↑2017年末に完成し2018年3月から稼働中の前橋バイオマス発電所。右側が前橋バイオマス発電㈱の発電施設、左側が前橋バイオマス燃料㈱のチップ加工保管施設。年間約8万トンのチップ化した間伐材を流動床ボイラで燃焼させ、蒸気タービンで発電。出力6,750kW。年間発電量はほぼ一般家庭8,700軒分の消費電力量に相当(但し一般家庭の平均年間電力消費量を4,936kWh/年とした場合)↑
■株式会社関電工は、関東地方を中心に、電気設備工事、リニューアル工事、空調・給排水設備工事、電力工事、エネルギー工事、通信工事に携わる総合設備企業で、もともと東電系の企業として設立され、今でも東電パワーグリッドが46%の筆頭株主です。その名前から当初は、関西電力の子会社かと思っていましたが、松井田でバイオマス事業を手掛けて挫折したトーセンが設立した松井田バイオマス発電を継承し、2015年6月22日に前橋バイオマス発電株式会社と看板を架け替え、親会社の東電の威光をバックに前橋市苗ケ島町にある電中研の土地の一部を払い下げてもらい、周辺住民にきちんとした説明をしないまま、木質バイオマス発電所を建設し、2018年(平成30年)3月から本格的に運転をスタートさせて、早くも5年余りが経過しようとしています。
このバイオマス発電所には、トーセンが主体となって木質チップ燃料を供給する前橋バイオマス燃料の施設が隣接しており、発電・燃料双方に、自民党群馬県連の重鎮が仕切る群馬県森林組合連合会(県森連)や、その息のかかる群馬県素材生産流通協同組合(素材協)も一部出資をしています。いわば、FIT補助金獲得と東電福島原発事故による県内の放射能汚染樹木の焼却処分を目的に群馬県の政官と癒着して、しゃにむに推し進めた事業です。
そうした政官の思惑を背負って事業主体となった関電工ですが、周辺住民が懸念していた通り、群馬県環境森林部は、本来であれば、排ガス量4万㎥以上の火力発電設備に義務付けられる環境アセスメントを、「木質チップの水分は、燃やしても水蒸気だから」として排ガス量を低く査定し、免除してしまいました。そのため、騒音や、放射能汚染の間伐材燃焼による大気や排水についても、すべて不問同然としてしまったのです。
そのため、周辺住民の皆さんの意向をもとに、当会では住民訴訟を提起しましたが、政治圧力や行政に忖度する地元の前橋地裁はもとより、東京高裁でも住民側の訴えはことごとく退けられてしまい、最後の頼みの最高裁さえも、政官と東電に加担して、三行半の棄却判決を出す始末です。
○2021年01月15日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…当会の上告理由書と上告受理申立書を最高裁第三法廷が棄却!↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/e/4b08a4e564cd4120feaa90b52367afda
※また、前橋バイオマス発電を巡るこれまでの経緯は次の記事を参照ください。
○前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災↓
https://blog.goo.ne.jp/ogawakenpg/c/4ae0ef6e75d21f8b1a3c9c3090414d60
■バイオマス発電所が稼働後も、相変わらず騒音レベルは環境基準に収まっておらず、住民の皆さんは前橋市環境部に関電工への行政指導を再三お願いしてきました。しかし、現在に至るまで、関電工はのらりくらりしており、前橋市も関電工に対して及び腰です。
当会が提起した住民訴訟の最終段階で、証人尋問が行われ、関電工の事業責任者が法廷で証言しました。その際、騒音対策については前橋市行政の指導に沿って適切に対処している」という趣旨を裁判官の前で明言していました。しかし、その後、現在に至るまで騒音は基準内に収まっていません。
証人尋問に先立ち、証人は「ウソは言いません」と宣誓書を裁判長の前で読み上げさせられます。関電工の責任者は、騒音対策は適切に取っているから騒音の問題はない、と明言したのに、未だにそうなっていないのは、ウソをついていたことになります。そこで、当会は、地元住民の皆さんの同意を得て、2021年10月8日に、前橋地検に次の告訴状を提出しました。
