■3月27日に倒産したてるみくらぶの事件は詐欺行為ではないかとマスコミや業界筋でも騒がれています。しかし、本来旅行業法ではこうした事態が起きて、利用者が損失を被らないように、わざわざ旅行業協会という官製主導組織が設立されて、官僚の天下り先の受け皿になっているはずです。なぜ、今回、損害の僅か1パーセントしか救済されないのでしょうか。それは、旅行業法そのものを運用する権限を持つ旅行業協会に問題があるのです。
まずは当会のブログ記事をご覧ください。
○2017年4月6日:
長年顧客に喜ばれた「はらぼじ観光」が証明した「てるみくらぶ」破産で何万人を大損させた旅行業法の無意味↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2284.html#readmore
一方、旅行業法に定める顧客との金銭取引を一切しない業態を作り上げて、何万人もの顧客に対して満足のいくサービスを提供し続けていたはらぼじ観光は、群馬県旅行業協会に登録せずにあっせんを行っていたとして、群馬県旅行業協会の依頼を受けた全国旅行業協会の顧問弁護士ら7名連名で提訴され、1審、2審、そして最高裁においても無罪を主張しましたが、裁判所ははらぼじ観光に対して30万円の有罪判決を下したのでした。
はらぼじ観光の問題は「日本旅行業協会」ではなく「全国旅行業協会」が、新しいビジネススタイルを構築した業者を見せしめ的に締め出した事例ですが、日本旅行業協会も、全国旅行業協会と同様に、カネだけを集めて、肝心の旅行業の発展に寄与する事業は何もしていない組織です。
はらぼじ観光は、旅行業法で定義される顧客との金銭取引をやめて、「今後はお客さんから前集金しないから、供託金(=許認可)なしでもよいでしょう」という主張を宣言して、仕事をしていました。だからこそ、顧客との金銭トラブルは皆無で、一度もクレームを受けたことはなく、そのきめ細かいサービス対応は多くの顧客に十分な満足度を与えていました。
■今回の、てるみクラブの倒産は、はらぼじ観光を旅行業違反容疑で訴えた全国旅行業協会と同じ形態の日本旅行業協会の会員会社(補償社員)を隠れ蓑にして、多額の旅行代金を顧客からだまし取ったことで被害が増大しました。
日本旅行業協会ではホームページに「弁財補償」について掲載しています。
https://www.jata-net.or.jp/travel/info/qa/bond/170324_terumiinfo.html
この弁財補償というのがくせもので、あたかも顧客が損害を被っても、協会の弁財補償で救助してもらえるようなイメージを顧客にあたえています。
そのため、旅行業界における旅行業協会がいかに旅行業の発展に逆行しており、存在自体が無用なことをアピールする必要があると考えた当会は、このてるみくらぶが起こした「詐欺」事件について、旅行業の健全な発展を願い、消費者庁に次の内容の意見書を提出しました。
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PDF ⇒ 2017tnuic20170501j.pdf
2017年5月1日
〒100-8958 東京都千代田区霞が関3-1-1中央合同庁舎第4号館
消費者庁 御中
〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
市民オンブズマン群馬
代 表 小川 賢
事務局長 鈴木 庸
連絡先:電話 090-5302-8312(小川携帯)
電話 027-224-8567(事務局)
FAX 027-224-6624(事務局)
意 見 書
件名:てるみくらぶの倒産と旅行業法の弁財業務保証金分担金制度の弊害について
前略 当市民オンブズマン群馬より今年の4月5日付で「
件名:全国旅行業協会が賛助会員として積極的に営業を認めている総合案内所の違法性について(旅行業界における『官製カルテル』の存在)」の文章はすでに送ってあります。
それに関連して、旅行業法と旅行業協会の現状が消費者被害を拡大させているという典型的な「事件」が起こりました。2017年3月27日に東京地裁に破産を申し立て倒産した“てるみくらぶ”のことです。
負債総額151億円は、旅行業ではリーマンショック後で最大と言われており、そのうち約100億円が、一般旅行者約3万6000人のもので、春休みの旅行シーズンに現地でホテルがキャンセルとなったり、帰国できない可能性が生じたり、新卒内定者50人が内定取り消しを通告されたりと、その衝撃は甚大です。
そのため、消費者保護という観点から、調査と対応をお願いしたいと思い意見書を送付致します。
旅行業法には旅行業者として認可を受けるためには供託金を観光庁または各都道府県へ納入するという事が義務づけられています。
供託金を納入する代わりに、観光庁の下部組織である日本旅行業協会、または国土交通通省の下部組織である全国旅行業協会へ「弁財業務保証金分担金」(以下「弁財保証金」と省略)を納入して旅行業の認可を受ける事もできます。
報道によれば、てるみくらぶは日本旅行業協会の会員であり、観光庁への供託金ではなく、日本旅行業協会へ弁財保証金を納入し、旅行業の認可を受けていました。
てるみくらぶの弁財保証金の額は1億2千万円です。また、弁財保証金の額は本来の供託金の額の5分の1です。
