市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【続報】高齢化社会と行政の役割・・・神奈川県の三浦市で起きた行政ハラスメントから見えて来る行政の堕落

2024-09-17 19:42:35 | オンブズマン活動

三浦市役所本館

三浦市役所別館

■日本の少子高齢化は、近年ますますその進行が著しくなり、段階の世代が後期高齢者になる2025年を待たずして既に超高齢社会を呈しているとする意見に、もはや誰も異論を唱える人はいません。
 こうした中、神奈川県の三浦市で、病の父親を介護していた当時54歳の息子さんから、行政による差別的な不正行為によるハラスメントに巻き込まれた状況について、2年半ほど前に情報提供がありました。詳しくは次のブログ記事をご覧ください。
〇2022年2月18日:高齢化社会と行政の役割・・・神奈川県の三浦市で起きた行政ハラスメントの実態報告

 あれから30カ月経過しますが、今回、「あらためて行政による杜撰な個人情報の取扱いの実態について、広く皆さんに知ってほしい」との要請が当会にありました。さっそく、行政ハラスメントの被害を受けた相談者に話を伺いました。

■まずは、相談者が三浦市役所に自らの個人情報の開示申請を行ったところ、三浦市役所が開示をしてきた、「相談者 ご本人の個人情報」にかかる“数枚”の書類の中で、「もっとも黒塗り」の多い“一枚”をご覧ください。

 この書類で「黄色」で塗りつぶされた箇所は、「個人情報保護」の観点から、相談者自身が、三浦市職員などの名前を塗りつぶした箇所で、イニシャルをつけてあります、それ以外の黒く塗りつぶされた箇所のすべては、三浦市役所が情報開示のために黒く塗りつぶした箇所です。

 ちなみに、書類上の「黄色」で塗りつぶされた2か所に記載がある「三浦市職員М 」は、いずれも同一人物です。


三浦市役所が相談者に開示した相談者の個人情報にかかる黒塗り書類のうちの1枚

 これだけ黒く塗りつぶされていると、内容が分からず文章としての体をなしていません。文章の一部を黒塗りにして全体像が分かるならまだしも、これではそもそも情報開示ではありません。

 この黒塗りされた相談者自らの個人情報にかかる開示書類は、三浦市行政が以下の背景から作成したものですが、そこには重大な瑕疵があります。

 なぜならば、三浦市役所は、相談者に詳しい聞き取りや、きちんとしたコミュニケーションを取らないまま、このような文章を制作して相談者に対応しているからです。三浦市役所は、相談者に事実確認をしていない状況で、いったい「何を根拠に」このような書類(文章) を作成できたのでしょうか?




三浦市役所保健福祉部高齢介護課(高齢者支援担当)から委託を受けている地域包括支援センターの相談窓口

■相談者の父親が久里浜アルコール症センターに入院する際に、三浦市役所の職員が地域包括支援センター職員3名を伴い、相談者に同行しています。その職員とは、書類にも2か所の記載がある「職員М」のことです。

 当時、職員Мは介護課に所属していました。そして、相談者の父親の入院に同行した当日、高齢者の扱い方に慣れていなかった職員М父親にケガをさせてしまいました。一度は久里浜アルコール症センターで受診を受けるも、同センターから「当院ではケガの治療が出来ません、ケガの処置をしてから改めて受診をしてください」と言われました。そこで、同行した地域包括支援センター職員の指示で、同職員が面識があり、当時、久里浜アルコール症センターと同じ地域にあった、「新のび皮フ科」(横須賀市野比) で相談者の父親のケガの処置をしてから、同日、改めて久里浜アルコール症センターで受診を受ける事になりました。

 ちなみに、地域包括支援センターは、相談者とその父親の久里浜アルコール症センター入院に同行するにあたり、事前に相談者と相談し、相談者の在宅時に、職員2名で「父親の状態を確認するために自宅訪問」をしていました。その際も、地域包括支援センターは、相談者の父親が日中から飲酒をしている状況を把握するために、地域包括支援センター職員が父親と実際に言葉を交わすなどして、相談者の父親が、日常生活で飲酒のコントロールが出来ていない生活をしていることを確認しております。

 ところが後日、地域包括支援センターは、あろうことか、相談者の「了解を得ずに」、父親を支配しようとする父親の妹弟らに、相談者の個人情報をコピーして渡す「個人情報の漏洩」をしてしまいました。この個人情報の漏洩は、父親の妹弟らが、相談者の自宅の近隣を、そのコピーを持ちまわったことから、近隣の方から報告を受けるまで、相談者はこの事実を知りませんでした。このように、地域包括支援センターは、まったく酷い扱いを相談者にしています。

 この様に入院時に三浦市役所の職員Мが同行しており、三浦市役所は相談者の父親の病を認知していました。

 にもかかわらず、三浦市役所は、診断書の内容や相談者の意見を無視して、「長男であっても診断書があっても関係ない」と言い放ち、食道がんの治療で入院していた公立病院を退院した時に、公立病院の不注意で「父親の妹弟」に連れ去られ「支配」されてしまったアルコール依存症でアルツハイマー型認知症の相談者の父親について、「お父さんの意思です」の一点張りで、客観的な事実には目を向けようとしなかったのでした。

 こうして、相談者を排除した三浦市役所は、相談者の父親に対して責任が負えないのに、相談者の従姉(父親の妹弟の娘) のほうを、勝手に父親の保護責任者と決めてしまいました。

 その結果、父親の介護の件で相談者は、三浦市役所や地域資源の中で、何を訴えても受け付けてもらえない、「人権侵害」とも思える酷い状態に置かれることになった次第です。

■次に示すのは、相談者の父親の「入院・診断」にかかわった久里浜アルコール症センター(現・久里浜医療センター) が出した、相談者の父親の診断書です。ご覧のとおり、アルコール依存症、アルツハイマー型認知症、食道がんの疾患が確認できます。なお、個人情報部分は、相談者が掲載に伴い黒塗りにしました。


久里浜アルコール症センターが出した、相談者の父親の診断書

 この久里浜アルコール症センター(現・久里浜医療センター) は、日本におけるアルコール依存症研究の中心で、世界保健機関(WHO)の研修・研究機関でもあり、アルコール依存症治療を行っている、日本でも最も歴史のあるアルコール医療機関の一つです。


独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター。2012年に(独)国立病院機構久里浜アルコール症センターから改称。〒239-0841神奈川県横須賀市野比5-3-1、電話:046-848-1550(8:30~17:15)、FAX:046-849-7743

■相談者は、三浦市役所にも面識がある地元の司法書士に支援を依頼しました。そして、その司法書士からも、「ご長男が父親の保護責任者です。きちんとした対応をしてください」と三浦市に伝えてもらいました。しかし、三浦市は、司法書士を通じて申し入れた相談者の言葉に耳を傾けようとしませんでした。それどころか、相談者が助けを求めた保健所に「(長男・相談者が) おかしな言動を取っている」と三浦市が声がけをして、保健所に対しても「(この事案について) 動くな」と指示を出しました。

 三浦市には、アルコール依存症の相談なども行っている保健所として鎌倉保健福祉事務所三崎センターがあります。ところが、ここも、相談者の訴えを受け付けず、三浦市役所に従ってしまい、この問題について調査をすることもなく、簡単に手を引いてしまいました。まるで、ときどきニュースで耳にする、児童相談所のミスで、児童虐待から保護できなかった不祥事を彷彿とさせます。現に相談者が保護できなかった父親は、交通事故に遭い命を落としています。診断書などがあるのに、なぜ保健所までが相談者を排除したのかも疑問です。

 このため、三浦市内にある、自治体(行政)、介護事業者、ボランティア団体、NPOの方々が提供する介護サービス(これらを総じて「地域資源」と呼びます) から、相談者とその家族である父親は排除されてしまい、自宅訪問をして、父親が日中から飲酒のコントロール出来ていない生活も確認して、入院時にも同行した地域包括支援センターまでもが三浦市役所に同調しました。その結果、相談者の父親は、相談者の保護の手が届かない状態に置かれ続けられてしまい、「三浦市役所と同調する相談者の従姉らの意向に沿った生活」になり、病気治療も満足に受けられず、最終的に交通事故に遭い、命を落としてしまいました。

■三浦市役所は、相談者の父親が交通事故に遭い、命にかかわる場面においてすら、管轄の三崎警察署に対して、長男である相談者がいる事を認知していながら、「被害者(父親) には家族はおらず、この方(相談者の従姉) が保護責任者です」と説明し、警察を混乱させる始末でした。そのため、相談者のもとに「交通事故に遭い父親が危篤」の報告が三崎警察署から届くまでに時間がかかりました。

 先ほども触れましたが、相談者の父親の命にかかわる場面においても、市役所が実態を無視して勝手に保護責任者として決定した相談者の従姉にとって、責任を伴った対応をとることなど所詮無理でした。行政でありながら「ありえない決定」をして、このような緊急事態が起こる可能性も、三浦市役所は想像できなかったのでしょうか。

■この様なハラスメントの事実の証拠として、相談者は、自らの個人情報について三浦市に開示請求を行いました。すると、前述のような「黒塗り」だらけの文書が出されてくるのです。

 相談者は、三浦市役所によって、自分の父親に関して行政が関わる全ての事務事業で不当な制限や制約を受けています。例えば、父親が亡くなった時に、必要な手続きのために、相談者が、三浦市役所の出張所である南下浦市民センターに「戸籍謄本」を取りに行った際、受付をした南下浦市民センターの職員が、市役所の関連部署に「〇〇さん(父親) のお子さんが、お父さんの戸籍謄本を取りに来ていますが、どう対応したらよいでしょうか」と電話で確認をしています。

 また、相談者は、交通事故被害者の長男として、父親の交通事故死の裁判を余儀なくされましたが、法廷での決着による解決までに数年もかかり、大変な苦労を味わいました。

 市民の平穏な日常生活が「三浦市役所の意向で全て決められてしまう」という事態は、想像も出来ない苦難を引き起こし続けます

 相談者は、「父が治療を受けながら施設で生活していてくれれば、交通事故などに遭わずに済んだのに」と、今でも三浦市役所の不当な仕打ちから父親を救えなかったことを毎日悔やみ続けています。

■このような三浦市の行政対応は、到底許されるものではありません。

 なにしろ、自分自身の個人情報の開示を求めても、「黒塗り」なのです。

 さらに、父親の情報開示を求めても「お父さんの個人情報です」と言って、開示をしないのです。

 相談者の個人情報について、「(黒塗りで)開示された数枚の書類以外に、他にまだ書類が有るのか無いのか」と質問しても、三浦市は無回答を決め込んでいます

 相談者は、三浦市に対して、「相談者と父親の親子を地域資源から排除した責任の追及をしたい」と願っていますが、三浦市は黒塗り書類しか開示しようとしません。そのため、証拠が隠されてしまうので、相談者は追及が出来ない状態に留め置かれています

■相談者は、アルコール依存症の父親の適切な保護を行政により妨害され、そのせいで、本来は施設に入って病の治療をする予定であった父親を交通事故で亡くしました。大切な親子の絆や、相談者の人生をメチャメチャにされてしまった責任を追及したくても、肝心の三浦市行政が黒塗り書類で証拠を隠してしまうのです

 このため、相談者は、三浦市に対して責任の所在を明確化して、行政の責任を追及しようとしているのですが、それが出来ない状況に追い込まれています。

 三浦市役所の意向で全てが決まってしまうため、相談者が、父親の交通事故を招いた責任を追及しようとしても、ままなりません。相談者は、三浦市役所が相談者に対する名誉棄損とも言える書類を作成してまでも相談者を排除しようとした一連の不当な行為について、三浦市からの説明責任や正式な謝罪、そして、三浦市への慰謝料請求、損害賠償請求、相談者の名誉回復などを求めたいと欲しています。

 ですが、結果として行政が黒塗り書類で証拠を隠すため、被害を受けた相談者は、行政責任の追及が出来ないのです。市民にとって、住民本位の行政のはずが、実態は全く真逆なのです

■こうした三浦市のハラスメント行政の実態について、相談者は、父親の診断書や親子関係の証拠文書を示すことで、第三者に知ってもらおうと努力していますが、どうしても、三浦市役所の違法な言動のほうが、公的発言とみなされてしまいます。相談者が、行政から妨害や排除を受けた経緯について、いくら相談者自身が実態を世間にアピールしても、偏見の目で見られ、誰にも信じてはもらえないのが現実です

 相談者は、妨害や排除をされた三浦市内ではなく、それ以外の日本各地のアルコール依存症支援機関や介護支援機関、関連の支援団体・NPO、個人の活動家などにも、この三浦市の実態を報告し、支援の手を求め続けてきました。しかし、残念なことに、ほとんどの機関からの支援を得られませんでした。

■次に、話はこの問題がはじまったころに遡ります。三浦市役所による妨害や排除の言動に身動きが取れなくなった相談者は、やむにやまれず、藁をもつかむ思いで、政治の力を借りることにし、三浦市を含む三浦半島をカバーする神奈川11区選出の小泉進次郎・代議士の事務所を過去に訪ねたこともあります。

 三浦半島の大部分を占めるこの選挙区は、明治時代の1908年からずっと小泉ファミリーの地盤です。又次郎が公職追放された1946年(昭和21年)からの数年間を経て、初代の小泉又次郎から、その女婿(娘むこ)の小泉純也、その長男の小泉純一郎、そしてその二男の小泉進次郎に地盤が引き継がれています。


当時の小泉進次郎代議士の秘書からいただいた名刺

 相談者が、横須賀市内にある小泉進次郎事務所を訪ねると、小泉代議士の秘書を名乗る人物が応対してくれました。相談者は、さっそく小泉代議士の私設秘書とおぼしき人物に、「三浦市役所がらみの相談ですが」と告げて、直面している問題について説明しました。

 しかし、私設秘書とおぼしき御仁は、突然事務所を訪れた相談者を、有権者であることは理解しつつも、おそらく「アルコール依存症やら何やらゴチャゴチャ言っているが、“こいつ”は一体なんだ?」と思ったのでしょう。なぜなら、突然事務所に現れた有権者に対して、小泉代議士の私設秘書らしき人物は、相談者にとって「きちんと対応をしてくれず、自身の名刺を渡すのみにとどまった」と感じられたからです。

 相談者は、小泉進次郎代議士の事務所で話を聞いてもらえなくても、諦めずに、神奈川県以外の全国各地でさまざまな活動をしているかたがたに、この問題について相談をしました。

 すると、相談した全国の方々の中で、数人の方々から、「三浦市は将来の総理の呼び声も名高い小泉進次郎代議士のお膝元ではないか。だったら、なぜ三浦市役所の暴走について、小泉事務所に相談に行かないのか。小泉代議士に相談に行ってみれば?」と言われるほどでした。なので、当時の小泉事務所のそっけない対応は、返す返すも悔やまれます。

「家族内のアルコール依存症者を治療に繋ぐことは難しい」と言われている中で、相談者の場合、せっかくアルコール依存症、アルツハイマー型認知症の父親を、一旦は治療に繋げたにもかかわらず、その後の父親の治療と家族の歩むべき道が、「三浦市役所の意向によって」妨害や排除を受けたため、全てが無駄になってしまいました

 相談者の父親は長年にわたり、飲酒によるDVなどの問題がありました。相談者が介護をしていた母親(父親の妻) が亡くなってからは、飲酒した際の父親の言動や生活が更に悪化してしまいました。そこで、相談者は父親の久里浜アルコール症センター入院を「決断」したのでした。

 アルコール依存症、アルツハイマー型認知症を発症していた相談者の父親でしたが、入院のタイミングが良かったため、幸運にも食道がんの早期発見・早期治療ができ、治療のための施設入所も決まっていたので、相談者としては父親の治療計画の目途がつけられるところでした。その矢先に、三浦市役所が行政の力を使い、アルコール依存症に長年苦しんできた「家族の未来」の全てを奪い、破壊してしまいました。

 アルコール依存症者を家族内に擁する家庭環境は、一般のかたがたの想像以上に過酷です。相談者の場合、三浦市役所に妨害を受けたため、相談者の父親の治療だけではなく、家族の回復の機会も奪われるなど、相談者自身も、依存症問題に巻き込まれてしまいました

 相談者は父親が存命中にも、三浦市役所に何度か書面で「何故このような対応をしているのか、書面で回答してください」と求めましたが、そのときも三浦市役所は回答しませんでした。

 三浦市役所は、相談者を排除すべく、行政の権限を不当に行使し、地域資源や保健所に指示や通達まで出しました。何故、これほどまでに特定の市民を狙い撃ちにして、その家族生活を妨害、家庭を破壊する言動をとったのでしょうか? 高齢化時代の到来で、読者の皆さんもいつ同じ目に遭うかもしれません。なので、再発防止のためにも、三浦市役所には、相談者に対して執った妨害や排除などの行為について、その理由を「きちんと世間に説明し公表する責務」言い変えれば「説明責任」が求められているのではないでしょうか?

■このような書類や証拠が、この他にも存在しているので、相談者はメディアに「これらの情報を提供するので、三浦市役所の言動について、ぜひ調査報道をお願いします」と要請してきました。しかし残念ながら、「こんなことは起こらない」、「市役所はこんなことしない」、「スポンサーがアルコール飲料メーカー(忖度から) である」などを理由に、メディアは取り合ってくれないのが実態です。

 相談者が「調査報道」のため、直面しているこの事案に関する資料を送った全国紙のある記者からは、「各種資料を拝見しましたが、個人的なご事情にかかわる事案であり、報道機関として立ち入るのは適当ではないと判断いたしました」との回答が届きました。保護できなかった父親が、交通事故に遭い命を落としている本件事案は、今の高齢化社会を反映しているにもかかわらず、メディアの対応は鈍いのが現状です。

■介護を必要とする高齢者が家族にいる場合、家族に予期しない責任が問われる事態が生ずることもあります。次の事案の裁判結果のURLをご覧ください。
「認知症鉄道事故裁判」

 高齢化社会に突入した日本で、介護で家族の責任が問われる時代に、責任を負う立場にある相談者を排除し、「すべてを三浦市役所の意向で決定し」、その挙句に、相談者の父親は交通事故で命を落としてしまい、あとの負担は排除した相談者に負わせる。三浦市役所の不誠実な対応は、あきらかに、その責任追及から逃れようとしており、無責任極まりないものです。

 行政の権限を不当に行使して、市民の生活の全てを三浦市役所の意向によって決定してしまう、三浦市役所の、相談者家族に対するこうした言動の事実については、多くの三浦市民は知る由もないでしょう。しかし、これは事実なのです。本件事案の介護の問題に限らず、三浦市役所は、他にもいろいろ勝手なことをしているのではないいでしょうか。

 相談者と同じような困難に直面する三浦市民のかたがたもいらっしゃるかもしれません。第二の相談者の様な被害者家族が三浦市内に生まれることは、絶対にあってはならないことです。

■相談者は、依然として現在もなお、調査報道をしてくれるメディアを探しておられます。

 この三浦市行政の実態や、メディアの偏向体質について、この記事を通じて、どうか、広く、多くの皆さんに分かっていただき、皆さんの声が「世論」となり、この行政ハラスメントの「調査報道」が行われることを願う次第です。

 末筆になりますが、残念なことに、日本のメディアは、世論がなければ動きません。最後までお読みくださりありがとうございます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報
**********NEWSポストセブン2023年02月16日11:45
小泉進次郎氏が求人サイトで秘書募集「月給25万円」「進次郎の分身として活動」

異例の秘書募集(求人サイトより)

