アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

2010年01月29日 | Weblog
 オペラ、「ドン・ジョヴァンニ」を鑑賞しました。先日、オペレッタ「こうもり」を観て、オペラを観たいなと思っていました。そんな矢先に、スロヴァキア国立オペラの日本公演があったので、一も二もなく行きました。大枚を叩いて!芸術鑑賞に金銭を持ち出すなって?…だったら、芸術鑑賞は無料にしてくれ!この切り返し、秀逸でしょう!

 小学校、中学校時代は、「チェコスロヴァキア」と、習ったが、今は、チェコ共和国とスロヴァキア共和国に分かれている。そのことについて、私には何の連絡もなかった。なめられましたね。
 分かれてからすでに30年近くも経つ。チェコの首都はプラハ。これは皆さんが知っている。では、スロヴァキアの首都は?と問われて即座に返答できる人は多くはない。「ブラティスラヴァ」です。

 スロヴァキア国立オペラ日本公演、後援は、スロヴァキア政府文化省とスロヴァキア大使館でした。「ドン・ジョヴァンニ」が始まる前に、駐日スロヴァキア大使が挨拶に出てきました。駐日大使だから日本語で挨拶するのかと思ったら、スロヴァキア語でした。
 頭髪の量は、駐日スロヴァキア大使のシュトゥスさんより、私が勝りました。

 シュトゥス大使の挨拶の要旨は…
 皆様、スロヴァキア国立オペラ日本公演ようこそ(中略)、本日の公演で興味をもたれ、是非我が国スロヴァキアへ来てくださり、本場のオペラを鑑賞してくださいますよう願っております。

 大使の髪の状況ばかり観察しているのではなく、挨拶をメモするあたり、やはり私は凄い(自分で自分を褒める…有森裕子状態!)。スロヴァキア語が分かるのかって?日本語も満足に分からないのに、スロヴァキア語が分かるはずがない。通訳を通しての理解です。
 その通訳が凄い!知る人ぞ知る、知らない人は全く知らない、「イワン・ルマーネクさん」。
 ルマーネクさんは、スロヴァキア語の通訳というのはアルバイトで、本職は、「能の研究者」。本職では食っていけない?当たり前です。誰が、能の研究にお金を出してくれますか!(怒るこたぁないですね)。元々は、中央アジアの古典を研究されておられました。そして、日本の「能」に出会い、世阿弥の能楽論である、「風姿花伝」を翻訳。日本人をもしのぐほどの能研究の大家となっています。凄い人なのに、知名度が…。現在は、ロンドンで能の研究をされておられる。ロンドン!WHY?…どこで能の研究をしようと私には何の影響もありませんがね。アメリカで日本文学の勉強をしている人は、たくさんおりますよ。「マジかよ?」って?マジマジ!

 「能」は、「静」の中に無限の激情をたたえるものです。それを研究…。私とは、頭のできがかなり違う。しかしBUT!頭の外側については、私はルマーネクさんに勝ちました。ルマーネクさんは、世界光頭大会でも優勝するであろう見事な光頭でした。ハゲを見ると、髪を伸ばした人が貧相に見えます。ハゲは、神々しい(光々しい?)。

 「大使と通訳が薄毛であることは分かった。ドン・ジョヴァンニはどうだったんだ?」って?フルスコアではなかったので…。
 しかし、本場のオペラ歌手の実力が良く分かりました。やはり素晴らしいです。 ヨーロッパで修業中の日本人オペラ歌手は一体何人いるのでしょうか?10人、20人という単位ではないでしょう。その中で芽を出せるのは数人。
 スロヴァキアで6年オペラを勉強して結局デビュー出来ず、旅行会社の添乗員をしている人が自嘲的にボケていました。「世界を回るオペラ歌手になろうと頑張りました。今は、世界を回る添乗員をしています」夢が破れました。これが現実です。

 その点、スロヴァキア国立オペラの歌手は、いわば勝ち組。国家公務員でしょうから、生活も安定している。スロヴァキアへ進出している日本の企業は、矢崎総業とソニーの2社。矢崎総業は、3,000人を雇用してスロヴァキア政府に喜ばれております(ソニーは、1,300人)。どうして矢崎総業がって?スロヴァキアへは、フォルクスワーゲン社(ドイツ)、プジョーシトロエングループ(フランス)、現代自動車傘下の起亜自動車(韓国)が進出しているからだと思います。カイエン(ポルシェ)、Q7(アウディー)も、スロヴァキア製です。矢崎は、総業と名乗るだけあって、様々な業種に進出しています。看板は、ワイヤーハーネス等自動車部品です。

 「だからぁ、オペラはどうした、オペラは!」ってがぁ?オ、オペラは…スロヴァキアへ行って観たいです。日本の行政刷新会議の事業仕分けで芸術分野での予算は縮減と判定されました。スロヴァキアは、そんなことはしない。オペラを国の文化のバロメーターととらえているから。文化は食べられないけれど、心は豊かになる…。