てるみくらぶの倒産により、旅行代金を支払ったにもかかわらず、そのサービスが提供されない「被害額」の総額は、弁財保証金の1億2千万円の100倍相当だという報道があります。100万円払ったのに返還されるのはたったの1万円。
それでは、消費者保護にもなんにもなっていないということです。
供託金の5分の1の弁財保証金という制度そのものが、消費者の被害額を少なくとも、5倍にしているということです。
さらに、てるみくらぶは日本旅行業協会の会員だということを広告に盛り込むことで、公的機関が何かを保証するようなイメージを消費者に与えています。間接的にでも協会が詐欺行為とも見られているてるみくらぶの行為に荷担しているという見方もできます。
ちなみに、前回「官製カルテル」の文章は、国土交通省の下部組織である「全国」旅行業協会の違法性についてを指摘したものです。
全国旅行業協会は“はらぼじ観光”の事件に見られるように、消費者から代金を預からない債務が発生しないという業態に対してまでも登録を強要し、協会に会費を支払ってさえいれば、登録なしでの営業を認めています。これでは、やくざの“みか締め料”といっしょです。
日本旅行業協会においても、“てるみくらぶ”から会費を徴収し、供託金の5分の1の額である弁財保証金を預かっているにもかかわらず、これほど多額の被害を出さないための対策を取っていたのかどうかも調査すべきです。
事件がおきてから形式上の補償の提示をホームページでしたところで、1%が返還されるだけでは、消費者保護のために何もしていないのと同様です。ホームページには「被害額は1億2千万円を超える見通しです」という表現で現実に1%しかもどらないということに比べれば現実を偽った表現だとも言えます。
旅行業協会なる組織がなぜ2つあるのかも疑問視されます。
税金の無駄遣いをなくすという当会の目的から考えれば、1つにまとめるべき組織だとも考えられます。
天下りの問題も大きく報道されました。
観光産業の健全な発展のためにも、2つある旅行業協会が、自分たちの収入のためではなく、観光客の利益のための仕事をするように変わることに期待し、御庁におかれましては、“てるみくらぶ”の事件に関しては日本旅行業協会の調査と指導を、官製カルテルの存在については全国旅行業協会への調査と指導をお願いしたいと思います。
なお、この問題について、御庁から折り返し文書で当会の意見に関してなにかコメントをアドバイス賜れれば幸いです。
以上
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【5月20日追記】
誤字修正版をあらためて5月14日付で消費者庁に送付しました。
PDF ⇒ 20170514.pdf
■今回の意見書では、観光産業の健全な発展を阻害する2つの旅行業協会への調査と指導を消費者庁に要請しました。このほかにも次の問題があります。
その1:官が民間の取引を「補償」すること自体に無理があるうえに、まやかしであること。
その2:旅行業法は旅行代金を手集金していた頃の古いもので、ネット販売の時代には合わないこと。
その3:旅行業協会はなくすか、百歩譲っても、一つに統合すること。
それでばなぜ、我が国の旅行業界では、日本旅行業協会と全国旅行業協会の2つが存在するのでしょうか?当会の旅行業協会撲滅チームが調査をしました。
その結果によると、旅行業法は、1952年に「旅行あっ旋業法」として制定され改正を繰り返してきました。店頭販売や団体旅行が主流だった時代に対応した内容で、かつては、海外旅行を扱う旅行業者と国内旅行に限定して扱う旅行業者の区別がありました。海外を扱う業者は旧運輸省に登録申請して、供託金を預け、国内限定の業者は都道府県知事の管轄で、各県庁に登録申請して、供託金を預けていました。
「旅行業法が現実と乖離し、現状に即していない」という意見も多数みられた。標準旅行業約款や、旅程保証制度、特別補償規定などが現状に即しているのか検証が必要で、「多様なニーズに合わせた自由な営業や、自由なツアー企画ができず、日本の旅行業界は世界のなかでガラパゴス化している」との指摘も挙がった。
その登録申請後、1年が経過すると、海外は「日本」、国内は「全国」の旅行業協会への入会の「資格」を得ることができるようになります。1年経過した時点で、それぞれの旅行業協会への入会申請をし、官報にその旨を掲載し、申請して半年が経過すると、晴れてどちらかの旅行業協会の入会となるわけです。入会できた時点で、供託金の代わりに弁財保証金を協会に預けるわけです。そして、弁財保証金の5倍相当額の供託金を取り戻すせることになります。
■時代は変わって、すべての旅行業者が海外旅行を扱うようになり、その途中では、本来、海外旅行を扱えない業者も公然と違法に海外を扱いはじめたため、後追いで旅行業法が変わったという経緯もあります。
また、登録申請後1年を経なくても、いきなり、日本と全国旅行業協会へ入会できるように変わりました。その時点で、協会への入会金と年会費が以前よりおよそ10倍相当に値上げされました。
このことからも、旅行業法の建前である
「資本力のある会社が旅行代金を前集金し、旅行業の認可を受けることができる」
ことよりも、露骨に
「協会に会費を支払えば、認可を与える」
という
「役人と天下りの居場所の確保」
を優先させることに変わった、というふうに当会では見ています。
海外をすべての業者が扱い、観光庁ができた時点で、1つにまとめることが自然なことなのでしょうが、そうはなりませんでした。いったいなぜでしょうか?