 すっかり存在感が薄れていた自民党の小泉進次郎・衆院議員が、捲土重来を期して“異次元の対策”に着手したようだ。2月10日、求人サイト「インディード」に小泉進次郎事務所の私設秘書を募る求人が掲載されたのだ。抜群の知名度を誇る国会議員が、求人サイトで秘書を募集するという珍しい事態には、永田町の人たちも首をかしげている。
 〈小泉進次郎事務所での私設秘書業務〉と題した求人サイトの専用ページには、熱のこもった募集内容が記載されている。職務内容は〈小泉進次郎の地元事務所(横須賀市)にて、政治への関心や社会への問題意識を持って、政治に携わりたい方を募集しています〉〈小泉進次郎の分身として選挙区内(横須賀市・三浦市)で活動しつつ、有権者にセールスしてもらうお仕事です〉とあり、〈地元での議員随行〉〈各種会合への代理出席〉〈自民党員の勧誘〉〈自民党広報掲示板の設置〉などが並ぶ。
 環境相も務めた進次郎氏の「分身」とはなかなか荷が重そうで、「有権者にセールス」という言葉も聞き慣れないが、雇用形態は「正社員」とされていて給与は月給25万円。年収例として入社1年目で486万384円、入社5年目で564万9786円、年1回の昇給と年2回(3か月分)の賞与もあるという。2020年には現役閣僚として初めて「育休」を取得した進次郎氏らしく、「育児休業」「産前産後の休業」「生理休暇」などももちろん完備されているようだ。
 経歴や資格は不問で人物本位の採用として〈小泉進次郎と共に、政治を動かしたいという熱意のある方〉〈勤務態度などを考慮し、公設秘書(特別職国家公務員)への登用もあります〉とある。求める人材の「必須条件」は〈自民党に入党できる方〉など、通常の社員募集では見慣れない文言もあり、「こんな方も活躍できます!」という項目には〈芸能事務所などのマネージャーなどをご経験されてきた方も活躍できます〉との記載もある。
 全国紙の政治部記者がこう語る。

月給は25万円(求人サイトより)

「国民からは人気のあった進次郎氏ですが、秘書のなり手はなかなかいなくて困っているということのようです。2021年には進次郎氏の事務所の“女帝秘書”と報じられた公設第一秘書の影響もあって、議員会館と地元で計7~8人前後いた秘書が、1年で少なくとも5人が辞めてしまったと伝えられました。そういうところからも、進次郎氏の事務所は働きづらさがあるのかもしれません。
 私設秘書とはいえ、国会議員が求人サイトのようなところで秘書を公募することはめったにありません。秘書募集でいえば河井克行・元法相(公職選挙法違反罪で実刑確定)がハローワークで秘書を募集していたことが話題になったくらいです。ましてや進次郎氏は若くして閣僚経験もあり、4代続く国会議員一族で本人の知名度も抜群。いくらでも秘書のなり手は紹介されるはずなんです。もっとも、そうした旧態依然なことをせず、求人サイトのようなところで広く募ることで秘書にも新しいタイプの人材を採用して多様性をもたせたいということかもしれません」
 本誌・週刊ポストは進次郎氏の事務所に、求人サイトに秘書募集をした経緯などを訊ねたが、期日までに回答はなかった。
 進次郎氏といえば、岸田文雄首相の秘書官を務めた荒井勝喜氏の性的少数者や同性婚をめぐる差別発言についてブログ(2月4日付)で〈多様な価値観・生き方を否定するような発想では良い意味で「異次元」の政策には絶対にならない〉と批判し、〈「異次元」とは、自民党自身が過去の限界を超える政策に踏み込むことだと思います〉と岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」について注文をつけた。かつて自民党の若手ホープとされた頃の “進次郎節”が息を吹き返したとみるむきもある。
〈過去の限界を超える政策〉は、自身の事務所においても実行しようとしているようだ。

職務内容は…(求人サイトより)

アットホームな職場らしい(求人サイトより)

条件に「自民党に入党できる方」(求人サイトより)


土日出勤もあり(求人サイトより)
**********

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職員の安全確保?令和6年度群馬県職員録の販売を突然停止した群馬県人事課の思惑とは

2024-06-06 16:48:58 | オンブズマン活動

昨年度まで毎年発行され、一般販売されていた群馬県職員録

■当会は、毎年6月になると、県庁の地下1階にある生協のカウンターで当該年度の「群馬県職員録」を購入しています。これまでの購入履歴をチェックしたところ、平成30年度は税込みで900円でしたが、その後、令和2年度、3年度、4年度は950円となり、令和5年度は1050円となりました。値上げラッシュの今年度は1150円になるのかな、と思いつつ、1,000円札と小銭を用意して、6月3日の昼休みに県庁の地下1階を訪れました。


例年、6月の営業初日に当該年度の群馬県職員録を販売開始している群馬生協生活協同組合のカウンター。群馬県庁の地下1階にある

 いつもなら、生協のカウンターに、当該年度の「群馬県職員録」が山積みされていて、生協の販売担当者が威勢よく声がけをしているのですが、今回は、誰もいないし、カウンターの机の上はガランとしています。近くにいた女性の担当と思しきかたに、「あのう、今年度の群馬県職員録はどこで売っていますか?」と尋ねたところ、思いもよらない返事がありました。

「今年度から職員録は販売中止となりました」

■当会は仰天して、「いったいどうしたわけですか?」と訊くと、「こちらもなぜだかわかりませんが、私たちも困ってしまっているんです」とのこと。そこで「誰が販売取りやめを決めたのですか?」と重ねて訊いたところ、「人事課です」という返事でした。





 さっそく、昼休み時間も終わったので、県庁8階にある人事課に向かいました。応対してくれたのは、人事課企画係の久保塚直樹係長と、高橋風子副主幹でした。

 なぜ県職員録を今年度から販売中止としたのか、理由を尋ねたところ、「職員の安全確保」ということで、「きちんとした使い方をする人ばかりでなく、そうでない使い方をする県民がいるため、こうした措置をとった」とのことです。例としては、「営業電話から職員を安全に隔離する」ということが挙げられました。

 当会からは、「かつて20年ほど前までは、群馬県職員録は自宅の住所や電話番号も記載されていたが、その後、プライバシーの観点から記載をやめるようになった。県の職員の氏名と所属部署と職位は、行政サービスの基本情報なので、従来通りで何ら支障はない筈。電子化の流れで、ホームページに掲載しているのであれば、そのURLを教えてほしい」と申し入れました。


当会が保存している平成14年度(2002年度)の群馬県職員録。当時は、職員の自宅住所や電話番号まで掲載されていた。印刷は朝日印刷工業㈱。

 しかし、群馬県人事課によると、そうした措置はしておらず、そもそも職員録の製本版の販売中止すら、プレスリリースをしておらず、こうして問い合わせがあった場合には、「今年度から職員録は販売しませんので、ご理解をお願いします」と伝えることにしているのだそうです。

 なお、人事課によれば、今年度以降も、県内の市町村や、県の外郭団体向けには、群馬県職員録を配布するようです。しかし、一般の納税者・県民には販売しないわけで、この線引きの範囲についても質問しましたが、明確な回答は得られませんでした。

■確かに、紙の「職員録」の廃止については、いくつかの自治体で実施されています。

 例えば、山形県では、事務事業の見直しの一環として、2023年度から、紙の職員録を廃止し、データ化による経費削減を図っています。

**********山形新聞2023年7月30日10:48
紙の「職員録」廃止 県、事務事業見直しの一環・データ化し経費削減図る

県は紙の職員録の発行を止めた。最後となった2022年度版(右)と、県人事課に残る1912~14(大正元~3)年度版(左上)と43年(昭和18)年度版
 県は明治時代から発行してきた紙の「職員録」を本年度から廃止した。事務事業の見直しの一環で、県人事課は職員の作業時間約320時間、経費約170万円の削減につながるとみている。一般販売もしていたため、企業や個人から「今年は出ないのか」と問い合わせが40件程度寄せられており、県人事課は「趣旨を説明し、理解してもらっている」としている。
 同課によると、職員録には病院など一部部局を除きほぼ全ての正職員の氏名と役職、担当などを記載していた。2022年度は約3100部を作り、約1400部を庁内や出先機関に配布した。約1220部は関係団体が購入し、残りは県庁の売店で1冊2400円で販売していた。各部局による掲載内容確認など製作に要する職員の負担が大きく、昨年度から廃止を検討してきた。
 全国でも同様の動きがあり、神奈川県や愛媛県などは既に紙の職員録の刊行をやめている。東北の他県は、県や県庁生協が発行・販売を続けているが、福島県は省力化と経費削減を目的に19年度から庁内向けを電子データ化した。宮城県の担当者は「紙での発行の是非については毎年予算要求の段階で話題に上る」と話す。
 県は本年度の職員録については内容を簡略化・データ化し庁内のネットワークで閲覧できるようにしており、業務に支障はないという。また、外部向けに代替策として幹部職員名簿を県ホームページに公開している。
**********

 千葉県も同様に、2024年度からインターネットの普及やペーパーレス化の推進、コスト削減のために職員録の作成を終了しています。

**********千葉県HP 2024年5月16日
印刷報道発表案件 更新日:令和6(2024)年5月16日 ページ番号:665395
「千葉県職員録」の作成終了について
発表日:令和6年5月16日  総務部人事課
 これまで毎年作成していた「千葉県職員録」については、インターネットの普及による問い合わせ手段の充実、ペーパーレス化の推進やコスト削減などの観点を踏まえ、本年度以降、作成は行いません。
<職員名簿の閲覧について>
 県職員や市町村などの関係機関における業務用として、簡易な「職員名簿」を作成します。
 職員名簿は文書館・地域振興事務所において閲覧が可能です。
 (文書館では有償による複写も可能です。)
 なお、「千葉県幹部職員一覧」については、引き続き千葉県ホームページに掲載しています。
<お問い合わせ>
所属課室:総務部人事課人材育成班
電話番号:043-223-2082
ファックス番号:043-224-2212
**********

 このほか、神奈川県では、2021年度から職員録を廃止しましたが、その理由は、群馬県人事課と同じく「職員録を使った職員への営業電話が後を絶たず、業務に支障が生じている」というものです。

**********神奈川新聞2021年6月16日(水)21:30
「営業電話が後絶たず、業務に支障」 神奈川県が明治期から続く職員録廃止へ

廃止される方針が決まった神奈川県の職員録。左は1928(昭和3年)のもの
 神奈川県が明治期から発行を続けてきた「職員録」を2021年度発行分から廃止することが16日、県への取材で分かった。職員録を使った職員への営業電話が後を絶たず、業務に支障が生じていることなどから廃止に踏み切る考えだ。
**********

 他方、一度、紙の職員録の廃止を決めたのに、1年後の今年度から、電子版と併用の形であるにせよ、復活した自治体もあります。愛媛県です。

**********時事通信社2024年05月18日03:50
紙の職員録、希望多数で復活=廃止1年、電子版と併用―愛媛県

紙冊子で発行された2018~22年度版の愛媛県職員録=16日、松山市
 自治体職員の名前や所属、内線番号を網羅した「職員録」。近年電子化する取り組みが各地で進む中、愛媛県は今年度、一度廃止した紙版を電子版と併用する形で復活させることにした。ペーパーレスの時代にも、すぐに使える紙冊子を求める多くの職員の要望に応えた。
 県は昨年度、紙冊子の発行をやめ、電子版を庁内ポータルサイトに掲載。年間180万円ほどの印刷費を削減した。しかし、人事課と県職員消費生活協同組合(生協)によると、一部職員が紙版を要望。生協が職員アンケートを行ったところ、1311人のうち約6割の771人が「紙での販売を希望する」と答えたため、復活を決めた。
 紙版はこれまで各部署や報道機関に無償で配り、さらに必要なら生協で購入を促していた。今年度からは無償配布せず全て有料に。価格は生協員が1000円、外部は1800円と以前と同額。2022年度は約4400部を発行したが、今年度は2000部ほどに減らす。庁内で希望を募り、5月下旬から販売する予定。
 人事課は電子版の導入の際、検索や索引の機能を取り入れ、利便性向上に努めた。担当者は、要望が多かった理由を「紙で保管したい人もいるのでは」とみる。紙冊子は毎年400ページほどと決して薄くはないが、庁内からは「職員の過去の所属を知りたいときに便利」(40代男性)、「紙は見たいときにすぐ開ける」(50代男性)との意見が聞かれる。一方で「検索できるから電子でいい」(20代女性)との声も。
 県が21年に策定したデジタル総合戦略では「ペーパーレス化の推進」が明記された。県はこれに沿って報道資料や議案書などを完全電子化してきたが、職員録は現時点で難しいようだ。ある幹部は「本当にアンケートの結果なのか。信じたくない」と落胆。別の幹部は「電子書籍がありながら紙の本があるのと同じ。紙も良しあしある」と評価していた。
**********

■こうした紙の職員録を巡る廃止の動きは、デジタル化の進展と環境への配慮、また経費削減の必要性から、全国的に見られる傾向であることは事実です。その代替方法として、職員録の情報は、必要に応じて電子データで提供されることが多くなっており、一部の情報は自治体のホームページで公開されることもあります。このような変更は、業務の効率化と公共資源の節約に寄与する側面を有していると考えられます

 しかし、群馬県の場合、「職員の安全」という理由が、職員録廃止の大義名分となっています。これは、一体何を意味するのでしょうか?

 事務に支障をきたすほど、業者からの営業電話の攻勢に悩むのであれば、電話口に業者が出たら、用件を聴き、単なる営業活動であれば、「窓口に名刺箱を置いてあるので、そこに名刺を入れておいてください」とぴしゃりと言えば済むのであって、「電話に出ることすら、煩わしい」ということになると、「単に静かに仕事場にいたい」ということと同じことではないでしょうか。

 しかも、群馬県の場合、人事課の説明によると、記者発表もせず、ホームページでも公表していないし、そうした予定もないとのことです。また、紙の職員録に代えて、電子版の職員録をホームページ上で公開すれば、何の問題もありませんが、その予定もなさそうです。

 となると、「職員の安全」というのは単なる名目で、当会のような市民団体からの追及をかわすために、職員に係る情報を最大限に秘匿しようという魂胆も見え隠れするという疑惑の念も湧いてきます。

■いずれにしても、群馬県人事課の説明はもどかしいので、情報開示請求をすることにし、午後1時40分からの県警本部での打ち合わせを済ませた後、土砂降りで雷鳴が轟く中、午後4時50分に県庁に移動して、定刻の5時15分までに公文書開示請求書を提出することが出来ました。



 群馬県総務部人事課から、どのような説明資料が出て来るのか、待ちたいと思います。

 ちなみに、公務員の氏名について、平成17年8月3日付の総務省の見解は「特段の支障の生ずるおそれがあ る場合を除き、公にするものとする。なお、特段の支障の生ずるおそれがある場合とは、 以下の場合をいう。 ① 氏名を公にすることにより、情報公開法第5条第2号から第6号までに掲げる不開 示情報を公にすることとなるような場合 ② 氏名を公にすることにより、個人の権利利益を害することとなるような場合」となっています。

 そして、ここでいう「公にする」とは、職務遂行に係る公務員の氏名を求められれば応じるとの趣旨であり、対外的に積極的に周知することまで義務付けるものではなく、また、上記取扱方針に基づき行政機関が公にするものとした職務遂行に係る公務員の氏名については、今後は、情報公開法に基づく開示請求がなされた場合には、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(第5条第1号ただし書イ)に該当することとなり、開示されることとなる、としています。

 なので、今回の情報開示請求では、職員録も含めているので、予断は許されないものの、何らかの形で開示されるのではないか、と予測されます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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県立高2年女生徒のいじめ自殺に係る遺族の保護者と県教委職員を巡る公務執行妨害事件についての考察

2024-04-24 16:28:11 | オンブズマン活動



保護者が県職員らの110番通報で駆け付けた前橋署員らに現行犯逮捕された現場の県庁24階エレベーターホール

■2月28日に県庁24階で発生した公務執行妨害事件は、その後、逮捕された容疑者がどうなっているのか、マスコミ報道がないため、皆目見当がつかない状況にあります。まずは、この事件を報じた報道記事を見てみましょう。

**********群馬テレビ2024年2月28日21:47
群馬県庁で職員に暴行疑い 68歳の男を逮捕 男は高2自殺でいじめを訴えていた遺族

【当会コメント】この写真は、保護者が警察に護送される時のもので、背景に写っている車両のエンブレムが見えることから、護送車に乘るところだと思われる。警察は、容疑者を護送車に乗せるところと降ろすところを、マスコミに撮らせるため、あらかじめ場所と時間を伝えて、「何時に出るから、カメラ席はここだ」と規制線で場所をセットしておき、写真を撮らせる。前橋地検に入るときは建物に乗り付けてすぐに出入りしてしまい撮影できないが、前橋地裁へ勾留請求に来るときは裏口のところにきて、ブルーシートを張って容疑者を乗降させる。そのため、要領のよい記者はブルーシートの下から容疑者の足を撮ったりする。ところが、この保護者が護送車に乘るシーンは、ブルーシートも貼っておらず、何の防御もなく、まさに見せしめとしか言いようがない。背景に地裁の庭の植え込みの緑の樹木が見える。制服の警察官の後ろに見える護送車と思しき車両のエンブレムは、「・・bow」と読み取れるため、日野のレインボーというバスを護送車に改造したものと思われる。
 28日午後、群馬県庁で県の職員に暴行を加えたとして68歳の男が現行犯逮捕されました。男は2019年、高校2年の女子生徒が自殺で亡くなり、いじめを訴えていた遺族でした。
 公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されたのは、前橋市内に住む68歳の男です。警察によりますと、男は、28日の午後2時半頃県庁24階のエレベーターホールで、応対した県教育委員会の2人の職員に足蹴りするなどの暴行を加え、職務の執行を妨害した疑いがもたれています。警察の調べに対し、男は、「蹴ってはいない」などと容疑を否認しています。暴行を受けた2人の職員は、いずれもケガはないということです。
 県教育委員会によりますと、男は2019年、高校2年の女子生徒が自殺で亡くなり、いじめを訴えていた遺族でした。この問題を巡っては、2020年の第三者委員会による調査結果を不服とした遺族の要請を受け県の「いじめ再調査委員会」が再調査を行っていて、今月24日に「学校の対応が不十分」などとした報告書を県に提出していました。
 遺族である男には、今月26日に県が報告していたということです。警察で動機など詳しく調べています。

**********上毛新聞2024年2月28日22:20
群馬県庁で職員を蹴った疑い、県警前橋署が男を逮捕 「蹴っていない」と否認
 群馬県警前橋署は28日、公務執行妨害の疑いで、群馬県前橋市の無職の男(68)を現行犯逮捕した。
 逮捕容疑は同日午後2時20分ごろ、県庁24階で公務として応対した52歳と27歳の男性県職員を蹴るなどの暴行を加え、職務の執行を妨害した疑い。職員にけがはなかった。
 同署によると、「蹴っていない」と容疑を否認している。別の男性職員が110番通報した。

**********毎日新聞2024年2月29日
自殺高2の父、県教委職員を蹴ったか 公務執行妨害容疑で逮捕

群馬県庁=前橋市で、田所柳子撮影© 毎日新聞 提供
 28日午後2時35分ごろ、前橋市大手町1の群馬県庁24階エレベーターホールで、「訪問してきた男に足蹴りされた」と県教育委員会の職員から110番があった。通報で駆け付けた前橋署員が、同市の無職、伊藤竹行容疑者(68)を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した。県教委によると、伊藤容疑者は2019年2月に自殺した県立高2年の女子生徒の父親。遺族は自殺の原因が同級生によるいじめが原因だと訴えており、24日には第三者委員会が再調査結果の報告書を公表し、26日に遺族に手渡していた。
 同署によると、伊藤容疑者は「蹴っていない」などと容疑を否認しているという。職員にけがはなかった。
 県教委によると、伊藤容疑者は午後2時ごろに県教委を訪問。第三者委が山本一太知事に答申した報告書の内容を巡って、応対した職員に対し一方的に暴言を吐き続けたため、職員2人が伊藤容疑者を別の階に案内しようとしたところ、足蹴りするなどしたという。
 19年に当時17歳の女子生徒が自殺した問題では、県教委が設置した第三者委が19~20年に調査したが、内容を不服とした遺族の求めで、県が再調査委を設置し、21年7月から今年2月まで審議してきた。
 再調査委の報告書では、「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性は十分にあった」などとして、学校の体制に問題があったと指摘した。自殺の原因は「いじめを含むさまざまな要因が心理的苦痛を高めた」としつつも、飼い猫の死を「直接的な要因」と位置づけた。【西本龍太朗】

