市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

ノルマにあえぐ地域警察官への「実績低調者」という烙印の実態解明に立ちはだかるバリヤー(その1)

2012-02-21 23:26:00 | 警察裏金問題
■警察用語に「実績低調者」という言葉があります。これは読んで字のごとく「検挙実績が低調な者」のことです。検挙実績が、予め与えられた実績数に達しない場合、警察ではこういう烙印を押して、あれこれいじめているのです。

 警察官には、いろいろなノルマが課せられています。とくに厳しいのは交通切符や検挙で、これらは全てノルマなので、例えば交通切符が少ないと、実績低調者として一箇所に集められ、懲罰講習を受けなければなりません。つまり、毎月検挙率の目標値が定められ(ノルマが課せられ、それを1カ月単位で集計した結果、達成できなければ、課長や署長から厳しく叱責されて、始末書をとられ、2、3カ月も目標未達成だと、「実績低調者」として本部の地域課に呼ばれて罵声を浴びせられて叱責されるというのです。このことを警察用語では「招致教養」と言うそうです。

■警察官が街中でよくやっている「ネズミとり」と呼ばれる行為が知られています。スピードの出しやすい道路のものかげに警察官が潜み、通過する車両がスピード違反を犯したのを確認して、その運転手に反則切符を切る方法です。事故の「予防」ではなく、「速度違反という犯罪」をうまく誘発させて、その場で摘発するという卑劣な手法ですが、これもノルマが課せられているから、警察官が義務付けられている行為なのです。

これと同じような手法に「職務質問」があります。気の弱そうな通行人を呼び止めて、所持品検査と称して、かばんの中をあけさせ、中に十徳ナイフのような銃刀法や軽犯罪法の取り締まり対象となるものが入っていた場合、「ちょっとパトカーの中でお話をうかがえますか」、「ここでは何ですから、ちょっと警察署まで来てもらえますか」と、その人物を言葉巧みに警察署まで連れて行き、調書を仕上げたり、指紋や顔写真を半ば強制的に撮ったりする行為です。

昨年9月、ロシアから3名の技術者を日本に招聘したことがありますが、成田空港から帰国する3名を見送るため、一緒に連れて行った時、成田空港第1ターミナル駅で降りて、改札を出て、パスポート検査場所を通った直後、後ろから呼ぶ声がするので振り返ると、3名のうち2名が千葉県警の警察官に職務質問をさせられていました。見ると、パスポートを取り上げて、個人情報をメモしたりしています。「これは私が招聘したお客さんですが、なにか問題でもあるのですか」と警察官に尋ねたところ、「いやちょっと、パスポートを拝見させてもらっているだけだ」というのです。地下のロビーを通過する外国人全員が対象というわけではなく、声をかけやすそうな人を選んで声をかけて、パスポートの中をみるのです。

 当会は、「パスポートは、10mしか離れていない空港警備のカウンターで、既に全員提示済なのだから、どうせパスポートをチェックするなら、空港警備の人たちと一緒にチェックしたらどうですか」と質問しましたが、どうもその気はないようです。当会は警察官に対して「せっかくよい印象を日本に抱いた外国人が、もうすぐ帰国するというタイミングにこのような無駄なことをするのはやめてほしい」と申し入れました。

■このように、ノルマという形で目標を課せられ、その目標を達成できない場合「実績低調者」として烙印を押す警察のシステムについて関心を抱いたので、当会の事務局長が代表を務める市民オンブズマン群馬では、平成22年1月21日付で群馬県警察本部長宛に「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」の公文書開示請求書を提出しました。

 その結果、同2月1日付群地第26号で決定期間を2月4日から3月23日まで延長する旨の決定期間延長通知書が届きました。理由は、「業務がふくそうしていることに加えて、開示請求に係る公文書の開示・非開示の審査に相当の期間を要するため」とされていました。県警の担当課は生活安全部地域課となっていました。

 続いて、平成22年2月17日付群地第37号では、公文書開示決定通知書として「平成20年4月9日付、群地第174号 地域警察官実績低調者等指導要綱の制定について(通達)」若しくはこれに類する文書」が2月26日(金)午後2時に県庁2階県民センターで開示されました。これこそが、冒頭のノルマを警察官に課す為の根拠となっている、県警本部長からの通達です。

 いよいよ実績低調者に関する指導状況についても開示されるのか、と期待していたところ、同日の群地第38号として「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書について、非開示決定通知書が届きました。開示しない理由は次の通りとなっていました。

○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
 個人の勤務成績及び個人の評価に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報を含む。)又は公にすることにより、個人の権利利益を侵害する恐れがある情報であるため。¥

○群馬県情報公開条例第14条第4号該当
 職務質問の内容や各種取り締まり状況等、犯罪の予防、操作の手法、技術、体制、方針等に関する情報が含まれており、公にすることにより将来の犯行を容易にし、又は将来の操作に支障を生じる恐れがあるため。

○群馬県情報公開条例第14条第6号該当
 人事管理に係る情報であり、公にすることにより、円滑な人事管理に支障を及ぼすおすぉれ及び今後の警察活動の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあるため。

■このため、市民オンブズマン群馬では、行政不服審査法に基き、平成22年4月12日付で、異議申立を行いました。公安委員会向けには異議申立書ではなく、審査請求書という名称が使われます。

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審査請求書
平成22年3月29日
群馬県公安委員会 御中
   審査請求人
 郵便番号 371-0801
 住  所 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
 氏  名 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 (58歳)
 連絡先 TEL:027-224-8567
事務局長 鈴木 庸
行政不服審査法の規定に基づき、次のとおり公文書非開示決定に対して異議申立を行います。

1. 審査請求申立に係る処分:
群馬県警察本部長が審査請求人に対して平成22年2月17日付け(群地第38号)で行った「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」に関する非開示決定処分(以下「本件処分」という。)

2. 審査請求申立に係る処分があったことを知った年月日:平成22年2月19日

3. 審査請求申立の趣旨:
本件処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、本件処分の取り消しを求めます。

4. 審査請求申立の理由:
(1)審査請求申立人は県民として公文書の開示を求める権利を有しています。
(2)群馬県警本部長は、群馬県情報公開条例第14条第2項、第4項、第6項に該当するとしましたが、審査請求申立人は次の理由により本件処分は公にすることが必要と考えます。
①条例第14条2項に非該当:公務員である警察官又は警察職員(以下「警察官等」という)として県民の代表として勤務する公人が、県民・国民の税金により雇われ、県民・国民の安全・安心のために公然と勤務しているものであって公開することが何ら(警察官等の)個人の権利利益を侵害するおそれは全くないため。
②条例第14条4項に非該当:警察官等の「職務質問の内容や各種取締り状況等、犯罪の予防、捜査の手法、技術、体制、方針等に関する情報(以下「技術等情報」という)が含まれており、としているが、この技術等情報こそが、群馬県警察本部長が「実績低調者に対して行った指導状況」であると推測される。「警察官等」を雇っている納税者の県民・国民に対して技術等情報を明らかにすることは、納税者の知る権利である。また、審査請求申立人に対して本件処分を取り消しても、将来の犯行を容易にし、又は将来の捜査に支障を生じるおそれはない。なぜなら、審査請求申立は、技術情報等を、地域住民の安全・安心のための活動に役立てるものであり、将来の犯行増加や捜査への支障は全くないため。
③条例第14条第6項に非該当:本件処分を取り消すことこそ、適正、警察の円滑な人事管理を実現する最も有効性のある情報であり、人事管理や警察活動に支障を与えるおそれは全くないため。
(3)よって、本件処分を取り消し、全面開示を求めます。

5.処分庁の教示の有無及びその内容:平成22年2月17日付群地第38号の公文書非開示決定通知書により、「この決定に不服がある場合には、この決定があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、群馬県公安委員会に対して審査請求をすることができます」と通知されました。
                  以 上
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■ところが、今度は審査請求書の記載事項等の要件が満たされていない、という理由で補正命令が平成22年4月19日付で届きました。

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        審査請求書の補正命令について(連絡)
 貴団体は、平成22年2月17日付(群地第38号)で群馬県警察本部長が行った公文書非開示決定処分について、行政不服審査法に基づく不服申立てを行うとして、群馬県公安委員会に「審査請求書」を郵送されました。
 審査請求書については、不服申立てに係る事務担当係である群馬県警察本部警務部監察官室(訟務係)にて受領しましたが、同審査請求書の記載事項等の要件について確認したところ、記載事項の一部に不備(記載漏れ等)のあることが判明しました。
 提出された「審査請求書」に対する「補正命令」が群馬県公安委員会から発せられましたので、郵送させていただきます。
 期間内に「補正された審査請求書」、貴団体の会則の写し及び代表者の選任したことを証する総会議事録等の写しを各2通、下記あて先まで郵送してください。
 なお、期限内に提出がなされなかった場合には、不適法なものとして「却下」されることがありますので、ご了承ください。
                  あて先
                    〒371-8580
                    群馬県前橋市大手町一丁目1番1号
                    群馬県公安委員会
                  問い合わせ先
                    群馬県警察本部警務部監察官室総務係
                    電話 027-243-0110
                       内線(2883)
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     補  正  命  令  書
                   群公委第520号
                   平成22年 4月19日
住所 群馬県前橋市文京町1丁目15-10
   市民オンブズマン群馬
   代表小川賢  殿
           群馬県公安委員会 印
 あなたの審査請求書は、次の事項について不適法ですから、平成22年5月17日までに補正してください。
        記
1 代表者の資格の証明等
 行政不服審査法第13条第1項では、「代表者若しくは管理人、総代又は代理人の資格は、書面で証明しなければならない。」と規定していますので、貴団体の会則の写し及び代表者の選任したことを証する総会議事録等の写しを提出してください。
2 記載漏れの事項(代表者の住所)
 行政不服審査法第15条第2項では、「審査請求人が、法人その他の社団若もくは財団であるとき、総代を互選したとき、又は代理人によって審査請求をするときは、審査請求書には、前項各号に掲げる事項のほか、その代表者若しくは管理人、総代又は代理人の氏名及び住所を記載しなければならない。」と規定していますので、代表者の住所を記載してください。
3 押印漏れの事項(代表者の押印)
 行政不服審査法第15条第4項では、「審査請求書には、審査請求人(審査請求人が法人その他の社団又は財団であるときは代表者又は管理人、総代を互選したときは総代、代理人によって審査請求をするときは代理人)が押印しなければならない。」と規定していますので、代表者の押印をしてください。
4 正副2通の審査請求書
 行政不服審査法第9条第2項では、「不服申立書は、異議申立ての場合を除き、正副2通を提出しなければならない。」と規定していますので、上記事項を補正した正副2通の審査請求書を提出してください。

 なお、上記期限までに補正に応じないときは、行政不服審査法第40条第1項の規定により、不適法な審査請求として却下されることがあります。
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■このため、市民オンブズマン群馬では、平成22年4月28日付で補正書を作成して提出しました。

 その後、市民オンブズマン群馬の審査請求書は、次の経緯を辿って、群馬県公文書開示審査会で審査が続けられたのでした。

 平成22年6月10日 諮問
 平成22年7月16日 諮問庁からの理由説明書を受領
 平成22年8月24日 審査請求人からの意見書を受領
 平成22年9月6日(第35回第二部会)  審議(本件事案の概要説明)
 平成22年11月4日(第127回審査会) 審議
平成22年12月14日(第128回審査会) 審議(実施期間の口頭説明)
平成23年1月19日(第129回審査会) 審議
平成23年3月7日(第130回審査会) 審議(審査請求人の口頭陳述)※欠席
平成23年4月19日(第131回審査会) 審議
平成23年5月23日(第132回審査会) 審議
平成23年7月5日(第133回審査会) 審議
平成23年8月24日(第134回審査会) 審議
平成23年9月30日(第135回審査会) 審議
平成23年11月7日(第136回審査会) 審議
平成23年11月15日 答申

■この過程で、平成22年7月20日付で、諮問庁である群馬県公安委員会から「公文書非開示決定とした理由説明書」と、それを踏まえての請求人への意見書提出の依頼書が送られてきました。

