市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

「東邦亜鉛が本業の亜鉛精錬から撤退!」で揺れ動く安中製錬所の周辺農地の土壌汚染対策はどうなるの?

2024-12-20 23:29:20 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題

空から俯瞰した東邦亜鉛安中製錬所の様子

■12月19日の午後1時49分に地元のかたから、「東邦亜鉛の安中製錬所が亜鉛精錬から撤退するという情報を知り合いから聞いた」と筆者に電話がありました。さっそくネットで検索してみると、次の記事が見つかりました。

**********MIRU(Metal Information Resources Universe) 2024年12月18日18:59
東邦亜鉛 24年度末までに亜鉛製錬から撤退 二次亜鉛原料などに注力――阪和と業務提携
 東邦亜鉛が安中製錬所(群馬県安中市)の亜鉛製錬の一部ラインを2024年度末までに停止、環境ダストリサイクルの熔融設備に切り替える計画であることが18日わかった。小名浜製錬所の亜鉛焙炒炉と付随する硫酸工程も停止する。同日の発表資料などで、その方針を示した。亜鉛事業を対象に最大160人の希望退職も募る。また、同日には阪和興業と国内外における鉛・銀製品の拡販、鉱石・リサイクル原料の供給などで業務提携することも発表しており、一連の対策で事業再生を目指す。
 安中製錬所の亜鉛製錬の一部ラインの変更は、「事業再生計画および第三者割当増資の概要」などで示した。亜鉛製錬事業の今後の活動方針として、24年度末までに主要亜鉛精錬設備を停止すると明記。27年度以降、環境ダストリサイクル熔融設備の新設による二次亜鉛原料販売と貴金属回収を計画として、新たな方向性を示している。25‐26年度の2年間で溶融設備などの導入を進める。35億円を投資するという。
 小名浜製錬所については、亜鉛焙炒炉と付随する硫酸工程も停止する一方、既設の硫酸タンクを利用した濃硫酸の購入販売と薄硫酸の製造販売を継続、また24年10月に開始した新規事業であるLIBリサイクル事業に注力する。
 同日発表の阪和興業との業務提携は、①国内外における鉛・銀製品の拡販、鉱石およびリサイクル原料の供給、②製品および原料の相場価格変動のリスク低減の支援または価格ヘッジにかかわる負担の軽減――が柱になるとしている。
 事業面での支援を阪和興業から受けながら、アドバンテッジパートナーズ(AP)、辰巳商会に第三者割当増資を実施、75億円の資金を調達することで、事業再生を目指す。
 24年3月期の決算(連結)は、売上高が前の期比10.3%減の1308億300万円、純損失は464億5200万円だった。25年3月期の連結最終損益は54億円の赤字予想となっている。
(IRuniverse G・Mochizuki)

**********日本経済新聞2024年12月18日 18:53
東邦亜鉛、第三者割当増資で75億円調達 経営建て直しへ
 東邦亜鉛は18日、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP、東京・港)などを引受先とした第三者割当増資で、計75億円を調達すると発表した。市況変動や高コストな鉱山運営で財務体質が悪化している。増資で財務基盤を改善するほか資源事業の撤退など不採算事業の整理や希望退職にも取り組み、経営の建て直しをめざす。
 2025年2月に開く臨時株主総会の承認を得た上で第三者割当増資を実施する。APに加えて、運送業の辰巳商会(大阪市)からも5億円の出資を受ける。同時に阪和興業とも業務提携し、製品や鉱石の調達と販売面での強化をめざす。今後は鉛・銀の製錬を軸として、リサイクル事業を拡大していく。
 不採算事業の整理では25年3月期までに群馬県安中市の製錬所などの設備を停止する。オーストラリアに3カ所持つ亜鉛や鉛鉱山のうち2カ所を直近で売却しており、残る1カ所も早期に処分する。希望退職は亜鉛製錬の設備停止に伴い募集する。募集は25年2月から募り最大160人を見込む。
 同日、25年3月期の連結最終損益が54億円の赤字(前期は464億円の赤字)になる見通しだと発表した。売上高は前期比11%減の1162億円、営業損益は32億円の黒字(前期は6億9000万円の赤字)を見込む。

**********上毛新聞2024年12月19日06:00
東邦亜鉛 安中製錬所(群馬・安中市)の製錬設備停止へ 希望退職者募集、配置転換も

東邦亜鉛安中精練所=2021年
 東邦亜鉛(東京都港区)は18日、事業再生計画を発表し、2025年3月末までに亜鉛製錬事業の主力工場、群馬県の安中製錬所(安中市)の主要設備を停止することを明らかにした。設備停止に伴い希望退職者の募集や配置転換を行う。同製錬所では27年4月以降、亜鉛をリサイクルする新事業を計画しており、事業再編に乗り出す。

**********毎日新聞2024年12月19日
東邦亜鉛、創業地・群馬の製錬設備停止へ 25年3月末、事業再編

夜景で知られる東邦亜鉛安中製錬所=群馬県安中市中宿で2012年10月2日午後7時46分、角田直哉撮影
 東邦亜鉛(本社・東京都)は18日、事業再生計画を発表し、2025年3月末までに亜鉛製錬事業の主力工場である安中製錬所(群馬県安中市)の主要設備を停止することを明らかにした。同社の亜鉛製錬事業に従事する従業員については、今後、希望退職者の募集や配置転換を行うとしている。【庄司哲也】
 安中製錬所は、1937(昭和12)年に設立され、同社の創業地でもある。JR安中駅の裏手にある小高い山の斜面をはうように広がる製錬所は、夜景で有名なスポットになっている。現在約230人の従業員が在籍する。
 計画によると、亜鉛製錬事業は市況変動が大きく価格転嫁が困難な事業環境であるのに加え、近年の電力料金やエネルギー価格の高止まり、亜鉛鉱石の市況悪化で高コストの事業となっていた。また、これをカバーするため進出していたオーストラリアの3カ所の鉱山事業は操業不調で、大きな損失が出ていた。
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■上記のとおり、今年度末を目途に安中製錬所での亜鉛精錬事業を停止し、その後、鉄鋼ダストなどから亜鉛などを回収するリサイクル事業に転換するための設備投資をして2027年度から新事業を開始する方針であることがわかります。

 この報道に接し、現在筆者の住む安中市野殿地区では、カドミウム公害問題の原因者である東邦亜鉛安中製錬所から排出されて長年に亘り周辺部に降り注いでいる重金属を含む降下煤塵に起因する土壌汚染の解消のため、30年前から計画推進中の公害防除特別土地改良事業(公特事業)に対して、どのような影響があるのか、地元として大きな衝撃が走っています。

 東邦亜鉛安中製錬所を巡るカドミウム公害に長年取り組んできた安中緑の大地を守る会(前身は安中公害訴訟原告団)の事務局によると、今年の新春に東邦亜鉛(株)本社で執り行われた新春賀詞交換会に出席した安中市の岩井均市長に対して、同社トップから「将来的に安中事業所でリサイクル事業を計画している」との説明が有ったということで、さっそく市長のFace Bookをチェックしました。

**********岩井均Face Book 2024年1月12日(抜粋)
都内で開かれた【信越化学工業(株)新年賀詞交歓会】に参加し、斉藤社長や上野専務、群馬事業所の佐藤所長や土居事務部長等と懇談しました。
群馬では「西の信越、東のSUBARU」と言われる位、売上高や利益がある超優良企業であり、安中市の雇用や税収、地域活動等で大きく貢献して頂いています。
その後、東邦亜鉛(株)に伺い、伊藤社長等と懇談しました。安中製錬所は今後、リサイクルに力を入れていくとのこと。SDGsを推進する企業として素晴らしい取組だと思います。
本市として両社は、東京に本社がある2大上場企業です。今後も企業と市が連携協力し、本市の発展を図りたいと存じます。

(当会注:左から岩井均・安中市長、今井力・東邦亜鉛取締役(監査等委員)、伊藤正人・東邦亜鉛代表取締役社長、大久保浩・東邦亜鉛常務執行役員総務本部長)

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 また、今年4月6日に開催された同社安中製錬所の工場視察会でも、筆者の質問に対して、会社側から「スラグ置場を空っぽにしているのは、新事業の立ち上げを想定している」という趣旨の説明がありました。ところが、新事業についての具体的な説明を参加者から求められても、会社側の司会者は「現時点では未定で、自分自身も知らないし承知していない」の一点張りでした。
○2024年4月14日:三分咲きのサクラの中で開催された東邦亜鉛安中製錬所第33回工場視察会の一部始終(後編

 ということは、今年の始めには同社の上層部として、苦境を打開するための方策として、事業転換については既に相当な議論を交わしていて、「環境リサイクル事業に舵を切る」方針が決まっていたものとみられます。

 前述の通り、同社の2024年3月期の決算(連結)は、売上高が前期比10.3%減の1308億300万円、純損失は464億5200万円であり、今回12月18日公表の2025年3月期の連結最終損益予想は売上高が前期比11%減の1162億円、営業損益は32億円の黒字(前期は6億9000万円の赤字)を見込むものの、連結最終損益は54億円の赤字(前期は464億円の赤字)としています。

 東邦亜鉛の財務履歴を見ると、財務基盤の指標となる自己資本比率が昨年末から急落しており、一時2.8%を記録したあと、現在も6.4%と低迷しています。


 通常、自己資本比率が50%以上の場合は、一般的に優良企業という評価がされています。また、自己資本比率が20%~49%の場合は、標準的な資金力であると言えます。一般に、自己資本比率が40%以上あれば財務は比較的安定していると考えられ、倒産リスクは低いと判断されることが多いようです。

 そして自己資本比率が19%以下の場合は、資金力が低い状態とみなされます。すぐに経営状態が悪化するとは言い切れないものの、業種や事業内容によっては負債総額が資産総額を上回る「債務超過」のリスクも考えられます。

 東邦亜鉛の場合は、自己資本比率が一時、一桁台の2.8%まで落ち込んだだめ、債務超過のリスクが現実的となったことから、支援してくれる相手を必死で見つけ出す必要があったわけです。なぜなら、自己資本比率がマイナスの場合はすでに債務超過の状態になるため、全資産を売却しても負債を返済することはできなくなるからです。

■今回、環境リサイクル事業に活路を見出す方針を打ち出した東邦亜鉛ですが、種々の金属、そしてLIB(リチウムイオン電池)や太陽光パネルのリサイクル事業は、既存および新規参入企業も多いように見受けられます。そのため、一にも二にも技術的なアドバンテージを持ち合わせているかが、事業転換の成否のカギを握ります。

 このため、同社が記者発表したような筋書き通りに行くかどうか、いずれにしても、今後2、3年はイバラの道が待ち受けているのではないかと危惧されます。

 同社のHPに掲載されている公表資料や、増資に応じたアドバンテッジパートナーズ(AP)社のHPの記事などから、東邦亜鉛の取締役9名のうち、過半数の5名が70億円と引き換えに第三者割当増資を受けるAP社からの派遣者が占めることとなるようです。AP社の増資分70億円のうち30億円が優先株式となることから、実質的に東邦亜鉛はAP社に身売りしたようなかたちです。既存の株主がこの増資を受け入れるかどうかは来年2月27日の臨時株主総会次第ということで、まだまだ東邦亜鉛の動向から目が離せません。

 資本金146億円(来年2月に75億円増資予定)の東邦亜鉛の株価は本日の時点で542円とあり、年初来の安値でストップ安となっていますが、AP社への優先株式は1株1000円で300万株あり、劣後株式は1株256.6円で1754万株と乱発しており、これでは投資家の間で嫌気がさすのも無理有りません。

 今年4月の東邦亜鉛安中製錬所における工場視察会後の質疑応答で、会社側から「スラグ置場を新事業の為空っぽにする」という説明がありましたが、これは鉄鋼ダストや各種メタルダストなど、都市鉱山的な産業廃棄物を原料としてストックするためであることが、今回の同社の記者発表で裏付けられたことになりました。

 また、安中製錬所では電解工程を廃止し、環境ダストリサイクル熔融設備を導入し、これまでの電解工程で生じた残差をロータリーキルンに投入して蒸し焼きにして粗酸化亜鉛を回収したプロセスではなく、高温の溶融炉で、各種業界工程から発生する環境ダストを溶かし、亜鉛や鉛を揮発させて酸化亜鉛や酸化鉛で回収するプロセスに変えるようです。

 そうすると、公害防止設備もそれに対応したものにする必要があると思いますが、どこまで降下ばいじんが減らせるのか、注目したいと思います。

 資本構成が大幅に変動するため、地元の公特事業に対する東邦亜鉛の姿勢がどのように変わるのか否か、来春4月上旬に実施予定の安中製錬所工場視察会で、会社側がどういう対応や説明をするのか、大変関心が持たれます。

■また、来年度と再来年度は、安中製錬所における亜鉛精錬事業がストップするわけで、同社の売上高が相当量落ち込むことは必至で、この間、基盤・成長事業として東邦亜鉛が期待する「鉛、環境リサイクル、電子部品、電解鉄」が思惑通り年間40億円以上の利益を生み続け、その他の事業で損失が出ないかどうか、綱渡りだと思います。安中製錬所もリストラの嵐が吹き荒れるのでしょうが、そうなると公特事業の推進についても、東邦亜鉛は政治力を使い、されにあれこれ先送りするための圧力を行政に加えるのではないか、と懸念されるところです。

 引き続き、今後の同社の動静について、公特事業推進委員会の会長を仰せつかっている筆者として、重大な関心を向けてゆく所存です。

【市民オンブズマン事務局からの報告】

※参考情報
**********2024年12月19日15:00
群馬県「情報収集進める」――東邦亜鉛の亜鉛製錬事業撤退による安中製錬所一部停止で
 2024年度末をめどに亜鉛製錬事業からの撤退を表明した東邦亜鉛の事業再生の動きを受けて、主要拠点である安中製錬所がある群馬県では情報収集を急いでいる。県の担当課では「昨日の今日で新聞報道以上の情報は手元にまだない。安中製錬所とは19日朝も連絡をとったが、会社から直接話を聞く機会も今後出てくると思う」と、事態の推移を注視している。

**********レイルラボ2024年12月20日17:02更新22:53
“安中貨物”廃止へ…東邦亜鉛、2024年度末に亜鉛製錬事業を停止

EH500形 2018年03月03日撮影©レイルラボ FM-805Dさん
 大手非鉄金属メーカーの東邦亜鉛(とうほうあえん)は、2024年12月18日付けで事業再生計画の事業支援を目的とした阪和興業との業務提携契約を締結したと発表しました。
 同社は、不採算事業からの撤退・再編計画として、2024年度末までに主要亜鉛製錬設備を停止するとのこと。このためJR信越線 安中駅近くの安中精錬所(群馬県)なども閉鎖されるとみられ、鉱石を運搬する貨物列車輸送「通称:安中貨物」が終焉を迎えることとなりそうです。
 安中貨物は、東邦亜鉛が福島・小名浜製錬所から群馬・安中製錬所へ焼鉱を輸送するために、福島臨海鉄道から常磐線・高崎線・信越線等を経由して運転されている貨物列車。同社は1969(昭和44)年から、専用タンク貨物列車「東邦号」の運行を開始。現在はJR貨物EH500形電気機関車が、トキ25000形貨車やタキ1200形を牽引しています。

トキ25000形 2018年03月03日撮影©レイルラボ FM-805Dさん

タキ1200形 2024年08月11日撮影©レイルラボ Tsurugi2999さん

**********上毛新聞2024年12月20日06:00
「群馬を代表する工場」「停止は残念」…東邦亜鉛の安中製錬所設備停止で

東邦亜鉛安中製錬所(2012年撮影)。夜景の名所としても知られている
 東邦亜鉛(東京都港区)の亜鉛製錬事業の主力工場である安中製錬所(群馬県安中市)の主要設備停止の発表から一夜明けた19日、地元関係者から「残念だ」との声が広がった。
 県商工会議所連合会の金子昌彦会長(68)は「安中というより県内を代表する工場だったので残念だ」と述べた。
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三分咲きのサクラの中で開催された東邦亜鉛安中製錬所第33回工場視察会の一部始終(後編)

2024-04-14 19:11:54 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題


■毎年恒例の東邦亜鉛安中製錬所の第33回工場視察会は、現場視察を終えて、参加者は午前10時55分までに、事務棟前に戻りました。





 その後、事務棟2階の会議室に全員が集まり、しばし、休息した後、午前11時から意見情報交換会が始まりました。当会からは、予め用意した東邦亜鉛安中製錬所から排出される降下煤塵を群馬県環境保全課が月例で測定したデータをまとめた資料を、会社側も含めて参加者25名全員に配布しました。





司会:ご視察大変ご苦労様でございました。本日のスケジュールによりますと、この後、11時から10分間、休憩というふうに記載があるんですが、(大地を守る会事務局長の)白石さんに相談いただいて「このまま続ける」ということでお話をいただきましたので、再開をさせていただきたいと思います。本日のこの工場視察会につきましては、終了予定を12時ということで、用意しておりますので、ご協力のほう、よろしくお願い申し上げます。では、意見情報交換会のほうを進めさせていただきたいと思います。意見情報交換会で会社側の司会を引き続き務めさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。それでは、令和5年度の経過と、令和6年度の設備改善計画につきまして、所長の森田よりご報告をさせていただきます。

所長:まずは工場視察、大変ご苦労様でございました。それでは令和5年度の設備改善経過と、令和6年度の改善計画の内容につきまして、ご説明させていただきます。まず、2023年度、令和5年度でございますが、大きな工事案件としては、一番目に、キルンの修理、函体ですね、の第2支点、全部で3つ支点がございましてその第2支点の受けローラーの製作、それから第2支点の受けローラーの、こちらは交換を行いました。これはすべて夏の定修期間中でございます。で、2番目としましては、電解工場、電解工程の第3電解、アノードクリーナーというのがございまして、まあ、陽極板のアノードでございますけど、それを工場の中で、ある一定の時間が経過しましたら、抜いてですね、これをクリーニングするという工程がございます。ここの設備を、以前は1台で全部、2系列を賄っていたのですが、それを1台ずつにしたということで、一つクリーナーを増設してラインのほうに設置しました、ということでございます。で、3番目としましては、第1集水池の西側の、まあ、集水地のですね。だいぶ古くなってきておりまので、これをきれいにコンクリート替えをしまして、補強工事を行った。これは大きな工事の内容でありまして、昨年ご報告いたしました計画はすべて実行して完工しております。続きまして、24年度、今年でございますが、大きな工事としましては、同じく1番目として、キルン工程の第2エプロン・コンベアの交換工事ということで、キルンから排出されますK砕を高いところまで持ち運ぶコンベアでありまして、これがだいぶ老朽化しておりますので、これを新しくするという工事。これが一つでございます。2番目としましては、共沈脱鉄、No.3の撹拌機の交換です。共沈脱鉄というのは、いわゆるキルンで回収されました酸化亜鉛を溶解するんですが、どうしても鉄の成分があるということで、それを落とす工程でございまして、そこの酸化亜鉛槽の撹拌機が老朽化しましたので、その為交換するということでございます。
(当会注:「共沈脱鉄」とは、工業排水から重金属を除去する際の、鉄の水酸化物による共同沈殿法のことと思われます。工業排水に硫酸鉄(FeSO4)を入れて、水中に多量のFe2+を溶存させて、これにアンモニア水や水酸化ナトリウムを添加してアルカリ性に保ってやれば、FeO(OH)のコロイドができます。このとき、溶存する微量な金属元素も水酸化物や酸化物の難溶性の超微粒子を形成します。多量のFeO(OH)コロイドは、他元素の水酸化物微粒子を巻き込んで沈殿〔共同沈殿=共沈〕します。この沈殿を回収すれば、工業排水から重金属を効率的に除去することができる、ということのようです)
3番目としましては、第3の集水池、一番東側のですね、浄水工程、その西側の集水池、これもだいぶ老朽化しているということで、コンクリートを打ち直しまして補強工事を行うということで、これらもすべて昨年同様、夏期定修、7月、8月の期間に、工事を完工するという計画で進めております。その他、持続可能な亜鉛製錬所として鋭意改良を進めておりまして、製錬所内設備も休止設備も撤去を進めて、空地づくりのほう、現在展開しております。一方、公害防止設備をはじめ各設備は計画的に更新して日々公害防止に努めております。これからも地元の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いしたいと申し上げます。まあ、以上でございますが、引き続きましては、中島のほうから懸案事項等、ご説明を進めさせていただきたいというふうに思っています。よろしくお願いします。

司会:続きまして、環境問題等、懸案事項に関して、課題につきまして、環境管理室の中島、私のほうから報告をさせていただきます。最初にですね、公特事業の進捗につきまして、ご報告を申し上げます。岩井畑地区の碓氷川流域農用地土壌汚染対策事業。こちらでございますけれども、ご承知のとおり、令和5年の3月で完了をしたということでございます。令和5年から7年にかけて指定地解除をすべく、解除前の試験を実施するということになっているということで、県のほうに確認をしました。県に確認をしたところ、令和5年、昨年ですね、につきましては3箇所で陸稲を栽培したということでございました。その結果なんですけれども、県に問い合わせをしたんですが、「現在、効果を確認中」ということで、まだ、報告がいただけておりません。今日視察会ということでしたので、「できれば3月中に」というお願いをしていたのですが、すいません、残念ながら、まだ報告をいただけていないという状況でございます。野殿地区の公特事業ですけれども、こちら令和6年度、今年度ですね。境界確認を完了していく、という予定であるというふうにお伺いをしております。以上が、公特事業に関する実施状況、情報等でございます。今後も県と市ですね、情報交換をしながら進めていきたい、というふうに考えております。こちらについては皆様のほうが情報をお持ちかなというふうに思いますので、情報共有等できればと思います。次に、令和5年度産米のカドミウムについてですが、令和5年度産米のカドミウム濃度の調査結果につきましては、安中市で行った検査結果については「特に問題ない」ということでご報告いただきました。また高崎市の検査結果についても「異常なし」ということでご報告を頂いております。以上が、会社が把握しています令和5年度の情報等でございます。詳細部分につきましては、ご質問にお答えするかたちということで、ご理解を賜りたいというふうに思いますのでよろしくお願いをいたします。では以降の進行につきましては、高坂先生のほうにお願いをしたいと思います。高坂先生宜しくお願いをいたします。

弁護団長:皆様どうもお疲れ様でした。それでは、これから、質疑応答の時間ということで皆様のほうから、ご質問やご意見を出していただいて、会社側にお答えしていただくというかたちで進めていきたいと思います。それでは、先ほどの視察の結果でも結構ですし、普段思っている事でも結構ですけども、ご質問ありましたら皆さんのほうからお願いします。はい、どうぞ。

当会:はい。いつもお世話になります。小川です。

司会:小川さん、ちょっとマイクのほう。

当会:声でかいから、いつものとおり。あ、届かないのか。ああそうか、届かないのか。もう(声)入ってますよね。テスト、テスト。はい。野殿の小川です、いつもお世話になっています。いくつか事前に考えたのがあるんですけど、えーと、すいません。順不同で申し上げたいと思います。まず先ほど中島次長のほうから、昨年の産米の結果について問題なしというふうにレポート頂きました。安中市の場合、本当に問題ないというふうに会社側に報告があったんですよね?

