■8月30日の東京新聞群馬版に、次の記事が掲載されました。カラー写真付きで、「日弁連の宇都宮会長(前列左から2番目)や群馬弁護士会の采女会長(左から3番目)らが給費制維持を訴えたパレード」という注釈入りです。
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「多くが学費借金 法曹の道断たれる」
司法修習生の給費制存続を 高崎で弁護士らパレード
司法試験に合格した司法修習生が裁判所などで1年間、実習する間に給与を受ける「司法修習生給費制」が11月に廃止されるのに反対し、群馬弁護士会の弁護士らが29日、高崎市内をパレードした。廃止は国の財政難などが理由だが、学費の借金を抱える修習生が多く、弁護士らは給費制の維持を訴えている。 (中山岳)
司法修習生は修習に専念するためにアルバイトが禁止され、修習期間中は裁判所から月額約二十万円の給与を受ける。十一月に施行される改正裁判所法は給費制を廃止し、必要な人に年間三百万円を貸す制度になる。
パレードに先立ち、記者会見が高崎市内のホテルであり、日本弁護士連合会(日弁連)の宇都宮健児会長、群馬弁護士会の采女(うねめ)英幸会長、ハンセン病の国家賠償訴訟原告団の谺(こだま)雄二さんらが意見を述べた。
宇都宮会長は、学費の借金を抱える修習生や若手弁護士が多い中、給費制が廃止になれば、経済的余裕のない人が法曹に入る道が断たれると主張。「弁護士の多くが、手弁当による社会的弱者のための仕事を引き受けなくなる恐れも出てくる。国民の権利が危うくなる」と指摘した。
パレードには、弁護士ら約百二十人が参加してJR高崎駅周辺を約一キロ練り歩き、「司法予算をけちるな」などと訴えた。
日弁連が昨年実施したアンケートによると、司法修習生千五百二十八人の約五割が、法科大学院の学費などを貸付制の奨学金や教育ローンで賄い、平均約三百二十万円の借金がある。
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地元の上毛新聞も2面で、この話題を小さく取り上げています。
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司法修習生の給費制存続を求めてパレード 群馬弁護士会
司法修習生に国が給与を支給する給費制が11月から、生活資金を貸し付ける制度に移行することを受け、群馬弁護士会(采女英幸会長)は8月29日、高崎市の中心街でパレードを行い、給費制の存続を訴えた。
パレードに先立ち、日本弁護士連合会の宇都宮健児会長が市内で会見。「経済的に余裕のない人は(法曹界への)志を絶たれる。市民、国民の権利も危うくなる。給費制を維持する方向での法改正を勝ち取りたい」と語った。
(上毛新聞平成22年8月30日朝刊2面記事)
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■この記事を読むと、やはり、弁護士会のお仲間クラブぶりがうかがえます。また、パレードの写真も、ひさびさに街頭で徒党を組んで運動をする弁護士らの仲良しぶりが、読者に伝わってくるかのようです。
社会的に合法な職業に、貴賎はあってはなりませんが、弁護士さんらの主張を読むと自分勝手なのではないか、という気がします。これでは国民の感情からさらにかい離したお仲間クラブになってゆくような気がして、先行き心配になります。
宇都宮会長は、弁護士の合格枠である司法試験合格者を年間3千人とする政府計画に反対して「1500人程度に減らす」と明言して日弁連の会長選挙に勝利しましたが、これは既得権を持っている弁護士会の会員の独善ではないか、という批判があります。
今回のパレードも、よく考えてみると、司法試験合格者を絞って、新たに弁護士業を開業する若者にさらなる苦難をあたえている弁護士会が、合格者を絞ったのだから、国費で司法修習期間中の生活費を賄え、という理屈になります。
自分たちは、十分リッチな生活をしていて、国民が弁護士不足に泣かされていても、競争性の排除で、なかば寡占体制を謳歌して、世間水準をはるかに超える収入を確保しているのに、さらに弁護士への登竜門を狭くして、既得権をさらに強固にしようとしているのですから、やはりヘンです。
■宇都宮会長は、パレードに先立ち、高崎で記者会見を行い、「弁護士の多くが、手弁当による社会的弱者のための仕事を引き受けなくなる恐れも出てくる。国民の権利が危うくなる」と指摘していますが、どうにも説得力に欠ける主張です。
まず、社会的弱者のために、群馬県弁護士会の弁護士の皆さんが、どの程度、仕事を引き受けているのか、その実態を世間に公表すべきです。
当会の経験でも、身近で深刻な問題で困って弁護士に相談しても、なかなか弁護士が引き受けてくれないケースに遭遇します。市民オンブズマン群馬のメンバーの弁護士は、その他の弁護士に比べれば、まだよいほうですが、オンブズマン活動に理解のないその他の一般弁護士は、社会的強者の依頼のほうを重視する傾向にあります。なぜなら、報酬のおおいほうを選択するからです。
■住民運動で住民訴訟を提起せざるを得なくなり、社会正義に理解のある弁護士を探したくても、いったいだれが、頼りなるのか、普通の市民には分かりません。群馬弁護士会では、そうした相談にのっているのかどうかも疑問です。また、思い切って弁護士に住民訴訟について相談しても、弁護士側としては、「カネにならない事案など引き受けると、労多くして益なしだ」とばかりで、「勝てそうにないから、やめておいた方がいい」などとアドバイスする例も多くあります。
したがって、報酬の低い社会的弱者救済には関心がなく、行政や企業の顧問弁護士になりたがる弁護士ばかり増えることになるのです。
結局、行政相手の住民訴訟となると、行政ににらまれないように、市民運動などの関係の事案を引き受けたがらない弁護士が多くなり、やむなく本人訴訟に踏み切らざるを得ないケースが多くなります。裁判所も、弁護士の付かない本人訴訟の原告に対しては、最初からハンディを付けて対応しがちですので、住民訴訟における住民側の勝訴率と言うのは、いつまでたっても改善しないのです。
■世間では、よい教育を子どもに受けさせるためにと、親は教育ローンで借金してでも、子どもの教育費用を負担します。また、苦学生は、いろいろな奨学金を得て、卒業後、よりよい職業に就くことを夢見て、勉学に励みます。そして、実際に社会に出てから、十分な報酬を得ながら、奨学金を返済しています。(最近は、就職情勢が若者に決定的に不利になっていて、奨学金の未返済が激増していると言われていますが)。
にもかかわらず、司法試験に合格して、1年間の司法修習期間を経れば、めでたく法曹界にデビューして、世間レベルを凌駕する報酬を得られる資格を得られるのですから、司法修習生の生活費は、当然、「奨学金」のように、あとで返済が義務付けられた一緒の前受け金のような、年間300万円の生活費貸与制にするのが、もっとも合理的です。
■日弁連や群馬弁護士会は、既得権を得ている弁護士らから構成されています。なかには、年間億単位の収入を上げている弁護士も少なくないようです。日産のゴーン会長の年収が公開されたように、法曹界でも、裁判官や検事の収入は公開されているのですから、高額収入を得ている弁護士の年収も当然公開すべきです。そのうえで、司法修習生の給費制存続について、既得権を持っている立場から、論理的に主張するのであれば、一般市民は、その主張の論旨を理解して、財政難にあえぐ国庫からの支出が妥当がどうかを判断できる立場に立てるわけです。
日弁連や、群馬弁護士会は、それよりも、悪徳弁護士の排除や、酒酔い運転事故の撲滅のために、メンバーに対して、内部規律の順守を徹底させて、弁護士としての最低限の社会的モラルを徹底させることこそが先決だと思われます。
【ひらく会情報部】