**********産経新聞2024年2月29日15:06
群馬県教委職員を蹴った疑い、自殺した高2の父を逮捕
 群馬県警は29日までに、県庁内で県教育委員会の職員を蹴ったとして、公務執行妨害の疑いで、前橋市上大屋町、無職、伊藤竹行容疑者(68)を現行犯逮捕した。「蹴っていない」と容疑を否認している。県教委によると、伊藤容疑者は2019年に自殺した県立高2年の有紀さん=当時(17)=の父親。遺族は自殺の原因はいじめだと主張していた。
 県の再調査委員会は2月24日、自殺といじめとの因果関係などを再調査した結果について報告書を公表。いじめが直接的な原因ではないものの「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性はあった」とした。
 県教委によると、伊藤容疑者は28日午後2時ごろ、県教委を訪問。応対した職員に暴言を浴びせるなどしたため、男性職員2人が別の階に案内しようとしたところ蹴ったという。
 逮捕容疑は28日午後、県庁のエレベーターホールで職員2人を蹴り、公務執行を妨害したとしている。

**********朝日新聞デジタル2024年2月29日
自殺の高2生徒のいじめ再調査めぐり県職員を蹴った疑い 父親を逮捕

再調査委員会の報告書© 朝日新聞社
※参考:群馬県いじめ再調査委員会報告書 公表版
 群馬県庁舎内で県教育委員会の職員2人を蹴ったとして、前橋署は28日、前橋市の男(68)を公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕し、発表した。「蹴っていない」と容疑を否認しているという。男は2019年に自殺した県立高2年の女子生徒(当時17)の父親で、県のいじめ再調査委員会がまとめた報告書を26日に受け取っていたという。

いじめと自殺の直接的な因果関係は認めなかったが、「学校の対応が適切であれば自死を回避できた可能性は十分にあった」とした再調査委員会の報告書
 署の発表によると、逮捕容疑は、28日午後2時20分ごろ、前橋市大手町の県庁24階のエレベーターホールで県教委の27歳と52歳の男性職員2人を蹴ったというもの。約15分後に職員が110番通報し、署員が駆けつけて逮捕した。
 県教委によると、父親は報告書の内容をめぐって県庁に来たとみられる。「主訴を聞き取ろうと対応したが、暴言を言われたり蹴られたりしたため通報した」としている。一方で、「(遺族として)ご要望がある場合には受け止めていきたい」という。
 女子生徒は19年2月、前橋市内の踏切で自殺した。遺族は「学校でのいじめが原因」と訴えていた。
 県の再調査委員会が24日に公表した報告書は、生徒へのいじめは認めたものの、自殺との直接的な因果関係は認めなかった。そのうえで自殺のきっかけは「飼い猫の死」としたうえで、複合的な要因を指摘している。また「相談体制が機能していれば、命は救えた」「学校の対応が適切なら自死を回避できた可能性があった」などと、学校側の対応を批判する内容が盛りこまれていた。(川村さくら、高木智子)
**********

■この事件は、これまでも群馬県から準・反社勢力視された経験のある当会としても、看過できないため、事の顛末を関係先から聴取する必要があると考え、3月25日に県庁を訪れました。



 さっそく24階のエレベーターホールを出て、現場をチェックし、同じ階の教育委員会事務局の管理課に行きました。県立高校の管理に携わっていると考えたからです。しかし、管理課に聞いたところ、「本件は総務課だ」ということで、同じ24階の北フロアに移動しました。

■応対に出たのは、教育委員会事務局総務課行政係(教育委員会会議、市町村教委連絡調整、叙勲、表彰、広報)の井澤悟志係長でした。

 当会からは「なぜ公務執行妨害の形で警察を呼んだのか?また、こういう場合、県庁内のどこが110番通報を判断するのか?経緯を知りたい」と質問したところ、「公務執行妨害になるかどうかは警察が判断している。事件の端緒となった110番をした具体的な事情については、警察からあまり口外しないように、とクギを刺されている」とのことでした。

 そして、「今回のような事件に対処する場合、一般的には、内規というものは教育委員会にはなく、庁舎管理全体の中で、県庁は一般県民がいろいろと訪れる施設なので、財産有効活用課(財活課)のほうで、どういった時にどうなるかを判断している」ということでした。

■これまで市民オンブズマン群馬の経験では、庁舎内での一般県民と県職員とのトラブルが発生した場合、県庁2階の生活こども部県民活動支援・広聴課広聴・案内係(わたしの提案(知事への手紙)、一般広聴、出前講座、県民センター運営、案内業務、行政対象暴力対策、公益通報者保護制度)が担当すると考えていました。

 ところが、教育委員会事務局総務課行政係によると「それとは別で、庁舎管理全体では、たとえば県庁で大声を出したり、長時間居座ったりした場合、こういう対応をせよ、と言うことで、県庁11階の財活課が対応する。ここが庁舎を管理しているので、一般県民により、通常の業務を妨げる行為があった場合、どういう取扱いをするのか、という内規については11階の財活課に行って聞いてほしい」のだそうです。

 当会から「それでは、今回の事件について、業務執行妨害と判断した動機は警察で聞く。また、110番するような状況についても、警察からあまり言うなと言われているとのことだが、この背景状況は非常に重要。なぜ、110番する必要があったのか。起訴・不起訴はどうなるのか。これらについて警察に聞いても、『教えられない』と言うはず。となると、本件が仮に検察により起訴されて、裁判所で公務執行妨害に係る刑事事件として公判が開かれ、検察の冒頭陳述が為される場合には、傍聴などを通じて公表されることになる。だが、今のところ、逮捕された保護者に関するその後の報道がされていない」と説明しました。

 そして当会は、「一般県民は、県職員に対して不満を示した場合、つい暴言や手を出してしまいがちだが、県職員の110番通報で警察が呼ばれ、今回は公務執行妨害容疑で逮捕されたわけだ。一方、県職員の場合、知事部局も教育委員会も同じく、職員の懲戒等に係る指針には、告発義務が記されていないため、一般人は起訴されたら前科者にされてしまうリスクを負っているが、県職員は不正をしても県から告訴・告発されないため、前科者になるリスクはない」と述べました。

 さらに当会は、「教育委員会の場合、日本版DBS(Disclosure and Barring Service)制度は、性犯罪を行っても警察に逮捕されずに、教育委員会内部での処分だと前科がつかないので、機能しないことになる。だから、人事課に『職員の懲戒等の指針に、告発義務を追記してほしい』と再三頼んでも聞いてもらえない」と県民と県職員の不公平な実態を説きました。

 行政係によると「今回の事件は、警察から発表したものであり、県がプレスリリースしたものではない。また、この事件に係る調査委員会(第三者委員会)の調査結果は、2021年に県のホームページで公表しており、調査委の会議録も、どこまで詳しいかどうかは何とも言えないが、一応オープンにしている」ということです。

■そこで、次に県庁11階の財産有効活用課(財活課)を訪れて、この事件の対応についてヒヤリングをしました。対応したのは同課財産管理係の高橋担当でした。

 財産管理係によると「こうしたトラブルへの対応業務について、所掌が被る部分はあるものの、基本的には県民活動支援・広聴課が管理し、財活課は庁舎管理の立場で退去命令を出す、ということで一部業務が重なる。例えば、県庁内の共用部で暴れている人物がいる場合、他の来庁者への迷惑や危害が加えられるおそれがある。その時に退去命令を出す場合がある。このとき、共用部分ということで財活課が担当することになる。それに対して、例えば、執務室の中に来て、暴力行為を働く人物がいる場合、当然執務室の中で、ということになるため、管理している当該部署が退去命令を出すことになる。さらに、そこから、暴力行為がエスカレートして、行政対象暴力の段階になった場合、2階の県民活動支援・広聴課が対応することになる。そういう意味で棲み分けはしているが、微妙に業務が重なる部分がある」と言う説明がありました。

 また、財産管理係では、あくまで私見としながら、「110番通報をなぜしたのかについて、たぶん、『こういう規定でここまでのことがあったので通報する』というプロセスではなく、単純に、当該職員に対して具体的な危害が加えられたためだと推察される。病院や学校でも同じだが、職員が殴られたとか、怪我をさせられたと言えば、おそらくそれは、規則云々ではなく、暴力を働かれたということで、当該職員の判断で110番通報したということになるのでは」とのコメントがありました。

 当会は、「それを暴力と捉えるかと言うところだが、暴言・暴行について、一般県民から県職員に対するハラスメント、カスタマー・ハラスメントがあったとしても、110番されて公務執行妨害容疑で逮捕されたらメディアに名前を晒されかねず、さらに送検され起訴され、裁判で執行猶予付きでも有罪になれば、前科者となる。なぜ公務執行妨害罪が適用されたのかは、24階の担当者は全部の警察のほうが判断したので自分は何とも答えられないという。それはそうかもしれないが、110番をすることは重大な行為。それに対応する事件があったことはあったのだろうが、父親として自分の娘の自死の真相を知り、再発防止を願うのは当然のことである。きちんと調査をしたのかどうか、調査結果に不満があったので、そこのところを何度も何度も伝えて善処を要望しても、聞いてもらえなければ、精神的に不安定となり、つい手足が出てしまったことは容易に想像できる。娘をなくした父親の心境を斟酌してもなお、足蹴りをされた県職員がなぜ110番までしなければならないのか。よほど深刻な事が起きたのだろうが、新聞記事によると職員にケガはなかったという。父親の心境や立場を考えれば、ある程度の許容範囲はあってしかるべきと考える。その辺を検証してみたいと思って今回ヒヤリングをお願いしている」と説明しました。

 これに対して財産管理係からは、あくまで私見だとして、「現場にいたわけではないので、あくまで推測に留まるが、(県職員は)何でもかんでも110番はしない。本件について、本人(自死した高2女子生徒の保護者である父親)は何度も県庁に来ている。単純に、毎回来るたびに、大声を出していたら、そこで既に110番通報されているはず。大きい声ももちろんだが、胸倉を掴んで『殺すぞ』などと強迫したり、結果的にケガはしなかったものの、本人に思い切り蹴られて、県職員が『これは危ない』と生命の危険を感じたとすれば、通報で駆け付けた警察官は、中立の立場で、双方に確認をとって、『これは公務執行妨害に当たる』という判断を現場でした、本人が現行犯逮捕されたということだというふうにも思える。本人がしつこく来庁し、あれこれ抗議することについて、対応が面倒くさいから110番通報することはないはずだ」と言うコメントがありました。

■こうして、足蹴りされたという52歳と27歳の県の男性職員2名の特定は叶わず、110番通報をした状況も、群馬県側からの事情説明が得られないため、まったくわかりませんでした。







 そのため、やはり110番通報を受けて現場に駆け付け、父親を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した前橋署にも事情をヒヤリングする必要があると考えて、4月11日午前11時に前橋警察署を訪れ、捜査1課の中村担当と面談しました。

 1時間ほど粘って問い質してみましたが、結局、いつものとおり、住民からの情報提供を広く積極的に求めるのに、それらの提供された情報を踏まえたその後の捜査について、警察からは「捜査の過程や結果について、一切話すことはできない」とする紋切り型の回答しか返ってきませんでした。

 当会は「世間ではギブ・アンド・テイクという言葉が常識的に使われていますが、警察は普段から捜査協力を得るため、事件や事故に関する緊急通報、いわゆる110番をはじめ、内部通報、外部通報、公益通報など、住民からの情報提供を常に求めているのに、実際に通報した事案がどの後、どのように扱われたのか、情報を積極的に開示したり、説明したりする姿勢が見られません。このことは、一般市民からの情報提供の協力を自ら得られなくしていることになりかねないのでは」と指摘しました。

 元警察官の当会副代表は、「今回の事件では、公務員のからだを蹴ったとして公務執行妨害罪を適用しているが、公務員が今やっている仕事を妨害したわけではない。ケガをさせたことによる障害は別だが、公務員が今まさに職務執行しようとしている仕事を妨害するのが公務執行妨害と言える。ところが、警察官は『俺に暴行したから公務執行妨害だ』というふうに考えている。公務執行妨害罪は、公務である職務が保護法益であるため、事務をしている公務員が、そこで脅されたから事務が滞ったとか止めたとか、それが職務執行妨害で、職務が保護法益となる。だが、警察は不勉強だから、体にさわったことが公務執行妨害だと思っている。こうして逮捕のでっちあげがまかり通っているのが現状と言える。私もそれででっち上げ逮捕をされた。警察は私を逮捕してから、体当たりされた際に、壁に手をついてケガをしたと偽の診断書をとってきた」と自らの経験を踏まえて、「警察は保護法益を勘違いしている」と語っています。

■結局、この公務執行妨害事件では、関係者からのヒヤリングはすべて空振りに終わりました。

 ところが、当会が4月11日に前橋署にこの事件の顛末についてヒヤリングした3日前に、地元紙が次の報道をしていたことが後日わかりました。

**********上毛新聞2024年4月8日
群馬県庁で公務執行妨害疑いの男性を不起訴 前橋地検
 群馬県庁で2月、県職員2人を蹴るなどの暴行をしたとして公務執行妨害の疑いで逮捕、送検された前橋市の男性(68)について、前橋地検は7日までに、不起訴とした。3月28日付。理由は明らかにしていない。
 男性は同19日に、処分保留で釈放されていた。
**********

 このことから、この事件の時系列を整理してみると、次のとおりになります。
○2月24日
 群馬県いじめ再調査委員会が報告書を公表。
○2月26日
 保護者が、県いじめ再調査委員会がまとめた報告書を受け取る。
○2月28日午後2時20分ごろ
 再調査報告書の内容を巡り県庁24階の群馬県教育委員会を訪れた保護者が、応対した職員に暴言を浴びせるなどしたとして、県教育委員会の27歳と52歳の男性職員が保護者を別の階に案内しようとしたところ、保護者が県庁24階エレベーターホールで県教育委員会職員2名を足蹴り。
○同日午後2時35分ごろ
 足蹴りされた男性職員らが「(保護者の)主訴を聴き取ろうと対応したが、暴言を言われたり蹴られたりした」として県警に110番電話をする。
○同日午後3時ごろ?
 県警から連絡を受けた最寄りの前橋署から複数の警察官が現場に駆け付け、保護者と職員らの双方から事情を聴き、公務執行妨害罪容疑が適用されると判断し、保護者を現行犯逮捕する。
○2月29日ごろ?
 警察が2月28日午後3時ごろ逮捕し留置した保護者の身柄を48時間以内に前橋地検の検察官へ送致(送検)。
○3月1日ごろ
 前橋地検の検察官が、警察から送致された保護者を引き続き留置施設・拘置所に拘束する必要があると判断し、24時間以内に裁判所に勾留請求を行う。
○3月1日~3月18日
 裁判所から10日間の勾留に加えて、さらに10日間の勾留延長が認められ、最長20日間の勾留期間中、前橋地検の検察官が保護者の起訴か不起訴を判断。
○3月19日
 前橋地検が、20日間の勾留満期ギリギリで、処分を決めないまま(処分保留)で保護者を釈放。
○3月28日
 前橋地検が保護者の不起訴処分を決定。不起訴処分の理由は公表せず。
○4月8日
 この日、地元紙が保護者の不起訴処分を報道。

■このように、前橋地検は、保護者を不起訴処分としましたが、その理由を公表しません。このことは、大変重要な意味を有します。

 なぜなら、不起訴処分となる理由は様々であり、勾留満期時点で不起訴処分の理由が明確でないなら、処分を下すことはできないからです。

 例えば、不起訴処分の理由のひとつである「嫌疑なし」は、被疑者とされた保護者が犯罪の行為者でないことが明白なときや犯罪の成否を認定するべき証拠のないことが明白な場合です。

 勾留満期の段階において、人違いや犯罪の証拠がどこにも存在しないことがハッキリしていないなら、直ちに「嫌疑なし」と断定することはできず、処分保留として捜査を続けることになります。

 同じように、不起訴処分の理由のひとつの「嫌疑不十分」は、犯罪の成立を認定するべき証拠が足りない場合です。これは、犯罪を推認させる証拠があっても、勾留満期の段階において、仮に起訴をしても裁判官をして確信に至らせるまでの証拠は揃っておらず、既に捜査は尽くしたので、これ以上の捜査をしても追加の証拠が出てくる見込みもない、という場合です。

 一方で、まだ捜査が尽くされたとは言えない状況であり、捜査を継続すれば追加の証拠を得られる可能性が高い場合には、直ちに「嫌疑不十分」として不起訴とすることはできず、処分保留としてさらに証拠を探すことになります。

 また、勾留満期の段階で有罪判決の見込みがあっても、必ず起訴処分となるわけではなく、検察官は、行政や政界などからの圧力を含む諸般の事情を考慮して、訴追を必要としないと判断した場合には、「起訴猶予」として不起訴処分とすることもあります。

 今回の事件は、保護者が現行犯逮捕されており、現場での状況は当事者同士からの聴取も済んでいることから、これが公務執行妨害罪にあたるかどうか、について検察官は慎重に判断したはずです。

 その結果、不起訴処分となったわけですから、その理由について、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」のどれに該当するのか、しっかりと前橋地検に確認しておく必要があります。

 しかし、今回の事件で、保護者は、不起訴処分をおそらく口頭で検察官から告げられただけだと思いますが、検察官はこの不起訴処分の理由を明らかにしていません。

 なので、公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された保護者がなぜ不起訴となったのか、その理由を明らかにしておかないと、今後、公務員の不当な事務事業に対して苦情を申し立てた場合、大声を挙げたり、思わず公務員のからだに触れたりした場合、警察に110番通報され公務執行妨害罪の容疑で逮捕されかねません。

■このように考えた当会は、保護者の方に面談して、この事件できちんと不起訴処分告知書を前橋地検の検察官から取得しておき、さらにその理由について、「嫌疑なし」か「嫌疑不十分」か「起訴猶予」のどれかを確認しておくことを進言すべく、4月21日午後、当会役員が保護者ご本人の自宅を訪問しました。

 ご本人とは、玄関先でお会いし、言葉をおかけしましたが、当会の話は聞いてもらえませんでした。いじめによる愛娘の自死や、その原因究明・責任所在明確化・再発防止策をまとめるべき県教委の不誠実な対応、さらには「蹴ってはいない」と主張したにもかかわらず県職員らの110番通報で現行犯逮捕され、群馬テレビで逮捕の様子が報道され、実名を晒され、警察や検察の取り調べを受け勾留されただけに、無理もありません。

 保護者のかたは、一方的に社会の不満を述べられ、結論的には立ち入ったお話は何も窺えませんでした。そして、取り付く島もなく、数分後に玄関ドアを閉められてしまいました。

 保護者のかたと面談した当会役員の印象では、「不満が積もり積もって爆発寸前という感じで、性格的なこともあるのかもしれないが。一瞬の会話でも精神的にかなり重症と感じた」とのことです。

■そこで、4月23日午後、県庁24階の教育委員会総務課行政係を再び訪れて、井澤係長に、「今回の公務執行妨害事件で容疑者とされた保護者のからが不起訴処分になったが、この処分理由について、行政として前橋地検に対し、不起訴処分理由を問い合わせてほしい」と強く依頼しました。


教育委員会総務課の廊下と執務スペースの間にある書類用キャビネットの上にあるスタンド式の案内プレートの裏面には、このように「群馬県県庁舎等管理規則(抜粋)」が記されており、職員は来訪者と面談する際に、これを見ながら対応しており、来訪者の言動・挙動が少しでもこれらの禁止行為に抵触すると判断すれば、110番通報されるリスクもあり得る。(上記写真は同課の許可を得て撮影)

 しかし、同係長は「なぜ、我々がそのようなことをしなければならないのか。業務執行妨害罪の容疑があると判断したのは警察だ。警察に聞けばよいのではないか」と述べるのみでした。