*****2021/10/08告訴状*****
告 訴 状
令和3年10月8日
前橋地方検察庁検事正 山口 英幸 殿
告訴人 小川 賢(自著押印)
1 告訴人 住 所 〒379-0114 群馬県安中市野殿980
氏 名 小川 賢(市民オンブズマン群馬・代表)
生年月日 昭和27年3月5日
電話番号 090-5302-8312
2 被告訴人 住 所 〒371-0241 群馬県前橋市古市町215-6
氏 名 福本雅邦
職 業 前橋バイオマス発電株式会社・代表取締役
電話番号 027-288-0594
3 告訴の趣旨
被告訴人の行為は、「4 告訴事実」に書いたように、法廷偽証罪に該当する(刑法第169条に違反)と思料するので、被告訴人について刑事上の処罰を求めるため、ここに告訴する。
4 告訴事実
平成31年4月24日、群馬県前橋市大手町3丁目1番34号前橋地方裁判所民事第1部第21号法廷において、平成28年(行ウ)第27号請求事件の証人として宣誓の上、全く虚偽であることを知りながら、裁判長から「騒音について前橋市のほうから何らかの連絡のようなものがあったのか」とする質問に対して、
「それに対して、その音を管理基準の45デシベル以下にするための少なからず応急処置的な対策は速やかに打って、その数字以下になったというところを確認するまで実際仕事としてはやらせていただいて現在運転をしているところです。」
また、告訴人の「スパイク音を無くして運転しているということですね。」との質問に対して、
「管理基準値以下にするようにしてですね。」
さらに、告訴人が「いや、スパイク音というのを除去して運転されているということですね。現在はね。問題はないということですね」との質問に対して、
「問題のない数字になっています。」
などと、あたかも騒音対策に万全を期して管理基準値をクリアしたかの如く虚偽の陳述をし、もって、偽証したものである。
5 告訴の経過
(1)被告訴人は、群馬県前橋市苗ケ島町2550-2に、群馬県の森林組合等から調達した間伐材など年間約8万トンを集めて、それらをチップ化して燃料としてボイラーで燃やし、汲み上げた地下水を加熱して蒸気をつくりタービンを回して発電する方式の出力6750kWのバイオマス発電施設を、平成30年3月から稼働させている。
(2)ところが、この施設は、近隣の住宅地から僅か150mしか離れておらず、しかも、排ガス量が毎時4万ノルマル㎥を遥かに超えるため、騒音や大気汚染、さらには放射能を浴びた群馬県内の北部森林地帯から間伐された木材を燃焼させることによる放射能の影響を強く懸念した周辺住民らが、施設の計画段階で開催された説明会で、環境アセスメントの実施を要請した。
(3)ところが、被告訴人は一方的に説明しただけで、周辺住民の意見に耳を傾けようとせず、結局、排ガス量が毎時4万ノルマル㎥を超えていて、群馬県の環境影響評価条例に該当する施設であるにも関わらず、使用する木材の水分量が多いため、排ガス中の水蒸気は排ガスとしてカウントしないまま、騒音、排ガス、排水など周辺住民の生活環境保全に必須な環境アセスメントを実施しないまま、上記(1)のとおり平成30年3月から本格稼働させた。
(4)被告訴人の発電施設では、ボイラー、モーター、コンプレッサー、送風機、チップ搬送ベルトコンベア等の機械を使用しているが、これらの機械は年中無休で24時間休みなく稼働し、騒音を発し続けている。
(5)これらの騒音により、周辺住民らは、安寧な生活環境を妨害され、血圧の上昇、動悸、睡眠不足等の被害を受けている。
(6)そのため、周辺住民らは、被告訴人に対し、再三、対策の実施を申し入れたが、被告訴人は、何ら誠実な対応を示さなかった。
(7)やむなく周辺住民らは、前橋市の環境課に苦情を申し出て、騒音測定をしてもらったところ、敷地境界では、規制基準値を超える結果が平成30年12月に確認された。(証拠資料1:平成30年12月騒音測定結果参照)
(8)このため、平成31年1月に前橋市は規制基準を超過していることを被告訴人に伝え、発生音の改善について行政指導を行った。しかし、その後も実効性のある対策を被告訴人が実施しなかった。