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様式第4号(規格A4)(第7条関係)
                               公開審第30105-2号
                               平成22年7月20日
市民オンブズマン群馬
 代表 小川 賢 様
                  群馬県公文書開示審査会会長 新井博
           意見書の提出の求めについて
 下記1の諮問事件について、当審査会の調査審議の参考としたいので、群馬県公文書開示審査会審議要領第7条第1項の規定に基づき、下記2のとおり意見書の提出を求めます。
    記
1 諮問事件
 諮問番号:諮問第1 2 9号
 事件名:「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」の公文書非開示決定に対する審査請求
2 意見書の提出
(1)提出期限
 平成22年8月24日(火)
(2)提出を求める意見書及び提出方法
 別紙様式により作成した書面を、持参又は郵送で群馬県生活文化部県民生活課に提出してください。
 なお、提出された意見書は、群馬県公文書間示奏査会奏議要領第7条第2項の規定に基づき諮問庁にその写しを送付しますので、念のため申し添えます。
                   〒371-8570前橋市大手町1-1-1群馬県庁
                   事務局:県民生活課情報公開係
                   電話:027-226-2271
**********
(別紙)
                               平成○年○月○目
群馬県公文書開示審査会会長 様
                           審査請求人住所・氏名
     「意見書」の提出について
 このことについて、群馬県公文書開示審査会審議要領第7条第1項に基づく「意見書」
を下記により提出します。
     記
1 開示請求公文書の特定について
2 群馬県情報公開条例における開示・非開示の解釈について
3 諮問庁の公文書を開示しない理由に対する意見
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【群馬県公安委員会からの理由説明書】
(群馬県県民生活課収受22・7・16)
            群公委第1074号
            平成22年 7月16日
群馬県公文書開示審査会
会 長  新 井  博 様
                      群馬県公安委員会
「理由説明書」の提出について
 平成22年6月14日付け公開審第30105-1号により依頼のあったみだしのことについて、別添のとおり送付します。
       公文書非開示決定とした理由説明書
1 開示請求に係る公文書の特定について
 審査請求人は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第12条第1項の規定により、平成22年1月21日付けで、次の公文書開示請求を行なった。
 「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」
 この請求内容から、実施機関は、本件開示請求に係る公文書を、地域警察官検挙実績低調者等指導要綱の制定について(平成20年4月9日付け群地第174号通達)に基づいて、実績低両者に対して指導を行った状況が記載された指導・面接結果(通達別記様式第3号)及び群馬県警察身上指導推進要綱の制定について(平成14年群本例規第35号)に基づいて作成される身上指導記録表(別記様式第2号)と特定した。
2 条例における開示・非開示の解釈について
 公文書の開示については、条例第13条で「次条に規定する場合を除き、開示請求者に対し、当該公文書を開示しなければならない。」と定めている。
 これを受けて、条例第14条では、個人又は法人の権利利益の保護、公共の安全と秩序の維持、事務又は事業に関する情報で公にすることにより適正な業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの等の観点から、限定的に非開示情報を規定している。
 実施機関は、条例第14条に規定される非開示情報が記録されている場合を除き開示請求に応じて公文書を開示しなければならない義務を負うものであり、公文書の非開示決定は、個々の開示請求ごとに当該公文書に記載されている内容等に即して、かつ、条例の規定の趣旨に添って、個々具体的に判断しなければならない。
(1)条例第14条第2号(個人情報)
 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を書するおそれがある情報は非開示としている。
(2)条例第14条第4号(公共安全情報)
 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報は非開示としている。
(3)条例第14条第6号(事務事業情報)
 地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、円滑な人事管理に支障を及ぼすおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合は非開示として規定している。
3 非開示とした理由
(1)本件対象公文書について
ア 指導・面接結果
 指導・面接結果は、実績が低調である地域警察官の能力及び実績の向上を図り、治安の回復に資することを目的として、指導・面接実施者である警察署長、警察署地域課長等が実績低調者と面接し、当該職員から実績低調項目について、その理由等を聞き取りながら、あらゆる角度から原因等を検証し、改善すべき点、問題点、組織として取り組むべき事項等を把握して、検挙実績の向上に向けた指導教養内容が記載されるものであり、警察署地域課長等が作成するものである。
イ 身上指導記録表
 身上指導記録表は、警察職員の家庭環境、健康、悩み、勤務態度等の身上事項を把握し、早期に問題点を発見して組織的指導等を適切に行い、各種事故防止はもとより、職員が心身共に健全な状態で職務に専念できるようにすることを目的として、監督者である警察署長等が面接結果や身上把握をした事項をその都度記載するものである。また、前述の「指導・面接結果」については、その指導概要を身上指導記録表に転記することとなっている。
(2)条例第14条第2号該当性について
 本件対象文書には、実績低調者の氏名、所属、職名、性別、年齢、面接実施者の氏名等、個人を識別することができる情報が記載されており、条例第14条第2号に該当する。また、これら個人識別情報を非開示としたそのほかの部分には、指導・面接した結果として、実績低調者の勤務状況、改善すべき点等が記載されており、この部分を公にすることは、当該個人の権利利益を書することから、条例第14条第2号に該当すると判断した。
 本件対象文書である指導・面接結果は、実績が低調である地域警察官について作成されるものであり、本件対象文書が作成されているということ自体が、個人の資質や名誉にかかわる当該個人の評価に関する情報である。したがって、開示、非開示の判断に当たっては、直接的又は間接的に個人を識別することができる情報のほか、個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を書するおそれがある情報に配意しなければならない。
(3)条例第14条第4号該当性について
 本件対象文書には、実績低調者の指導を行う上で、職務質問の内容や各種取締りの状況等が記載されている部分があり、これらの情報を公にすることは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第14条第4号に該当する。
 なお、これらの情報は、当該職員を指導するために記載された情報であり、当該職員の能力や資質に係る情報であるから個人に関する情報でもある。
(4)条例第14条第6号該当性について
 本件対象文書は、実績が低調である地域警察官について作成されるものであり、職員を評価し、改善を図ることを目的とした人事管理に係る情報である。本件対象文書が作成されているということ自体が、個人の資質や名誉にかかわる個人情報であり、これを公にすることは、当該職員に組織への不信感を抱かせ、自己評価との差異を巡る監督者との対立を招くなど、組織の一体性を失わせ、また、当該職員が萎縮し、志気の低下を招くなど、実績低調の改善を図るという当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第14条第6号に該当する。
(5)非開示決定について
 本件対象文書は、前述のとおり、その全体が条例第14条第2号及び同条第6号の非開示情報に該当するとして、そのすべてを非開示としたものである。
 なお、指導・面接結果の様式については、審査請求人が行った別の開示請求により、既に審査請求人に開示している。
4 審査請求人の主張について
(1)審査請求人は、公務員である警察官等は、県民の代表として勤務する公人であり、県民・国民の安全・安心のために公然と勤務しているものを公開しても、何ら個人の権利利益を侵害するおそれは全くないと主張している。
 しかし、本件対象文書に記載された職員の氏名等については、前記3(2)「条例第14条第2号該当性について」のとおり、職務遂行上の情報ではなく、個人に関する実績等の評価に関するものであることから、階級に関係なく、個人情報として非開示と考える。
(2)審査請求人は、警察官等の行う職務質問の内容や各種取締り状況等を非開示情報としているが、県民・国民には知る権利があることから開示するべきであると主張している。
 しかし、条例第14条第4号において、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるに足りる相当の理由がある情報を非開示と規定しており、本件対象文書の内容は、職務質問の内容や各種取締り伏況等、犯罪の予防、捜査の手法、技術、体制、方針等、公共の安全と秩序の維持に必要な情報が含まれている。
 また、これらの情報は、実績が低調である地域警察官を指導するために記載された情報であり、当該職員の能力や資質に係る情報であるから個人に関する情報でもある。
 したがって、非開示として保護されるべき情報であり、審査請求人が主張する知る権利を持っても、なお、尊重されるべきである。
(3)審査請求人は、本件対象文書を開示することが適正、円滑な人事管理を実現する最も有効性のある情報であるとして、非開示処分を取り消すべきであると主張している。
 しかし、本件対象文書は、実績低調者の平素の勤務状況等を通じての指揮・指導、監督や、個々面接等を通じて、警察署長等の監督者の評価等が記載されており、このような評価等が開示された場合、当該職員に組織への不信感を抱かせ、自己の評価との差異を巡る監督者との対立を招くなど、組織の一体性を失わせ、
 また、当該職員が萎縮し、志気の低下を招くなど、実績低調の改善を図るという当該事務の遂行に支障を及ぼし、条例第14条第6号における人事管理に係る事務に開し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ及び今後の警察活動の適正な遂行に支障を生ずるおそれが十分認められることから、審査請求人の主張は認められない。
<群馬県情報公開条例>
改正 平成21年3月27日群馬県条例第22号
<解釈>
第14条(非開示情報)関係
(非開示情報)
第14条 実施機関は、開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合は、当該公文書を関示してはならない.                                   
【趣旨】
 本条は、開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合は、当該公文書を開示してはならない旨定めるものである。
【解説】
(1)原則開示のルールの下では、非開示情報に該当するとして例外的に非開示の決定がなされた場合、その非開示決定の妥当性を立証する責任は実施機関が負うものである。
(2)本条各号の非開示情報は、保護すべき利益に着目して分類したものであり、ある情報が各号の複数の非開示情報に該当する場合があり得る。ヽまた、例えば、ある個人に関する情報について、第2号のただし書の情報に該当するため同号の非開示情報には該当しない場合であっても、他の号の非開示情報に該当し非開示となることはあり得る。よって、ある情報を開示する場合は、本菜の非開示情報のいずれにも該当しないことを確認することが必要である。
(3)本条各号で用いられている「公にすること」とは、秘密にせず、何人にも知り得る状態におくことを意味する。本条例では、何人も関示請求ができることから、開示請求者に開示するということは、何人に対しても開示を行うことが可能であるということを意味する。したがって、本菜の各号において非開示情報該当性の判断をする場合、各号に規定された「おそれ」の有無等については、「開示請求者に開示することにより」ではなく、「公にすることにより」判断することとしている。
(4)非開示情報該当性は、時の経過、社会情勢の変化、当該情報に係る事務・事業の進行状況等の事情の変更に伴って変化するものであり、開示請求があった都度判断しなければならない。このような変化は、「おそれ」が要件となっている非開示情報の場合に顕著であると考えられる。一般的には、ある時点において非開示情報に該当する情報が、別の時点においても当然に非開示情報に該当するわけではない。なお、個々の開示請求における非開示情報該当性の判断の時点は、開示決定等の時点である。
第14条第2号(個人情報)
(2)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第1031号)第2条第2項に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員、地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ.)の役員及び職員並びに公社の役員及び職員をいう.)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名(当該公務員等の氏名を公にすることにより、当該公務員等の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合又はそのおそれがあると詰めて実施機関が定める職にある公務員の氏名を除く。)並びに当該職務遂行の内容に係る部分
【趣旨】
  本号は、個人に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。
【解説】
1 本文
(1)個人に関する情報については、個人のプライバシーなどの権利利益を害するおそれがあるものに限って非開示情報とする方式(プライバシー保護型)を採用している県もあるが、いわゆるプライバシーの概念は、法的にも社会通念上も必ずしも確立したものではないことから、本条例では、個人の権利利益の十分な保護を図るため、特定の個人を識別できる情報は、原則として非開示とする方式(個人識別型)を採用している。しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を超えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、特定の個人を識別することができるもの(以下「個人識別情報」という。)を原則非開示とした上で、個人の権利利益を侵害せず非開示にする必要のないもの、
 及び個人の権利利益を侵害しても開示することによる公益が優先するため開示すべきものを、本号イからロで例外的事項として限定列挙している。
(2)「個人に関する情報」(以下F・個人情報」という。)とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が合まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。 したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。
(3)個人の権利利益を十全に保護するため、個人識別情報を一般的に非開示とし、本号本文の判断に当たり、原則として、公務員等に関する情報と非公務員等に関する情報とを区別していない。ただし、前者については、特に非開示とすべきでない情報を本号ハにおいて除外している。
(4)「個人」には、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれる。生前に本号により非開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることとなるのは不適
 当であるからである。
(5)「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人その他の団体に関する情報と同様の要件により非開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人情報からは除外している。
(6)「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試聴の受験番号、保険証の記号番号等)などが挙げられる。氏名以外の記述等においては、単独では必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより、特定の個人を識別することとなる場合が多いと考えられる。
(7)「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報全体である。
(8)「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」とは、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別可能となるものについても、個人識別情報として非開示情報となるという趣旨である。
 照合の対象となる「他の情報」としては、公知(周知)の情報や、図書館などの公共施設で一般に人手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれると解する。他方、特別の調査をすれば人手し得るかもしれないような情報については、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はないものと考えられる。
 照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別に適切に判断することが必要となる。
(9)個人識別性の判断に当たっては、厳密には個人識別情報ではないが、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から個人識別性を認めるべき場合がある。例えば、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合がこれに当たる。
(10)「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、実施機関が保有する個人情報の大部分は個人識別情報であり、これを非開示とすることで、個人の権利利益の保護は基本的には十分確保されると考えられるが、中には、匿名の作文や無記名の個人の著作物のように、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められたりするものがあり得ることから、補充的に非開示情報として規定したものである。
2 イ
(1)個人識別情報であっても、一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。
(2)「法令等の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は「公にされている情報」には該当しない。
(3)「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。
 当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として]には当たらない。
(4)「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることを意味するが、現に公知(周知)の事実であることまでは必要としない。
 過去に公にされたものであっても、時の経過により現に公衆が知り得る状態に置かれていなければ、開示決定等の時点では公にされているとはいえない場合があり得る。
(5)「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がないなど、当該情報の性質上、通例、公にされるものも含まれる。
3 ロ
(1)人の生命、健康その他の基本的な権利利益を保護することは、実施機関の基本的な責務である。
 非開示情報該当性の判断に当たっては、開示することの利益と開示されないことの利益との調和を図ることが重要であり、個人情報についても、公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときには、それを開示する必要性と正当性が認められることから、
 当該情報を開示しなければならないこととするものである。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
 この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活及び財産の保護についても、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要である。
(2)人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整は、公益上の理由による裁量的開示の規定(第16条)により図られる。
4 ハ
(1)公文書には、公務遂行の主体である公務員の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが、県の諸活動を説明する責務を全うするという観点からは、これらの情報を公にする意義は大きい。一方で、公務員についても、個人としての権利利益は十分に保護する必要がある。
 この両者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職及び氏名」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ特定の公務員が識別される結果になるとしても、当該公務員個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除き、個人に関する情報としては非開示とはしないこととする趣旨である。
 なお、独立行政法人等及び地方独立行政法人の役員及び職員については、独立行政法人等及び地方独立行政法人が行政を担う主体であり、その役員及び職員については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)においても公務員と同様の取扱いをしていることから、本号においても公務員と同様に取り扱うこととする。また、公社の役員及び職員についても、公社が広い意味での県行政を補完する業務を行っていることから、公務員と同様に取り扱うこととするものである。
(2)「公務員等」の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方など公務員等以外の個人情報である場合がある。このように一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに非開示情報該当性を判断する必要がある。すなわち、当該公務員等にとっての非開示情報該当性と他の個人にとっての非開示情報該当性が別個に検討され、いずれかが非開示情報に該当すれば、当該部分は非開示とされることになる。
 「公務員等」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員及び地方議会議員並びに独立行政法人等、地方独立行政法人及び公社の役員及び職員等を含む。また、公務員等であった者が当然に含まれるものではないが、公務員等であった当時の情報については、本号ハの規定は適用される。
(3)「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。
(4)本号ハは、具体的な職務の遂行と直接の関連を有する情報を対象とし、例えば、公務員等の情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は管理される職員の個人情報として保護される必要があり、本号ハの対象となる情報ではない。
 なお、「休暇情報等」でも、特定の日に職務に従事していなかったこと、職務専念義務が免除されていたこと、欠勤していたこと等の情報は本号ハに該当する可能性がある。
 ただしこの場合にも、年次有給休暇、病気休暇などの休暇の種別や、職務専念義務免除の個別具体的な内容、欠勤の理由等は本号ハに該当せず非開示情報として取り扱う(最高裁第二小法廷平成15年上1月21目判決(平成12年(行ヒ)第334号))。
(5)「そのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名」は、職務の性質上、個人の権利利益を害するおそれが強いと実施機関が判断した職にある公務員を保護するために設けたものである。これに該当する職にある者として、警察本部告示(平成14年群馬県警察本部告示第1号)において、「警部補以下の階級にある警察官及びこれに相当する警察職員をもって充てる職」が指定されている。
5 本人からの開示請求
 本条例の開示請求制度は、何人に対しても請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、個人識別情報等(本号本文)であれば、本号イからハ又は公益上の理由による裁量的開示(第16条)に該当しない限り、非開示となる。
 なお、本人情報の開示請求については、群馬県個人情報保護条例(平成12年群馬県条例第85号)を参照のこと。
6 食糧費支出に係る公文書の開示の取扱い
 公文書の開示等に関する条例においては、公務員の職・氏名についても個人情報に該当し非開示とされていたが、食糧費支出に関しては、行政の透剛性確保のため、平成8年5月24日付広第5号(食糧費支出に係る公文書の開示取扱について(通知)総務部長から各実施機関(議会、公安委員会及び警察本部長は除く。)及び各所属長あて)により、会議に伴う弁当、茶菓子及び式典、イベントに伴う飲食等については、相手方を含めた出席者の職・氏名を開示することとし、また、意見交換、情報収集、交渉、協議、打合せ等に伴う飲食についても相手方を含めた出席者の職・氏名は原則開示としてきたところである。
 群馬県情報公開条例においては、本号ハにより、職務の遂行に係る公務員の職・氏名は、当該公務員の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合又はそのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名を除き、開示されるものである。
 また、公務員以外の食糧費支出の伴う会議等出席者の職・氏名については、前述の通知により平成8年6月1日以降に作成・取得した公文書(決裁・供覧済みのものに限る。)の原則開示が統一的に行われ、すでに定着したものであるので、本号イの「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当すると考えられる。よって、食糧費支出に係る公文書に記載されている公務員以外の出席者の職・氏名についても、原則として、非開示とする個人情報には当たらないと解する。なお、会議等の内容によっては、公務員・公務員以外を問わず、第6号等他の非開示情報に該当することはあり得る。
第14粂第4号(公共安全情報)
(4)公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報
【趣旨】
 本号は、公共の安全等に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。
【解説】
(1)公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的な利益を擁護するために国及び地方公共団体に諜せられた重要な責務であり、情報公開制度においてもこれらの利益は十分に保護する必要がある。
 そこで、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある情報を非開示とし、その判断の司法審査に当たっては、実施機開め裁量を尊重することとするものである。
(2)「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。なお、県民の防犯意識の啓発、防犯機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報については、本号に該当しない。
 「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防正したり、犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。
 「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)などのために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。
 刑事訴訟法によれば、犯罪捜査の権限を有する者は、検察官、検察事務官及び司法警察職員であり、司法警察職員には、一般司法警察職員と特別司法警察職員とがある。
「公訴の維持」とは、提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張・立証、公判準備などの活動を指す。
 「刑の執行」とは、犯罪に対して科される制裁を刑といい、刑法第1編第2章に規定された死刑、懲役、禁鋼、罰金、拘留、科料、没収、追徴及び労役場留置の刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、本号に該当する。
(3)ここでいう「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防・鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。
 刑事訴訟法以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、独占禁止法違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、本号に含まれる。
 また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムヘの不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や、被疑者・被告人の留置・勾留に関する施設保安に支障を生じるおそれがある情報も、本号に含まれる。
 一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の、一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報は、本号に該当するものではなく、第6号等により開示・非開示が判断されることとなる。
(4)[その他の」公共の安全と秩序の維持とは「犯罪の予防」、「犯罪の鎮圧」、「捜査」、「公訴の維持」又は「升IUの執行」のほか、平穏な市民生活、社会の風紀、その他公共の安全と秩序を維持するために必要な活動をいう。
(5)「支障を及ぼすおそれがある」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序を維持するための諸活動が阻害される、若しくは適正に行われなくなる、又はその可能性がある場合をいう。
(6)実施機関の第一次的判断
 「支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」としているのは、本号に規定する情報に該当するかどうかの判断に当たっては、実施機関の裁量を尊重するという趣旨である。すなわち、本号に規定する情報の開示・非開示の判断には、犯罪などに関する将来予測としての専門的・技術的判断を要するなどの特殊性が認められることから、司法審査の場においては、裁判所は実施機関の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かを審理・判断するのが適当であるとして規定したものである。
 なお、「相当の理由がある」か否かについて述べられた判例には、次のものがある。
「その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。」(最高裁大法廷昭和53年10月4目判決)
(7)具体例
 対象となる公文書は、捜査機関が作成又は取得したものに限らず、開示請求を受けた実施機関自らが作成し、又は捜査機関等から取得したものも該当する場合がある。
 本号に該当する情報は、例えば次のようなものをいう。
○犯罪の捜査等の事実又は内容に関する情報
 ・麻薬覚せい剤協力調査に関する情報
○犯罪捜査の手法、技術、体制等に関する情報
 ・犯罪捜査等に用いる機材等の性能に関する情報
○情報提供者、被疑者、捜査員等関係者に関する情報
○犯罪の予防、鎮圧に関する手法、技術、体制等に関する情報(犯罪の目標となることが予想される個人の行動予定、施設の所在や警備の状況に関する情報を含む。)
 ・火薬庫台帳
 ・毒物・劇物台帳
 ・麻薬・覚せい剤・大麻の取扱業者名簿
 ・庁舎警備業務日誌
○被疑者・被告人の留置・勾留に関する情報
第14条第6号(事務事業情報)
(6)県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に張る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、県、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
【趣旨】
 本号は、事務又は事業に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。
【解説】
1 本文
(1)県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社(以下「県の機関等」という。)が行う事務又は事業は、公共の利益のために行われるものであり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非開示とする合理的な理由がある。しかし、県の機関等が行う事務又は事業は広範かつ多種多様であり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある事務又は事業の情報を事項的にすべて列挙することは技術的に困難であり、実益も乏しい。そのため、各機関に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むことが容易に想定されるものを「次に掲げるおそれ」としてイからホまで例示的に掲げた上で、これらのおそれ以外については、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」として包括的に規定した。
(2)「次に掲げるおそれ」としてイからホまで掲げたものは、県の機関等に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的なものである。これらの情報のほかにも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業に関する情報であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものなど、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」のある情報はあり得る。
(3)「当該事務又は事業の性質上」とは、適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するに当たっては、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法などに照らして行うという趣旨である。
(4)「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」については、実施機関に広範な裁量権限を与える趣旨ではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務又は事業がその根拠となる規定又はその趣旨に照らして公益的な開示の必要性などの種々の利益を考慮した上での「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。
「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。
2 イ
(1)「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べることをいう。
 「検査」とは、法令等の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格・等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。
 「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態で確保することをいう。
 「試験」とは、入の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。
 「租税」には、国税、地方税がある。「賦課」とは、公租公課を特定の人に割り当てて負担させることをいい、「徴収」とは、租税その他の収入金を取り立てることをいう。
(2)上記の監査等は、いずれも事実を正確に把捉し、その事実に基づいて評価、判断を加えた上で、一定の決定を伴うことがある事務である。
 これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報や試験問題などのように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽を容易にしたりするなどのおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とするものである。また、事後であっても、例えば、違反事例等の詳細についてこれを公にすると他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆するようなものは該当する。
3 ロ
(1)「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
  「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。
  「争訟」 とは、訴えを起こして争うことをいい、訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立て、その他の法令に基づく不服申立てがある。
(2)県の機関等が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。
 これらの契約等に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を事前に公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれるおそれや、交渉や争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とするものである。
4 ハ
(1)県の機関等が行う調査研究(ある事柄を調べ、真理を探究すること)の成果については、社会、県民等にあまねく還元することが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員がその発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。
(2)調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、①知的所有権に関する情報や調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く県民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがある場合、②試行錯誤の段階の情報で、公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報を非開示とするものである。
5 ニ
 県の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で、当該組織の独自性を有するものである。
 人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報を非開示とするものである。
6 ホ
 県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法第2条の適用を受ける企業及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和23年法律第257号)第2条第2号の事業を行う国の経営する企業をいう。)又は独立行政法人等、地方独立行政法人若しくは公社に係る事業については、企業経営という事業の性質上、第3号の法人等に関する情報と同様な考え方でその正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがある情報を非開示とするものである。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、また、その開示の範囲は第3号の法人等とは当然異なり、その事業に関する情報の非関示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。
**********

【ひらく会情報部・この項つづく】

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大河原裁判に集まった一般市民150人には38席しか与えず、県警記者クラブ12社を全て傍聴させた前橋地裁

2011-05-12 23:13:00 | 警察裏金問題
■群馬県警で勤務していた当時、裏金を告発したとして、私生活の監視を受け、挙句の果てにでっち上げの公務執行妨害で調査委解雇された大河原宗平氏の、懲戒免職取消訴訟等3件の判決が、今日、5月9日(月)午後11時半から、前橋地裁第21号法廷で開かれ、やはり、と言うべきか、遺憾ながら、すべて原告大河原氏ら側の敗訴という結果になりました。

前橋地裁第21号法廷開廷表。11:30開始11:40終了予定で次の3件の判決が予定されている。平成20年(行ウ)第15号懲戒処分取消請求事件(原告:大河原宗平、被告:群馬県)、平成17年(ワ)第156号損害賠償請求事件(原告:大河原宗平、被告:群馬県外)、平成17年(ワ)第441号損害賠償請求事件(原告:村尾さち子、被告:群馬県外)で、担当裁判官は民事第2部合議係の裁判長西口元、裁判官水橋巌・渡邉明子、書記官原美恵とあります。

■当会の事務局長が代表を務める市民オンブズマン群馬では、2004年7月20日付の週刊誌フライデーで、地元の群馬県の警察裏金を告発した大河原宗平氏の勇気ある行動を支援すべく、2004年10月に住民監査請求を行い、群馬県監査委員から棄却されたため、同年12月に住民訴訟を提起しました、そして2008年5月に前橋地裁で敗訴したため、東京高裁に控訴し、そこでも敗訴したので、2008年11月25日に最高裁に上告しましたが、2009年6月16日付で最高裁は棄却通知を送りつけてきました。

 その後、大河原宗平氏を支える会を中心に、警察の裏金案件では実績のある東京の弁護士らの協力のもとに、懲戒免職取消訴訟等が提起され、今日、5月9日、それら3件の判決日を迎えることになりました。当初、判決は3月18日の予定でしたが、3月11日の東日本大震災の発生により、耐震構造に問題があるとして地裁が判決美の延長をしていたものです。

■5月9日の判決は、これまで全国各地で顕在化している警察の裏金問題の象徴的な事件として、非常に重要な位置付けとして捉えられており、本日は地元の我々市民オンブズマン群馬はもとより、全国各地から沢山の支援者が集まりました。

 こうした様子を見た前橋地検の総務課では、いつもは傍聴券を外で配布するのですが、沢山の支援者らが、地裁の玄関前に長蛇の列を作って、目の前の県警や県庁にいる職員や、通行人に目立たつことを嫌って、そうした事態を避けようとしたようです。

法廷開廷表の下に貼られた傍聴整理券配布の案内。↑

なぜか、1階ロビーの右側の待合スペースを空けて、そこに傍聴希望者の抽選を行うとして、全員をそのスペースに押し込めました。

当日配布された傍聴希望者への整理券。

 そして、午前10時59分で傍聴希望者への抽選券の配布を締め切り、午前11時から抽選券の番号順にクジ引きをしたのでした。

 大河原氏の裁判の世紀の判決を直に聞きたいとして、全国から集まった支援者は150人に達しました。これらの人たちが決して広いとは言えないロビーの一角で、クジ引きの順番待ちの為、5列に並ばされたのでした。そのため、狭い裁判所の待合室内は熱気がこもっていました。

