ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

「ザ・ホエール」

2023-04-08 | 映画のお話
最初は興味などなかった。
予告は何度も眺めてはいたが
コントロールできずに巨大化してしまった男のことなど私には関係ないはず
ドキュメンタリーのような気がしていたのかもしれない。

272キロの巨体の男 チャーリーを演じたブレンダン・フレイザーが
アカデミー賞主演男優賞を受賞。
メイクアップ&ヘアスタイリング賞とあわせて2部門を受賞したと知った。

教え子だったアランと暮らすために、8歳の娘と妻の元から去ったチャーリー
アランを亡くした喪失感と罪悪感の中で過食と引きこもりで巨大化してしまう。
まだ40そこそこなのに何とか歩行器にしがみついての生活
心不全が悪化しても病院を拒絶する彼にもう明日はないようだ。

あまりにもリアルで悲しさと同じぐらいおかしさがこみあげてくる。

登場人物もアランの妹で看護師のリズ、娘のエリーと 宣教師のトーマス
元妻メアリーとピザの配達員だけで部屋の中とドア付近だけの世界

毎日開くドアの外から 光が差し込んだり、雨の音がしたり
彼の世界はそんなにも小さい
そうしてたったの五日間だ。

妻から会うことを禁じられていた娘は学校にも家庭にも問題をたくさん抱えていたことを知る。
8歳で捨てられた恨みつらみを真正面からぶつけてくる娘の素直さがいとおしい
 
人々を救うはずの宗教が家族をバラバラにし、若者たちを死に至らしめ苦めている伏せんが
張り巡らされるようにやがて浮き上がってくる。

人は藁をも掴むというが、すがってもがんじがらめにされ、家族を不幸にしてしまっていることに気づかない。
アランもリザもトーマスもカルト宗教ではじき出された人たち
病んでしまったアランにはチャーリーの愛は遅すぎたのかもしれない。

妹リザはチャーリーを世話し、チャーリーは最期に娘エリーを救い出そうとし
エリーは帰るところのないトーマスを救う
チャーリーもエリーのエッセイで発作を治めながら生きてきた。

そんな風にそれぞれが手を差し伸べていてやがて自分にかえってくるのだろうか

幸せだったころの妻と娘との想い出が何度もよみがえる・・・

誰かのことを気にかけて生きていけば、みんな救われるのかもしれない

ハーマン・メルヴィルの「白鯨」をいつか読んでみたい

素直に愛と本音で娘に接した最期、
娘にすべてのお金を残し、自分には救済のない選択は本当に正しいのだろうかと思う
父がこんな姿で死んでしまうなら、自分にお金を残すことより、
生きていて元通りの姿になってほしかったはずだろう・・・

何が正しかったのか、彼は本当にそれでよかったのか、

それはある日突然、家庭と娘を捨て、同性愛に走った父の償いだとしてもだ







コメント
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