(9)そして、前橋市による騒音測定の結果、令和3年4月に規制基準値を超過していることが再び確認された。(証拠資料2:騒音についての行政指導、証拠資料3:令和3年4月騒音測定結果参照)
(10)そこで、平成30年12月に測定された結果と令和3年4月の結果を比較すると、ベースとなっている騒音が約4㏈増加していることが判明した。また、チップを運ぶベルトコンベアの擦れ音は施設操業時から発生して全く改善されていない。(証拠資料4:平成30年12月・令和3年4月騒音時系列グラフ参照)
(11)周辺住民らが居住する住宅地およびその近辺は、比較的静穏で良好な環境にあり、特に夜間の騒音は、非常に耳障りで、心身に多大な悪影響を及ぼすものである。また、せめて、土日ぐらいは静穏な環境で生活を送りたいというのが周辺住民らの心情である。
(12)この問題につき、周辺住民らは、被告訴人が環境アセスメントの実施もせずに操業を始めようとしたため、騒音の源になるボイラー、送風機、コンベヤ、コンプレッサーなどの騒音による生活環境の保全確保の観点から、上記(2)のとおり、環境アセスメントの実施について群馬県を通じて被告訴人に申し入れた。
(13)ところが被告訴人は、燃料の木質チップが水分を多量に含むため、大半は水蒸気だから排ガス量は毎時4万ノルマル立米未満だと主張し、なんらアセスメント実施に応じようとしなかった。
(14)そこで告訴人らは、前橋地裁に差止と施設整備に対する補助金の取消しを求めた住民訴訟(前橋地裁平成28年(行ウ)第27号)を前橋地裁に提訴した。結果的に原審は、令和元年10月31日に告訴人ら住民側の請求を棄却し、控訴審(東京高裁令和元年(行コ)第316号)では令和2年6月22日に、上告審(最高裁第三小法廷令和2年(行ツ)第260号・令和2年(行ヒ)第298号)も令和3年1月12日に、いずれも住民側の請求を退けた。
(15)こうしたなか、被告訴人は、平成31年4月12日に原審の前橋地裁で開かれた証人尋問で、宣誓書を朗読後、「騒音対策は実施済みで基準値をクリアしている」と証言を行ったが、上記(4)から(10)に照らせば、法廷で虚偽の陳述をしたことは明らかである。(証拠資料5:尋問調書抜粋参照)
(16)被告訴人が、虚偽の陳述を行ったことにより、裁判所は被告訴人がしっかりと騒音対策を実施しているものと判断したため、周辺住民らの悲痛な訴えが棄却されてしまった。(証拠資料6:前橋地裁判決文抜粋参照)
(17)そもそも、偽証罪が保護しているのは、国家の審判作用の適正性の担保である。裁判においては、裁判官がさまざまな証拠を取り調べたうえで事実を明らかにしていき、判決を下す。証拠のなかには物的なものだけでなく参考人などの証言も含まれるため、証言に虚偽があれば正確な審理結果が期待できない。
(18)被告訴人の行った偽証は、法治国家である我が国の平穏な市民生活の治安秩序を乱すものであり、しかも、被告訴人は東京電力グループで最大の子会社である関電工の幹部職員でもあり、その社会的影響は大きい。こうした人物が法廷で虚偽の陳述をしたことが見過ごされたりすれば、我が国の社会生活の健全性が公然と踏みにじられたことを意味し、重大事である。
(19)よって、告訴人はこのようなことを断じて許すことができないので、厳重な捜査の上、被告訴人を厳罰にして頂きたく、ここに告訴するものである。
(20)なお、最後になりますが、告訴人は、本件に関し、以後捜査に関して全面的な協力をすること、および、捜査機関の指示ないし許可なく取下げをしないことを、ここにお約束致します。
以上
証拠資料
- 平成30年12月騒音測定結果
- 騒音についての行政指導
- 令和3年4月騒音測定結果
- 平成30年12月・令和3年4月騒音時系列グラフ
- 尋問調書(抜粋)
- 前橋地裁判決文(抜粋)
添付書類
- 証拠資料写し 各1通
**********
■実は告訴状は、最初群馬県警にも提出したのですが、「本件は、法廷偽証罪という司法判断に関連することから、直接地検に提出してほしい」と言われました。確かに捜査をするまでもなく、書類で判断でき、あとは当事者本人からヒヤリングするなり、必要であれば現場を一度視察すれば事足りるからです。
