神戸市など、地方自治体が様々な基金でハイリスクの仕組み債を購入し、多額の評価損を出していることが判明しました。仕組み債を購入していた自治体は全国24市町村に上るそうです。また少し前、駒澤大学や立正大などでデリバティブ取引による巨額損失が表面化し、全国で75の大学で同様な金融取引の行われていたことが発覚しています。
堅実な資産運用があたりまえの地方自治体や大学がハイリスクの取引に手を出すのはまことに異常なことです。それが例外的な少数ではなく、多くの自治体や大学に及んでいたことは問題の深刻さを示しています。単に、知識の乏しい自治体や大学の運用担当者が証券会社にカモられたというだけでの説明では不十分のように思います。
仕組み債はオプションやスワップなどを組み込んだ債権(*1)で、その複雑な仕組みのために投資家は内容を理解するのが難しく、リスクとリターンが見合っているか、証券会社の手数料が適正か、などの判断が簡単ではありません。中にはハイリスク・ローリターンといわれるものもあるようです。証券会社にとっては高い収益性が魅力であり、販売に力が入ります。
仕組み債の例として以前個人投資家に大量に売られたEB債(他社株転換可能債)があります。(EB債とはやや高めの金利のついた債権で、転換対象銘柄の株価があらかじめ決められた基準価格以上なら額面金額が償還されますが、株価が基準価額を下回っていると株式で償還されます。金利が高い理由はその株を一定期間後に基準価格(行使価格)で売る権利「プットオプション」の売却によるものです。そのため購入者はやや高い金利を得ることと引換に大きく損をするリスクを抱えます)
興味ある方はEB債のからくりについての説明をご覧下さい。推測を交えた説明ですが、なるほどと思わせるものがあります。ここではEB債はサギに近い商品だとされています(オプションについての知識がないとちょっとわかりにくいかもしれませんが)。
複雑化により投資家が適切な判断をすることができないような商品を販売することはフェアな行為とは言えません。一般の企業は顧客の満足のために努力し、それが企業の利益に結びつくのですが、証券業界の努力は専ら顧客から吸い上げることに傾くようです。米国の証券業はグリード(貪欲)との非難を受けましたが、証券業の体質は万国共通なのかもしれません。
他方、「貯蓄から投資へ」という国の方針、それに加担して風潮を作り上げたメディアにも大きい責任があると思います。勝間和代氏の「お金は銀行に預けるな」という本はこの流れに乗ってずいぶん売れたようで、アマゾンのカスタマーレビューには173件もの書き込みがあります。有用性の高い順でレビューを見ると酷評が並び、この本を読んで投資信託を買い、大損をしたという記述も目につきます。リーマンショック後の記述ということを考慮しても、酷評の多くにうなづくことができます。
「お金は銀行に預けるな」は多くの「被害者」を出したと思われるのですが、勝間氏の釈明はいまだ聞き及びません。その後、勝間氏は「転進」をされ、別種の本を大量に売りまくっておられます。勝間氏の商才には感服する次第です。
むろん勝間氏ひとりの問題ではなく、勝間氏の本が売れるという背景を作り上げたマスメディアの問題でもあります。依然として個人向けの仕組み債は販売されており、内容が十分理解できないまま購入している人は少なくないと思います。
仕組み債は一見、有利に思えるように作られていますが、そのリスクを評価するのは簡単ではありません。危険性を含め、この仕組みをきちんと周知するのはメディアの役割でありましょう。一部の仕組み債はその不透明さのため、個人向けに適した商品とは言えず、一定の規制をすべきであると思います。
(参考拙文「貯蓄から投資へ」に騙されないために)
堅実な資産運用があたりまえの地方自治体や大学がハイリスクの取引に手を出すのはまことに異常なことです。それが例外的な少数ではなく、多くの自治体や大学に及んでいたことは問題の深刻さを示しています。単に、知識の乏しい自治体や大学の運用担当者が証券会社にカモられたというだけでの説明では不十分のように思います。
仕組み債はオプションやスワップなどを組み込んだ債権(*1)で、その複雑な仕組みのために投資家は内容を理解するのが難しく、リスクとリターンが見合っているか、証券会社の手数料が適正か、などの判断が簡単ではありません。中にはハイリスク・ローリターンといわれるものもあるようです。証券会社にとっては高い収益性が魅力であり、販売に力が入ります。
仕組み債の例として以前個人投資家に大量に売られたEB債(他社株転換可能債)があります。(EB債とはやや高めの金利のついた債権で、転換対象銘柄の株価があらかじめ決められた基準価格以上なら額面金額が償還されますが、株価が基準価額を下回っていると株式で償還されます。金利が高い理由はその株を一定期間後に基準価格(行使価格)で売る権利「プットオプション」の売却によるものです。そのため購入者はやや高い金利を得ることと引換に大きく損をするリスクを抱えます)
興味ある方はEB債のからくりについての説明をご覧下さい。推測を交えた説明ですが、なるほどと思わせるものがあります。ここではEB債はサギに近い商品だとされています(オプションについての知識がないとちょっとわかりにくいかもしれませんが)。
複雑化により投資家が適切な判断をすることができないような商品を販売することはフェアな行為とは言えません。一般の企業は顧客の満足のために努力し、それが企業の利益に結びつくのですが、証券業界の努力は専ら顧客から吸い上げることに傾くようです。米国の証券業はグリード(貪欲)との非難を受けましたが、証券業の体質は万国共通なのかもしれません。
他方、「貯蓄から投資へ」という国の方針、それに加担して風潮を作り上げたメディアにも大きい責任があると思います。勝間和代氏の「お金は銀行に預けるな」という本はこの流れに乗ってずいぶん売れたようで、アマゾンのカスタマーレビューには173件もの書き込みがあります。有用性の高い順でレビューを見ると酷評が並び、この本を読んで投資信託を買い、大損をしたという記述も目につきます。リーマンショック後の記述ということを考慮しても、酷評の多くにうなづくことができます。
「お金は銀行に預けるな」は多くの「被害者」を出したと思われるのですが、勝間氏の釈明はいまだ聞き及びません。その後、勝間氏は「転進」をされ、別種の本を大量に売りまくっておられます。勝間氏の商才には感服する次第です。
むろん勝間氏ひとりの問題ではなく、勝間氏の本が売れるという背景を作り上げたマスメディアの問題でもあります。依然として個人向けの仕組み債は販売されており、内容が十分理解できないまま購入している人は少なくないと思います。
仕組み債は一見、有利に思えるように作られていますが、そのリスクを評価するのは簡単ではありません。危険性を含め、この仕組みをきちんと周知するのはメディアの役割でありましょう。一部の仕組み債はその不透明さのため、個人向けに適した商品とは言えず、一定の規制をすべきであると思います。
(参考拙文「貯蓄から投資へ」に騙されないために)