全国旅行業協会(ANTA)の役員の一覧表が同協会のホームページに掲載されています。
http://www.anta.or.jp/anta/yakuin.html
*****
役員構成(平成27年7月1日現在)*****
役名 氏名 会社・団体名・役職名 勤務
会 長 二階 俊博 衆議院議員 非常勤
副会長 近藤 幸二 (株)全観トラベルネットワーク 代表取締役社長 非常勤
加藤 正明 ツーリスト・トップジャパン(株) 代表取締役会長 非常勤
國谷 一男 国谷観光(株) 代表取締役社長 非常勤
専務理事 有野 一馬 (一社)全国旅行業協会 専務理事 常勤
※経歴 昭和53年4月運輸省入省、平成18年7月国土交通省北陸信越運輸局長、平成20年7月(財)地域伝統芸能活用センター理事長、平成23年6月本会専務理事
理 事 浅子 和世 藤邦旅行(株) 代表取締役社長 非常勤
岩本 公明 長崎県交通観光(株) 代表取締役社長 非常勤
北 敏一 (株)トラベルシティ 代表取締役社長 非常勤
木村 進 木村トラベル 代表者 非常勤
駒井 輝男 (有)東日本ツーリスト 代表取締役社長 非常勤
坂入 満 (株)ミサワツーリスト 代表取締役社長 非常勤
高橋 幸司 水沢ツーリストサービス(株) 代表取締役社長 非常勤
積田 朋子 (株)観光経済新聞社 代表取締役社長 非常勤
中川 宜和 (株)ホリデイプラン 代表取締役社長 非常勤
永野 末光 (株)西日本トラベルサービス 代表取締役社長 非常勤
花岡 正雄 (株)ニュートラベル広島 代表取締役社長 非常勤
玄 東實 アシアナスタッフサービス(株) 代表取締役社長 非常勤
藤木 均 (有)ロイヤルツーリスト 代表取締役社長 非常勤
藤田 雅也 (株)アイラブイット 代表取締役社長 非常勤
三浦 雅生 五木田・三浦法律事務所 弁護士 非常勤
三橋 滋子 (一社)日本添乗サービス協会 専務理事 非常勤
山中 盛世 (有)香北観光トラベル 代表取締役社長 非常勤
和田 雅夫 (株)ワンダートラベルサービス 代表取締役社長 非常勤
監 事 川崎 糺 (株)かつらぎ観光社 代表取締役社長 非常勤
日暮 良夫 綜合商社日本サンセット(株) 代表取締役社長 非常勤
酒井 和夫 酒井和夫事務所 公認会計士 非常勤
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全国旅行業協会の会長は自民党幹事長の二階俊博・衆議院議員で、ずいぶん長く会長をしています。和歌山県選出で、旅行業界関連のイベントを観光県である和歌山に誘致することも多く、業界では「土建屋の構図を旅行業界に持ち込んだ」典型的な権力志向体質を表す政治家と言えるでしょう。現に、78歳になるこの老政治家は「自民党の妖怪」とか「21世紀の金丸信」などと称されています。
ちなみに、二階俊博幹事長は4月29日までに、香港フェニックステレビの取材に応じ、中国主導の国際金融機関アジアインフラ投資銀行(AIIB)への日本の参加について「可能性もある」と述べ、親中派であることが判明しています。このAIIBは、習近平が提唱した現代版シルクロード経済圏「一帯一路」構想を資金面から支える役割を果たしており、これまで我が国は慎重な対応をとってきました。
ところがこの親中派政治家は「一帯一路」構想について、日本として今後「最大限の協力をしていく」と強調し、その上で、「日中友好を心から願っており、その道に間違いはない。妨害は許されない」とまで発言したのでした。(2017年4月29日産経ニュース)
この御仁が会長に長年居座っている組織が、まともに旅行業界の発展に寄与しているとは到底考えられません。
一方、今回の事件で、てるみくらぶが加盟していた日本旅行業協会は、会長や副会長こそ大手旅行代理店の会長や社長が非常勤として名を連ねていますが、常勤の志村格・理事長は、旅行振興課長(現観光産業課長)をはじめ、2011年9月より観光庁の観光地域振興部長、審議官、次長を歴任し、航空分野でも、航空交渉官や国際航空課長を務めたほか、新関西国際空港では取締役、常務取締役の肩書をもつ天下りの御仁です。
したがって、理事長ポストは天下り用にとってあることが分かります。
■全国旅行業協会では、入会金についてホームページで説明しています。
http://www.anta.or.jp/anta/sinkinyukai.html
第1種旅行業の場合入会金225万円とあり、年会費は「各都道府県支部に問合せください」と記してあります。中央と地方の両方の組織が潤うように仕組んであることがわかります。