会社側:・・・(頷く)。

当会:はい、ここはあらためて確認します。齟齬があるようなので。で、続きまして、先ほどというか、打合せ前に皆様の前にお配りしました、毎年、毎回恒例の、最近これ2年間くらいに亘っている降下煤塵。降下煤塵というのは、今日も、TCAという一番上のところにある排ガス塔から吹き出るのをメインとして周辺に降り注ぐ煤塵のことですね。で、当然、東邦亜鉛さんは、鉱石で亜鉛鉱石を取り扱っていますから。ただし亜鉛鉱石の中には亜鉛以外のいろんな成分が混じっております。亜鉛と類似した金属の、原子周期律表。難しい言葉になるんですが、まあ、カドミウムとか鉛とか、そういうやつが当然混じってくるわけですね。で、これについて、スラグという形で前々から鉱石中に含まれる亜鉛分を除いたやつ。硫黄については今、小名浜で除去しているたやつをここに運んできているということですが、そうするとカドミウム、鉛、砒素、水銀もあるようですけど、あと銀とか有用な成分もあるようですが、この降下煤塵で、そうした成分が混じっているということは昔から言われておりまして、このデータを、群馬県が毎月そこにお手元になるように計測し続けております。で、黄色く着色したのは、私が勝手にそれぞれの閾値を設定して、それを上まわっているものを着色しております。で、これを見ますと、確かに、令和4年の3月までに焙焼炉の休止、稼働の休止。それと併せて、操業量の減少ということですね。今日朝、バスの中で鈴木製造部長が申し上げておられましたけれども、本来だと、14、15万ドンくらいの、なんというか、製造能力を経産省に申請して認定されているわけですけれども。で、大体11万とか12万トンずつ今まで、つまり令和3年頃までやって来ていたんですけど令和4年4月頃からは、今言ったように小名浜で硫黄を飛ばした、いわゆる焼鉱、焼いた鉱石というやつを、タンク車という、安中貨物と呼ばれる、毎日夕方、こう(列車で)来ますよね。これで運び込んでいるやつです。それで、減産をしているんですよね、4割くらい減産をしている。で、まあ、そういうことを背景としてみてきますと、トータルで当然処理量が、製錬量が減っているわけですから、黄色の着色もそれに応じて4割減くらいだという会社側の公表値ですが、でもそれにしてはまだしぶとく残っているんですよね。これはやはり問題だと。1年経つとやっぱりこれだけの分量。これミリグラムでわずかではあるんですが、鉛とかカドミウムはとくに猛毒ですから、これがやっぱりきちっとゼロに近づけてほしいということで、今までも何度もお願いしているわけです。で、スラグの問題につきまして、大気中に周辺に拡散する、排ガスを37mの塔の、先ほど見ましたけど、ここから空気中に放出されるやつのほかに、スラグという固形物として、会社の外に排出される副産物がございます。これについては今日拝見させていただいて、バスの中でも第1班の人には声が届いたと思うんですが、えーと、なんと昔使っていたものがまた稼働中だと。で、数年前に鳴り物入りで、設置をした、群馬県の手続きを取ってね、防塵対策の、これは許可が必要ですから、届出か。これを使っていないということで、これ、恒久的なものかそれとも、仮の、ある一定時期かと思って、その後、最後に案内されたところは、昔の第1電解工場というところ、これもその前に撤去した跡地なんですけれどもね。ここに移すという話で、これは会社側として「まだ決定ではない」と、こういうご説明でした。すいません、説明の前段が長くなってしまったが、このスラグの取扱いについては、これ、報道でも為されたんですが非常に杜撰な取り扱いがされて、これが有価物かどうかということで、会社側にも私も以前からモニタリングしてきたんですけどね。現在は産業廃棄物だということで所定の場所に引き取ってもらうというか、管理型の最終処分場というんですけども、どうもその辺がハッキリしません。で、これに絡めてですね。何回か前の席上で、このスラグについて、県内の各地区、特に西毛地区にいろいろ路盤材とか、埋め土材として、使っていたわけですよね。とくに、岡田興業とか、これは群馬町にあるんですけれども、岡田興業とか、その兄ちゃんがやっている岡田工務店、ここに大量に出してたんです。あとは前橋市の土建屋さんとか太平洋セメントとかね、部出していたんですけれども、とくに、ビックリしたのは、県に会社が届けた120数カ所のうち、安中市に、安中市に埋め立てた、そういう場所があるのかどうかということで、で、会社側のほうに聞いても「みんな行政側に報告しているから」ということで、群馬県に3年半くらい前に情報開示請求をしました。その結果、開示しないというか、もう不開示で真っ黒け同然のやつがきて、これはいかがなものか、ということで審査請求をずっとしてまいりましたところ、昨年秋に、ようやく2年8カ月ぶりに開示されました。しかし、肝心の安中市に2か所あるということが判明したんです。だけど、その黒塗りになっている、それ以外は、現場の写真も含めて真っ黒塗りなんですよ。で、その報告をしたのが1か所は東邦亜鉛で、もう1カ所が東邦亜鉛以外の業者。東邦亜鉛の名前は出ているんですが、それ以外の業者は、つまり下請けの業者の名前は出てきません。ということで安中市に「東邦亜鉛から改めてこの情報を取ってくれ」と、「群馬県じゃなくて今度は安中市で摂ってくれ」ということで取ってもらったんですが、やはり群馬県と調整したんでしょうね。同じようなモノしか出てこないんです。これやはりね、開示してもらいたいんですけれども、東邦亜鉛さんは「行政に聞け」というが、行政はそういうことで(東邦亜鉛に)忖度しているわけですね。で、安中市で2か所、実際に東邦亜鉛の有害スラグが、まあ有毒スラグと言ってもいいですが、使われたんですよ。これやはりきちんと、もう少し、安中市内のどこなのかくらい、岩野谷地区なのか、旧安中なのか、磯部なのかね、原市なのか、秋間なのか教えてもらえませんかね。これ後でお願いしますよ。それから・・・。まあ、とりあえずそれくらいかな。

弁護団長:小川さん。

当会:長くなってすいません。もうお仕舞いにします。ありがとうございます。

弁護団長:要点を絞ってご質問をお願いします。

当会:ではまず、お願いしたいのは、安中市から昨年の産米のデータについて問題なしということについては、「そうだ」というお答えを頂いたので、それは間違いないですよね?

司会:・・・はい、安中市のほうからは、そういうふうにうかがっております。
(当会注:当会が、この確認にこだわった理由は、令和5年度産米で、地元北野殿地区の谷津田で実際に稲を栽培していた農家のかたが、初めて玄米中カドミウム含有量検査を申請されました。ご本人は、毎年収穫した自家米を食べていたのですが、検査の結果、基準値を超過した場合、影響が広範囲に及ぶのを懸念されて、敢えて「飼料米」として検査申請しました。この結果、心配した通り、カドミウム含有量が基準値0.4ppmを大幅に超過する0.73ppmも検出されました。後日、安中市農林課に確認したところ、「東邦亜鉛には、食用米として申請された玄米のカドミウム含有量検査のみ通知した」ということが判明しました。したがって、東邦亜鉛側が、今回の工場視察会で発表した結果は、安中市から連絡のあった範囲内での内容であることが確認できました。しかし、実態は、やはり、北野殿地区の農地は、ことほど左様に重金属汚染されていることが明白に確認されたことになります。一刻も早い、汚染土壌除去のための公害防除特別土地改良事業の推進が必須であることのは変わりありません)

当会:で、先ほどのそのスラグの使用が市内に2箇所あったと、いうことは、県のあれ(開示資料)にあるんですが、市内の2か所は、あまり番地まではとは言わないが、どういう経路で、いつ、それが使われたかということを、今、ご説明頂けるとありがたいですね。

弁護団長:その点どうですか?どうぞ。

司会:えー、すいません、こちらにつきましては、えー、・・・まあ、毎度毎度で申しわけないですが、あのう、うーんと、所有者様はもちろんですけど、行政のほうにもご報告させていただいております。具体的な場所、それと経緯等につきましては、回答を控えさせていただきたいというふうに思っております。申し訳ありません。よろしくお願い申し上げます。

当会:排出者責任の認識を、もう少しきちっとお願いしたいと思います。ではすいません、時間もないんでね。簡潔に言います。その他について、いくつか申し上げたいんですけども、昨年岩井地区の排土、排客土工事で出た排土が、御社の所有する、あの農免道路のすぐ西側のわき、あそこに埋め立ててありまして、これが一昨年11月に土壌調査を、これは群馬県の環境保全課のほうから、任意で所有者である東邦亜鉛さんのほうにね、「測定してはどうか」というか、「測定してみてくれ」とこういう形らしいんですけれども。その結果、これは1昨年の5月ね、半年後に11月に業者を呼んで。あそこで土壌汚染対策法に基づく調査をしました。その結果が昨年1月までに群馬県に出されたんですけども。そこで、3箇所、というか3項目、群馬県ははっきり言わないんですが、カドミウムと鉛と砒素、これが土壌基準、土対法の基準を超えたということで、いろいろ騒ぎが今、起きているわけですけれども。これについて、群馬県は「任意でお願いした」んですけども、東邦亜鉛のほうは、これ、どういうふうな認識で、測定したんですか?群馬県から命令があったんですか?それともやはり任意で、と思うんですけどね。これなぜ測定したんですか?

弁護団長:土捨て場?排土?

当会:はい、排土、土捨て場です。

弁護団長:では、会社のほう、どうですか?

司会:えー、これは前回も多分お聞きになったようですが、えー、まず、えーと群馬県から調査依頼について、どういう位置づけがあったのか、という質問かと思いますが、えーと、命令ではございませんでした。

当会:うん。

司会:はい。ただ、そうは言えども、群馬県さんから、公文書を頂いたものですから、なかなかお断りもできずにですね、えーと、結果的には調査をした、という経緯でございます。

当会:うん、だからすいません。ありがとうございます。「任意で測ったから公表しない」と、こういうスタンスなんですね。でも3種類(重金属が)出たということは、これはやっぱり重大な影響があると思うんですけど、これについて、行政も、県も市も、まあ、市は関係ないか、県は出さないんですよ。依然として情報開示請求に対して不開示なんですね。これは審査請求しております。ありがとうございました。引き続き開示の努力をお願いします。最後にもう一つ、今日もお願いしたんですが。最初にも触れましたが、スラグ置場をなぜ、前使っていて、ああいう、その、ただ穴を掘っただけのようなところだったので、きちんと床とか、壁、それから防塵の為に、スプレーを施した塀付きの広大なところを整備したにもかかわらず、また、一時的とはいえ、あのような昔のところを、今、お使いになっているわけですよね。で、あれ、ちゃんと対策していらっしゃいます。で、いつまで、あのような状況をやっているんですか?きちんと群馬県には、防塵施設として、届けて、認可、認可かどうか知りませんけど、届出だけかもしれませんが、許可というかOKをもらっているんですか。お願いします。

弁護団長:旧スラグ置場ですね。

司会:そうですね、今日一番最初に見ていただいたスラグ置場。

当会:そうそう。

弁護団長:昔、使用した場所ですか?

当会:そうそう、そのとおりです。

司会:えーと、届出の件ですね?

当会:変更、はい。

司会:はい。こちらについては、ですね。もともと使っていた時に、一般粉塵発生施設としての届出をしておりました。これはあのう、鉱山法で管理をしていたときの続きで、一般法に移った時に、大気汚染防止法の一般粉塵発生施設の届出をしておりました。今回ですね、今日ご覧いただいたように散水の方法を今までと変えたものですから、えー、この辺についての変更届を、提出をさせていただきました。

当会:はい。で、施設的に、その、直接、土壌に触れないような、側壁も含めてね。そういった配慮はした上で、再使用したんですか?

司会:そうですね、まず、床面については今回、きちっと整理するために、コンクリートを、追加を一応しました。打設をしました。壁についてはですね、今日も小川さん、見ていただき、ご指摘もあったとおり、大分、頑張ったんですが、あれ以上、重機、大きいのを入れてやったんですけど、あれ以上はもう取れないんので、あそこまで、ということになっております。

当会:取れないというか、せめて遮水シートとかね、そういうやつを設置すべきだし、散水後の水の処理は、以前と同じように、排水処理施設に導いているんですか?

司会:えー、はい。今日ご覧いただいた散水したあとの水ですね。えー、こちらについてはですね、えーと、まあ、あのこの製錬所を大きく排水が3系統に分かれているんですが、まあ、真ん中の中央系統といわれる排水のところに入って、ですね。第2集水地。今日、ご覧いただい集水地ですね、そのあと、排水処理にかかると、こういうことになっております。

司会:はい、大体以上なんですが、最後に要望。今、県と市と情報共有をして、これからも公特事業について進めたいと、最後には「地元にいろいろお世話になる」という話が有ったんですが、私のほうも情報共有、最近ちょっと怠っているんですけれどもね、会社のほうとは、行政と負けないほど情報共有しながら、一刻も早くこの事業の着工に向けて進めさせていただきたいと、思いますので、これは要望なので、よろしくお願いしますね。お願いしますよ!本社のほうも。はい、どうもありがとうございます。

弁護団長:はい、他の方でご質問、ご意見、ございますか?

場内:・・・。



弁護団長:先ほどの、繰り返しで申し訳ないんですが、先ほどの小川さんの質問に関連してなんですけど、あのう、第1電解工場の跡地を今度新しく、スラグの置場とか出荷場にされるということで、あそこはちゃんとコンクリートを打ってあるところですよね。だから、あそこのところを、使えるようにしてから、新しい、今、これまで使っていたところから、直に移すとよかったのではないかな、という気がするんですけれども。要するに、旧(スラグ置場)を復活させるのではなくて、新しいところを作って、直にそちらへ移すと、何の懸念もないような、と思われるんですけど。

司会:・・・はい、あのう、そうですね。えーと、もともと「東」が、今日、カラになったところをご覧いただいたK砕出荷場から、旧第1電解工場の、今日、最後にご覧いただいたところ、これに直接移すという、お話だと思うんですが、コスト的に見てこちらの方が間違いなく・・・あの、えーとですね、以前使っていたとはいえ、そのまま使えないので、当然、先ほど申し上げたように整理をしましたので、当然コストも、設備対応もしてますので、当然、その分もコストがかかっております。という意味では、本来であれば、今、高坂先生のおっしゃったようにですね、直接というのが、ということもなかったわけではないんですが、とりあえず、こちらにつくるのに、ですね。えーと、土壌調査をしたり、えーと、コンベアの設計をしたり、えー、とにかくいろいろな時間が結構かかるもんですね。で、すぐにと、いうわけにはなかなかいかないものですから、「ちょっと早めに空けろ」という指示もございまして、すいません。真ん中で一回、仮に使わせしていただいて、最終的には移すという計画でございます。

当会(つぶやき):どうしようもないね・・・。

弁護団長:あの、新しい事業については、何かご説明はしていただけるのですか?要するに、私たちは、会社の経営に何か口を挟むということはできませんが、それが公害、あるいは、周辺への排出に影響するのかどうかというのは、やっぱり、知っておくべき事柄だと思いますので、はい。

司会:今日、ご披露できるような情報があったら、と思うのですが、現段階ではまだご説明できるようなレベルではないようです。すいません、詳細は私のほうもわかりません。ということで、申し訳ないんですが、もうちょっと具体的になったところで、あの、この前も、協議会のなかでも先生からご指摘いただきましたように、ですね、内容を把握できましたところで、まあ、時期的に、あの、協議会なり、視察会の時期でなければ、臨時でご報告ということにもできようかと思いますので、その時はお時間を作っていただいて申し訳ないですが、そんな形でご報告できれば、と思いますが、よろしくお願いいたします。

弁護団長:あのう、ちょっと司会があんまり発言してまことに申し訳ないですが。

当会:いえいえ、いいですよ。

弁護団長:新しい、今、中止になった、スラグ置場、出荷場。会社が、あれを作るときに、やっぱり大地の会に、あまりご説明がなくて、大きな問題になって、「これからそういうことが無いように」ということで文書で取り交わしをしたんですね。ですから、まあ、かなり大きな計画の変更だと思いますので、そういうことが繰り返されないように、できるだけ早く、あのう、大地の会をはじめ、住民のかたに、ですね、ご説明の協議の場をお願いしたいと思います。

司会:はい、大丈夫です。はい、そうしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

弁護団長:えー、皆さんのほうでご質問、ご意見ございます?

場内:・・・。

弁護団長:じゃあ、よろしいでしょうか?じゃ、ここまでで。

司会:高坂先生、ありがとうございました。ここでですね、協定書の調印。こちらを行いたい、というふうに思います。協定書につきましては、3年ごとに更新ということになってございます。前回は令和3年の第30回視察会の際に調印をしていただいております。今年で3年目が経過したので、協定書に調印ということでお願いしたいと思います。安中緑の大地を守る会を代表しまして、大塚会長。会社を代表しまして、常務の森田。立会人としまして、高坂先生。調印のほうをお願いしたいというふうに思います。なお、協定書につきましては2通作成をして、ですね。安中緑の大地を守る会と会社、それぞれが保管、ということになっております。それではお三方、前のほうにお願いしたいというふうに思います。



 午前11時36分に、協定書調印式が開始されました。そして、同11時42分に調印式が無事に終了しました。

※当会注:協定書の内容は、参加者に公表されていませんが、1991年に締結された最初の協定書の内容は以下のとおりです。おそらく、この内容のまま3年毎に更新されているものと思われます。

=====最初の協定書=====
               協定書
 緑の大地を守る会(以下甲という)と東邦亜鉛株式会社(以下乙という)とは、下記の目的のために、次のとおり協議会及び工場視察会をもつことに合意した。
                記
1 目的
 ⑴周辺住民と会社との隣人同士の信頼関係の維持拡大
 ⑵公害防止に関する継続的な努力及び相互理解
 ⑶畑地土壌改良問題に関する意見並びに情報交換
2 協議会
 ⑴年2回(3月及び9月)、定期協議会を開く。
 ⑵必要に応じ随時的な協議会を開く。
 ⑶参加者
  ①甲のメンバーのうち旧安中公害原告団及びその家族の代表 5名程度
  ②安中公害弁護団                    5名程度
  ③乙(東邦亜鉛)                    7名程度
   第1項の目的に沿った意見・情報交換及び協議。
3 工場視察会
 ⑴年1回(4月)、工場視察会を実施する。
 ⑵参加者
  ①1項のメンバーのうち、旧安中公害原告団とその家族
  ②安中公害弁護団                   15名程度
  ③甲、乙が合意するオブザーバー             5名程度
 ⑶内容
  乙の案内、説明による安中製錬所の主な公害防止機器の視察
  視察後の意見・情報交換及び協議 
4 費用
 原則として各自の負担とする。
5 期間
 1991年9月23日以降3年間とする。
 本協定は、双方合意の上、更新することができる。

 以上の協定の証として本協定書2通を作成し、各自署名捺印の上、各1通を保有する。

  1991年4月14日
                  甲   緑の大地を守る会
                  乙   東邦亜鉛株式会社
                 立合人  安中公害弁護団
==========






司会:ありがとうございました。それではですね。大塚会長と森田所長と握手をして頂ければ、と思います。立っていただいて、はい。(拍手)すいませんありがとうございます。それでは1枚ずつ持っていただいて、高坂先生、横に入っていただいて、3人で写真を撮っていただいて。3人並んでお願いします。



司会:はい、ありがとございました。席にお戻りください。(拍手)

司会:調印式、ありがとうございました。視察会終了に当たり、代表者の挨拶を頂戴したいというふうに思います。安中緑の大地を守る会、副会長、茂木繁様。よろしくお願いいたします。