 当会は「今回の事件で、群馬県は「110番通報をする判断は、直面した事案の状況に応じて自身が身の危険を感じた職員自身が判断したもの」としていますが、そうした曖昧なまま、職員が110番通報を乱発すると、納税者県民にとって、行政を批判したりする際にリスクを抱えることになる。行政と県民との間の安心で平等な付き合いを担保するために、今回の事件を奇貨として、きちんと検証すべきではないでしょうか」という趣旨で、職員が県民の振る舞いに対して110番通報をする際のルールつくりを申し入れたのですが、結局受け入れてもらえませんでした。

 こうして、この事件を巡る当会の検証作業は不完全燃焼のまま、現在に至っています。今後も、類似の事案が発生するかもしれませんので、引き続き、研究を重ねてまいりたいと存じます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関係情報
**********NHK群馬 NEWS WEB 2024年02月24日15:55
高2女子生徒の自殺 “いじめの影響大 否定できず”報告書

 5年前、前橋市内の県立高校の女子生徒が自殺した問題で、群馬県の調査委員会はいじめがあったことを認め、「自殺に与えた影響は大きなものであった可能性は否定できず、学校の対応が適切であれば回避できた可能性は十分にあった」とする報告書をまとめました。
 5年前、前橋市内の県立高校の2年生だった女子生徒が自殺し、その後、学校でのいじめをうかがわせるメモが見つかった問題で、群馬県教育委員会が設置した第三者委員会はよくとし、いじめを一部認めた一方、「自殺の要因としては主要なものではない」と結論づけました。
 遺族の求めを受けて、6人の有識者による県の「いじめ再調査委員会」が改めて調べ、24日、山本知事に報告書を提出しました。
 報告書はいじめがあったことを認め、「自殺に与えた影響は大きなものであった可能性は否定できない」と指摘しました。
 その上で、「学校にはいじめ予防の指導体制が十分に構築されておらず、対応が適切であれば自殺を回避できた可能性は十分にあった」と結論づけました。
 「いじめ再調査委員会」の八島禎宏委員長は記者会見し、「学校は教員研修を活性化させ、再発防止に向け、きちんと生徒に向き合うことが必要だ」と述べました。
※参考:群馬県いじめ再調査委員会報告書 公表版

**********群馬県HP「教育委員会」2021年4月16日更新
平成31年2月1日県立高等学校生徒死亡事案
1 事案の概要
 平成31年2月1日、県立高等学校2年に在籍する女子生徒が、上毛電気鉄道沿線の踏切で電車にはねられ、その後、搬送先の病院で死亡が確認される事案が発生しました。
 死亡した生徒の保護者の証言からいじめによる自殺が疑われたため、当該校においていじめ防止対策推進法第23条第2項及び文部科学省が策定した「子供の自殺が起きた時の背景調査の指針」に基づく基本調査が行われました。
 平成31年3月31日、当該校から県教育委員会教育長に対し、調査の結果として、当該生徒がフラワー装飾技能士検定の試験を控え授業が辛いと感じていた時期があったことや、学校行事を巡るクラスメートとのトラブルの中で一部の言動にいじめに該当する行為が確認されたことなどが報告されました。また、当該生徒が亡くなったことと基本調査で把握できたことの因果関係の有無を判断するには、専門的な観点から、さらなる調査が必要であるとの考えが示されました。
 県教育委員会では、本事案をいじめ防止対策推進法第28条第1項に掲げる重大事態として対処することとし、事実関係を明確にするともに、同種の事態の発生の防止に資するため、当該校の設置者として詳細調査を行うことを、平成31年4月10日に開催した教育委員会会議臨時会で決定しました。

2 群馬県いじめ問題等対策委員会への諮問
 詳細調査の実施にあたっては、県条例に基づき、県教育委員会の附属機関である群馬県いじめ問題等対策委員会(以下、「対策委員会」)が行うこととされています。
 対策委員会では、平成31年4月24日に開催した第1回対策委員会で県教育委員会から諮問を受け、調査審議を実施しました。

<諮問事項>
・当該生徒に係るいじめの事実関係の検証について
・当該生徒の死亡に至る過程や心理の検証について
<今後の対応と再発防止策について>
 参考:諮問書(平成31年4月24日群馬県教育委員会)(PDFファイル:40KB)↓

3 群馬県いじめ問題等対策委員会からの答申(調査結果)の概要
 令和2年11月30日付けで、県教育委員会に対し、対策委員会委員長から答申書が提出されました。

 参考:答申の概要(令和2年11月30日記者会見資料)(PDFファイル:167KB)↓

4 調査審議のための対策委員会開催状況
 ※重大事態の調査審議に係る議事及び審議内容は非公開です。

・平成31年4月24日 第1回対策委員会会議(諮問)
・令和元年5月22日 第2回対策委員会会議
・令和元年6月26日 第3回対策委員会会議
・令和元年7月18日 第4回対策委員会会議
・令和元年8月11日 第5回対策委員会会議
・令和元年10月3日 第6回対策委員会会議
・令和元年10月23日 第7回対策委員会会議
・令和元年11月14日 第8回対策委員会会議
・令和元年12月10日 第9回対策委員会会議
・令和2年1月29日 第10回対策委員会会議
・令和2年2月26日 第11回対策委員会会議
・令和2年3月12日 第12回対策委員会会議
・令和2年3月30日 第13回対策委員会会議
・令和2年4月30日 第14回対策委員会会議
・令和2年5月26日 第15回対策委員会会議
・令和2年6月30日 第16回対策委員会会議
・令和2年7月29日 第17回対策委員会会議
・令和2年8月18日 第18回対策委員会会議
・令和2年9月14日 第19回対策委員会会議
・令和2年10月12日 第20回対策委員会会議
・令和2年10月29日 第21回対策委員会会議
・令和2年11月16日 第22回対策委員会会議
・令和2年11月26日 第23回対策委員会会議(調査審議終了)
・令和2年11月30日 答申・調査報告書の提出
・令和2年12月15日 教育委員会から知事に調査結果を報告
・令和3年4月16日 対策委員会からの提言対応を報告 参考:報告資料(PDFファイル:149KB)↓

**********東京新聞2021年2月17日07:51
前橋・高2自殺 報告書の全文判明 重要証言削除し送付 遺族「都合悪い部分隠蔽では」

伊藤有紀さん(遺族提供)
 前橋市の群馬県立勢多農林高二年だった伊藤有紀さん=当時(17)=が二〇一九年二月に自殺した問題で、県教育委員会が設けた有識者の県いじめ問題等対策委員会がまとめた調査報告書の全文が分かった。県教委は当初、死に関連した複数の重要な証言や指摘を削除して一部だけを遺族に送付した事実が判明。父親(65)は取材に「非人道的なやり方だ。最初から全文を渡すべきだった。都合の悪い部分を隠蔽(いんぺい)したと感じる」と厳しく批判している。 (菅原洋、市川勘太郎)
 報告書の本文の全文は七十一ページだが、昨秋に遺族へ送付したのは二十八ページ。このため、父親は県教委に全文を情報公開請求し、今月上旬に全文が公開された。
 この問題では、報告書は一九年一月にクラス発表の配役を巡り、同級生の言動に有紀さんへのいじめがあったと認定した。
 しかし、いじめの言動があった同じ日に、有紀さんが「死ねと言われた」と訴えたことは証言がないとしていじめと認めなかった。有紀さんはその二週間後に亡くなった。
 この訴えについて、全文では「同級生が『死ね』みたいなことを言っていた。(有紀さんに)聞こえてたような」との証言があるが、当初の送付分では削除。別の同級生が「『死ね』のフレーズは使用したかもしれない。(有紀さんには)直接言っていない」と証言した部分も削除された。
 父親は「娘に『死ね』と言った同級生らが有識者の調査に素直に認めるわけない。この証言は遺族にとって重要だ。削除したのは許せない」と語気を強めた。
 さらに全文では、有紀さんが「亡くなる当日かその少し前か、三〜四人の友人に『私もうすぐで死んじゃうのかな』と言っていた」との証言もあるが、当初の送付分では削除。父親は「娘のSOSだったのではないか」と声を震わせた。
 一方、有紀さんは自殺未遂をしていたが、把握した学校側が県教委への報告などを怠っていた事実が既に判明している。
 全文では提言で自殺未遂に触れ「学校の組織的な事後的対応が不十分であったことは、自死防止の観点から問題があった」と指摘。当初の送付分ではこの指摘も削除された。父親は「教育委員会や学校にとって都合の悪い部分を隠蔽したのでは」と憤っている。
 県教委によると、報告書の全文を当初は送付しなかったのは、有識者の委員会による判断。県教委が削除し、要点を遺族へ送った。情報公開で全文を開示したのは、条例などに基づいた県教委の判断という。担当者は「削除は意図的ではない。結果的に(遺族にとって重要な部分は)残らなかった」と説明している。

**********J-CASTニュース2019年3月13日13:13
踏切自殺の伊藤有紀さん 友人に語っていたいじめ「『死んじゃえばいい』と言われた」「先生は取り合ってくれない」
 2月1日(2019年)に、いじめを訴えて26枚のメモを残して踏切で自殺した群馬・前橋市の高校2年生の伊藤有紀さん(17)宅に、きのう12日(2019年)に高校側が訪れ、家族に中間報告した。学校側は「さらに詳細な状況を調査する必要があると確認しています。調査結果は再度ご説明させて頂きます」と話した。
 しかし、父親は「これから調査をして明らかにしますということだけでした。学校側は、いじめがあったと認めているとは私は思っていません。すみません、これ以上は爆発寸前で(言葉になりません)」と憤りを隠せなかった。
学校はいじめ認めず「詳細な状況はまだ調査中です」
 有紀さんのメモとは別に、有紀さんから相談を受けていた中学時代の友人5人が「いじめの状況」をまとめた3枚の文書があり、「スッキリ」が入手した。いじめがあったという証拠のために使って下さいと家族に渡したものだ。
 「ハダカデバネズミといわれたり、女子に悪口を言われた」「その後、学年主任の女の先生にそうだんするも、まともに取り合ってもらえなかった」「『死んじゃえばいいのに』などと言われた」と、細かく綴られていた。
 リポーターの大竹真が説明する。「お父さんは26枚のメモと3枚の文書を学校側に報告しているんです。ところが、きのうはまだ調査中ということだったので、何ら進展していないではないかと憤ったわけです」
 キャスターの近藤春菜「第三者に入ってもらわないと」
 司会の加藤浩次「いじめがあったということが、調査のスタートではないですか」
 ようやく学校側は、今後、第三者委員会を検討するという。
**********

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桐生市の生活保護費不正支給問題のその後の動き

2024-03-26 23:10:07 | オンブズマン活動

桐生市役所

■社会を驚愕させた桐生市役所を舞台にしたこの人権軽視事件は、3月27日(水)午前11時から、第三者委員会の初会合が開催される運びになりました。この事件に関しては、当会の次のブログ記事を参照ください。

○2024年2月13日:桐生市生活保護不適切運用問題で、桐生市は第三者委の発足より関係職員の処分と刑事告訴を優先せよ

 そうした中、桐生市のこの生活保護費不正支給問題の先陣を切って追及していた伊勢崎市の司法書士の仲道宗弘氏が3月20日に急逝されるという報道がありました。次の報道記事をご覧ください。

**********東京新聞2024年3月23日08:02
生活困窮者を支援 仲道司法書士死去

 生活困窮者の支援に尽力していた群馬司法書士会副会長の仲道宗弘(なかみち・むねひろ)さん=写真、本人のX(旧ツイッター)アカウントから=が20日、くも膜下出血のため死去した。58歳だった。自宅は群馬県伊勢崎市。通夜は25日午後6時、告別式は26日午前11時半、いずれも同市太田町545の3、伊勢崎メモリードホールで。喪主は妻さゆりさん。
 栃木県足利市出身。2004年に司法書士登録し、09年に伊勢崎市で「ぐんま市民司法書士事務所」を設立した。13年には市民団体「反貧困ネットワークぐんま」を立ち上げて代表を務め、常に生活困窮者に寄り添った活動を続けてきた。
 最近では昨年11月、桐生市が生活保護費を1日千円に分割し、満額を支給しないという違法性が強く疑われる案件を告発。その後、申請を拒むいわゆる「水際作戦」や、不適切な支給事例が次々と明らかになり、市が謝罪して内部調査チームと第三者委員会の設置を表明するきっかけをつくった。(小松田健一)
**********

 仲道氏をよく知る当会の監事役員からは、「とても信じられない。くも膜下出血で58歳で逝ってしまうなんて。仲道先生には、前橋市の違法差押え問題について吉野晶弁護士と共に戦って頂き、差押え問題の講演も幾度となく誘って頂いた」とのメッセージが寄せられました。

 その群馬県司法書士会の副会長で、反貧困ネットワーク群馬の会長としても活動されていた仲道氏が3月7日に取材を受けて、3月13日にアップされたインターネットラジオ番組に出演時の音声を紹介します。仲道氏は、この中の9分30秒以降で、桐生市の異常性をいみじくも解説しておられます。

**********Dialogue for People 2024年3月13日
仲道宗弘さん「どうなってるの?桐生市の生活保護」Radio Dialogue 151(2024/3/13)


=====内容=====
冒頭でも皆さんにお伝しましたが、今日のテーマ「どうなってるの?群馬市の、あ、失礼しました、桐生市の生活保護ということで、3月7日に反貧困ネットワーク群馬の代表で司法書士の仲道宗弘さんにお話を伺った音声をここで皆さんにお聞きいただきたいと思います。

――改めてよろしくお願いいたします。あの、この群馬県の、桐生市の生活保護の対応について、特に昨年以降ですね、本当にいろんな問題が指摘をされていて、なんかもう、本当なの?これ、もうフィクションじゃないの?っていうことが、もう次々、具体的に 明らかになってきたと思うんですけれども、これまで明らかになってきたこと、非常にこう多岐に渡ると思いますけれども、どんなことが桐生市の生活保護をめくって発覚してきたんでしょうか?

これ、昨年の、私が初めて相談を受けたのが8月なんですね。で、初めて8月に相談を受けた時に、この方は1日1000円ずつしか生活保護費をもらってないと。で、8月の途中から生活保護を受けているけども1日1000円で、もう生活大変だし、暑いし、大体に、その、車っていうのは乗れないので、生活保護の場合。バスに乗って、その後歩いて、市役所まで行って、で、1000円ずつもらってます、って話聞いて、もちろんそんな冗談・・・冗談とは言わないけど、本当ですか?って思ったんです。

――そうですよ。あんまりにもひどいので、本当に起きてるんですか?って思いたくなりますよね。

いや、全くおっしゃる通りで、私は最初に人づてに聞いた時には、全くこれは信用できないというか、嘘じゃないかなと思ったので、1度ご本人とお話をさせてくださいと、いうことで1度ご本人とお電話でお話をして、毎日その1000円ずつ市役所に行ってもらってる。で、その前にハローワークに朝行って、で、ハローワークで仕事を見つけたっていうことを、ハローワークの職員にハンコを押してもらって、その紙を持って市役所に行くと、1000円、その場で支給される。で、金曜日だと土日分入れて3000円支給される。

――はい。

で、お電話でそういう話を聞いて、ちょっとこれは普通じゃないと。で、その 方にお目にかかった時に、確かにその方のメモに、1000円、1000円、金曜日3000円ってこう書いてあってですね。それにちょっと電気代とか水道代とかが、月末にその金額が支給される。請求書を見せると、そんな額が支給される、っていうことがハッキリしたので、その方と一緒に10月に窓口まで行って「一体これはどういうことですか?」と。そうしたら「本人の同意を得て私どもやっておりますので」って簡単にこう対応したもんですから、「本人にはこの間会ったけど、とてもじゃないけど同意はしてないよ」と。「冗談じゃなく、苦しくて堪らないと、そう言ってますけど」と。「私どもは同意を得てやってると認識してるので問題はないはずです」というふうに始まりました。

――なるほど、どうなんでしょう。ハローワークに行ったら1日1000円やるよっていう、その、日割りのやり方そのものも不適切ではないかと思うんですけれど、これ1日1000円となると、満額を、本来もらえる額を、満額を支給してなかったという扱いですよね?

まあ、この1人暮らしの方なので。この群馬県では各地によって生活保護費っていうのは、支給額は違うんですけども、群馬県桐生市では、1人暮らしの方で、50代後半ですけど、7万1千円ぐらいなんですね。これが生活費です。それプラス、家賃が出ます。で、7万1000円だとすると、1日1000円ずつで考えると、せいぜい3万円。電気代、水道代、ちょっと加えて3万5000円なんです。

――うんうん。

3万56000円って、半額ぐらいしか出てないっていうのは、残りはどうしているんだ、と。残りは、残りは預かっているのか?なんか、預かり証とか出ているのか?なんか、条件を満たすと、その預かり金が支給されるのか?まったく謎だったので、私は最初市役所に電話して「教えてくれ」と言ったら「ご本人にしか教えられない」と言われた。で、窓口まで行って「本人の同意を得ている。委任状もここにある」と言って、委任状を示して、こことかっていう質問、これ書面でも質問状で予め出してありましたけど。それを見せたところでも、「いや、ご本人の同意を得ているし、ご本人にしか回答できないんだ」と、こういうふうに言うわけですよ。で、私もさすがにこれはちょっとね、「冗談じゃない」と思ったので、ご本人と一緒に窓口まで行って、で、ご本人は「俺は同意なんかしてないと、何度もそう伝えているだろう」と、いうふうにそこで話して、こんな悶着がありましたけども、そこで今まで払われてない金額が払われたんです。

――ふうん。

8月の終わり・・・8月の途中から10月の初めぐらいまでの、払われてない金額。それは13万4000円ほどありまして。

――なんと。

払われた金額より多いぐらいですよね。

――そうですよね。ご相談を受けられた方以外にも、そうした不適切な支給の仕方だったりですとか、満額支給してないっていうことが、これまで発覚してきましたけれど、さっき、おっしゃったことに通じると思うんですけど、これ、満額支給してなかったとなると、これ、役所の中でその支給していない分のお金、どういう扱いにしてどういうふうに保管されてたのか、その辺りは何か分かっているんでしょうか?

今まで分かっていることは、市の発表は、これは桐生市のホームページにも載っていますけども、「手下げ金庫の中で現金を預かっていた」とされています。なので、「いやあ、本当か」と思ったんですけどね。私は、あの、帳簿上どういう処理がされているか、例えばそういう会計書類を開示させて、明らかにさせたかったんですけども、それについては「経理上は、要するに、市の会計上は、支給された形になっている」と。「だから支給されてなくて、支給はされている。7万1000いくらかは支給されている。でも実際には、そのうちの3万何千円しか渡していない。残りは金庫の中で預かっています」と。ええっ、そんなことあるのかっていったんです。この杜撰さ、酷さ。ちょっとそれは驚きましたね。

――いや、今のお話を聞いているだけでも、常軌を逸しているな、というふうに思うんですけれども。それ以外にも驚くべきことが次々と明らかになってきましたよね?例えば、これもかなり衝撃を持って受け止められたと思うんですけれども。ハンコ、これあの生活保護受けてる方の、そのハンコを大量に、これ、2000本近くというふうに報じられていますけれどね。この点については仲道さん、いかがでしょう?