業界関係者の間では、「こんなに高い入会金を払うのなら、協会に入らずに5倍であっても、供託金を預けておいた方がよい」と考える業者が増えているに違いありません。だから、そうした業者に退会されては困るので、見せしめに、はらぼじ観光被疑事件をでっち上げたのだと推測できます。
■今回のてるみくらぶ事件は、はからずも、2つの旅行業協会の存在意義を根本から問い直す契機となりました。2つの協会は旅行業界の発展にとってなんら寄与しておらず、まったく無用な組織であることが、今回の事件で証明されました。
てるみくらぶでは、資金繰りが苦しくなってきたのに、会社を解散することなく、存続を図るため、さらに広告をだして顧客をだまし続けました。こうした経営者としてあるまじき行為を、同社の女性社長が行った背景には、自ら手を染めた経緯のほかに、金貸しだかコンサルタントだか、素性のわからない人がすり寄って、詐欺のアドバイスをした可能性もあります。なぜなら、100億円や150億円もの大金を「広告代」として費消したなどとはとうてい考えられないからです。
はらぼじ観光をみせしめのため訴えた旅行業協会や、捜査に加担した警察や検察は、これだけ多数の被害者が出た事件なのだから、「広告代」として消えた100億円から150億円のカネがどこに行ったのかは調べるべきです。
■まったく被害者がいないはらぼじ観光被疑事件の場合、前橋東署から総勢17人もの警察官が家宅捜索にやってきました。今回の事件では、被害者の多さといい、損害金額の大さといい、せめて10倍の170人くらいの警察官を動員しなければならないはずです。また、旅行業協会は、顧客の目線で、100億円から150億円の使途を明らかにすべく、てるみくらぶによる被害者を支援して、最小限でも損害賠償請求を起こすべきです。
はらぼじ観光被疑事件の捜査に携わった警察官や、管轄の群馬県庁の職員らは、旅行業界の知識がまったくありませんでした。それにもかかわらず、彼らの捜査資料や供述調書は有効だとされ、同じく旅行業界のことを全く知らない検察官が、はらぼじ観光を起訴しました。さらに旅行業界のことを何も知らない裁判官が、素人の役人、警察官、検察官らの資料を鵜呑みにして、被害者ゼロのこの事件の被疑者であるはらぼじ観光に対して、有罪判決を下したのでした。
今回の事件で、旅行業協会への信頼回復のためにも、旅行業協会として、消費者保護を最優先に取り組むことが求められています。しかし同協会は、これまでそうした消費者保護のことはなにもせずに、高い入会金や年会費の上に胡坐をかいてきただけでした。
この事件に対して、旅行業協会が、被害者に対してきちんと補償しないまま、相変わらず旅行業法で担保された利権の旗だけを表面上掲げて、自らのメシの確保を優先して、今回の事件をうやむやのまま幕引きするのか、当会としても注意深く監視していく所存です。
【市民オンブズマン群馬・旅行業協会撲滅キャンペーン推進班・この項続く】
※参考記事
**********トラベルボイス2017年4月30日
https://www.travelvoice.jp/20170430-88045
観光庁、てるみくらぶ問題で再発防止案の検討会、弁済制度と旅行業経営の2視点で議論を開始
観光庁は2017年4月28日、てるみくらぶの経営破綻の影響を踏まえ、再発防止を目的とする「第1回新たな時代の旅行業法制に関する検討会 経営ガバナンスワーキンググループ」を開催した。
冒頭挨拶で観光庁長官の田村明比古氏は、「被害の大きさを鑑みて立ち上げた」と発足の理由を説明。「これまでに明らかになった事実や状況から判断すると、複数の問題点が浮かんでいる」として、被害者や債権額の多さや現行の弁済制度の限界に加え、破綻直前まで行なわれていた現金決済キャンペーン、粉飾決算の疑いなどを列挙し、「幅広い論点で、速やかな検討をお願いしたい」と要請した。
座長に選ばれた一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏は、「昨今の観光ブームで旅行業界の環境、業態が変わってきている。大きな躍動感を削いではいけないが、こういう事案をどう防いでいくか、重要な局面にある」と述べ、ワーキンググループのミッションとして、「政府と業界による再発防止策の検討」と、「再発時に消費者を守る措置の検討」の2点を示した。
★夏に取りまとめ案、秋に具体的なアクションか