副会長:今日はお忙しい中、東邦亜鉛株式会社安中製錬所において第33回の工場視察ということで、大勢のかたがたにご参集いただきまして、本当にありがとうございました。場内を回りながら見て、そして説明を受けて、また思いを新たにされたことと、そんなふうに思っております。また、工場の皆様とですね、今回の視察にあたって、いろいろご配慮いただき本当にありがとうございます。これからも、会社と地域住民との理解がますます深まることを祈念致しまして、簡単ではありますが、締めの挨拶とします。どうもありがとうございました。(拍手)

司会:ありがとうございました。それでは私ども会社のほうから、常務執行役員総務本部長であります大久保よりご挨拶を申し上げます。



本社総務本部長:本社総務本部の大久保でございます。僭越ながら一言ご挨拶させていただきます。本日はお忙しい中、第33回安中工場視察会にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。冒頭の大塚会長のご挨拶、非常に胸に突き刺さりました。今後とも、安中製錬所、ならびにその家族従業員と家族ともども、どうぞよろしくお願いいたします。さて、ですね、昨日(4月5日)なんですけれども、当社から、臨時開示を行った事項がございました。それを若干紹介させていただきます。タイトルはですね、「当社持分法適用関連会社に対する債権の取立不能または取立遅延のおそれに関するお知らせ」というものでございます。タイトル名からしまして、ご覧になった方で驚かれた方もいらっしゃると思いますけれども、詳しい内容につきましてはですね、当社のホームページに掲載しておりますので、その事実部分をご覧になっていただければと存じます。(注⇒  https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/ednr/20240405S100T86S/?msockid=0d30a971a2cf60df214cba37a325612b
内容的にはですね、当社が40%の権益を保有しておりますオーストラリアに所在するアブラ鉱山がですね、アブラという鉱山が、当初計画に比べて、鉱石品位や採掘数量が下回ったことに加えまして、大雨による輸送障害などの想定外の外部要因により、収支と資金繰りが悪化して、オーストラリアの会社法に基づく任意管理手続きを開始することになったというリリースでございます。今後はですね、任意管理人が選任されまして、えー、豪州のアブラ鉱山の操業を継続しながら、方向性を決めていくことになります。なお、これに伴いまして、ですね、当社の債権額に相応の影響が出る可能性はございますけれども、メインバンクをはじめとする銀行団の支援のもと、当面の資金繰りに関しましては、ですね、支障がございません。で、ご報告いたします。以上がきのうのリリースしたもので、適時開示したもののご報告でございます。次に安中製錬所。まあ、安中製錬所については、亜鉛事業を取り巻く環境でございますけれども、電気代につきましては、ですね、ピーク時期よりは一服したものの、諸資材の値上がりはまだまだ続いており、なかなか出口が見えない、非常に厳しい状況が続いております。こうした中でございますけれども、先ほど協定書を更新させていただきました。今後とも、当社の、当社への、ご支援ご協力を賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。最後に大変恐縮でございますが、ここにご列席の皆様と、ご家族の皆様のご健勝を心より祈念いたしまして、私からの挨拶をさせていただきます。本日はどうも有難うございました。

以前、使用していた豪州のエンデバー鉱山とラスプ鉱山の原鉱石のサンプル


安中製錬所で使用されたり産出されたりする各種物質のサンプル

↑安中製錬所から年間数万トン産出される産業廃棄物指定の非鉄スラグ。東邦亜鉛では、「K砕」と呼び、有価物のように装っているが、実は鉛、ヒ素、カドミウムなど各種重金属が残留するシロモノ。実際に工場外のどこに、どのように「出荷」されているのか依然として不明

司会:えー、以上を持ちまして第33回工場視察会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。なお、少しですけれどもお弁当、お茶菓子、用意をさせていただきました、忘れずにお持ちをいただきたい、というふうに思います。それとですね、お帰りの際に、下の1階の玄関ロビーのところで、花の苗をお渡ししたいというふうに思います、一人一つずつお持ち帰りをいただければ、というふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。それでは気を付けてお帰り下さい。どうもありがとうございました。

 以上、午前11時48分に全ての予定を終了しました。

■以上、第33回工場視察会のやりとりを報告しましたが、今回、以下の事項について、今後、詳しい背景調査が必要になろうかと思います。

(1)会社側がスクラップ・アンド・ビルドにようやく注力しはじめたこと。

(2)8年前に鳴り物入りで、非鉄スラグの「東」保管・出荷場を屋外に新設したが、最近、その稼働を停止したこと。

(3)この場所を、同社の新規事業のための工場建設用地として転用する方針が、決まっていること(ただし新規事業が何かは明らかにされていないこと)

(3)あらたに屋内型の非鉄スラグ「西」保管・出荷場を、旧第1電解工場跡地に設け、ベルトコンベヤや磁選機などを移設して、稼働させる準備をしていること。

(4)この関連で、屋内型の「西」保管・出荷場新設のため、土壌汚染対策法に基づく土壌調査を実施する必要があること。

(5)屋内型の非鉄スラグ「西」保管・出荷場を建設し、完了するまでの間、少なくとも複数年間、かつて使用していた公害防止対策が不十分な「旧」非鉄スラグ保管・出荷場の使用がなぜか可能とされて、現在実際に稼働していること。

■東邦亜鉛が、「8年前に鳴り物入り」で、非鉄スラグ保管・出荷場を完成させた際の経緯は、当会の次のブログ記事を参照ください。

○2016年5月16日:安中緑の大地を守る会総会でわかった東邦亜鉛安中製錬所スラグ置き場新設計画の驚くべき概要

■このブログ記事に掲載されているとおり、東邦亜鉛は「地域の皆様との共存共栄を求めて <ご質問にお答えします>」と題するチラシを住民に配布しました。内容を以下に示します。

*****「地域の皆様との共存共栄を求めて」*****
●K砕(ケイサイ)つて何?
1)ロータリーキルンという装置から発生する、形状は5~20mm径の大きさで、固く多孔質で、見た目の色は黒い焼き砂状のものです。
2)主成分は、鉄が40%、亜鉛が3%前後含まれており、年間50,000T程度発生しています。
3)主な販売先は、①鉄原料 ②建材用原料 ③サンドブラスト材 ④セメント用原料向けに販売しています。
●粉じんに有害物資は含まれないの?
1)製錬所内に保管されている様々な原料は、鉱石由来のカドミウムや鉛などの重金属が含まれており、どんな粉じんでも外部に漏えいさせないことが原則です。
2)K砕は、重金属を回収した最終工程から出るもので、土壌に溶け出すような有害物質を含まない「一般粉じん」の扱いで、屋外貯蔵も認められている物質ですが、粉じん発生は極力抑えるべきとの認識でいます。
●粉じんの有無を数値化できないか?
1)製錬所周辺の降下ばいじんは、県の環境保全課が毎月測定して、結果は毎年9月に発行される「環境白書」に報告されています。
2)西の平や伊勢宮では、ダストジャーにより24時間365日測定されていますので、粉じん発生量の増減があれば、現在でも数字で評価されています。
3)27年度の白書では、「過去5年間減少傾向である」と、良い評価を継続しいて頂いていますので、新K砕保管・出荷場整備により、評価が下がるようなことはしません。
●高い塀の設置は風向きや景観に悪影響はないか?
1)新しく6mの高い塀の設置を計画していますが、当然、地域の皆様に対して悪い影響が出ないよう、経過を観察しながら継続的な改善を目指します。
2)具体的には、これまでの荒地の景観を改善し、工場の騒音や粉じんを防止する効果を追求し、工場周辺の環境改善にっなげたいと考えています。
3)今後も地域の皆様からの情報に耳を傾け、会社は継続的に改善を図っていくべきと考えていますので、何か不具合等ありましたらご連絡頂きますようお願いします。
●工事の日程は?
1)4月に実施した地元説明会の後、直ちに群馬県に対して「設置届」を提出し、5月中旬からの工事着工を目指しています。
2)地元説明会において、地元の皆さんから出されたご意見・ご要望は、計画に織り込むように工夫して、最終的な完成は9月下旬を目標にしたいと思います。
3)長い工事期間となりますが、工事中に地元の皆様が不快な思いをなされないよう、万全な準備と細心の注意をはらい、安全に工事を進めたいと考えています。
**********

 ご覧のとおり、8年前は「●粉じんに有害物資は含まれないの?」という住民の不安に対して、
「1)製錬所内に保管されている様々な原料は、鉱石由来のカドミウムや鉛などの重金属が含まれており、どんな粉じんでも外部に漏えいさせないことが原則です。」
「2)K砕は、重金属を回収した最終工程から出るもので、土壌に溶け出すような有害物質を含まない「一般粉じん」の扱いで、屋外貯蔵も認められている物質ですが、粉じん発生は極力抑えるべきとの認識でいます。」
などと、説明していた東邦亜鉛ですが、その後、非鉄スラグに大量の鉛、ヒ素、カドミウムなどが混入していたことが判明したため、現在、群馬県では、東邦亜鉛安中製錬所が排出する非鉄スラグは、産業廃棄物に指定しています。
〇2020年12月8日;【12月8日】東邦亜鉛(株)安中製錬所から排出された非鉄スラグに関する使用箇所の解明等の状況について(廃棄物・リサイクル課、環境保全課)

 しかし東邦亜鉛安中製錬所が毎日排出する非鉄スラグには、鉛、ヒ素、カドミウムなど重金属が含まれていることから、本来であれば、廃棄物処理法第2条第5項に定める特別管理産業廃棄物のうち、特に有害性の高い物質あるいはそれらを含む特定有害産業廃棄物に該当するはずです(廃棄物処理法施行令第2条の4第5項)。

 今回の、従来の屋外型の非鉄スラグ保管・出荷場の閉鎖と、屋内型の非鉄スラグ保管・出荷場の新設計画、そして完成までのつなぎの期間に、あろうことか8年前まで使用していた旧・スラグ保管・出荷場の臨時使用という、異常な対応の背景には、上記の事情が反映されているのかもしれません。

■東邦亜鉛が何かしでかす場合には、本来の目的などを隠したまま、住民への説明が事後報告となるケースが多々あり、さらに行政も東邦亜鉛の立場を忖度しますので、今回分かった非鉄スラグ保管・出荷場の突然の変更申請の背景について、慎重に調査する必要があります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項おわり】
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三分咲きのサクラの中で開催された東邦亜鉛安中製錬所第33回工場視察会の一部始終(前編)

2024-04-14 17:40:29 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題

当日朝、事務棟前から見た安中製錬所の様子

■安中公害は、昭和12年に安中製錬所が操業を開始すると同時に始まりました。操業にともなって出る有毒な煙のために、周囲の桑が枯れ、蚕がバタバタと死んでいきました。市民の憩いの場だった雉(きじ)観音の数十本のサクラもすべて枯死してしまいました。戦後の工場の大拡張、生産量の急増にともない、増大する重金属や亜硫酸ガスなどを含む排煙、排水のため、農作物被害は激しくなるばかりで、周辺に住む住民の農業経営と生活環境が破壊されるところまで追い込まれたのです。

 そのため、周辺の農業を営む住民は、長い間苦渋に満ちた生活を強いられてきましたが、昭和44年、東邦亜鉛安中製錬所の違法増設工場許認可取り消しの行政不服審査請求に立ち上がり、工場の拡張を阻止することができました。そして、昭和47年4月1日、東邦亜鉛を被告として公害による「農業経営と生活破壊」に対する損害賠償を求める訴えを提起しました。

 この裁判は、10年の審理ののち、昭和57年3月30日東邦亜鉛の「故意責任」を認める判決を下しましたが、損害の認容額が請求金額のわずか5%という低額であったため、東京高等裁判所に控訴して争われ、昭和61年9月22日、和解によって解決しました。

 この和解成立と同じ日に、周辺被害住民は、東邦亜鉛との間で「公害防止に関する協定」を締結しました。この協定に基づいて、昭和62年から毎年一回、周辺住民による立ち入り調査が行われました。この間専門の科学者のアドバイスや協力を得て、住民らによる立ち入り調査を充実したものとしながら、住民による発生源の監視を強めてきました。

 そして、平成3年4月14日に安中公害裁判原告団・安中公害弁護団と東邦亜鉛株式会社の間で確認書が交わされ、同日、安中公害裁判原告団は「安中緑の大地を守る会」に呼称をあらためるとともに、新たに東邦亜鉛との間で協定書を締結し、それに基づき、毎年4月(コロナ禍を除く)に安中製錬所工場視察会を開催してきました。今回、第33回目となる工場視察会には、地元から15名の住民が参加しました。


当日朝9時半からの工場視察会の開始前に、事務棟1階の待合用会議室に集う参加者の皆さん

■当日、朝9時30分からの視察会開始に合わせて、関係者が安中製錬所の事務棟2階の会議室に参集しました。そして、9時30分定刻に視察会が始まりました。




司会:大丈夫でしょうか。えー、皆様、おはようございます。(場内:おはようございます)事務部環境管理室を担当しています中島(正治)でございます。本日、工場視察会におきまして、会社側の司会を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それではまず、会社側の出席メンバーの紹介をさせていただきます。まず、本社のメンバーからですが、本日、業務都合によりましてWEBでの参加となるものがおります。まずはモニターのほう、ご覧ください。常務執行役員総務本部長の大久保(浩)でございます。



総務本部長:大久保でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

司会:次に、現地参加となります。総務本部長の高橋(宏)でございます。



総務部長:高橋でございます。よろしくお願いいたします。

司会:続きまして、環境安全室長の石井(光)でございます。

環境安全室長:石井です。本日はよろしくお願いいたします。

司会:再度、モニターをご覧ください。本社からWEBで参加となります、総務部顧問の安堂(英次)でございます。



総務部顧問:安堂でございます。よろしくお願いいたします。

司会:続きまして、総務部課長の山田(昌吾)でございます。



総務部課長:山田です。よろしくお願いします。

司会:続きまして、安中製錬所のメンバーでございますが、所を代表します常務執行役員所長の森田(英次)でございます。



所長:森田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

司会:副所長の原澤(浩之)でございます。



副所長:おはようございます。原澤です。よろしくお願いいたします。

司会:次に製造部長の鈴木(達也)でございます。



製造部長:鈴木です。よろしくお願いします。



司会:それと私、事務部環境管理室を担当しております中島でございます。本日の工場視察会をこのメンバーで対応させていただきます。どうぞ、今日、よろしくお願いいたします。では、続きまして朝の代表者の挨拶を頂戴したいと思います。安中緑の大地を守る会会長、大塚義枝様。よろしくお願いします。



会長:皆さん、おはようございます。(場内:おはようございます)春爛漫のこの良き日に、本当に、会員の皆さんはじめ、弁護団の皆さん、また、市議会のほうの皆さん、大変ありがとうございます。私、あの、このような会長を引き受けるわけではなったのですけれども、時代と共に、やはり、こう、どんどんと、いなくなりまして。跡を継ぐ、今後この後、次ぐひとたちも、もうこれで、いろいろなことがわからなくなってきていると思います。でも、私たちの代で、この安心して暮らせる、これからを作って行ければなと思います。また、考えています。もうこれ、33回ですね。私の舅である父が、弁護団の団長をしまして、その後亡くなって、まあ、私ごとで申し訳ないのですけど、私の家も主人が亡くなって4年になります。あっという間ですが、長かったような、短かったような出来事であります。これから、このような私でも、どうしても皆さんに、「この会長を引き受けてくれ」と言われたのですけれども、このような立場になる資格も何もないですけれども、将来を考えますと、どうしても、これを引き受けて、次の世代には、安心してね。あのう、暮らせるような、最後の舅だった父が願った、土の入れ替え。まあ岩井のほうは済みましたけど、野殿地区の土の入れ替え。それが、目的を達成できるように、これからも皆さま方のご協力を得まして、ぜひとも私どもの世代に、成し遂げていきたいと思います。また、会社のほうもいろいろ大変でしょうけど、本日に当たって、いろいろ準備してくださいまして、ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします、挨拶にかえさせていただきます。(場内:拍手)


弁護団の皆さん

司会:ありがとうございました。えー、続きまして、会社を代表しまして所長の森田よりご挨拶を申し上げます。

所長:皆さん、おはようございます。(場内:おはようございます)所長の森田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。新型コロナ感染もですね、まあ昨年、2類から5類とか、いうふうに変わりまして、まだまだ撲滅とか、消滅とか、そこまでには至っておりませんが、折からの円安もあって、このあたりでも多くの外国の人も見かけるようになりまして、もうそろそろ終わりかな、というふうに思っております。そんな中で、本年度に入りまして、安中緑の大地を守る会の役員さん方と、いろいろと本日に向けまして、お打ち合わせをさせていただきました。そういうことで本日4月6日、穏やかな日にですね、を迎えまして、やっとおもてのサクラも咲き始めたところでございますが、こういうことで33回目になりますか、工場視察会を開催するにあたりまして、まあ、行なうことができましたということでございます。この機会ですので、当製錬所のですね、足元の状況をですね、簡単にお話させていただきます。創立、今度の18日で、この工場も87周年を迎えることになります。もう、かなり古い工場でございますが、まあ、そういうなかで、冒頭お話しました長引くコロナの関係で、ですね、なかなか私たち事業を取り巻く環境も、ですね、まあ、なかなかモノがなかなか売れていないと言う状況でございまして。まあ、皆さんもご承知のとおりですね、もう2年にわたるロシアのウクライナ侵攻から始まりまして、最近では、イスラエルによる侵攻によりまして、ヨーロッパ全体が非常に景気が悪い、ということで、国際商品でございます我々の亜鉛につきまして、非常にそういうところに影響を受けるということでございます。まあ、そういう中で、まあ、お隣り中国の不動産バブルがはじけまして、非常に、ひところの景気がないという背景にございます。その中で既にご案内の通りでございますが、昨年度の中間決算においてですね、当社10年に及ぶですね、鉱山経営を行っておったわけなんですが、非常に不振でございまして、まあ、これを見限り整理をするということで、報告がされたことは皆さんにもご案内のとおりでございます。まあ、本年度の最終決算、ならびに厳しい新年度の計画に向けまして、現在企画進行中という状況でございます。まあ、年始早々ですね、能登半島の地震、また今は台湾に地震がありまして、非常に不安定な状況でございまして、1-2月は逆にこのあたりは非常になんですか、温暖で、どういうことかなという状況ではございましたが、3月に今度は急に冷え込んでいるということで、体調管理も大変な今年ではないか、というふうに思いますが、やっとですね、桜も咲き始めてきましたので、今日の良き日に、ですね、どうぞ工場の中をご覧いただきまして、本日の工場視察会を進めさせていただければ、というふうに思っております。本日はよろしくお願いします。簡単ではございますがご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。(場内:拍手)

司会:続きまして、本日の視察コースや受け入れにつきまして製造部長の鈴木よりご説明をさせていただきます。

製造部長:製造部の鈴木です。よろしくお願いします。例年と同じく、製錬所内の製造工程並びに公害防止設備を中心にご案内させていただきます。操業につきましては順調でしたので、安定して事業を進めている状況をご視察いただければ幸いです。最近、インフルエンザ等の感染症流行懸念もあり、予防対策としての会議等でのマスク着用ルール、所内では引き続き実施しておりますので、私の声が聞こえづらいかもしれませんがご了承をお願いします。視察についてですが、お手元の資料で、3頁になりますかね、工場視察会、視察コース、そちらのほうをご覧ください。今年もマイクロバスを1台、ワゴン車2台をご用意いたしました。健脚コースの第1班は視察場所ごとにバスから降りてのご案内となりますので、ヘルメットの着装をお願いします。案内は私、鈴木が案内いたします。楽々コースの第2班につきましては、ワゴン車の中からの視察となります。視察中はワゴン車の乗り降りは致しませんので、乗り降りがつらくなられた方の乗車をお勧めいたします。ヘルメットは不要です。案内は総務課の長岡が担当致します。では、工場視察前に注意事項についてご説明いたします。マスク着用は、個人判断ですが多人数での車での視察となりますので、引き続き着用を宜しくお願い致します。場内での写真撮影はご遠慮いただきます。カメラ等を場内に持ち込まないようご協力をお願いします。また、携帯電話につきましては持ち込み可能ですが、撮影機能の使用はご遠慮をお願いします。健脚コースの方は、バスを降りて工場内を歩いていただきますが、安全確保を最優先としまして、昨夜の雨で路面が濡れているところもございますので、お足もとにご注意いただくとともに、設備や製品には絶対に手を触れないようお願いします。今回も例年通り4月ということで、まあ、気温のほうも上昇したり下降したりと不安定ですが、視察中にご気分が悪くなられたり、体調に異変を感じられた場合は、遠慮なく申し出てください。注意事項は以上でございます。よろしくお願いします。

司会:では、工場視察に入っていただきますが、出発前に2階のテラスで、ですね、工場をバックに記念撮影をしたいと思っております。トイレ等を済ませていただきまして、テラスのほうにご移動をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。



 午前9時45分に、ちょうど工場のサイレンの吹鳴と同時に、ほぼ三分咲き程度のサクラを背景に記念撮影をしました。その後9時50分にマイクロバスに分乗して、工場視察に出発しました。筆者は連年通り健脚コースのバスに乗車しました。





 構内に入ると、鈴木部長がマイクを手にとって、説明をしてくれました。

製造部長:皆様、あらためて、おはようございます。(車内:おはようございます)場内視察をご案内いたします製造部の鈴木です。よろしくお願いします。先ほどご説明しましたが、まず製錬所のほうの上側ですね、最上部に上がってから、降りながら、順次、視察していただきますので、よろしくお願いします。弊社は主に亜鉛、鉛、銀の地金、その他ですけれども、電子部品、および粉末冶金部品などの生産を行っております。ここ、安中製錬所につきましては亜鉛地金、亜鉛合金地金、薄硫酸、粉末冶金による焼結部品などの生産を行っております。亜鉛につきましては年間14万トン、月に1万トンの生産能力を持ちまして、国内の20%強の生産力を誇っております。精算しました亜鉛につきましては、60%程が自動車などに使用される薄板鋼板メッキ、そちらの用途に使われております。それでは最上部の排煙脱硫工程のほうへ行きますので、お待ちください。

当会:鈴木さん?

