噛みつき評論 ブログ版

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米証券の破綻・・・世紀の巨額借金踏み倒し

2008-10-02 08:00:41 | Weblog
 金貨だと思っていたものが、実は葉っぱであったことに皆がようやく気づきました。贅沢三昧の生活を楽しんでいた、ずる賢い狐たちの手の内がバレてしまいました。寓話風にいうとこんなところでしょう。まあ以下も寓話とお読み下さい(経済の素人にまともな議論は無理なので)。次は狐たちの生態を示すエピソードです。

 「リーマンのニューヨーク本社が倒産手続きに入る直前、ロンドンの欧州拠点から8000億円超を本社勘定に事実上、移転していたというのだ。すっからかんになった欧州拠点は従業員に給料も払えない。そんな折、ニューヨークの社員用には、ボーナス資金までしっかり確保されていたと分かり、ロンドンの怒りが爆発した。正直な人、誠実な人はウォール街流に向かない」(9/26毎日「発信箱」より)

 ここ数年、金融業の高所得は驚くほどでした。先ほど潰れかけたメリルリンチの前CEOの昨年の退職金は170億円、ゴールドマン・サックスのCEOのボーナスは70億円といわれています。昨年のマンハッタンの証券業界の平均週給は約180万円といわれ、年収では1億円近くになります。リーマンが救済されなかったのは散々儲けた強欲な連中の後始末に税金を使うわけにはいかない、というのが理由に挙げられています。

 ニューヨーク・ポスト紙は一面トップに高さ5センチ大の活字でデカデカと「フロード(詐欺)・ストリート」という見出しを掲げ、ペロシ下院議長は「自分の会社をつぶしておきながら、高額の退職金という金色のパラシュートで脱出しようとするCEOたちに言いたい。もうパーティーは終わりだ」と厳しく批判したそうです(9/24 FT)。

 米国はここ数年過剰消費の状態にあったとされています。過剰消費とは米国民が生産する以上のものを消費している状態、つまり借金に頼る生活です。家計はマイナスの貯蓄率が示すように赤字、政府も巨額の財政赤字で、それが巨額の貿易赤字に反映されています。リーマンなどの証券会社(投資銀行)が世界中から集めてきた借金で貿易赤字を埋めてきました。破綻は借金の踏み倒しです。

 集めた巨額の金の一部は狐たちが食いつぶし、一部は住宅などに化けましたが、多くは雲のように消えました。10月1日の日経は世界の株式時価総額が2000兆円目減りしたと伝えていますが、サブプライムローンから作られた証券は住宅価格の値上がりを前提にしていたので価格が下がれば消えるのは株と同じでしょう。信用創造というと聞こえがよいですが、ないものをあるように見せることです。

 米証券5社の資産は90年代の米国GDPの1割前後から昨年には3割を超えていたそうです(9/30日経)。信用膨張が進みすぎ、バブルがはじけたとされています。信用が膨張するということは株が値上がりするのと同様、見かけの資産は増加します。膨張した資産は石油や穀物などの商品投機にも向かい、商品の高騰によって世界中がひどい迷惑を受けました。実体経済の規模に見合わないマネーは市場を混乱させ、有害であることが示された形です。

 04年の米企業利益に占める金融業の比率は3割強で、日本は1割だそうです(9/25日経)。金融の役割とはつまるところ資源配分です。簡単に言うと社会から資金を集め、社会が必要としている産業などにそれを配分する仕事です。配分の仕事をする役割の者が3割もの利益をとるというのは健全な社会とは思えません。

 投資銀行というモデル自体が消滅し、拝金主義の狐たちの宴は終わりました。世界規模の経済の大混乱という置きみやげを残して。

 狐たちは投資の幻想をも生み出しました。「貯蓄から投資へ」(参照)という日本政府の方針が、その幻想につられたものであったなら、再考の余地があるのではないかと思う次第です。