その後、1年半が何事もなく過ぎました。地検はやはりやる気がないのかな、と思い始めた矢先、住民の皆様から情報をいただきました。それによると、2013年1月26日の大寒波に伴う暴風でバイオマス発電施設が故障のため停止し、最近ようやく再稼働したようだが、関電工の関係者で証人尋問を受けた当事者が、地検から呼び出しを受けたらしい、ということです。
やっと地検が腰を上げたので、近日中に何らかの連絡が来るかな、と思っていたところ、案の定、年度末ギリギリで、地検から処分通知書が送られてきました。ご覧のとおり、「不起訴処分」とあります。担当検事が、在任中、棚の上にのせていた懸案事件を異動直前に、しれっと不起訴にして処分通知を出すのは慣例化していることがうかがえます。
当会では、騒音が改善されていないことを示す前橋市の測定結果を提出していたことから、なぜ不起訴処分になったのか、「起訴猶予」か「嫌疑不十分」か、それとも「嫌疑なし」なのか、はっきり知っておく必要があったため、あらためて、地検に不起訴処分の理由を文書で問い合わせました。すると、新年度になり新しく前橋地検に異動してきた別の検事名で、不起訴処分理由告知書が4月10日付で送られてきました。
■不起訴処分の理由を見ると「嫌疑不十分」とあります。騒音が現在でも閑居基準をクリアできていない状況を示す証拠を提出しているにもかかわらず、担当検事は法廷偽証罪に係る告訴に対して「嫌疑不十分」と判断したのですから、訳がわかりません。明らかに大企業やそれにたかる自民党県連の重鎮や、群馬県環境行政に対して、検察まで忖度していることがうかがえます。
そこで、やむなく当会は、6月5日に前橋地裁を訪れて、新館4階にある前橋検察審査会の事務局に行き、以下の審査申立書を提出しました。
*****2023/06/05審査申立*****
審 査 申 立 書
前橋検察審査会 御中
申立年月日 令和5年6月5日
申 立 人
資 格 告訴人
住 所 〒379-0114
群馬県安中市野殿980
電話番号 090-5302-8312
年 齢 71歳(昭和27年3月5日生)
職 業 会社員
氏 名 小 川 賢 (印)
申立人は、以下の公訴を提起しない処分に不服があるため、検察審査会法第30条に基づき、貴会に対し、その処分の当否の審査を申し立てます。
第1 罪状
偽証
第2 不起訴処分年月日・事件番号
令和5年3月28日(令和3年検第1899号)
第3 不起訴処分をした検察官
前橋地方検察庁 検察官 検事 黒澤 葉子
第4 被疑者
氏名 福本 雅邦
年齢 59歳(生年月日不祥)
職業 会社員(前橋バイオマス発電株式会社・代表取締役)
住所 〒371-0844群馬県前橋市古市町215-6(関電工群馬支社)
〒371-0241群馬県前橋市苗ケ島町2550-2(事業所)
第5 被疑事実の要旨
1 被疑者が策定した環境配慮計画の概要
平成28年4月15日、被疑者が関電工の戦略事業本部環境エネルギー発電事業部職員として、バイオマス発電建設事業の実務の総責任者であるときに、「環境配慮計画」を策定し、同年5月18日に前橋市に提出した。同計画は、前橋市から平成28年5月25日に群馬県に参考送付として提出されたが、その中で、環境管理体制として、バイオマス発電の社長を運営協議会の会長とし、発電所の所長とバイオマス燃料の工場長の直轄下に公害防止責任者をそれぞれ置くことが示されている。さらに、自主管理基準の遵守状況の確認・審査、住民対応状況の確認、その他環境に関する方針等の決定をすることなども、その環境配慮計画に記載されている。
環境配慮の項目は、大気関係、水質関係、騒音・振動関係、放射性物質関係、廃棄物関係からなっており、騒音・振動では、騒音の自主管理基準は、8時から18時で55㏈以下、6時から8時及び18時から21時で50㏈以下、21時から翌6時で45㏈以下とし、これは騒音規制法、群馬県の生活環境を保全する条例の第2種区域の規制基準と同等に定めた。
2 騒音等に関する被疑者の不十分な対応の推移