会議終了後の記者ブリーフィングによると、初会合は状況の共有と論点の収集を目的に行なわれた。まずは議論の前提として、観光庁が(1)弁済制度のあり方、(2)企業のガバナンスのあり方の2つの大テーマのもとに論点を提示(記事の最後に記載)。これに対し、各委員からも同様の意見が述べられ、新たな論点は提示されなかった。
また議論では、弁済制度について、債権者数・債権額が過去に比べて格段に多いことから、「今回の事例は特殊」とした上で、「特殊事例にあわせて変えるのは機能を歪めてしまう」との意見が上がった。現行の弁済制度では、これまで8割程度の旅行業倒産などの事案で100%の弁済がされており、「通常のケースでは機能している」という観点での意見だ。
一方で、「これを踏まえながらも弁済制度を変える場合は、事実関係の把握が必要」や、弁済制度に限らず「行政や旅行会社、業界団体のぞれぞれで取り組むべきことを考えるべき」など、制度の見直しに対する意見も述べられたという。
ブリーフィングを担当した観光産業課参事官の黒須卓氏は、「今までの制度がすべて機能しているなら、ワーキンググループを開催する必要がない。委員の知恵をいただき、新たな制度設計や制度の改正が必要かどうか、予断を持たずにやっていきたい」との考えを示した。また、旅行会社の経営状況の把握については、透明性を高めるための制度設計なども検討していく考えだ。
ワーキンググループの委員には、日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)などの業界団体のほか、保険会社や銀行、クレジット業界団体なども招請。オブザーバーとして、消費者庁も参加する。先ごろ、結成されたてるみくらぶの被害者の会には、同会からの要請があれば意見を聞き、議論に反映する考えがあることも示した。
次回のワーキンググループは5月中を予定。今後4回~6回程度を開催し、夏までに取りまとめ案を出す考え。それを踏まえて秋ごろには、省令や通達、業界に対する呼びかけ、広報などいずれかの形式で、行政側からの発信がなされる見通しだ。
<<参考記事>>
てるみくらぶ決算書から読み解く経営の問題点、企業会計のプロに一問一答で聞いてみた(2017年4月3日)
【検討や議論の前提として観光庁が提示した項目】
1.弁済制度のあり方
・適切な弁済業務保証金制度の水準について
・取引額の規模と弁済業務保証金分担金の額との観点
・モラルハザード防止の観点
・弁済業務保証金制度を補完する制度の導入の可能性(現行のボンド保証制度のさらなる活用等)
・保険制度の活用について
・役務的履行保証の可能性について
2.企業ガバナンスのあり方
・健全な経営を遵守させるための方策について
・登録更新の年度以外の企業の経営状況の把握について
・企業自身の監査体制のあり方について・広告表示、旅行業募集のあり方について
・旅行業の宿泊施設等への支払期間等の見直しについて
**********トラベルボイス2017年4月26日
観光庁、てるみくらぶ倒産で消費者保護や旅行業の経営のあり方を議論へ
観光庁は2017年4月28日、第1回「旅行業法制検討会 経営ガバナンスワーキンググループ」を開催する。
旅行会社てるみくらぶが、約9万人もの予約を受けたまま2017年3月27日に破産申請をして倒産したことに加え、オンライン取引が増加している現況も考慮し、消費者保護と弁済制度、経営ガバナンスのあり方などを検討する。同ワーキンググループは、2016年10月に立ち上げた「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の下部組織とする。
ワーキンググループのメンバーは以下の通り。
【旅行業法制検討会 経営ガバナンスワーキンググループ 委員構成】 (五十音順、敬称略)
金森大輔氏:損害保険ジャパン日本興亜株式会社 企業商品業務部保証・信用保険グループ グループリーダー
近藤幸二氏:一般社団法人全国旅行業協会 副会長
篠原貴子氏:篠原会計事務所 税理士
志村格氏:一般社団法人日本旅行業協会 理事長
谷口和寛氏:御堂筋法律事務所 弁護士
速水邦勝氏:一般社団法人日本海外ツアーオペレーター協会 専務理事
伏谷充二郎氏:日本公認会計士協会 理事 公認会計士
三浦雅生氏:五木田・三浦法律事務所 弁護士
山内弘隆氏:一橋大学大学院商学研究科 教授
與口真三氏:一般社団法人日本クレジット協会 理事・事務局長
横沢泰志氏:株式会社みずほ銀行 証券部調査チーム 次長
(オブザーバー)
河内達哉氏:消費者庁消費者政策課課長
**********女性自身 2017年4月21日 17:02配信
ユーミン好きで3億円 てるみくらぶ社長が行っていた乱脈協賛