傍聴券。

■こうして、一般市民らは、クジ引きで38名の傍聴者を決めさせられましたが、マスコミ関係者には、裁判所が12の席を用意していることが判明しました。このことを、クジ引きの順番待ちをしている一般市民らが知ると、「不公平だ」という声が巻き起こりました。

 そのため、裁判所の係員が総務課の広報担当者を呼んで、理由の説明がありました。それによると、「マスコミは本件裁判をきちんと一般市民に報道する義務があるため、県警記者クラブから12社の傍聴申し入れがあったので許可したものであり、決して特権を与えているわけではない」という趣旨の内容でした。

 そこで、市民オンブズマン群馬から「それでは12社の社名リストをください」と裁判所の広報担当者に要請したところ、「まだ、どのマスコミ社が参加するのかしないのか、法廷が開かれていないので分からない。いずれにしても判決後に確定するのでそれまで待ってほしい」という返事でした。

 午前11時にクジ引きの整理券配布が閉め切られた後、さっそく整理番号順にクジ引きが行われました。結局、オンブズマン関係者7名のうち、2名が首尾よく傍聴券を入手できましたが、あとの5名は1階ロビーで判決公判が終わるまで待機することになりました。

■前橋地裁2階の21号法廷に入ると、すでに半分以上席が埋まっていました。マスコミ用の12席は、法廷に向かって一番左側の前方にしつらえてありました。まだ、誰も記者は来ていませんでした。21号法廷の傍聴席は、椅子が横4席×前後4列の16席が左側、中央、右側の3グループあり、法廷の一番後ろの壁側の前に、それぞれ3つの長椅子があります。これにもそれぞれ4人ずつ座れますので、全部で、60名の傍聴が可能ですが、椅子と椅子との間のスペースや、壁際にも立ち見の人を入れれば、最大100名程度の傍聴は可能ですが、裁判所から2名の係員が両側のそれぞれ壁の前に立ち、傍聴席を監視していました。

 され、11時半に裁判長らが入室。全員起立で迎えた後、さっそく判決文の読み上げが行われました。西口裁判長は、「原告の請求を棄却する」と立て続けに2件の事案についてあっさりと判決を出しました。また、3件目は、原告の弁護士から、前の2件と少し間をおいて判決を出すように裁判長に申し入れがなされて、一旦裁判長らが退室した後、数分後に再度入室し、判決が読み上げられました。この案件だけは「5万円の支払いをレオパレスに支払え」という内容でしたが、訴状に、請求額として記載されたのは1千万円であり、しかも同じく被告である県に対して、裁判所は「全く違法性」がないとして、ビタ1文損害賠償を認めませんでした。

 このように、これだけ明らかなでっち上げ逮捕について、裁判所が完全に県や県警の立場を擁護したがる様子を見れば見るほど、我が国の司法の後進性を痛感させられます。

■そして、それを擁護しているマスコミの報道姿勢についても、絶望させられます。

 今回、県警の記者クラブの幹事社である上毛新聞と、副幹事社である共同通信社によると、加盟15社のうち、フジ、TBS、テレ朝をのぞく12社が傍聴を申し込んだのだそうです。しかし驚くべきことに、この12社については、地裁はチェックしておらず、県警の記者クラブもどこのマスコミ社が、判決を傍聴したのか、確認をとっていないとのことです。

 地検の総務部の広報担当者によれば、普段見掛けた新聞記者として、朝日、毎日、読売、上毛やNHKは記憶にあるが、それ以外は分からないとのことでした。

 となると、ひょっとして、普段付き合いのある県警関係者や、マスコミ以外の関係者がマスコミ社の帽子をかぶって、傍聴していた可能性も否定できません。この点について、実際に傍聴した新聞記者に確認してみたところ、普段見掛けた顔ばかりだったという返事でしたが、本当のところは分かりません。

 というわけで、12社の内訳を想定すれば、朝日、読売、毎日、産経、上毛、東京、共同、時事、NHK、群馬テレビ、日本テレビ、テレビ東京ということになります。

■大河原裁判の発端となった“事件”が発生したのは2004(平成16)年2月16日でした。この日、大河原宗平警部補(当時、以下同じ)が、群馬県警本部の警察官(伊藤孝順警視)に体当たりをしたとして、伊藤警視の虚偽の説明をもとに、群馬県警はその体当たり行為をもって「公務執行妨害で大河原警部補を現行犯逮捕した」と記者クラブ発表し、大手メディアの朝日、読売、毎日、産経、上毛の5紙は〈右へならえ〉でそれをそのまま翌2月17日付で報道したのでした。

 各紙が事実とは異なる警察発表をそのまま掲載したことについて、後年、大河原氏を支援する市民団体が、記事の訂正等を求めました。特に「県警交通指導課員に体当たりした疑い」(朝日)、「摘発の警視に抵抗」(読売)、「男性警視(47)に体当たりするなどして捜査を妨害した疑い」(毎日)、「暴行を加え、右腕に1週間のけがを負わせた」(産経)、「自分の使っていた車の捜索を求められたが大声を上げて抵抗」(上毛)等、当時メディア各社は警察発表をそのまま記事にしました。そのような記者クラブの弊害とマスコミの偏向報道については、これまで市民オンブズマン群馬としても、数多くの経験があります。

■結局、5月10日付け各紙の群馬版では、次の記事が掲載されました。

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<読売新聞>
元警部補の訴え棄却 懲戒免職取り消し訴訟
 県警の裏金問題を告発したことへの報復で不当に逮捕され、懲戒免職になったとして、元県警警部補の大河原宗平さん(57)が、県などを相手取り、処分の取り消しと、1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5月9日、前橋地裁であった。西口元裁判長は「原告には、懲戒事由がある」などとして請求をいずれも棄却した。
 大河原さんは2004年2月、県警捜査員に体当たりしたりするなどしたとして公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された。その後、偽造ナンバーを付けた車を使ったとして、同年3月に道路運送車両法違反罪で略式起訴され、懲戒免職となった。公務執行妨害事件は不起訴(起訴猶予)となった。
 大河原さんは当時、「県警で裏金作りがあった」と告発していたため、口頭弁論などで大河原さんは「捜査は違法で、県警の報復」などと主張。体当たりの事実もなく、偽造ナンバーも「県警の監視から逃れるため」などと訴えていた。しかし、判決では、体当たりについて「(事件の)経緯に不自然な点はなく、公務執行妨害罪に該当する」と指摘。偽造ナンバーの違法性も認めた。
 今回の足版とは別に、大河原さんから懲戒免職の取り消しなどを求められた県人事委員会は08年6月、懲戒免職処分を「相当」と判断。ただ、公務執行妨害事件については「暴行を加えたとは判断できない」と大河原さんの主張を一部認めていた。
 裏金作りについては、08年5月、大河原さんの証言に基づいて市民団体が前橋地裁に訴えた民事訴訟の判決で、「事実と認めるに足りる証拠はない」などとして却下されている。
 大河原さんは昨年11月、鹿児島県阿久根市の竹原信一前市長に任命され、総務課長に就任。現在は市民環境課参事に就いている。
知人は一部勝訴
 同時に判決が言い渡された大河原さんの知人女性(63)の訴えについては主張が一部、認められた。
 女性は2005年、大河原さんの私生活の調査を行っていた県警に監視され、精神的な苦痛を受けたなどとして、県と女性の住居管理会社で個人情報を県警に提供した「レオパレス21」(本社・東京)を相手取り、計1100万円の損害賠償を求めて民事訴訟を前橋地裁に起こしていた。
 西口裁判長は、県への訴えは棄却したが、不動産会社については「県警に個人情報を提供したことは、プライバシーの侵害」として、同社に5万円の支払いを命じる判決を言い渡した。同社広報室は「判決文を見ていないため、コメントを差し控えたい」としている。
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<朝日新聞>
県警の不正経理問題を告発 元警部補の請求棄却
公務執行妨害容疑逮捕され懲戒免職 取り消し訴訟
 公務執行妨害容疑などで逮捕され、懲戒免職処分を受けたのは不当だとして、元県警警部補の大河原宗平さん(57)が県などに懲戒処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が5月9日、前橋地裁であった。西口元裁判長は原告の請求を棄却した。
 大河原さんは2004年2月、乗用車に偽造ナンバーをつけていた道路運送車両法違反容疑で車を差し押さえに来た警察官に体当たりしたとして、公務執行妨害罪で現行犯逮捕された(のちに不起訴処分)。翌月に道路運送車両法違反容疑で再逮捕され、罰金50万円の略式命令を受けた。県警は大河原さんを懲戒免職にした。
 判決は、原告の肩が体に当たった衝撃で警察官が右手首にけがをしたと認め、公務執行妨害罪に該当し、逮捕には合理性があると認定。偽造ナンバーの作成行為などは地方公務員法の懲戒事由に該当するとした。
 大河原さんは、県警に勤務していたころに実際には支払われない捜査情報提供謝礼の支払い報告書などを作成されられたと主張していた。「県警に行動を監視されるようになったため偽造ナンバーをつけた」「警察官に体当たりした事実はない」と訴えていた。
 大河原さんは昨年11月、専決処分を繰り返した竹原信一市長(当時)の解職を問う住民投票が行われた鹿児島県阿久根市の総務課長に登用された。だが竹原氏の解職にともない、別の部署に異動した。
不動産会社に賠償支払い命令 個人情報巡る知人の訴訟
 大河原宗平さんの知人女性も、県警の個人情報の無断収集などで精神的苦痛を受けたとして、県と不動産会社(本社・東京都)に計1100万円の損害賠償を求めた訴訟を前橋地裁に起こしており、西口元裁判長は5月9日、賃貸会社に5万円の支払いを命じる判決を言い渡した。県への請求については棄却した。
 判決は、不動産会社の従業員が女性の承諾を得ずに警察官に個人情報を提供したことは、プライバシーの侵害に当たるとした。
 木村光雄・県警首席監察官は「今後、個人情報の保護の観点から、情報を持つ団体に迷惑が及ばないように捜査方法を検討したい」と話している。
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<毎日新聞>
 (記事なし)
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<産経新聞>
 (記事なし)
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<上毛新聞>
県警の懲戒処分取り消し訴訟 元警部補の請求棄却 前橋地裁
 県警に公務執行妨害容疑で違法逮捕され、懲戒免職処分を受けたとして、元県警警部補の大河原宗平さん(57)が、国と県に計1500万円の賠償金支払いと処分取り消しを求めた訴訟の判決が5月9日、前橋地裁であった。西口元裁判長は「公務執行妨害による逮捕は合理性を欠くものではない」として、いずれの請求も棄却した。
 西口裁判長は判決理由で、大河原さんが偽造ナンバープレートを取り外したことについて、「差し押さえ手続きを妨害する行為で、懲戒事由に当たる。処分は著しく妥当性を欠くものとはいえない」と判断。「事件は県警の捏造だった」とする原告側の主張を退けた。
 判決を受け、原告側は「納得いかない」と説明。大河原さんは閉廷後、集まった支援者に対し、今後について「まだまだこれからやる」と話した。
 県警は「すべての主張が認められた。捜査の手続きに問題がないことを適正に認定した貰った」としている。
 判決などによると、大河原さんは2004年2月、偽造ナンバープレートを車から取り外して警察官の公務執行を妨害したとして、県警に現行犯逮捕された(起訴猶予)。同3月には道路運送車両法違反容疑で再逮捕。罰金の略式命令を受け、懲戒免職となった。現在は鹿児島県阿久根市の職員として勤務している。
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<東京新聞>
元警部補の男性 請求を地裁棄却 懲戒免職取り消し訴訟
 不当な公務執行妨害容疑で逮捕されたとして、県警元警部補の大河原宗平さん(57)が、県などに処分取り消しと計1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5月9日、前橋地裁であった。西口元裁判長は「処分は著しく妥当性を欠くとはいえない」とし請求をすべて棄却した。
 判決によると、太田署地域課警部補だった大河原氏は2004年2月、道路運送車両法違反容疑の捜査を受け、公務執行妨害で現行犯逮捕され(後に起訴猶予)た。同年3月に略式起訴され、50万円の罰金刑を受け、懲戒免職された。
 裁判で原告側は、大河原氏が県警の不正経理に反対して監視され、やむなく「乗用車に張り付けた難波^のコピーは法的に偽造にあたらず、公務執行妨害とされた捜査員への体当たりもなかったと主張。判決ではコピーは偽造で公務執行妨害もあったと認め、懲戒理由に当たるとした。
 判決後、大河原氏は「負けましたがこれからもがんばります」と話した。県警の木村光雄首席監察官は「捜査手続きや処分が適当と認定された」とコメントした。
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元警部補の請求棄却=懲戒免職取り消し訴訟―前橋地裁
時事通信5月9日(月)11時53分配信
 群馬県警の裏金問題を指摘したため不当に逮捕され懲戒免職になったとして、元同県警警部補の大河原宗平氏(57)が群馬県などに懲戒処分の取り消しと1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5月9日、前橋地裁であった。西口元裁判長は「処分が著しく妥当を欠くとは言えず、裁量権の逸脱・乱用は認められない」として、元警部補の請求を棄却した。
 判決によると、大河原氏は警部補だった2004年2月、警視に体当たりしたとして公務執行妨害容疑で現行犯逮捕され、同年3月に懲戒免職処分となった。
 大河原氏は、裏金問題を告発したため組織から排除されたと主張したが、判決は「公務執行妨害事件がねつ造とは言えない」と退けた。
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■このように、産経新聞と毎日新聞は、翌日の群馬版に記事を掲載していません。これは、裁判所の総務課の広報担当者が説明したマスコミ各社12社の傍聴許可理由に反する行為と考えられます。

 ただし、毎日新聞はネット上で、次の記事を掲載しています。

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懲戒免職取り消し訴訟:裏金抗議元警官の免職取り消し退け--前橋地裁判決
 偽造ナンバー車両を使用したとして群馬県警を懲戒免職後、鹿児島県阿久根市の竹原信一前市長に同市職員に採用された大河原宗平氏(57)が、群馬県などを相手取り、懲戒免職処分の取り消しと1500万円の国家賠償などを求めた訴訟で、前橋地裁(西口元(はじめ)裁判長)は9日、大河原氏の訴えを棄却した。
 判決によると、大河原氏は県警太田署で警部補だった04年2月、偽造ナンバー車の差し押さえの際に公務執行妨害容疑で現行犯逮捕(起訴猶予処分)、同3月に道路運送車両法違反容疑で再逮捕され、罰金50万円の略式命令を受け、確定後に懲戒免職になった。大河原氏は「県警の裏金作りに抗議したため、事件が捏造(ねつぞう)された」と主張。偽造ナンバーの取り付けは、県警の監視から逃れるためとしていたが、判決は「原告の請求は理由がない」と退けた。
 大河原氏は10年11月に阿久根市に採用されて総務課長に、前市長落選後の今年1月には市民環境課参事に異動した。【塩田彩】
毎日新聞 2011年5月9日 12時15分(最終更新 5月9日 12時58分)
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損賠訴訟:「レオパレス21」に5万円支払い命令 個人情報提供で判決 /群馬
 賃貸アパート大手「レオパレス21」(本社・東京)が、個人情報を県警に無断で提供したのはプライバシーの侵害にあたるとして、大河原宗平氏の知人女性(63)が同社と県を相手取り、1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、前橋地裁(西口元裁判長)は5月9日、レオパレス21に5万円を支払うよう命じた。県への請求は棄却した。
 判決によると、レオパレス21は2003年9月、当時アパートに暮らしていた女性の生年月日や勤務先など賃貸契約書に記入された個人情報を県警に提供した。
 レオパレス21広報室は「判決文を見ていないので、現時点でコメントできない」としている。【塩田彩】
毎日新聞 2011年5月11日 地方版
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 もともと、マスコミは警察発表を鵜呑みにして、それ以外の当事者の言い分を聞こうともしない傾向があり、とくに群馬県のマスコミの偏向はひどいものがあります。

地裁の直ぐ隣にある群馬県警本部ビル。この1階に県警記者クラブがあり、マスコミ関係15社がたむろしている。

■今回は、司法の場で、全面的に警察の主張だけが認められた結果となり、でっちあげの公務執行妨害で逮捕されて、一般市民が被害にあった場合でも、裁判所は警察の主張しか効かないことが判りました。これは非常に重大な訴訟の前例となるため、ますます警察の違法逮捕が今後増えるのではないかと心配です。

今後は、公務執行妨害をでっち上げられて逮捕されると、いくら無罪を主張しても、前橋地方裁判所は警察の主張だけを認め、裁判所から有罪判決を受ける可能性があります。

 しかも、3月の異動で、大河原氏の公務執行妨害罪をでっちあげた伊藤孝順氏は、安中警察署長に就任しました。安中でも、同様なでっち上げ事件の発生が懸念されます。

組織ぐるみで不正経理をやってきた群馬県庁。市民が警察に告発しても、警察そのものが不正経理をしているため、立入捜査をされる心配が無いクライム・ヘブン(犯罪天国)の状況にある。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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阿久根市役所内部の実態と改革に向けた阿久根市長/副市長の不退転の決意

2010-11-21 23:15:00 | 警察裏金問題
■11月5日の大河原裁判と同7日の裁判支援集会に、はるばる鹿児島県阿久根市から竹原信一市長と仙波敏郎副市長が、群馬県前橋市と安中市を訪れました。ちょうど、裁判と支援集会の中日の11月6日(土)午後2時から5時まで、安中市郷原の「かんぽの宿 磯部」の会議室において、新潟県魚沼市議会議員の大桃聡氏主催の「阿久根市政の報告会」が行われました。

 阿久根市のことは、普段、マスコミによる報道を通じて、「阿久根市長は、議会制民主主義の根幹である議会の存在を無視して独断と偏見で専決処分を乱発しているとんでもない独裁市長だ」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

 そこで、阿久根市長と副市長が、当会の根拠地である安中市に来訪した機会を捉えて、直接、阿久根市のこれまでの経緯と現状、そして問題点の実態、今後の対応策等を聞きに出かけました。以下は、その時の模様です。

■報告会は、魚沼市議の大桃氏の司会により、11月6日(土)午後2時から開催されました。事前の開催情報が寸前だったため、地元関係者は当会関係者を含め5名、他に他県からの支援者やマスコミ(上毛、東京)など含めても20名程度のこじんまりとした会議でした。それだけに、竹原市長も仙波副市長も、参加者との距離が小さいため、忌憚のない質疑が出来たと思います。

1.阿久根市の竹原市長の紹介

●主催者:新潟県魚沼市議の大桃といいます。今回責任者ということで一言挨拶させていただきます。皆様、お忙しい中突然のご案内にもかかわらず、大勢お越しくださり有難うございました。当初は桐生でやる予定でしたが、いろいろな都合で今回安中のほうで、阿久根市長竹原信一、副市長仙波俊郎の講演会を行うことになりました。仙波さんと私が始めてお会いしたのは、この7月の大河原さんの裁判の時、その後の懇親会、翌日の講演会に出させていただきました。その夜の食事会のときに竹原さんから副市長のオファーがあるということをきかされて、その時私は仙波さんに「阿久根に是非行っていただくよう」強くお願いした経緯があります。そんな関係で先月、阿久根までうちのほうから約1500キロあります。車で32時間かけていってまいりました。議会が終わったので心配でしたので、行ってきたということなんですが、市長派の4人の議員の方達だとか、あと市民懇談会にも出させていただきました。そういった中でいろいろ見させてもらったり、市民の方にもお話を聞いた中では、仙波効果というか、非常にいい雰囲気になっているなあと、私は感じてこの分であれば大丈夫だろうと、安心して戻ってきたところです。それから私ごとですが、私も、新潟県の魚沼市で発生しました新潟県中越大震災復興基金の井戸掘り事件ということで、これは平成19年から20年の間に起きたのですけども、それで魚沼市長と県知事を被告に住民訴訟を2件抱えております。これから12月9日に2回目の口頭弁論が開かれるということで、私も楽しみにしている。それと、去年この件にかかわって、業者と市の職員を刑事告発をしたんですが、この夏に検察庁のほうから不起訴の通知が来たので、審査会のほうに申立をしています。今後の予定は、市長と県知事を刑事告発をまたあらたにしたいということで、今準備を進めている段階です。今回は、市長のほうの委任状は持ってきませんでしたが、県知事を訴える委任状を持ってきましたのでご賛同いただける方がいらっしゃればありがたいです。先ほども話したとおり、ちょうど6日が竹原さんと仙波さんがおいでになったので、6日の日が空いたということで急遽こちらで、大勢の方に聞いていただきたくて、この会を設けさせていただきました。質問の時間もたっぷりとってありますので、疑問の点がありましたら、質問いただけますようによろしくお願いします。では最初に、鹿児島の阿久根市長の竹原さんからよろしくお願いします。


