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最高裁の見解は理解不能・・・なぜ、死刑を検討する模擬裁判をしないのか

2008-05-27 08:50:27 | Weblog
 死刑を検討する裁判では裁判員はきわめて重い心理的な負担を受けます。それに裁判員が耐えられるのか、検証が必要だという指摘が出ています。それに対して最高裁判所は、死刑を検討する模擬裁判は今後も行わない方針です。その理由として、最高裁は「きわめて重い刑の判断をする場合、裁判員にかかる心理的な負担などについて、現実に即した検証をするのは難しく、模擬裁判の題材には適さないと考えている」と説明しています(5/21 19時30分NHKニュースから要約)。

 この最高裁の説明を、なるほど、検証が難しいから模擬裁判をしなくていいのかと、納得するひとがいるでしょうか。重い刑の判断ではなぜ検証が難しいのか、なんの根拠も示されていません。国民主権を掲げた裁判員制度なのに、それを国民に理解してもらおうという気持ちが感じられないのは不思議なことです。もしかしたら最高裁は模擬裁判によって深刻な問題が表面化するのを恐れているのではないかと邪推したくなります。

 死刑を検討する裁判は重い負担を裁判員に与えるだけに、未知の要素が多く、事前検証の必要がきわめて大きいことは容易に想像できます。十分な理由を示さず、模擬裁判を実施しないことはとても納得できません。リアリティのある模擬裁判をすれば、ある程度現実に即した検証をするのは可能だと考えられるからです。死刑判決を出すことができない裁判員や、心理的な負担に耐えられない裁判員が出てくるかもしれません。

 また衝撃的な現場写真を見て気を失う人が出るかもしれません。イラストで代用しようとする動きもあるようですが、事実から遠くなり、裁判の正確さが犠牲になるのは避けられないでしょう。

 未知の問題点を予想し、対策を準備するための実験、つまり模擬裁判は大変有効な手段です。それをやらないのであれば説得力のある根拠を示すべきです。また模擬裁判をやらず、いきなり本番をすることによるリスクについての説明も必要です。

 この最高裁の説明を聞いた記者は、「なぜ検証が難しいのか」と質問をしなかったのでしょうか。記者は視聴者が理解できるようにニュースを伝えるのが仕事です。発表をそのまま伝えるのなら記者は不要であり、最高裁がNHKにメールを送るだけでよいのです。

 また昨年、8箇所の地裁で実施された同一の想定事件に対する判決は、無罪判決から懲役14年まで、大きな差がつきましたが、それに対する最高裁の見解は「当然、想定していた」でした(07/12/2朝日)。

 ひどくバラバラの判決が出ているのに、なぜ公平な裁判なのか、凡人には理解できません。ここでも記者は最高裁に質問したという記載はありません。記者はその見解に疑問を感じることなく、単に左から右へ伝えたということなのでしょうか。バラバラの判決を最高裁がなぜ肯定するのかについての公式見解を知りたいと今も思っています。

 最高裁が記者会見をして発表したならば、記者は国民の代表として予め十分な知識をもち、的確な質問をして最高裁の意向をわかりやすく伝えるのが仕事の筈です。質問しなければ、そもそも記者クラブという場の存在理由はありません。裁判員制度について