噛みつき評論 ブログ版

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選挙不信の理由

2010-03-22 09:52:29 | Weblog
 私は選挙というものをあまり信じていません。むろんなければ困るものですが、選挙結果はマスコミが作り出したイメージの一時的な反映であり、移ろいやすく、信頼できるものとは思えないからです。わずか半年前に国民の圧倒的な支持を受けて誕生した現政権の混乱はその優れた例証となるでしょう。有権者は民主党の実像を支持したのではなく、マスコミが描いた虚像を支持したわけです。

 鳩山内閣の支持率の低下傾向が続いています。民主党の生方副幹事長の解任劇は自党の看板に「独裁」と「言論封殺」の文字を自ら書き込んだようなもので、執行部の見識と能力を疑うに十分です。支持率低下の原因にはいろいろあるでしょうが、そのもっとも大きなものは「ツートップ」の「政治と金」問題であるとされています。しかし、政権に対する評価はその政策を中心にしてなされるべきであり、「政治と金」問題が政権評価の最重要事になるのは少しおかしいと思います。

 特定の企業や労組から頂戴するなど、金の集め方に少々問題があっても立派な政治を実現する有能な政権は、いかに清廉潔白であっても無能な政権よりも、国民のためには余程よいわけです。ここで鳩山政権を擁護しているわけではありません。金の集め方に問題があって、かつ無能な政権なら最悪です。

 有権者はマスコミというフィルターを通してしか政治を見ることができません。したがって有権者の意識はマスコミ報道の反映と考えられます。このフィルターを通過するとき、現実はいろいろと加工されます。「政治と金」問題が支持率を大きく低下させたということは、この問題が他の問題よりも重視されたためで、それは大きく報道された結果である、ということができます。

 「政治と金」も大事な問題ですがあくまで間接の問題です。政策の立案と実行は政治の目的そのものですから、なによりも重要です。しかしマスコミの扱いは「政治と金」などのネガティブなものに重点が置かれます。恐らく、それがわかりやすく、スキャンダラスな話題であるためでしょう。反面、政策や方向性などポジティブな部分に向けられる報道が相対的に少なくなります。

 その結果、「政治と金」などネガティブな事柄が支持率を大きく左右し、さらには選挙結果を左右することになります。マスコミが頼まれもしないネガティブキャンペーンをやっているようなものです。

 昨年の総選挙で民主党が掲げたマニフェストは既に財源の点に不安がありました。無駄をなくすることで16兆円余りを捻出するということに対しては当時から疑問視する見方があり、リーマン後の不況で税収が大きく落ち込むことも予測可能でしたが、マスコミが問題視することはありませんでした。

 政治がかかわる問題は複雑で多岐にわたります。マスコミが政党の掲げるマニフェストを適切に分析・評価してわかりやすく報道しなければ、有権者が十分理解するのは困難だと思われます。政党と有権者の間にマスコミというフィルターがあり、ここに恣意性の入りこむ余地のあることは避けられません。

 マスコミがより的確な分析能力を備えていれば、政党は実現できないような安易なマニフェストをつくることができなくなります。政治のレベルは国民の民度によって決まるなどと言われますが、それ以上にマスコミのレベルによって規定されると言えるのではないでしょうか。