◆竹原市長:こんちは、どうも、竹原信一です。私自身はもともと建設会社。まあ、自衛官やっていて、防大出て、28で辞めて帰ってきて、やっては壊しということで、達成感というか自分が世の中の役に立っているという感覚が得られないので、これが非常につらい。仲間どうしでやってね、そういうものが納得いかないんですね。結局辞めて、会社、鹿児島の阿久根で建設会社を親父がやっていましたから、そこで始めたわけです。28で仕事を始めて、土木。子供の頃から見ているので、感覚はあったんですけども、それから始めてもすぐ一人前になりました。コンピュータなんかを使ったりして、一人で2つも3つも現場をできるようになったんです。4千万円くらいの仕事です。それで、ものすごく儲かりました。ひとりで何人分もやるわけですから。仕事も、ミリ単位のレベルの精度で仕事をやっているわけです。順番も、普通の土木の仕事のやり方と異なり、非常に順番に正確にできていくわけです。だけどそういう仕事をしてゆく中で、役所のレベルの低さというか責任感のなさについて本当に腹が立ちました。でも、建設業ですから談合もあるわけですね。談合にも行かなければいけない。それが嫌で嫌でしょうがない。仕舞いには会長でもある父親に「もうやめさせてくれ。誰か雇ってくれ」といった。そういうこともあり、役所の対応の無責任ぶりに腹が立って、知り合いの市議会議員、元議員らとの話の中で、議会や市長が全く無能でデタラメをやっているんです。そして職員も市民を騙して、NPO法人を作らせて、取り上げたり、天下り先にするためですね。議員や市長がそれらを結託している。職員の窓口での対応もでたらめで、そんなこんなで、本当に腹が立ってですね、ビラ配りを始めました。この酷さを市民が知ったら暴動が起こっても当たり前だと思ったんですよ。それで、その実態を書いたチラシを配り続けたわけです。建設会社の社長がそういうことをやると、非常にまずいんで、途中から親父にもバレて、「お前はもうクビだ。会社に出てくるな」という状態だったんです。私は子供が5人いる。そのころ一人がお腹にあって、今小学校1年ですけど、うちの嫁さんは「産んでいいのか」と言ったり、あるいは、私にかける保険を、ものすごく高いものに変えていたしていて。それでも止められなかったですね。


2.阿久根市政に対する疑問の芽生えから市議選に出馬

◆竹原市長:毎日毎日、会社のコピーを使ってこっそり書いて毎日やっていた。2年半も続いてしまったんですよ、これが。だいたい阿久根の人口は2万4千。1万2千戸くらいです。全部は配りきれないんですけど、だいたい7、8千部毎回書いては配っていました。バイクで・・・。ずっと続くとは思っていなかったんですけども、どうしようもなくて、自分が止められず。2年半続く頃に市議会議員選挙があり、議員の一人が「議員選挙に出てくれ」と言ってきたんですね。その、腐れきった議員の中のひとりに入ってもどうにもならないから、「とんでもない」と。その出てくれといった議員が「議員になってあがって来い」というんですね。「上がって来い、ではなく、落ちて来い、だろう」と大喧嘩をしました。「サル山に落ちて来い」という感じですね。でも、考えて見れば2年半こういうことを続けて、議員選挙に出て、まあ当選する気などないわけですから、落選すれば自分が止める気持ちになるかも知れないということ。それと、もうひとつは、このことを選挙公報に書けるわけですね。そういうこともいいかな、と思って、「まあいいや。一応届け出は出しましょう」ということで。で、もう一人知り合いに、「あんたも一緒に出ようよ」って、「このくだらない世の中を、ね」と。「供託金を出すから、運動などしなくてもいいから」ということで。付き合いのいい男ですから、まあ付き合ってくれたんです。選挙事務所はあんたの会社の倉庫を使うんだよといって、そうしてやったところがそっちの家族や親戚なんかが運動を始めちゃたんです。「うちの身内からも選挙に出たなら、落選させるわけにはいかん」と。「やあこれ大変だな、あんた」と言っていたら、そっちの奥さんが、私がいくと、「(あんたが)自分で火を点けたのに、(選挙)運動もしないとは何事か」と。自分で自分の選挙の応援をさせられるはめになる。タスキも付けろ、車も準備しろ、ウグイス嬢付きでやれ、などというんで、そこそこにやった。早く(選挙事務所に)帰ると叱られるわけですよ。選対長に。仕方がないので、人目につかないところで時間をつぶしたりした。でもどういうわけが、私が当選してしまったんです。16人のうちの7番目ぐらいで。そっちの方は落選してしまったんですが。当選しても、腐った議会ですから、どうしようもないんです。また、全部反対で、何を言ってももう、市長も職員も議員も結託し放題ですから、議論もへったくれも何もないわけです。それはもう酷い状態です。これでは議会などいらないというので、とにかく皆さんに知らせようと。

3.市議に当選後も、議会や市政の内情を暴露したチラシ配布を継続

◆竹原市長:作業は変わらないんですよ。以前配っていたチラシを「阿久根時報」、議員に当選してからは「議会報告」という名前に変えて、やることは一緒ですね。議会は年30日間もないですね。年4回といったって殆ど仕事などなくて。皆さん、変な話、議会というところは議論をするところなどと思っていません?議会は、“議論をしてはいけないところ”なんですね。これは凄いことなんですけども、日本は、この国では議会制民主主義だから議会で議論をしているはずだと思ったら、とんでもない間違いです。議会というものは、市長が召集します。召集するというのは「議会を開いてください」ということなんです。それをやると、議長が開く。議長が「今回議会を開くけど、ついては(市長に)聞きたいことがあるので出てきてください」という出席要請が、議長から市長にあるんです。それがあって始めて、議会に出席できるんです。出席といっても質問に答えるだけですけれども。そこに行くと、議長は、もう議員の中から選ばれているんですね。その方が、「議員の皆さん一人3回まで質問していいから」などとやるわけです。すると議員が「はーい」と言って質問する。それに対して、何を答えるかというと、余計なことは言ってはいけないんです。市長は質問なんかしちゃいけない。3回だけ。質問に対する答えだけ。議員どうし議論してはいけないんですよ。議論はないんです。「はい質問終わりましたか。はい賛成のひと!」・・・これで終わりなんです。どこに議論がありますか?これが日本中の議会で行われていること。議員の皆さんは、そこで質問の答えを聞いて物事を決めるかというと、そんなことはしない。議案は予め分かっている。だから、多数決で決めるのであるから、多数派で前もって決めて、集まって決めておくわけですよ。これには賛成、これには反対。だから議会には質問など本当は必要ない。でも議員だから、なにかしゃべっておかないとアリバイが、格好がつかない。反対することに決めている場合は、反対の理由になりそうなことを言わせるために、口を開く。賛成と決めている場合には、あれを芝居といいますか、「ああいいことしているね」と、質問というか、前もって、なかには職員が質問と解答を作ってくれたりします。芝居です。芝居さえ必要無いんです、本当は。でもなにもしないでカネをもらっている議員。時給は今、東京だと8百何十円だという報道がありましたが、最低賃金で。だいたい議員だと時給1万から10万です。時給ですよ。そんなレベルの世界ですから、何か格好をつけなければならない、だから格好をつけて、そして「賛成、反対、終わり」となる。そういう、とんでもなく楽にして儲かるような商売、それが最高権力。議員だけで決めるんですよ。しかも、ひとがいないところで、仲間だけで決めた過半数をとることのできる人たちが談合して決めたことが、全てを決めます。税金も、給料も、条例も全部密室で決められる。決める儀式だけを皆さんの前でやる。判断は密室。そして責任者は?その議員には何の責任もない。一切ない。その議員たちが密室で決めたことを儀式として議会で多数決で決めて、それを20日以内に市長はハンコを押さなければならない。「決まりましたね」と。それが執行することになるわけです。違法であるかどうかは関係ない。議員たちには何の責任も無いから。もし、それで執行したことが違法なこと、あるいは損害を与えることで、オンブズマンなどから裁判になって、被害を与えた」ということになったら、市長が個人の責任でそれを払わなくてはならい。大阪の池田市長がそういうことで、1千万円以上も自分のカネで払わなければならない。とんでもないことです。問題が起きないように、普通の市長は、あまり市民にはそういうことを、事実を知られたくない。オンブズマンには損害がないほうがいい。そして議員に反対されるようなことも無い方がいいし、いろいろな仕事を実際にするのは職員ですよね。職員と議員と市長は仲良くしていなければいかんわけですよ。私みたいに、職員のためにならないことをしたり、議員に嫌われるようなことをすると、たちまち悪者扱いです

4.日本中で蔓延する役所と議員の慣れ合いの挙句、天井知らずの役人の給料

◆竹原市長:新聞、とくに甚だしいのは新聞、報道機関です。そのアナウンサーが言うんです。私が生放送で南日本放送の取材を受けた時、そのアナウンサーが言うんですよ。「職員と結局、反発する関係、職員や議員と反発する関係があったら、結局損するのは市民の皆さんです。仲良くして波風立たない状態が望ましいんじゃないんですか?」と、こういうことですね。その結果、どういうことが起こっているか。議会のとんでもない状態、それから、私が日本で初めて公務員の給料を公開した、といわれていますけれど、あれが実際開けてみたら、職員の過半数が年収700万円以上、退職金は2、3千万円、甚だしいのでは52歳の女性が退職する時3830万円ももらっていた。こういうことがやられてきて、本当に市民の実態は、せいぜい2、300万円。7割以上が300万円以下。中心は1百万から2百万円。こういう事実をひた隠しにしている。これがおそらく、日本中でやられていることなんですよ。公務員の給料なんか知っていて当たり前ですよ。とにかく、そういったことで、竹原が居ることが邪魔だ、という職員組合は、日常的に記者クラブ系列みたいなものと手を結んでいます。本当の権力者は何かと言ったら、公務員なんです。自分たちで自分たちの給料を決めることができる。今年22年度の公務員の給料は人事院の発表では、月給が40万ほど。民間はそれと7~8百円くらいしか違わないと言う。(これは)ウソなんですね。ということなんです。裁判になったものもありますが、本当の話し、結局全部仕組んで、私のところの場合は、組合が得に強くて、選挙管理委員会、公平委員会、その他住民が関わるものが全て則られています。徹底的に。市民には何も知らされないで一部の利権団体と、それとそれにつながる人たちばかりが関わる。マスコミも完全に一体になって、とにかく竹原を落とそうと、今回竹原市長に対するリコール運動と言うのも、組合及び組合が雇っている弁護士、及びそこには一体になってこれを成功させようと狙っている。これは、地方議会は、私はまあ7年間もチラシを配っている間に、大体いろいろなことを調べてきているんで、それでだんだんそれになって、最初の時は議員の中で問題になる場面。市長選挙にしかたなく、議員を辞めるつもりで市長選に出たら当選した。8ヶ月してから不信任を2度出されて失職して、再選の時にはまた過半数を取ってきてしまう。どんどん市民が本当のことを知って、何とかしなければいけないという状況は広がっています。で、それにあわせて、マスコミは悪者扱いするんですけども、その波にのって本当のことを知る人が増えている。日本中から或いは外国からも応援メッセージが来たりしております。だから、多分この現象というのは、ますます大きくなって行って、この国を変えてしまうことにつながるんではないか。そういう気がしています。


5.談合制金権主義へと堕落した日本の役所と議会

◆竹原市長:今の社会の現実、皆さんが知っている議会制民主主義などは、全くなくて談合制金権主義。もう間違いないですよ。一番まずい状態。結局人間というのは、自分の収入を得る方法、そこのところを最大化させようとする努力。努力なんだけど、そのために本当のことを知らせまいと、その力がいつも働いてしまい、結局は全体をダメにする。まあ仙波さんの話もあるかと思うんですけども、国民に隠して裏金を作る。そして自分たちを繁栄、発展させようと、どこでもそれをやるおかげで、お互いを裏切ってダメになってしまう。この国は、例えば、税収は35兆円なのに公務員給与が35兆円も食っている。いつ破綻してもおかしくない状況にある。でもそれを止められない。本当の責任者である、権利者であるはずの国民は、代表を選ぶときに、議員を選ぶ時に、だから、自分が好きか嫌いか、或いは自分の言うことを聞くか聞かないか、社会に対する責任感というものを考えなくてもいいんだ、と。結局、競争することで社会がよくなるんだ、ということを学校でも教えちゃっているんですよね。そういう形で選ばれた議員たちが、何をするかというと、議員なったときに同じことをするんです。この市長は、俺が、自分が好きか嫌いか、自分の言うことを聞くか聞かないかで判断する。皆さん、全体のことは考えない。同じ精神状態です。社会の仕組みを担う人たちが、投票する人たちと同じ精神状態。これを変える方法は投票する人たちの精神状態、モノの考え方を、あるいは仕組みに対する知識を、これを変えないといけないと思いますよ。本当に、根本に立ち返るには、遠回りのように見えますけど、それが一番近道だと思います。学校では議会の仕組みをシミュレーションすべきです。儀式だと言うことがわかる。そして、本当に、議会というのは儀式なんだと言うことをよくわかってほしい。そしたら投票する時は、皆さんも、自分のことではなく、とにかく社会のために働く人を選んで、つくって、それを当選させると言う気持ちにならないと変わらない。そこのところを本当の腹の底で分からないと。本当に絶望です。今、絶望状態ですよ。市民が知って変わらなければ、この国は変わることができません。頑張りましょう(大拍手)

●主催者:ありがとうございました。本当に短い時間で申し訳ありませんが、後も押していますので・・・。竹原さんが発信する阿久根の状況について、私もブログとかで前に見た時は、「なんだこれは?」と思いましたが、私も去年の春に市議会議員に入りますと、同じことが起きています。桐生に傍聴に行きますと、桐生でも同じことが行われています。日本中で同じ議会の状況だと思います。それと、そういうような話しも出ましたが、私も今ブログに、職員の給料と退職金を竹原さんに倣って載せてあります。これは市役所で調べたんですけども、なかなか出しません。1年間かかってやって、今出している額が出ています。べラボーな額です。うち(魚沼市)は平均で786万円、一人当たり。退職金は2900万円、去年。今年の春退職したかたの最高額です。非常に高いです。そういったことで、実際に市民の方が中に入って見ていただかないと、本当のところは分からない。竹原さんがおやりになっていることが、これから大きなうねりになってくるんではないかと、私も期待していますので、ぜひとも皆さんも、この地元の安中であれば、市役所なり議員なりを見ていただきたいと思います。有難うございました。では次、仙波さん、お願いします。

6.大河原宗平氏が接点の竹原市長と仙波元警察官の出会い

▲仙波副市長:はい、なんか、竹原市長が奇人変人であり、こう全く取り付く島も無いという感覚で、お越しの方も沢山おられると思いますが、実は、いま私、阿久根に行って3ヶ月経ちました。いま、市内を回っています。このように少ない人数は初めてです。まあ、急なことですしいろいろあると思いますが。ですから私がなぜ阿久根に行ったかといろいろ珍しがられまして、いろいろな方から取材がありました。まあ、比較的東京新聞さんというのは理解力のある新聞社ですね。ですから、私のことも告発後取り上げていただきましたし、そして現在も、東京新聞というのが、大河原さんの事件も含めて取り上げていただいております。ですが、全国のマスコミ、メディアは竹原市長に対して全てノーの発信をしています。ではなぜ、日本で25万人の警官のなかで、そして退職した警官が、現在私を含めて15万位いますが。40万人の警官の中で、ただ一人裏金に手を染めずに、たった一人定年退職した私が、なぜ法を守らない阿久根に行ったのかということで非常に違和感を持っている人が多いようです。それは、私の生き様を知らない方とか、そして、竹原市長のやろうとしていることが分からない方のいう言葉です。今年の5月に、大河原さんが、警察の裏金を私より先に、テレビで告発をして、その結果、デッチアゲで逮捕されて懲戒免職になった、という事件が6年前にありました。群馬県の方はこのことを誰も関心示さない。群馬県警は愛媛県警より多いですから、大体年間5億円くらいの裏金を、所長以上の管理職は懐に入れていました。今、大体私の計算では半分になっています。そういう実態を告発した大河原さんを群馬県警は全力で彼を抹殺しようとした。成功しました。その後、私が現職で顔を出して告発しました。その生き様を竹原氏は私の本を見て、会いたいということを、群馬の市会議員を通じて言ってきたのが今年の5月です。私はヤクザだろうと、右翼だろうと、調べていましたから、どんな側の人間だと報道されても、私もいいよと、その時は大河原さんも立ち会いをしてくれました。そして初めて会った桐生の喫茶店で、竹原市長は、今はネクタイを格好よくしていますが、当時はネクタイをこういうふうに曲げてタイピンを付けている。で私はそれを見て、私はネクタイはバーバリーで、彼は無印ですよね?まあ多分1個せいぜい3千円くらい?【竹原市長:100円!】ああ、100円。そのくらいのネクタイだったんですね。その時、いったんです。そこに大河原さんもいたんですが。あった瞬間なんです。私はその時言ったんです。あなたは市長だろう、人前に出るのが仕事だろう、そのネクタイはないだろう、と。すると、なんと喫茶店でぱっとネクタイをはずしまして、私の前で掛け直したんです。これでいいですか、と。現在、こんなことが、現職市長が今日本に880少しいますが、(他に)誰もいませんよ。みんなね、黒塗り車で家に迎えに来てもらって、最低でも70、80万の給料をもらって、議会と仲良くして、職員の言いなりメクラ判を押して、そして年俸100万もらって、そしてまた次の選挙に備える。そういう市長だけでしょう。そういう市長が私が行ってネクタイ変えますか?彼は変えました。それから4時間話しましてね。私は42年警察で飯を食ってきました。だから、ある程度人を見る目があります。女性を見る目はないんです。ところが、彼は本物でしたよ。たった4時間でしたけど。本物ですよ。それは自分の骨を切って、肉を切って、血を流して、一番生活の貧しい方。言い方がちょっと私も悪いんですけど、生活の苦しいかたを助けよう。そのためには職員のボーナスをカットする、自分の給料を半分にする、議員の報酬も日額1万円ずつ。自ら骨を切っているわけです。そして、先決でしか、彼は選挙公約を実現できない。ということに行き着いて専決した。専決したことに対して法的な処罰はありません、あるのは政治的責任だけです。彼はどんな責任もとるという覚悟で専決をしました。唯一つだけ失敗したのは、議会で不承認になっても専決が優先するということを竹原市長は知りませんでした。だから、ああいうことになった。で、私と会って、本物だと分かったから。しかし私は四国松山の元警官。大河原さんの復職を誰よりもそうあるべきだということを理解している男です。ですから何も竹原市長に対して、エールこそ送れる可能性はあるにしても、心配して7月を迎えました。7月3日に突然携帯が鳴りました。で、市長が「仙波さん、阿久根に来てくれませんか?」。私は当然、阿久根で決めたことで電話があったと思ってました。ですから「なあに」と。「副市長で来てくれませんか」と。たった1回会っただけですよ。それでそんな話がありましたから、待てよ、そんな話はないよ、ということで、また、大河原さんの裁判があったりして、群馬に行くことが直前ちょうどありましたから、じゃあ、群馬で会おうということで、竹原市長は自分でチケットを買って、群馬で、そして3日3晩。その時に大桃さんも証人ですね。その時同席してくれました。大河原さんも。それで3日3晩話して出した結論は、この竹原市長は、このままでは絶対につぶされる。「国家権力」ということを確信しました。大河原の二の舞です。ですから私は行くことに決めました。


