絵画等6点は盗品ではない。真贋を確かめたのちは、事件に関係した絵画であることは話題にはなることはあっても、換価処分時に適正価格に悪影響を与える要素にはならない。公社は、ビジュアル情報を悪影響になると、なぜ、思い込むのか、依然として判然としない。
既述のとおり、絵画等のビジュアル情報を不特定多数の人に開示した場合、どのような不都合があるのだろうか。確かに、著作権の問題があるかもしれないが、別に写真に撮ったりスケッチしたりしても問題はないはずだ。複製をつくって販売するわけでもない。あるいは、もしかしたら絵画等6点は犯罪に絡んだ「盗品」かもしれない。それならそれで、一般に広く公開したほうが、情報は集まりやすいはずだ。絵画や版画は、そのビジュアル情報を公開してこそ、その価値の判断材料となる情報を得易くなることは自明の理である。
こうしてみると、もしかしたら、被控訴人や、公社の理事長は、今回のビジュアル情報が、控訴人以外の住民からの開示請求であったら、開示しても構わないと判断するのかもしれない。なぜなら、控訴人のことを、被控訴人は準備書面82)のページ1の下段部分で、「インターネット上でブログを公表しており、巨額詐欺事件についても、大きく虚実を交えて記事にしている」と色眼鏡で見ているかのごとく人格を歪めて強調しているからである。もし、そのようなことをしそうもない住民からビジュアル情報の開示を求められた場合には、全国に広く絵画等6点の画像を流布される心配がない、と見なして開示するのだろうか。ぜひ、被控訴人の判断基準について教えを請いたいが、本件裁判ではもう陳述の機会がなくなってしまい、12月20日の判決日まで本日を除いてもあと1週間しか残っていない。まことに残念と言うほかはない。
以上
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■こうして、タゴお宝絵画等6点のビジュアル情報(=絵柄情報)の公開をめぐる司法の判断は、いよいよ来週の12月22日(木)午後1時20分に下される判決を待つのみとなりました。(上記の控訴人の準備書面(2)では判決日が12月20日とありますが、これは12月22日の誤りです)
【ひらく会事務局】