騒音等に関し、前橋市とバイオマス発電関係の責任者である被疑者や、被疑者が代表を務める事業者である前橋バイオマス発電(株)の状況を時系列で確認しておく。まず、赤城南麓周辺は、騒音規制法、群馬県の生活環境を保全する条例の区域外であり、騒音・振動の規制は無く、夜間など30㏈強の静けさが確保されており、騒音規制基準でいえば第1種区域以下となり、地域住民の中には、療養として移住している者もいたほどである。
しかし、前橋市は、バイオマスの建設計画を事業者と推進するために、騒音規制外の建設地をピンポイントで特定し、そのエリアにおける騒音・振動規制を口頭で定めるなどして、発電所建設が計画通りに進むよう事業者側の立場を配慮したかたちで、円滑な手続きのための地ならしを行った。もちろん、通常は市から動くというようなことは無いので、被疑者らが持ち掛けたことは明白である。本来、行政である公務員の使命は住民保護であるはずだが、実際には、生活環境の悪化のリスクを懸念する住民の反対を押し切って、前橋市は不当にも、こうした生活環境の悪化をもたらす一連の地ならしを推進した。
環境配慮計画では、主要な音源である移動式チッパーによる間伐材のチップ加工について、事業者が移動式チッパーを建屋内に設置することで音源からの騒音の拡散を抑制してチップ加工を行う、という方式の採用を明文化している。ところが、それとは裏腹に、事業者は、当初からチッパーを建屋外に設置し、屋外でチップ加工を実施している。素人が考えても、建屋の開口部を塞ぐなど音漏れ対策を施した屋内でチップ加工するのが常識だが、事業者はそれをせずに、移動式チッパーを屋外に置きチップ加工を実施する状況が現在まで続いている。
前橋市宅地開発指導要綱に基づく事前協議に関する覚書(平成27年9月29日付)の中で、第5条の注意事項として、「乙丙が行う各種工事の施工に当たっては、周辺住民に事業内容を良く説明し、了解を得て現在及び将来においてトラブルが生ずることのないよう努めなければならない」と記載されている。乙とは、被疑者が今計画の総責任者であった前橋バイオマス発電(株)のことである。また、宅地開発事前協議に関する指示事項として、「2 環境政策課からの指示」として、「騒音及び振動については、敷地境界において、第2種区域と同等の対策を講じること」と明記されている。しかし、この時点では、赤城南麓は、騒音・振動の規制対象外区域である、まだ第2種区域には指定されていないことになる。
平成27年10月3日に開催された事業者による第1回説明会において、騒音・振動に関する環境基準が初めて住民に開示された。内容は、前橋市との宅地開発事前協議に関する指示事項に準じた。平成27年12月20日の第2回説明会において、主な騒音対策として、「音の発生源となるチッパーは、遮蔽効果のある建屋内に設置します」と明記してある。
騒音測定作業および空間線量率測定作業のお知らせ(平成27年10月25日付)を周辺住民に配布し、平成27年10月28日午前10時から同月29日午前12時まで実施した。
平成28年1月20日、前橋市は赤城南麓一体まで都市計画区域を拡大し、そこを騒音・振動規制の対象区域として指定する方針である旨、突如新聞発表した。そして、市民への周知期間も設けず直後の同年2月1日から29日まで僅か一か月間、パブリックコメントを募集し、同年4月1日から施行する旨を発表した。事実上の決定、施行であり、それまで、なんの議論もなされずに、住民には具体的内容や経緯など何も知らされないまま、前橋市は、いきなり新聞発表をしたのであった。新聞発表された記事には、「目的として、住環境を守る」と記されたが、完全なる住環境破壊そのものであり、前橋市が被疑者らの環境破壊を目論む事業をバックアップすることを意図したのは明らかである。
なぜなら、前橋市が、前橋市宅地開発指導要綱に基づく事前協議に関する覚書を被疑者が代表を務める事業者と取り交わした平成27年9月29日の4か月後に、発電所設置予定地を含むエリアを、両社で勝手に「騒音・振動規制の第2種区域に指定する」ことを取り決めしてしまい、さらに市民への周知期間も設けずに、大慌てで平成28年2月1日~29日に市民にパブリックコメントを求めることは、常識的にあり得ないことだからである。前橋市は被疑者の都合のよい工事日程に合わせ、本来、騒音・振動規制の第1種区域であった場所を、第2種区域に指定する準備を整えてやって、被疑者の事業を進めさせ、後追いで当該の第2種区域に指定した。こうした不適切な行為は、絶対にあってはならないことである。