↑
記者会見で号泣する山田社長↑
「『てるみくらぶ』は、会社の規模に釣り合わないような大きな音楽イベントに協賛を続けていました。14年から大幅な赤字経営に転落していたのに昨年も協賛をやめなかったようです」(イベント関係者)
旅行会社てるみくらぶは3月27日、自己破産を東京地方裁判所に申請した。負債額は151億円。支払った旅行代金が一部しか弁済されない被害者は、9万人にのぼる。
「本当に申し訳ないと思っている。とにかくみなさんのお役に立つことだけを思って、いままでやってきたので」と謝罪会見で号泣しながら語った山田千賀子社長だったが、冒頭のコメントのように協賛という形で会社の金を音楽イベントに注ぎ込んでいたようだ。別のイベント関係者が語る。
「そのイベントはゆず、ミスチルなど大物ミュージシャンが参加する音楽イベント『Golden Circle』。ある音楽プロデューサーが企画したもので、山田社長は彼を通してイベントを知るようになったそうです」
島根県出身で、神奈川県の大学を出て旅行代理店に就職後は添乗員として活躍し、32歳の若さで独立して社長に。バリバリのキャリアウーマンだったという山田社長だが、いっぽうでこんな話もあった。
「ミュージシャン好きが高じて、音楽イベントの協賛も社長が先頭に立って10年から始めたようです」(前出・別のイベント関係者)
そのイベントの“ウリ”はライブの前に旅行商品が当たるというものだった。山田社長は、ミュージシャンのなかでも特にユーミン(63)の大ファン。同世代でカリスマのユーミンは憧れの人で、少しでも近づきたいという思いが、13年1月3日のユーミンの40周年コンサートへの協賛として結実する。
「武道館で行われたイベントは大掛かりで、薬師丸ひろ子やムッシュかまやつ、細野晴臣など大物が集結。社長もその日はユーミンに挨拶するために会場に来ていたようです」(別のイベント関係者)
てるみくらぶはイベントにどれくらいの“出費”をしていたのだろうか。この音楽イベントに関わっていたある関係者がこう明かしてくれた。
「ざっと見積もって7年で3億円くらいではないでしょうか。てるみくらぶの破綻で、イベント参加経験のあるミュージシャンのなかには、被害者に対して心苦しいと思っている人もいると聞きます」
7年間にわたってイベントに協賛し続けていた事実は、今後のてるみくらぶの破たん処理にどんな影響をあたえるのだろうか。破産手続きの申立代理人弁護士の柴原多氏に聞いた。
「今後、管財人が、資産をお金に変えて負債を確定する作業をします。しかし多い年で宣伝費が20億円を超えているのは腑に落ちないですね。経営が立ち行かなくなっているのに個人的関係だけで山田社長がお金を出しているなら問題があると思いますが、これからの調査次第となります」
ユーミンの所属事務所に山田社長との関係について聞くと、「個人的な関係はありません」とのことだった。社長が、会社の金で個人の夢を叶えようとした行為が破たんの一因だったとしたら、被害者の怒りはさらに強まることだろう。
**********トラベルボイス2017年4月3日
てるみくらぶ決算書から読み解く経営の問題点、企業会計のプロに一問一答で聞いてみた
↑
*写真は2017年3月27日に行われた同社の記者会見。↑
経営破綻した「てるみくらぶ」が粉飾決算を繰り返していた可能性が高まっている。決算書は観光庁や銀行など提出先によって目的別に複数、作成されていたという報道もある。これは事実なのか?このほど同社が提出した破産手続開始申立書から、てるみくらぶの経営状態をトラベルボイスのコラムニスト公認会計士・税理士の石割由紀人氏に一問一答形式で聞いてみた。
Q1、てるみくらぶは粉飾決算をしていたのでしょうか?その場合、法的な責任は?
粉飾決算をしていたのは、ほぼ間違いないでしょう。破産申立書においても詳細は精査中であるとしつつも粉飾の疑いのある会計処理についての指摘がなされています。
直近2年の決算書をみると、未収収益の内訳に航空会社の名前が並び、その販売におけるキックバックの過大計上(売上過大計上)、前受金の過少計上、ソフトウェア資産の過大計上等といった粉飾の手口が使われた可能性があります。
粉飾を行うと刑事責任と民事責任を負います。刑事責任では、違法配当罪、特別背任罪、銀行等に対する詐欺罪など、民事責任では違法配当額の賠償、第三者責任、銀行等債権者に対する損害賠償請求を負います。
Q2、外部から、経営状況は把握することは難しかったのでしょうか?