製造部長:はい。

当会:今のご説明で、薄硫酸とおっしゃっていましたが、この薄硫酸は、まだここで製造していらっしゃるのですか?

製造部長:えっ?

当会:さっき「薄硫酸を使って」というか、私、ちょっと聞き取れなかったんですが。

製造部長:薄硫酸のほうは、弊社の小名浜製錬所のほうで、そちらで硫酸を今作っておりますので、そちらのほうをこちらに持ってきて、水で薄めて98%から75%の硫酸にして、ここから販売のほうをしています。

当会:焙焼炉を休止して、硫酸プラントを止めたけれども、やはり、販路は一定の維持をしなければならないので、それで、小名浜でつくったのを、こっちに持ってきて捌いているということですね?

製造部長:あと、工程上におきまして、硫酸ですが、こちらのほうで使う必要がございます。そういうことです。

当会:はい、分かりました。それと、どのように運んでいますか。

製造部長:ローリーですね。毎日運んでいます。

当会:折角小名浜から来るのだから、貨車でもいいのかと思ったんですけど。

製造部長:貨車はかなり昔に硫酸用の車両があったんですけど、今はもうないので。

当会:わかりました。

参加者:貨車も短くなったよね。

当会:うん、今は無蓋貨車がなくなってタンク貨車のみですね。

参加者:なんか大分短くなった。

当会:だから生産量が4割くらい少なくなったわけだ。

参加者:むかしは、何両あるか、踏切で数えたものだね。

当会:踏切の待ち時間が短くなった。

 午前10時ちょうどに、排煙脱硫装置の施設脇に到着しました。一同、バスを降りて説明に耳を傾けました。

製造部長:こちらの看板のほう、見ながらご説明させていただきます。こちらが排煙脱硫工程となっております。ロータリーキルンで発生する排ガスですね。こちらのガスは、ガスクーラーで冷却してバグフィルターで、粗酸化亜鉛ダストを回収致しまして、こちらの排煙脱硫工程へ送付されます。ダストを除塵後に、こちらの排煙脱硫工程では、亜硫酸ガスである排ガス処理として、亜鉛華TCA、苛性TCA,水TCAと、3段で脱硫、水洗浄、こちらで排ガスを、手前のほうに見えます高さ37mの排気塔より大気放出しております。排ガスの硫黄酸化物の測定は、赤外線分析計を、水TCA等の出口に設置いたしまして、硫黄酸化物の濃度測定を常時行い、管理しています。また、煤塵等の測定は、2か月に1度、定期的に行っています。後ろに見えますのが、亜鉛華TCAです。手前に見えます2つの塔が苛性ソーダTCAと水TCAになっております。質問等無ければ、次の工程に行きたいと思います。

当会:「2か月に1度、排ガスの測定やっている」ということですが、これは、行政のほうには報告していますか。

製造部長:そうですね。はい。

 参加者一同はマイクロバスに午前10時5分に戻り、出発したバスは坂を下り始めました。

参加者1:下の娘がよく視察会に何回か来ていたよ。この間39歳になったもの。小学校の時よくついてきた。上(の娘)は年が違うから、ついてこなかったけど。

参加者2:排ガスの脱硫は、昔より負荷が減っている?

司会:一時期よりは、一番やっていたころよりは、多少低いですね。

製造部長;ガス量はあまりかわらないですね。

司会:処理量が減っているからその分だけ負荷が減っていますね。

 バスは、エンジンブレーキを掛けながら急坂を下りてゆきます。

司会:そこ、左に入ってください。はい。

参加者3:視察会の為にシートを張っている。

司会:いらっしゃっていただくのできれいにはしました。何とか見るに堪えられるところは変えていないんですけれども、見るに堪えられないところは、こうしてあります。

参加者1;昔の建物そのままですもんね。

司会;そうですね。

当会:スクラップ&ビルドをしていないんですよ。よごれっぱなしなんですよ。

 車内各所で話がはずんでいるうちに、ロータリーキルンのある場所に着きました。

司会:ここで回ってもらえますか。

 午前10時9分にバスがRC脇の狭いスペースで何とか切り返しを繰り返して、法転換が完了しました。

司会:はいここで、開けてみてください。ちょっとだけ30、50㎝だけバックします。はい、大丈夫です。

 バスを降りると相変わらずの騒音です。すぐわきに酸素ボンベを格納したパレットが置いてありました。太陽日酸とあり、次回検査25年3月、前回検査は24年11月との記載が見えました。

製造部長:はい、先ほど視察いただいたのは排煙脱硫工程になりますが、そこに行くガスのもとは、こちらのロータリーキルン工程になっております。このロータリーキルンに投入する原料は、一次鉱滓といいますが、先に、この計器室の裏側にあるんですが、ドライヤーに入れまして、水分を、乾燥をさせます。次に、乾燥した一次鉱滓にコークスを混ぜてロータリーキルンへ投入します。ロータリーキルンの炉の先端にはバーナーが設置されておりまして、重油燃焼によりまして、炉内の温度は一番高いところで約1300度くらいまでに加熱します。そうすることによりまして、一次鉱滓中の亜鉛が還元揮発しまして、揮発した亜鉛、これが空気とまた、再接触することによりまして、酸化物、粗酸化亜鉛になることによって、炉尻ですね、炉の後ろのほうに流れます。流れたガスと一緒に、ガスクーラーやバグフィルターを使用しまして、粗酸化亜鉛を捕集しております。この酸化物、粗酸化亜鉛と称しますが、亜鉛原料として回収されます。キルンの炉前から出て来る鉄分が濃縮された廃棄物。こちらのほうはクリンカーと呼んでおりまして、これが、クリンカー、そのクリンカーは冷却、粉砕、したあとに、K砕出荷場へ運んでおります。ガスクーラーにつきましては、排ガスの冷却と同時に熱回収を行っておりまして、その熱は、またバーナー用の空気などに再利用されております。ちょうど今こちらに見えるのが、ロータリーキルンの炉尻側ですね。ガスが逃げていく方になります。その左隣にある設備がガスクーラー。後ろにある設備がバグフィルターとなっておりまして、そちらのほうで粗酸化亜鉛の捕集を行っております。はい、ロータリーキルンの工程につきましては以上となります。

 午前10時14分にロータリーキルンの工程説明が終了しました。
当会:このバグフィルターからは、これはホッパーは要らないのですか?入らない。ここでは何が取れます。まだ揮発していないですよね。

製造部長:ドライヤーの排ガスをこちらのほうで。

当会:除塵中のチリのなかの重金属はどうやって処理するのか?

製造部長:後ろのほうに電気集塵機。後段にございます。電気集塵機を通してから回収します。

当会:最終的には工程に戻す?溶かす?

製造部長:出てきたダスト類は工程に戻します。

当会:はい。

製造部長:それではバスのほうに移動します。

 現場では間欠的にブザーの吹鳴音が鳴り響いており、相変わらず酷い騒音でした。参加者がホッパーの振動かと理由を聞くと、バグフィルターのホッパーのダンパーの音だということです。

午前10時15分に、再びマイクロバスに乗り、ロータリーキルン工程を後にしました。

 先ほど下ってきた坂に合流する前に、バスの車窓からかつて使用していたスラグ置場が右側に見えました。

当会:質問いいですか?質問。

製造部長:はい。

当会:あの、右手に見えるこの昔のスラグ置場は、もう使っていないということだったが、今回、これ見ると散水していますし、いろいろこの・・・。

司会:すいません、小川さん。これ、今からご説明しますので、ちょっとお待ちいただいてよろしいですか?

当会:はい、じゃあ、丁寧にお願いします。

参加者1:まだ、入っているじゃない?



製造部長;はい、先ほどですね、ロータリーキルンから発生しましたクリンカーですね。こちらのほうはベルトコンベアで、こちらのK砕出荷場に送られます。一応、ここは「中央」K砕出荷場と呼んでおりまして、このあと見学します「東」K砕出荷場を稼働する前に使用していた元のK砕出荷場となります。以前の「東」K砕出荷場ですね、こちらのほうは、広さとコンクリート敷を活かしまして、まあ、ちょっと、新規事業のほうに使用を検討しておりまして、一時的にこの「中央」K砕出荷場。これを使用して、またさらに後で見学いたします第一電解跡地、こちらのほうに、K砕出荷場をさらにまた移設したいと、今のところ検討しております。

当会:ええ!よくわからないな。なにか事業をされるために、今の東側にある、まあこれから見せていただくところが、なにか改築もしくは改装するために、一時的にここを、昔使っていたところのここを再使用しているとこういう認識でよろしいですか?

製造部長:はい。で、更にその、こちらのほうからまた、西のほうに移設すると。

当会:えっ、まあ、その辺は、後でじっくりお聞きしたいと思うんですけどね。これ昔使っていて、ここ一応問題があったわけですよ、例えば、全部コンクリートで地下浸透しないようなかたちになっていないということもあって、だけど、そこまた使っていいんですか?このような形で。こう見ますと、側壁のところは、何かユンボでひっかいたような爪の跡がありますけども、ああいうところから、このスラグは重金属が非常に多く含まれていることはご承知ですよね。

製造部長:ええ。

当会:ここにこれだけまた再度使用して、堆積させて使用しても構わないという十分な措置はとられたんですか?今、これ見て、私、びっくりしたんですけど。

製造部長:・・・。

当会:まあ、すぐ答えられないのであれば、あとでいいですよ。

製造部長:はい。

当会:まずは、スケジュールをこなしてください。

製造部長:わかりました。

参加者4:この水はどうしているんですか?

当会:この水をどうしているのかも含めて、これを排水処理施設に誘導しているのかどうかも分からないですよ。

参加者4:これが、田んぼでも入ったらね、困るね。

 当会が質問したため、一時的に止まっていたバスは再び始動し、急坂を下りて、製錬所構内の一番東にあるK砕出荷場に向かいました。車内では引続き、元のスラグ置場を再使用している現状について意見が飛び交っていました。

当会:だから、こういうところが無頓着なんですよ、昔これ使っていてやばいからというので、あそこにきちんとコンクリートで全部浸透しないように、隔離したかたちで、管理するストックヤードを作る、という話だった。そのためにこのベルトコンベアであそこまで誘導しているんですよ。今日見たらあそこ使っているから、えっと思ったので、操業量が減っている筈なのに、なぜまたあそこを使っているのかというのはやっぱり、すぐ「おかしいな」と思ったんですけどね。あのように、コンクリートで覆われていない側壁などから、重金属を含んだ雨水が地下浸透してしまうわけです。で、地下水を汚染するわけです。もう汚染されていますけど。

 参加者を乗せたマイクロバスはエンジンブレーキを掛けながら坂を下っていきます。午前10時21分に「東」K砕置場に到着しました。

司会:(運転手に)右側におりていただいて、いいです。

運転手:はい。

参加者1:こっちは、きれいになっているじゃない。ねえ。

司会:そうですね。こちらはゼロにしました。(運転手に)このまま中でぐるっと回っていただいて。

参加者1:ここよりあそこのほうが近くていいよね、距離が長すぎるので相当電気量が要るんじゃない。あそこなら安くて済むよね。

参加者2:このあれ、電気設備とか昔のPCBがあって、まだそのまま残っているんじゃないの?

司会:いや、これはもう全部抜いてあって、クリーニングしてあるので、そっちの心配はないです。ただ、中のモノは残っています。

全部きれいになったね、本当に。

司会:(運転手に)はい、ここでいいです。

製造部長:こちらの方が、ですね。「中央」K砕出荷場の前に使用していた「東」K砕出荷場となっています。磁選機とか、そちらの前方に、左、左前方ですね、見えるのが、ございましたが、こちらの磁選機と一部設備を「中央」のK砕出荷場のほうに移設して、使用しております。あと、出荷待ちで置いておきましたK砕のほうにつきましては、整理して今は、えー、見た通りのカラの状態となっております。

司会:はい、以上でお願いします。(運転手に)それでは電解工場のほうへお願いします。

 午前10時23分にマイクロバスは出発し、すぐ近くの電解工場に向かいました。
1分足らずで第3電解工場の前に着きました。参加者はバスを降りて、電解工場前の展示物の前に集まりました。

製造部長:はい、こちらのほうが、第3電解工場です。以前は「新」電解工場として説明しておりましたが、10年経ちますので、いつまでも「新」電解工場というのもなんなので、まあ、「第3」電解というふうに名称を変えております。ここでは、亜鉛の溶解液を電気分解して、金属の亜鉛を採取しております。えー、電解液ですね、こちらのほう、不純物を除去した硫酸亜鉛溶液になるんですけれども、こちらのほうをですね、各電槽、電解槽に供給いたしまして、直流電流を流しまして電気分解をさせることによりまして、こちらの真ん中にあります陰極板、これはアルミニウムでできているんですけれども、こちらの陰極板側に亜鉛が、その右の・・・にあるものですけれども・・・にありますように、亜鉛がアルミ板のほうに電着、析出します。計画された電力量に達しましたら、陰極板に電着した亜鉛カソード板を自動剥離機に搬送して剥離いたしまして、カソード亜鉛。ちょうど一番右に見えます薄い灰色の板状のものなんですけれども、カソード亜鉛として、回収します。電解後の亜鉛濃度の低下した液につきましては、亜鉛尾液として、溶解工場にまた戻しまして原料を溶解する溶液として使用しております。一応、こちらの一番左側ですね。そちらに見えてございますのが陽極板、プラス側ですね。こちらは鉛板になっております。以上が第3電解工場となっております。

当会:すいません。あの陽極板はだんだん消耗すると思うんですけど、どのくらいで替えています?

製造部長:約7年くらい。

当会:そんなですか。メンテナンスはあまり要いらないですね。

製造部長:やはり、表面の付着物がつきますので、それを落としてやらないといけないんです。

当会:では、あまり減耗しないんですか?

製造部長:鉛ですか?

当会:板そのものは?

製造部長:そうですねやはり、析出物とか、物理的に取りますので、そういった時に少しハツリとかしますが。

当会:もっと、この、薄くなってもいい、というか、それは許容値あるわけ?

製造部長:そうですね、やはり鉛なので強度的な問題になります。

当会:鉛はやわらかいですからね。銀を入れたとしてもね。はいわかりました。

製造部長:はい。それでは次の工程に移っていきます。

 結局、昨年までのように電解工場の中に参加者は入れてもらえないまま、バスに戻り、午前10時28分に、溶解工程に向けて出発しました。

参加者1:今日は中に入らないのね。

当会:見てもあまり変わりばえしないから。或いは何か見られると困る事情があるのかもね。すぐにそういうふうに考えてしますね。しかし、それにしても、鳴り物入りで1ヘクタール以上のこのストックヤードをつい数年前に作ったのに、もう使わないというのはいくら減産しているといっても、驚きましたね。

参加者5:新規事業と言っていたね。新規事業をすると言っていたが、いったい何をやるのかね?

当会:じゃあ、また何かそこで、何かまたやばいやつだと困るんだよね。新規事業か。あとできいてみよう、また企業機密だというだろうけど。

 移動のバスの車窓から見ると、銀さいなど、鉱滓置場の建物も撤去してあったのには驚きました。

参加者1:昔は火が出ていたのでこわかったね。ドロドロしたようなのがね。皆作業服が焦げていた。

当会:やはりかなり減産しているから、今、稼働していないようだね。今、溶解炉使っていないね。今ね。

 午前10時31分に、溶解工程の施設の前に到着しました。早速バスから降りて現場視察です。

製造部長:はい、こちらの方がですね、先程の電解工場で生産しましたカソード亜鉛。こちらのほうを溶解して鋳造します鋳造工場になっておリます。えー、亜鉛製品につきましては、100種類を超える品種ですね、多種多様な製品を製造しております。そのうち6割のほうが手前に見えております「調合亜鉛」と呼ばれる製品となっております。調合亜鉛につきましては、高炉メーカーですね、えー、こちらのほうへ納入いたしまして自動車用のボディ、などですね、薄板鋼板メッキ用に使用されております。調合亜鉛には他の金属を添加しない純亜鉛のものや、アルミなどですね、金属を添加する亜鉛合金がありまして、こちらのカソード亜鉛を低周波誘導溶解炉。電気を使用して溶かす炉がありますが、こちらの溶解炉のほうで、500℃まで昇温しまして溶解します。アルミにつきましては、重油バーナー溶解炉で地金のほうを溶解して、手前の中段に見えます調合炉のほうに必要な亜鉛、アルミ、その他金属ですね。こちらのほうの量を調整して、投入しまして、合金を手前の型に流し込んで、生産しております。調合炉につきましては3基ございまして、生産能力としては1日当たり240トン。それ以内になります。調合炉は自動傾倒、手前のほうにこう傾きまして、ユーザー各社指定の金型に流し込みまして、冷却、凝固させます。そのあとにですね、底部から自動押上機というのがございまして、そちらのほうで押して突き出して、製品となっております。じゃあ、続きまして、電気亜鉛のほうの工程のほうに進めて行きますので、ちょっと歩いてで、すいませんが。

 午前10時35分に電気亜鉛の工程のほうに移動しました。1分足らずで電気亜鉛製造工程に着きました。いつものとおり、ここはかなりの騒音です。特に金型から亜鉛のインゴットを抜くための振動音がすごいです。

製造部長:はい、こちらほうが、電気亜鉛を製造しております工程となっております。手前の左奥ですね、こちらの方が電気亜鉛を、聞こえません?はい、えー、左の方が電気亜鉛の工程となっておりまして、こちらのほうで電気亜鉛を製造しております。電気亜鉛は、メッキや伸銅製品に使用している純亜鉛の製造で、調合亜鉛同様、カソード板を低周波誘導溶解炉のほうで、500℃で溶解しまして、1枚当たり20キロのインゴットケースで鋳込んでおります。こちらのほうを製錬するのは・・・こちらのほうですね、鋳造、凝固いたしまして抜き出されましたスラブと呼ばれる製品はロボットにて積み上げて結束されます。こちらのスラブのほうはですね、1枚20キロで、50枚積まれて一山1トンで計測されて出荷します。ちょうど後ろにあります。こちらのスラブのほうですね。これが、50枚重なった1トンのものとなっております。一応冷却はしているんですけれども、熱は冷えないので、それもありますので、表面はかなり熱く触ったら火傷するくらいの温度になっております。はい、以上が鋳造工程となっております。では、引き続き次の工程に行きますので、バスのほうへお願いします。

 午前10時39分、バスに戻り次の工程に出発しました。

参加者2:塊にSHGと書いてあったけど、あれはグレード?

司会:そうです。スペシャルハイグレードで、日本語で最純度と呼ばれているものです。(当会注:SHGは、亜鉛純度99・995%以上となる亜鉛インゴットの品質を表し、これはLME(ロンドン金属取引所:London Metal Exchange)で取引される亜鉛地金の純度を示す用語。国際市場で取引可能な品質を確認するもので、具体的には、純度99.995%以上の亜鉛を指す)

製造部長:自動車用薄板鋼板向けで、多分メッキの層がでかかったり、小さかったりするので、それに合わせて、ああいうでかいやつや小さいのを使ったりしていると思います。プラスチックの場合は使わないが、鉄の防食用に亜鉛が使われます。

司会:(運転手に)もう少し行ったところで右側に寄せていったところで、水色のタンクの前くらいで。もう少し前で大丈夫です。

 午前10時42分排水処理施設前に到着しました。

製造部長:足元に段差がありますので、気を付けて下さい。

参加者6:ここから先、延長放流したあの先、金ケ崎までの流路。そこまでの流路は河床にあるわけですよね。その管理はどうやっているのでしょうか。

当会:何もしていないと思います。この先、市道というか、碓東小学校の裏の、田んぼの間のところ、ちょっと広めの、でもすれ違うのがやっとの道の下に埋設してあるんですが、点検している・・・半世紀絶つけれど、全くないですね。

参加者6:あれば埋設してから50年。もっと?

当会:もっともっと経過していますね。公害で騒がれてからもう半世紀ですから、

製造部長:はい、こちらは、排水処理工程です。製錬工程の雑排水を、集水池になります。集水池に集めておりまして、製錬工程内の、さまざまな水溶液は繰り返して利用しております。そのため、工程外のほうには出ません。ただ、それ以外の雑排水ですね、たとえば床を掃除した洗浄水、道路洗浄した洗浄水、生活排水などの雑排水がこちらの集水池に集められております。集水された排水は、ポンプで揚水されまして、流量を調整して中和槽のほうへ送液されます。中和槽では、苛性ソーダでpHを、アルカリ性ですね、することによりまして、排水中の金属亜鉛が水酸化物として沈殿していきます。次にシックナーと言われる固液分離設備に送りまして、この中和液に凝集剤を添加して沈殿を促進させながら、上澄み液と濃縮スラッジに分離します。濃縮スラッジのほうは自動フィルター濾過機で濾過して、その濾液は再び沈殿池に戻します。濾過滓は、再び亜鉛電解原液で溶解して製錬工程の原液として戻します。シックナーの上澄み液、こちらのほうは、まだ微細な固形分がございますので、それを更に除去するために砂濾過機のほうで濾過しまして、濾液のほうは、また、沈殿池を経由して、pHを調整いたしまして、約8.5前後に中和しています。その水は、延長放流水で、金ケ崎まで導水されて碓氷川のほうに放流されております。逆中和処理につきましては、pHを常時監視しておりまして、pHが異常な場合は、安全ダンパーが作動しまして、再び集水池に回収されます。なお、亜鉛鋳造工程とかで使用しております間接冷却水ですね。そちらの用水につきましては、水量等をチェックしたのち、旧放水水路から柳瀬川のほうに流水されております。はい、こちらの方が排水処理となっております。じゃあ、それでは、次の工程のほうに移りたいと思いますので、バスのほうに、下りましょう。

 マイクロバスに戻る際に、たまたま近くに本社から参加した石井環境安全室長がいたので、声がけをしました。

当会:最近たまに(安中に)来ている?