平成28年8月27日、住民らは被疑者ら3名と打ち合わせした。
平成30年2月2日、住民らは、前橋市環境政策課と打ち合わせし、騒音・振動が環境基準を超えた場合、市の方から改善命令や行政指導を行うことを確認した。
平成30年2月22日、住民らは事業者の最大の出資者である関電工と打ち合わせた。
平成30年3月4日、前橋バイオマス発電(株)が営業運転を開始した。
平成31年2月3日、住民は、前橋バイオマス発電(株)の工場長経由で被疑者あてに以下の内容のメールを送付した。
(以下、メール内容の引用はじめ)
関電工 遠藤さま
毎々、お世話になります。
お手数ですが本メールを(株)前橋バイオマス発電代表取締役
福本雅邦氏及び関電工バイオマスプロジェクト代田氏へ転送頂
きたくお願いします。
福本さま 代田さま
ご無沙汰しています。赤城山の自然と環境を守る会の野原です。
昨年の発電所稼働時から、燃料会社のチッパー騒音、発電所の
再稼働時の爆音及び日常の騒音についての再三、苦情を伝えて
ありますが一向に誠意ある対応がなく、大変遺憾に感じていま
す。
今回、燃料工場と発電所は騒音規制法で定められている騒音規
制の特定工場であること確認いたしました。法令で定められて
いる騒音規制値の遵守状況を確認したく早急に打合せを実施お
願いします。
御社が前橋市へ提出した環境配慮計画に記載されている住民へ
の対応を遵守していただきたくお願いします。
2月6日までに打合せ日程の回答をください。
赤城山の自然と環境を守る会
(以上、メール内容の引用おわり)
平成31年6月28日に発表された決算報告書によると、被疑者が前橋バイオマス発電(株)の代表になっているが、平成30年当初には、バイオマスプロジェクトの本部長になると同時に社長になったと思われる。これは、関電工関係者との話し合いや会議の中で聞いた情報である。発電を開始したのは平成30年3月4日であり、この前後には社長になり業務引継ぎ等で繁忙になり多少、住民の苦情等の情報が上がってこなかったり、工場責任者任せになったりした事情があったのかもしれない。だが、逆に、環境配慮計画に記されているように、発電所の社長は、公害防止に係るすべての責任を取ることになっており、第3回口頭弁論が行われた平成31年4月24日時点で、被疑者は、住民からの苦情の主だった内容である騒音問題を知らなかったはずが無いことは明白である。また、検察の最大の役割は、捜査により事実関係を明らかにしなければならないことから、公害防止責任者や苦情窓口である工場長に、「被疑者に報告したのか」と問えば済むはずである。この経緯は、運営協議会の議事録を見れば明らかであり、地検の「嫌疑不十分」の判断は明らかに失当である。仮に、協議会が開催されていなかったり、議事録が無かったりすれば、それ以上に問題である。
3 被疑者の偽証陳述が及ぼした判決への影響
被疑者が偽証陳述を行ったことによって、原告の請求の一部が以下の内容で棄却されている事実を検証すべきである。
(1) 判決の事実と理由における裁判所の判断
申立人が提起したバイオマス補助金支払差止請求事件(平成28年(行ウ)第27号)の判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」「3 争点1(本件事業の補助事業としての適格性)」「(4) 環境配慮計画について」のウ(判決文のページ33の最下段)において、「上記(1)アのとおり、本件発電事業の不適合性は、本件補助の交付決定の違法性を基礎づけるものないものの、事案に鑑みて判断すると、確かに、本件発電事業における夜間の騒音が騒音規制法の定める基準値を超えていた事実は認められる(甲78)。しかしながら、証拠(証人福本)によれば、本件発電事業による夜間の測定基準が騒音規制法の基準値を超えることとなったのは、前橋市による騒音の測定基準が変更されたためであり、前橋バイオマス発電(株)は、平成31年1月から2月頃、前橋市からの指摘を受け、騒音規制法の基準値以内となるよう対策を行っていることが認められ、騒音規制法違反の状態は是正されていることからすれば、本件発電事業が違法操業状態であるとは認められず、原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。」