てるみくらぶは、上場会社ではありませんので、決算書の公表は義務ではありません。2年前から業績開示をしていないという報道がありましたが、従来、会社独自の判断で任意に業績開示していたものの、業績不振を隠すために非公表にしたのかもしれません。
取引金融機関等は決算書等を通じて経営状況をある程度は把握していたとは思いますが、その決算書が粉飾決算であったということです。
現金一括入金キャンペーン等もあって、何とか事業が回ってしまっていたので、銀行側から融資を止めづらかった状況があるかもしれません。憶測にはなりますが銀行も薄々粉飾決算の可能性を嗅ぎ取っていたのではないでしょうか。銀行にとっても、これ以上被害額を増やさないというのは合理的な判断だったのではないかと思います。
Q3、経営の問題点は、どこにあったのでしょうか?
インターネットの普及で、業績拡大してきた「てるみくらぶ」ですが、インターネットの更なる進化によって、旅行者は旅行業者を利用しないで、自分で宿泊施設や格安航空券を手配することが可能になりました。国内・外資ともにオンライン旅行会社(OTA)との競争激化で粗利率が低下したと思います。
てるみくらぶの経営は、航空会社からのボリュームインセンティブであるキックバック手数料に依存した収益構造であった可能性があります。
破産手続き開始申立書においては、「航空会社との合意が成立しているか必ずしも明らかではなく、その村費及び金額については精査が必要である。」と粉飾の可能性を示唆しています。要するに架空売上げの疑いがあるということです。
旅行業界を取り巻く経営環境は厳しいものがありますが、粉飾決算に手を染めて、金融機関らからの融資を継続させることに注力し、厳しい現実や根本的な経営の課題と向き合っていなかったのではないかと思います。
Q4、破産の理由であげられた広告宣伝費の急増とは、どのような状況でしょうか?
会社作成の決算書では平成27年9月期では9億7600万円だった広告宣伝費が平成28年9月期では一気に20億円に増加しています。新聞への広告出稿を増やしたという報道がありましたが、広告宣伝費の激増が資金繰りを悪化させた原因の一つではないかと思います。
航空会社からのボリュームインセンティブを獲得するために、薄利多売で広告宣伝費を増やさざるを得ない状況に陥ったのだと思います。
Q5、2017年度に新卒50人の採用を決めていたといいます。この規模の会社が50名の採用したことをどう見ますか?
正社員75名(他、契約社員4名、パートアルバイト48名)であるのに、内定者58名は多過ぎだと思います。憶測になりますが、シニア向けに新聞広告を増やしたので、インターネット広告に比べて電話アポインターとして人件費の低い新卒が必要だったのかもしれません。
一方で、事業継続事態に疑義があったであろう状況を考えると、計画倒産を疑われないために、世間に積極採用を印象付けようと考えた可能性もありますが、その点は謎です。
Q6、決算書から山田代表の役員報酬が明らかになりました。その金額は適正ですか?
決算書には、役員報酬が年収3360万円と記載されています。それは、たしかに高額な給与とみていいでしょう。黒字会社ならともかく、赤字会社の役員報酬としてはもっと金額を抑えるべきだったかもしれません。
ちなみに、破産手続開始申立書の添付書類を見ると住まいは年間家賃421万円のマンションでした。社用車にはベンツが記載されていましたが、平成19年登録の簿価28万円のものです。際だって豪華待遇ではないと思います。
しかしながら、役員報酬減額といった自分の身を削れない経営者に抜本的な経営改善は難しかったのかなと思います。
Q7、てるみくらぶのように急激に資金繰りが悪化したとき、経営者はどうするべき?
まずは止血と資金調達を進めるしかないと思います。資金繰り悪化が、安値による現金一括入金キャンペーンに走らせたのだと思います。
今回の破産申立は、メインバンクであるSMBCから緊急融資等を受けつつも、資金繰りに窮し、国際航空運送協会(航空券購入代金を一括受託)への航空券代金支払遅滞と航空券発券システム停止が直接的な引き金となりました。
自転車操業状態でボリュームインセンティブを獲得するために走り続けるしかなかったのではないでしょうか?
Q8、今回の破産は計画的で詐欺といわれています。本当でしょうか?