本社環境安全室長:いやあ、なかなか。

当会:もうコロナも空けたし、ここはメイン工場なのでお願いしますよ。

本社環境安全室長:・・・。

 午前10時50分、排水処理場前をマイクロバスが出発、第1電解工場跡へ向かいました。車中、付近の参加者と会話が弾みました。

当会:第1電解工場を片付けた跡地で、ここで。客土の仮置場にしたらどうかという話もあった。行政が不熱心なのか、会社側がOKしないのか、私はここが客土の仮置場として一番良いと思います。

製造部長:えー。こちらは「西」K砕設置予定場になっております。第1電解工場の跡地になります。キルンからこちらのほうにクリンカーを運ぶためのベルトコンベア。こちらのほうを持ってきました。設置しまして、さらに「中央」K砕出荷場にあります磁選機。こちらのほうですね、設備を移設して、まあ、建屋を建設して、屋内置場として、する計画となっております。はい。では事務所に向かいます。

当会:すいません。いいですか?移動中で。なぜ移設して、それも建屋の中でストックしなければならなくいけないということになったのでしょうか?なぜ鳴り物入りで・・・。・

製造部長:ああすいません、今ちょっと(ほかのかたからの)質問が。ああ、延長放流?

参加者6:あの放水、延長放流、地下何メートルなんでしょうか?

司会:えーとですね。深いところ浅いところあるんですけど、一概には言えないんですけど。深いところで1m半とか、そんなものかな。浅いところでは1mとか、もっと浅いところもあります。50センチくらいのところもあるでしょうね。

参加者6:掃除は?

司会:そのときどきですね。私になってから2回。ただ全部が全部、できるわけではないですね。マンホールのところは全部開けてやります。私になって、12、13年になりますが、4年に1回くらいですかね。

製造部長:はい、すいません。

当会:あのね、だから今、その、なぜわざわざ鳴り物入りで数年前に1ヘクタールのちょいのK砕ヤードを設置されたにも関わらず、今回こちらのもうこれも7、8年前ですかね。第1電解工場跡地の整理したところに移設、また新たに作るという、それも屋内で行うということは、どういう理由でそのようにされたのですか?イニシャルコストもかかると思いますけどね。

製造部長ら:・・・

当会:企業機密?別に、あのう、屋内でやったほうがいいというのは前々から防塵対策でよいというのは分かっていましたけどね。

司会:屋内でやるというのは、今、小川さんおっしゃるとおりなんです。あの、防塵をしっかりやろうというのがひとつ。屋内にするという理由の一つとしては挙げられる。すいません。移設の件に関しては、ちょっとまだ申し上げられる段階ではないので、ちょっと新しいことを考えての、そういうところまでで、すいません。今日は勘弁していただきたいと思います。

当会:じゃあ、社内で検討、予算とか・・・。

司会:はい、まだ検討中です。確定はしていません。

当会:そうですか、でも(実施は)まちがいないですよね、時期的なところはともかく、答え辛そうだな。

 午前10時55分、事務棟に戻りマイクロバスから下車しました。

当会;(運転手に)運転おつかれ様でした。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・後編に続く】
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対馬市の核のゴミ調査拒否の背景にある東邦亜鉛の負の遺産と同社安中製錬所における重金属土壌汚染の連鎖

2023-10-13 08:32:09 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題

東邦亜鉛㈱の前身の日本亜鉛㈱が1939年(昭和14年)に買収した対馬の対州鉱山。出典:同社HPより

■9月27日、長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(いわゆる「核のごみ」)の最終処分場選定の前提となる「文献調査」について、調査を受け入れない考えを表明しました。同市長は27日午前10時に開会した市議会本会議で、現段階では「安全であるという市民の理解を得るのは難しい」と述べたのです。

 これに先立ち、対馬市議会は9月12日の本会議で、文献調査を受け入れるよう求めた市民からの請願について賛成10、反対8で採択していました。比田勝市長は市議会の決定と異なる判断を下した理由について①市民の合意形成が不十分だ②風評被害が懸念される――などを挙げて、核のゴミの受け入れにNOの見解を示したのです。

 自民党をバックに当選した同市長のこの発言は、極めて重い意味を持っています。なぜなら、対馬はいまでも有害な重金属汚染の問題を引きずっているからです。

■この問題について、折から東京新聞が、対馬のカドミウム公害を引き合いにして、核(放射能汚染)や有害な重金属汚染の廃棄物が、長期間にわたり、生活環境や自然環境に及ぼす深刻な問題について、わかりやすく提起する記事を掲載しています。早速見てみましょう。

**********東京新聞「こちら特報部」2023年9月28日
核のごみ NO 調査応募巡り市長が方針
対馬 公害の歴史
 原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分の受け入れを巡って揺れる長崎県対馬市。27日、比田勝(ひたかつ)尚喜市長は調査に応募しない意向を表明した。ただ市議会は推進派が多数を占めるほか、来春に市長選があり、予断を許さない。その対馬は昭和の時代、鉱山が操業され、カドミウム汚染に翻弄された。イタイイタイ病の発生も疑われた。過去に苦労した地に「核のごみ」を委ねていいものか。(木原育子、西田直晃)
■昭和にカドミウム汚染 大きな組織に依存する構図■

鎌田慧(さとし)さん(資料写真)
 対馬市長の方針が示された27日。安堵せず、嘆息交じりで話す人がいた。
 「(受け入れに伴う交付金に)群がらざるを得ない自治体は対馬だけでなく、もっと出てくるはずだ」
 「本音のコラム」でおなじみのルポライター、鎌田慧さん(85)。1969年にジャーナリストとして初めて踏んだ現場が対馬だった。カドミウム汚染が取り沙汰された状況を取材し、初の著書「隠された公害」を70年に上梓した。
 あれから半世紀以上。同じ地が「核のごみ」に揺れる。先行きが不透明な状況も残る。
 「歴史が繰り返されている。鉱山会社から、国や電力会社へ変わっただけ。生活が行き詰まると、どこか大きな組織に依存してしまう構図は変わっていない」
■69年に取材 鎌田慧さん 「住民沈黙 企業が支配」■
 過去に汚染をもたらしたのが対州鉱山だ。所在するのが旧厳原(いづはら)町。同町は、2004年に6町合併で誕生した対馬市の中でも、中心的な存在になる。市の玄関口のフェリー乗り場から西に数キロに位置する。
 市観光商工課の糸瀬富喜主任は「対州鉱山は厳原町の佐須という地域にあったので、地元の人は『佐須鉱山』と呼んだ」と話す。
 「同じ旧厳原でも市庁舎がある島の東側と違って、西側の佐須は農村地域。トンネルを抜けると、ぱっと日本の田舎の原風景が広がる感じだ」と続ける一方、「コロナ前までは韓国の観光客でにぎわったこともあったが、今は…」とも。
 対馬と鉱山は縁深い。古代から銀を産出し、地域を繁栄させた。1939年には日本亜鉛が買収。流れをくむ東邦亜鉛は高度成長期にかけ、対州鉱業所を置いて亜鉛や鉛を掘り出した。

東邦亜鉛の2017年環境報告書。対州鉱山の管理状況を伝える
 その一方、地元はカドミウム汚染に見舞われた。亜鉛族元素に区分されるカドミウムが原因で骨がもろくなる「イタイイタイ病」を疑う報道もあり、69年に要観察地域に指定された。
 鎌田さんが取材を始めたのがこのころだ。「ほとんどの住民は無言を貫き、逃げるばかり。町にとって大切な産業。住民は企業に完全に支配されていた」
 先の著書を出版した3年後の73年、「この資料は正確で聊(いささ)かかの誇張もない真実の記録です」との書き出しで企業内部から告発文が届いた。会社が組織ぐるみでごまかした資料を厚生省(現厚生労働省)に提出したと裏付ける文書だった。
 鎌田さんは「1人の人間が勇気を奮い、苦難を覚悟し、いわば身をていして訴え出てくれた。対馬は国境の島、要塞の島だが、企業に牛耳られた島でもあった。そんな三重苦を背負っていた」と回想する。
■鉱山、調査で偽装工作 閉山50年でも排水検査・報告■
◆坑廃水処理水の調査、今も続く 負の記憶 考慮を◆

カドミウムの汚染調査で偽装工作があったことを報じた当時の東京新聞
 対州鉱山は73年に閉山。翌年、告発文にあった不正の記事が世に出て騒動に。東京新聞も、汚染調査で偽装工作があったと報じた。
 現地では長崎大が約30年にわたり、住民の健康被害の追跡調査を続けた。イタイイタイ病と同じ症状の住民が確認されていたが、原因は断定できなかった。
 一方で余波は今も続く。
 東邦亜鉛は鉱山保安法などに基づき、発生源対策や坑廃水処理を実施する。対州鉱山管理事務所の杉村智律所長代理は「処理水に重金属が含まれていないか調査を続け、毎月経済産業省に報告している」と語る。
 閉山後、一度も基準値を超えていないという。市環境政策課の阿比留正臣課長は「問題の値は出ていないが、負担が続く面もある。国と県、市で毎年補助金も出している」と話す。
 環境問題に見舞われた対馬。「核のごみ」の最終処分とも長い関わりを持つ。
■議会側、反対から一転 来春市長選で争点か■
 80年代には動力炉・核燃料開発事業団の地質調査で島の一部地域が「処分地として良好」と評価された。最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は2006年ごろから説明会を複数回開いた。
 なぜ対馬で説明会を開いたのか。過去の環境汚染に思いを巡らせたのか。
 NUMO広報部の副部長は「(動燃の調査は)参考にしていない。説明会をいつから何度開いたか、どちらが働きかけたかは、個別のケースはお答えしていない」と繰り返した。
◆24年春に市長選、予断許さず◆
 対馬は揺れてきた。07年に市議会は受け入れ反対を決議した一方、今月には調査受け入れを促す請願を採択。市長は反対を表明したが、来春には市長選を控えており、不透明さが残る。
 万一、調査の応募に動いた場合、NUMOは対馬の過去に配慮するのか。
 手を挙げた場合、3段階ある調査のうち、第1段階の文献調査が始まる。先の副部長は「不適地を除くための調査。次の段階の調査でさまざまな要件が設けられ、そこで判断する可能性はある」とした。
 とはいえ、最終処分場の選定基準は曖昧さが残る。

経済産業省が入る庁舎=東京・霞が関で
 文献調査を踏まえた選定基準については、経産省資源エネルギー庁が7月に案を公表した。景観や文化財、国土防災を考慮し、土地の利用規制が起きるというが、それ以上の記載はなく、地域事情が深く考慮されるかは不明瞭だ。担当者は「対馬で文献調査を開始しておらず、予断を持って答えられない」と話す。
 選定基準はどうあるべきか。過去の苦労を無視して構わないのか。
 信州大の茅野恒秀准教授(環境社会学)は「地域の歴史的経験に正面から向き合うべきだ。住民は長い時間軸の中で暮らす。その経験に寄り添わずに信頼は得られない」と訴える。
■処分地選定「地域の経験寄り添って」■
◆対馬市、寿都町、神恵内村…共通するのは◆
 対馬市のほか、既に文献調査を受け入れた北海道寿都町、神恵内村にも共通するのは、高齢化や過疎化で疲弊した地元の活性化が叫ばれる点だ。
 明治学院大の藤川賢教授(地域環境論)は「困窮地域ほど新たな苦労を迎えやすい」と語る。「調査を受け入れると、観光業などにデメリットがあり、賛否の対立が疲弊を招く。小規模自治体の財政に貢献するというが、予算を長期にわたって執行できるわけではない。交付金が終了すれば困窮はより厳しくなる」
 そもそも選定基準の議論が十分と思えない。現状は文献調査の基準をまとめただけ。候補地を先に募り、基準は調査と並行して決められる。
 先の茅野氏は「『後出しじゃんけん』のように判断基準を決める進め方。最終処分場の選定は手順を含めたゼロベースでの見直しが必要だ」と話す。
◆デスクメモ◆
 対馬の過去を知るほど、対馬に迷惑施設を委ねていいかと感じた。ただ万一、応募に傾いたら「善意」に甘えていいか。苦労に苦労を重ねる危惧。善意というより、交付金を頼らざるを得ない「苦渋」の面も。各地に通じる問題。公平な最適解をどう考える。その議論こそ必要では。 (榊)
**********

■東邦亜鉛は、1937年(昭和12年)2月に日本亜鉛製錬株式会社として設立され、直後の同年6月に安中製錬所を操業開始し、1941年(昭和16年)9月に東邦亜鉛株式会社に社名変更しました。しかし、安中製錬所の操業開始に際して、当時は戦時下であったことから、東邦亜鉛は、地元住民に対して「兵隊さんの命を守る鉄兜を作るために必要な“高度鋼”を製造するためだ」として、ウソをつき騙したのです。そのため、筆者の子どものころは、地元の大人たちは東邦亜鉛安中製錬所のことを「コードコー」と呼んでいました。

 製錬所は、丘陵地の北斜面に位置し、現在では55ヘクタールもの面積に拡大しており、これ以外にも工場周辺のあちこちで、農地や山林を、子会社の安中運輸の名義や、従業員の中で農家を兼業している者の名義で土地を取得しています。

 このうち平地に広がるカドミウム汚染土壌の水田については、公害問題で世間の注目を浴びていた昭和40年代後半に排客土ないし15センチの上乗せ客土が対策事業として実施されました。しかし、製錬所の南側にある北野殿地区を主体とする丘陵地に拡がる畑地と、製錬所の東側に位置する岩井地区の畑地は、長年にわたる製錬所から排出される重金属を含む降下ばいじんや、敷地から風にのって伸び散る重金属交じりの土埃を浴びており、土壌汚染が深刻ですが、これまで放置されたままでした。

 平成7年ごろ、これら畑地の土壌汚染対策として、圃場整備を方式による排客土のための碓氷川流域公害防除特別土地改良事業として、群馬県が主体となり、公共事業で排客土工事を施工する事業計画がスタートし、地元に公害防除特別土地改良事業(略して「公特事業」)推進委員会が設置されました。これは当時玄米中のカドミウム濃度が1ppmを超える農地を対象とした農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(土染法)に基づき、畑地においても陸稲が栽培されていたことから、畑地についても重金属土壌汚染対策が必要となる対象とされたのでした。

 以来、28年にわたり計画が進められていますが、1988年に穀類、1998年にその他の食品目のカドミウム基準時の検討を開始していた、玄米中のカドミウム濃度の基準が、国際的な食品規格基準の策定を行う政府間機関であるコーデックス委員会(CAC)の下部組織である食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)が、玄米中に含まれるカドミウム濃度の安全基準を見直した結果、2005年に小麦、野菜類、2006年に精米の基準(0.4ppm)を策定し、公表しました。

*****コーデックス委員会の食品中カドミウム国際基準値*****
 コーデックス委員会が定めている食品中のカドミウムの国際基準値は、以下のとおりです(「食品及び飼料中の汚染物質及び毒素に関する一般規格」(General Standard for Contaminants and Toxins in Foods and Feed, CXS 193-1995)の要約)。
<食品>/<基準値(mg/kg)>/<基準値適用の食品部位>/<備考>
 精米/0.4/全体
 小麦/0.2/全体/普通小麦、デュラム小麦、スペルト小麦、エンマー小麦に適用。
 穀類/0.1/全体/コメ、小麦、ソバ、キノア、カニューアを除く。
 豆類/0.1/全体/乾燥した大豆を除く。
 根菜類/0.1/地上部を除いた全体。付着した土壌を除く(流水ですすぐ又は乾いたものは優しく払い落とす)。バレイショは皮を剥いたものに適用。/セロリアックを除く。
 果菜類/0.05/茎を除いた食品の全体。スイートコーン、生鮮コーンは、皮を剥いた粒及び軸に適用。/トマト及び食用きのこを除く。
 葉菜類/0.2/明らかに傷んだ又は萎れた葉は除いた後の通常販売される全体部位。/アブラナ科の葉菜類にも適用する。
 マメ科野菜類/0.1/可食部全体。水分が多い形態では鞘全体又は鞘を除いたものが食べられる。
 アブラナ科野菜類/0.05/球茎キャベツ及びコールラビ:明らかに傷んだ又は萎れた葉を除いた後の通常販売される全体部位。カリフラワー及びブロッコリー:花蕾(未熟な花房に限る。)芽キャベツ:"button"(側芽)に限る。/アブラナ科の葉菜類を除く。
 鱗茎類/0.05/タマネギ及びニンニクの乾燥した鱗茎:根及び付着した土並びに簡単に剥がれる羊皮様外皮を除いた全体部位。
 茎菜類/0.1/明らかに傷んだ又は萎れた葉を除いた全体部位。ルバーブ:葉柄のみ。アーティチョーク:花蕾のみ。セロリ及びアスパラガス:付着した土を除く。
**********

■こうした中、日本政府の農林水産省は2001年から食品中のカドミウムの実態調査を開始しました。これは、コーデックス委員会で玄米中のカドミウム濃度基準が0.2ppmに決まる動きをにらんで、これを何とか0.4ppmまで緩和することを目指し、2003年に調査結果と「消費者の健康保護が図られることを前提として、基準値を合理的に達成可能な範囲でできる限り低く設定する」という考え方(ALARAの原則)に基づいて推定した基準値案を作成し、CCFACに提出しました。

 その結果、日本政府のロビー活動が功を奏し、上記のとおりコーデックス委員会は、玄米中のカドミウム濃度を0.4ppmとしたのでした。

■こうした世界の動きに連動するかたちで、平成7年(1995年)頃スタートした群馬県主導の公特事業推進委員会も、このあおりを食いました。当初は、汚染農地の所有者からの事業参加の仮同意も順調に取得が進んでいたのですが、平成14年(2002年)に0.4ppmの基準値が策定されると、途端にスローペースとなりました。

 それでも地元の野殿・岩井の地権者らは、何とか事業を推進すべく、仮同意の取得を進め、ついに平成19年(2007年)3月5日に100名あまりの地権者全員の仮同意文書を集めたのでした。

 ところが、群馬県のスローモーな対応は相変わらず続き、年1回の本部役員会議を開くだけで、事実上足踏み状態が平成24年まで続きました。そのため、地元地権者で組織する公特事業推進委員会では、当時地元選出の2名の県議(岩井均、茂木英子)に紹介議員となってもらい、大沢正明群馬県知事に、公特事業の積極的な推進を要請する請願書を提出しました。

■すると平成25年から、群馬県がこの事業に対して積極的な姿勢を見せ始め、当初は平成29年には着工も夢ではないかもしれないという期待を地元住民に抱かせました。

 しかし、当時から10年が経過しようとしている現在、期待は幻想に代わり、群馬県は以前のようなスローダウン状態に逆戻りしようとしています。そのため、こうした状況を打開すべく、昨年7月12日に筆者が3代目の公特事業推進委員会の会長に推挙されました。

 以来、1年が経過しましたが、状況は深刻となっています。なぜなら、群馬県は東邦亜鉛に忖度して、積極的に公特事業を進めようとしないためです。

 それどころか、平成3年度と4年度に実施された岩井畑地区における現状回復方式による公特事業(当初、2.5ヘクタール規模の区画整理事業で計画されていたが、東邦亜鉛が地元有力者を使って地権者の切り崩しを諮り、着工寸前までに0.96ヘクターまで事業規模が縮小)に基づく農地の汚染土壌の排客土工事の最終段階で、排土を埋め立てた東邦亜鉛の敷地内の場所で、群馬県が東邦亜鉛に土壌検査を指示して測定させたところ、土壌汚染対策法に定めるカドミウム(基準値45ppm)、鉛(基準値150ppm)、ヒ素(基準値150ppm)をいずれも上回ったとして、急遽、排土の移動を禁止し、下層の土を入れ替える、いわゆる天地返し工法しか許可しないと、事業を担当する県農政部に横やりを入れたのでした。

 このため、野殿地区における事業の見通しに暗雲が立ち込めています。いかに、東邦亜鉛が行政に対して圧力をかけ、畑地の汚染土壌対策事業にブレーキをかけているかを痛感させられます。

■なお、日本政府は、農用地の土壌汚染防止に関する法律(土染法)は基本的に水稲や陸稲を作付けする水田や一部の畑地だけを対象にして,野菜や果実を栽培するその他普通畑は今後とも対象にしないつもりです。そのため、安中製錬所周辺の畑地の重金属汚染土壌は依然として放置されたままであり、しかも、毎年、少しずつ安中製錬所から排出される排煙中に依然として含まれるカドミウム、鉛、ヒ素などの重金属が周辺に降り積もり続けており、汚染が進行している状況にあります。

 対馬市の対州鉱山跡地で依然として鉱毒が周辺環境に負荷をかけているのと同様に、群馬県安中市の東邦亜鉛安中製錬所も、長年にわたり重金属を周辺に垂れ流し、あるいは巻き散らかしてきています。対州鉱山で見せた東邦亜鉛の企業倫理の欠如は、今もなお、安中の地で遺憾なく発揮されていると言えるでしょう。

