初めてのオーダーメイド

2013-06-30 10:30:49 | サラリーマン人生
 ブログネタに困った時にと思って設けた「サラリーマン人生」カテゴリー、前回の「課長の家の下宿人」のタイトルで記事を書いてから2ヶ月近く経過した。 当時勤務していた会社は東証2部上場の計測器メーカーだったのだが、 そこの課長職の家庭はこんな風だった。

 住まいは狭いながら庭付きの木造平屋建ての持ち家。 場所は立川駅まで徒歩で10数分の距離で土地は借地だった。 家族は奥さんと子供2人の4人家族で、 長男は国立市にある私立中学に通い、小学生の長女も同じ中学に入学すべく、当時の小学校の担任だった先生から個人的に勉強の面倒を見てもらっていたようだった。 暖房器具の石油ストーブは当時の女性のバイブル的存在だった「暮しの手帖」誌面でも紹介されていたアラジン社のブルーフレームなんてのを使って居た。 そして立川駅前にあった大手デパートからは「お得意様優待日」そんな案内状が届く生活をしていた。

 そんなだから、僕を下宿人として受け入れるにあたって、経済的に僕からの下宿代を当てにしていたなんてことは100%考えられない事でした。

 そして世話になり始めた年の暮れ、 ボーナス商戦の一環としてデパートから「お得意様セールスの案内状」が届いたみたい。 「タナカさん、このお得意様セールスだと割安だし」、「生地はイギリス製の一流品で一生物のコートが出来るわよ」そんな具合に奥さんから声を掛けられた。 「名探偵ポワロが着用するような冬のオーバーコートは貧相な僕の顔に似合わないよ」そんな想いもあったけれど、 連れて行ってもらってオーダーメイドで採寸して作ってもらったのです。 

 ところで僕の終戦間際の子供時代から就職するまでの期間、喰うのが精一杯の家庭で育ちました。 毎日のおかずに必ず魚や肉が出るなんて事はなかったのです。 それがひょんなことから課長の家に下宿して、食事も家族同様に扱われた毎日の生活は僕の身体に劇的な変化を与えました。 なんと1年で10cmも身長の伸びをみせたのです。 いくらオーダーメイドで誂えたコートだって、どことなく寸足らずになろうと言うものです。 そんな訳で、奥さんの言葉のように「一生もののコート」にはなりませんでした。
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