7.名実ともに無給(タダ働き)のボランティア副市長

▲仙波副市長:そのかわり条件として「給料は要らない、無給で」。ところが法的な問題があってできない。「じゃあカットしてもらって、残りは供託しよう」ということで、現在も無給です、私は。ちょっと失敗して、専決で10万円くらいまで下げていただいたら、私は年金をもらっていまして、満額もらっていましたから、警察というのは60歳で満額ですから、もらっていまして。で、10万円ぐらいまで下げてもらえば、年金もらえましたが、カットしても、皆さん、借金100億円あるようなちっちゃな町の市の副市長の給料、本棒63万円ですよ。市長が80万円から半分引く。私も半分近くにしてもらったけど、残りが30数万残る。それを供託する。形の上では私の懐に入った形。ですから、年金が全額カットになって、8月からは年金もカット、給料も出ないし、私は完全に無給で8月から、阿久根で4万円のアパートに住んでいる。だからそれもマスコミが余り報道しない。竹原市長と私のいうのは殆ど報道しない。どうせ高いポジションと高い給料がほしくて仙波が行ったんだろう。警察ではそういう名声がなかったから。どうせそういう名声と高い金と権力が欲しくて行ったんだろうという方が99%いました。まあ群馬でも大河原さんを支援する方でも、私が阿久根に行くことで、賛成してくれたのは大河原さんだけでしたね。あとは全部反対です。とくに労働組合の関係の方々は私のことを鬼子のように非難していました。でも、私は女房が亡くなって10年ですし、5年前に警察の裏カネを告発して5年経ちますし。告発することによって、年間400億円あった警察の裏金が、予算が減って今では200億円になりました。アメリカのキーダム法と言う訴訟の法律では、国の税金が告発によって損害が免れた額の3分の1は告発者のものです。私はそうなると、(告発で)200億円(が節約)しましたから、60億円が私の懐に入って、そういうことの実績を残しましたから、誰一人裏金で懲役になったものは居ません。約25万人の警官、約6千人の管理職、誰も責任を取らない。ですから、大河原さんの復職は、私の自分の今の人生の最大の目的です。ですが、全国を講演をするだけでは大河原さんの事件を全国に広げることはできない。阿久根に行って、竹原市長が国家権力から、潰されることを、私ができればそれを阻止することによって、大河原さんのことも発信できる。そういう私の心は大河原さんしか分からなかった。

8.元警察官の想像を超えた市役所内部の酷さ

▲仙波副市長:ところが阿久根に行って、大きな失敗は、市役所の中がこれほど酷いとは、私は初めて知りました。230人職員がいます。今2万人ですから、だいたい1%が職員ですね。阿久根は高速道路も無い。鉄道も、列車も特急列車も通らない。新幹線も通らない。陸の孤島です。鹿児島のほうへ出て行くのに、高速道路に乗るまでに1時間かかります。下道を走ります。そういう市で、税収入は18億。人件費が23億。それだけで5億円の赤字です。で、補助金やら交付金をもらって100億円近くの市の活動をしています。そういう中で230人の職員が、市長が公募で選んだ課長以外は。230分の僅か3名だけですよ、信用できる人。その3名と、市長は2年間立った一人で、今までのことをやってきました。実態を知らないメディアや、ジャーナリストが私のことを、また市長のことを、悪く言います。江川詔子などはその最たるものです。私は、2回目、竹原市長と会うので、群馬で会う前、東京で、喫茶ルームで、1時間半くらい大喧嘩しました。仙波さんが行くのはダメみたいな。竹原さんは法律を守らない。私はあなたを取材をして本も出しているのに、絶版にしたい」という、そこまで言い切りました。「では、あなたは竹原市長を知っているのか?」「いや、会ったことが無い」「じゃあ、今から会うから紹介するよ」「会いたくない」「じゃあ、あなたは張本と、日曜日の番組でトラブルになって2ヶ月くらい降板されている。おかしいだろう?そのものを知ってから判断しろよ」と。で、私は言ってはいけないことを言いました。そんなこというから、まあ、いわゆる、彼女のバツイチですからね。そのことを察して、嫌われちゃった。そんなことで大喧嘩しましたけれど、彼女は素晴らしいんですね。感覚的には。大河原さんの裁判で電話をしたら直ぐ来てくれましてね。この事件は検察が、今こう、人気、と言いますか、悪名高い検察が、警察の言葉だけで捜査をして、彼を逮捕している。何の客観的証拠も無い。江川さんは、たった1回の口頭弁論で元検事の証言を聞いて、分かりました、と。それだけできる方ですら、竹原市長のことは報道どおり信じている。ですから3ヶ月たって、今から1ヶ月半前に電話もらったんですが、私が心配しているのが分からんですか、と。誰が心配してくれといったんですか、と。それっきり、これから縁もないと思います。ただ、今回、検察の不祥事で検察のあり方の協議会が開かれてメンバーになっておりまして。ですから15人のメンバーの中で江川さんだけが、今の検察の実態を知っています。そういう意味では期待をしています。だけど、私を入れない会議など、そんなもの絵に描いた餅であります。元最高裁判所の判事であるとか、裁判官であるとか、酷いのになると検事総長とかですね。警察庁長官、佐藤といいましたが、全員裏金にどっぷり浸かった人です。そういう者が検察の在り方?何を言っているのかと。私を入れないような警察の刷新会議とか、検察の刷新会議などは無意味です。ですが、私は、現在、阿久根に居りまして、7時半から夜の11時まで休み無しです。昼間トイレ、小さいトイレに行く時間もありません。昼ご飯を食べたのも回数は数回くらいです。それくらい塞がってますし、メディアの対応を含めてそれは一人でやっています。メディアの対応、それは一人でやっています。で、無給なんです。人に後ろ指、指されたくないんです。私のことを言うなら、お前がやってみろ、と言いたいんです。勿論、土・日休み無し。だから今回の群馬に二人で来てますけど、本当に3ヶ月ぶりの息抜きです。ですから今日お集まりの方が、非常にまあ少ないですし、発信してもなかなか変わりませんけど、彼(竹原市長)のマインドは見事ですよ。

9.弱者への想いを実現するには専決手段しかない阿久根市政の現状

▲仙波副市長:彼がもし、一口には、これなんでかっこよくいいことでなく、一番生活の苦しいかたを、少しでも幸せにしようと。この気持ちが彼の原点なんです。もし、その気持ちがなくなったら、私は阿久根にいる必要はない。ただ、そのためには専決という手段しかない。そして、さっき市長が言いました公平委員会とか、県で言うと人事委員会ですね。選挙管理委員会とか、そういう委員会は、議会の同意を得て委員を任命します。市長が出した人事案件は全件否定です。ですから、全て職員労組出身者が占めています。市長がした降格処分、所員が・・・職員が公平委員会に訴える。100%市長が悪くなります。大河原さんのこと。大河原さんはまともな方です。正義の方です。その人に対してデッチアゲで逮捕したことで、(群馬県の)人事委員会に訴えたら、彼が負けるんです。当然ですよね。人事委員長はヤメ検ですから。ところが、2万4千人の阿久根市役所では、職員の、労組出身の職員が公平委員になっているんです。そんなもの、決定が、どういう決定か分からないんです。ところが、その決定に従わなければ、皆さん、地方公務員法で彼は1年間懲役ですよ。数少ない地方公務員法の罰則のあるペナルティなんです。まもなく彼は逮捕されますよ、鹿児島地方検察庁に・・・。それが現実です。私はそういう仕事をしていましたから、どういう公文書が来たら、責任対応だと、ガサが来るのか分かります。既に3回公文書が検察庁から来ています。私はそれを1件1件つぶして今回っています。一応、昨日の段階で全件クリアをしました。クリアをしても今までの数ヶ月や1年数ヶ月の事実というのは消えません。僅か1年以下の懲役というのは、汚い言葉ですが、元警官であるションベン刑と言います。ションベン刑の事件を、三席の検事が扱うなんて、考えられない。そんなものも知っているんです。司法試験に上っていない検事が、取り扱いする事件を、なんと三席の刑事が取り扱っていますよ。私は電話しました。「国策か?」と。向こうはうろたえていましてね。「いや、たまたまです」と、「たまたまリコールの推進の時期なのか?」と、いうことで言いまして、向こうも言いました。「仙波さんの経歴は存じ上げています。しかしこの事件のことについては検察庁が捜査をします」と。「ま、それはそうだろう。大阪の二の舞をするんかい?」と僕は言いました。大阪の大坪という特捜部長、そして、佐賀という副部長、本人の前田検事。三人とも懲戒免職ね。ところが大坪さんは非常に大きな爆弾を持っています。検察法がひっくり返るくらいの彼は資料を持っています。私の推測では裏金の資料です。私は愛媛県警ですから、大坪元部長が広島地検にいた時に、担当した部下が、ある検事からそういうことを聞きました。「彼は隠蔽工作の達人である」と。それは既に何年も前から積み重ねてきました。で、今回、そのたまたま聞いた大坪という検事が、大阪特捜の部長で、今回のメインだということを報道で聞いて、なにかこう因縁というのを知りました。ですから、警察のやり方も知っているし検察のやり方も勿論知っています。ですから、竹原市長が今回身柄を取られるという可能性も残っていますけれど、私の経験則では、なんとかクリアできるだろうと、なんとか任意ではありますけれども、任意捜査はありますけれども。ところが阿久根で竹原市長は、なんと言って市民の皆さんから言われているか、当然誰にも分からないでしょう。生活の苦しいかたからは「神様」と言われています。そして、既得権益を守ろうとする議員だとか、会社の社長級は、彼を「全く敵」と言っています。

10.竹原市長のリコールの住民投票を取り仕切る選挙管理委員は自治労メンバーの市職員

▲仙波副市長:私が行ったことによって、今、大桃さんから「仙波効果」と言われましたが、そんなものはたいしたことではないんです。彼(竹原市長)のやってきた実績に対して、地元の市民の方は、心からですよ。尊敬をしてですね、支持をしている。ですから住民投票が12月5日にあります。住民投票は1万を超えている。選挙人名簿にあるのが今1万8千・・・2万ちょっとありますから1万で過半数。投票率が85%くらいですから、大体1万8千から1万7千くらいの投票数が見込まれます。ですから当然、過半数1万で軽く落ちるだろうと思われています。私の見た範囲で、この1万人の署名のうち3千人は無効です。ところが選挙管理委員会は、今言いましたように、全員です。職員労組出身者もしくは関係者ですから。それを調べる選挙管理委員会の委員、委員じゃなくて職員、市役所の職員ですね。彼らも全ては自治労の労働組合員です。そういうものが一緒になって不正をしている。ですから、それでも7000くらいの署名が集まりますから、6700で有効ですから、署名が集まったということは私はそんなに否定をしていない。だから動かないんです。問題は、住民投票で8500の、市長を支持する方がいるか、という、その方が投票に行くか行かないかが勝負です。8000人の反竹原の票は全員行きます。

11.リコール賛成派に加担するマスメディア

▲仙波副市長:ですから、「竹原市長を支持するかたは、私たちは信用しているから、指示しているから行かなくてもいいんだよね」ということを、メディアがウソを言うんです。メディアは「反対者だけが行けばいい」ということを言っています。ということは投票総数の過半数はやはり反対派、いわゆるリコール賛成派で占められる可能性が高い。それがマスコミが言うんですよ、阿久根では。ですからそういうふうな状況が今の阿久根であります。そして阿久根の法律というのは勝手に彼らがやっています。6年間。皆さんご存知ですよね。住所を転出したときは、3ヶ月前に住所を提出すれば選挙権がありますよね。転出届。阿久根では半年ですよ。阿久根方式というんですけど。そんなウソが堂々と通るんですよ、阿久根では。私が居なければ、この公文書の訂正はなかったです。私を相手に、そんなウソの公文書を出すんですよ。選挙管理委員会の名前で職員が。だから呼びつけて「調査しろ」と言ったら、「いや、こういう規定があるんです」と言った。「間違っていたらどうする?」と言ったら1週間かけて弁明の材料をズラーッと洗い出して、そして訂正した。3ヶ月にした。だから、週一回の朝会で、月曜日なら8時からやりますが、今週の月曜日、市長と私がやりました。その席上で18人の課長を前に言いました。選挙管理委員会の係長ですが、「こういう不正がある。これは故意もしくは重大な過失であって、懲罰委員会でこの人たちが書いたことについて、最高懲戒免職を含む懲戒処分をする」ということを係長に伝えました。市長が選んだ3人の公募の課長以外、全員が下を向きました。で、懲戒免職というふうに断定をせずに言った。最高は懲戒免職と。そういうことで、その職員は当然懲戒処分です。捜査のプロの私を騙そうとするんですね。

12.投票用紙の増し刷りや不在者投票箱の鍵の管理も自治労メンバーの市職員

▲仙波副市長:もう、とにもかくにも、こんなんですね。で私がその職員をなぜ処分するのかと言うと、彼は投票箱さえも管理するんですから。投票用紙でさえも不正が高いんです。彼が鍵を持っているんですから。不在者投票は市役所でやります。それを彼が鍵を持っているんです。入場券ならいざしらず、投票用紙を彼らが余分に刷っていることも、当然そういう情報が入ってきます。竹原信一市長のリコール賛成と書いてあると彼は失職しますが、「反対」と書いてあれば彼は取り替えることも可能なんです。東南アジアのフィリピン以下ですよ。その中でたった一人ですよ。そんなこんなで、3ヶ月経ちましたけども、本当に行政の中の異常事が彼は許せないということで、本当に素晴らしい改革をやっています。当然、総務大臣の片山さんにも、ちょっと行き過ぎた発言があったので、私はコメントしました。今年1月15日に鹿児島で、(片山氏が)慶応の教授の時に、鹿児島に来て、議員の中の研修で、「地方自治の問題については地方によって百人百様だと。どれが正しいかは地方自治については分からない。最後は最高裁判所の判断に従うべきだ」と言った男が、「損害金の負担に、阿久根の市長のやった専決は違法だ」と言った。それを言っておきながら最後に「これは総務大臣としてではなく、地方自治に関心のある者の発言だ」とトーンダウンしましたが、私はそのことで、「あまりにも軽率過ぎる。職権乱用である。越権行為である。自分のことばを忘れては困る」と発言すると、そのことが、読売新聞に載りました。そのため彼は阿久根の問題を何一つしゃべらない。そして今の総務省の見解は、「竹原市長のした専決が違法であるか適法があるかは、今はわからない」という対応になっている。私は言っている。「違法の疑いがある」と言うならいいけども、「違法だ」と断定するなら裁判をして白黒をつければよい。判決が確定したら従えばよい。そんなこんなしてもですね。

13.高給の歳費や給与に連綿とする議員や自治労メンバーの職員が、日本の地方自治をダメにする

▲仙波副市長:この地方自治が根本的にいい社会をつくることが現実的に竹原市長以外では不可能なんです。彼は市長の座に連綿と全くしていません。1日も早く市長を辞めたいんです。私も彼が辞めてくれると、辞められますから、年金もくれますし愛媛に帰れますし、私もそのほうが本当は嬉しいんです。だけども、これほどの人間が自分の全てをかけて、阿久根の生活に苦しんでいる人を助けようとしている。そういうわけです。12月5日に住民投票で負ける可能性は高い。だけど100%負けるわけではありません。ですから最悪でも1月の本選挙では彼は再選されますけども、できれば12月5日の住民投票でクリアしたい。それで、議会リコールも今始まっています。今月25日に議会リコールの署名数を集めて提示します。これも成立しています。そうなるとメディアが、議員に対して、議会に対して、8000以上の署名が集まったら、6700で有効ですから、「8000以上の署名が集まったら自由解散したほうがいいですよ」と、メディア自身が煽っています。ですからそういう点も含めて、いろいろなものが阿久根ではまだまだ起こります。だけど、竹原市長が、市長を続けて、議会もいい方向になり、そして、市役所の春の市会議員の選挙も竹原派が押さえて、阿久根が、公益の独裁と言いますか、正義の独裁ができた時には、私はもう家に帰って、大河原さんの身分回復に全力で残った時間を過ごしたいと、送りたいとこう思います。ですから私の職員労組に対する発言が誤解を招いて、いろいろ大きくなっていますが、しかし誤解するものは誤解すればいいんです。

14.竹原市長と仙波副市長を支える阿久根市民の温かいエピソード

▲仙波副市長:ですが、そういう気持ちで阿久根に行っておりますので、皆さんにカンパしていただいて、4万円くらい家賃を、と言いません。私は本を書いていますから、月に1本月刊誌も書いているので何とかそのお金でアパート代くらいは出ます。ですからまあ何とか。それと、私は夏に行きましたから、布団の夏布団とですね、そして夏のスーツ5着と、茶碗一つそして靴3足、車に乗る分しか持っていません。でも秋が来て、冬がもすぐ来ますが、どうしようかなと思いましたら、何と市長の支持者から、私はバーバリーのネクタイに拘っていますが、布団がですよ、バーバリーなんですよ(拍手)。それも羽毛ですよ(爆笑)。それが、来るんですから。洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、掃除機。阿久根市長の支持者から、全部用意してあります。見事な市民の皆さんですね。一時期は玄関にいつもご飯がズラーッとならんでいるんですよ。しかし、これ警察に毒もられてるかもしれないというので、残念ながら辞退することにして、それから紙を張って、「不在の時はよこさないでいただけますか」ということで、何回か繰り返した今は、そのようなのはありません。ですから、帰る時間になりますとね。今日は私の家に食事に来ていただきたい。今日はここですと。餓死しない程度に市長の支援者からそういう食料のカンパをいただいています。ですから、そういう意味で、私の人生で、これほど忙しく7時半から23時までやっていますが、私の印鑑一つで年間100億の予算が動くんですよ。私の印鑑一つです。それで、私のところで3億、4億のカネを止めています。余りにも酷い使われ方をしますから。で、そういう状態で居てもストレス全くありません。肩こりも全くありません。非常に楽しくやっています。どうかそういうことでご理解をしていただきたいと思います。(拍手)

●主催者:仙波さんは、たいしたことは無いと言うことですが、竹原さんがやったことは私共充分分かったすごいことですが、仙波さんが言ったことによって竹原さんがまるくなったという話もいただいております。第一に、竹原さんの妹さんが非常に喜んでおりましたので報告しておきます。

◆竹原市長:えっ、ほんと。

●主催者:仙波効果は絶大です。

◆竹原市長:そうかなあ。

●主催者:賛成派の議員に聞きましたところ、投票箱の管理が大変だと。見張っていなければダメだと。それと不在者投票箱の鍵も、それが不正のある可能性もあると。投票以前の問題があるということを聞いて、私もびっくりして帰ってきたんですけど。ここで5分間の休憩を入れたいと思います・・・。


■竹原市長の話を聞いていた当会の事務局長である私は、15年前の安中市土地開発公社51億円巨額詐欺横領事件の発覚で、当時の安中市長が市長の座を投げ出し、急遽告示された出直し市長選で、市民団体代表として初めて出馬した当時を回想していました。

 おそらく、タゴ51億円事件を起こした安中市役所の実態も阿久根市と同じか、それ以上酷い状況だったと思います。数多くの市の幹部、OB、職員がタゴを巡るカネの恩恵に関係していました。しかし、その関係を市民にバラされることは決して避けなければなりません。だから、出直し市長選挙期間中の市役所は連日、夜遅くまで煌々と明かりが灯っていました。

 市民団体代表の候補がもし市長に当選して市役所に入り込んできて、事件の真相を調査されたら、それまで営々と築き上げてきた役人としての利権が全部パーになります。同じことが、タゴにたかっていた議員らにも言えます。だから、彼らは必死で自分らの利権を擁護して、巨額詐欺横領事件の真相を隠蔽するために、市民団体候補の当選阻止を図ったのでした。