【市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「対馬の対州鉱山の様子」
**********ブログ「水辺遍路」2020年10月25日
対州鉱山の池(仮称)(長崎県対馬) 離島 九州編

山腹にラピュタ感のある建物
 対州鉱山は1973年に閉山した亜鉛鉱山。
 対馬筆頭格の河川である佐須川沿いに鉱山事務所があり、閉山してから半世紀近くがたった今も鉱毒管理が行われていて、敷地内に入ることもできず、池にも会えなかった。
 当初は採掘跡湖かと思ったが、立地や形態的には鉱滓ダムの可能性が高そうだ。

 川沿いに三つの池があるようだが近づけず







 枯れ沢となる川が多い対馬にあって、唯一、豊かな清流をもつ佐須川であるが、このあたりではさすがの佐須川もこんな具合

※参考情報「対州鉱山」
**********Wikipedia「対州鉱山」

対州鉱山跡(厳原町佐須地区)。2017年6月撮影

所在地:長崎県下県郡厳原町(現:対馬市)
座標 :北緯34.2285881687585度 東経129.2183346155609度
生産 :産出物 亜鉛
    生産量 22,000t/月(1966年)
歴史 :開山  ?
    閉山  1973年
所有者:日本亜鉛株式会社⇒東邦亜鉛株式会社
    取得時期 1939年
概要 :
 対州鉱山(たいしゅうこうざん)は長崎県下県郡(現・対馬市)厳原町樫根(かしね)にあった鉱山。
 東邦亜鉛によって経営されていた亜鉛の鉱業所で、1973年(昭和48年)に閉山した。なお、対州とは対馬国、対馬島の異称。
 東邦亜鉛は1943年(昭和18年)の対州鉱業所(対州鉱山)本格操業開始から、1973年(昭和48年)の閉山までの30年間経営を行っていた。当初は戦後の高度経済成長により、急速に業績を伸ばしていった。しかし昭和40年代半ばから貿易の自由化が推し進められ、外国産の安価な鉱石が輸入されるようになった。そのため、小規模で生産コストの高い国産鉱石はたちまち外国産に押され、経営が行き詰り閉山となった。
 対州鉱山は急速に厳原町の産業基盤を支える重要産業に成長していった。鉱山従事者で人口が増加し、町の税収は増え、鉄筋コンクリート造のアパートや商店、映画館などの遊興施設が建設されるなど、鉱山周辺の地域に活気をもたらした。
 しかし、繁栄は長く続かず、閉山後は鉱産税や電気・ガス・固定資産税の大幅な減収、下請け労働者の失業、商店の減収をもたらすなど、町の経済にとって大打撃となった。また、カドミウム汚染を引き起こすなど、町民の健康への影響も生じた。このカドミウム汚染に対して東邦亜鉛は汚染田の復元や農産物減収・健康被害者への補償を行うとともに、閉山から45年以上たった現在でも汚染が起きないよう監視機関(事務所)を設置している。
 東邦亜鉛株式会社 対州鉱山管理事務所 〒817-0243長崎県対馬市厳原町樫根248(北緯34度13分43秒、東経129度13分8秒)
歴史 :
 対馬では古くから、銀をはじめとする金属を産出していた(対馬銀山を参照)。
 大正時代中頃に鉱山が休止。
 1938年(昭和13年頃) 土佐出身の白川隆彦が鉱業権を取得し、当時の佐須、安田、久の恵等の坑を買収統合。
 1939年(昭和14年)8月 日本亜鉛株式売社が白川隆彦から鉱業権を買収。
 1941年(昭和16年)9月 日本亜鉛株式会社が社名を東邦亜鉛株式会社に改称。
 1943年(昭和18年)8月 本格操業を開始。
 1945年(昭和20年)4月 太平洋戦争の激化により、重油等の資材不足のため操業を一時休止。
 1946年(昭和21年)11月 連合国軍最高司令官総司令部は日本政府に鉛の増産を指令、同時に日本各地の鉱山は自家発電力用の重油の特配を受けることになる。
 1947年(昭和22年)2月 連合国軍最高司令官総司令部天然資源局技官が訪問。綿密な調査の末、対州鉱山の有望の認定を行う。
 1948年(昭和23年) この年、再度の資源調査により、鉱床・鉱量の確実性が認められ、全面的な支援を受けるようになる。
 1948年(昭和23年)8月 本格的に操業を再開。
 1949年(昭和24年) 小茂田発電所が完成(出力450kW2基)。
 1950年(昭和25年)6月 月産5,000t態勢が完成。
 1951年(昭和26年)3月 厳原町南室(なむろ)に船への積出施設が完成。南室まではトラックで運搬する。この年、日見抗の開発に着手。
 1952年(昭和27年) 悪水谷抗の開発に着手。
 1956年(昭和31年) 月産8,500tに拡張。
 1957年(昭和32年) 月産10,000tに拡張。
 1965年(昭和40年)4月 鉛・亜鉛原鉱石の月処理は14,000tと磁硫鉄鉱1,500t、計15,500t。
 1966年(昭和41年) 月22,000t。
 1968年(昭和43年)から1971年(昭和46年)にかけ、厳原町は同町下原(しもばる)の床谷(とこや)に鉄筋コンクリート造4階建ての改良住宅192戸を建設。
 1970年(昭和45年)8月 出鉱量300万tを達成。
 1973年(昭和48年)8月 閉山宣言が出される。
 1973年(昭和48年)10月 出鉱を停止し、鉱内撤収作業を開始。
 12月20日 閉山。30年の歴史に幕を閉じる。閉山時の従業員322名のうち、本社員の多くは、群馬県の安中製錬所に配属。
<閉山後>
 1974年(昭和49年)3月21日 佐須地区鉱業被害者組合の総決起集会が行われる。イタイイタイ病の再検診、汚染田の復旧、東邦亜鉛の監視機関の設置等を決議。この年、厳原町議会でも鉱害対策特別委員会を設置し、事実究明を開始。
 1974年(昭和49年)5月21日 佐須・椎根(しいね)川流域の住民の検診を開始(5月24日までの3日間)。対象者は300名。検診の結果、イタイイタイ病と認定する患者はおらず、腎臓障害など軽症患者の疑いがある経過観察者が25名。
 1974年(昭和49年)7月 被害者組合と東邦亜鉛の交渉の結果、企業100%負担によるカドミウム汚染田の復元を合意。
 1974年(昭和49年)12月 農産物減収補償交渉がまとまる。
 1975年(昭和50年) 厳原町により、休廃止鉱山鉱害防止工事が開始。鉱山の長い歴史(対州鉱山操業開始の前から)による汚染地域が河川流域の各地に存在することがわかったため。
 1979年(昭和54年)12月23日 国と長崎県と東邦亜鉛により、汚染田の復元工事が開始。客土方式で行われ、心土は同町の久根浜や豆酘などから、耕土は壱岐郡(現壱岐市)郷ノ浦町から運ばれた。
 1980年(昭和55年) 町による休廃止鉱山公害防止工事が完了。
 1984年(昭和59年)2月 カドミウムによる腎臓障害の疑いがある経過観察者への健康補償がまとまる。
 1985年(昭和60年)2月13日 汚染田の復元工事が完了。
<技術者養成>

東邦亜鉛株式会社対州鉱業所技術学園跡。2020年2月撮影
 鉱山の技術者を養成するため、東邦亜鉛が「東邦亜鉛株式会社対州鉱業所技術学園」(地域では「学園」と呼ばれていた)を開設していた。詳細については不明だが、かつての校地には現在も門柱が残っている。(北緯34度13分36秒、東経129度13分23秒)
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4年ぶりに4月開催となった東邦亜鉛安中製錬所における第32回工場視察会の顛末

2023-04-30 12:00:53 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題

■毎年春先恒例となっている東邦亜鉛安中製錬所における工場視察会は、東邦亜鉛と安中緑の大地を守る会(旧・安中公害裁判原告団)との間で締結された協定書に基づき、例年4月の第2土曜日に開催していました。ところが、コロナの影響でここ3年ほど時期外れの8月、9月、7月に開催されていましたが、今年はコロナ感染症対策の緩和もあり、4年ぶりに協定書どおりの4月8日に実施されました。その模様をご報告いたします。

 開催当日、9時25分集合ということで、9時20分に事務所前の駐車場に車を止めて、会社の事務所に入りました。9時半の開始まで、1階の会議室で待機していました。筆者が会議室に入った際には既に10名以上の地元の皆さんが集まっていました。

 まもなく、弁護団の高坂氏が大きな包みを持参してこられました。さっそく包みを開けてみたところ、かつての公害反対運動のリーダーのひとりとして活動した人物を描いた切り絵の大型作品が現れました。

 高坂氏は「高田新太郎先生が4月2日にお亡くなりになった。それで6日に葬儀があったが、家族葬でやるということで、私は参加させてはもらったが、広く声をかけるのは遠慮させてもらった。それで葬儀がつつがなく終了したがこれは高田先生のご自宅にあった。あずかって。ただご家族の方がこれは故人のものではないので、原告団の皆さんにお渡ししてくださいということで預かってきました。で、原告団の事務所の方で保管をしていただいて、まあよく活用をしていただきたいというふうに思うので、今日お持ちしました。よろしく」と語りました。一同高田弁護士の訃報に接し、さらにまた懐かしい人物の作品にビックリするやら、感慨を深くしました。

 高坂氏は、「とりあえず、また納めさせてもらって事務所に持っていきますから」と再び梱包をしましたが、その前に、参加者が写真撮影をしました。切り絵の手法で、公害原告団の住民のリーダーとして活動した藤巻卓次氏をモデルとしており、市の強固な意志がひしひしと伝わってきます。孫娘のかたが「まちがいなくおじいちゃんだ」とつぶやいておられました。

■そうしているうちに東邦亜鉛安中製錬所の職員が来て、「そろそろお時間ですので2階の方にお願いします」と声を掛けて来たので、参加者一同、ぞろぞろと2階に移動しました。そして定刻の9時半から視察会がスタートしました。

会社司会:皆様おはようございます。

一同:おはようございます。

会社司会:事務部環境管理室を担当しております中島でございます。本日の工場視察会におきまして、会社側の司会を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。新型コロナウイルスの影響によりまして、昨年までの3年間、8月、9月、7月という、暑い時期での開催になってしまっていましたが、ようやく協定書で記載されています4月ということで、開催させていただくことが出来ました、ありがとうございます。新型コロナウイルスに関しましては、最近、感染者が減っているということですけれども、感染予防には十分注意して配慮しながら開催してまいります。マスクの着用、手の消毒など、いろいろと、こう、ご不便をおかけするとは思いますが、ご協力のほう、よろしくお願いをいたします。それではまず会社側の出席メンバー、こちらの紹介をさせていただきます。本社のメンバーにつきましては新型コロナウイルス感染予防対策といたしまして、WEBでの参加となります。モニターの方をご覧ください。まず最初に、常務執行役員総務本部長の大久保でございます。

総務本部長:本部の大久保でございます。お世話になります。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

会社司会:次に総務副本部長の高橋でございます。

総務副本部長:えー、高橋でございます。どうぞよろしくお願いします。

会社司会:続きまして、総務部長の橋田でございます。

総務部長:橋田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

会社司会:同じく、総務部顧問の安藤でございます。

顧問:安藤でございます。よろしくお願いします。

会社司会:次に、環境安全室の室長の石井でございます。

環境安全室長:石井でございます。どうぞよろしくお願いします。

会社司会:続きまして、安中製錬所のメンバーでございますが、所を代表します常務執行役員所長の森田でございます。

所長:森田でございます。今日は一日、どうぞよろしくお願いいたします。

会社司会:副所長の唐澤でございます。

副所長:唐澤です。どうぞよろしくお願いいたします。

会社司会:次に、製造部長の鈴木でございます。

製造部長:えー、鈴木です。本日はよろしくお願いします。

会社司会:それと事務部環境管理室を担当しています私、中島で、本日の工場視察会を対応させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。では、続きまして朝の代表挨拶を頂戴したいと思います。安中緑の大地を守る会副会長、大塚様、よろしくお願いいたします。

守る会副会長:みなさん、おはようございます。

一同:おはようございます。

副会長:春爛漫のこの良き日に、この32回工場視察会が開催されますことを、本当に嬉しく思います。また、お忙しい中、ご出席くださいまして、この視察会に参加下さった方々、また、皆さん、本当にありがとうございます。あの、会長不在で、副会長の私が、何の分からない私がご挨拶なんて、お話しするわけですけれども、皆さん、これからも協力し合って、このよき(地元を)・・・どんどん発展させるために、工場と、また緑の会を、守る会を、発展させていただきたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)

会社司会:ありがとうございました。続きまして、会社を代表しまして、所長の森田よりご挨拶を申し上げます。

所長:おはようございます。

一同:おはようございます。

所長:所長の森田でございます。本日はどうぞよろしくお願いします。新型コロナ感染症も4年目となりまして、令和5年が明けてから感染者も少なくなってきています。5月のゴールデンウィーク明けの13日にはですね、感染症法の分類で2類から、低い5類になるということでございまして、そういう報道もございます。安中緑の大地を守る会役員の皆様もですね、今年度の工場視察会の開催につきまして年明けからご相談をさせていただいてきました。まあ、そういう中でですね、足元の状況も鑑みながら、今回から、先ほどからご紹介がございました状況も鑑みてですね、本日4月8日の春の穏やかなこの時期にですね、工場視察会を行うということで、本日の運びとなりました。さて、昨年、22年は、ロシアのウクライナ侵攻で、世界の政治・経済、それらのバランスが大きく崩れまして、長引いた新型コロナウイルス感染症による景気減速感はさらに拍車がかかりまして、もうじき良くなると言った機運はさらに急下降というふうになっております。二極化した政治が広がる中でですね、我々、工場を運営する中で、エネルギーや資材の高騰が長引きまして、気候変動対策やCN(カーボンニュートラル)問題、SDGs(持続可能な開発目標)と、それらに加えて、最近では、経済安全保障といった国際社会の大きな変革もございまして、まあ、ご承知のとおり、10月からはですね、電気代の急騰ということになりまして、非常に不穏当な国際社会の影響で、まさに私たちの生活にも、安中製錬所にも暗い影が一層色濃くなっているという2022年でございます。まあ、長かったコロナ感染症も今年を区切りとしまして、危機的な物価高騰の事態も解消に向かい、ウクライナ侵攻の暴挙が止む時が早く訪れることを、ただただ願いまして、ここ数年間いろいろとご不自由をおかけしてまいりましたが、本日は地元の皆様方のご指導、ご鞭撻をいただけますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

会社司会:続きまして、本日の視察コースや日程につきまして、製造部長の鈴木より説明をさせていただきます。

製造部長:製造部の鈴木です。よろしくお願いします。えー、例年と同じく製錬所内の製造工程、並びに公害防止設備を中心にご案内をさせていただきます。昨年もご案内させていただきましたが、一昨年2021年の11月に焙焼硫酸工場、昨年2022年3月に第二電解工場の稼働を停止しております。その他操業は順調ですので、安定した事業を進めている状況をご視察いただけば幸いです。視察についてですが、お手元の資料で視察コースをご覧ください。えー、今年もマイクロバスを1台、ワゴン車2台を用意しました。健脚コースの第1班は視察場所ごとにバスから降りてのご案内となりますので、ヘルメットの着装をお願いします。案内は製造部の鈴木がご案内します。楽々コースの第2班はワゴン車からの視察となります。視察中はワゴン車の乗り降りはしませんので、乗り降りが辛くなられた方のご乗車をお勧めいたします。ヘルメットは不要です。案内は総務課、長岡が担当いたします。では、工場視察前の注意事項について、ご説明いたします。マスク着用は個人判断の方針ですが、多人数でのマイクロバス並びに視察になりますので、引き続きマスク着用でよろしくお願いします。場内での写真撮影はご遠慮願います。カメラ等は、場内には絶対に持ち込まないよう協力をお願いします。また、携帯電話につきましては、持ち込み可能ですが、撮影機能のご使用はご遠慮をお願いします。健脚コースの方はバスを降りて工場内を歩いていただきますが、安全確保を最優先に、昨晩も雨が降りましたので路面に雨が少し残っている箇所もございます。お足元にご注意いただくとともに、設備や製品には絶対に手を触れないようお願いいたします。あと、昨年の7月に対しまして、今回は例年どおり4月ということで気温は高くないですが、朝は寒暖差等がございますので、視察中にご気分が悪くなられたり、体調に異変を感じられたときは遠慮なく申し出て下さい。で、注意事項は以上となります。よろしくお願いいたします。

会社司会:環境管理室の中島でございます。昨年までですね、視察コースに公特事業で使用します客土の仮置き場、こちらが入っておりましたが、岩井地区の公特事業につきましては、完了しましたので、今回の視察コースに入れてありません。工事の完了しました岩井地区の公特事業に係る排土処理場の写真等を併せまして、客土仮置き場で使用した場所の写真をですね、いずれも2枚目、さきほど鈴木の方から説明をしました視察コースの裏面に添付をさせていただきました。こちらでご確認の方、お願いをいたします。新型コロナウイルスの影響によりまして、3年間記念撮影につきましては中止とさせていただいておりましたが、今年につきましては、記念撮影を行いたいと思います。えー、視察、この後出発していただくんですが、出発前に2階のそちらのテラスで、ですね、工場をバックに記念撮影をしたいと思います。すいませんが、ご移動の方をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。なおトイレに行きたいという方、事前に行っていただいて結構ですので、お願いします。それではご移動のほう、お願いをいたします。

■9時45分、製錬所内の事務棟の2階に整備されたテラスに出て、記念撮影が行われました。写真撮影の時だけ全員でマスクを外しました。

 記念撮影後、事務棟の1階に降りて、玄関前の広場で、健脚コースと楽々コースに分かれてそれぞれ手配されたマイクロバスとセダンに参加者が乗り込みました。

 9時53分、参加者に続いて、会社側担当者らがマイクロバスに乗り込み出発しました。全部で17人がマイクロバスとセダンに乗車しました。バスは製錬所の入口のゲートを通過し、構内に入りました。移動中のバスの車内では案内役の鈴木製造部長が説明を始めました。

製造部長:皆様、あらためておはようございます。(おはようございます)場内施設の方をご案内します第1班健脚コース、製造部鈴木です。よろしくお願いします。先ほど説明をしましたとおりなんですが、まず工場部の最上部に上がってもらいまして、下りながらですね、それぞれの説明となりますのでよろしくお願いします。当社は、主に亜鉛、鉛、銀、の地金、その他、電子部品、粉末冶金部品などの生産を行っています。ここ安中製錬所では、亜鉛の地金、亜鉛合金の地金、薄硫酸、粉末冶金による焼結部品などの生産を行っております。亜鉛の方は年間14万トン、月にですね、1万トンの生産能力を持ちまして、国内の約20パーセントのシェアのほうを持っております。生産した亜鉛の地金のほうなんですけれど、約60パーセントが自動車等に使用されます薄板鋼板メッキ用として、使われております。それではまず最初にですね、脱硫工程のほうに行きますので、よろしくお願いします。

■マイクロバスはエンジン音を一段と唸らせながら急坂を上り始めました。車窓には、交互に山の笹薮と錆びた建物のうしろに国道18号やその向こうに中宿の家並み風景が広がっていました。

 午前10時ちょうど、TCAタワーの排ガス排煙脱硫工程の施設前に到着しました。バスから降りて、いつもの説明場所に集まりました。

製造部長:はい、こちらはですね、次ので説明しますけれども、次のロータリーキルンから発生する排ガスを処理する排煙脱硫工程となっております。ロータリーキルンで発生する排ガスの方は、ガスクーラー、バグフィルターと呼ばれる装置でですね、冷却後、粗酸化亜鉛ダストのほうを回収いたしまして、こちらの排煙脱硫工程へ送付されます。ダストの除塵後、排煙脱硫工程では含有、亜硫酸ガスである排ガス、これの処理といたしまして、右側の酸化亜鉛の吸収塔、苛性ソーダ、水酸化ナトリウムの吸収塔、後、水の吸収塔ですね。こちら三段で脱硫、水洗浄したガスを、こちらの4番の高さ37mの排気塔。ちょうど後ろに見えます水色の塔ですね。こちらの排気塔より大気放出されております。排ガスの硫黄酸化物の測定はですね、赤外線の分析計を水のTCA、あの後ろにある2段、ふたつベージュ色の塔が立っていますけれども、その隣のあの右側ですね、そちらの水のTCA塔の出口に設置しまして、硫黄酸化物の濃度測定を常時オンライン管理しております。また、煤塵の測定。こちらを2か月に一度、定期的に行っております。排煙脱硫工程は以上になります。

会社司会:よろしいですか。

製造部長:はい。

会社司会:そうしましたらバスに乗っていただいて移動します。

■参加者らはバスに乗り、旧坂を下り始めました。当会が、質問しました。

当会:鈴木部長!すいません、小川ですけど、一つ質問。

製造部直:はい。

当会:一番上の廃棄物処分場はまだからっぽなんですか?それとも何か入れましたか?

会社司会:私の方から回答させていただきます。未使用です。

当会:未使用ね、間違いないですね?