もうね、「いかがでしょう」って聞かれても本当に答えようがない。

――そうですよね。

呆れる話で、例えば、これ私、あの、何本ですかっていうのは、新聞記者の方が質問したら、正直に「1944本預かっています」「いつから預かっていますか」「分からないです」と。「分からないほど前から預かっています」と。あの、これもね、本当に私、思いますけども、役所は土日やってないとすると、年間200日ぐらい。まあ、仮に開いていたとして、毎日1本ずつ預かったとして、年間200本預かったとすると、1944本預かるのに10年かかるんですよね。

――ほう、はいはい。

ばーっと計算すると。そんな10年、いや少なくとも毎日1本預からないだろうし、この7、8年預かってないというので、そうするともう20何年か前とか、30年前とか、そういう頃から皆から預かり始めて、それがいつしか1944 本貯まったと。生活保護を受ける人が、例えば、市役所まで行くのは、車なんか持っていないので、行くのが大変だから、内部的な書類については、預かったハンコを押すっていうのは全くないわけじゃないんですよね。まずその場で印鑑を預けて、で、職員が「こういう書類にハンコ押さなきゃいけないけど、ハンコ押していいですか?」というふうに確認して、で、本人が同意すれば押すことについては、問題はあまりないです。ただ、まず、市の説明だと「いつ誰の印鑑を預かったかすら、もうわからない」と。「少なくともこの7、8年は預かっていない」と。で、預けた方が生きているか、死んでいるかも分からない。そもそも誰かも分からない。ということで勝手にハンコを押すことが常態化している。で、それを押しても何の問題もないと思っているんです。えーとね、これもこういうお話で「ああ、なるほどそうですか」って言う人、いないんですよ。

――そうですね。いや、ちょっともう、理解が追いつかないレベルになっていますし。

そうです。

――そうなんですよね。やっぱりその他人の印鑑を、勝手に別の人に、こう、押したり、っていうことも報じられていて、ちょっとまあ、驚愕のことばかりが発覚をしてきた。もしかしたら、埋もれているものが、まだまだたくさんあるかもしれない、というふうに思うと、非常に恐ろしいんですけれど。まああの、どうでしょう、こう。それ以外にも、これは桐生市だけで報告されていることではないにしても。例えば、その生活保護の窓口で、例えば、申請書を渡さずに家計簿を渡して、「これで、1日800円で生きている人を見習って」みたいなことを言ってくるとか。あと、非常に担当者の高圧的な対応、まあ暴言と言っていいかもしれないんですけれども、そういった対応なども明らかになっていますが、この点については、仲道さん、いかがでしょう?

まあ、これは桐生市だけの問題じゃないですけどね。まずは、桐生市でも、お一人で行って、生活保護の申請に至った人は、そうそう、いないんですよ。これもね、本当に、あの、いろんなところで有名なんですけども、お一人でお金がない。例えば70代ぐらいのお年寄りで年金の額が少ないです、と。で、生活が苦しいです、と、月7万円ぐらいは支給されるはずなんですね。生活保護だと。年金が少なくて、月3、4万円ぐらいしかなければ、生活保護が受けられます。だけど、市役所に行くと「あなた、今まで若い時、何してきたんだ。ちゃんと仕事してきたのか?年金かけてきたのか?」と、こう始まるわけです。

――説教から入るんですか?

そうそう、そういうこと。そういうこと。で、私の、えーっと、一緒に同行した方は「あなたの親は、あなたにどういう教育したんだ?」と。亡くなった親子さんのことをね。「あなたの親子さんはちゃんとね、将来自分で生きられるような教育をしたのか?」っていうようなこと延々と言って、「本当にもう2度とあそこは行きたくない」と、言っていた方もいました。私、その方と一緒に生活保後の申請にね、先日行ってきましたけど。

――ええ。

そういうふうに発言した人物に謝罪を求めましたけども、奥の方にいて、出てきませんでしたけどね。あのう、これは、桐生市はよくあります、本当に。桐生市だけじゃないけど。桐生市では、こういった対応は日常だったようです。

――そう、でも、生活保護って、やっぱりこう最低限の生活を保証するもの、人権の最後の砦になり得るようなものかもしれない。で、その窓口で、ご本人だったり、ご家族の人間性を否定するようなことを、平気で言うわけですか?

そう。平気で言うんですね。DVで逃げてきた女性が、DVで逃げてきた 元々のところに家具が置いてある。そうするとDVで逃げてきた、元々家に家具が置いてあって、今逃げてきた先には家具がほとんどない。「生活の実態がどっちにあるかわからないから、はっきりしない限り、申請できない」っていう対応もありましたね。

――は?

これもね、あの、DVで逃げてきたっていうのは、家具なんか持ってこれないんです。

――そりゃそうですよね。

これは常識で、普通は分かるんです。で、DVで逃げてきたその先は桐生だし、DVで逃げる元のところも桐生でしたけどね。

――うんうん。

そういうふうに逃げてきて、別にどっちに生活の本拠があるかなんて問題じゃないんです。毎日寝泊まりしてるのは逃げてきた先。これはもう明らかに本人がおっしゃってること。そして、それを調査すればすぐ分かるので。で、「今住んでるところで生活保護の申請をしてください」と言えば済む話だけど。「本拠がどこにあるか分からない。いずれ家具を取りに行くんでしょ?だからそっちに住むかもしれないね」などと言って申請を拒む。

――ええっ?

もうね、あの、いくらでもあるんですよね。お一人で行って、全く同じ話をして、私が一緒に行った時も前回と全く同じ話をして、「前回は保護が通らなくて、なんで今回、本当保護は通るんですか?」っていうふうに質問した方もいました。職員は黙り込みましたけどね。

――それはそうですよね。いや、ちょっと、あまりにも、被害だったり生活保護の実態と、窓口の対応がかけ離れているし、そのDVの専門家でなくても役所の言ってる方が、いかに非現実的かっていうのは分かると思うんですけれども。

そうですね。

――いや、あの、あとですね。また、ちょっと、生活保護の話に戻りますけれども、これもこう報じられているところですが、介護が必要になった方が、この桐生市外の、桐生市のかただったんですけれども、桐生市の市外の介護施設を紹介された。その上で、例えば、その市外に転出するとなると、じゃあ、生活保護、こう、違う自治体に移管しますね、っていう、手続き取られると思うんですけれど、そうではなくて、辞退させたというケースが報じられています。これは、仲道さんいかがでしょう?

これ、私、もう9年も近く前ですけども、この当事者の方からも、相談、当時受けたし、その手続きがなされたってのは、ちょっと後で聞きましたけども、確かに間違いなくなされたようです。この事例は本当にひどくて、まあ、報道されている通りなんです。「報道されてるいのは大げさだろう」と思う方いるかもしれないけど、何ひとつ、事実に間違いないです。あの、本当に、食うや食わずで、お一人で暮らしていて、体調が悪くて、動けない方。近所の方が見かねてですね、やっぱり保護の相談に行った方がいいと。で、お子さんにそのことを知らせて、お子さんが相談に行く。それでも全然取り合わない。申請書くれないで、家計簿だけ渡す。「1日800円で暮らしている人がいるんだよ」なんてことを言われる。で、病院関係者の方が一緒に2度ほど、一緒に行ったけども、保護の申請に至らない。で、最終的に私が、もう9年も前ですけど、一緒に同行して、保護の申請に至ったんですね。で、体調が悪いから施設に入らなきゃいけないと、いうことで、なぜか「桐生市内の施設はどこもいっぱいだ」と向こうは言って、「他の市なら空いています。じゃあ他の市に入ってください」として他の市の施設に入れて、で、なぜか辞退届けを書かせると。で、もう本当に言われるがままに、するしかないんですよね。お子さんとしては、わけは分からなくて、もう一方的に言われる、責められる。で、「なぜ保護受けたか分かるか?」と。で、「それは、生活が大変だからです」っていうふうに答えると、「そうじゃない」と。「あなたのお父さんの社会性のなさだ」っていうふうに一方的に決めつけて、役所の中で、周りに人がいるところで 大きい声で言う。やっぱりそれはもう、言われるがままにしないとお父様の命がかかっているから。で、結局、あの、「他の市に行ったから、桐生市では保護が受けられないから、ここで辞退届けに書いてください」と言われて、それを書いた。

――ま、とにかく「出てってくれりゃいいや」みたいな、そういう対応ですよね。

そうです。だから、保護を受ける人はどんどん減らしたいんですよ。あの、職員の数はどんどん減らしたので、「職員が大変だろう」っていうことで減らしてるのか、財政的に大変だから減らしてるのか。ただ、財政っていっても国から4分の3、出ているお金ですから、こんなにね、市は大変だってこともないと思います。

――なるほど。いや、なんか今の話、私、今、いわゆる反社会勢力の話をしているんだろうか?っていうふうに、聞き間違えてしまうぐらい、「えっ?これ役所の対応なんだっけ」っていうふうに、ちょっと頭がクラクラするんですけど。どうでしょう?これ。さっきの、生活保護の申請書を渡さない。暴言を吐く、等々、ハンコのことだったりですか。満額支給しないとか、いろんなことが発覚する中で、どうでしょう?これ、違法性はないのか。その違法性の認識って、市にあるのか?だったり、その点についてはどうなんでしょうか?

私の考えは全部違法だと思いますけど。まず、最初の1日1000円ずつの方にしても、他にも1週間に7000円の方も、2週間に1万4000円ずつ渡される方もいます。全額支給しないのは、これは最低限度の生活を国が決めて、桐生市では生活保護費7万1千いくらで決めているのに全額渡さない。これだけでも違法です。だけども市の方は「違法である」と認めたことは、今まで一度もないですね。分割して全額支給しなかった。これを「違法だ」とは認めない。それから「窓口でそんな大きな声は出して覚えがない」。それから「申請書渡してくれと言われれば、当然渡したけども、本人がそこまで申請はしなかった」っていうふうに、全て回答しています。

――あのう、申請書を受け取らなかったのは、本人の意思である。で、例えば、大声を出したっていうのは、「自分たちはやっていない。嘘をついているだろう」っていうような、そういう態度なわけですけれど。さっきの「出ていって、もう出ていって欲しいんだろうか」みたいな話にも通じると思うんですけれども、先ほど少しご指摘いただいた通り「とにかく、まあ、桐生市としては、生活保護を受けている世帯を減らしたいんじゃないか」と。で、実際、その、どうなんでしょう。その桐生市で、受給人数、人口あたりの受給者の割合だったり、やっぱり明らかに減っているというのは、数字でも見て取れるものなんでしょうか?

そうですね。あの、数字では本当に大幅に減ってまして、2011年度は1163人、保護を受けている方、いましたけども、2022年度、直近の調査だと2022年度は547人なので。

――おお、激減。

はい、半分以下に。

――そうですね。

だからこんなに減らしたところっていうのは、そうそうないんですよね。あの、リーマン・ショックの頃に保護の申請は増えました。で、その後少し減りましたけども、あの、コロナ禍の時に保護の申請数っていうのは、全国的には増えた。今も増え続けています。で、群馬県内でも他の市では、概ね申請件数は横ばいから増えていくんですけども、桐生市は、まだ、こう大幅に半減していると。桐生市ほど減った自治体っていうのは、そうはないです。

――これ、その明らかに異様な減り方なわけですけれど、桐生市としては、自治体としては、なんで減っているのか。どういう説明をされているんでしょう?これ。

桐生市の説明は、一貫として、「保護を受けている人は高齢者が多いので、高齢者が亡くなっていきました」っていう。

――すごい勢いで。

はい。だから高齢者がダーって亡くなってく。ま、もちろん高齢者、亡くなっていきますけども、新たに保護を申請する人は増えていくわけだから、全体として、ものすごく減るっていうことは、普通どこの市でもないんですよ。桐生市の説明は「受給者が亡くなっていきました」これが説明です。これだけです。だから、申請している数がなぜ少ないのか、あるいは、申請して却下だとか取り下げだとか、途中で辞退だとか、そういった数が多いのに、その多い理由について説明することは全くないです。

――あの、この明らかに人数が激減していることに対する、その言い分っていうのも、非常に不自然ですけれど。どうでしょう、これまでこう説明していただいた一連のケース。ハンコだったり、満額支給していない、日割り。パワハラ的な対応だったり、そうしたこう発覚した数々について、桐生市としては、担当の部署と言ってもいいのかもしれないですけれど、何かこう、具体的な説明をしたりですとか、あるいは、具体的な対処はこれまでしてきたんでしょうか?

――あの、これが発覚したのは、昨年の11月に、私が所属している群馬司法会の方で文書を出して、桐生市の方にこれは要請したわけですけども、その後12月の18日に市の方は「今までのは、不適切だ」という、私からすれば違法ですけども、そういった点については説明をして、私どもは問題にした事案を、3つの事案がありまして、その事案については「こういった経緯で、こういった不適切がありました」ということをホームページの方で発表しています。

――うん、うん。

ただ、発表していますけども、ま、確かにその本人にも謝罪をしたり、とか、あるいは、全額支給してなくって、市の方が預かっていた公費は渡しました、とか、色々書いてありますけども、この説明だけでは全く納得できない。「本人が同意したから全額渡さなかった」、「本人とこちらの間に認識のずれがあった」あと、「こちらとしては適切な対応した、という記憶だったけども、本人の方にそれが伝わらなかった」などというようなことが、まあ、つまづま書いてあります。でも、これはどう考えてもですね、全額渡さないとか、あるいはその最初に申請を拒んだり、あるいは申請してから保護費を渡すまで50日もかかったり。

――ええっ?

あのですね、これもう、本当に信じられない案件があるんですけども。

――2ヶ月近くですか?待たされるんですか?

ええ、そうですね。で、役所の方は「本人が来るの、待っていました」で、「何言ってだろうな」ってやっぱ思うんですよ。そういうのを聞くたびにね。

――はい。

「来ると聞いてましたから、来るのを待ってました」で、「50日近く経って来ないので連絡、電話させていただきました」だから、そうじゃないんですよね、やっぱり。感覚が全くずれているんです。「自分たちは違法だ」とかいう認識は何らないんですよ。で、それは公務員っていうのが皆さん全員そうだ、と私は言わないんだけども、「日常的にこれが当たり前だ」と継続してやっている。業務が、実はいつしか不適切だったり、違法になっていたり、っていうことはあり得ることです。で、それは市民から指摘されれば、それを正さなきゃいけないし、で、その例えば、この生活保護の問題なら、市でやっていることを県が監査して、で、不適切なところは正さなきゃいけない。あるいは厚生労働省が関わって厚生労働省の査察なりをして、正さなきゃいけない。ただ、そういったことを「今まで県は何をやってきたのかな」って私は思いますね。もう何年も前から大幅な減り方もしているし、問題事案を市議会議員なんかが告発しているのに、なんら改善されなかった。まあ、市の説明はホームページをご覧いただければ分かりますが、これ読んで納得できる方いないと思います。

――いや、本当に、仲道さんたちが関わった、その個別の事案が非常に特異だったケースではなく、本当に長年にわたって構造的に、しかもエスカレートしていくような形で繰り返されてきた問題という意味では、これも「市がホームページにチョロッと載せて終わり」ではなくって、やっぱり、第3者委員会のような形で、もう徹底的にその根本問題に切り込んでいく。いわゆる膿を出し切る、ですよね。が必要だと思うんですけれど。この点については、何か進んでいるんでしょうか?

あの、当初の市の発表だと、昨年12月、市長が知者会見した席では、「今年1月に第3者委員会を組織して調査するんだ」と。で、「それまで内部調査もいたします」と、いう話ですから、昨年12月から内部調査は始まっていて。今年1月に第3者委員会ができるという予定だったと。で、これまで内部調査の結果の中間報告などはただの一度もないです。それから、今年1月に組織されるはずだった第3者委員会は、今、3月の初めですけども、未だにできてないですね。

――えっ!

で、これも、ですね、いつ作る気があるのか。「今、あの、人選しています。人選しています」と1月の末日に私どもが問い合わせた、1月31日に問い合わせたら、第3者委員会設置要綱っていう紙をペラッと渡されて、1枚の紙。で、「第3者委員会は以下の通り設置する」っていうんで、設置要綱がちょっと書いてありましたけども。ま、その時には「委員は4名、4名以内とする」とか、「学者とか、あの、行政経験者とか、弁護士とか、そういうところから選ぶ」とかっていうことは、ただ書いてあっただけで、「今人選中です」っていうのを2月中ずっと言ってて、まだ、人選中のようですけども。

――ほう、検討に検討を重ね。

あ、そうですね。だから。

――でも、「1月中に第3者委員会を立ち上げる」が、まさかこう「要綱だけを制定する」だとは思わないですよね。

そうなんですね。私は、要綱は昨年中に作ろうと思えば簡単に作れた話だし、その人選っていうのは、例えば弁護士会なら弁護士会に人選をお願いする、社会福祉なら社会福祉会に人選をお願いする。で、学者であれば県内の、あるいは県外の大学等にそれを、照会をかける。そんなに大変な話じゃないと思いますね。

――そうですね。

だから、それが今もできないでいる。で、だんだんこういったことを関心が皆さん失われてくるかもしれないし、忘れてきて、ほとぼりが覚めれば、また、ただ元に戻るだろう、というふうにしかね、ちょっと思えないところあるんですよ。

――そうですね、本当に、こう忘れられるのを待っているかのような態度ですけれど、一方で、県の、県により、その特別監査が続いているということ、報じられていますが、県としても、もっと早く具体的な対処ができたはずだろう、ということも、あると思うんですけれども。それも含めて第3者委員会の早期設置というのは、まず、必須だとしても、今後、桐生市としては、自治体としてはどういう対応を取るべきだというふうに仲道さん、考えていらっしゃいますか?

私はまず、今までの起きた事案について、これはもう第3者委員会の調査に、ただ委ねるんでなくして、自分たちもですね、全ての資料を出した上で、自分たちは内部調査をしているんであれば、その結果をしっかりと、中間報告をしながら、違法であったかどうかということを、主にね、調査するべきだと思うんですね。自分たちがやっていたことは、いつしか違法だったんじゃないかっていうふうに、違法性があったかどうかを、明確にまず、調査をした上で、今、その窓口に行ってですね、申請をしようとすると、前よりも少し対応が優しいんですけどね。

――うーん、問題が発覚した後だからって、いうことなんですかね?

そうですね。あの、毎日のように相当数の抗議の電話があったようなので、今、少し対応が優しくなっていますけども。彼らとしてはですね、困難なケースもあると思うんです。例えば、お金を管理しなきゃいけないっていう風に彼らがなぜ思い始めたのか。依存症などで、あっという間にお金を使ってしまうような人は仮にいたとすれば、そういった方は依存症の対応を、医学的に、あるいは福祉的にしなきゃいけないので、困難なケースが生じたら、法律専門家とか、福祉の専門家だとかと連携しながら、対応を取ればいいんですね。彼らには、そういうふうに外部とちゃんと連携しよう、っていうところがあまりないんです。それともうひとつは、やはり職員が、ですね、何が正しい対応か、何が誤った対応か、厚生労働省ではこの点どう言っているか、こういったことをちゃんと研修を受けながら学ぶ必要があるんですよね。だから私は、今までの案件は、まず市民からですね、広く調査して、「相談に行ったけど追い返された」とか「保護の申請をしたけど、取り下げを求められた」とか、そういった案件は徹底的に市民からまず調査をする。で、市民からの調査を自分たちもちゃんとした上で、その1つ1つの事例を、第3者を交えて検証する。で、違法な対応というのはなぜ起きたのか、ということをしっかりと認識、把握した上で、今後は、困難なケースは、民間の法律専門家や福祉の専門家なんかと連携しながらですね、チームを組んで対応する。それと職員については、しっかりとした研修を、あの、定期的に行って、自分たちの行為が違法にならないかどうか、これを常にチェックする必要があると思います。そういったことをやっていればですね、こういったことはね、起きないんですよ。で、他の市でも、もちろんいくらかの問題はあるんだけども、全額渡さないなんてことはちょっと考えられないことです。もう本当に、恫喝するのもそうだけども、あるいは、申請を拒むような対応もそうだけども、保護を受けているのに全額もらってない。市が預かっている。でも、市の経理上は全額渡したことになっているなんてことは、普通は起きちゃいけないことなんですよね。

――いやあ、本当に前代未聞と言ってもいいかもしれないですけれど、やはりそれをナアナアにして、また、ほとぼりが覚めましたね、世間の関心離れましたね、じゃあ元に戻っていいや、っていうふうにさせないために、今ちゃんと、根本部分に切り込むということが不可欠だと思うんですが。

そうですね。

――あの一方でどうでしょう。先ほどの、例えば窓口で申請させないみたいな、いわゆる水際作戦ですよね。で、これはもう桐生市に限らず起きてきたことというのは、先ほど仲道さんもおっしゃった通りだと思うんですけれども、それを踏まえると、特段、桐生市の対応がひどかったというのもあると思うんですけれども、もっと大きな枠組で見た時に、生活保護、最低限の生活を保証するという仕組みだったりです、とか、そこに当てられる予算や人員かもしれないですけれど、今後どういうこう改革が必要なのかっていう点については、最後に仲道さん、いかがでしょう?