■私は、竹原市長の話を聞いて、まさに、もし15年前の出直し市長選挙で当選していたならば、同じようなことを考えて実行したに違いない、と思い、休憩時間にそのように竹原市長に伝えました。そして、私は「このような阿久根市政の報告会を、史上最大級の巨額詐欺横領事件を15年前に起こした自治体である安中市で開催していただいたことに対して、最大の謝辞を贈りたい」と竹原市長らと主催者に伝えました。

 投票箱の管理や投票用紙の増し刷り疑惑は、日本の自治体では常にどこでも付きまとっています。内乱や腐敗のために公平、公正、公明な民主主義政権が育たない途上国に対して、公正な選挙管理の実現のために国連が主導して、先進国から選挙監視団が派遣されることがありますが、実は「灯台もと暗し」だったのです。しかし、肝心の我が国の地方自治体が、途上国以下の地方自治の実態にあることを、マスコミは誰も市民に知らせようとしません。それどころか、問題の根源を隠そうとする自治体側に加担するのです。

■阿久根市で起きている出来事は、新しい地方自治の実現に向けた萌芽だと、私は考えています。ここまで住民の力を得て実現できたのは、権力に連綿とせず、常に弱者の立場を考えて行動できる竹原市長の資質と、それを十分に理解している阿久根市住民の先見性と真理探求性の賜物だと思います。竹原市長にはなにより、信頼のおける参謀が付いていることが強みです。

 日本の警察官は間違いなく世界で最も優秀なレベルにありますが、その優秀性を歪めてきたのは、社会常識に欠けたキャリヤ組がこれまでに築き上げてきた裏金捻出手口に象徴される、異常な組織忠誠心の醸成であり、自分の都合のよい組織にしようと努力した結果招いた「組織の変質」だったのでした。

 だから、本体の警察組織では、鼻つまみ者扱いされた元警察官が、自治体の副市長という権限を与えられたとき、その能力は遺憾なく開花し発揮されることが証明されたということができます。その能力に着目した竹原市長の審美眼は、やはり驚嘆に値すると思います。

■その竹原、仙波コンビに、明日から群馬県警の元警察官が加わります。検察やマスコミにどんなに妨害されようと、公正な住民投票の実現を果たすためには、これほど強力な布陣は無いと思われます。地元群馬県の誇る最も警察官らしい警察官である大河原氏が阿久根市の改革に一役買う機会を与えられたことは、彼を支援している地元のオンブズマン組織の代表として、また、15年前に初めて首長選に挑戦し、その後も引き続き3回挑戦したことのある者として、名誉であり、誇りに思う次第です。大河原氏には、今度は行政の中で、その卓越した正義感と分析力と行動力で、活躍されることを祈念いたします。

【ひらく会事務局】

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大河原宗平さんが阿久根市の課長に就任・・・住民投票の不正防止に期待される元警察官としての手腕

2010-11-20 23:14:00 | 警察裏金問題
■昨日の南日本新聞のインターネット速報版に、群馬県警の裏金を告発した元警察官の大河原宗平氏が阿久根市の総務課長に11月22日付で就任すると報じられました。
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阿久根市総務課長に大河原氏 裏金告発の元警警察官
 阿久根市は11月19日、総務課長兼選挙管理委員会事務局長に、元群馬県警警部補で警察裏金を告発した大河原宗平氏(57)=前橋市=を充てることを明らかにした。22日付。
 専決処分で副市長に選任された仙波敏郎氏によると、現在の総務課長兼選挙管理委員会事務局長は10月末、退職を申し出ていた。
 大河原氏は群馬県警に在職中、裏金づくりに反発。公務執行妨害容疑で逮捕され、懲戒免職処分となった。裏金を告発、「でっち上げで逮捕された」などとして処分取り消しを求めて前橋地裁に提訴。裁判は結審し、来年3月18日に判決がある。
 仙波氏は愛媛県警巡査部長時代に警察裏金を告発。5年ほど前に大河原氏と知り合い、ともに全国で講演してきた。
 仙波氏は「市長解職の住民投票が迫っており、早急に後任を探した。市役所の課長クラスが一様に断ったため、民間から選んだ」と話している。
 竹原信一市長の就任後、課長職の民間からの登用は4人目。
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一方、地元の群馬県でも、各紙がこのニュースを報じました。朝日新聞は群馬版の冒頭に3段にわたり記事を掲載しました。

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県警の裏金を告発した元警部補 阿久根市の課長に 住民投票指揮へ
 専決処分を繰り返した竹原信一市長の解職を問う住民投票が告示された鹿児島県阿久根市で、群馬県警の裏金問題を告発した元県警警部補の大河原宗平さん(57)が総務課長として22日にも就任する方針であることがわかった。
 大河原さんは「在職時に備品購入や出張旅費での水増し請求や、架空の捜査協力費支払い請求書の作成を指示された」などと主張し、県警の裏金疑惑を告発していた。
 2004年に道路運送車両法違反容疑で逮捕され懲戒免職処分を受けたのは「裏金作りを拒否したことが背景にある」として、国や県を相手取り、処分取り消しなどを求め前橋地裁に訴えた。来年3月に判決が予定されている。
 竹原市長の専決処分によって副市長に選任された仙波敏郎さん(61)は、愛媛県警の巡査部長だった当時に警察の裏金問題を告発した関係で、大河原さんと交流があった。
 仙波さんによると、現在の総務課長が10月末での退職を願い出たため後任を探していた。就任について大河原さんは「私からPRするつもりはありませんが、否定はしません」と朝日新聞の取材に対し話した。
 大河原さんが起こした訴訟の担当弁護団は19日、記者団に「7月頃に竹原市長が(大河原さんの)裁判を傍聴に訪れ、2人の付き合いが始まった」と明かした。
 同市では、竹原市長が議会を開かずに専決処分を繰り返している。職員の期末手当を減額する条例改正を市議会に提案せず通すなどして反発が強まっている。市総務課長は市選管事務局長を兼ね、12月(5日)の住民投票の事務を大河原さんが指揮するものとみられる。
(11月20日土曜日朝日新聞群馬版)
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 地元の上毛新聞は中央に囲い記事で掲載しました。ご丁寧にも、大河原氏の弁護団のコメントなるものを付けています。

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鹿児島阿久根市総務課長 裏金証言の元本県警官就任へ 選管事務局長も兼任
 群馬県警の裏金作りを証言した元警部補、大河原宗平氏(57)が、市長の解職請求(リコール)を問う住民投票が告示された鹿児島県阿久根市の総務課長に就任することが11月19日、分かった。市選挙管理委員会事務局長も兼任。副市長に選任された仙波敏郎氏が提案し、竹原信一市長も同意したという。
 大河原氏は、群馬県警の裏金づくりを証言して講演活動をしている。2004年に公務執行妨害容疑で逮捕され懲戒免職となったが、「でっちあげだ」として免職を求めて訴訟を起こした。同様に警察の裏金づくりを内部告発した元愛媛県巡査部長の仙波氏とは以前から交流があったという。大河原氏は22日に辞令交付を受ける予定。
 上毛新聞社の取材に、大河原氏は「現時点で詳しいことは話せないが、否定はしない」と述べた。
 訴訟の判決を3月に控える中、大河原氏の代理人弁護士は「以前から打診があったようだが、止めていた。16日に会った時に本人が『行かない。現役の警察官に戻りたい』と話していたので驚いている。弁護団としては残念だ」と話した。訴訟については「取り下げない」としている。
(11月20日土曜日上毛新聞3面)
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 読売新聞は全国版で、小さく報じました。

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阿久根市総務課長に元警部補
 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が22日付で、元群馬県警警部補、大河原宗平氏(57)を市総務課長として採用することがわかった。市選挙管理委員会事務局長も兼務し、市長解職の賛否を問う住民投票(12月5日投開票)事務を指揮することになる。
 大河原氏は、同県警の裏金問題を告発した人物。
(11月20日土曜日読売新聞社会面37ページ)
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■ところで、2週間前の11月7日(日)午後1時半から、当会もメンバーとなっている「行政の仕組みを勉強する会」と「大河原宗平氏を支援する会」が主催した大河原裁判支援集会には、およそ80名が安中市文化センター3階大会議室に集まり、熱心に討議が行われました。

開会の辞を述べる主催者。

 集会では、安中市にゆかりの深い新島襄が創設した同志社大学の浅野教授と、元読売新聞記者で現在は「人権と報道・連絡会」世話人」でジャーナリストの山口氏が講演を行ったので、その際に配布されたレジメを次に紹介します。

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【「今も続く犯罪報道の犯罪」】
同志社大学大学院社会学研究科教授・浅野健一- E-mai1:asanokenichi@nifty.com
浅野ゼミHP http://www1. doshisha=ac.jp/˜kasano/
人権と報道・連絡会 www/jca.apc.org/˜jimporen/


 日本では市民が犯罪をおかしたと疑われて警察に逮捕されると、その人の姓名、住所、年齢などの個人情報が一斉に報道される。まだ裁判も始まらないうちに報道された市民と家族は社会的に抹殺される。欧州や韓国では被疑者が一般市民の場合に匿名になる。裁判員制度が始まった日本でも、裁判前に被疑者を犯人扱いする犯罪報道は変革しなければならない。諸外国にあるメディア責任制度(報道界の倫理綱領と報道評議会)を紹介する。
 大河原水平さんの国賠裁判の意義。同大で仙波敏郎さんらを招いたシンポによく来てくれた大河原さん。現役の警察官として群馬県警の裏金作りに抗議したため、警察ムラにおいて「公務執行妨害罪」をデッチ上げられ、不当にも懲戒免職にされた。私もマスコミムラで犯罪報道の犯罪を告発したため、報復人事を受けた。同志の山口正紀さんも読売新聞で弾圧された。
 群馬県警のみならず日本中の警察が組織的に日々行っている裏金作り。大河原さんのでっち上げ逮捕でも、警察はマスコミを使った。その結果、中曽根元首相らの警護をつとめたこともある大河原さんが“悪徳警察官”にフレームアップされた。事件から6年。全県民は真実を知るべきだ。
 「逮捕時には警察の広報機関。逆転無罪判決がでるや弁護団長に早変わり」のマスコミはインチキ。警察が今も組織犯罪である裏金を日々つくれるのは、「キシャクラブ」メディアが捜査当局の監視を怠って、不正を黙認しているからだ。

Ⅰ はじめに
(1)マスコミでの経歴
(2)現在の仕事
Ⅱ 今の時代とマスメディア

■問題だらけの日本の犯罪報道
 日本のマスメディアには多くの問題があるが、刑事事件にかかわる報道に最大の問題。捜査段階で捜査官の視線で犯人探しをしてしまう。09年5月21日にスタートした。日本の有権者は一生のうちに平均して、1・2回は裁判員を務めることになる。
 裁判員制度が始まれば、公判前に被疑者を犯人扱いしている「犯罪報道の犯罪」は法の適正手続の保障の面から再び問題化するのは明白。
 裁判員法の成立過程で、政府・政権党は04年に裁判員法の原案に「偏見報道の禁止」条項を用意していたが、報道界が自主規制で対応すると約束したことで削除した。
 裁判員の守秘義務、裁判員への取材の禁止など、裁判の透明性、公開性から見ても重大な問題かおる。マスメディア界に、業界全体の自律的なメディア責任制度の設置する以外に法規制を防ぐ手段はないのは、人権と報道の国際的な取り組みからも明らかである。

■裁判員制度と報道
 共同通信記者として22年間、報道現場にいた私は、現在も法律にある陪審制の復活を支持する。陪審員制度が望ましい。任意捜査段階からの可視化が全く実現せず、代用監獄の存続、「別件」逮捕の常態化、逮捕状・勾留状などの令状のチェックなしの発行、無罪判決に対して国(検察)の控訴が可能(double jeopardy の禁止に違反)、弁護人が取り調べに同席する権利がないなど、世界でも最悪の人権状況がある。このような戦前と同じ体質の刑事手続きが存続する中で、公判前手続きからは排除される裁判員が5、6日の連続審理だけに参加する制度は問題。冤罪被害者のほとんどが「裁判員制度で、かえって冤罪が増える。国民が冤罪づくりの共犯者にされる」「冤罪に加担したとして自死する市民が出るのでは」と言っている。
 また、裁判員制度導入の際に想定していなかった被害者の裁判参加が08年12月に始まった。光市事件報道の情緒的な報道で、絶対悪VS絶対正義の単純な構図。死刑は当然という世論。死刑は世界の130数カ国で廃止されている。
 被疑者・被告人が公正(フェア)な裁判を受ける権利を保障し、犯罪の被害者をサポートする報道の仕組みが望まれるのに、メディア幹部には逮捕=犯人の勧善懲悪的な報道にメスを入れるつもりはない。裁判員法で裁判員への接触の禁止が規定されている。また、裁判員・元裁判員には守秘義務が科せられる。「評議の秘密、その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金の処する」(裁判員法108条)以下の述べるように、裁判開始前の刑事事件報道の在り方を問題にするが、裁判員制度・裁判員法そのものを懐疑的姿勢で監視する必要があることを強調しておきたい。
 報道界には、自主規制も含めあらゆる「規制」に反対という意見が多い。
 刑事事件、事故を取材・報道し、利益を得ているのは企業メディアである。企業メディアとジャーナリスト個々人に第一の責任があるのは当熊である。
 私が共同通信の現場記者として、犯罪報道のコペルニクス的転換を主張したのは、このままの官憲依存の実名報道主義(被害者は死亡した時点で実名・被疑者は逮捕段階で実名)を続けていると、取材・報道被害を受ける市民からメディアが非難され、ジャーナリズム全体が人民の信頼を失うと直感したからであった。捜査段階で警察・検察当局(警察のチェックを行う能力も意思も薄弱)から提供される公式・非公式(リーク)情報に99%依拠し、「被疑者・被告人は無罪が確定するまで有罪」とみなす報
道がほとんど変わっていない。これは03年4月の志布志逮捕報道でも明らかだ。
 「人権と犯罪報道」をどう両立させるかは、本来裁判員制度の有無とは無関係に解決すべき課題であった。ところが、過去20数年、被疑者の呼び捨て廃止など一部に改善は見られたものの、逮捕されたら事件が解決してしまい、被疑者を犯人視して、彼や彼女の全プライバシーが暴かれる構造にメスを入れなかった。メディアが“あだ計ち”の感情を煽り、司法当局が推し進める処罰強化政策に手を貸した。

■このままでは法規制が来る
 私は最後通告する。裁判員制度の開始前に、メディア責任制度を確立しなければ、起訴前の犯罪報道が法律で規制されることは間違いないであろう。同制度は、メディアが自らの責任で、報道の自由と名誉プライバシーを守るディーセンシーの“折り合い”をつけるためにつくる仕組みである。①メディア界で統一した報道倫理綱領の制定②ジャーナリストが倫理綱領を守っているかどうかをモニターする報道評議会・プレスオンブズマンの設置、をセットにした制度である.

■メディア責任制度は報道界のための仕組み
 スウェーデン報道倫理綱領の前文は次のようにうたっている。《報道倫理とは、公式なルール集をどう応用すべきかを定めたものだとみなされてはならない。それは、ジャーナリストが仕事をするときにもつべき責任ある態度のことである。新聞・雑誌、ラジオ、テレビの報道倫理綱領は、このような態度を支援するものである。態度である》
 84年に出版した『犯罪報道の犯罪』(学陽書房、1987年に講談社文庫、04年に『新版 犯罪報道の犯罪』として新風舎文庫=08年1月に倒産)で私はこう述べた。
 「法律の根本原則を守りながら犯罪報道を行うには、スウェーデンなど北欧諸国がすでに実践している権力犯罪を除く犯罪関係者の匿名報道主義が考えられる最善の方法といえる」(文庫版8頁)。「現在マスコミが未成年者と精神障害者の犯罪に適用している『匿名原理』をすべての犯罪報道に拡大するのである。匿名を原則にして,どの場合に顕名にするかを検討すればいい。」
 このように匿名報道主義では「権力の統治過程にかかわる問題以外の一般刑事事件においては、被疑者・被告人・囚人の実名は原則としては報道しない」と考える。マスコミが犯罪を取材、報道する際に必要な、権力批判と市民の人権擁護の二大原則を打ち立てようというのが匿名報道主義である。また、警察がいつ逮捕するか、自供したかどうかなどの情報を得るための不毛な競争に費やされるエネルギーを、権力の不正やでっちあげの監視,報道に振り向けようと提言している。
 犯罪報道を考える場合、三つのベクトルを考えるべき。第一に、犯罪関係者を政治家、大企業役員、政府高官ら公人をA,芸能・スポーツなどの有名人ら準公人をB、一般の市民である私人をCとして分ける。次に、刑事手続きで、参考人聴取、逮捕、起訴、初公判、一審判決、刑確定などの進展を考える。第三に、犯罪容疑が権力犯罪かどうかを考える。Aの人が収賄容疑で逮捕されれば当然、顕名報道。

■「裁く」だけを強調、厳罰化の世論操作
 ジャーナリズムの第一の責務は権力の監視のはず。
 裁判員制度について、その成立過程における経団連の圧力、現代の徴兵制への布石(赤紙・「凶悪犯」処刑=殺人=に国民をかかわらせる)。
 「裁く」(朝日の長期連載のタイトル)を強調し、公正な裁判を受ける権利を保障し、無事の市民を有罪にしない、つまり冤罪の発見こそが重要、職業裁判官が冤罪を見抜けなかった理由を究明することこそが大切なのに、報道機関は裁判所への批判を避けている。
 企業メディアとNHKは裁判員制度の広報・PR役をすすんでやってきた。メディア先行。メディア・ファシズムの時代の時代。
 死刑存置支持の「世論」「世間」はメディアが創ったという側面が大きい。特にテレビの影響が大きい。放送倫理・番組向上機構(BPO)の「放送倫理検証委員会」が「光市事件」裁判を報ずるテレビに猛省をうながした「意見」を参照。私はBPOへの申立人の一人。私たちは、「光市事件」差戻し控訴審についての三百本にもなるテレビ録画を収集して洗い出し、どこが問題なのか、どこに作為があり捏造があるかをチェックする作業に入り、とりあえず同じ思いの申立人7人の連名で、やっとのことで滑り込むようにして07年11月27日、BPOに「申立書」(本文13ページ、添付資料120数ページ)を提出した。「倫理検証委員会」は、毎月一回の審議のほかに小委員会を設置して検討を重ね、裁判の判決が08年4月22日に予定されるなか、4月15日に「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見」(本文21ベージ、註と資料19ページ)を公表した。「意見」は、大筋において問題の重要性をきちんと把握したうえで、テレビジャーナリズムのあるべき姿からみて、「光市事件」に関する番組は、全く画一的で感情的な作り方となっており、一方的に被害者遺族の主張におもねり、特異な犯罪がなぜ起きるのか、それを防ぐためには何か必要かなどの問題を掘り下げることをしていないとし、テレビ制作者側に猛省をうながすものとなっている。あまりにも画一的であることを『巨大なる凡庸』と表現し、番組制作者の側に猛省をうながしている。犯罪・裁判報道のあるべき姿にふれている点も評価できる。放送の傾向は「集団的過剰同調」だと結論づけた。

■裁判員制度の早急の見直しを
 制度が被告人の人権を無視し法廷で孤立させられる構造・検察の圧倒的な優位の見直し。裁判員裁判への取材に関する制限の撤廃。
 裁判員裁判の報道で欠けているのは「被告人の側からの視点jであり、被告人の公正な裁判を受ける権利が侵害されなかったかどうかの検証がほとんどなかった。
 「市民が裁く」という視座で取材報道され、本来の刑事裁判の目的である「無事の市民を有罪にしない」「冤罪の防止」ということが忘却されている。
 無罪を主張した裁判でないにしても、法の適正手続きが遵守されたかどうか、また、裁判員制度と全く別のところで導人された被害者参加制度との併用の問題点も、報道の場で、きちんと検証されなければならない。
 市民参加の一審の認定を控訴審では変更できないという見方があるが、それは三審判の否定になるのではないか。
 第1号裁判の被告人は控訴審で1回の審理だけで結審、控訴を棄却された。日弁連と学会は裁判員裁判を受けた全被告人から聞き取り調査をするべきである。