(2) 偽証の事実
ア 被疑者は、「前橋市による騒音の測定基準が変更された」と証言したが、これは偽証である。なぜなら、前橋市の測定は環境規制法で定められた測定法であり変更した事実はないからである。また、前橋バイオマス発電(株)は、騒音規制法で定められた特定工場に該当している。
イ 被疑者は、「前橋市からの指摘を受け、騒音規制法の基準値以内となるよう対策を行った」と証言したが、これは偽証である。そもそも、特定工場等において発生する騒音及び特定建設作業に伴って発生する騒音について規制する地域として指定した地域であり、この指定地域での測定は、同法第21条の2に基づき、前橋市長が、騒音の大きさを測定するもので、前橋バイオマス㈱が騒音測定できるものではない。さらに、平成31年4月24日までに前橋市により、騒音規制法の基準値以内に対策されたことは確認されていない。
ウ その事実を裏付けるもとして前橋市による令和3年12月、令和4年12月の騒音測定の結果に基づき、前橋バイオマス発電(株)は騒音規制法の基準値超えで行政指導されている。
エ 検察の最大の役割は、捜査であり、証拠を発見、収集、保全する手続きをしなければならないことを考えるならば、被疑者の当該裁判での偽証は、裁判判決に重大な影響を及ぼす結果となり、裁判内容を明らかに歪めた。再調査を実施することにより、被疑者が口頭弁論で、「騒音・振動規制値をオーバーし、行政指導を受けたことは無い」という証言は、「行政指導をした」とする前橋市の山本市長の回答と正反対である。このことは、再度調査を実施し、本件関係者から事実関係について聴取すれば、容易に明らかになるはずである。いくら東京電力の筆頭子会社の管理職であり、前橋バイオマス発電(株)の代表取締役であっても、裁判を軽視した虚偽証言は許されるものではない。検察審査会においてきちんと検証する必要があるため、ここに審査を申し立てるものである。
以上
証拠資料
1.告訴状 写し 1通
2.追加証拠資料送り状 写し 1通
3.訴状(全部) 写し 1通
4.証人調書(全部) 写し 1通
5.判決文(全部) 写し 1通
6.原告準備書面(10)(全部。関連する甲号証含む) 写し 1通
7.騒音測定結果(前橋市役所による測定を明記) 写し 1通
8.処分通知書 写し 1通
9.不起訴処分理由告知書 写し 1通
**********
■すると、6月6日付で前橋検察審査会の事務局から、受理通知が送られてきました。
■このため、審査申立てをしてから1か月が経過しようとする直前の7月5日に、追加資料として以下の文書を前橋検察審査会事務局に提出してきました。
*****7/5追加資料*****
令和5年7月5日
前橋検察審査会 御中
申立人 小川 賢
不起訴処分を不当とする理由の補足資料の提出について
下記案件について、不起訴処分を不当とする理由の補足に必要と考える資料を「追加資料」として、本状に添付して提出いたします。
よろしくご査収くださるようお願い申し上げます。
記
1 審査申立人 小 川 賢
2 被 疑 者 福 本 雅 邦
3 罪 名 偽証
4 申立受理日 令和5年6月6日
5 事件番号 令和5年(申立)第7号
以上
=====追加資料=====
令和5年7月5日
追加資料
審査申立人 小川 賢
事業者である前橋バイオマス発電㈱による、地域住民の安心・安全な生活環境の保全を蔑ろにした事業運営に対し、憤りを感じ、赤城山の自然と環境を守る会を結成して活動してきている地域住民は、事業者の親会社である㈱関電工取締役社長に「申入れ書 前橋バイオマス発電(株)の騒音公害クレームについて(お願い)」(添付資料1参照)を令和3年9月9日付で提出しました。
しかし、遺憾なことに、現在まで関電工から何の回答も頂いておりません。