そうですね。あの、市の職員、桐生市の職員に限らず、他の市でもそうですけども、生活保護の担当職員に本音を聞いてみると、「これは国が直接やってくれないかな」っていう方いるんですよね。「我々はその、国から委託されて、こういったことやっているけども、本来、国が直接やってくんないかな」なんていうふうに本音言う方もいるんですよ。あの、私はでも、国が直接やるって、現実にできるかできないかはともかく、市の職員はですねもちろん人員が少なくて1人あたり100人ぐらいの保護の受給者を抱えている。100人とか150人とか。で、本当にその窓口対応でも疲れ果てているような方もいらっしゃるし、だけども、人員をね、ちゃんとやっぱり増やしていく、というのは、1つまず必要であるということと、職員がしっかり研修を受けて教育を受けて、自分たちのやっていることが違法でないかどうか確認する、というのも必要だし、私はあと、その、ですね、生活保護の仕組みそのものも、ちょっと考えなきゃいけないのは、手持ちのお金が本当に2万だ、3万円だとかにならない限り、申請ができないような状況だったり・・・。

――そうですよ。もうギリギリ、もうもう生きられないっていうところまで 追い詰められないと受給資格と言いますか、申請できないっていう構造になっていますよね。

そう。ま、やっぱりそこは法律を変えた方がいいと思うんですね。例えば10万円、20万円ぐらい持っていて、でも仕事が今ありませんと。生活が来月どうなるかわからないと。今10万円ぐらいは、20万円ぐらいはある。でも来月の今頃、再来月の今頃は分からない、っていう時に、あらかじめやっぱり受けられるような仕組みが必要なんじゃないかな、と思いますね。それと、生活はギリギリやれるけど、病院代がないっていうような人。これは医療だけは無料で受けられるようにすると。あともう1つは、これはもう東京と都市部で全く違うんですけども、例えば桐生市もそうだし、私がいる伊勢崎市っていうとこもそうですけども、自動車がないと全く生活ができない場所です。

――でも贅沢品のような位置付けになってますよね。

そうですね。私、あの、日常的な生活の足として自動車を生活保護の方が持つことは、やっぱりもうちょっとこう、要件をね、緩くして認めなきゃいけないと思いますね。そうじゃないと、車上生活を選ぶ人もいるぐらいです。地方に行くと大きな道の駅っていうのがあって、その広い駐車場の一角で生活している人いるんですよね。アパート代はもう払えない。でも車がないと暮らせないから、車の中で寝泊まりし、で、ギリギリの生活をしている。こういった方はね、やっぱり健康でもなきゃ、文化的でもないですよ。生活の水準としてね。やっぱりそういった方が自動車を手放さなくても生活受けられるよう、生活ができるように、生活を受けられるように、国の仕組みを変えた方がいいと思いますね。だから、単なる生活保護っていうような本当に最後の最後にこれしかないんじゃなく、もう少し間口を広げて、あるいは、その要件を緩やかにするなり、広い意味では、生活保護じゃなくて、生活を保証するという大きな枠組の法律を作って、こういった場合は家賃だけ出ますとか、こういった場合は医療だけ無料で受けられますとか、生活費がない時にはいくらか手持ちのお金があっても受けられますとかね。変えてくことは必要だと思います。

――その大きな枠組をどうしていくのか、という議論もやはり待ったなしで進めていくべきですし。で、そしてやはり、桐生市が、ほとぼりを覚めさせないということですよね。それにやはり、桐生市民からの目というのが、関心というものが不可欠になっていくと思いますので、引き続き私も注視していきたいと思います。

はい、そうですね。あの、このケースは最悪。本当にひどかったケースですけども、今、生まれ変わってね。例えば本当に制度を改革するきっかけになるかもしれないし、あとは、その困難なケースが生じたら民間の専門家なんかと一緒に解決するっていう、そういうチームを作れるかもしれないし。ある意味ではチャンスかもしれないです。そういう意味でやっぱり我々外部の専門家も取り組まなきゃいけないと思いますね。

――本当にそれを具体的な変化として、どういうふうに落とし込んでいくのか。それも含めて私たちも見ていきたいと思います。

はい、ありがとうございます。

――仲道さん、ありがとうございました。

ええ、とんでもないです。ありがとうございました。
**********

■このように桐生市の生活保護制度不正運用について、実際に長年にわたり被害者に寄り添っておられただけに、この問題の本質について、的確な視点でコメントされていることがわかります。

 併せて、この問題に当初から取り組んでいる東京新聞のシリーズで特集した記事を次に紹介します。

**********東京新聞2024年2月16日17:00
首都圏ニュース【連載・砂上の安全網】
 生活保護は「最後のセーフティーネット(安全網)」とも呼ばれる。国民の生存権を保障した憲法25条を根拠とする制度だからだ。しかし、桐生市では保護費を1日1000円に分割した上に満額支給しなかったり、受給者から預かった印鑑を無断押印したりするなど、違法性を強く疑われる運用が表面化した。黒田さんの体験から問題点を洗い出す。(この連載は、小松田健一と福岡範行が担当します)
<砂上の安全網 ①>
これが生活保護の水際作戦…電気も水道も止められているのに「家族で支え合って」と突っぱねた市職員
 「お父さんが大変なことになっているので、すぐ見に行ってください」
 2015年7月、群馬県桐生市に住む黒田正美さん=仮名=の携帯電話が鳴った。声の主は同市福祉課の職員だった。
◆木くずで起こした火で煮炊きしていた父
 当時、黒田さんは30代後半。父の杉本賢三さん=仮名、当時(61)=と市営住宅で同居していたが、結婚で独立し、杉本さんは単身生活を送っていた。駆け付けると、ライフラインは全て止められ、石油ストーブの燃焼筒に外で拾い集めた木くずを入れてマッチで着火し、わずかに残ったコメを煮炊きしていた。窮状を見かけた近所の住民が市へ通報したのだという。
 杉本さんは料理人として働いていたが、心臓疾患などによる体調悪化で就労困難な状態が続いていた。黒田さんは市福祉課に相談したが、「家族で支え合って」「実家に戻りなさい」と相手にしてもらえなかった。同年8月、杉本さんはやむを得ず市内の実家で暮らす妹、黒田さんにとっては叔母の家に身を寄せる。

黒田さん(仮名)が書きとめていたメモ。父親の困窮と桐生市の対応が記されている
 しかし、以前から折り合いが悪かったため、杉本さんは母屋に入れず、隣接する廃工場に身を置いた。猛暑で知られる桐生市でエアコンも風呂もない住環境は、ただでさえ万全ではない体力を奪った。
◆「家計簿をつけて」「1日800円で生活」
 叔母は無職、黒田さんは当時子育て中で働いておらず、夫の収入も父親を養うだけの余裕はなかった。窮状から脱するには生活保護以外に道はなく、黒田さんは父と叔母の生活保護を申請するため、市福祉課を訪れた。しかし、担当職員は「1カ月、家計簿をつけてください」と告げる。「生活保護を受けている人で1日800円で生活している人もいる。見習うように」と申請させなかった。いわゆる「水際作戦」だ。
 さらに、同課職員が自宅に来て夫の通帳を見て収入を確認し、家賃や車のローン残額などを聞き出した。「なぜそんなことまでされないといけないのか」と憤ったが、ここで職員の機嫌を損ねたら、さらに不利な扱いを受けるかもしれない、という懸念から何も言えなかった。

群馬県の桐生市役所
 見かねた友人から、黒田さんは困窮者支援に取り組む仲道宗弘司法書士(群馬県伊勢崎市)を紹介され、窓口に同行してもらったことで、同年9月にようやく保護が決まった。
◆暴言「社会性のなさから生活保護になった」
 その際、担当職員は窓口で黒田さんに「お父さんの社会性のなさから生活保護になった」と、大声で暴言を吐いたという。窓口は個室ではなく、執務フロアで周囲に大勢の職員や他の来訪者もいた。黒田さんは「悔しくてたまらなかった」と振り返る。
 黒田さんは仲道司法書士の助言で、一連の経過をメモで記録していた。
 「町でぐうぜん父の姿を見かけ、びっくりする。ホームレス状態」「市へ電話をすると、『家族で支え合って』『実家にもどれ』の一点ばり」
 生活保護が決まってからも、杉本さん、黒田さん父娘にはさらなる試練が降りかかった。

**********東京新聞2024年2月17日17:39
<砂上の安全網 ②>
「市を訴えるってこと?」・・・福祉課職員に怒鳴られた娘、尊厳否定され死んだ父 生活保護めぐり心に傷
 2015年9月、桐生市からの生活保護受給が決まった黒田正美さん=仮名=の父、杉本賢三さん=同、当時(61)=は、直後に心臓疾患の治療のため市内の病院で手術を受けた。
 退院後に実家の廃工場に戻れば、再び体調を崩しかねない。主治医は施設入所を勧めた。ただ、桐生市が提示したのは前橋市北部の介護施設だった。桐生市内から車で1時間以上かかるため、子育てに追われる黒田さんは難色を示して近隣施設の紹介を求めたが、担当者に「桐生市内はどこもいっぱい」と断られた。
◆保護辞退届書かされ、居場所と収入失いそうに…
 担当者はさらに、杉本さんの生活保護を廃止し、前橋市で改めて申請するよう求め、黒田さんに保護の辞退届を代筆させた。受給者が転居する場合は「移管」手続きで、保護が途切れないようにするのが通例だ。黒田さんは釈然としなかったが、制度に関する知識が乏しかったこともあって、父を施設へ入れることを優先し受け入れた。
 ここで問題が生じた。入所に必要な桐生市の介護認定手続きが未了だったため、施設に入所を断られる。居場所を失うばかりか、前橋市から生活保護を受けるまで一時的に完全な無収入になってしまう。
 辞退届は入所と引き換えだったため、黒田さんは電話で桐生市の担当者に辞退の撤回を懇請する。しかし、担当者は「施設のご案内をしただけで入れとは言ってない」などと話し、らちがあかなかった。
◆担当者との間に存在する上下関係
 黒田さんが書き残したメモにはこうある。
 「○○(担当者氏名、メモでは実名)黒田さんは何をしたいの? 桐生市をうったえるって事?」

保護の辞退届撤回を求めた黒田さんに、担当職員が「桐生市をうったえるって事?」と詰め寄る様子がメモに記されていた
 「そうやって○○さんとかにせめられてつらくって市に行く事やtelがくると調子が悪くなっちゃうんですよ」
 黒田さんは市福祉課の窓口でも、他の来訪者や職員に聞こえるような大声で怒鳴られたことが複数回あったという。「(担当者と自分に)上下関係が成立していて、逆らえなかった」
◆「まだそんなことをやっていたのか」
 杉本さんは施設入所後に若年性認知症を発症し、17年5月、63歳で亡くなった。黒田さんは一時、市の担当者から電話がかかると体が震えるほど強い精神的ダメージを受け、これまで父のことでは家族にも口を開くことがなかった。
 しかし、昨年11月、生活保護費を1日1000円しか渡さなかった事例が報じられると「まだそんなことをやっていたのか」と驚き、尊厳を否定された父の無念を晴らしたいと取材に応じた。
 桐生市は昨年12月、制度運用に問題があったと認めて荒木恵司市長が謝罪し、内部調査チームと第三者委員会の立ち上げを表明した。黒田さんの事例について小山貴之福祉課長は「記録が廃棄されており、詳細な把握が困難な状況。引き続き調査し、第三者委員会や内部調査チームに報告したい」とコメントした。
 黒田さんは「今ならば、あのころの自分に『もっと周りを頼りなよ』と言う。表面化した問題は氷山の一角と思うので、第三者委員会で徹底的に調べてほしい」。

**********東京新聞2024年2月18日17:00
<砂上の安全網 ③>
生活保護、水際作戦が常態化? 桐生市の「異様さ」がデータで見えた 「最低水準」の背後に何があったのか
 群馬県桐生市に住む黒田正美さん=仮名=が、父・杉本賢三さん=同、2017年5月に63歳で死去=の生活保護を申請しようとした際、司法書士が窓口に同行するまで、市がかたくなに申請を拒んだことは前回までに詳述した。いわゆる「水際作戦」に、黒田さんは「父が救いを求めたとき、親身に対応してくれればもっと長生きできたと思う」と、悔しさを語る。
◆「保護率」2011年から10年で半減
 桐生市は10年ほど前から、生活保護を開始した世帯の割合が群馬県内の他市に比べて明らかに低い状態が続いてきた。生活保護の申請を受け付けた割合も、同時期から低水準が続いた。水際作戦は常態化していた可能性があり、研究者やケースワーカーでつくる「生活保護情報グループ」と本紙が連携し、県作成の資料から分析した。

 桐生市は、人口に対する生活保護受給者の割合を示す「保護率」が11年度をピークに一貫して低下し、22年度までにほぼ半減した。11年連続の低下は県内の市で唯一で、受給者も11年度の1163人から、22年度は547人と半減した。
 生活保護の申請や開始は世帯単位で行われる。分析では、申請や開始の件数を当時の世帯数で割って、各市の推移を比べた。

 結果、桐生市は申請、開始ともリーマン・ショックの影響が現れた09年度ごろは県内トップクラスの水準だったが、11~14年度に大幅に低下し、最低水準に定着した。申請を受け付けても開始に至らないケースも相次いでいた。
 一方、生活保護を受けた世帯数に対する保護廃止の割合は、記録を確認した05年度以降ずっと県の平均値に近かった。
 生活保護情報グループのメンバー桜井啓太・立命館大准教授(社会福祉学)は「急速に申請、開始が減っている。窓口に相談に来た段階で申請する意思をくじくような説明をするなど、申請権の侵害がなかったかを総チェックする必要がある」と指摘する。生活保護の受給者らへの市の厳しい対応が知られていたことで、相談に行きづらい雰囲気があった恐れもあるという。

◆「数字をコントロールしたことはない」と桐生市
 近隣地域は、主な産業や高齢化率などが似ているため、保護率や保護開始の割合などは似た推移をたどりやすい。桜井准教授は「保護率を見ているだけでも桐生市の異様さは分かる。県の監査が形骸化していなかったかも検証が必要だ」と、県の桐生市に対する指導姿勢も疑問視した。
 市福祉課は保護率が低い理由について、昨年12月18日と今年1月15日の記者会見で、それぞれ「高齢者世帯の死亡などによる保護世帯の自然減によるもの。数字をコントロールしたことはない」とコメントしている。

**********東京新聞2024年2月19日17:00
<砂上の安全網 ④>
生活保護の「水際作戦」の背景には偏見 国はマイナンバー並みの熱意で「正しい理解」の普及に努めるべき
 桐生市による生活保護制度の不適切な運用をめぐっては、同制度が憲法に基づいた国民の権利であるという根幹部分への無理解が浮き彫りとなった。生活困窮者支援の活動に取り組むかたわら、フリーライターとして精力的に生活保護をめぐる問題の取材を続けている小林美穂子さん(55)=前橋市出身=に、一連の問題の背景などについて聞いた。
◆「自分たちがルール」と言わんばかりの運用は憲法無視
ーー生活保護費を「1日1000円」に分割した上、決定額を満額支給しなかったり、持ち主が分からない印鑑を職員が書類に無断押印したりするなど、桐生市で明らかになったさまざまな問題点をどう考えますか。
 「多くの自治体へ生活保護の申請に同行した経験を踏まえても、桐生市の対応は突出しておかしなことばかりです。憲法や生活保護法を無視して『自分たちがルールだ』と言わんばかりの運用がされていたことに驚きました」
◆人員不足で「申請を受け付けない」力学が働く

生活保護制度の課題などについて語る小林美穂子さん=東京都練馬区で
ーー桐生市の例は典型ですが、生活保護を求める人を窓口で拒んで申請させない「水際作戦」は、なお後を絶ちません。なぜでしょうか。
 「まず、生活保護の実務を担当するケースワーカーが慢性的な人員不足で、過重労働に陥っていることが挙げられます。厚生労働省はケースワーカー1人当たりの受け持ち目安を80世帯としていますが、実際には100世帯を超えることも珍しくありません」
ー-生活保護制度が複雑なことも、職員の負担を重くしていますか。
 「その通りで、処理しなければいけない書類が非常に多く、心理的、身体的な負担を軽くするため、申請を受け付けないようにするという力学が働きます。職員の増員が必要です。多忙ゆえに制度や人権に関する研修が不十分で、十分な知識を蓄積できない問題もあります。制度利用の要件を満たしている人のうち利用している方は現状で2割程度です。必要な人にすべて行き渡らなくては制度の意味がありません」
◆国会議員によるバッシングが偏見を助長した
ー-生活保護制度には「楽をしてお金をもらっている」といった誤解や偏見が根強くあります。なぜでしょうか。
 「以前から『働かざる者食うべからず』といったスティグマ(他者が押し付ける負のイメージ)はありましたが、2012年ごろに一部の国会議員が制度利用者に対して激しいバッシングを行い、より助長されたように思います。群馬県のように保守的な地方ほど、その傾向は強いと感じています」
 -制度の改善にはどのような施策が必要でしょうか。

群馬県桐生市役所(資料写真)
 「短期的には、国がマイナンバーカードの普及宣伝と同じぐらいのエネルギーを注ぎ、生活保護制度に人びとが正しい理解を得るよう努めてほしいと思います」
 「中長期的には、現在は生活扶助や医療扶助などが全てパッケージになっていますが、個人の事情に応じ、例えば住宅が必要な人には住宅扶助だけを実施する『単給』を導入し、より利用しやすくすることが必要だと考えます。負のイメージが定着してしまった生活保護という名称も変えていく必要があるでしょう。市民のスティグマ解消や人権意識の底上げも必須です」
〇小林美穂子(こばやし・みほこ) 前橋市出身。幼少期をインドネシアやケニアで過ごし、成人後はニュージーランド、マレーシアで働き、帰国後は自動車会社の通訳者となる。2014年から生活困窮者支援団体「つくろい東京ファンド」(東京都中野区)のスタッフを務める。単著に「家なき人のとなりで見る社会」(岩波書店)、共著に「コロナ禍の東京を駆ける」(同)がある。 
**********

■そして、令和5年度末ギリギリとなったこの期に及んで、桐生市は第三者委員会の開催にこぎつけたのでした。

**********東京新聞2024年3月22日
桐生市の生活保護不適切運用を検証 第三者委人選に疑問の声 監査側の群馬県OB2人と専門外研究者

桐生市役所の庁舎。東京新聞提供

 生活保護制度の不適切な運用について検証するため群馬県桐生市が設置する第三者委員会の人選に対し、生活困窮者支援に取り組む関係者や専門家らから公平性、実効性を懸念する声が上がっている。委員4人=別表参照=中3人が、市を監査する立場だった県の幹部OBと、かつて市政への提言にかかわり、社会保障は専門外の人物のためだ。(小松田健一)
 4人のうち川原、新木両氏は元県職員で、川原氏は2017年4月から、新木氏は10年4月からそれぞれ2年間、県健康福祉部長を務めていた。同部は年に1回、県内福祉事務所で生活保護制度が適正に運用されているかを監査するが、桐生市の保護利用者、保護率は両氏在任中にも急減しており、監査が有効に機能していたのか疑問視されている。
 小竹氏も専門分野は政策立案過程などを研究する公共政策論で、社会保障や社会福祉ではない。また、市が18~19年、地域の価値を高める施策を検討するため設置した「シティブランディング戦略会議」で委員長を務めていた。
 桜井啓太・立命館大学准教授(社会福祉学)は「群馬県健康福祉部長という職は、県内自治体の生活保護監査の所管部長だ。元部長の2委員の在任時期は、市による激しい『水際作戦』が疑われる時期で、第三者という意味で公平性を持って調査、議論できるのか。学識経験者は、生活保護でも社会福祉の研究者ですらない。最近の他自治体で設置された第三者委員会の委員選定と比べても異様な人選だ」と指摘する。
 昨年発覚した東京都江戸川区のケースワーカーが、亡くなった生活保護利用者の遺体を長期間放置した問題で、区が設置した再発防止のための検討委員会は委員8人中、区議会、地元民生委員、人権擁護委員の代表を各1人、残る5人を第三者枠とした。うち3人が社会福祉の専門家、残る2人は医師と弁護士で、都OBや区政に関与した人はいない。
 第三者委員会事務局の桐生市人材育成課の雨沢浩史課長は「公平、公正、中立の立場の方ということを考え、各団体に推薦をお願いした。各委員の皆さまは今回の件を重く受けとめている。川原氏は行政経験、新木氏は社会福祉士として福祉関係の知見を有し、小竹氏は本市を含めて多くの自治体で委員などを務め、行政運営の見識が高い」とコメントした。
  ◇ 
 第三者委の初会合は27日午前11時から美喜仁(びきに)桐生文化会館で開催予定。原則として市民や報道関係者に公開する。報道関係者を除いた定員は40人。詳細は市ホームページで。
**********