■メディアと共謀しての裁判員裁判ショー
 最初の3件を振り返る。最高裁、法務省が厳選した「やらせ」裁判。
 東京の弁護士たちは第一号裁判員裁判の国選弁護人に裁判員制度反対派が就かないように気を配ったという。第二東京弁護士会の同制度に「理解のある」弁護士たちがその役割を担った。テレビ、新聞の犯罪報道をチェックして、「第一号」になりそうな事件の被疑者に接見し、強引に弁護土会の委員会派遣にした。被疑者が番号順に派遣される当番弁護士が裁判員制度反対派だと困るからだ。
 事件で被疑者が逮捕されると、警察が二日間身柄をもち、その後検察は大抵21日間身柄勾留できるので、20日から23日後に起訴になる。裁判員制度のスタートが5月21日だから逆算すると4月29日から5月初めの間の重大事件で逮捕された被疑者が裁判員裁判の被告人になる。大型連休期間の事件を狙った。
 最高裁は第一号裁判を東京地裁で行い、モデルケースとすると決めていたという。「死刑事件、否認事件は避ける」ことも決まっていた。覚せい剤事案なら成田空港を抱える千葉など全国で起きているが、裁判員裁判にはなじまないので「第一号」から排除された。
 各社がこぞって導入した「対等報道」はそもそも無理。新聞労連JTCで、村上流宏弁護士は「捜査段階での被疑者の主張をそのままメディアに伝えることはできない。客観的証拠に基づいて弁護するわけで、裁判以外のところで一時情報を流してはいけない」と断言した、西山大吉氏は「記者クラブで情報をとっているだけで、報道するのがおかしい。当局が発表・リークする情報はその省益のためで、記者の仕事は当局が隠していることを暴き、監視すること」と提言した。

■「死刑」と報道
 内閣府が2月6日、死刑制度に間する世論調査の結果を発表した。死刑を容認する回答は85.6%と過去最高に上り、廃止論は5.7%にとどまった。被害者・家族の気持ちがおさまらないとの理由が前回調査より増えており、被害感情を考慮した厳罰論が高まっていることが背景にあるとみられる。マスメディアがこうした世論をつくってきた結果だ。
 人を殺しても処罰されないのは戦争と死刑制度だけ。私の立場は死刑制度の即時廃止。EUなどが死刑を廃止してきたプロセスから学ぶべき。
 「警察の経験から冤罪を防ぐことは不可能」を死刑廃止論の根拠にしている亀井静香議員は説得力がある。
 死刑執行後に“真犯人”が出てきて廃止した英国。元死刑囚が4人も30数年後に生還したのに死刑廃止に踏み切らなかった。足利事件の菅家利和さんは「DNA型鑑定で無罪になった」を強調しているが、DNA型鑑定がなかったら冤罪を解明できないのか。権力は冤罪事件を利用して、時効制度の廃止まで言っている。

■報道・取材している「記者」の実態
 ジャーナリストの数は不明だが、弁護士の数をやや上回る同じ2万数千人か。新聞協会加盟の新聞・通信社の従業員数は54,015(女性は10.4%、記者職では8%前後)。
 新聞社がテレビ、ラジオと同資本。外国では禁止。国有地に建てられた本社。地方でも払い下げが多い。公的機関への天下りも多い。
(1)記者の意識
 国家公務員I種(報道職)のようなエリート意識。記者たちの多くは、社会のエリート中のエリートとして国家を動かしていると自負している。テレビはろくに記者教育もない。じっくり考えるような人間はいない。新開・通信社は「記者クラブ」でだめになる。
(2)異常に高い賃金
 若い記者は睡眠時間3時間前後で、オウムのサティアンのようだ。一ヵ月の残業が300時間を超えることも。過労で自殺者を出した電通を批判できない。
 労働時間は異様に長いが、毎日などを除き、記者の賃金が高い。1年目から税込み年収が700万円を超える。40代後半から2000万円を超える。PC支給、住宅手当。
(3)封建的なメディア労働現場
 日本のマスメデイアの編集部門は最も封建的で他業種に比べ遅れている。
 女性記者はまだ8%(70年は1%だった)を超えた程度、採用時に明らかな就職差別がある。女性の管理職は1%以下。
 新開はオジサン(たちのほとんど家庭にいる)がつくっている。男・「有名大学」卒・非「障害」者。心身障害者雇用促進法を守っているのは特殊法人のNHKぐらい。
 身元調査のため興信所を使うほとんどのメディア。政治家、高級官僚、弁護士、大学教授の二世、三世も多い。配偶者もほとんどが専業主婦で、世間を知らない。
 出版社・テレビ局に人気。就職後、数年で辞めていく記者たち。松本サリン、神戸事件で多数の記者が退社。神戸新聞は1年で8人が社を去った。「犯罪報道を根本的に変えなければ、同じ過ちを繰り返す」と幹部に進言して無視されて退社記者も。深刻な女性記者のセクハラ被害(社内と取材対象者が加害者、夜討ち取材で頻繁に)。「毎日が取材対象者、社内関係者からのセクハラとの闘いだった」(元毎日記者)。カートやキュロットをはかないようにと指示した朝日。例:大阪での共同通信記者への副署長のセクハラ。
 現場記者に精神疾患が急増。ほとんどのメディア企業(西日本新聞は、やっていないと明言)が採用時に興信所などで思想、信条、前科などを調査。「部落解放」8月号にも書いたが、メディア企業が興信所を使っていることは知られていない。それを報じるマスメディアがないからだ。いまは中途入社も増えているので、前より細かな身元調査をしている。警察のファイル、公安ファイルを使っている。そのファイルを所有しているのが興信所(元警察官僚が役員や顧問で入っている)。本人の逮捕歴、宗教(カルトかどうか、オウムとか統一教会、10年ほど前、読売の新人記者が統一教会信者で突然失踪)をチェック。両親が「極端」な人の場合もチェックされる。西日本新聞社は興信所を使っていないと私に言ってきたことがある。毎日もやっていないらしいが、私のいた共同通信も含めて興信所を利用。私は十数年前、東海大学からスカウトされたが、その際、東海大学は興信所を使っていた。
 在日外国人はメディアにかかなか就職できない。大新聞、通信社は80年代後半まで、外国人をほとんど採用してこなかった。共同に80年代に入った記者は「3月31日までに帰化することを条件に内定を得た。NHKは96年が初めて。「日本国籍をとってくれ。中国人の君がワシントンで日本の放送局の特派員をしたらややこしい」と迫ったNHK人事部員。
 メディア企業幹部は元左翼活動家の転向組が多い。大手の新聞社やテレビ局の社長のほとんどが元政治部記者で、長く自民党派閥を担当していた。
 「親の七光り」極右政治家とメディア幹部の共犯による、憲法無視。朝日、毎日の有事法民主党修正案への賛成。記者クラブ制度での権力との癒着が進み、ジャーナリズムは衰退化。
 記者は入社前にジャーナリズム教育を受けない。日本の大学には、ジャーナリズム学科がほとんどない。報道の自由の意味、メディア倫理などジャーナリストに不可欠な学問を勉強したことがない。スウェーデンのベテラン記者は「人権はお金を使って教えないと分からない」「不断の努力を続けないと定着しない」と語っていた。
 新聞はその社会のレベル以上にはなれないと言う向きもあるが、メディアに勤務する人たちの方が、一般市民のレベルより断然低いと私は確信している。22年間、共同通信に勤めた経験から、大手メディアの記者は、社会常識に欠ける人が多い。
 河野義行さんが「犯人視」されていた94年夏、3人の子供さんたちは中・高校生だったが、各校の校長が、「いままで通り普通に接する」と教職員に指示した。学校や地域でのいじめなどは全くなかった。あれだけひどい報道があったのに、河野さん一家にあたたかく接する近所の人もいた。メディアより社会のほうがマシなのだ。

■情報操作にだまされずに真実をつかむことができるのか?
 インターネットの活用。英語でアルジャジーラの放送を読める。英紙でRobert Fisk らのイラク報道を読める。Democracy Now!も。日刊ベリタなどのネット新聞。
 日本のメディアでは世界が見えなくなる。金魚蜂ジャーナリズム。日本が大きく見える仕掛け。客観報道の原則からチェック。署名、ニュース・ソース、反論が載っているかなど。
 メディア企業内部の記者たちが、自らの信条に従いジヤーナリズムの大道を歩むかどうか。それを支えるのは一般市民のメディアヘの積極的参加である。おかしな記事、番組があったらすぐに抗議し、いい記事や番組があれば誉めること。市民が協力して、メデイアを監視しているという緊張感を特たせることが今絶対に必要だと思う。
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■続いて、浅野教授と知り合いでジャーナリストの山口氏の講演がありました。

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【〈裏金告発〉封じ狙った権力犯罪 冤罪に加担した「異常な警官」報道】
山口正紀(ジャーナリスト、「人権と報道・連絡会」世話人)


Ⅰ 足利・有川再審で明らかになった権力と報道の犯罪
1 足利事件と報道
(1)事件の概要と裁判の経過
①1990年5月12日、足利市で4歳女児Mちゃんが不明に。13日、渡良瀬川河川敷で遺体発見。
②1991年12月1日、「読売」「朝日」「毎日」が「幼女殺害容疑者浮かぶ」報道、県警が菅家利和さんを任意同行、2日未明逮捕。
③1993年7月7日、宇都宮地裁が無期懲役判決。
④1996年5月9日、東京高裁が控訴棄却。
⑤2000年7月17日、最高裁が上告棄却、無期懲役確定(11月1日、千葉刑務所収監)。
(2)菅家さんを犯人と断定した逮捕時の報道
①1991年12月1日の「逮捕前打ち」報道。
・「読売」朝刊一面トッブ「幼女殺害容疑者浮かぶ/足利/45歳の元運転手/DNA鑑定で一致」。
・「朝日」朝刊社会面トッブ「重要参考人近く聴取」。
②逮捕を報じた12月2日の各紙朝刊最終版。
・「首絞めた」と自供」(朝日)。
・「連れ出し、30分後犯行」「“幼女の敵”は大胆にもすぐそばに潜んでいた」(読売)。
・「○○ちゃん事件自供」(毎日、原文は実名)。
・「園児送迎のおじさんが…」(産経)。
・「執念の捜査1年半」(東京)。
③DNA鑑定の絶対厘記事。
・「DNA鑑定が決めて」(産経、東京)「NA鑑定切り礼に」(毎日)、「毛髪の遺伝子ほぼ一致」(朝日)、「一筋の毛髪決めて」(読売)と大見出しに。
※【2009年6月4日の釈放翌日の各紙比況】(メディアの反省なし)
・読売「捜査当局や裁判所に、DNA鑑定への過信があったことは問違いあるまい」。
・毎日「当時のDNA鑑定は精度が低いことを承知していながら、重視し、自白を引き出す材料にもされた」「裁判所が疑問を抱き、再鑑定を行っていれば釈放時期は早まったはずだ」。
・朝目「裁判所にも猛省を促したい。DNA型鑑定を過信するあまり、無理やり引き出された「自白」の借用性を十分検討せず、有罪との判断に陥った面はなかったか」。
①別件も菅家さんに押し付けた報道。
・「未解決3事件/状況や目撃にも類似点」(読売)などと、各紙が別件も押し付け、菅家さんを「幼女の敵」とする地元の雰囲気を形成、その後の裁判にも影響。
(3)足利事件再審が明らかにした権力の犯罪
①苦し紛れの犯人捏造・見込み捜査。
・相次ぐ幼児殺害事件の末解決で警察批判の高まり。
②犯人作りのためのDNA鑑定。
・メディアが「スゴ腕DNA」(朝日)報道で冤罪に加担。
③密室での自白強要。
・一審公判中も続いた検事による違法な取り調べ(再審で森川大司検事の証人尋問)。
・再審で取り調べ録音テープ開示・再生。
④弁護人も冤罪に加担(菅家さんの公判での否認を否定、説得して上申書を書かせた)。
⑤自白強要・鑑定妄信の裁判所(再審請求でDNA鑑定を否定した地裁判事たち)。
⑥問題を残した再審無罪判決。
・裁判長は謝罪したが、「自白の任意性」は容認=自白強要を認めず。
・メディアは、「よかった」だけの報道で、判決が回避した「密室取り調べへの批判」を無視。

2 布川事件と報道
(1)布川事件の概要と裁判の経過
①1967年8月30日、茨城県利根町布川で独り暮しの男性(62才)が自宅で殺害されているのが発見。
②10月10日、桜井昌司さん窃盗容疑で別件逮捕(桜井さんは15日に「自白」)、10月16日、杉山卓男さんを暴力行為の容疑で逮捕(杉山さんも17日、強盗殺人を「自白」)。
③1970年10月6日、水戸地裁土浦支部は、自白をほぼ唯一の証拠として2人に無期懲役の判決。
④1973年12月20日、東京高裁が控訴棄却。
⑤1978年7月3日、最高裁が上告棄却。2人の無期懲役が確定。2人は服役。
(2)事件発生・逮捕段階の報道
①捜査報道
・地元紙や全国紙県版は、「有力参考人浮かぶ」=9月7日付「読売」、「二人連れをしぼる」=同8日付「いはらき」(現「茨城新聞」)などと捜査経過を詳報、10日過ぎには各紙が「重要参考人を調べる」と報道、しかしその後、「有力な決め手つかめず」=30日付「朝日」、「捜査は長期化か」=10月2日付「毎日」、と捜査の行き詰まりを報道。
②逮捕報道
・杉山さんの「自白」、10月18日付「いはらき」に「青年二人を逮捕/利根町の殺し一ヶ月半ぶりに解決/犯行の一部を自供」という「特ダネ」掲載。記事は匿名だが、杉山さんと桜井さんとわかる記事(この段階では、強盗殺人容疑では末逮捕。正規の逮捕は23日)。
・10月19日、各紙朝刊が、連行写真・顔写真付きで2人を強盗殺人犯と断定した記事を大きく掲載。「朝日」は「利根町の強盗殺人48日ぶりに解決/競輪帰りに犯行/逮捕のし二人アリバイ追及に観念」。
「毎日」は「競輪に取りつかれて/利根町の大工殺し/借金を断られ/杉山と桜井「カッとなりやった」。
「読売」は「利根の大工殺し51日ぶりに解決/桜井 杉山 二人をマーク/捜査陣のネバリ実を結ぶ」。
(3)布川事件再審が明らかにしつつある権力の犯罪
①「冤罪のオンパレード」(杉山さん):別件逮捕、代用監獄での自白強要、証拠捏造、証拠隠し。
②検察は無実を証す多数の証拠を隠し、裁判官に虚偽自白を信用させ、強盗殺人犯の汚名。
 a)「殺害方法は絞頸」とする死体検案書と絞頸可能を示すパンツ(自白は「手による扼頸」)。
 b)「二人と違う人物を見た」という目撃者の供述調書。
 c) 第三者の存在をうかがわせる毛髪鑑定書(二人とは別人の鑑識技官鑑定書)。
 c) 改竄された桜井さんの収り調べ録音テーブ(13ヶ所も改ざん)。
・これらが40年前に提出されていれば、当時まだ20~21歳だった2人には、別の人生。
③2010年7月9日、再審初公判。
・検察側は、再審開始の決め手となった目撃者の供述詞書の証拠採用に反対、新たに被害者のパンツなどのDNA型鑑定を請求。
・鑑定対象には逮捕当時の取り調べで2人のDNAが付着した可能性があるうえ、新たな証拠捏造の疑いも(水戸地検は2010年2月、地裁から資料のパンツなどを借り出していた)。
・初公判後の罪状認否で
 桜井さん「あんな起訴状を朗読して聡ずかしくないですか。裁かれるべきは検察官です」。
 杉山さん「(一人息子にふれ)人殺しの息子というレッテルを一日も早くはずしてやりたい」。
④7月3日、再審第2回公判
・弁護側が提出した取り調べ録音テーブ再生(13ヶ所に編集の痕跡)。
・自白で再現した犯行実験映像。
・裁判所は検察が請求したDNA鑑定請求を却下。
⑤9月10日、再審第3回公判
・目撃女性が証人として出廷、事件現場前で目撃した犯人とみられる男け杉山さんではないと証言。
 女性は事件直後に県警の聴取で同様の話をしたが、その調書は第2次再審請求まで隠されていた。
⑥10月15日の第4回公刊
・「被告人質問」で2人が「自白強要」の実態を暴露。

3 足利・布川に共通する問題点
(1)「犯人発見」でなく「犯人作り」の捜査
①いずれも、捜査が難航し、「犯人を作る」見込み捜査。
②密室取り調べで虚偽自白を強要。
③犯人らしく見せるための証拠捏造(DNA鑑定、目撃証言など)。
(2)世論と裁判に予断をもたらした犯人視報道
①犯人探しの特ダネ競争→逮捕前打ち、別件逮捕での犯人視。
②逮捕と同時に犯人断定の大報道。
③「自白」と「鑑定」報道で犯人イメージ固定。
(3)「被告=犯人に違いない」の予断裁判
①法廷での証言より捜査段階の「自白」を信じる裁判官(否定できない報道の影響)。
②検察の証拠隠しを見抜けず、検察側の「鑑定」妄信。

Ⅱ 裏金告発つぶしを狙った「大河原事件」と報道
1 「大河原さん逮捕」の背景
(1)「裏金作り」に異を唱え、異例の交番勤務に
①1996年11月、県警本部交通指導課勤務中の「裏金」体験。
・高崎署管内で起きた集団暴走事件の捜査で応援派遣後、県警本部交通指導課の会計担当職員から「捜査情報提供謝礼支払報告書」という文言を渡された。
・B4版の紙の左右に同じ様式のB5版文書が印刷され、左側のひな型を右側に書き写すよう指示。全部で約10枚、金頷は1枚5000円から2万円。「領収証が存在しない理由」を記載する文書も。
・約10日後、また10枚ほど同じ文書を渡されて書いたが、会計担当者に「ここに名前を書いた人は知らないし、こんな大金を渡したこともない。何でこんな言類を作るんだ?」と大声で抗議、そばに課長と次席がいたが何も言わず、以後、同じ報告書を書くよう頼まれなくなった。
②4か月後の97年3月、藤岡署吉井町交番勤務の辞令。
・県警本部から交番への異動は極めて異例。
・自分が中心になって進めている暴走事件の捜査が大詰め。
・「裏金作りに異を唱えて幹部にうとまれた?」の思い。
(2)以前からあったさまざまな疑闘
①検挙率の統計操作(1982年、前橋署・鑑識係長時代)
・前橋署の内部統計で、何年も前の末検挙事件を解決したことにし、検挙率を高くする「統計操作」。
②旅費の水増し(1983年からの警備部勤務時代)
・警護の出張で、県内でも50キロを超えると宿泊代を請求できるが、会計担当者は2人で出張しても6人で行ったことにし、正規の3~4倍の旅費を請求。
③交通違反検挙「ノルマ」(94年からの県警交通指導課時代)
・毎年、署ごとに無免許、速度違反、一時不停止など検挙の「努力目標」設定・
・ノルマを達成するため、警察官は一時停止、右折禁止など重大事故とは関係のない場所で取り締まり(「ただ、数字を上げるためだけの取り締まり」)。
④予算の過大請求(94年からの県警交通指導課時代)
・集団暴走行為を夜間撮影するのに必要な高性能ストロボカメラを購入した際、会計担当者の指示通りに3セットで3セットで約100万円の予算見積書を作成。
・実際に支払ったのは約72万円(最初から上乗せして予算を請求)
(3)「左遷」後に高まった警察組織への不信感
①署の幹部から嫌がらせ(藤岡署吉井町交番の5年間)
・「左遷」後、現場の警察官の不満・不審を代弁するつもりで、思ったことは「意見具申」。
・緊急事件で署に応援に行くと、「自分の車で現場に行ってくれ」。
・「せめて、ガソリン代ぐらい支給できないか」署次長に「具申」したが、改善されず。
②目撃した業者からの「賄賂」(02年から伊勢崎署・交通課勤務)
・レッカー業者から課の全員にビール券(業者は板金業を兼ね、事故車修理も請け負い)。
・課員は黙って受け取っていたが、大河原さんは「これは賄賂ではないか」と突き返した。