計画詐欺のようだと思われても仕方ない面はあると思います。
「てるみくらぶ」の給与計算は、10日締め25日払いで、3月25日は土曜日ですので、3月24日に最後の給与を従業員に支払って、翌月曜日27日に破産申立を行ったのだと思いますが、給与支払前の現金一括入金キャンペーン等は悪質だと思います。
回答者:石割 由紀人氏(公認会計士・税理士)
国際会計事務所にて監査・税務業務に従事後、ベンチャーキャピタルを経て、スタートアップベンチャー支援専門の会計事務所を経営。多くのベンチャー企業等の株式上場支援・資本政策立案等を多数支援。上場会社をはじめ多くの社外役員も兼任。
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**********Business Journal 017.03.29
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18499.html
てるみくらぶ、詐欺の可能性…破産準備の一方で大々的に広告&料金徴収の疑い
↑
てるみくらぶのHPより。https://www.tellmeclub.com/20170327_info.html ↑
3月27日、旅行会社てるみくらぶ(本社・東京都渋谷区)が破産手続きを開始したというニュースが流れました。報道によると負債総額は100億円を超えているとのことであり、リーマンショック以来の旅行業者の倒産としては最大規模といわれています。
突然の破産に、てるみくらぶで旅行を申し込んでいた多くの顧客が悲鳴を上げています。なかには、海外でホテルから宿泊を拒否されたり、復路の航空券を自前で用意しなければならない状況になるなど、かなりの混乱が生じているようです。
さらに、破産となれば、旅行代金として振込んだお金のうち、返金されるのは1%にも満たないとのことで、「詐欺事件ではないか?」という声も上がっています。
★詐欺罪(刑法246条)の成立
では、果たしててるみくらぶ(厳密にいえば、代表取締役である山田千賀子氏や経営幹部など)に詐欺罪(10年以下の懲役)は成立するのでしょうか。
この点、単に負債が多額に及んでいる状態であることを知りつつ顧客に旅行代金を振り込ませていただけでは、詐欺罪は成立しません。もっとも、「倒産が確実である」という認識がありながら、顧客との間で旅行契約を締結して旅行代金を振り込ませたのであれば、「会社の現状からすれば、もはや顧客に対し旅行代金に見合う旅行サービス(航空券やホテルの手配・提供など)を提供することは不可能である」という認識を持ちながら旅行代金を徴収していたわけなので、「金銭をだまし取る」ことにつき「故意」が認められ、詐欺罪(刑法246条)が成立する場合があります。
★破産をいつから認識か
そして重要なのは、てるみくらぶにこのような認識がいつの時点から生じていたのかという点です。
今回、てるみくらぶは弁護士に依頼して破産手続開始申立てをしているようです。ここで、一般的な能力を有する弁護士であれば、通常、クライアントから債務整理を含めた破産申立ての依頼を受けてから「破産手続開始申立書」を裁判所に提出するまで、1カ月、諸事情により“特急”で申し立てる場合であれば約2週間ほどかかります。
とすると、少なくとも遡ること約2週間前の時点で、てるみくらぶの経営陣は会社が破産する可能性が高いことを認識しながら、顧客から旅行代金を受け取っていた可能性があります。
一般的に、破産申立てをするか否かの相談を弁護士にするということは、その時点において経営が相当程度、難局に陥っていることが多いといえます。
さらには、破産申立ての依頼を受けた弁護士は、破産申立ての準備が整った頃には、「1週間後の〇月〇日には破産申立てをしますので、申立日の午前中に社員を集めて説明会を行ってください」「金融機関への説明会を設定してください」など、申立前後の計画や段取りを助言しますので、おそらく3月20日前後には、破産に至ることを確信していたのではないでしょうか。
このように考えてみると、てるみくらぶの経営陣は、破産間際の“取り込み詐欺”として詐欺罪が成立する可能性はゼロではないと思います。
★「故意なし」との主張には無理
なお、山田社長は記者会見で「詐欺をはたらくとか、毛頭考えておりません」「会社はこの1カ月の間に入金された顧客からの旅行代金は経営資金に充てるために使用した」旨、発言していましたが、おそらく、詐欺罪を追及されることを恐れ、「会社が倒産するとは考えていなかった。旅行代金を経営資金に充てればお客さんにサービスを提供できると思っていた」ことをアピールしたかったのでしょう。
しかし、上記の通り遅くとも破産を確実に認識したと思われる3月20日前後の時点で会社を維持すること=旅行サービスを提供することが極めて困難であると認識することが可能であった以上、それ以後のネット広告や新聞広告を全部取りやめるべきでした。
ところが、てるみくらぶは3月22日の時点でも「現金一括の場合に限り格安」といったツアー広告を出していたわけです。これは、破産を確実に認識しながら、顧客に対し旅行契約を申し込むよう誘因したといえますので、詐欺、少なくとも詐欺未遂の故意がなかったとの主張は無理があるのではないでしょうか。
(文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates・パートナー弁護士、荻野正晃/同法人弁護士、高橋駿/早稲田大学大学院法務研究科、前里康平/同)
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