会社司会:はい。

■バスは元来た急坂を下っていきます。以前スラグ置き場だった場所を左に見て、そのまままっすぐ山に沿って西側に延びる枝道に入りました。老朽化した建物に覆われた通路を進みました。昔の焙焼炉がスクラップ状態でそのまま並んでいる場所ですが、ブルーシートで覆われて見えないようにしてありました。

 10時8分、ロータリーキルンの前の広場に着くとバスは切り返しを何度が行って、方向転換をしました。下車すると大きなサイレンのような騒音が周囲に充満しました。

製造部長:はい、先程ご視察していただいたのは、ですね、排煙脱硫工程でしたが、このガスのもとはですね、手前にありますロータリーキルンから発生したものとなっております。このロータリーキルンに投入する原料は、一次鉱さいと言いますが、まあ亜鉛原料ですね、こちらの方を溶かしたときの溶け残りで、成分としては鉄になっております。こちらの一次鉱さいの方ですね、先にですね、ちょっとこの建屋の裏側になるんですけども、ドライヤーで水分の方を乾燥させます。次にですね、乾燥した一次鉱さいにコークスを混ぜまして、こちらのロータリーキルンの方へ投入します。こちらのロータリーキルン、(長さが)45mあるんですが炉の先端、ちょっと奥の方になりますが、そちらの方にバーナーが設置されておりまして、重油燃焼によりまして、温度を1300度ほどまで加熱しまして、一次鉱さい中の亜鉛を還元揮発させます。えー、揮発した亜鉛のほうは空気と接触することで、酸化物、粗酸化亜鉛となりまして、こちらのキルンの後ろにありますガスクーラー、皆様の後ろに有りますバグフィルター、こちらにて捕集されます。この酸化物は、粗酸化亜鉛と称しまして、亜鉛原料として再び回収されております。キルンの炉前側、奥側ですね。こちらからは鉄分が濃縮されたクリンカーと言われる塊状のものが発生します。クリンカーは冷却され粉砕された後、粒度を揃えて鉄源として出荷されております。えー、ガスクーラーは、排ガスの冷却の熱回収を行っておりまして、そこで回収される熱につきましては、ドライヤーやキルンのバーナー用の空気などとして再利用されております。キルンについては以上となります。それでは次の工程に行きますので、バスの方へお乗りください。

 バグフィルターのある建物の温度表示を見ると、建物内は30度とありました。参加者から「さぞかし暑いよね。あつかっただろうね」との感想がつぶやかれました。

■10時15分、参加者を乗せたバスは、ロータリーキルンのある場所から、再び急坂に出ました。当会は再び質問しました。

当会:鈴木部長、またすいません。小川ですけど、また質問させてください。ドライヤーとロータリーキルンは、ともにバッチ式だと思うんですけれども、どういうふうな順序でやっていますか。勿論ドライヤーが先で、そのあとすぐ冷やさないうちに、ロータリーキルンにやって熱効率を考えてそうするのか。それともどこか一回保管してからやるのか。それとドライヤーの方も同じように重油燃焼で、最高温度も同じように1100度だったか、1300度でしたっけ、同じようにやっていらっしゃるんですか?

製造部長:まずですね、連続式ですね。ドライヤーのほうも重油焚きなんですが、ちょっと温度はキルンよりは低いです。で、ドライヤーの方ですが、一度ホッパーの方に入ります。ホッパーに入ったもので、コークスですか。それと一緒に混ぜてキルンの方に投入しますので、まあ、若干、熱は下がりますが、ある程度の熱は持ったままキルンの方へ送られます。

当会:そうでしょうね。では、ドライヤーに投入されるときにはコークスはいれなくて。

製造部長:入れていないですね、はい、そのまま。

当会:フィルタープレスで絞った水分がかなり高いやつを、そのまま中に入れるということですね。

製造部長:そうですね、ある程度水分は残っています。

当会:はい、分かりました。ありがとうございます。

■バスはさらに坂を下ります。まもなく下り終えると、第三電解工場の脇をとおり、K砕置き場(ヤード)に入りました。いつもは放水などあまりしている様子がないのに、きょうはこれ見よがしにあちこちで散水しています。マイクロバスはヤード入口を通過して、K砕ヤードの中央付近でエンジンをかけたまま停車しました。時刻は10時17分です。

次長:(どうすればよいのか、と迷っている風情のマイクロバスの運転手に向かって)はい。(ここでは)下りないです。

製造部長:すいません、こちらの方、防塵対策をやっていますので、ちょっと路面の方濡れていますので、社内で説明いたします。こちらのほうはですね、K砕出荷場と言われるところでございまして、先ほどのロータリーキルンから発生したクリンカーは、ベルトコンベアでこちらのK砕出荷場に送られます。面積としましては約1万2000㎡となっております。で、建設にかかる法的手続きをして、大気汚染防止法に関します粉塵発生施設の届出を行っています。またですね、出荷場に保管した時点では廃棄物には該当しておりませんが、出荷先によっては廃棄物として処理委託する場合もありまして、廃棄物保管場所の条件を満足させた出荷場となっております。具体的な施工内容といたしましては、地面には厚いコンクリート製の土間となっておりまして、周りは高さ4mのセメント製の壁に高さ2mの鉄製フェンスを設置して、粉塵が外部に、周辺に飛散されないように工夫されております。また土間は、先程ご説明しましたが、常時濡れた状態にするなどの、管理にも・・、するなど気を配っております。このK砕出荷場ですね、使用を開始したのは2016年の11月からとなっております。はい、以上となります。

■10時19分、マイクロバスはそそくさとK砕出荷場を後にして、隣にある第三電解工場に移動しました。そして電解工場の東側のスペースに停車しました。10時20分、参加者はバスを降りて、いつものように陰極板と陽極板が立てかけて展示してある場所に集まりました。

参加者:ちょっと質問いい?問題になったあの砂(注:鉛やヒ素を高濃度に含有した有害スラグのこと)だけど、今どこにもっていっているのかしら?

当会:ハッキリ分からないんです。(東邦亜鉛に)聞いても教えてくれないから。

参加者:そうなの?

当会:基本的には、産業廃棄物なんですけれども、ただ有価物という括りでどうもね、出荷している・・・だから群馬県は「あれは産廃だ」と言っているが、よくわからないです。聞いても教えてくれません。

参加者:どこか道路に使っちゃったらしいね。

 東邦亜鉛側は参加者のやりとりを聞いてか知らずか、なにも口にしませんでした。まもなく、鈴木製造部長の説明が始まりました。

製造部長:えー、こちらはですね、第三電解工場となります。以前はですね、新電解工場という説明をしておりましたが、本年より名称を第三電解工場と変えております。ここでは、亜鉛の溶解液を電気分解して、金属の亜鉛を採取しております。亜鉛電解の仕組みにつきましては、浴槽の中に、こちらの真ん中のアルミニウムでできた陰極板と、右端の鉛入り銀合金で作られましたアノード板。こちらが交互に入っておりまして、その中に亜鉛を溶かしました硫酸亜鉛溶液が満たされております。ここに電流をかけることによりまして、アルミニウム板の、カソード板、こちらの方に溶けている亜鉛が電着してきます。約24時間、電流を流すことによりまして、こちらの左側ですね、にあります、亜鉛、カソード亜鉛がちょうど電着しております。で、こちらの、電着しましたカソード亜鉛、こちらを剥離して製品というふうにしております。それではですね、ちょっと中の方に移動してもらって、見学をしていただきます。

 そして、一同、向かって右手にある階段から徒歩で進み始めました。

参加者:何ミリくらいの厚さなんですか?

製造部長:1から2㎜。大体重さで1枚で9キロくらいかな。2つで18キロくらい。

当会:これ気泡ですか?それとも外部においておいたためですか?

製造部長:水素とは、そういったものが発生しますので、この場合は、あまりいい電着とは言えませんね。

当会:このくらいだとね。その意味では24時間と48時間だったということは、基本的には総電流量というか、それできまるわけですか?

製造部長:そうですね、電流量で決まります。

当会:そうですよね。48時だというと、たとえば、昼間というか全体の操業の関係で、あるいは時間帯で色々と考えてやられているわけですね?

製造部長:そうです。前は夜間電力を使用していたりしていたので24時間や48時間ということもありましたが、まあ今は昼夜だけですので、この第3電解工場としては24時間となっています。では、工場の中に入っていきます。

■参加者は、金属製のステップを靴底でコンコンと鳴らしながら、通常の建物だと3階くらいに相当する階段を上って、電解工場の中に入りました。

製造部長:はい、こちらはですね、第3(電解)工場の中となっております。電解液のほうはですね、ちょっと見えづらいですが、奥の方が電槽となっております。そちらのほうにですね、先程のアノード、カソードのほう、こちらを入れた浴槽が約1系列72槽で、2系列ございまして、144槽ございます。ちょうど中央に電解液が入るパイプがございまして、そこから各電解槽に供給されまして・・・(その時ブーッとアラームが鳴りました)。すいません、センサーがついておりまして、近づくと鳴りますのでご注意ください。すいません。直流電流を流して電気分解させますと、陰極板ですね、カソード板に電着します。こちらですね、こちらカソードに電着しました亜鉛の方を剥離するところとなっております。クレーンで、ですね、カソードの方を持ってきまして、ちょうど後ろ側に剥離機と呼ばれるものがありますので、こちらの方でですね、電着したカソード板の方を剥離します。で、剥離し終わったカソード板は、また再び電槽に戻しまして、また、電流を掛けることで亜鉛を電着させるというようなことをしております。で、電解液の方はですね、亜鉛濃度が低下いたしますので、その低下した液は亜鉛尾液(びえき)と呼ばれておりまして、まあ再び溶解工程、亜鉛の溶解工程に戻しまして、原料を溶解する溶液として使用しております。はい、第3電解工場は以上となります。再び戻りまして次の工程へ行きますのでご移動の方お願いします。

当会:アノード板とカソード板の距離は研究している?少し進歩している?

製造部長:そうですね。第3電解を作るときにたぶん。

当会:究極にやっている?

製造部長:そこからはもう・・・

当会:もう無理でしょうかね?

製造部長:それほど(進歩はしていない)ね。

当会:それ(電極同士の離隔距離)が効率に一番影響するらしいから。

■10時30分、一同、階段を再び降りて待機していたマイクロバスに乗りました。バスは次の工程である鋳造工場に向かい、10時34分に着きました。

製造部長:ここは先ほどの電解工場で剥離しましたカソード亜鉛を溶かして、製品として鋳造している鋳造工場となっております。亜鉛製品は常時、120種類前後の品種を作り分けておりまして、少量生産のものも入れると、約200種類を超えまして、多種多様な亜鉛製品を製造しています。その製品の6割が、こちらにあります調合亜鉛と呼ばれているものとなっております。調合亜鉛は、高炉メーカーの方へ納入しまして、自動車部品などの薄板鋼板メッキに使用されております。調合亜鉛にはですね、他の金属を添加しない純亜鉛のものや、アルミニウムなどの金属を添加する亜鉛合金がございまして、カソード亜鉛をですね、低周波誘導溶解炉と呼ばれる炉で、ですね、約500度で溶解しまして、アルミ二ウムにつきましては重油バーナーの溶解炉、これでアルミ地金を溶解しまして、調合炉に必要な亜鉛、アルミ、その他金属を調合しまして、調合炉の方へ投入して合金を生産しております。ちょうど中段に見えます炉の方が調合炉となっております。調合炉の方はですね、3基備えておりまして、生産能力は1日あたり240トン程度となっております。調合炉では自動計装しまして、ユーザー各社規定の金型、あのう、黄色とかオレンジとかピンクとか、塗られている金型です。そちらの方に流し込んで冷却、凝固させたのちに、金属・・・金型底部から自動押上げ機によって抜き出して製品となっております。はい、では続きまして、電気亜鉛の鋳造工程のほうへ行きますので。まあちょっと歩いて、よろしくお願いします。

 10時37分に歩き始めて、ふと見上げると、2008年の中道機械製造の天井クレーンが見えました。ちなみに同社は翌2009年に倒産しました。あたりには、相変わらずエア・タイタンパーの酷い騒音が響き渡っています。金型から鋳造物を取り出すためのタイタンパーの騒音が主です。

製造部長:製品の方は熱いので触らないようによろしくお願いします。

 そして10時38分に、隣の電気亜鉛の鋳造工場に移動しました。

製造部長:はい、こちらはですね、電気亜鉛と呼ばれる製品を鋳造している工場となっております。電気亜鉛は、メッキや伸銅製品に使用されております純亜鉛の製造で、調合亜鉛同様に、カソード亜鉛、これを低周波誘導溶解炉、こちらも500度になります。これで溶解しまして、約20キロ、1枚20キロのインゴットケースが鋳造されております。で、こちらの方は連続鋳造機ということで各ケースに流し込んで凝固させます。で、連続する各ケースから抜き出されたスラブと呼ばれております電気亜鉛。こちらはですね、手前に見えますロボットで積み込まれて、結束されております。こちらの方は1枚20キロで、約一山50枚、約1トンで結束されて出荷されております。はい、こちらの方は電気亜鉛の工程となっております。それでは、次の工程に行きますので、バスの方にお乗りください。

 バスに向かおうとすると参加者のおひとりから声を掛けられました。

参加者:この水蒸気(注:亜鉛溶解のヒューム)は問題ないんですかね?あれだけ出ているけど。

当会:問題ありますよ。だから環境集塵といって、いちこうスカスカですけども吸い込んで集めてバグフィルターで濾しとっていると言っていますけれどもね。風が吹いたら一部流れ出すかもしれませんね。

参加者:風が抜けちゃっているわけね?

当会:以前は仕切りがなかった。また、屋根や壁にも穴が空いていたときもある。その後はここを全部仕切ったんです。もう10年くらい前になりますが。

参加者:クレーンゲームを見ているみたいだね。皆、機械がやってしまうんだ。

会社司会:あのカーブミラーのところで止めて下さい。

 10時45分、マイクロバスは浄水施設に到着しました。サンドフィルター脇の階段は緑色のペンキが塗られたばかりでした。

製造部長:ここは排水処理工程となっております。製錬工程の雑排水、こちらの集水池に集めておりまして、製錬工程内のですね、さまざまな溶液、尾液とかですね、こちらの方は繰り返して使用する為、工程外の方には出てきません。ただ、それ以外の雑排水、例えば床を洗った洗浄水、道路を洗った洗浄水、生活排水などはですね、こちらの集水池、こちらの集水池に集められています。えー、集水された排水につきましては、ポンプで揚水、上げまして流量を調整しまして、中和槽と呼ばれるところですね。そこでですね、苛性ソーダ、水酸化ナトリウムでpHをアルカリ性ですね、そちらの方に持っていきます。そうしますと排水中の金属イオンが水酸化物、そして固体として沈殿していきます。次に、その下のシックナー、固液分離設備ですね、こちらの方に流します。まあ、その中和液に凝集剤を入れて、添加して中の固体分、こちらを沈殿させながら、上澄み液と濃縮スラッジの方に分離して行きます。スラッジの方は、自動フィルター、ろ過機でろ過しまして、炉液の方は沈殿池に戻しまして、ろ過滓ですね、回収ケーキになりますが、こちらの方は再び亜鉛電解尾液等に溶かしまして亜鉛原料として戻します。シックナーの上澄み液の方は、もう少しまだ微細な固形分が残っておりますので、そちらの方をさらに除去するために、砂ろ過と呼ばれるものでろ過します。炉液の方は、さらに沈殿池を経由してpHを調整した後に、希硫酸でpHを約8パーセント前後、中性ですね、に、逆中和して、この液を、水をですね、延長放水路で(高崎市八幡町の)金ヶ崎まで導水されまして碓氷川の方に放流されております。この逆中和槽、逆中和処理ではpHの方を常時監視しておりまして、PHの異常がありました場合は、安全ダンパ-が作動しまして、放水路の方を止めまして、第2集水池の方に入るようになっております。その他ですね、亜鉛鋳造工程等、間接冷却水である工業用水等ですね、こちらの方につきましては水量等をチェックしたのち旧放水路から柳瀬川の方へ放流されております。はい、浄水工程、ここについては以上となっております。それはまた、戻りますので、またバスの方、ご乗車をお願いします。

当会:鈴木部長、最後におっしゃった柳瀬川に放流というのは、もういちどお願いします。どういうやつを金ヶ崎ではなくて柳瀬川に放流されていますか?

製造部長:えーと、上流の方で引っ張ってきた工業用水、冷却水は、それはそのまま工程に触れないので、そのまま。

当会:それ以外は柳瀬川に放流していませんよね?

製造部長:はい。

当会:だから混じることはないですよね?プロセスに。

製造部長:それはないです。

■10時51分、バスは参加者を乗せて浄水施設を出発し、事務棟に向かって走り始めました。

当会:すいません。これ中島さんにお聞きしたほうがよいかもしれません。亜鉛華がありますよね、粉末の亜鉛。これは出荷先は、タイヤのゴムの重合促進とかいうふうに、主に使うと思ったのですが、他になにかあるんですかね。ペイント類。私は船の専門なので、造船用鋼材では、ショットブラストをかけたあと、ジンクリッチペイントを吹き付けるんですけどね。その亜鉛を豊富に含んだ、まあ防錆塗料ですけれどもね、こちら向けには、例えばペイントメーカーには出していらっしゃるのですか?わからない?

会社司会:すいません。えーと、亜鉛華なんですけれども、以前はこの安中の工場で作っていたんですが。

当会:さっき、あったではないですか?

会社司会:いや、今、亜鉛華はもうだいぶ前に生産はやっていないんですよ。

当会:じゃあ、他社がやっているわけですね?

会社司会:はい。あの、小名浜ではやっていますよ。別の製品として。安中では今、亜鉛華の製造はやっていません。

当会:塗料向けにもあるんですか?それ、販売先として。

会社司会:亜鉛華で塗料向けというのはあまりないと思います。亜鉛末としてはあります。ただ弊社の亜鉛末はジンクリッチペイント用の亜鉛末とちょっと違うので。製造方法がちょっと違うんですよね。

当会:ああ、分かりました。ありがとうございます。

■10時54分、マイクロバスは事務棟前に到着し、参加者はそれぞれヘルメットを返却して、中に入りました。

参加者A:亜鉛華はさ、焼き物でよく使うんだけど。銅と反応させると色が出てくる。どういう理屈だかは分からないが、こんなようなカーキ色のような色を出す際に使う。

参加者B:亜鉛華は昔女性が使っていた。白粉(おしろい)ですよ。白いおしろいで。今はなんに使うのだろうか?

当会:たしかタイヤですよ。なお、白粉は酸化チタンが今使われているらしい。

 どうやら当会として、亜鉛華(酸化亜鉛のパウダー)と亜鉛末(純亜鉛のパウダー)を混同していたようです。しかし、調合亜鉛のコーナーにはドラム缶に入った粉末状の亜鉛粉のようなものがあったので、これらは、多分この安中製錬所のプロセスで使っているようです。

■11時ちょうど、事務棟の2階にもどった参加者に会社側から声がかかりました。

会社司会:えー、ご視察の方、大変ご苦労様でした。予定ですと、視察のあと、意見情報交換に入る前に休憩となっておりますが、例年このままいつも休憩せずにやらさせていただいておりますので、今年もこのまま再開ということでお願いしたいというふうに思います。すいません、マスクにつきましてはご不便でしょうけど、引き続き着用の方、よろしくお願いしたいと思います。スケジュールの方を説明させていただきますと、本日視察会終了予定、11時45分というということで計画をさせていただいております。ご協力の方よろしくお願いをいたします。そうしましたら、意見情報交換会に移らせていただきます。意見情報交換会で、会社側の司会を担当させていただきます。引き続きやらせていただきます。よろしくお願いします。それでは令和4年度の経過、それと令和5年度の設備改善計画につきまして、所長の森田よりご報告をさせていただきます。

所長:それでは令和4年度の設備改善計画と令和5年度の改善計画について簡単にご説明させていただきます。ともあれ、製錬所内のご視察、大変お疲れ様でございました。早速でございますが、昨年度の大きな工事案件としましては、ひとつはですね、キルンの整備、あの長い筒のかたちのやつですね、あれの支点が3つございますが、その第3支点の受ローラーということで、この夏、大きな工事をさせてもらいました。2番目はですね、亜鉛の鉱石中に銀の鉱石も混ざっておりますので、それの回収量を増やすというための遠心分離機の増設をさせてもらっております。3番目には、これは公害防止関係の設備でございますが、昨年から、いや、一昨年からですね、第2集水池の補強工事に引き続きまして、昨年はですね、第3集水池。東側でございますが、その集水池の補強工事をやらせてもらいまして、まあ、挙げました工事すべて完工をしております。で、本年度2023年、令和5年度でございますが、大きな工事としましては、昨年もお話し、説明させてもらいましたキルンの、同じくシェルの、今度はですね、第1支点のローラーの製作と第2支点のローラーを交換するという工事を行います。あと、2つ目にはですね、亜鉛の電解工場がございますが、アノード・クリーナーという、正極、陰極、両方の・・陰極、陽極の両方がございますが、その陽極のですね、まあいわゆる正極ですね、クリーナーを増設するということでございます。3点目としましては、今年度はですね、今度は、第1集水池の西側の、集水池の補強工事を行う予定です。まあ、8年前から集水池の工事はずっと続けてまいりしまして、もうあといくつかというところまで来ております。まあご承知のとおり、一昨年前から焙焼炉と第2電解工場を、まあ役目を終えて縮小したということでございまして、安中製錬所では今、コンパクトな亜鉛工場ということで、以前のような生産量を縮小しながら、改良を続けております。まあ、公害防止設備につきましては、これからも計画的に更新し続けてまいりますので、地元の皆様のご理解をよろしくお願いしたいというふうに思います。引き続きまして懸案事項については、環境の中島より引き続き発言をしてもらいます。以上でございます。

会社司会:では、引き続きまして環境担当の中島、私の方から環境関連の懸案事項につきまして、令和4年度の主な経過等についてご報告を申し上げます。まず最初に公特事業の推進につきまして、ご報告をいたします。岩井畑地区の碓氷川流域農用地土壌汚染対策事業、こちらでございますけれども、令和4年度末、今年の3月ということになりますが、こちらで完了したということで群馬県農政部技術支援課より報告がございました。令和5年、今年ですね、3月29日に客土工事について県の完成検査が行われ、合格したという報告でございます。野殿地区の公特事業について、でございますが、昨年はですね、10月の3日付で碓氷川流域地区公害防除特別土地改良事業に係る事業実施予定地内土地申告書、あ、申請書、参加確認書の記入の提出について、という通知がございました。この通知につきまして10月27日に、北野殿の公会堂で開催されました説明会、こちらに参加をさせていただき、申請書・確認書の提出をさせていただきました。令和5年2月10日、こちらに土地改良事業を実施する区域内外の境界立会いが行われました。こちらには会社も参加をさせていただきました。場所につきましては安中製錬所の南東側、天王塚古墳の周辺ということでございました。以上が公特事業に関する実施状況の情報などの概要でございます。公特事業につきましては、今後も県や市ですね、こういったところと情報交換をしてきたいというふうに考えております。皆さんの方で情報がございましたら、お聞きしたいというふうに思います。続きまして、令和4年度産米のカドミウム濃度の調査結果についてご報告をさせていただきます。安中市で行った検査結果では、特に問題ないということでご報告をいただきました。また高崎市の検査結果でも異常なし、ということで報告を受けております。以上が、会社が把握しています令和4年度の情報などについて、でございます。細部につきましては、ご質問にお答えするかたちでご理解賜りたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。では、以降の進行につきましては、高坂先生にお願いしたいと思います。高坂先生、よろしくお願いをいたします。

守る会司会:皆さん、大変お疲れ様でした。今日の視察会で気付いたこと、或いは日ごろ疑問に思っていることやら、ご意見、その他なんでも結構ですから皆さんの方でご質問がありましたら、お願いしたいと思います。どうでしょうか?