 当日、当会会員らが委員会を傍聴する予定ですが、抽選となるかもしれません。仮に傍聴できた場合、後日、委員会の様子をレポートしたいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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桐生市生活保護不適切運用問題で、桐生市は第三者委の発足より関係職員の処分と刑事告訴を優先せよ

2024-02-13 18:09:16 | オンブズマン活動

桐生市が生活保護受給者から預かっていたという印鑑の一部。出典:朝日新聞

■昨年11月20日付けで群馬司法書士会から1通の要請書が桐生市長宛に提出されました。

*****11/20桐生市長宛要請書*****
                         群司発第329号
                       令和5年11月20日
桐生市長 荒 木 惠 司 様
                   群馬司法書士会
                    会 長  小 和 田 大 輔

      生活保護の運用の改善を求める要請書

 今般、桐生市で生活保護訴受給する50歳代の男性が、約2か月間にわたって、生活保護法で定められた生活扶助費を全額支給されていなかった事実が判明した。
 この男性は、令和5年7月26日に、桐生市福祉事務所において生活保護を申請し、同年8月18日から保護費を受給していたが、桐生市は、この男性に対し、支給開始日から生活扶助費を1日1,000円ずつ窓口で手渡して支給していたものである。しかも桐生市は、この男性に、毎日ハローワークで求職活動することを指導し、ハローワークに行ったことを確認してから窓口で1,000円ずつ支給していたことも明らかになっている。
 この男性に本来支給される生活扶助費は、月額約7万円であるが、1日1,000円ずつ支給される生活扶助費では、1か月で3万円程度にしかならず、生活保護法が規定する生活扶助費を大きく下回ることになる。そのため、当会会員が、本年10月12日に、この男性とともに桐生市福祉事務所で未支給分の生活扶助費の支給を求めたところ、桐生市は、未支給分の生活補助費134,180円をこの男性に支払っている。
 この点、日本国憲法25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定し、これを受けて生活保護法は、用保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他の必要な事情を考慮した厚生労働大臣の定める基準をもとに、生活保護の基準を厳格に定めている(生活保護法3条、同8条)。このように決定された生活扶助費について、これを下回る金額を支給すること、そして、その支給を一定の条件にかからしめることは、いずれも憲法25条及び生活保護法に反するものである。
 生活保護の実施機関である都道府県知事や市長らは、法の定めるところにより、生活保護を決定しかつ実施しなければならない責任を負う(生活保護法19条1項)。貴殿は、生活保護の実施機関として、日本国憲法および生活保護法に規定する生活保護基準を逸脱することなく、桐生市において適法に生活保護を実施する責任を負っている。それにもかかわらず、今般の事例において桐生市は、この男性に対し、約2か月近くにわたって生活保護法で規定された生活扶助費の約半分の金額しか支給せず、生活保護水準を大きく下回る生活をこの男性に強いている。これに加え、桐生市は、この男性に毎日ハローワークで求職活動することを求め、1日1,000円の生活扶助費の支給をこれに条件づけるかのような対応をしている。これらの点で、桐生市の生活保護の実施は、県報25条及び生活保護法に反する者であり、その実施機関としての貴殿の責任は、誠に甚大であると言わねばならない。
 さらに、桐生市が、この男性に限ってこうした違法な対応を行っている理由が見当たらないことから考えれば、桐生市は、生活保護受給者に対し、こうした違法な対応広く行っているのではないかという疑念を抱かざるを得ない。
 以上から、当会は、貴殿に対し、桐生市が実施する生活保護について、憲法25条及び生活保護法で規定された生活保護基準を逸脱することなく適法に運用するよう、その改善を強く求めるものである。
                            以上
**********

 その後、報道でもこの問題について取り上げられ始め、桐生市役所による上から目線のとんでもない生活保護制度の運用の実態が広く知られるようになりました。

**********東京新聞2023年11月20日 21時21分
生活保護費を1000円ずつ毎日手渡し 群馬・桐生市「生活指導の一環で適正」 司法書士会が改善要望
 群馬県桐生市が50代男性に、生活保護費を1日1000円ずつ手渡して全額支給しないなどの問題があり、群馬司法書士会が20日、運用改善を求めて荒木恵司市長宛ての要請書を提出した。厚生労働省も、市の対応を「適切とは言えない」としている。
◆支給額月7万円の一部しか支給せず
 要請書によると、男性は7月26日に市福祉事務所に生活保護を申請し、8月18日から受給が始まった。支給額は月額約7万円と決まったが、市側は1日1000円を窓口で手渡し、月に計3万円ほどしか支給していなかった。手渡す際も、求職活動のためハローワークに行ったことを確認していた。

1000円札(資料写真)
 司法書士会は、全額を支給しなかったことや、支給に条件を付けることはいずれも違法と指摘している。男性は10月12日に司法書士とともに市福祉事務所を訪れ、未支給分13万4180円を受け取った。
 市福祉課は「個別のケースについては答えられない」とし、「社会復帰を目指した生活指導の一環で、本人の同意を得て適正に行っている」と主張している。
◆男性「頭ごなしに説明された」 厚労省「適切とは言えない」
 一方、男性は本紙の取材に「1日1000円では生活できないと話したが、頭ごなしに説明された。支給を受ける立場なので、そういうものかと思ってしまった」と話した。同意を示す書面などはないという。
 厚生労働省保護課は「約7万円の保護費決定が出ているにもかかわらず、総支給額がそれに届かないのは適切とは言えない。必ずしも1カ月分をまとめて支給しなければいけないわけではないが、あまり聞いたことがない」としている。(羽物一隆、小松田健一)

**********東京新聞2023年11月21日 18時46分
生活保護費「1日1000円では生活できない」と訴えたのに…桐生市は「同意得て分割したという認識」

1000円札(資料写真)
 群馬県桐生市が50代男性に、生活保護費を1日1000円ずつ手渡して満額支給しなかった問題で、男性が21日、市内で記者会見し「『1日1000円では生活できない』とケースワーカーに言っても、一方的に分割された」と主張した。男性側は、国家賠償請求訴訟を検討していることを明らかにした。
◆その日の求職活動を確認してから1000円手渡し
 男性は糖尿病を患い、生活に困窮して今年7月に生活保護を申請。8月に月約7万1000円の支給が決定した。市は男性に、毎日の求職活動状況を書面で提出するよう求め、ハローワーク担当者の押印が書面にあるのを確認後、1000円を手渡したという。
 金曜日は週末分を含め3000円、光熱費や携帯電話料金は請求書を提示すれば別途支給されたが、支給額は合計で8月が3万3000円、9月も3万8000円にとどまった。男性は司法書士と市福祉事務所を訪ね、未支給分を10月に受け取った。
◆「桐生市の対応は自立を妨げる。国賠訴訟も検討」
 男性は「仕事を毎日探しても、パートタイムしか見つからなかった。ケースワーカーには『フルタイムの仕事に就かなければ、生活保護を打ち切る』と言われた」とも明かした。
 会見に同席した男性を支援している仲道宗弘司法書士は「市の対応は生活保護の目的である利用者の自立を妨げる。弁護士と相談し、国賠訴訟も検討している」と述べた。
◆未支給分、市は「預かったという認識」
 仲道氏は同日、群馬司法書士会として運用改善を市に申し入れた。市福祉課の小山貴之課長は取材に「受給者の事情に沿って対応している。本人の同意を得て分割し、決定額に満たなかった分を市が預かったという認識だ。申し入れは真摯(しんし)に受け止める」と話した。
 県健康福祉部は「未支給分があったのは問題で、日割り支給も生活に支障をきたし、不適切と考える。市に状況を確認したい」としている。(小松田健一)
◆あってはならない対応で人権侵害
 吉永純・花園大教授(公的扶助論)の話 仮に合意を得ていたとしても満額を支給しなかったのは、男性の最低生活費を侵害するあってはならない対応で、生活保護法違反の疑いが強く人権侵害だ。市は同法に基づく指導と主張するが、食うや食わずの状態での就労指導は問題だ。フルタイムの仕事に就かなければ支給を打ち切るというのも問題で、現在の雇用情勢だと50代では非常にハードルが高い。

**********東京新聞2023年11月22日 08時12分
桐生市で生活保護費一部不支給 自立遠ざける「1日1000円」 50代男性「暮らせない」 司法書士、ほかにも疑われる事例調査

生活保護費が1日千円しか支給されなかった経緯などを話す男性=桐生市内で
 「社会復帰しようとしても、1日千円では子どもだって暮らせない。何か悪いことをしたのかと思った」。生活保護を求めた50代男性に対し、群馬県桐生市が原則として1日千円、合計でも決定額の半分程度しか生活保護費を支給しなかった問題で、男性は21日、市役所で開いた記者会見で苦しい胸の内を明かした。(小松田健一)
 男性によると、中学卒業後に建築関係などの職場を転々とした。事故に遭ったり、結核を患ったりして一つの職場で長続きせず「働く意思はあっても体がついていかなかった」。親族の援助などでしのいでいたが所持金が底を尽き、支援団体関係者の手助けを受けて生活保護を申請した。
 分割支給を告げられた時は「1カ月待てば全額をもらえると思っていた」と言うが、状況が変わらず自暴自棄になったことも。満額受給できなかった間は支出を減らすため夜にスーパーへ行き、割引シールが貼られた総菜などで食事を済ませた。住まいのアパートにゴキブリが出ても、駆除する殺虫剤を買えなかった。

男性が桐生市から日割りで生活保護費を受け取ったことを示す書面(男性提供、一部画像処理)
 ハローワークへ日参したが「面接まで進めない」日々。車を持たないので、通勤できる会社が限られることもネックになった。
 支援団体関係者を通じて男性の窮状を知り、相談に乗った司法書士の仲道宗弘さんは「市に罰を与える権限などないが、本人は罰を受けたように感じている。生活保護法の目的は自立なのに、そこから遠ざけるような気持ちにさせた」と市の対応を強く批判した。桐生市では、ほかにも分割支給で満額に届いていないと疑われる事例があり、調査中という。
 会見終了後、報道陣の取材に応じた市の小山貴之福祉課長は「金銭管理が不十分といった場合は、こちらでお預かりして分割支給する場合もある」と話し、受給者に必要な指導、指示ができると定める生活保護法27条に基づいた指導を行う場合はあるとした。
 ただ、同条2項と3項でこれらは受給者の自由を尊重して必要最小限度にとどめ、強制してはならないとも規定している。
 男性の件については「個別事例はお答えできないが、口頭で合意を得たと認識している。(運用改善を求める群馬司法書士会の)申し入れを受けたが、説明責任を果たしていなかったと真摯(しんし)に受け止める」と述べた上で、今後はこうした場合に書面で同意を得るとした。また、ハローワークへ行くことを支給条件にしたことはないとした。
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■当会としても、この問題の根底にある行政の病巣を明らかにすべく、令和5年11月24日付で桐生市長宛に次の内容で公文書公開請求書を提出しました。

*****11/24桐生市長あて公文書公開請求書*****
<請求しようとする公文書の名称又は内容>
 令和5年11月21日(火)の新聞報道によると、桐生市は「生活保護を受給する50代の男性に対して1日1000円ずつ生活保護費を手渡しし、全額支給しなかった」と掲載されていました。このことに対して、次の通り情報公開請求を致します。
(1)男性の生活保護費の決定額(本来支給されるべき金額)
(2)男性に支給されるべき決定額と、実際に支給した金額の差額の推移がわかる情報
(3)男性が生活保護を申請してから、分割給付が始まり、満額受給に至るまでの時系列の状況がわかる情報
(4)生活保護費は月づき全額を一括で支払われると思いますが、1日1000円ずつ生活保護費を支払うように決めた経緯、および、法的根拠がわかる情報
(5)法的根拠がないとすれば、何故、1日ずつ手渡すようにしたのか、その理由がわかる資料
(6)このような対応をした関係職員の処分、あるいは責任の所在がわかる資料
(7)運用改善を求める群馬司法書士会からの申入れ内容が分かる情報
(8)上記(7)に対する市の対応が分かる情報(回答書などを含む)
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 この結果、同年12月11日付で開示に係る決定通知が届いたため、当会課員が桐生市役所を訪れて、開示資料を受領しました。












■ご覧の通り、群馬弁護士会の会長の要請書は全文開示されましたが、保護決定通知書はすべて黒塗りです。

 黒塗り箇所はなぜ個人を特定できるのか具体的に立証していません。当会会員は市側に何度も説明を求めましたが回答しようとしません。人事課に至っては「関係職員の処分を行っていない」と、平然と答える始末です。

 当会会員は、しかたなく、秘書室に行き、そこで「職員の処分は市長の専権事項ではないか? それを部長決裁で回答するのは、越権行為ではないか?」と市長へ苦情を伝えるとともに、説明を求めましたが、秘書室長は「人事課に伝える」と述べるにとどまりました。

 その後、この問題を取材して記事を書いた新聞社の記者に連絡をしたところ、「これは、氷山の一角である」とのことでした。また、「来週市長の記者会見があるので、なにか進展するのではないか」とも述べていました。

■その後、記者の言う通り、12月19日に桐生市のHPに次のメッセージが掲載されました。

*****12/19桐生市HP ページ番号1023289*****
                  更新日 令和5年12月19日
生活保護業務において保護費の毎日分割、預かり金、支給決定遅延など不適切な対応がありました。市長コメント、検証・点検結果、改善策を報告します。
【市長コメント】
 本市の生活保護業務に関しまして、保護費の分割支払いやそれに伴う月をまたいでの残金支払い、更には、事務手続の不備に寄ります生活保護費の支払いの遅延など、多くの不適切な対応があったことにつきまして受給者の皆様、並びにこのたびの事案発生により市民の皆様の信頼を損ねることになったことに対しまして、深くお詫び申し上げます。
 一連の不適切な状況につきましては、福祉事務所における組織にも課題があったと認識しております。
 そのため今後は、副市長の強力な指導の下、体制強化を図れるように保健福祉部長の職を副市長の事務取扱とし、現保健福祉部長を令和5年12月31日付けで異動させます。
 不適切な事務処理に関しましては、公務員として重要な規範意識を低下させるような職場風土が今回の中にあるとしたら、一掃しなければならないものと思っております。
 そのため、まずは他部局の職員による内部調査チームを設置し、来年1月中には第三者委員会を設置するよう指示したところです。
 この際、本市の生活保護行政を生まれ変わらせる。そのことが大切なことだと思っております。
 信頼回復に向け、今後の対応をしっかりと行ってまいります。
                桐生市長 荒木恵司
【経緯】
<事案1>
 受給者に、口頭で同意を受け、毎日来所を求め、1日1,000円を基本に保護費を分割で渡すこと、必要に応じ追加で渡すことを説明した上で、残金を金庫で保管していた。また、来所にあわせ、ハローワークの求職活動を指導していた。
 本人は分割を同意していない、求職活動を条件だと認識していたと報道された。
<事案2>
 受給者に、口頭で同意を受け、毎週来所を求め、本人必要額を基本とし保護費を分割で渡し、残額を金庫で保管していた。
 本人は同意していない、必要な支出ができなかったと報道された。
<事案3>
 生活保護支給決定の際、9月・10月分を決定すべきところを、10月分の支給を決定しなかった。その後、10月分の支給決定については、11月分の支給決定とともに約2~3週間遅延した。9月分の保護費支給は支給決定から約3週間後、10月・11月分の支給は本来支給決定すべき日から約1か月後となった。
 受給者からは、決定通知書を受け取っていないこと、また、9月分保護費の受領印を押していないことの申し出があった。
 担当者は8月に保護相談に来所した際、本人の意思で保護申請をしなかったと認識していたが、受給者は担当者から生活保護を実施できないと言われ申請できず9月に弁護士同席で申請できたとの認識であったことが報道された。
【検証結果】
<事案1・2>
 毎日の来所、支払いに条件を付けているかのような誤解を与えてしまったこと、残金の金庫保管は不適切であった。その原因としては、説明が口頭のみで分割同意の文書を交わさなかったこと、また、福祉事務所に毎日の来所及び残金を金庫で保管することについて不適切との認識がなかったことによる。
<事案3>
 支給決定の遅延については、担当者の誤った認識による事務処理によるもので、係長・課長が決裁時に確認を怠り、決定日に連絡後、予定日に来所しなかったのにもかかわらず担当者から再度の連絡を怠り、支給が遅延してしまった。
 決定通知書の交付については、交付したと説明したが、担当者1人で対応しており確証がなく、交付していない可能性が高い。9月分保護費の受領印については、本人から受領印をもらったと説明したが、実際には来所時に遅滞なく渡せるよう福祉課に保管してあった認印を受領簿に押し、本人から受領印を受けていなかった。
 申請を拒否したとの誤認については、保護相談の内容について、本人への確認が不十分だった。
【他事案の点検結果(平成30~令和5年度11月末)】
※事案1~3を含む。点検対象は882世帯(11月末469世帯及び廃止413世帯)
・分割世帯数…14世帯(分割開始年度…平成30~令和2年度0世帯、令和3年度3世帯、令和4年度4世帯、令和5年度7世帯)
・分割期間…15か月~1か月
・分割回数…毎日2世帯、毎週9世帯、隔週2世帯、月2回1世帯
・預かり世帯数…11世帯(令和5年11月末現在0世帯)
・最終預かり金(当月分を除く)…13万円~9,829円
・支給決定遅延…2世帯(平成30~令和4年度0世帯、令和5年度2世帯)
・福祉課保管認印の使用…86世帯
【対応】
 事案1~3及び新たに確認された支給決定遅延の受給者には、自宅に訪問し、謝罪を行いました。
 残額を預かっていた事案1・2以外の受給者には、今後、謝罪を行います。
【改善策】
・分割支給を行わない。
・特別な事案は群馬県に照会した上で対応する。
・遅延防止等の事務処理チェックリストを作成する。
・説明事項を書面化する。
・研修体制を充実する。
・関係機関との連携を強化する。
・点検を継続し、問題点を改善する。
・福祉課保管認印は一切使用しない。
**********