2 監視から逮捕ヘ
(1)警察組織による「問題警察官」の監視・処分
①「DV被害」にぎりつぶし問題で組織から監視
・2002年秋、吉井町交番時代に面識のあったAさんから、「夫の暴力がひどいので藤岡警察署に保護を求めたが、受け付けてもらえなかった」との相談・
・家を出たAさんが身を隠す部屋探しを手伝うなど、保護・支援の活動。
・2003年3月、再び交番勤務に戻ったころから、「警察による監視」。
②県警監察官室から呼び出し
・藤岡署が無視したDV被害者の相談に「問題警察官」がのったのを「まずい」と思った?
・2003年9月19日、県警監察官室から呼び出し、「人妻と不倫してるだろう。始末書を書け」。
・10月にも2回呼び出し、「処分するぞ」「始末書を書け」と強要。
(2)裏金を告発・直後の処分
①テレビ朝日への裏金告発
・2003年11月23日、テレビ朝日「ザ・スクープ」が北海道警旭川中央署の「裏金疑惑」を報道。
・番組を見、「群馬県警も同じことをしている」と番組あてにファックス。
・テレビ朝日は後に大河原さんから詳しく取材、2004年2月29日の「警察の裏金第2弾」で「関東・現警察官」の話として放映(その約2週間前、警察は大河原さんを逮捕・勾留)。
②懲戒処分
・「ザ・スクープ」放映2日後の11月25日、群馬県警は「不適切異性交際」などを理由に、減給の懲戒処分(翌年1月23日、この処分に不服を申し立て、県人事委員会に審査請求)。
・11月28日、太田署に異動命令(11月末という異例の時期、たった一人の異常な異動=群馬県警の組織全体に「大河原は問題警察官」のレッテル貼り)。
(3)逮捕
①監視強化・Nシステム
・テレビ朝日の取材に応じたのが察知されたのか、太田署異動直後から身辺監視強化。
・警察のNシステム(自動車ナンバー読み取り装置)による監視を意識。
・撮影を回避するため、ナンバープレートをコピー、番号を加工したものを遠出の際、Nシステムが捉える車の前部に貼り付け(機械はごまかせても、監視の捜査員は気づく。大河原さんの失敗)。←(注:これは違う。Nシステムはナンバー読み取りのみならず、車全体や運転手の顔までも画像識別することが可能)
②公務執行妨害?で逮捕、約30日の不当な勾留
・2004年2月16日朝、大河原さんは出勤前に高崎市内のAさん宅マンションを訪問。
・県警は交通部幹部ら捜査員約10人を動員、駐車場につながるマンション4階南側出入口で、車の差し押さえに着手。
・この時点から、県警発表と大河原さんの主張は全面的に対立。
③県警交通部が発表した広報「公務執行妨害被疑者の逮捕について」
・「本日、道路運送車両法違反被疑事件捜査のため、群馬県高崎市内において、捜索差押許可状を示して同人の使用車両を差し押さえようとした際、同人が捜査員に体当たり等して暴行し、公務の執行を妨害したもの」
④大河原さんの主張・反論
・私が「もう差押手続が執行されているのか」と聞くと、捜査員の一人が「まだだ。レッカー車が来ていない」と答えた。それで加工したナンバープレートを外すと、捜査員数人に羽交い絞めにされた。「逮捕するのか」と聞くと「逮捕じゃない」と言う。この実力行使は逮捕以外の何ものでもない強制力。ワイシャツのボタンも取れ、両手首や指先に負傷した。3階北側出入口に降りたところで、「ようし、逮捕だ」と声がかかり、「証拠隠滅と公務執行妨害で逮捕する」と身柄を拘束された」
⑤「体当たり=公妨」逮捕は、逮捕後の作り話
・プレートを外しても差押手続の執行前だから公務執行妨害にならない。
・そのつじつまを合わせるため、県警は身柄を拘束した後になってから、捜査員に体当たり=公妨という発表文をでっち上げ。

3 警察情報垂れ流しの「体当たり警官」報道
(1)「逮捕=犯人」視報道
①逮捕翌日(2004年2月17日)の各紙報道
・「警察官に体当たり/偽造ナンバー捜索に抵抗/警部補を現行犯逮捕/県警」=上毛新聞・社会面4段。

・「警部補の車に偽造ナンバー/摘発の警視に抵抗、逮捕」=読売新聞・社会面1段。
・「警部補が捜索妨害容疑で逮捕/群馬・太田」=毎日新聞・社会面1段。
・「太田署の警部補逮捕/車両差し押さえを妨害」=産経新聞・群馬版2段。
②各紙が「警視に体当たり」を断定報道(全文66行、最も詳細な上毛新聞の記事)
・「調べによると、大河原容疑者は同日午前八時ごろ、住んでいる高崎巾片岡町のマンション敷地内で、県警交通指導諜の警察官数人に同法(注:道路運送車両法)違反の疑いで、自分が使っていた車の捜索を求められたが大声を挙げて抵抗。車から偽造プレートを外し警察官に体当たりした。その際、同課の警視(47)が右腕に一週間のすり傷を負った」。
・「偽造プレート」は、「布か紙のような材質で、本来の前部プレートを覆うように付けられ、番号は実在しなかった。後部には正規のプレートがあった」。
・「県警は盗難品ではないと見ており、偽造や入手の手口を追及する」「警察官舎に住んでいないなど生活態度が不審だったため、県警監察官室などが調査したところ、偽造プレートの疑いが浮上」。

平成16年(2004年)2月17日に体当たり事件を報じた上毛新聞。

(2)記者たちは警察発表に疑問を感じなかったのか
①なぜ「車の前部だけに偽造プレートを貼り付けたのか」
・盗んだ車に偽造プレートを付けるのならわかるが、自分の車の前部だけに「布か紙」のプレートを貼り付けるとしたら、その目的は「Nシステム」の監視を防ぐ対策としか考えられないはず。
・現職の警部補である「容疑者」は、なぜ「警察に監視されている」と思ったのか。
②なぜ、捜査員を大動員し、警視が現場指揮したのか
・「事件」は罰金程度の「道路運送車両法違反」差し押さえ。
・それに、県警交通部の警視が現場指揮し、10人近い捜査員を動員したのか。
③発表垂れ流しに慣れきった記者たち
・記者たちが発表会見で疑問をぶつけていれば、県警は答えに窮したはず。
・大河原さんの主張を取材していれば、裏金問題やDVへの警察の対応が問題になった可能性も。
(3)逮捕・発表の目的は「裏金告発」つぶし
①なぜ現職警察官逮捕を大々的に発表したのか
・警察官の覚せい剤使用など重大事件でもこっそり処分し、「事件」化しない警察が、こんな「ささいな事案」で、なぜ逮捕し大々的に発表したのか。
②「異常な警官」のイメージ作り
・上毛記事には、「大河原容疑者は調べに対し、混乱した様子であいまいな供述をしているという」との記述も。
・県警は、報道で県民の間に「混乱した警察官が異常なことをした」との印象を与えることに成功。
③大河原さんの逮捕直前、全国の警察幹部は一大パニックに
・逮捕6日前の2月10日、北海道警の元最高幹部・原田宏ニさんが名乗り出て、テレビカメラの前で裏金作りの実態を証言。
・「原田証言に続く内部告発は何としても阻止せよ」との「指令」が警察庁から出ていた可能性。
・大河原さんの最初の懲戒処分も「ザ・スクープ」の裏金報道の2日後だった。

4 大河原さんの反撃
(1)「公妨」では起訴できなかった地検
①県警は04年3月5日、道路運送車両法違反容疑で再逮捕(再逮捕を報じたのは上毛、読売のみ)。
・17日に略式起訴。大河原さんは「これは仕方がない」と罰金50万円を払い、即日釈放。
②3月17日、県警は大河原さんの懲戒免職処分を発表
・18日朝刊で、上毛、読売のほか、朝日、毎日、産経、東京新聞の各紙が報道。
・各紙とも、起訴できなかったはずの「公妨」容疑を再び記事化。

平成16年3月18日に大河原氏の懲戒免職を報じた上毛新聞ほか。
(2)大河原さんの反撃
①4月21日、県人事委員会に懲戒免職処分への不服申し立て
②6月4日、記者会見を開き、F公務執行妨害の事実はない」と説明
・報道は、各紙とも地域版1段。
・週刊誌『フライデー』8月13日号「元警部補が実名告発する群馬県警『腐った内情』」2ページ。
③8月28日、全国市民オンブズマン連絡会議大会が聞かれた函館ヘ
・29日の分科会でF裏金体験]を証言(北海道新聞、函館新聞に大きく掲載)。
④9月26日、市民オンブズマン群馬の総会で「裏金作りの実態」講演。
⑤10月22日、市民オンブズマン群馬が、大河原証言を基に、「県警交通指導課で96年に捜査報償費の違法支出があった」として、約25万円の損害補填を求め、県監査委員に住民監査請求。
・同日、地方公務員災害補償基金から「捜査員の治療費」として請求を予告された「療養補償費」7240円について、「暴行の事実はなく、公務執行妨害は県警の捏造」として、「債務務不存在の確認」を求める訴訟。
・各紙は、住民監査請求と提訴を23日朝刊地域版に1~2段で報道。この段階で、ようやく各紙の紙面に「県警不正支出」(裏金)に関する記述が登場。
⑥05年1月17日、市民オンブズマン群馬は捜査報償費約25万円の支払いを求める訴訟(群馬県警交通指導課捜査報償費ネコババ事件)。

(3)国賠提訴と支援の拡大
①05年3月30日、国賠訴訟提訴
・「公務執行妨害事件捏造・逮捕」とその「広報」被害、前橋地検が「嫌疑なしの不起訴」ではなく「起訴猶予」処分としたことなどの違法性を問い、国家賠償請求訴訟を提訴。
②その第1回口頭弁論(2005年6月17日、前橋地裁)の原告意見陳述書
・「私は自分自身が被疑者として逮捕され、懲戒免職されてみて、改めて自分の警察官人生とは何だったのか、警察とは何か、検察とは何か、そういうことを理屈としてではなく、警察と検察の現実を明らかにした上で、これらの絹織が抱える不正を取り除きたいと考えています」・
・「私にとって、この裁判は自分の名誉を回復することが第一の目的ですが、同時に県警の手段を選ばない不正と、これに加担する検察のあり方が裁判で問題にされることによって、今後、現職の警察官が警察組織内で自由にものを言えるような環境にしたいと願っています」。
③裏金告発の警察官らが支援(第1回弁論当日の支援集会に参加)
・元弟子屈居次長・斎藤邦雄さん
「警察は一人で闘っても勝てる組織じゃない。私は裏金作りに手を染め、黙って辞めたが、大河原さんは現職のまま一人で行動した。北海道、高知、愛媛、官城。今、全国で裏金問題が熱い、潮目は変わった。風化させちゃならんと思います。ぜひ大河原さんを支えてください」。
・愛媛県警の仙波敏郎さん
「群馬県警はデマをばらまき、警察発表を鵜呑みにした報道がなされました。愛媛新聞の記者は、裏金問題を害いて警察出入り禁止です。でも県民が評価しています。上毛新聞はじめ記者の皆さん、大河原さんを孤立させないでください。復職させてください。彼のような警察官がいないと、ほんとうに日本の警察はダメになります。ぜひ真実を報道してください。お願いします」。
④その後の経過
・2008年6月、懲戒免職処分への不服申し立て・審査請求に対し、県人事委は懲戒免職処分を取消さない裁決を出したが、「不倫及び体当たりの公務執行妨害はなかった」と認定。
・その裁決を不服とし、08年10月、前橋地裁に懲戒免職の取消しを求めて提訴。

●おわりに-
・メディアの報道に疑いの眼差しを。
・大河原さんの勝利は、裏金作りを認めない警察への大打撃となる.

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■講演者は二人とも、それぞれ共同通信社と読売新聞社に記者として勤務したことがあり、マスコミのひどい内部の実態について熟知していることから、インパクトのある話を聞くことができました。


会場からの質問に答える浅野・山口の両氏。

 二人とも、実際に記者時代に上層部に意見を具申したそうですが、徹底的に是々非々を貫けたとまではいかなかったそうです。それだけ、大河原氏は現職の警察官として毅然と物申したのですから、その勇気と毅然とした態度はまさに警察官のかがみです。


集会の最後に、会場の参加者に挨拶をする大河原氏。阿久根市でも存分に活躍してくれるに違いない。

 さて、今回の集会で最も印象的だったのは、大河原氏のでっち上げ逮捕について上毛新聞を筆頭に、全部の新聞社が、誰も大河原氏に取材せず、警察の発表した情報だけをニュースにしたことで、未だに反省をしていないことです。

■市民オンブズマン群馬では、今年の5月17日付で、群馬県庁内にある刀水クラブのメンバーであるマスコミ各社に次の公開質問状を出したことがあります。

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2010年5月17日
マスコミ各位
(      社 編集担当責任者殿)
          市民オンブズマン群馬 代表 小 川  賢
群馬県警元警察官懲戒免職取消請求訴訟にかかる取材と報道に関する公開質問状
 現在、前橋地方裁判所で、2004年当時警部補だった元警察官大河原宗平氏による「懲戒免職取消請求訴訟」が進められております。毎回、傍聴のために多数の人が開廷前に並ぶ傍聴券裁判として世間の注目を集めており、当会としても、群馬県警の報償費をめぐる裏金づくりの実態解明を契機に、大河原元警部補の身分措置回復を願い、全面的に支援しているところです。
 大河原元警部補が、懲戒免職とされたのは2004年2月に群馬県警本部に配属されている警察官ら10名余が、道路運送車両法違反の疑いで、元警察官(警部補)が借りていた乗用車を差し押さえた際に、元警察官に体当たりして公務執行妨害などとされた事件で、管轄警察署ではなく県警本部が新聞記者発表した際に、マスコミ各紙は、「車から偽造プレートを外し警察官に体当たりした。」(A紙)「差し押さえに来た警視に体当たりするなどして暴れ」(B紙)、「車のナンバーを調べようとしたところ、警視に体当たりするなどして捜査を妨害した」(C紙)と県警の言い分を報道しましたが、逮捕された元警部補の言い分は、どこも報道しなかったという経緯があります。
 先日、4月26日(月)午後1時30分から前橋地裁で行われた証人尋問では、開廷40分前に既に100人以上が傍聴券を得ようと並んでおり、この裁判に対する市民の関心の高さがうかがえます。そこで、マスコミ各社の皆様に次の質問があります。
1 当日取材しましたか?
   □した。
   □しない。
2 取材しなかった場合、その理由は何ですか?
  (                  )
3 取材した場合、記事にしましたか?
   □した。
   □しない。
4.記事にしなかった場合、その理由は何ですか?
  (                  )
 なお、本質問状は貴職のご回答を得た上で、あるいは得られなかったときに、この質問状の提出以降の経過を含めて当市民オンブズマン群馬のホームページ上でも明らかにし広く群馬県民に広報してまいる所存です。つきましては、平成22年5月24日(月)限り、下記に郵送又はFAXにてご回答いただきますよう、お願い申し上げます。
     連絡先:市民オンブズマン群馬 事務局長 鈴木庸
以上
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 しかし、マスコミ各社からはどこも回答が来ませんでした。これをみても、マスコミの言うことをやることのギャップの大きさに戸惑いを禁じ得ません。

【ひらく会情報部】

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大河原宗平氏の裁判支援集会のご案内

2010-11-07 13:30:00 | 警察裏金問題
<支援学習会・行政のしくみを勉強する会>
日時:2010年11月7日(日)13:30~16:30
 (開場:13:00)
場所:安中市文化センター 大会議室
(群馬県安中市安中三丁目9-63 
電話027-381-0586)
主催:
「行政のしくみを勉強する会」 
「大河原宗平さんを支える会」
※参加自由。一人当たり資料代500円をお願いします。



■いまや裏金作りは、行政の不正経理や議員の政務調査費の悪用をはじめ、警察・検察さらには裁判所にまで及んで、我々の税金が非効率に使われている実態が明らかになっていることは皆さんご承知の通りです。

 これまで、行政や議会の裏金作りによる無駄遣いについては、オンブズマンなどの努力によってその実態が少しずつ暴かれてきました。ところが、警察等の司法関係では、内部告発を通じてしか、その実態はこれまで明らかにされませんでした。
 その主な理由は、閉鎖的なこれらの組織の本質に起因するものですが、そのなかで敢然と内部告発に踏み切る勇気ある人が、僅かながら現れていることは、民主主義国家を標榜する我が国にとって明るい事実です。
 今から14年前の1996年、群馬県警幹部らによる裏金つくりに抗議した警部補(当時)の大河原宗平さんは、県警による組織ぐるみの監視、いやがらせを受けつつも、警察官としての職務に精励し、住民から感謝され、頼りにされて来ました。
 たまたま、警察の裏金問題で全国的に注目を浴びていた北海道の函館市で、2004年8月28日~29日にかけて、第11回全国市民オンブズマン大会が開催されました。この大会開催を知った大河原氏は、会場で群馬県警の不正経理問題と、それに抗議した自らの境遇について飛び入りで報告したのです。
 この勇気ある行動に、おひざ元のオンブズマン組織として、市民オンブズマン群馬では、大河原氏の証言をもとに、警察の捜査報償費に関して行政訴訟を提起しました。この裁判は最高裁まで上告しましたが残念ながら権力の壁を突き破れす敗訴しましたが、市民オンブズマン群馬は、引き続き大河原氏の活動を支援しています。
 警察を含め、行政内の不正経理という慢性的な組織犯罪を放置することは、税金の私物化という観点から、効率よい行政の実現を妨げるものであり、これは社会保険庁の問題も同じ構図です。
 権力内のこうした不正の実態は、私たち住民としては情報公開を通じてしかうかがい知ることができません。やはり、勇気を持って不正を内部告発できる環境づくりが欠かせません。
 勇気をもって裏金作りの実態に抗議したにもかかわらず、大河原氏は、2004年2月16日、群馬県警がでっち上げた「公務執行妨害」という冤罪で逮捕され、述べ19日間留置・拘留されました。さらに翌3月17日、県警は、大河原氏を「公務執行妨害、道路運送車両法、不倫」の3つの理由から懲戒免職処分としたのです。
 大河原氏は、2004年4月に、群馬県人事委員会に懲戒免職処分の取り消し審査請求をしました。しかし、2008年6月、群馬県人事委員会は、「体当たり」や「不倫」の事実について不認定としましたが、群馬県警による懲戒免職処分の取り消しそのものは認めませんでした。同じく不正経理に手を染める群馬県が県警の肩をもったのです。
 そこで、大河原氏は2008年10月に、「懲戒処分の取消し」を求めて前橋地裁に提訴しました。この「大河原裁判」は全国規模で注目されており、いよいよ2010年11月5日(金)11時から前橋地裁2階21号法廷で開かれる次回裁判では、結審になる可能性があります。そうなれば、前橋地裁の判決が今年度中に出されることになります。こちらの裁判もぜひ傍聴をお願いします。


<次回裁判のご案内>
日時:2010年11月5日(金)11:00~
場所:前橋地方裁判所2階21号法廷
※この日に結審になる可能性があります。
※この日午前10時ごろから「傍聴券」が先着順に配布される見込みです。
※裁判終了後、弁護士会館で支援弁護士らによる「報告集会」が行われます。



 今後とも、皆様のご理解、ご支援のほどを宜しくお願い致します。

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