当会:はい!

守る会司会:はい、どうぞ小川さん。

当会:小川でございます。

会社司会:すいません、小川さん、ちょっと、マイクをお使いください。

当会;でかい声だから大丈夫です。

会社司会:いやいや、ちょっとマイクをお使いください。

当会:いつもお世話になってます、地元在住の小川賢です。えーとですね、今いくつか、一杯話したいことがあるんですけれども、まあ限られた時間内なので、また詳細は昨年と同様直接、まあ会社側といろいろと相談とかね、報告とか、情報共有したいと思うんですけれども、えーと、まず先ほど公特事業、昨年7月12日に推進委員会の会長になれということでご推挙いただいて、半年余りになりますけれど、岩井地区は一応終わりました。終わりましたが、最後の畑地の件で、まあいろいろトラブルと言いますかね、予期せぬことが起きて、で、急遽私のところにもいろいろ情報が入ったのですけれども、えー、話すと長くなるんですけども、分かりやすく言うと、あそこの排土置き場、ここに、私が聞いている情報なので、間違っていたら工場側さん、東邦亜鉛さん当事者ですから間違っていたら指摘してくださいね。昨年の5月に群馬県の環境保全課、こちらが任意で、あそこの排土置き場の土壌環境基準についての調査をしろと、こういうことが命令ではなくて任意で御社に問合せがあったとか、要請があったと聞いています。で、その結果につきましては12月、最初12月だと思ったんですけど、色々二転三転して今年の1月になって御社から群馬県の方に、報告が上がったと。それの内容は(県は)全然開示してくれないんですけれども、どうやら環境基本法の土壌環境基準、26項目のうち・・・29項目だったかな、えーと、3項目について環境基準を超えているというデータが皆さんの方からデータとして、調査結果として群馬県に上がったという。で、これにもとづいて群馬県が、環境保全課がどういうわけか、同じ環境森林部の廃棄物・リサイクル課の不法投棄対策係、こちらの方に情報共有をして、で、土砂条例、群馬県の土砂条例というのが10年くらい前に設定されたようですけれども、関東で一番遅くね。で、それに抵触するので、そういうその土壌環境基準を超えた土砂は、一切移動はまかりならぬと。運んでもいけない、移動してもいけない、ということで、急遽最後の排客土工事をする予定だった圃場につきましては、天地返しという工法に急遽切り替えて実施して、何とか3月末に事業を完了したということ。先程中島室長から報告がありましたけれどもね。これ御社にいろいろお聞きしたいんですが、群馬県が教えてくれないからね。どれくらいのデータが出たのかということ。これまでは農用地の土壌汚染防止法でこの事業をやってきたのですけれども、新たな視点から、また検討を加えないといけないということになりかねないんですよ。なので、今、群馬県では工法の変更の検討について、今、スッタモンダしています。是非、ですね、どういうデータが出たのか、後で教えて下さい。群馬県に聞いても教えてくれません。不思議です。それが1点、お願いです。すいません、あと2つ、3つあるんですけれどね。それから水質について、毎年、群馬県は環境白書というかたちで、ですね、白書を出しています。その中の「第7節 特定地域の公害防止対策」、この中の第1項で「碓氷川・柳瀬川流域」という項目で、環境保全課が大気・土壌・水質について調査した結果を載っけていますね。で、大気につきましては、先程お配りしたように、例年、私が群馬県の情報開示請求(制度)に基づいて、それまでの、群馬県が毎月1回測っています。

工場周辺に4か所。(ダスト)ポットジャー。要するに降下煤塵。上から降ってくるチリを、直径25センチかな、ポッドに溜めて、それを業者に内容物を検査させているわけですね。えー、そこに書いてあるように、煤塵量、それから亜鉛、カドミウム、ヒ素ですね・・・あ、鉛ですね。この3つ。えーと、先ほど申し上げたその土壌環境基準を超えたという、その項目がそれに合致するのかどうかも分かりませんけれども、これ、黄色でちょっと多めのやつをマーキングしています。で、私、これざっと見てですね、ざっとですよ、気が付いたのが、煤塵量はまあ、あまり変わっていないですよね。亜鉛が少なくなっている。これは亜鉛の生産量が昨年から減っているということに関係しているのかなあ、という気持ちがします。しかし、その他のカドミウム、鉛。これはあまり劇的に減っていないんですよね。これ不思議です。ぜひ会社側でこういったことについて、当然、地元の住民の安心・安全な生活環境の保全という観点から分析していただいているかとは思うんですけれども。この改善策、まあ原因ですね、原因と改善につきましては、情報共有をしていただけると本当にありがたいと思っています。で、次に水質なんですけれども、この水質につきまして、群馬県の環境白書に各5年間の数値というかたちで、その平均値と言いますか、ざっくりこうまとめた数値が載っているんですけれども、私はこれを具体的に知りたくて情報開示請求をしました。ところが群馬県はですね、えー、東邦亜鉛さんの、その浄水施設の直下2箇所、これにつきましては群馬県が真っ黒けにしているんですよね。あの、10年間にわたりやったんですけれども、いずれも黒塗りなんですよ。黒塗り、こうに黒い横筋が入っていますけれども。なので「何とかしてくれ」と。東邦亜鉛さんは、「水質も環境基準はきちんとモニタリングして、対策も施して、環境基準を上回ることはない」とこういうふうにおっしゃっていました。で、環境白書にも概略ですけれども、載っています。確かにその下流のところに比べると水質、重金属は多いです。だけども「基準値を上回っていない」というんですね。「これおかしいんじゃないか」と群馬県に掛け合いましたが、出してくれません。じゃああのう、これ東邦亜鉛さん、当事者に第三者照会、つまり県民が開示を請求しているけれども、これ見せてやってもいいのかどうかと。「それをやりましたか」と聞いたら「いや、やっていない」と、こういうんですね。「いや是非やってくれ」と、「請求者が地元の小川賢だと、それも伝えていいから、やってくれ」とお願いすると同時に、東邦亜鉛さんに対して、1月23日に「第三者照会が群馬県からあるだろうから、きちんと黒塗りにせずに開示してやってくれ」と、「そういうふうに協力してくれ」とお願いしておきました。で、その結果、延ばしに延ばされて、つい先月の下旬ですね。えー、開示通知をするというので(県に)行ってきました。「前回と同じ」。ということは、東邦亜鉛さんがね、地元住民の開示請求に対して、第三者照会を直接お願いしたにもかかわらず、「悪いけど、出すと都合が悪いから、出さねえでくれ。そのまま黒塗りにしてくれ」と。こういうふうに答えられたのではないかなあ、という推察が、私としては十分に成り立つわけです。お願いです。県に対して、基準値を上回っていないんだから、生データ。これ、群馬県が測ったやつですよ。皆さんが測ったのではなくて、我々県民の払った公金、血税で測っているわけです。しかも、白書に書いてあるように環境基準を上回っていないということですから、これはぜひ、すぐに、来週月曜日でも環境保全課に言って「出してやってくれ」と。「第三者照会、前のあれは取り消すから」と。こういうふうにお願いします。強くお願いします。えーと最後に、先ほども説明がございましたけれども、これ、まあ、住民の私が、御社の経営について、とやかく言う立場ではありませんけれども、中島室長さんからも話しがありましたように、電気代が高騰していますよね。私もまあ、いろいろまだ半分、あの、現役でやっているんですけれども、いろいろな業界から「東邦亜鉛さん、電気代高騰で、まあ東邦亜鉛さんに限らずね、電解プロセスで商売している製錬会社、これ大変ではないか」と。「とくに東邦亜鉛さん、こんな内陸でやられているわけだから、鉱石の運搬だとかね、あと、まあスラグの処理にしても、まあ、いろいろコストがかかる。ひょっとして撤退するんじゃないの」と、こういう声もちらほら聞こえてきますが、これについて「いや、そんなことはないんだ。製品価格に転嫁して、サステナブルで、これからも事業を進めるんだ」と。まあその辺、本社の方の皆さんもオンラインで出ていますから、ぜひですね、我々に対して、「SDGs、サステナブルな事業でこれからもやっていくんだ」と。こういうことを、明確にお示しできるのであれば、そうしていただきたいし、いや実は噂ではなくて本当なんだ、というのであれば、まだプレスリリースされてないかもしれませんけれども、そういうつもりだというようなところも、もしできれば前倒しでお話しいただけると幸いです。以上です。

守る会司会:はい、それでは会社の方で、お答えしていただきたいと思いますけれども、まず、あのう、岩井地区での土染対策事業について、会社のほうとして、まあ小川さんのほうからはいろいろ質問がありましたが、会社の方としてはどういう事実を認識されているのか、ご説明をお願いします。

司会:それでは、私、中島の方からお話しさせていただきます。排土処理場の土壌調査につきましては、えー、群馬県の要請を受けまして、群馬県土砂等による埋立て等の規制に関する条例、これに準じた調査を行いました。この土壌調査の結果につきましては、群馬県に報告をさせていただいております。ただ、先ほど小川さんからもありましたように、群馬県からは情報が出ていないということですので、その結果の報告については、この場では控えさせていただきたい、というふうに思います。土壌の調査については以上でございます。

守る会司会:あのう、まあ、基準を上回る結果が出たということは、どうも確かなようなので、それは、あのう、せっかく皆さんがここにお集まりになってですね、多くのかたはやっぱりその対策事業にも関わっているし、これから野殿のほうにも関係いてくるわけですけれども、どういう結果が出て、どういうふうに処理されたということは、ちゃんと皆さんにお伝えしたほうがいいと思うんですね。何がなんだか分からないということでは、やっぱり信頼関係は生まれないので、問題があったことについては問題として捉え、それをどう対応していくかと、そこでまあ、会社の姿勢が問われるわけですので、それはちゃんと分かる限りはご説明していただきたいと思いますけど。

製錬所側:・・・・

守る会司会:本社の方からお答えいただいても結構ですよ。

当会:石井さん、お願い。

本社側:・・・・・。・・・・・・。

環境安全室長:はい、えーとそれでは、あのう、東京の環境安全の石井でございます。えーと、あのう・・・聞こえていますか?大丈夫ですか?

当会:ああ、よく聞こえますよ。

環境安全室長:はい、えーと、公特事業につきましては、皆様がた、ご存じのとおり、事業につきましては群馬県様、それから安中市様が、あるいは地元のかたのご要望ということで、進められているということでございます。で、当社といたしましては、事業に協力するために、先ほど冒頭ご紹介しましたけれども、排土置き場への、当社の土地の排土置き場への提供、それから客土の仮置き場の提供ということで協力させていただいております。で、あくまで事業につきましては、群馬県さんの方でやられているということでございます。で、先程ほど申しました、中島の方からご説明いたしましたとおり、分析その他につきましては、群馬県環境森林部の指示というか、それで行ったと、いうことでございます。で、それらの結果を受けまして、えー、群馬県の農政部さんのご説明によりますと、まあ、それらの対応につきまして、現在排土置き場につきましては、えー、皆様の、その地権者の方々の土地の排土を、取り除いた土を排土置き場に入れまして、で、その上に新たに飛散しないように約45センチ、50センチの覆土、新しいきれいな土を被せたと、いうふうに説明をいただいております。で、これらの対応によりまして、えー、土壌の飛散というのを防ぎまして、近隣の皆様に影響がないようにしていると。あと、ちょっとまあ、詳細については私よくわかりませんが、皆様の方が・・・地元の皆さまの方がよくご存じかと思いますが、その近隣には、飲用、あの、井戸に、あの、飲み水に使っている井戸はないというふうな、そういう結果ですので、法律上、こういったことで大丈夫であるという判断をもとに、群馬県の農政部様がそういう判断ということで施工されているというふうに聞き及んでおります。ということで、先ほど申し上げたけども、ちょっとまあ、答えになっていないかも存じませんけれども、あくまでも、群馬県様の農政部の主体で事業が行われているということで、環境とか、あの、そういう確認につきましては、今申し上げました、・・・これから・・・というような、そういったことで、影響がないということで、進めたのだというふうに聞き及んでおります。以上雑駁な説明ではございますが、東京からのご連絡でございます。

当会:オーマイガー。

守る会司会:あのう、まあ、具体的な環境基準を上回ったかどうか、そういうこともお尋ねしているわけで、その点は、まあ、上回ったのは、それは上回ったのでそれは事実なので、仕方がない話で、それに対して今後どうするかという問題になっていくと思いますので、その点は、会社は事実を把握していると思いますので、明らかにしていただけませんか?

環境安全室長:はい、あのう、そこにつきましては、ちょっと、あのう、群馬県さんに・・・この件につきましては、ちょっと会社の一存で、ちょっと申し上げられない点が、ちょっとございますので、えー、群馬県さんのほうで、ちょっとあのう、調整というか、確認が必要ですので、ちょっと申し訳ありませんが、この場ではちょっと申し上げられないということで、ちょっとお時間をいただければと思います。よろしくお願い・・・ご理解いただきたいと思います。

守る会司会:そのことは非常に重要な問題だと思っていますので、今日、まあ即答できないということであれば、きちんと対応をお考えになって、また事前協議なり、なんなりの席で、ご説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

環境安全室長:はい、承りました。

守る会司会:それから、小川さんの方からご質問というか、要望のありました水質についてのデータ。それが、群馬県から具体的なポイントについて開示されないと。会社はご了解されれば開示されるはずだということについて、ですけれども、これについてご回答をお願いしたいと思います。

環境安全室長:ではあのう、東京から回答させていただきます。えーと、開示の請求につきまして、小川さんの方から請求されたということでございますけれども、内容につきまして、あのう、回答の可否につきましては、これはあくまでもご判断につきましては、申し訳ございませんけども、それは群馬県の環境森林部のご判断ということでございます。で、あくまでその決定につきまして、可否につきまして、当社が申し上げる議題ではないかと存じておりますけれども、それで、その可否につきまして、公開につきまして、当社がちょっとこの場で申し上げていいのかどうかというのは、ちょっと、申し訳ございませんけれども、なかなか回答は難しい議題だと考えております。ちょっと回答になっていないかもしれませんけれども、はい、以上でございます

当会:オーマイガー。

守る会司会:あのう、えーと、東邦亜鉛のほうでは、群馬県に対しては、この情報を開示することに異議はないというご回答をされたけれど、県が開示しなかったということでしょうか?

環境管理部長:えーと・・・回答・・・はい、申し訳ありませんけれども、あのう、回答のその、あのう、内容につきましては、今この場ではちょっと申し上げられません。あの、大変申し訳ございませんけれども、ちょっと申し上げられないということで、えー、ノーコメントというふうに回答させていただきます。申し訳ございません。

守る会司会:あのう、それを今ここで私たちが納得するという訳にもいきませんので、それも引き続きご検討お願いしたいと思います。

環境安全室長:はい、分かりました。承りました。はい。

守る会司会:それから第3点目、これは具体的な質問ということではありませんけども、東邦亜鉛がこの地で引き続き環境に留意しつつ、操業を続けられるのかどうかということについてですけれども、まあ、これについてもお答えいただければと思いますが。

会社側:・・・・はい、・・・・えーと、

当会:取締役、森田さん。

守る会司会:あのう、どなたでも結構ですけれども。

所長:では、今のご質問につきましてはですね、まあ、非常に厳しいというのはご承知の通りでございます。まあ、そうは言ってもですね、我々はあのう、この地からいろいろと、まあ、当社がこう築き上がってきたという事情もございますし、もう、そこのところは、ずっとこの地で頑張るというふうには変わりございませんし、もっと言いますと、この地でいろいろと働いていただいている人たちもおりますので、そういう意味合いでもですね、頑張っていきたいというふうに思います。まあそういうことで、お目通りさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

守る会司会:はい、ありがとうございました。えー、他にご質問、ございますでしょうか?

参加者一同:・・・・。

守る会司会:よろしいですか?それでは質疑はこれで終了ということにさせていただきます。ありがとうございました。

会社司会:高坂先生、ありがとうございました。そうしましたら、視察会終了に当たり、代表挨拶を頂戴したいと思います。安中緑の大地を守る会事務局長、白石さん、よろしくお願いいたします。

事務局長:本日はご多忙中のなか、第32回工場視察会にご参加いただき誠にありがとうございます。「継続は力なり」と申しますけれども、32回、あのう視察会を開催してきて、その中でいろいろな意見の相違や立場の相違のなかでですね、議論をいただき、・・・生活環境の創生に向けて努力をしてきたことは評価されるべきだと思います。本日は、最後に、設営に尽力された東邦亜鉛の関係者の皆様に御礼を申し上げまして、最後のご挨拶とさせていただきます。今日はありがとうございました。

会社司会:どうもありがとうございました。それでは私ども会社の方からは、常務執行役員総務本部長の大久保よりご挨拶を申し上げます。

総務本部長:本社総務本部の大久保でございます。僭越ながらちょっとご挨拶させていただきます。本日は5月8日には新型コロナウイルス、また感染症の、今回5月8日には新型コロナウイルスの分類が2類から5類に引き下げになるようですけれども、ひとえに皆様におかれましては引き続き、参加人数のご協力や、マスクの着用等、指示を、ご不便、ご負担をおかけしました。そうした中で4年ぶりに4月に第32回安中工場視察会が開催でき、ご参加いただきましたことにつきまして御礼申し上げます。皆様のご協力によりまして、今回は無事に終了できました。重ねて御礼申し上げます。また弊社はですね、弊社安中製錬所、ならびにその従業員と家族が大変お世話になっており、誠にありがとうございます。本日、議題でも話題に上げられましたけれども、公特事業に関しましては、岩井畑地区につきまして、本年をもって完了したということを聞き及んでいます。長年の懸案であった課題の解決に向けた一歩と考えておりまして、誠に喜ばしい限りでございます。安中製錬所におきましては、設備のコンパクト化を鋭意推進しております。今後とも従業員一丸となって、安全、安定操業をモットーにさらなるコストダウンに努めますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。また先ほど小川さんからもご指摘がありましたけれども、足元の亜鉛事業を取り巻く環境につきましては、当社の生命線であります電気代は依然として高止まりしております。また、亜鉛相場は景気後退懸念を受けて、下落傾向にあるということで大変厳しい状況であります。かかる危急存亡の危機ながら、この励ましをいただき、まさに皆さまをはじめとする地元のかたがから、先程も当社の森田が申しましたように、共存共栄、今後とも共存共栄できるように、全従業員で知恵を絞り、歯を食いしばって日々精進してまいりますので、今後とも、ご支援ご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。えー、最後に大変恐縮でございますが、ここにご列席の皆様とご家族の皆様のご健勝を心より祈念いたしまして、私からの挨拶とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
会社司会:それでは、以上を持ちまして、第32回工場視察会、終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

■こうして第32回安中製錬所の工場視察会が11時41分に終了しました。意見情報交換会での会社側の回答姿勢には参加者も目を丸くしていました。これでは今後、重金属で汚染された畑地の土壌改良事業の先行きは多難と言わざるを得ません。

 しかも、行政による東邦亜鉛への特別な配慮というか、対応ぶりに呼応して、東邦亜鉛側もどっぷりと行政側に寄りかかっている様が明らかに見て取れます。引き続き、こうした理不尽なバリヤーを取り除き、速やかな汚染土壌の入れ替えを図り、安中公害の負の遺産の解消を目指してゆく決意をあらためて確かめた今回の工場視察会でした。

【市民オンブズマン群馬事務局・北野殿公害対策委員会事務局からの報告】

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