このように、関電工、前橋バイオマス発電(株)とも地域住民への説明責任を無視した企業運営を行っている現状です。
一方、地域住民のうち、赤城ビュータウンに住んでいる住民らは、生活水として前橋バイオマス発電(株)の敷地から約80m離れたところの井戸水を使用しています。
すると、令和4年10月ごろ、井戸水の水温が24~25℃と異常に高いことに気づきました。それまで、この井戸水は17℃~18℃が通常でした。
事業者が運転している前橋バイオマス発電所では、タービン発電のために使用している高圧・高温の蒸気をボイラーに戻す際に、タービンから出てきた蒸気を復水器で冷却するため、膨大な地下水をくみ上げて使用しています。
この冷却水は地下水ですが、コスト節減のため、事業者は前処理も施さずにそのまま冷却用に使っているため、繰り返し使うと濃縮されボイラーや配管の内部にスケールと呼ばれる湯垢がこびりつくため、一度冷却用に使っただけで、温水状態のまま、地下浸透方式で排水処理されています。
たしかに、夜間の騒音レベルが騒音規制法で規定されている基準値を超えている事実と、この排水処理問題との関連については、事実関係が証明されているわけではありませんが、住民らが日々使用している井戸水の水温上昇との因果関係の観点から、十分に要因となりうる可能性があります。
このことについて、住民らは、令和5年2月10日付で前橋市へ緊急要請書を提出していますが(添付資料2参照)、前橋市からは、現在まで明確な回答がありません。
ちなみに、前橋バイオマス発電とほぼ同時期に新潟県三条市にてほぼ同じ規模の木質バイオマス発電所が稼働しています。前橋バイオマス発電所の近隣住民が、令和5年7月4日に、三条市の地域住民の方に連絡をとったところ、三条市のバイオマス発電所に関する情報を頂くことができました。
それによると、三条市のバイオマス発電所の温排水は、排出口で温度が38℃あり、直径100mmの塩ビ管で排出しているとのことです。排出量は、正確にはわからないというものの、おおよそ毎時15トンのようです。
更に、発電用ボイラーに投入する木質燃料として使われる間伐材は、密閉された建屋のなかでチップ加工を実施していて、粉じん、騒音対策がしっかりと実施されているとのことです。関電工を主体に、トーセン、県森連(群馬県森林組合連合会)、素材協(群馬県素材生産流通協同組合)が出資する前橋バイオマス発電・燃料施設では、間伐材のチップ加工は、移動式のチッパーと呼ばれる粉砕機を屋外で稼働させており、周囲に騒音と粉じんをまき散らしていても平然なのに比べると雲泥の差です。
こうしたバイオマス発電所に関する情報ですが、前橋バイオマス発電の場合、前橋市を通しても、また事業主体の関電工に問い合わせても、さっぱり聞き出せない情報が、三条市の場合、行政や事業者から何の隠し立てもなく公開されていることに、群馬県民として、驚きを禁じえません。
とりわけ、三条市のバイオマス発電所の住民対象の見学会はこれまでに何回も実施されたそうですが、前橋バイオマス発電所は、建設完了時に一度だけ件学会を実施しただけで、稼働後でも必ず見学会を開くと言って、その後、一度も件学会の開催要請に応じようとしない事業者の前橋バイオマス発電や親会社の関電工との企業体質の違いに、あらためて驚かされます。
事業者が、きちんと住民の安心・安全な生活環境の保全に真に目覚めるよう、事業者の責任者による法廷での偽証という重大な罪の意味をぜひとも認識させていただきたくよろしくお願い申し上げます。
以上
添付資料1:令和3年9月8日付地域住民団体から関電工社長あて申入書
添付資料2:令和5年2月10日付地域住民団体から前橋市長あて緊急要請書
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■さて、前橋検察審査会ではどのような判断をしてくれるでしょうか。これまで一度も不起訴不当と決定してもらったことがないだけに、当会としても今度こそという気持ちで結果を注視してまいります。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】