■上記の市側の改善策を見ると、関係職員の処分が見当たりません。その後の報道を見てみましょう。

**********東京新聞2023年12月16日
生活保護費「日割り支給」別の1人にも 桐生市、本紙の情報開示請求で判明 さらに「週割り」7人
 群馬県桐生市が生活保護費を日割りや週割りの分割で支給した上、1カ月の合計支給金額が決定額に届いていなかった問題で、本紙が市に分割支給についての文書を開示請求したところ、2022年度と23年度の2年間で分割にされた人は計10人で、そのうち日割りが新たにもう1人判明し2人だったことが分かった。(小松田健一)
◆2021年度以前の実態は不明
 開示請求したのは、13~23年度の関連文書。21年度以前は「文書を保有していない」との回答だった。
 開示資料によると、分割にされた人は、市が4日の市議会教育民生委員会で報告したのと同じ10人で、生活保護開始日ベースで22年度、23年度で5人ずつ。7人が週割りで、日割りが2人、月2回の分割が1人。分割期間の最長だったのは9カ月間で1人、6カ月間、5カ月間が各1人、3カ月間と2カ月間が各3人、1カ月間が1人だった。
 市は、分割支給は11月末時点で解消したと説明している。
 群馬県桐生市の生活保護費不適切支給問題 市内の50代男性に生活保護費を1日1000円ずつ手渡して全額支給しないなどとして、2023年11月、群馬司法書士会が桐生市に運用改善を要請。その後、他の生活保護受給者にも1万円ずつ分割で支給していた例が発覚した。市は「社会復帰を目指した生活指導の一環」「個別の事情に応じ本人の同意を得て分割支給し、残額を預かる場合もある」などと説明していた。
◆厚生労働省「生活保護法に適合しない」と明言
 一連の問題を巡り、7日の参院厚生労働委員会で、厚生労働省の朝川知昭社会・援護局長は、桐生市の対応に「全額を月末までに支給しない取り扱いは生活保護法に適合せず、適切ではないと考える」との見解を示した。立憲民主党の打越さく良氏の質問に答えた。
 朝川局長は、他自治体で同様の事例があるかについて「承知していない」と述べた一方で、「あれば指導監査で改善を促していく」とした。

生活保護費「日割り支給」別の1人にも 桐生市、本紙の情報開示請求で判明 さらに「週割り」7人© 東京新聞 提供

**********朝日新聞デジタル2023年12月18日13:00
群馬・桐生の生活保護、10年で受給者半減 際立つ取り下げ・却下率

県内の主な市の保護率の推移
 一部の生活保護受給者に保護費を満額支給せず、1日1千円で分割して渡していた群馬県桐生市で、生活保護の受給者数が過去10年に半減していたことがわかった。保護申請の取り下げや却下が多いことが背景にあるとみられる。桐生市は対応に問題はないとしているが、識者は「適切に運用されているか監査すべきだ」としている。
★ハローワークの判子見せたら1千円 桐生市の生活保護対応に改善要請★
 ケースワーカーや有識者らで作る団体「生活保護情報グループ」から厚生労働省に開示請求した資料の提供を受けたほか、県や市の資料をもとに、データを分析した。
 それらによると、桐生市の受給者は2011年度には1163人いたが、10年後の21年度には594人、22年度は547人とおよそ半減した。今年10月末時点では527人だった。
 人口1千人あたりの受給者数を示す「保護率」で見ると、桐生市は11年度が9・7人だったが、22年度は5・3人まで減っていた。22年度の保護率は、県内で人口の多い6市(高崎、前橋、太田、伊勢崎、桐生、館林)の中で最も低かった。この期間で高崎や前橋などの数値が上がるなか、桐生は最も数値が下がっていた。22年度の全国平均(22年12月時点)は、16・2人だった。

■そして、とうとう虚偽公文書作成に該当しかねない事態も明らかになりました。

*********東京新聞2023年12月19日 06時00分
前代未聞、受給者の認め印1944本 職員が預かり勝手に押印 生活保護不適切支給の桐生市

群馬県桐生市が生活保護受給者から預かっていた認め印の一部=18日、桐生市役所で(一部画像加工)© 東京新聞 提供
 生活保護費の全額を支払わず、1日1000円の日割りや1週間1万円の週割りにするなどの不適切な支給が発覚した群馬県桐生市で、福祉課が受給者の認め印を預かり、職員が書類への押印に使っていたことが分かった。18日の荒木恵司市長の定例記者会見で市側が明らかにした。
◆長年の慣行か、説明も預かり証もなし
 書類への押印は本来、受給者が自らで行う必要があるが、福祉課では1944本の認め印を預かり、2018年度から今年11月末にかけ、86世帯分の受領証などへの押印に使っていた。このうち少なくとも1件は受給者に無断で押印していた。預かっていた認め印の本数は、11月末時点での市の生活保護受給者(527人)数を上回る。
 小山貴之福祉課長は「来所がしにくいなどさまざまな事情で預かったと考えられるが、不正が行える余地を残す。正しい運用とは言えなかった」と説明し、今後は使用しないとした。認め印は生活保護の開始時に預かっていたといい「いつごろから実施しているかはっきりしない。現在は、新たには預かっていない」と述べた。課内で長年の慣行だった可能性があり、受給者に対しては具体的な説明をせず、預かり証も作っていなかった。
◆分割支給も新たに4件判明
 また、市は22、23年度に計10件の分割支給があったと市議会に報告したが、18年度分以降の調査で21年度以降にさらに4件の分割支給が判明し、計14件に上ったことを明らかにした。17年度以前の資料は、保存期限を過ぎているため存在しないとした。
 荒木市長は会見で「受給者と市民の皆さまに深くおわびします」と謝罪し、実態調査と原因究明のため、内部の調査チームを年内、第三者委員会を来年1月中にそれぞれ立ち上げる方針を表明した。(小松田健一)
  ◇
◆「市には自浄作用を期待できない」
桜井啓太・立命館大准教授(社会福祉学)の話 1000本を大きく超える印鑑を保管していたのは聞いたことがない。本当に本人へお金が渡ったのかを確認できないので、行政組織の信頼性にかかわる問題だ。前例踏襲で思考停止に陥っていたのではないか。市には自浄作用を期待できないので、法や生活保護の実務に精通したメンバーによる第三者委員会で徹底的な究明が必要だ。

**********朝日新聞デジタル2023年12月19日
生活保護受給者の印鑑1944本保管、無断で押印も 群馬県桐生市

桐生市が生活保護受給者から預かっていたという印鑑の一部(画像の一部を加工しています)=2023年12月18日午後4時46分、群馬県桐生市役所、柳沼広幸撮影© 朝日新聞社
 生活保護費を1日1千円に分割して支給をしていた群馬県桐生市は18日、生活保護を担当する保護係に1944本の印鑑が保管されていたと明らかにした。市によると、受給者から預かり、代わりに押印するためのものだったとみられる。また2018年度以降で、職員が受給者の書類に同姓の別人の印鑑を押した例が、少なくとも86世帯分であったことも発表した。
図表|群馬・桐生の生活保護、10年で受給者半減 際立つ取り下げ・却下率
 会見での市の説明によると、受給者が高齢などの理由で来庁が難しい場合、以前は市が印鑑を預かって代わりに押す運用がされていた。いつから行われていたかは不明だが、11年にはすでに印鑑があったという。
 近年は新たに預かることはなかったが、保管されている同姓の印鑑を押すことがあった。受給者に無断の場合がほとんどだという。分割支給の時の受領簿や、受給者が保護費を多く受け取っていて返還する場合の書類などに使われていた。

**********群馬テレビ2023年12月19日
桐生市の生活保護費分割支給 群馬司法書士会など4団体が共同声明

桐生市の生活保護費分割支給 群馬司法書士会など4団体が共同声明© 群馬テレビ
 群馬県桐生市が生活保護費を分割で払うなどしていた問題で、群馬司法書士会など4団体は、共同声明を発表しました。
 桐生市が市内在住の50代男性に対し、生活保護費をまとめて支給せず1日1000円ずつ分割して支給していたなどとした問題を受け、群馬司法書士会、県社会福祉士会、県精神保健福祉士会、群馬弁護士会の4団体が共同で声明を発表しました。
 共同声明は、生存権を守り適法に生活保護を実施することを求めるもので、分割支給などの事実関係の把握、原因究明、そして人権に配慮した行政運営を行うよう求めました。
 一方、桐生市側も会見を開き、荒木市長は冒頭で謝罪しました。 市によりますと、2018年度までさかのぼって882世帯の点検を行ったところ、合わせて14世帯で生活保護費を分割で支給していたということです。このうち11世帯で残金を翌月に繰り越し、残金を市の金庫で預かっていました。
 この他、市の担当者の誤った認識による事務処理で支給決定が遅延したケースが2世帯。福祉課内で複数の認印を保管し、本人への詳しい説明なしに押印したケースが86件あったということです。
 市では今後、保健福祉部以外の職員による内部調査を実施する他、1月に第三者委員会を設置し、問題点を検証し改善していくということです。

**********東京新聞2023年12月20日 10時54分
受給者の認め印預かりはいつから?「言えないぐらい前から…」 桐生市の生活保護問題

↑群馬県桐生市が生活保護受給者から預かっていた認め印の一部=18日、桐生市役所で(一部画像加工)↑
 群馬県桐生市が生活保護受給者から認め印を預かっていた問題を巡り、市の助川直樹保健福祉部長は19日、自身が福祉課係長だった2011年には既に預かった印があったことを明らかにした。市議会教育民生委員会で、渡辺恒(ひとし)議員(共産)への答弁で明かした。
 受給者に一部無断で書類に押印したことも分かっているが、助川部長は「他人の印鑑を使わないようにやってきた」と自身が無断押印したことはないとした。小山貴之福祉課長は「かなり古い印鑑もあり、いつからか言えないぐらい前から行われていた」と述べ、現時点で開始時期の解明は困難との認識を示した。
 渡辺議員は、福祉課職員が窓口で申請希望者や受給者らに大声を出すなど高圧的な対応をしているといった声があると指摘し、改善を求めた。
 助川部長は「大声を出す人に落ち着いてもらうため、こちらも声が大きくなったことはあったかもしれない」と答弁し、高圧的対応は否定した。(小松田健一)

**********上毛新聞2023年12月21日
「あってはならない」 桐生市の生活保護費問題で群馬・山本知事
 群馬県桐生市が、生活保護受給者の印鑑1944本を保管し、別人の書類に勝手に押印するなどしていた問題で、群馬県の山本一太知事は21日の定例記者会見で「あってはならないことだ」と述べた。
 山本知事は「県は(桐生市を)監査している立場でもあり、他人ごとではない。襟を正していかなければいけない」とした。その上で「誤りをしっかり明らかにし、いかに改善していくかが大事だ。(事案は)想定外の話だが、県としてどんなことができるか考えたい」とも述べた。
 桐生市の会見によると、記録が残る過去5年余りで14世帯17人に生活保護費を分割支給し、このうち11世帯14人には月ごとに決められた保護費を満額支払わず、計約67万円分が不支給だった。市が受給者の印鑑1944本を保管し、職員が別人の書類に勝手に押印するケースが86件あった。
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■一太知事は「あってはならない」と述べていますが、群馬県が「職員の懲戒処分の指針」に、刑事訴訟法239条第2項「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」の定めを追記すれば、済むことです。なぜなら、桐生市をはじめ県内各自治体もそれぞれの職員懲戒処分指針を県にならって運用しているからです。

 しかし、群馬県が職員の違法行為について、警察に告発や告訴、あるいは被害届を提出しようとしないため、県を見習っている群馬県内の各自治体の職員の違法不当行為はいつになっても収まる気配すら見られないのです。

**********東京新聞2023年12月23日13:26
「預けてもいない印鑑、無断で押された」受給者の女性が訴え 桐生市生活保護問題 市は当初虚偽説明
 生活保護受給者から1944本もの印鑑を預かっていたことが発覚した群馬県桐生市で、市職員が60代外国籍女性の書類に同姓の他人の印鑑を無断で押印していたことが分かった。
 女性は2022年1月に日本人の夫が病死後、同居親族から暴力や嫌がらせを受け、知的障害がある40代長男とともに桐生市内のアパートへ避難し、生活保護を申請。保護開始決定後、福祉課内部で作成された書類の受領印に印鑑が押されていた。

群馬県桐生市が生活保護受給者から預かっていた認め印の一部=18日、桐生市役所で(一部画像加工)
 女性は「印鑑は押しておらず、預けてもいない」と指摘したが、福祉課の担当者は「預かった印鑑を押した」と主張した。しかし、認め印のスタンプ型印鑑はスタンプが摩耗し、姓の印影を判別できない状態で、女性は「押された印鑑が自分のものではないことは明白だった」と話す。
★生活保護受給者に謝罪★
 市は20日、女性に無断押印と虚偽の説明を謝罪した。小山貴之福祉課長は本紙の取材に、担当者が当初、事実と異なる説明をした理由を「押印で不適切な取り扱いをしたので、指摘を受けて気が動転してしまったようだ」とした。
 女性を支援する上村昌平弁護士は、桐生市の対応を「現場で勝手な運用をして、必要な人へ迅速に保護を実施するという法の趣旨が実現できなくなっている」と批判した。(小松田健一)

**********東京新聞2023年12月30日06:00
「一種の経済的虐待」…第三者に生活保護費を管理させる契約を桐生市が受給者に押し付け 不適切支給問題
 不適切な生活保護費の支給が問題となっている群馬県桐生市が、20代の男性受給者に市との委託契約関係がない県内の民間団体を紹介し、保護費の管理を委ねるよう勧めていたことが分かった。男性と契約した団体は通帳と銀行印を預かり、保護費全額を渡さず、一部だけを月2回男性が自由に使える口座に振り込んでいた。専門家は「保護費を公的団体ではなく、権限がない第三者が預かる運用は通常あり得ない」と指摘する。(小松田健一)
◆月7万円のはずが2週間に1回、1万4000円だけ

男性の生活保護費振り込み口座の通帳。昨年12月末の残高は3円だ(画像一部加工処理)
 この団体は太田市の一般社団法人「日本福祉サポート」。ホームページでは主な事業に、高齢者の身元保証、財産管理や終活の支援、葬祭などを掲げる。
 男性は高校卒業後に勤めた職場で精神的に不調となり、2021年11月から月約7万円の生活保護費を受給。2週間に1回、現金で1万4000円の支給が条件とされ、残りは市が現金のまま保管した。市の担当者は「母親が以前生活保護を受給していたため」と説明したという。
◆団体が男性の通帳・銀行印を預かる
 22年12月には、市の担当者から、団体による財産管理と身元引き受けの契約を勧められた。契約に際し、市から保護費の受給先とする新たな口座を作るよう指示され、団体が保護費から月2回1万4000円を振り込む別の口座のキャッシュカードだけ渡された。通帳と銀行印は団体が預かった。
 男性の母親から相談を受けた仲道宗弘司法書士が、今月22日に団体から通帳と銀行印を返却させた。保護費の受給先の口座には、約19万円が残っていた。
◆団体は「独自の判断で管理することはない」
 小山貴之・桐生市福祉課長は、団体と市の契約関係はないとした上で「金銭管理が必要と考えられる方などを対象に、選択肢の一つとして同団体のほかNPO法人、社会福祉協議会を紹介している」と答えた。
 日本福祉サポートは本紙の取材に、桐生市から委託料などは受け取っていないと回答。「依頼者からの依頼に基づいて管理を実施しており、自治体や当法人独自の判断で実施することはない」とコメントした。
◆受給者男性「自分からは依頼していない」
 男性は取材に、仲道氏を通じ「自分から依頼はしていない」と否定。仲道氏は「受給者の立場では、市から勧められて断るのは難しい。満額支給しなかった上に、精神面で専門家の支援が必要な男性を専門的知見がない民間団体へ実質的に丸投げしたのは、一種の経済的虐待だ」と批判する。
 群馬県地域福祉推進室は「受給者へ丁寧に説明して理解と納得を得る必要はあるが、民間団体に財産管理を委ねること自体は不適切とは言えない」とした。
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◆第三者に任せると搾取される恐れ
京都市役所で生活保護業務の従事経験がある吉永純・花園大教授(公的扶助論)の話 金銭管理を任意の第三者に任せると搾取(ピンハネ)等の危険があり、基本的には成年後見や社会福祉協議会が行う日常生活自立支援事業など公的な規制の下に置かれなければならない。生活保護費は保護利用者の最低限の生活費であり、本件でもその団体が毎日1000円相当の保護費しか利用者に渡さない権限などあるはずがない。桐生市はその団体に保護費の管理を任すよう、生活保護利用者を事実上誘導していたと言われても仕方がなく、違法の疑いが強いと言わざるを得ない。

**********東京新聞2024年1月11日08:00
桐生市が一転、生活保護情報を公式ホームページに掲載 「ためらわずにご相談ください」消極姿勢を転換
 生活保護費を満額支給せず1日1000円に分割したり、支給開始が大幅に遅延したりするなど不適切な取り扱いが相次いで明らかになった群馬県桐生市は、公式ホームページに生活保護制度について広報するページを新たに設けた。
 「生活保護を受けることは国民の権利です」として、憲法25条で保障された生存権を根拠とする制度であることを紹介。「生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」と呼びかけている。

桐生市がホームページに掲載した生活保護制度の広報
 その上で、制度の利用に当たっては現金や預貯金など所有資産を活用することや、働ける能力がある人は働くなどの条件を記載。基本的には厚生労働省が実施している広報の内容に沿っている。5日から始めた。
 生活保護制度については、国民の権利であることをホームページで広報するよう求める意見が市議会から出ていた。しかし、市側は「生活保護の制度自体を全面的にホームページで表してご理解いただくというのは非常に難しいと思っている」(2021年9月2日、決算特別委員会での助川直樹保健福祉部長=現・総務部参事=の答弁)と、これまで消極的な姿勢だった。(小松田健一)

**********東京新聞2024年2月1日
生活保護費 不適切運用問題 これまでの説明繰り返す 桐生市、生活困窮者支援団体と面会

生活保護制度の不適切な運用をめぐる問題について、県社会保障推進協議会のメンバーら(右側)と面会する桐生市の担当職員ら=同市役所で© 東京新聞 提供
 生活保護費を満額支給せず「1日千円」に分割するなど、制度の不適切な運用が明らかになった群馬県桐生市と、生活困窮者の支援団体などでつくる県社会保障推進協議会が31日、同市役所で面会した。協議会側は、これまで受給者から寄せられた相談内容や、報道されている事例について市側の見解をただした。
 市からは小山貴之福祉課長ら担当職員4人、協議会からは「反貧困ネットワークぐんま」代表の仲道宗弘司法書士ら5人が出席。協議会は市に対し、具体的な原因分析と改善策の提示、福祉課への外部調査実施などを要請した。
 協議会からの質問の多くに、市側は「具体的に把握していない」などと明言しなかったり、これまでの説明を繰り返したりした。一方、書類保存期間の5年を過ぎた事例も調査を行うとした。
 一般社団法人「日本福祉サポート」(太田市)が受給者と金銭管理契約を結び、保護費振込口座の通帳を預かり、満額を本人へ渡さなかった問題については、桐生市がNPO法人や市社会福祉協議会も受給者の金銭管理を請け負っていることを明らかにした。
 また、桐生市は31日、問題の検証と再発防止策の検討を行うための第三者委員会の設置要綱を公表した。委員は弁護士、社会福祉士、学識経験者、行政経験者の4人とし、人選を進めて本年度内のなるべく早い時期に初会合開催を目指すという。(小松田健一)

**********東京新聞2024年2月7日08:11
桐生市 生活保護不適切運用を検証 第三者委、今月初会合目指す
 群馬県桐生市は6日、生活保護制度の不適切な運用についての検証と、再発防止策を検討するための第三者委員会について、2月中の初会合を目指していると明らかにした。会合は原則として公開するとした。
 市は1月31日、委員会の運営などについて規定した要綱を制定し、委員は弁護士、社会福祉士、学識経験者、行政経験者の4人とした。これを踏まえ、群馬弁護士会や県社会福祉士会などに委員の推薦を依頼したという。
 第三者委員会に先立って設置した市内部調査チームは、生活保護を担当する福祉課から関係書類の提出を受けており、今後は職員への聞き取りを行う。第三者委員会も必要に応じ、書類の調査や職員への聞き取りを実施する。内部調査チーム責任者の森山享大(たかひろ)副市長は「いずれの調査にも、職員にしっかり協力してもらう」と述べた。(小松田健一)
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■こうしてようやく桐生市は第三者委員会を立ち上げましたが、いまだに生活保護制度の不適切な運用にかかわった職員の氏名すら公表していません。このまま警察に被害届や告発状を出さずに済まそうという魂胆がミエミエです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】


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